★盟友鈴木裕之氏主宰のGLICCという21世紀型学習塾があります。ちょっと不思議な塾です。2教室分と事務スペースだけの小さな空間です。1教室5人が限界でそれ以上だと3密になるので、リアルだとそこまでです。ところが、外国にいる日本人生徒が小学生から高校生までオンライン授業で学んでいるので、小さいけれどめちゃくちゃグローバルです。
★もともとは、口コミで鈴木氏のIBジャパニーズの指導や大学の帰国生入試の実績、ケンブリッジやロンドン大学などの海外大学の実績がよいので、生徒が集まってきたという経緯があります。大学の帰国生入試は、活動報告書、志望理由書、日本語の小論文と英語の小論文、英語と日本語の面接があります。もちろん、大学によって英語だけのところもありますし、書類選考だけのところもありますが、複数受験をするので、一通り対策講座を開設してきましたし、今もそうしています。
★そういうこともあり、このGLICC空間の公用語は英語と日本語です。スタッフは、外国人が中心だし、アルバイトの学生は、GLICCの帰国生入試対策を受講した卒業生です。英語を使う比率が圧倒的です。
★私ぐらいですね。英語ができなくて、メールのやりとりをdeepl翻訳を活用しながら、スタッフの方々とやりとりをしているのは。鈴木氏とはもう25年以上も前から友人なので、日本語の小論文のところは頼まれます。私の授業は昔から対話や議論がベースなので、GLICCの21世紀型学習とシンクロするらしいのです。
★また、GLICCにくる帰国生は、大手の予備校ではなく、あえてGLICCを選択するのですが、それは彼ら自身が現地校で、対話ベースでチュータリング方式の経験をしているからです。それに基本インディペンデントですから、自分のペースでできる、つまりセルフマネジメントできるのがよいのでしょう。
★それから、プラットフォームがCANVASで、課題管理や自分の考えの痕跡であるポートフォリオと教師と帰国生、帰国生と帰国生のフィードバックのプロセスフォリオが残るので、リフレクションもシステム思考でできます。Googleとかロイロとかが日本ではプラットフォームになっていますが、米国ではCANVASの利用も多いのすが、日本ではほとんど知られていないというのも、GLICCの特別なところです。
★アドミニストレーターとすべての共有ができるので、マネジメントプラットフォームとして相当優れています。教師は世界の生徒と学びます。時差もあります。生徒のスケジュール変更は頻繁にあります。教師と生徒のレベルで、ダイレクトに変更を加えていきます。
★それをCANVAS上で行えば、すべての変更が自動的にスケジュール管理してくれるので、アドミンに何か連絡がはいっても、聞いていない知らないということがないのです。情報共有がフラット、フリーになっています。もちろん、CANVASのシステム自体がせキュリーティーやリスクマネジメントを行うわけですから、自由と規制が程よい関係になっているわけです。
★私自身もZoomでやりとりをする帰国生や総合選抜型入試対策の高校生もいます。彼らとやりとりしていて、IB(国際バカロレア)やAレベルの考え方を私自身が学んでいなければならなかったということもあります。あとは、各国の文化や教育事情を知らなければならなかったということもあります。娘がイギリスで4年間大学と大学院で学んでいたので、彼女や彼女の友人たちから情報を共有してもらうこともしばしばでした。
★私自身も1998年から2015年くらいまで、米国とフランスでPBL研修旅行を行ったり、リサーチをしていたということもあります。だからIBを学ぶとかAレベルを学ぶということではなく、IBやAレベルの背景にある学問や研究をリサーチしていたということが幸いしたのかもしれません。GLICCで英語ができなくても、使ってもらえるのは、世界の共通言語としての学習理論がある程度わかっているからと勝手に思っています。
★つまり、グローバル文脈において、英語は重要な共通言語なのですが、思考理論や学習理論という共通言語も必要だということです。それからもう1つ、小論文を書くときに、モラルコードだけでは、帰国生入試や社会課題解決型の総合選抜型の小論文は乗り切れません。経済コードとリーガルコードとサイエンスコードが必要です。
★IBの優れているところは、これらがほとんどシスタマティックになっているところです。
★しかし、そのシステムを支えている学習理論は、クリエイティブシステム思考です。これはモラルコードも、リーガルコードも、経済コードもサイエンスコードもループでつないでいく理論です。学際的かつ実際的です。
★最近、中学受験を考えている小学生もGLICCに集まり始めています。ただ、おもしろいのは、〇APIXにはいかないで中学受験ができないかという生徒です。英語入試や国際入試、思考力入試をはじめから考えています。とはいえ、国語と算数も学ぶというわけです。ただし、リベラルアーツ的というかIBでいうPYP的なプログラムを好む保護者ばかりです。保護者の学びの履歴や意識も高いですね。
★小学生は、アイデンティティとリレーションの両方の要素をベースに学んでいきますから、オンラインよりもやはり対面が必要になります。お菓子も食べながらやりますから、やはりリアルでとなりがちです(菓子)。外出自粛期間はオンラインでしたから、そちらもできますが、今はリアルです。80分授業なのですが、あっという間です。
★スピーチ、図式化、論述が基本アクティビティです。コアブック(テキストとは別)は、池上嘉彦先生の本と落合陽一氏の本です。それから今月の本として、物語の本(新書版・文庫版)と漫画本を読みます。今月は「星の王子様」と「コボちゃん」です。
★授業は、まずたいてい生態系に関する写真をみて、1分間スピーチ。それに関する動画やデータ、あるいは文章を活用して、最初1分スピーチで話したことを再構築値して、100字で要約するということをやっています。100字に関しは、5年生は生徒同士ピアレビューをします。4年生は、まだアイデンティティが勝ってしまい、リレーションシップは盛り上げる時に使います。
★ただ、最近ようやく、思考スキルを生徒が自分で認識できるようになってきたので、4年生も5年生も、100字の論述を思考スキルアナリーゼを行うようになってきました。これはシステム思考の基礎です。ループづくりの基礎になるのです。日本の教育では、モラルコードが圧倒的なので、こういう認知科学的な思考スキルはなかなか使いません。IBでは、はっきりと思考スキルを活用することになっているのに。。。。
★生態系やSDGsに関しては、生徒によってはマイクラで取り組んでいる生徒もいるので、システム思考的な話はそんなに抵抗はないようです。
★漫画は、ドラえもんやスヌーピー、コボちゃんを今のところ使っています。キャラクター分析や物語の構造分析、キャラクター同士の心情の交差の図式化など、コンパクトにできるのです。最近では、「鬼滅の刃」が流行っているらしく、おもしろさの共通項を対話したりもします。私はこのアニメを知らないので、生徒が鼻を膨らませて説明してくれるのを凄いね、かわいい話なんだね、怖いと思ったけど愛の話なんだねと相槌をうっているだけでけですが、オーヘンリーやコボちゃんなどとこんなところが共通していてとかオチがどうのこうのとか、バッドエンドかハッピーエンドかどちらが好きだとか、キャラクターどうしのメンタルモデルの話になってくるのをワクワクしながら耳を傾けています。
★こうして、クリエイティブシステム思考(本来システム思考はクリシティブなので、腹痛が痛いみたい表現なのですが、システム思考というとマシンモデルと誤解する方がいるのであえてくどく表現)は、ふくらんでいきます。
★文章に関しては5000字から8000字を一本読みます。物語と論説文をそれぞれ交互に活用します。物語は、漫画で活用した物語構造分析や心情分析の図式化をイーゼルポストイットで書いてプレゼンしたり、200字で書いたりするのがルーチンです。物語の続きを200字で書くという作業もたいていいれます。物語の構造を論理的に分析し、途中で終わっているので、そのあとを論理的に推理しつつ、クリエイティビティを発揮するという流れです。
★生徒は、スポーツと一緒で、論理的分析はめんどだとかつまらないとはじめ言いますが、書いているうちにああ~そこかあと続きを創作するきっかけを発見して、没入していきます。もちろん、創作こそ楽しんでいます。バッドエンドにするのは、今流行りの銭天童によるのだと生徒が言います。互いにどう書いたのか当然ピアレビューは自然に始まるし、お迎えにいらした保護者に自分はこう書いたのだと語り掛けています。
★物語の学び方は、IBジャパニーズのやり方を参考にしています。この科目のトレーナーとして、オンライン上では鈴木氏はちょっとした有名人ですから、教えを乞うています。
★それと、池上嘉彦先生の記号論とロラン・バルトの物語構造論を活用しています。ここらへんは、麻布や開成の対策でずっとつかってきた考え方です。
★論説文は、まだ、本格的に行っていません。ゆくゆくはミニパーソナルプロジェクト風にしたいなあと思っていますが、今は今月の図書、たとえば星の王子様の月は、星の王子様関連の論文を読んで、自分の読み方との違いに気づいてくれればよいかな程度です。論理的文章の構造はもちろん分析していきます。物語の創作に対応するのは、自分の意見や推理を書くということです。
★中学入試の2科4科だと、100字から200字が書ければよいので、その感覚をと思っていたら、500字から800字くらい書くようになりました。
★最初は、200字なんて書けないとか防衛機制をそれなりに働かせるのですが、書いているうちにあれもこれもになります。抽象から具体へ、そして今度は具体から抽象へという、削除・挿入の編集スキルをまずは体感からということですね。
★この作業は、最終的に生徒の満足度は高くなります。そうなるちょっとした仕掛けがあります。実はA4の100字原稿用紙を使っています。字を大きくはっきり書くという目的で始めたのですが、あっという間に1枚の原稿用紙がかけてしまうというのが、生徒の実感です。ですから、もう一枚となります。またまたもう一枚となります。振り返るとA4用紙5枚も埋まっているわけです。ある生徒は8枚も書いているのです。そうなると、字数に関しては大学の小論文レベルですね。
★ともあれ、それなりの達成感があります。それに、あとで並べ替えたりできます。ポストイットと同じ要領です。
★並べ替えるという順序づけの編集スキルもトレーニングできます。
★論説文とか説明文は、要約と意見を別々にやります。4年生のうちは、書いているうちに混在してしまいます。作者がどう考えたかと自分がどう考えるかを分けることができるのは、実は傾聴するコミュニケーションスキルの補強にもなります。
★少しずつ、意見を書くときに、作者の提示した課題についてから自分がさらに発見した課題について深堀していくパーソナルプロジェクトまではいきませんがマイプロジェクトにシフトしたいとは思っています。
★長くなりましたが、この一連の帰国生入試→総合型選抜→新タイプ中学入試という大学入試から中学入試に逆算していく流れをたどっていくと、この流れに全体に沿ってGLICCが塾として成立しているということは、やはり社会の何かが変わってきたということなのでしょう。
★この新しい変化で、大学合格実績はどうなるのだと攻めよられても、相当すてきな結果はでていますよと応えるしかありません。毎年三田国際の国際入試や英語入試で3人も合格している塾はあまりないのです。
★ですから、口コミで、三田国際や広尾学園の国際入試や英語入試の対策に駆け込んでくる受験生も増えています。ネイティブスピーカーの教員が英語での面談トレーニングができる塾というのも少ないということもあるでしょう。
★今年は小学校の5、6年生の英語教科元年です。これからこの流れはどんどん増えるでしょう。ちなみにGLICCの中学受験生は、みんな英語も学んでいます。SDGs関連、生態系関連の動画をみるとき、海外のものもOKです。動画の内容を生徒から教えてもらう昨今です。お爺ちゃん先生に教えてあげるよという感じです。教えながら学ぶというパターンも、こんなところで使えます。
★すべては、クリエイティブシステム思考と共に。
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