プロジェクトの作り方(02)神崎先生の探究の方法。思考の内的連関法。①
★神崎先生のオーセンティックな探究の方法についてのつづきです。昨今。探究の話題が溢れていますが、探究なのに教材があるという不思議な現象があったり、アクションのベルトコンベアー的なパッケージの配列だったりして、生徒の頭や内面の中で、多様な要素が今までにないありかたで関係し合うことがないというケースが目立ちます。要するにクリエイティブシステム思考が内的連関を生み出していないのです。内的というと形式がないという二項対立でとらえられがちですが、カブトガニは殻だけでは生きていけません。内蔵だけでも生きていけません。その両方が内的に連関しているから生存できます。
★かくして、言葉は実はデジタルなので、この内的連関を分断する表現になります。言葉が心身化あるいは体験から経験化する必要があるのは、この分断をつなぐためですね。では、言葉と形式と内容をつないで心身化するにはどうしたらよいのでしょう。それは、IBでは好まれ、日本の教育では嫌われる思考スキルが必要なのです。
★言葉や形式や内容や心身、スキルは、人間関係総体の中の出来事です。バラバラの要素としてのモノではなく、内的連関という差し当って表現するしかないコトそのものなのです。
★そんなことを神崎先生は、常に考え、生徒といっしょに探究の方法を錬磨し創造しているのです。たとえば、神崎先生はこう語ります。
1)自力でいける生徒さんは担任の先生にお任せして、生きの良さそうだったり本気でお困りだったりする生徒さん(のリサーチデザイン)を私が引き受ける感じ。私はCiNiiを準備して、生徒さんに自由連想でまずは話を聴くところから。どういうところで躓いているのかを話してもらいます。
★この始まりからして、思考スキルは発動しているのです。自由連想というのは、抽象から具体へ拡散、あるいは違う抽象をあるいは具体を連射的に想像したりするスキルを生徒と共にするというわけですね。この連想で広がったものを、さらに比較・対照するスキルも同時に活用しています。
★この連想の広がりが拡散しない時、躓きがうまれます。それはしかし、同時に疑問なのです。どうしてそこで止まるのか?躓きが多ければ多いほど、そこが探究の糸口になります。神崎先生はさらにこの躓きについてこう語ります。
2)「◯◯はどういうことかな?」「それは◯と△と二つ意味が割れそうだけど、どちらだろう?」その上でお悩みの要点をまとめて共有。
★具体と抽象、比較・対象、カテゴライズのスキルが発動しています。しかし、ただスキルだけ発動しても、内的連関は起こりません。具体と抽象にしても、比較・対称にしても、カテゴライズにしても、いろいろな要素がでてきます。何かピースがたりなくて、うまくつながらなかったり、分類できなかったりします。
★ですから、つなごうとするわけです。新たなピースを探し始めるのです。ここで内的連関が生まれてきます。とはいえ、そう簡単に生まれてはこないののです。そこで、また神崎先生はこう語ります。
3)抽象度が高いリサーチクエスチョンや論点の場合は、研究できるくらいまで具体的に聞きます。「それは具体的には◯◯を対象としているということかな?それとも△△?」
★この具体的な問いの連射は、具体的なものどうしの比較・対照によるズレや差異が生まれます。アレエッ?と。
★こんな感じで、ズレや差異を、文献リサーチという自分の主観を抑えた分析によって生み出していきます。それが自分でも気づかなかった深い主観であるのですが、それは、この多くの他者が書いた考え方の差異の追跡によって生まれてきます。
★自分の主観を捨て、他者に耳を傾ける時、今までの主観を超えた主観が顕れます。しかし、その主観は自分ひとりの世界から生まれてきたものではなく、まだみぬ作者という他者や目の前の神崎先生という他者との協働によって生まれ出ずる「協働主観」なのです。
★この協働主観が、希望する大学とシェアできたとき、そのコミュニティの中では客観性を帯びてくるのですが、その形式は協働主観という内容と内的連関をしているわけです。この結びつきは、しかし、スキルという脳を刺激する電極によって成就するのです。
★かくして、神崎先生の探究の方法は、自由連想で拡散した豊かなマテリアル(そうマテリアルはすでに主観なのです)を現実態に移行するフォームによって展開していきます。しかし、そのマテリアルとフォームは思考スキルによって刺激を受けて内的連関を生成します。この思考の内的連関がなければ、主体性とか自律だとか、イニシャチブだとかいう行為はうまれてこないのです。
★いくら探究用の教材を精読したところで、その内容を理解して終わりです。探究とは新たな差異を見つけつないでいくにはいかにしたら可能かという問いを生み出す行為です。理解してそこで立ち止まるのは、「お勉強」というものでしょう。(つづく)
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