新しい教育社会(02)中等教育と高等教育の新しい流れ たとえば、新渡戸文化学園やiU
★ポストコロナショック時代をどう描くのか?私たちは今回のパンデミックに見舞われる前は、未来を予測不能と称し、VUCAの時代だと語っていました。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の英語の頭文字をとって総称していたわけです。すでにその状況下で暮らしていたわけですが、どこか遠い話のように感じ、変わることより変わらないことを選択して生活していたきらいがあります。しかし、パンデミックに直面した今は、私たちはまるで黒船がやってきたように変化を迫られています。しかも、世界同時的に。
★この変化の竜巻を教職員全員が一丸となって生み出している学校の1つが新渡戸文化学園です。統括校長補佐の山本崇雄先生をはじめ同校の先生方は、このVUCAを読み替え=De-sign(脱表現)してしまったのです。変動性に揺らぎながらも動じない重心を生徒1人ひとりが見つけられる環境を創っています。その重心こそ、生徒1人ひとりのかけがえのない価値(Value)でしょう。
★不確実性は、つながりを切るリスクがあります。関係が立ち切れること、それは愛をも切り裂きます。それゆえ、関係を持続可能にするためにも、いつでもどこでもつながるようにテクノロジーを駆使できるようにしています。Ubiquitousの環境を生徒自身がコロナ禍ですでに活用できるようになっています。
★複雑性は、それがゆえに創造性(Creativity)を生み出すというパラドクスを生めるような環境、特に授業の変容ぶりはすさまじいですね。山本先生は上智大の奈須教授と「ポストコロナの授業づくり」という本を発刊したばかりです。奈須教授といえば、授業とオープンスペースの関係を各自治体と共創した教育学者です。山本先生と共鳴共感共振するのはなるほどです。
★そして曖昧性。もやもやして鬱屈している時代。でも、大丈夫。コンパッションという寛容にも世界の痛みを引き受ける清浄(Airy)なマインドが生まれる余白が時間と空間の中に設定されています。
★新渡戸文化学園はこども園から短期大学まである総合学園です。新しい教育社会が生まれる1つの強烈で柔らかいモデルになるでしょう。
★さて高等教育の方でも大きなウネリがあります。新設のiU(情報経営イノベーション専門職大学)の中村伊知哉学長が中心となって、11校による専門職大学コンソーシアムが立ち上がりました。
★専門職大学は、大学時代に起業や専門知識の応用をしてしまいます。大学時代に専門知識を研究して、就職したらそれを生かしていこうというわけではないのです。
★2022年に改正民法が施行され18歳成年が誕生します。今までのように、大学卒業してから働くでは、遅すぎますね。というか、このリニアーなキャリアデザインこそ変わる必要があります。いつでもどこでも学び働ける環境が本当は必要なのです。日本の社会は、まだ40%は高校で職に就きます。
★AI時代、この領域の職がなくなる可能性もあります。であれば、専門職大学で学びながら働くというか、学び即仕事となる動きが必要になるでしょう。
★そうなってくると、中等教育までにリベラルアーツを行っておく必要があります。新渡戸文化学園のように新しいリベラルアーツを行い、専門職大学のように学ぶコトは仕事を生み出すこと、仕事をすることは学ぶコトという、まるでウイリアム・モリスの描いたハピネスユートピアのような社会が到来するのかもしれません。
★コロナ以前は、一部のファーストクラスを生み出す社会でした。ポストコロナ時代は、みんながクリエイティブクラスになる時代です。それには教育は社会に出る執行猶予期間ではなく、教育即社会なのです。
★以上のような中等教育と高等教育の2つの動きは、一見別々のようにみえるのですが、そのウネリは、クリエイティブクラスが生まれる教育社会を創出する合流となるでしょう。
| 固定リンク
« 新しい学校の条件(06)新渡戸文化学園 決定的に新しいsomethingがある②。 | トップページ | 聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(05)高橋先生のクリエイティブでイノベーティブな授業 »
「創造的才能」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
- 聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている(2024.11.22)
- 2025年中学入試動向(1)学校選択の新しい見方(2024.11.07)
「創造的対話」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(15)日大豊山女子 新タイプ入試60%占める ルーブリックも公開(2024.11.25)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
- 聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている(2024.11.22)
「創造的破壊」カテゴリの記事
- 本田由紀教授の短いメッセージにも日本の根本問題を暴く(2024.10.29)
- 日経ビジネス 禅と哲学 駒沢学園女子の教育がグローバルなわけ(2024.10.22)
- 2027年に向けて動く世界と私立中高一貫校(了)2050年以降の社会は、だれもが創造的才能者になる(2024.10.01)
- 2027年に向けて動く世界と私立中高一貫校(7)2050年以降の社会を創出する創造的才能者を生み出す教育(2024.10.01)
- 2027年に向けて動く世界と私立中高一貫校(6)いわゆる高偏差値学校の教育と筑駒湘白型教科教育(2024.10.01)
「入試市場」カテゴリの記事
- イエール大学と音楽国際交流(6)リハーサルのクライマックス(2024.06.04)
- 私学の教育を支える私学財団(2024.05.30)
- 私立学校の教育は経営システム基盤と経営コミュニケーションがレバレッジポイント 事務長の人間力が凄い(2023.10.06)
- 2023年夏の「私学経営研究会 教頭部会」 21世紀型教育と生成AIとリーガルマインド(2023.07.27)
- 東京私学教育研究所情報(05)私学経営研究会(理事長・校長部会)第1回委員会開催(2023.04.23)
「教育イノベーション」カテゴリの記事
- 2025年再び転換の起点(4)ウェルビーイングな中学受験をプロデュースする首都圏模試の価値創出(2025.01.06)
- 2025年再び転換の起点(3)残念ながら受験読解力の限界を認識する必要がある(2025.01.05)
- 2025年再び転換の起点(2)論語と算盤ー倫理資本主義がベース(2025.01.05)
- 2025年再び転換の起点(1)3fの時代へ転換するHRP トリムタブ再考/最高(2025.01.04)
- 今年最終日、中学入試直前の12月のアクセスを振り返る。今年もご覧いただきありがとうございました。(2024.12.31)
最近のコメント