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2020年10月21日 (水)

新しい教育社会(12)私立中高の価値志向に対応した組織の4タイプ。

★座標系で首都圏私立中高一貫校の価値志向を4つに分類し、コンサバから3つの革新教育が出現していることを眺めています。その動きには、①学校の学習観の違いがあり、②革新教師の特徴の違いがあるという話をしてきました。そして、今回は③組織の佇まいの違いを紹介したいと思います。

★もちろん、きっちり4つに分けることはできないのです。個々に見ると、あてはまらないということに、この手の分類は必ずなります。しかし、各類型の集合となるとそれぞれのタイプの特徴を感じ取ることができます。感じ取るですから、あくまでも私の経験値による独断と偏見です。学校選択の時の1つのものの見方・考え方として参考にしてもらえればとおせっかいな話なわけです。

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★組織開発や人材育成の研究は世の中に山ほどあります。多くの教育コンサルタントは、その研究成果を活用して学校経営を指南していきますが、前提として、それは収益増大ビジネスモデルで、誰かが得をすれば誰かが損をするゼロサムモデルです。しかも昨今の情勢は、誰かが得をし続け、誰かが損をし続ける可能性のある利益非対称型あるいは偏向型ですから、学校教育では、少なくとも初等中等教育では直接活用することはできません。

★私立中高一貫校の場合、学則定員が決まっていますから、定員確保維持が目標で、定員確保増大はそもそもないのです。基本学費と助成金で私立学校は成り立つ循環経済モデルです。学費は、生徒の学びの環境にすべて適用し、基本利益はでないというモデルです。実際には土地を売却したり、寄付金を募ったりして、学費と助成金以外に入ってきますが、誰かの利益になるわけではありません。

★施設の建て替えや、新しいテクノロジーの入れ替えなどに投入されます。先生方の給料だって、教師の生命維持だけではなく、生徒の学びを豊かにするための創意工夫ができるコンディションをととのえる分も必要です。学校の先生をやっていて、ビル・ゲイツのようになりたいというのは本末転倒です。最近そういう教師も現れてきていますが、どうなるかおもしろそうですね。

★しかし、循環経済モデルで、実はウィリアム・モリスやミヒャエル・エンデがユートピアとして描き、それを社会実践しようとしてきた歴史の成果がひっそり私立学校に継承されてきたというのが、私立学校の思想としての≪私学の系譜≫を支える経済システムの在り方です。ケインズもすでに「雇用・利子および貨幣の一般理論」でそこを重視していますね。トマ・ピケティやその仲間たちの税金配分の正義の政策もそこに論点があります。

★かくして、革新教育は、実は、この循環経済モデルをぶっ壊す動きとコンサバの学校が無自覚に継承してきた循環型モデルを再定義し、それを学校モデルから社会の経済システムモデルに変えようとしている動きに二分されます。

★マーケティングやGAFAはゼロサム経済モデルの動きをする組織です。コンサバとDAVOSタレンティズムは循環経済モデル組織です。ただ、おもしろいのは、ブランディングマーケティング主義は、旧来の市場の覇者を駆逐しようとダイナミックに動くので、階層構造を戦略的に書き換える経営組織です。

★一方GAFAタレンティズムは、学校現場は教師も生徒もフラット・フリー・フェアで、一見循環モデルですが、それを支えている経営組織はブランディングマーケティング型組織です。

★コンサバは、本来循環型で、今もそうですが、校務分掌がいつのまにかピラミッド型機能になってしまうところもでてきています。本来は役割を互いに尊重しひたすら遂行することに幸せを感じる循環経済効用型なのですが、そこのマインドセットが、偏差値によって影響を受けてしまっているということですね。

★ですから、DAVOSタレンティスム組織は、循環経済モデルを自覚的に遂行し、経済利益向上に幸せを見出すのではなく、様々な内発的プロジェクト創出の行為自体に幸せや生きがいを感じる組織にシフトしているのです。well-beingの経済モデルは循環モデルです。ですから、このドメインの学校はSDGsの取り組みが広く深いのです。

★この学校は、クリエイティブシステム思考とクリエイティブシステム組織(これも頭痛が痛いと同じ表現でしつこすぎますが^^;)が一致している組織です。ダイアレクティブ組織です。理想的なものは現実的なもの、現実的なものは理想的なものというマインドフルネスに溢れている<ルソーの系譜>=≪私学の系譜≫というわけです。ここにきて、この≪私学の系譜≫も4タイプあったということでしょう。第Ⅰ象限がルソー型、第Ⅱ象限がロック型、第Ⅲ象限がアダム・スミス型、第Ⅳ象限がハイエク型ということになりましょうか。そして、公立はサヴィニー型なのかもしれません。

★学習指導要領の中で、このサヴィニーを取り扱っていないのが実に謎ですね。U理論を述べるコンサルタントが、逆Uを研修で扱わないのと似ています。あるいは、マーケティングにおけるイノベーター理論で、レイトマジョリティやラガードの背景にある権力のパラドクスを語らないのと似ています。U理論のオットー・シャーマー教授もイノベーター理論を発展させたジェフリー・ムーア氏も、ちゃんとその点を論じているのに。。。

★教育コンサル系のシンクタンクや社団法人がこれからどんどん生まれてきます。そのとき、ここらへんの情報を共有してくれるところが信頼できるのかもしれません。

★要するに、あらゆるものの見方や考え方には光と影があります。メリットとデメリットと置き換えてもいいのですが、そこを確認することが大切です。コンサバは安定的価値観を追い求めますが、行き過ぎると抑圧的になります。ブランディングマーケティング価値は、行き過ぎると一望監視型組織になります。

★GAFAタレンティズムは行き過ぎると、相互監視型組織になります。

★DAVOSタレンティズムは、行き過ぎると新しいパターナリズム型組織に陥ります。

★学校選択は、やはり多角的に複眼的にリサーチする必要があります。自分一人ではなかなかできません。玉石混合ですが情報はたくさんあります。学校自体が豊富な情報を発信する時代にもなりました。情報の収集・分析の目をいっしょに磨いていきましょう。

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