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2020年10月12日 (月)

ノートルダム女学院(10)探究×保健体育×哲学対話②

★保健体育科の三井先生は、前回ご紹介したように、時間の都合がつけば、他教科の授業も見学したり、探究の時間などファシリテーターとして参加したりしています。また教育学や組織開発、医療関連研究、心と身体の研究など外部のセミナーとのネットワークも広い先生です。教科横断を身を挺して実践する越境人です。そのPBL型授業は、まさに生徒といっしょに学際的な知の冒険をするデザインが工夫されています。

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★保健体育科で扱うテーマは、そのすべてがSDGsに関連する社会課題につながっています。ジェンダー問題や感染症の問題は、遠くの話ではなく、まさに自分事として受け入れざるを得ない問題です。探究→議論→探究を深め自己編集していくという過程がベースの授業です。ICTの活用も画期的で、プレゼンなどは、録画して共有したりしています。

★生徒にインタビューすると、「自分とは何か見つめる時間だし、大学入試の時に志望理由書や自己アピールの動画を提出するときにも役に立つ授業ですよ」と。

★三井先生は、「受験勉強のために授業を組み立ててはいませんが、今年京大の医学部医学科学科に合格した生徒が持ってきてくれた特色入試の問題を同僚から見せてもらいましたが、感染症やチーム医療の話などに関して分析的問題もある一方、自分のアイデアも記述する骨太問題も出題されていて、こういう問題にも立ち臨める授業であれば、それはそれでよいと思っています。いずれにしても、みな自分の弱さを見つめ、相互にそこをサポートしていけるオープンなチームワークを創っていけるリーダーシップを授業の中で身につけてもらえたらよいと思っています」と。

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★三井先生は、山川先生とも協働して、哲学対話の経験値も積んでいますが、その山川先生は、宗教科の主任です。カトリック学校なら、宗教の時間はたいていあります。NDもそれの例外ではないのですが、山川先生は、哲学と文化人類学(サブカルチャーも含めて)と神学を学際知で統合して授業をデザインしていきます。ICTもフル活用するディスカッション授業と対話以外何も使わない哲学対話の授業の両方をミックスしていきます。

★そして、すべてのテーマが「人間存在と人類愛」のバリエーションです。来春以降、ダボス会議でも話題になる「ザ・グレート・リセット」の時代に突入していきます。ポスト・パンデミックは、自然とは何か?社会とは何か?人間とは何か?を世界市民レベルで議論されていく時代です。

★山川先生は、「大事なことは、それぞれ要素が深く議論されていって、いつの間にかそれぞれが分断されてしまうようにならないことです。要素間の関係をつないでいく熟慮と対話と気遣いを大切にする授業をしていきたいと思っています。キリスト教的には、関係を断つことは罪です。その罪悪感は、どんどん人の繋がりを疎遠にします。欧米の精神分析学などの出発点はここを無視しては成り立たなかったでしょう。ですから、心理学的には、抑圧の壁ということですね。この障壁があるから私たちは大切なものを見失ったり、手放したりしてしまいます。それを回復するにはどうしたらよいか。生徒たちは、身近なところに、その普遍的な心の動きがあるのを鋭く察知します。その課題解決には、つながることが大切だということは議論しながらあるいは哲学対話をしながら気づいていきます。もちろん、頭ではわかっているのですが、議論や哲学対話の中で、身に染みて内側からつながる=関係=ケア=隣人愛という連鎖が溢れてくる体験を大切にしたいと思っています」と。

★山川先生と対話していると、本当に謙虚で、「この存在の根源を生徒が深刻に受けとめながらも、その本質にワクワクしながら探究していけるには、やはり学びの環境の創意工夫は大切だと考えています」と語ります。そのため、私ともいっしょにPBL型授業のデザインスキルの研究をしてくれているわけです。

★学問的であり現実的であり、生徒の身近な生活のいまここに本質を映し出す授業を追究し続けているのです。このような授業が探究の時間以外にあるNDは重要な何かを生み出そうとしているのでしょう。

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