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2020年10月

2020年10月31日 (土)

2021年変わる中学入試(16)11月3日の首都圏模試の私立中コラボフェスタの時代を見通す意味。オンライン入試準備実は着々。

★毎週金曜日21時からGLICC Weekly EDUという限定配信チャンネルのコメンテーターをしています。ナビゲーターはGLICC代表鈴木裕之さん。とはいえ、今のところは、二人のウダウダ対話を流しているだけですが。昨日は第2回目で、座標に配置した4つの価値意識に基づく学校選択の種類があるという話と、その4つの価値を代表するような学校を少し紹介しました。開成の海外大学合格実績のブレイクスルーが、新タイプ入試のブレイクスルーにちゃんと呼応しているというようなストーリーになったと思います。

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★ストーリーになったと思いますというのは、実ははじめにそういうシナリオがあったわけではないのです。基本、ブリコラージュ形式の対話編集なので、こういうと何か難し気ですが、簡単にいうと、大テーマだけ決まっていてあとはアドリブです。ジャズセッションみたいなものかな。かっこよすぎますね(汗)。

★ともあれ、2013年以来開成の海外大学合格実績数は延べ数ですが、紆余曲折しながらも全体としては増えています。そして、今春は突き抜けた感じです。

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★この意味をめぐって対話することになったわけですが、そのきっかけは、今春開成から現役でケンブリッジに合格しているというのを合格者リストの中から素早く見つけて、鈴木さんがハーバードならわかるけれど、オックスブリッジは、日本の高校資格ではいけませんよね。これは謎ですねとすぐにピンときたからです。さすがです。

★それに気づいたのは、配信1時間前、互いに今日はこの資料でいこうとシェアしたときでした。時差もあるので、鈴木さんのネットワークではすぐに聞けなかったので、私は東南アジアのほうにLINEを投げてみました。すぐにたしかに不思議だと、IBかAレベルを開成はやっているの?と、それともパートタイムの講座にまずははいって、そのあと考えるという方法かもねとか返ってきました。

★鈴木さんにその話をしたら、すぐにAレベル路線は在り得るということになり、Aレベルを有志にサポートするシステムを持っている静岡聖光学院の話題がでました。ここから、新タイプ入試を行っている新しい学びの価値を有している学校の話に一気に広げることができました。

★当日の話はよろしければ限定配信をそっとご覧ください。ここでは、当日話せなかったことを補足します。

★この開成の海外大学合格実績のブレイクスルーは、実は新タイプ入試の伸長と呼応しているのです。2013年から開成は本格的に海外大学合格実績を同校の進学実績リストに掲載するようになったのですが、これは私立中高一貫校の中学入試で新タイプ入試が開発実施され、どんどん増えてきたのと同じカーブを描いているのです。

★ここには共通の時代の欲求があるのですが、なかなか広く目立つ話ではありません。たとえば、今年の開成の海外大学合格実績35件はすごいけれど、日本全国の小学校6年生100万人に比べれば、0.004%のお話です。見向きする人がいる方がおかしいでしょう。あまりよいたとえではありませんが、ついこの間まで、タックス・ヘエイヴンというオフショア金融の話を一般の人は気づかなかったし、今も利用することは普通はできませんね。

★新タイプ入試も実は最初はそうでした。しかし、開成の合格リストの大部分を占める東大をはじめとする難関大学に合格する層と輝かしいけれどほんの一握りの海外大学に合格をする層は、実はある重要な意味があることに、新タイプ入試を行うようになった学校は気づいたのです。それは、前者はファーストクラスだけれど、後者はクリエイティブクラスなのだと。

★つまり、これは、世界経済フォーラムの来春のダボス会議のテーマである「欲望資本主義から才能資本主義へ」という流れとピッタリ呼応したいるのではないかと感じています。

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★昨日告知するのを忘れてしまったので、ここでお知らせしますが、11月3日和洋九段女子と文化学園大学杉並で合判模試が開催されますが、午後から両校は、新タイプ入試体験授業を行います。ぜひ参加して、クリエイティブクラス体験をしてみてはいかがでしょう。また、現場にはいけないけれどという方々にのために、首都圏模試センターは、同時開催でオンラインで入試体験ができる学校を募っています。

★こちらもご活用ください。そして、ふと思うのは、これって、来春はまだ行わない予定かもしれないけれど、いつでもオンライン入試ができるよということを示唆しています。

★4科テストは、まだファーストクラス用の試験ですが、新タイプ入試はクリエイティブクラス用の試験です。そういう流れが少しずつですが、私立中高一貫校の世界では広まっていきます。

★2025年、これも話すのを忘れていましたが、大学入試はまたまた変わります。変わらないとやはり70%の方々は思うでしょうが、30%の方々は準備を始めています。というのは、CBTにならないといわれながら、なるからです。

★入管法が改正されて、40万人不足している先端IT人材というクリエイティブクラスに外国人が参入してきます。

★日本の大学進学の人口は50万人くらいです。この50万人をできるだけクリエイティブクラスにしないと、いったいどうなるかです。分断はいけませんが、そこを全部外国人がシェアしてしまうのは、それはそれで問題です。

★開成の海外大学進学生徒と新タイプ入試を実施している学校の生徒は、このファーストクラスクラスに接続するのです。

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2020年10月30日 (金)

新しい教育社会(18)21世紀型教育機構のアクレディテーション ブレイクスルーへ。

★予想していたわけではないけれど、老兵は去るというセオリーで、21世紀型教育機構の理事を辞めたら、急にパンデミックが襲ってきました。それを新しい座長GLICC代表鈴木裕之さんは、先生方と協力して、速やかにオンラインセミナーや定例会に切り替え,リスクマネジメントをしました。

★そして、彼の国際ネットワークで、機構の英語哲学オンライン授業やコンクールを行ったわけです。そして今度は、UCLAのリサーチャーと組んで、新たなるアクレディテーションを展開したのです。すばらしい!私が居残っていたら、こうはいかなかったでしょう。ハイテクオンチのお爺ちゃんでは無理なのです。

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★こういうときは、必ず聖学院が真っ先に協力してくれます。21世紀型教育機構の教育センターのリーダー児浦先生が大活躍です。そんなわけで、アクレディテーションは、PBLの授業などの教育活動全般の質をあげるためのエンパワーメントエバリューエーションですが、それを名実ともにやってしまいました。

★動画でモデル授業を撮影して、思考コードで検索できるシステムを今創っている最中です。いずれ、見ることができるでしょう。最初は機構加盟校限定ですが、そのうちに公開されると思います。

★おそらく、多様な若き見識者や技術者がコラボして行っていきますから、探究とかPBLとか多くのセミナーやコンサルティング業界のイベントの中でも突き抜けたコミュニティに発展すると思います。

★私は辞めたのですが、それでも鈴木さんは気遣ってくれて、ご意見番のアドバイスくださいと。ないよといいますが、それでも、こうやって情報を共有してもらえるので、ホンマオオト21で発信するくらいのお手伝いはしようと思っています。

★上記の聖学院のアクレディテーションを行いながら動画を撮影したものを拝見して、やはり聖学院は完全にスーパーエクセレントスクールにシフトしたのだと。

★コンサバ校が高級ガソリン車で、多様な革新的で成功している学校はハイブリッド車で、聖学院は、地球全体の幸せのために完全EVで走ることを実現したスーパー革新学校です。そのうち一気に宇宙船となるでしょう。機構の加盟校が、聖学院とシンクロしていることを、このアクレディテーションによって、次々明らかにされていくことでしょう。

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★本日のGLICC Weekly EDUも鈴木さんの発案と気遣いで、私に機会をつくってくれているわけですが、そこで聖学院のPBLの話ができたらいいなあと思っています。聖学院のPRというより、日本の教育がこの道をいくことはとてもよいことなのです。文科省もメディアも注目して、日本の教育の輪郭を描きましょうよというのが本意です。

★私は、授業のシステムをみんなで考えることが、教育の核心だと思います。ここから組織開発も、人材開発も、働き方改革も、部活も考えなければ俯瞰できません。掛け声だけの俯瞰や改革の話が、実現しないのは、授業にちゃんとスポットを当てていないから、痒いところに手が届かいのです。神は細部に宿るのです。もっとも授業は細部ではなく中核ですが。学際的対話の源泉です。

★本日の対話&トークの予定は次の通りです。

 1)選択者の価値観とのマッチングが大切 2025年、2030年、2050年、2060年を見据えて まずは2025年。
2)ケースメソッド、たとえば、開成、麻布、海城と三田国際、聖学院、工学院、静岡聖光学院、新渡戸文化、かえつ有明、武蔵野大の違い
3)女子校は次回 まだ気づかれていない和洋九段女子のすばらしさなど、この気づかれていないところを探すアプローチで幾つかの女子校をみていきたいと思います。

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2020年10月29日 (木)

新しい教育社会(17)首都圏模試教務陣とミーティング。パンデミック前の新たな動きに満足していてはいけない。はやくもポストコロナの新アイデア創出実現への気概。

★首都圏模試の教務陣とZoomミーティング。互いに提案をぶつけ、その差異を議論し、可能性を見出す。そして現実態を生み出す。そこにちょこっと私も立ち会えるので、ウネリを実感できます。

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★驚きのアイデアと実効性の高さへの気概に驚嘆しました。

★中学入試市場で、闘わずして、突き抜けてビジネスを展開するサバイブスキルは、どこでみな学んだのでしょう。

★もともとネットワークで結成された組織です。どんどんネットワークが増えるシステムが内蔵されているのでしょう。

★そういう組織文化を持続可能にする経営陣とスタッフの協働主観がすさまじいパワーを生んでいるのでしょう。1人ひとりの想いを大切にする協働性。ケミストリーは爆発的エネルギーを生み出します。

★それにしても、思考コードと思考スキルの進化が、IBのDPコアのような役割を果たしているのに感動しました。

★パンデミック前までの新たなウネリで満足せず、さらに新たなウネリを生み出すというのです。

★新しい組織の在り方、人間関係創出の方法を実装するコアである思考コードとスキルの新たなアイデアを堪能しました。ありがとうございました。

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新しい教育社会(16)サブカルの新たな風は学校広報にも影響する。聖学院がいち早くそこにシフト。

★昨夜、テレビ東京のWBSで、秋元康さんが登場。ポスト戦後のゲームマスターと称する論者がいるほどのエンタメ界の大物。AKB48の白石麻衣さんのオンライン卒業式を昨日配信して、それがものすごいチケット数を売り上げたことに対するコメントをWBSが求めたということのようです。

★要するに、その場で互いに近い距離で情熱を盛り上げていく環境が一変したことの実感を、氏が大切にしている少年少女に対するセンチメンタルな感覚を共感する方法が変わったのだと。だから、そこを受け入れて新しくしなければならなくなるだろうと。

★世界経済フォーラムの「ザ・グレート・リセット」にしっかり乗った戦略を考えているということのようでした。一方で、下記の本では、これからは、事務所に所属するのではなく、自分のやりたいことでファンを獲得していく、大森靖子さんの新しいサブカルがあるのではないかというサブカル批評もあります。

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★サブカル自体、私自身は素人なので、はじめて大森さんの動画をみてみたら、その独特な雰囲気に、なるほどオンリーワンなあなたにオンリーワンな私のアートを届けるよという戦略はすさまじいなあと。秋元さんのマスの心に響くものは何かを計算してそこにマッチングさせていくプロデュースとは違うなあと。素人ながら感じました。

★サブカルと経済、サブカルと政治は社会学や文化人類学、芸術文化人類学などにとっては、格好のテーマなのでしょうが、その実用的な領域ではなんといっても広告代理店が大きな影響力を持っているのでしょう。

★私立中高一貫校の広報も、電博のような大手広告代理店には大学のように資金力がでないのですから頼めませんが、そこから独立した代理店を活用するはずです。代理店同士も電博の影響を何らかの形で受けますから、サブカルの影響を受けざるを得ないのです。

★秋元型か大森型か。当然秋元型は、大森型を取り入れていきます。大森型もSNSで秋元型をとり入れることはするでしょう。

★ただ、大森型は破格の個性が必要です。秋元型は、その必要がないというか、それがなくても広告の力で販売してしまうパワーを持っています。ですから、広報=理想>現実という格差が生まれがちです。秋元型は、理想をもともとマスにマッチングさせるので、広報=マス理想=現実になります。

★私立学校は、ある意味オルテガの「大衆の反逆」的な観点があるので、マスの光と影の影の部分を払拭する建学の精神にコンセプトが適合されます。

★それゆえ、広報<建学の精神理想=現実とならざるを得ないのです。

★ところが、そういうストイックな広報を受験業界自体はしません。ある意味秋元型です。マスのハートは偏差値と大学合格実績です。ここに合わせた広報=マス理想=現実を推進します。

★さて、広報=マス理想=現実なのか、広報<建学の精神理想=現実なのか?

★大森型をふと考えると、SNSによって、広報=建学の精神理想=現実となり得るということですね。

★新手の広報戦略ということでしょうか。結論だけで申し訳ないのですが、聖学院が唯一これにシフトしているのは確かです。この件に関しては、2021年3月以降のどこかで、詳しっく論じたいと思います。

★いずれにしても広報=理想>現実だと生徒募集はうまくいかないということだけは確かです。

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2020年10月28日 (水)

プロジェクトの作り方(03)神崎先生の探究の方法。思考の内的連関法。②MMWの出現!

★神崎先生の思考の内的連関法について追跡しているわけですが、これは、クリエイティブシステム思考(相変わらず腹痛が痛いという表現で申し訳ないですが)のループの追加と削除の繰り返しを行うその過程を追っていると置き換えてもいいと思います。つまり、ポートフォリオではなく、ハワード・ガードナー教授の言うプロセス・フォリオかもしれません。

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★ポートフォリオという作品集をみたとき、実は見ているのは、1つはその背景にあるモノです。その作品ができる時代の精神や変化、影響し合った人間とその関係。その作品に投影されている感覚やときにはトラウマの転移の具合も。

★もう1つは、その作品の内的連関の形成過程です。これは、背景のモノと作品というモノを結び付け、それぞれ物象化してしまったモノどうしに息を吹き込み、モノからコトに変えて、個々の価値観やもののみかたを解体します。個々の自分の主観だと思っていること、絶対的な客観性だと思っていることを揺さぶります。クリティカルシンキングと呼ばれているコトだし、間主観と呼ばれる状況でもありましょう。

★しかしながら、わたしは、この作品と背景とその人の内的連関のすべての関係総体をつなぐ見通しがたったとき、内側から協働主観(間主観でもなく共同主観でもなく、つまりインターサブジェクトではなく、コラボサブジェクトだと表現したいわけです)が顕れてくるのではないかと考えています。神崎先生の学校の教師や生徒と行っているのは、この協働主観の果てしない物語だと思います。果てしない物語だらこそ、ここに希望があります。神崎先生が紡ぎ出していく事態(ものではなく)は、神崎先生という「私」であって、「私」以上の「私」です。つまり、「私」を超えた仲間との、また文献の向こうの他者との、時代を超えた無数の他者との、まだ見ぬこれからの未来の他者との、協働主観という「私」です。

★それはある意味、ZENにおける十牛図の過程そのものであり、最終的な境地に達するとそこには幸せが。。。いや、実はこの過程を歩めることこそそこにマインドフルネスが生成されるのだと私は思います。今世界はこの神崎メセッドの内的連関法が生み出すマインドフルネスを共有しています。グローバル・シンクロシニティと私は呼んでいます。ただ、それは内的連関法によって明らかになるでしょう。

★またまた、本間は何を血迷ったかと思うでしょうし、神崎先生も大迷惑かもしれません。しかしながら、私は「自分軸」とか「自分事」とかいう言葉(言葉自体は問題ないのです)で、十牛図の道行の壁になってしまっている。つまり、「自分軸」とか「自分事」の道行の本来性を物象化して未来を語りつつエゴの素描を共有している世界があるのも目の当たりにしているのです。

★そして、神崎先生は純粋にもそこに立ち臨んでいるのです。しかし、それができるのも、企業家/起業家として自分の足でこの地球に立っているからですね。制約されつつも自由な空間を自分で生み出すことができるポジショニングをゲットしています。もちろん、その「自分」は協働主観性を生み続ける関係性のストリングスであるわけです。響きとしての「自分」であるわけです。その「響き」をかき乱したり、防音装置を押し付けようとする行為に、神崎先生は権利の闘争をしかけるわけですね。

★物象化されきったモノ(人も認識も)に対話という息を吹き込み覚醒しようと必死になるわけです。あちこちで神崎先生のまわりでは協働覚醒が起きているわけです。もちろん、反作用も大きいのですが。というわけで、その内的連関法の軌跡をしつこく追跡しているのです。

★さて、前回の続きです。例によって神崎先生のトークとその私の解釈をいったりきたりします。

 「それは具体的には◯◯を対象としているということかな?それとも△△?」 
ここで「決まらない」と言い出すことがあるので、そのときはウェブを使って一緒に探ります。

★抽象と具体を往復するわけですね。このとき生徒によっては、演繹的論理と帰納的論理をたどっているということをメタ認知を発動している場合もあります。ここがメタ認知できるようになると、手放せるのですが、そこはそう簡単ではないから、リサーチや推理のプロセスを伴走するよと。これは、まだ協働主観ではないですね。伴走するよということです。その伴走について、神崎先生はこう語ります。


トークの中のキーワードを手がかりにCiNiiで論文を探してさっくり読んで(URLは生徒さんと共有)、「こういう論文があるね」「対象はこれくらい具体にするといいよ」みたいな話をしたうえで、「どんなのを研究対象にする?」と聞いてみます。そこで得たキーワードを加えてCiNiiで検索、の繰り返し。ここら辺までは、具体と抽象の行き来、ときに選択肢の提示くらいまでの問いかけ。この辺りから少しずつ介入します。

★文献リサートは複数の論文を読むのがポイントだということですね。これは、国際バカロレアのMYPのパーソナル・プロジェクトなども同様です。複数の論文作成者の視点の関係性を考えていくと、ズレや差異が見えます。あれっ?とかなるほど?ああ!となりますね。新しい関係性が生まれる瞬間。つまり協働主観が内側から響き始めます。ここまでくる、問いのやり取り、このプロセスフォリオを生み出す問いの創り方が重要であり、単に問いのつくり方が大事だなんて言うのは、要素還元主義的なお話なのです。神崎先生は、生徒がこういう発想を払拭して内的連関性の端緒を見出してきたところで、放置するのではなく、「介入」するわけですが、その点に関してこう語ります。

気をつけるべきは、こちらが決めないこと。生徒の内側から出てくる意志を尊重
昨日介入したときに投げかけたことを言葉にすると…
・解決策を妄想して先走っていたら原因分析を促す。自分の主観がまだ間主観になっていない場合、リフレクションをする
・コトの経緯や要素ごとの因果や相関といった関係性を整理し、どこに着目すると研究として成立しそうかを一緒に考える。関係を考えるるリフレクション 部分を全体にしてめた関係を創り出す。
・将来の志望を聞きながら研究の範囲を絞る。ここで研究の範囲と主観を結びつける
この方向だと迷走しそうだと直観したので、CiNiiで論文読んで確認し、軌道修正する。まだ、主観と間主観が主観よりなので、リフレクションのため別のエビデンスを見つけるためにリサーチ 主観より大きい間主観をみつける。
・生徒さんの話をもとにアナロジーをきかせて研究の方向性を決めるヒントを投げる。

★なぜ放置しないで、「介入」するかというと、内的連関の循環が変容しないままになると、物象化してモノ化してしまうからですね。閉鎖的循環へのリスクを回避するためです。この「介入」は、ある意味コーチングであり、ある意味ファシリテーションです。この両方を合わせた言葉がなかなかいいのがありませんね。

★神崎先生が「気をつけるべき」というのは、「介入」は「干渉」というネガティブな意味も含んでしまうので、そこを阻止しようという話です。干渉ではない介入ということを表現する言葉は何でしょう。私はMindMidWife(MMW)と名付けようかなと。

★「精神の産婆」という意味です。プラトンがソクラテスの問答法を産婆術と置き換えたのですが、その置換は問答法=産婆術ではなく、問答法<産婆術だったと私は思います。今でいう助産師さんのたとえですが、この仕事は実に尊いのです。孫が誕生して、その重要性についてひしひしと感じ入りました。

★私たちは子供を創ることはできません。でも世に出ることの手伝いはできます。助産師さんは、生まれる前、妊娠期間、出産、産後のケアまで余念がありません。子供の自然な成長を見守るわけです。放置しておくとたいへんなことになります。でも干渉しすぎると体調を崩します。母体も危うくなります。

★ここからすでに協働主観性は始まるわけですし、この人類が誕生した時から協働主観性は連綿と続いているわけです。助産師さんから離れた後、子供たちは放置されているとこれまた大変になります。今度は教師に引き継がれます。学校の先生とはもちろん限りません。神崎先生のような師がいるのです。

★神崎先生はその意味では、ソクラテスを超えた問答法であるMMWを行っているのだと。そして、それを広めているのだと。(つづく)

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2020年10月27日 (火)

プロジェクトの作り方(02)神崎先生の探究の方法。思考の内的連関法。①

★神崎先生のオーセンティックな探究の方法についてのつづきです。昨今。探究の話題が溢れていますが、探究なのに教材があるという不思議な現象があったり、アクションのベルトコンベアー的なパッケージの配列だったりして、生徒の頭や内面の中で、多様な要素が今までにないありかたで関係し合うことがないというケースが目立ちます。要するにクリエイティブシステム思考が内的連関を生み出していないのです。内的というと形式がないという二項対立でとらえられがちですが、カブトガニは殻だけでは生きていけません。内蔵だけでも生きていけません。その両方が内的に連関しているから生存できます。

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★かくして、言葉は実はデジタルなので、この内的連関を分断する表現になります。言葉が心身化あるいは体験から経験化する必要があるのは、この分断をつなぐためですね。では、言葉と形式と内容をつないで心身化するにはどうしたらよいのでしょう。それは、IBでは好まれ、日本の教育では嫌われる思考スキルが必要なのです。

★言葉や形式や内容や心身、スキルは、人間関係総体の中の出来事です。バラバラの要素としてのモノではなく、内的連関という差し当って表現するしかないコトそのものなのです。

★そんなことを神崎先生は、常に考え、生徒といっしょに探究の方法を錬磨し創造しているのです。たとえば、神崎先生はこう語ります。

 1)自力でいける生徒さんは担任の先生にお任せして、生きの良さそうだったり本気でお困りだったりする生徒さん(のリサーチデザイン)を私が引き受ける感じ。私はCiNiiを準備して、生徒さんに自由連想でまずは話を聴くところから。どういうところで躓いているのかを話してもらいます。

★この始まりからして、思考スキルは発動しているのです。自由連想というのは、抽象から具体へ拡散、あるいは違う抽象をあるいは具体を連射的に想像したりするスキルを生徒と共にするというわけですね。この連想で広がったものを、さらに比較・対照するスキルも同時に活用しています。

★この連想の広がりが拡散しない時、躓きがうまれます。それはしかし、同時に疑問なのです。どうしてそこで止まるのか?躓きが多ければ多いほど、そこが探究の糸口になります。神崎先生はさらにこの躓きについてこう語ります。

2)「◯◯はどういうことかな?」「それは◯と△と二つ意味が割れそうだけど、どちらだろう?」その上でお悩みの要点をまとめて共有。

★具体と抽象、比較・対象、カテゴライズのスキルが発動しています。しかし、ただスキルだけ発動しても、内的連関は起こりません。具体と抽象にしても、比較・対称にしても、カテゴライズにしても、いろいろな要素がでてきます。何かピースがたりなくて、うまくつながらなかったり、分類できなかったりします。

★ですから、つなごうとするわけです。新たなピースを探し始めるのです。ここで内的連関が生まれてきます。とはいえ、そう簡単に生まれてはこないののです。そこで、また神崎先生はこう語ります。

3)抽象度が高いリサーチクエスチョンや論点の場合は、研究できるくらいまで具体的に聞きます。「それは具体的には◯◯を対象としているということかな?それとも△△?」 

★この具体的な問いの連射は、具体的なものどうしの比較・対照によるズレや差異が生まれます。アレエッ?と。

★こんな感じで、ズレや差異を、文献リサーチという自分の主観を抑えた分析によって生み出していきます。それが自分でも気づかなかった深い主観であるのですが、それは、この多くの他者が書いた考え方の差異の追跡によって生まれてきます。

★自分の主観を捨て、他者に耳を傾ける時、今までの主観を超えた主観が顕れます。しかし、その主観は自分ひとりの世界から生まれてきたものではなく、まだみぬ作者という他者や目の前の神崎先生という他者との協働によって生まれ出ずる「協働主観」なのです。

★この協働主観が、希望する大学とシェアできたとき、そのコミュニティの中では客観性を帯びてくるのですが、その形式は協働主観という内容と内的連関をしているわけです。この結びつきは、しかし、スキルという脳を刺激する電極によって成就するのです。

★かくして、神崎先生の探究の方法は、自由連想で拡散した豊かなマテリアル(そうマテリアルはすでに主観なのです)を現実態に移行するフォームによって展開していきます。しかし、そのマテリアルとフォームは思考スキルによって刺激を受けて内的連関を生成します。この思考の内的連関がなければ、主体性とか自律だとか、イニシャチブだとかいう行為はうまれてこないのです。

★いくら探究用の教材を精読したところで、その内容を理解して終わりです。探究とは新たな差異を見つけつないでいくにはいかにしたら可能かという問いを生み出す行為です。理解してそこで立ち止まるのは、「お勉強」というものでしょう。(つづく)

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2021年変わる中学入試(15)静岡聖光学院 2025年問題を見据えた男子校

★静岡聖光学院。今回のパンデミックで最も早くオンライン授業に動いたカトリック男子校。保守的と思われているカトリック学校のイメージを払拭した功績は大きいですね。もちろん、時代を切り拓くNew Power Schoolとして他の追随を許さないでしょう。今12歳の小6は、2025年問題を迎える時は、17歳です。ここから大学入試がまた大きく変わります。超高齢化社会になっています。ICTのサポートは加速しています。

★ですから、まだ誰も信じていないでしょうが、教育においてもCBTはあたり前の世の中になっています。もしなっていなかったら、日本の教育はたいへんなことになっているでしょう。そのようなクライシス(パンデミックで経験済みです)に備えるために、同校は海外大学への道も切り拓いています。オンラインの海外大学は増えているでしょう。海外インターンシップもオンラインでできる機会も増えています。国連やGAFAのような企業は日本にも拠点があります。リアルにはそこでインターンシップを行い、海外とは巨大VR空間でやりとりをします。やりとりにC1英語は重要です。同校の英語教育やグローバルな活動がそこを目標にしているのには、そういう理由があります。

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★体験ができなくてどうのこうのと、今は言う人が多いでしょう。しかし、体験の時代から経験の時代に移行するわけですから、そこに備えなくてはなりません。また本間はわけのわからないことを言うといわれるでしょうが、体験と経験という2つの言葉を持っている日本語は優れた言語ですが、最近では、その差異を考えることをしなくなりました。

★もちろん、ネット上ではたくさんでてきます。しかし、日常生活では、すっかり体験=経験でしょう。そして、体験の意味に回収され、差異が消失しているのが現状です。今回のパンデミックで、ダボス会議の座長クラウス・シュワブ博士なども哲学の必要性を説いたり、GAFAがリベラルアーツを重視するのは、こういう視点を大切にしているということなのです。彼らが日本のガーデニングに興味を持つのは、こういう繊細な差異を言葉で表現できるからです。それゆえ、繊細過ぎて、世界言語になりにくいのですが。

★いずれにしても、日本人は哲学が苦手だと言われますが、日本語自体がすでに哲学的に差異を重視(ハイデガーが尊敬し恐れた九鬼周造の哲学が象徴的です)しているので、誰もが哲学を日常してきたのです。しかしながら、それを忘れてしまったのだから回復することが必要です。どうやって、C1レベルの英語によってです。言語の差異が、鏡になるのは、リサーチスキルの基本です。英語の学びも、ある意味リサーチ(研究)ですよね。

★ともあれ、そういう未だ多くの人が気づいていない未来を見据えて動いているのが静岡聖光学院です。どうしてそんなことができるのか?それは星野校長をはじめ同校の先生方は、世界を経めぐって情報を収集し分析しているからです。リサーチプロジェクトは同校の十八番です。

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★そんなわけで、オンライン授業を真っ先に行えたわけです。そして、この環境はますます発展し、テレワークとリアルな授業を同時にできてしまうパラレル・ハイブリッドオンラインPBL授業の環境を今準備しています。クラウド・ファンディングと寄付の両方で資金調達をしています。各教室がミニ放送局になるということでしょうか。

★そして、入試でもオンライン入試を行ってしまいます。首都圏ではオンライン入試は自粛ということらしいですが、学校法規上そのような規定はないので、未来を見据えて早速やってしまうわけです。もちろん、首都圏では、私立中高一貫校が多いので社会的混乱を引き起こす可能性があったり、文科省との関係でいろいろたいへんなのですが。

★ミネルバ大学のように日本の大学が動けないのも、大学の意志の問題というよりは、他の問題の方が多いですね。

★その点、静岡聖光学院は立地的に有利です。不思議なものです。明治維新の政府の智慧は、この静岡の地から生まれたものが多いですよね。新技術の軍事、北海道の酪農、横須賀ドックという海上貿易をサポートする拠点づくり、起業家精神、私学の系譜のルーツの1つをつくった江原素六という人材輩出などなど。

★21世紀のNew Power Schoolのモデルも、静岡は生み出そうとしているかのようです。いや、生み出してしまっています。

★2018年12月 8日 (土)、このホンマノオト21で次のような記事を書きました。「New Powerの学校×教師(04)静岡聖光学院 最先端のNew Power School」がそれですが、そこで次のような表を示しました。

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★同校にとっては、迷惑な話かもしれませんが、私の預言はあたったといえるかもしれません。すべての項目が実現しているからです。同校は寮があります。中高時代から海外大学への予備練習として大いに推奨します。プログラミングのオンライン入試まで実施すようになっているのは、その象徴ですね。

★よく業界関係者から、本間さんはなぜ静岡聖光学院をそんなに評価するのといわれます。同校が21世紀型教育機構に加盟したからですかと言われます。たしかに、それもあるでしょう。三田国際の預言もあたっているのは、改革当初から立ち会っているので、ディープな情報を共有できるからというのもあります。

★しかし、静岡聖光学院は、私自身が大学時代に同校のたくさんのOBに影響を受けたからというのもあります。彼らは経営者になっていたり、大学教授になっていたり、幼稚園を経営していたり、教師をやっていたり多才です。

★同校が21世紀型教育機構に加盟する前夜、私がかかわるかもしれないということを最初に相談しにいったのも、大学時代の同校OBの友人Mでした。Mには、本間がかかわるのは歓迎だが、やるからにはちゃんとやれよと念を押されました。大学時代、Mの自宅に遊びに行ったとき、真っ先に車で連れて行かれたのが、静岡聖光学院でした。母校を心の底から誇りに思っているのです。そこから眺める景色の柔らかいグリーンな光の世界は今も目に焼き付いています。

★ほかに4人のOGもいっしょにいましたから、それはもうワイワイガヤガヤでした。その明るく希望に満ちた雰囲気は、もちろん今も同校の特色です。ちがっているのは、当時彼らの口からでてくるのはサッカー部の話でしたが、今はラグビーが注目を浴びていますね。

★いずれにしても、静岡聖光学院は、首都圏に近い私立中高一貫校で、12月から入試が始まるため、学内はハイテンションで動いています。ワイワイガヤガヤは、同校の伝統です。そして、このワイワイガヤガヤが、パラレル・ハイブリッドオンラインPBLの中核でもあります。

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2020年10月26日 (月)

プロジェクトの作り方(01)神崎先生の方法

★今回のパンデミックで、世界はだれしもが、1人では何もできないということを身に染みて了解した。グローバルシンクロシニティと私は呼んでいる。この1人で生きていけないという意味は、何も仲間とワイガヤをやることだけを示唆しているのではない。

★自分の内側に世界と共感できる根源的問題を探し出し、それを解決する生きる道のビジョンを映し出す、投げ出すというプロジェクトを創り出すことを共に行っていかざるを得ないという境地になったコトをグローバルシンクロシニティと呼んでいる。

★共にといったとき、リアルな他者とは限らない、文献の向こうにいる他者である場合もある。文献を読むというのは多様な他者と対話することであるからだ。実は、はるかに文献他者との出会いの方が多い。それこそがあとで述べるが、経験である。読書体験と読書経験は違う。読書体験は、文を読んでいる自己成長でしかないが、読書経験は他者との間主観的創造物としての物語を編集することである。

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★最近、こんなことを考えていたら、神崎史彦先生が、さらりとfacebookで、とはいえ長文でつぶやいていた。読んで驚いたのは、まさにこのグローバルシンクロシニティの現象の中で、根源的な問題を見出し、それを解決するプロセスを創造して、なおかつ実現する現実論を生み出すプロジェクトの作り方を、神崎先生は、すでに高校生と協働しているということを書いているのである。

★このmyプロジェクトは、ourプロジェクトに変容し、最終的にworldプロジェクトに変容する。ここで重要なのは、my→our→worldというのは、リニアーではなくて、自己の中の循環的拡大なのである。私という自己は、間主観的存在で、その間主観性が世界性と共感できるかどうかというプロセスを演繹的でもなく帰納的でもなく、つまりdeduceでもなくinduceでもなくabduceによって、deとinをabとして媒介する。

★だけど、deはabとinを媒介する。そして、inはまたabとdeを媒介する。それぞれの前提にクリティカルシンキングをし、ロジカルシンキングでそれぞれの論証の矛盾やズレを見出していく。論証とは、要素の関係の効果をシンプルに最大化することである。

★しかしながら、問題は、なぜそんな媒介のズレを見出せるのか?

★そこが見いだせない限り、リサーチデザインあるいはリサーチスキルは、カット&ペーストレベルになるし、実体験主義になり、経験創造にならない。経験とは、実は見えないことを物語に編集するコト。古代の歴史も未来の歴史も物質の化学反応結合も実体験することはできないけれど、物語の編集経験はできる。この物語は、de-ab-inの思考の循環によって、螺旋的にあるいはマインドマップ的にあるいは分子結合のようにあるいは量子のようにシステム化される。そして、この循環で生まれてくる思考こそ、ロジカルシンキングだし、クリティカルシンキングだし、クリエイティブシンキング。デザイン思考もアート思考も、このde-ab-inの循環が生み出す特殊な思考形態。文字が絵になり、声が音楽になるようなもの。

★神崎先生のリサーチデザインやリサーチスキルは、以上のような一見私の独断と偏見の発想と親和性があると勝手に思っている。具体的にはまたいずれ説明したい。(つづく)

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2021年変わる中学入試(14)海外大学へそして偏差値至上主義の無化へ加速 三田国際のデュアル・ディプロマ参入の意味

★2015年、文化学園大学杉並(文杉)がカナダのブリティッシュコロンビア(BC)州と提携してダブルディプロマ(DD)コースを開設。画期的でしたが、その当時は、文科省主導で国際バカロレア200校計画が動いていましたから、騒いでいるのは私ぐらいでした。しかし、DDコース一期生18名の海外大学、ICUを含め目覚ましい大学合格実績に、いっせいにメディアは取材を開始し、文科省はモデル校として認定するわけです。

★だいたい私は3年くらいはやいので、最初は揶揄されるのですが、広まると、忘れ去られます(^^汗)。まあ、それはともかく、IB以外に海外大学へいくロードマップは、複数揃いました。聖学院や開成、海城のように、自前で海外大学に行ける学校もあります。

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(写真は、一部、文化学園大学杉並のサイトから。文杉のDDコースの授業は世界につながっています)

★そして、いよいよ三田国際がデュアル・ディプロマに参入します。同校サイトにはこうあります。

 高校インターナショナルコース アドバンスト(ICA)では、2021年度より、西オーストラリア州教育省と提携したDual Diploma Program(デュアルディプロマプログラム)を導入する運びとなりました。高校在学中に西オーストラリア州のカリキュラムに則った授業を履修し、卒業時に本校の高校卒業資格に加え、西オーストラリア州の高校卒業資格(WACE)を取得できるようになります。オーストラリアとのDual Diploma Programは、日本で初めての試みとなります。

★三田国際は、東大主催の英語弁論大会で優秀な成績をあげたり、つい先日もe-スポーツで、強豪のN校や開成をぶち破り優勝したり、偏差値も筑駒を抜く勢いです。とにかく英語分野やテクノロジー分野で素晴らしい実績を出しているわけです。そして、大学合格実績も改革前の戸板女子に比べればはるかにすばらしいのです。

★しかし、東大や海外大学ランキング100位以内の大学にはいるまではまだそこはアピールしていないのです。贅沢な話です。しかし、オーストラリアとのディプロマを提携したということは、まず世界大学ランキング100位内は2023年の卒業生から出るということを意味します。いや来年から出始める(中学改革一期生が卒業)ので、さらに2023年にはたくさんということでしょう。

★このような海外大学へという流れは、今後どんどん大きくなっていくでしょう。三田国際がやるのならと。しかも海外も日本の学校と組みたいのですね。その理由は、ここではっきり言うと炎上するので、いえませんが、とにかく日本の学校と組みたいのです。IBが日本と組みたかったのもその理由です。理由は3つあるのですが、そのうちの一つの象徴は、エジソンのサポートをしたのは日本人で、エジソンの座右の銘は新渡戸稲造の「武士道」だったということでいかがでしょう。他の2つは、ここでは言えません(汗)。

★そして、海外大学へいくロードマップは、自前で行く以外には、提携ということなのですが、その種類は3つあります。それぞれのロードマップを使う学校を並べてみます。国際バカロレアもそうですが、認定校と候補校合わせて(PYP/MYP/DPの延べ数)が、現在150校を超えていますから、ここでは省略します。

1)「ダブルディプロマ」あるいは「デュアル・ディプロマ」校

文化学園大学杉並

神田女学園

国本女子

麹町学園女子

三田国際学園

2)「ラウンドスクエア」認定校 IB以上の教育の質を有している世界の私立学校のコミュニティ

玉川学園

八雲学園

工学院大学附属

啓明学園

3)「UPAA 海外協定大学推薦制度」加盟校

神奈川大学附属

啓明学園

工学院

桐朋女子

東洋高等学校

日本大学(日吉)

横浜清風高等学校

和洋九段女子

★海外大学への道はかくして今まで以上に広がりますが、もう一つの三田国際の意味は、中学入試における偏差値至上主義を崩壊に導くということです。偏差値は統計的な数値ですから、偏差値がなくなるということではなく、偏差値だけで学校選択をすることは意味がないということを言いたいだけです。

★とはいえ、上記の学校は、文杉や三田国際のように、海外大学だけではなく、国内大学の実績も上がりますから、偏差値もあがってしまいます。

★結局、入学時の偏差問が6年後の卒業時に5以上上がるところはどこかというのが学校選択の潮流になるというパラドクスということですね。

★ただ、海外大学も射程に入れた学びは、思考力重視、創造性重視、社会課題解決提案型活動が中心になっていくので、それで偏差値があがるのであれば、喜ばしい限りではありませんか。

★偏差値の質の時代ということですね。

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ノートルダム女学院(13)グローバル英語コースは関西学院大学と高大連携プロジェクトを行っています。②

★いよいよプレゼン30分前。この2日間連続のプログラムの中で、プレゼン30分前の生徒の姿は実に心地よい学問的な誠実な世界を創りだしていました。限られた時間が迫る中で、最大限のアクセルを踏んで、集中し没入している彼女たちの世界がそこに広がっていたからです。

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★ここにきて、ようやく私はアドバイザーやノートルダム女学院(ND)の先生方と話す時間がとれるのです。それまでは、みなはらはらドキドキしています。アドバイザーはファシリテーターという側面ももちながらフィードバックに集中しているし、先生方は言いたくなるのをがまんして見守っています。

★そんなときに話しかけたら、集中はきれるし、先生方も話したいことを堰を切ったように話し出すでしょう。生徒のみなさんの議論や思考の妨げになるでしょう。

★しかし、この時間帯は、学生の方々も先生方も生徒の活動を手放しています。横で話していても、生徒は気にならずに没頭しています。

★1人の学生の方は、このプロジェクトの意味を教えてくれました。「カット&ペーストのような調べ学習とは全く違い、リサーチスキルを生み出していくことがポイントです。1つのテーマについて、文献を調べていく過程で、あれっ?と疑問がでてくるので、その疑問についてまた文献を調べていきます。価値観や意見、データの提示などが違っている時もあるし、同じエビデンスを真逆の解釈をしているときもあります。そのとき、自分の考えでこうだと決めつけずに、そこを抑えて、さらにどうしてそんな違いがあるのかまた調べていきます。本当は、インタビューだとかアンケートとかフィールドワークとかがあるのですが、今回は限られた時間とスペースなので、文献というマテリアルを使って情報分析というリサーチスキルを活用することを目的にしています」と。

★明快に述べられて感動していると、「今回、テーマは私たちアドバイザーの研究しているものなので、私たちもリフレクションしながら学べるます」と。

★調べ学習というと、どこか客観的な事実や人の考えの羅列のように感じられるのですが、リサーチスキルとなると、客観的姿勢ではあるけれど、疑問という自分の内側からでてくる知の欲求に沿って文献の選択が行われていくというプロセスのクリエイティビティがあることに気づきました。

★關谷教授にも少し話を聞くことができました。関西学院大学の国際学部の学生は、いろいろな国に行って活動するということです。国連でインターンシップを経験する学生もいるということです。たんなる留学というのではなく、それぞれの国でそこの最適な何かを見出しながら社会課題に向き合う経験をしてきている学生が今目の前にいるということでした。

★教授自身50カ国弱の国々で活動されてきているということです。このような仕事や研究ができるのは、企業というポジショニングではなかなかできないわけで、学問というのが、もちろん大変で誰でもできる仕事ではないからこそなのでしょうが、世界を行き交う知のパスポートであると感動しました。

★栗本校長も、關谷教授のこのような知の力を、ノートルダム女学院の生徒だけではなく、もっと広くシェアできるようにしていきたいという夢を情熱的に語ってくれました。目の前で知の竜巻を生んでいる生徒も学生も、そういえばあのZ世代です。たしかに、この世代が生み出す未来には希望があるなと感じ入りました。

★そんな話をしていると、宗教科の山川先生がニコニコしながら、「いつもとは違う生徒の深い思考作業に感動しました。ここまでやれるなら、授業でももっとやれるなあと思いましたよ。複数の文献をどうつなげていくか論理的な思考の重要性が明確になったし、同じ文献を読んでも、どういう論拠を描いていくかは、生徒によって違うんです。なぜ違うかというところは内面の奥深いことなので、そこは丁寧に授業が展開できそうです」と。

★今回のプログラムのオーガナイザーを務めていた霜田先生(ND教育開発センター長・社会科)も、山川先生と同じようにテンションがあがっていました。お二人ともPBL型授業の推進者ですから、今回のプロジェクトマネジメントのプログラムには何か共感共振共鳴するところがあったのでしょう。

★霜田先生は、IBのワークショップショップなど多くの外部セミナーでもリサーチをしています。ですから、IBのATLスキルのような視点はやはり重要だと。特に、今回の情報分析スキルである關谷教授のスキルモデルは、大学レベルなので、IBのATLスキル以上に深い思考をたどることができるのではないか、ふだんの授業で工夫できないかと頭が回転し始めていました。

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★プレゼンは、白熱していました。リハを行う時間はなかったので、ぶっつけ本番でした。でも、それがかえってよかったですね。生徒がその場で必死に考え論理を駆使する過程が可視化された感じだったからです。

★生徒は、話すという行為がこんなに考える行為なのだと実感していたのではないでしょうか。關谷教授が、このような体験がこれからのみなさんにとって善き財産になるとコメントをしていましたが、なるほどと合点がいきました。

★帰り際、NDの言語技術を担当している北村先生が、「全体を通して、生徒がここまで挑戦できるのだと改めて確認できました。今来年のカリキュラムをアップデートしたばかりですが、さらにリファインすることに決めました」と。

★詳細については、来年のお話なのでフライングになりますから、ここではまだ語れませんが、かなり興味深い話です。北村先生は、カナダ、ニュージーランド、フィンランド、アメリカなどのランゲージアーツのカリキュラムの比較研究をしながら、独自の言語技術のPBL型授業用のカリキュラムを創っています。学界でも活躍しているほどです。

★そうそう、心身の根源的存在問題を保健体育のPBL授業で展開している三井先生は、いつもとは真逆で、今回は終始無言。しかし、私にこれよとたくさん情報共有をしてくれました。確実に何か深いことを考えている瞑想状態にはいっているなあと感じました。

★理科の田中大先生もすでに、着々と自身のPBL授業で展開しようという静かな情熱が身体中からあふれていました。田中先生の観察のプログラムは、今回のリサーチスキルと重なるところがあるので、すぐにピンと来たのでしょう。

★生徒だけではなく、そこに参加するメンバーみんなにそれぞれ気づきや刺激を与え、そこに知の竜巻を生んでいた。そんな感じのプロジェクトでした。すてきな機会をありがとうございました。

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2020年10月25日 (日)

ノートルダム女学院(12)グローバル英語コースは関西学院大学と高大連携プロジェクトを行っています。①

★昨日、今日と2日間、ノートルダム女学院の高2のグローバル英語コースの在校生は高大連携プロジェクトを実施しています。連携大学は、関西学院大学で、国際学部国際学科の關谷武司教授とゼミ生が訪れています。

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★栗本校長と關谷教授の出会いから始まったプロジェクトで、もう4年目だそうです。例年であれば、在校生が関西学院大学まで訪れ、宿泊探究活動になるところですが、今回のパンデミックの件もあり、今年は大学生が訪れたようです。

★チームに分かれ、国際問題について1つテーマを絞り、さらに問いをつくって、それについて調べて、文献やインターネットでデータやエビデンスを見出し、論拠を組み立てていくグループワークをしています。アドバイザーは、關谷ゼミの大学生です。最終的には、本日の午後からプレゼンテーションとなります。

★關谷教授は、様々な研究をしていますが、国際社会の課題を見出し、それを解決する方法を学生と研究し、実際にボランティアで東南アジアなどにも出かけて社会貢献会活動もしているようです。その際、国や自治体、市民などとも交渉して巻き込んでいるようです。

★すなわち、国際関連のプロジェクトマネジメントを行っているのでしょう。学生の進路も国際関係の仕事が多いようです。

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★本来であれば、テーマを絞ったり、問いをつくったりする作業から行うのですが、2日間しかありません。予定された時間は12時間くらいです。もっとも、昨日は学校から帰宅して夜を徹してZoomで議論が続いたようです。20時間くらいは費やしているのかもしれません。

★IB(国際バカロレア)のEE(エクステンド・エッセイ)は、40時間で8000文字を書き上げます。今回のプロジェクトは時間的にはその3分の1~2分の1しかありませんが、チームで協働しながら行っていきますから、EEやTOKレベルの批判的・創造的思考が展開しています。

★それもそのはずです。テーマや問いは、關谷ゼミの学生の皆さんの研究テーマを追跡するところからスタートするからです。大学生の研究テーマを取り扱うのですから、ある意味、IB以上の質的展開です。

★とにかく、議論は白熱していました。テーマに関しては、ここではちょっと公開するのは差し控えようと思います。かなりディープだし、万が一トランプ大統領が目や耳にすれば、あまりに学問的な誠実さと真理の追究の正しさに悔しがり、反撃されるターゲットになる可能性があります。それほど、世界にとって重要なテーマについて考え抜き、議論が進んでいるのです。

★エビデンスの不足、論拠が甘いなど、アドバイザーにフィードバックされ、そのたびに調べ直し、議論し直しています。

★たんなる調べ学習ではないのです。大学生に事実の羅列では論の展開にならないよとフィードバックされ、事実の背景に何があるか文献で根拠づけしながら、論拠を作成していきます。

★ファクトとオピニオンという単純な論理ではなく、ファクトがフェイクであるかもしれないし、オピニオンを支える根拠の正当性の証明もしなくてはならないようです。

★リサーチスキルの研鑽がつまれている感じです。ファクトやオピニオンを支える根拠などの信頼性・正当性を問うクリティカルシンキングも養うことになっています。これから行われるプレゼンは、そのクリティカルシンキングのプロセスの中から誠実に生まれてくるクリエイティビティがどんな感じになっているのか楽しみです。

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工学院インパクト(16)チームSCTのクリエイティブ・コア・ミッションが私たちの希望。①

★工学院大学附属中高のチームSCT(スーパー・クリエイティブ・ティーチャー)のクリエイティブ・コア・ミッションがすてきです。学校もイノベーションを生み出す時代はとっくにきていますが、なかなか進んでいないように見えます。それはなぜでしょう。クリエイティブ・コアミッションがないからです。ところが、工学院ではそれが誕生し、根付き始めました。

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★イノベーションが広まる「イノベーター理論(1962年)」で親しまれているスタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)の理論は有名です。しかし、産業構造が20世紀末には変わってしまったので、ジェフリー・ムーアは、キャズム論を加えて塗り替えました。

★ロジャーズ教授は社会学者です。ムーアはコンサルタントで、経済的視点で展開しています。したがって、私立学校の教育イノベーションを語る時、ジェフリー・ムーアの考え方が採用されることが多かったのです。

★しかしながら、多くの学校シンクタンクや教育コンサルタントは、時系列の普及カテゴリー(イノベーター→アーリ―アダプター→キャズム→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガード)のシェアに注目するだけで、その先を論じません。あるいは企業秘密にしているのかもしれません。三田国際のようにこの理論も参考にしながら、急激に教育イノベーションを果たし、生徒獲得戦略に大成功を収めているところは、この普及カテゴリーの先をしっかり学内で共有しています。

★それは、ジェフリー・ムーアの「コア」と「コンテキスト」のマトリクスです。この理論は、ムーア自身の本で展開されていることですから、セオリーをきちんと理解しているわけですね。

★工学院も同じスタンスですが、「コア」と「コンテキスト」をもう少しわかりやすく「コア」と「ルーチン」と読み替え、「コア」をクリエイティブ・コアミッションとマーケットニーズコアミッションに分けています。もっと簡単に言えば「本質」と「実用」です。

★三田国際は、このコアの部分は完全に自前です。「コンテキスト」つまり「ルーチン」の部分は外部ネットワークと連携します。丸投げアウトソーシングはしません。工学院も、ルーチンの部分は三田国際と同じです。しかし、コアの部分は少し違います。

★三田国際はコアの構成要素である「本質」と「実用」を明快には分けていません。三田国際の場合は、「本質」=「実用」=「学問」ですからその必要がないのです。立ち上がり当初は、一部連携もしていましたが、改革2年目からは完全内製化にシフトしました。

★工学院は、「本質」と「実用」は分けています。というのも、「実用」のコアミッション部分はやがて「ルーチン」に転換していきます。ですから、このコアミッションの「実用」の部分は、はじめから連携によって運営していきます。

★しかし、「本質」つまりクリエイティブコアミッションのところは、完全内製化です。ソフトパワーを生み出す拠点を自前で確保しているのです。ここは「TTP(徹底的にパクる)」をしないところです。

★おもしろいのは、クリエイティブ・コアミッションの最大の拠点は、高2のグローバルプロジェクトです。他校にない学年全体で取り組むプロジェクトで、運営には外部ネットワークと連携しますが、企画そのものを生み出す部分は教師と生徒ががっちり協働します。

★ケンブリッジインイングリッシュスクールやラウンドスクエア、UPAAなどのコアミッションの連携もしますが、これらを統合するグローバルインテリジェンスは、完全自前です。教務主任とカリキュラムマネージャーなどが知を創出しています。

★それから普段のPBL授業の部分は、田中歩教務主任が若手教師のプロジェクトチームSCTを自然な感じで生成し、自主活動をしています。田中歩先生との長い付き合いの成り行きで、私もSCTのコアミッションの実用部分までは立ち会いますが、クリエイティブ・コアミッションは、完全にSCTチームが内製します。

★田中歩先生が英語科主任時代に、やはり当時のチームメンバーと創出したのが、「思考コード」で、今では中学入試でも別のカタチで広まっていますね。そこも、私は立ち会う機会を頂いたのですが、クリエイティブ部分は、完全に先生方が創出していきました。

★そして、今はSCTチームメンバーが、「興味関心を生み出すパターンカード」を創ってしまいました。昨日、この自作のカードを使って、柳田先生の中1の社会の授業を分析して、実用性を検証していきました。ワクワクしますね。

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2020年10月24日 (土)

GLICC Weekly Edu Youtube限定公開配信 入試文化から世界を見る・観る・診る・魅る(01)はじまりました。20%は本音オピニオンです。

★GLICC主宰鈴木裕之さんとYoutubeでポストコロナ時代の教育についてトーク配信始めました。今のところGLICCスタッフの手作りスタジオなので、限定公開で、ひそっとやってます。

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★それにしても、鈴木さんの俊敏力というのはすさまじく、先週の金曜日に対話しているうちに、言いたいことは公開しようということになりました。二人ともブログで発信していますが、その背景や本音のオピニオンは文章では誤解をまねくこともあり、寸止めなので、そこをもう少し広く共有していこうと。

★まあ、年内にやることになるのかと油断していたら、機材を買い込んで設定したから、さあやりましょうと。私のような口先だけでのアイデアではなく、実行力あるアイデアの持ち主が鈴木さんです。教育界の元祖起業家だけでのことはあります。

★さて、小学校入試、中学入試、高校入試、大学入試という日本社会の入試文化を斬るという文化人類学的社会学的法哲学的心理学的などなど文化論といのがこのチャンネルの特色になると思います。そして、その入試文化の日本の情況と世界の情況をクロスさせながら語り、情況だけではなく、オピニオンも語っていきます。最初のうちは、静かにオピニオンは20%くらいです。

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★オピニオンはどういいう感じででてくるのかと?たとえば中学入試の情況についてダイレクトに学校選択や合格のための学び方を話すのが80%になりますが、インダイレクトにそこからみえる(見える・観える・診える・魅える)ことを語る時20%オピニオンになります。本音ということですね。

★今回は、パンデミックによってクローズアップされた「Emotinal, Physical, Social」とそこをかき乱す「fake news」がもたらす世界同時的(グローバル・シンクロシニティ)痛みを中学入試の準備で解消するサバイブスキルを身につけることができるというオピニオンを海城と開成の国語の物語の入試問題を通して語りました。ダイレクトな合格の学び方として、思考コードでB2思考を身につければよいこと、そのためには思考スキルを3つくらい組み合わせる話をしましたが、インダイレクトには 、聖学院のような思考力入試という新タイプ入試では、従来の成長物語と違う心理学的な自己変容の局面を生徒と一緒に考えていくことになるだろうとC軸思考の実装の重要性を述べました。

★文章で書くと小難しいし抽象的なのですが、Youtubeで鈴木さんとウダウダ対話しているとわかりやすくできるなあと感じています。

★今春は、海城と開成とそのほかの学校でも、朝比奈あすかさんの小説が使われています。今後も活用されるので、読まれるとよいと思います。そのとき心理学的なアプローチと社会学的なアプローチで読むと、ダイレクトな受験勉強からインダイレクトな豊かな生き方をつくっていくサバイブスキルを身につけていくことができます。

★この多様なアプローチをする学び方は、IB(国際バカロレア)では、当たり前です。GLICCでは鈴木さんも私もこの学びについてはリサーチをして、実際に活用しています。特に鈴木さんはIBジャパニーズなどのアドバイザーでもあるので、当然です。

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★そんな学び方の世界標準への視野が広がったところで、我らが盟友アレックス・ダッツン先生の英語で哲学授業の話がでました。鈴木さんが座長を務めている21世紀型教育機構で、英語で哲学対話をするオンラインセミナーをアレックス先生が行ってくれています。この模様は21世紀型教育機構サイトで動画になって公開されています。実に頼もしいZ世代が同機構の同士校から育っています。

イエール大学の助教授で起業家の成田悠輔さんが、日経の「やさしい経済学」で、「学歴に意味はない」という挑発的論考を書いていますが、全くそのとおりです。偏差値に関係なく、このような学びの環境をつくっている学校からクリエイティブクラスが誕生しているわけです。

★IBのプログラムを、すべての学校が行うことはできません。そこで、機構は、それに代わるプログラムを世界のネットワークと連携しながら独自に創っていくことを証明しようとしたのです。そしてその通りになりました。いやそれ以上になりました。

★私も水都国際の太田教頭や沖縄国際学院の知念理事長や同校の先生方とZoomで対話をしながら自分のスキルアップをさせていただいています。太田先生も知念先生も、DP段階になると、全員がそのコースに進めませんから、そこへの学びの環境デザインを創意工夫しています。そこでDPに相当するあるいはそれ以上と意欲を燃やしていますが、そのような学びを設定しなければ、中学から進んできて、DP以外のコースに進む生徒は困ります。

★そこの部分では私の考え方や学習理論は役に立っているのかもしれません。対話が続いているというのはそういうことでしょう。

★ともあれ、1時間はあっという間に過ぎました。次回は、そのようなポストコロナ時代に対応できる学びの環境を設定できる私学はどこかをテーマにしながら、学校選択の視点を鈴木さんと明らかにしていきたいと思います。

★もうしばらくしたら、ゲストを招くと鈴木さんは考えています。

★めちゃくちゃラフでフラットなウダウダトークセッションです。いずれみなさまと共に!よろしくお願いいたします。

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2020年10月23日 (金)

新しい教育社会(15)私立中高の各価値志向に対応する広報戦略タイプとは?

★前回は、私立学校の広報戦略の私の一般論をご紹介しました。ホンマカイナと思われた方も多いでしょうけれど、まあ経験値から述べているので、真理ではないかもしれませんが、戯言でもありません。参考にするかどうかは、私事の自己決定ということで。ともかく、その一般論に基づいて、私立中高の各価値志向座標に重ね合わせてみましょう。赤い項目が、その志向ドメインでよく使われる戦術です。

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★コンサバドメインでは、「直接広報戦術」が圧倒的です。中でも大学合格実績広報はすさまじいですね。

★ブランディングマーケティングドメインでは、「新市場ムーブメント創出戦術」が中心で、これを広げるための「直接広報戦術」「連携戦術」「覚醒共感戦術」の関係づくりが巧みです。

★GAFAドメインでは、ブランディングマーケティング領域に似ていますが、「新市場ムーブメント創出戦術」には興味と関心がありません。コスト(お金だけではなく労力)がかかるので、そこは便乗です。フリーライダーではありません。オープンソース論です。リバタリアンの真骨頂ですね。

★DAVOSドメインでは、70%理論が成り立ちます。大学合格実績がそんなに派手に出ていない段階なので、それ以外の項目を関係づけようとします。かえつ有明のように、大学合格実績もでているのですが、そこは目的ではないという間接広報戦術を中心に他の項目を構成主義的な関係で結びつけています。そこが成功していますね。

★聖学院のように、新市場ムーブメント創出戦術に成功し、メディア戦術もうまく構成主義的に関係づけられている成功例もあります。

★そういえば、かえつ有明と聖学院、新渡戸文化学園は、「覚醒共感戦術」がスーパーパワーフルです。

★こうして、座標を一望すると、どの領域も「口コミ戦術」がまだまだうまくいっていません。それは、豊かで強い「広報戦略方程式」が確定していないからでしょう。PBL授業を教育全体に結びつけていないということもあるでしょう。ここを真摯に突き進んでいる学校といえば、桐朋女子ですね。他のドメインでは、授業なんて前面に出さなくても、強い「勝利の方程式」があるからという感じです。それは、世界を変える教育布教方程式ではなく、勝ち組負け組を生み出す方程式です。

★しかしながら、今後それがどう変容していくかが興味深いです。まずは、生徒を集めなければしかたがないのですから、そこから出発することもありなのです。

★いずれにしても、この関係方程式にオンラインというのが重要になってきたわけです。オンライン入試をミネルバ型で突破したところに、注目が生まれるわけですね。東京では私立中高協会のオンライン入試自粛宣言の中でそれをどう創意工夫するのか!腕の見せ所ですね。

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新しい教育社会(14)私立中高の広報の本当の価値とは?

★この時期は、生徒獲得戦略の話題が盛りあがったり、中学入試から大学入試までの生徒のコーチングの仕方をどうするかなど激論が交わされたりと、徐々に沸騰入試列島にシフトしています。ですから、この時期になると、ときどき本間さんの広報戦略は?ときかれます。エッと戸惑います。私はPBL屋さんだと思われているので、広報戦略を私にきくのはなぜと。でもそれを問うてくる学校の経営者は、すでにうまくいっていたり、新しいことをやろうとしている学校の経営者です。さすが、角度が違うと思います。そこで、私は持論を述べます。広報戦略で仕事をしているのではないので、もしお役に立てればと思い、公開できる範囲で少しご紹介します。

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★私は、個々の私立学校や21世紀型教育機構の立ち上げにかかわってきました。といっても、C1英語×PBL×コンピュータサイエンス×思考コード(言語・数理哲学)のクリエイティブシステム思考のワークショップやブログ発信という口コミ戦術にかかわる領域がメインストリームでした。

★ただ、このクリエイティブシステム思考は、世界中の生徒が共有するのがすてきだと思っていますから、かかわった学校や機構が広く認知されることは大切です。私学における広報とはクリエイティブシステム思考の学びの環境を公に共有する関係を普及・布教することだと思っています。

★ですから、ダイレクトに生徒獲得戦術だけの広報をすることは、私自身はしてこなかったのです。それゆえ多くの私学の広報の先生方からは歯がゆいとか迂遠だとか言われてきました。小難しいだよとは今も言われます(汗)。もしかしたら機構でもそう思われていた方もいたかもしれません。きちんとそこを共有できないまま止めてしまったので、この場を借りて共有しておきましょう。

★私は、広報は8つの関係で方程式を創ります。ものごとは関数関係=構成主義的デザインが大切だとするのが持論です。PBLも広報も含めた3ポリシーもすべてつながっている、一貫性があるというのがシステム思考です。ですから、まずは、「構成主義」という手法を使います。それから、どんな項目をつなぐかと言いますと、学校の3ポリシーを中心に直接うちはこんな成果をあげているとダイレクトに広報する「直接広報戦術」があります。

★2つめは、生徒のみなさんの学園生活の中でどんな思いで活動しているのかなどをPBLにからめてインタビューしたりしています。直接広報ではないですね。直接広報というのは、市場のニーズに直接つながる情報を流すことです。大学合格実績が必要なのは、そういうニーズが強烈にあるからですね。

★生徒の活動は、そういう意味では、市場のニーズランキングではそう高くありません。しかし、目の前の入試に直面している生徒や保護者にとっては最重要な情報に転換します。ああそいうことだったのかと。「救いの情報」ともいえます。

★3つめは、「口コミ戦術」です。「直接広報戦術」の裏付け情報とでも言いましょうか。実際はどうなのよおという情報です。結局生徒が学校生活で最も時間を費やす授業の中身は、なかなか共有されていません。経営陣がそこに興味がないのが実態ですからね。それに、先生同士も互いに授業を見ることが物理的にできないのが実情です。

★4つめは、「新市場ムーブメント創出戦術」です。機構で行ったのは、C1英語×PBL×STEAM×思考コード×思考力入試でした。この中で新タイプ入試は時代とマッチして、21世紀型教育はこの戦術を活用できたと思います。機構メンバー校は、この方程式は共有していますし。

★5つめは、「覚醒共感戦術」です。「目からウロコ戦術」といえばわかりやすいかもしれません。あるいは「感動戦術」でしょうか。一過性のものではない仕掛け作りがポイントです。

★6つ目は、「連携戦術」ですね。合同説明会をやるのもその一つですが、これは少しルーチンになり過ぎて、積極的な意味は少し色あせているかもしれません。新しいテストや学びの体験を学校と塾が連携したり、経産省やIT企業と連携したりという動きは大事です。もっとも効果的な連携はメディアを巻き込むことですね。

★7つめは、上の図の、6つの項目と構成主義戦略の間にある空白領域です。ここは、つなぐ方程式がはいっています。「戦略方程式」ですね。

★IBやラウンドスクエアの広報戦略方程式です。とはいっても、IBやラウンドスクエアに加盟しているからと言って、その「戦略方程式」を体得しているかといえば、必ずしもそうではないので、そこをもっと学ぶとパワフルになるでしょうね。

★8つ目は、「構成主義」そのものの考え方をしているかどうかです。これがないと、6つの項目はバラバラでシナジー効果が現れません。現状は「直接広報戦術」に偏っている私学が多いですね。そんなことに気づいたら、この8つの関係を見直し、シナジー効果がでるような動きを生み出してみてはどうでしょう。

★結果的に、その学校だけではなく、日本いや世界の教育を変える動きになるでしょう。東京のような首都に私立中高一貫校がたくさん集積しているエリアは、世界にはありません。ですから、首都圏の私学に期待がかかるのです。それぞれ独自に8つの項目でシナジー効果を出せば、意図せずして私立学校全体のパワーが世界に影響を与えるほどになるでしょう。

★この全部の項目を70%つないで成功している学校といえば、東洋大京北です。ですから、100%つながなくても、70%くらいで150%くらいのシナジー効果を出す仕掛けがいいのかもしれません。100%やろうとすると、広報費が膨大になりますから(笑)。

★ちなみに御三家は何もしていないように見えます。そうです。今はしていないのですが、長い歴史の中で100%やりつづけて、それが持続可能になっているので。立ち上がり当初は、官学とやり合うほど新市場創出に燃えていたのです。今はできてしまっているので、何もしていないようにみえるだけです。歴史は繰り返します。かつての新市場も、今は既存市場です。そこに新市場が割って入ってくるのは歴史的必然でしょう。

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2020年10月22日 (木)

ノートルダム学院小学校 思いやりが学びの原点

★ノートルダム学院小学校(以降「ND」)では、先生方がチームNEXTという自主プロジェクトを行っています。昨年秋くらいから動き始めて徐々に本格稼働してきました。今回のパンデミックでしばらくZoomでコミュニケションをとってきましたが、今回は久々にリアルな空間で学び合いを行うことになりました。

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★NDはオンライン授業やPBL授業を行っています。今までは特にすべての教師が行うというわけではなく、行う先生は行うが、そうでない先生もいるという感じでした。

★しかし、今回のパンデミックで生徒が自ら考え仲間と協力して困難を乗り越え解決をしていく必要性を先生方は感じ入ったということです。そこで、好奇心・探究心・冒険心を大切にしながら、思いやりを互いにもち、深く考えていく学びとしてPBLに挑戦しようということになったようです。

★学内でPBLについて探究し、研究する対話が盛り上がり、実践しては改善していく流れが生まれてきていて、大きな川になる兆しがみえてきたということです。

★今回は梅下先生の「秋の動物」の単元の最終回のPBL授業について、分析していきました。なんと、「秋の動物」についてまとめるため、自たちでテスト作成をするという破格のリフレクション授業です。梅下先生の7分プレゼンのあと、授業の中で生徒がどんな学びの活動をして、どう反応したかをポストイットで書き出し、授業のストーリーの再現スクライビングをしていきました。

★そのあと、そのストリーに沿って、どんなツールが活用されたか、生徒はどんな楽しみ方をしたのかなどジグソーパズルのピースを当てはめるように立体的に再現していったのです。

★先生方は、仲間の授業について思いやりをもち、共感しながら復元していきます。柔軟で深くそして広がりのある対話が展開していきました。

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★そして、梅下先生の復元した授業、その授業を通して、生徒はどのように学び成長していったかに思いを馳せていきました。具体的な授業から帰納法的にそして、先生方自身が見守っているいつもの生徒の様子を想いながら、生徒がどのタイミングで好奇心をいだき、知ることの喜びを感じ、躓いたとき互いに励まし合うのかなど、その様子を思い浮かべ、最後は自分を見つめるようになっていくだろうとPBLの授業の効用の仮説を立てていきました。

★それぞれの想いをその都度シェアしながら対話は進みました。そして、最終的には、今回の分析を通して、NDのスタンダードPBLの考案を練りました。創造的なスクライビングに変容していったのです。もちろん、これはこのような対話を今後行うたびにアップデートしていくでしょう。

★このようなアップデートの変化を楽しめる柔軟で深く思考する先生方の姿に希望を見出しました。チームNEXTの先生方、すてきな時間をありがとうございました。

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新しい教育社会(13)私立中高の各価値志向に対応するオンライン授業のタイプとは?

★首都圏の私立中高一貫校の4つの価値志向ドメインに、①4つの学習観、②革新教師の4つの特徴、③4つの組織の佇まいを重ねてきました。今回はオンライン授業とリアルな授業を重ねてみます。すると、4つのタイプのオンライン授業やリアル授業があるわけではないことに気づきます。

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★こうしてオンライン授業とリアル授業の比較をすると、組織や学習観などが4タイプあっても、授業はざっくり2タイプになっているというわけです。したがって、授業のタイプだけみていても、学習観の違いや組織の違い、革新教師の特徴の違いはみえてこないのですね。

★保護者の方が学校選択で迷われるのは、ワンウェイ授業なのかツーウェイやアクティブラーニング、PBLなどの対話型授業だけをみていても、学習観や組織の佇まいの違いを認識しないと、ピタッとあるいはグッとくる学校が見つからないからなんです。

★この違いは、今のところオンライン説明会を見比べてもなかなか感じられないところですね。そのうち、静岡聖光学院のように、テレビ局並みの環境の説明会を(やる予定)やるようになると、だいぶ感じ取れるようになるかもしれません。

★ピンとくるピタッとくるグッとくるには、実際に説明会に行く必要がやはりありますね。帰国生がZoomでたっぷりやり取りできるのは、人数が少ないし、実際にリアルには頻繁に足を運べないので、学校側も、懸命にリアル並みの心配りをします。こうなってくると、リアルかオンラインかはあまり差異がなくなりますが、一般の受験生とだと、物理的な制約があるのはしかたがないので、保護者が主体的にリサーチする必要があります。

★それから、上の図は、あくまで各ドメインの最大公約数で、役割機能組織でもワンウェイではなくツーウェイやPBLを実践しているところもあるし、フルスペック(課題配信・学習アプリ・オンライン対話・オンディマンド)のオンライン授業をしているところもあります。

★本来役割機能組織は、フルスペックでいくぞと号令がかかれば、あっさりできてしまうものです。実際そうなっています。ですから、役割機能組織で、それができないのは、役割分断がおきている可能性があります。革新教師はわが道を行くでフルスペックでオンラインやPBL授業をやるでしょうが、保守教師は課題配信だけとかワンウェイ授業だとかをやっているという風景が目に浮かびます。

★この役割機能組織の学校が、60%です。私立が校でまだそんなところです。公立学校はどうでしょう。おそらく90%です。そのうち役割分断になってしまっている組織はどのくらいあるでしょうか。

★GIGAスクール構想は、役割分断組織にとっては黒船というわけですね。とにかく2025年問題を解決の糸口を見るけるために、また2025年に本当は大学入学共通テストはCBTに移行し始めたいわけですから、文科省や経産省も必死です。

★この流れに利権もからみますから、そこはクリティカルシンキングを発動しなくてはならないのですが、保護者の声、Z世代の声こそがカギになってくるでしょう。

★私はといえば、とにかく創造型自己変容組織の価値の重要性を発信し、その組織で活躍する革新教師といっしょにハイブリッドPBL授業をアップデートし続けることをさせて頂き、かつその教師のかけがえのない価値を広報することですね。まずは100人の革新教師と出会い、対話し続けようと日々Zoomで対話する機会を頂いています。この100人プロジェクトは第一フェースは2021年3月までに達成できそうです。

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2020年10月21日 (水)

聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(06)工藤先生のクリエイティブなパワーイングリッシュ授業

★聖パウロ学園は不思議かつ魅力的な学校です。いわゆる入学時の偏差値でいえば、48~50くらいでしょうか。学力面で自信をもって入学してくるというより、自己肯定感は少し低い感じではいってくる生徒が多いでしょう。でも、野球とか馬術とかスーパータレントを持っている生徒も入ってきます。グローバルコースに入ってくる帰国生もいます。

★1学年80名ですから、めちゃくちゃスモールサイズです。それゆえ、生徒1人ひとりに対して何人もの教師と対話できる機会があふれている学園です。1つにはこれが奏を効して、誰もが自信を回復していきます。自分がやりたいことを見出していきます。それからもう一つはハイブリッドPBLですね。パンデミックによる自粛期間は、もちろんリモート授業を行いましたが、学校再開後もリアルな授業にサイバー空間を併用するハイブリッドPBLを実施しています。

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★すでに理科、国語、英語、社会、数学、保健体育などのケースを紹介しています。ここでは、もう一人の英語の工藤先生のケースを紹介しましょう。工藤先生ご自身、スーパー英語教師で、IELTSも8.0以上だし、英検でいえば軽く1級をクリアする実力です。CEFRで言えばC1は当然クリアしています。そして、ICTも様々な方法で創意工夫しています。

★あるときは、電子黒板をボードゲームのように活用し、チーム戦をして盛り上がりますが、高1の授業では、ちょうど映画について、ジャンル分けや作品についてヒントになるフレーズや絵を投げかけて生徒がチームで話し合って回答していくというアクティビティを行っていました。

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★映画は、ロマンスあり、アクションあり、ミステリーあり、SFファンタジーあり、アドベンチャーあり、ミュージカルありで、英単語を覚えるというよりは、好奇心を刺激する授業です。思考タスクでは、ラテラルシンキングという手法を採用しています。

★英語の学びなんだけれど、自分の好きな事柄や興味のあることをリフレクションするアクティビティです。こうして、生徒は英語を学びながら柔らかい思考をトレーニングし、自分を見つけていくというマイプロジェクトが授業で稼働しているのです。

★しかも、このマイプロジェクトを立ち上げるということは勇気のいることで、挫折もあるでしょうが、教師や仲間と対話し回復していくリジリアンス体験を積み重ねていきます。

★それから、自分のやりたいことを見つけ、探究していくのですが、それを実現するにはスキルが必要です。大学に進むにしてもっその後社会に進むにしても、主体的にアウトプットすることは必要です。企画提案やイベント運営やクライアントとの対話など、複眼思考とコミュニケーションスキルが必要です。もちろん寛容なケアマインドも。

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★リーディング、スピーチ、リスニング、ライティングの4技能に関して、工藤先生は、テキストであるUncoverのライティングスキルを巧みに活用すると英語科主任の大久保先生がお墨付きをつけていました。クリエイティブでパワーイングリッシュ授業を展開していますよと。

★テキストを拝見すると、思考スキルのチャートがふんだんに活用され、リフレクションによるスキル視点も明快です。このスキルを、工藤先生はライティングだけではなく、4技能すべてに活用していくのでしょう。

★また、テキスト以外の様々なマテリアルを用意しています。インターネットの情報を工藤先生はフルに活用していきます。思考を深める時、マテリアルの深さも必要だし、スキルを磨き上げていくこともポイントです。

★さらにおもしろいのは、国語科との連携もあるのです。実は国語科は独自の思考コードと思考スキルをすでに見える化しています。

★英語科の活用するCEFRのメタルーブリックと国語科の思考コードは親和性があります。また思考スキルはほぼ重なります。工藤先生のエッセイライティングの指導は定評があります。

★また国語科の小論文指導も生徒には人気です。両方とも、今後の総合型選抜や早稲田の政経のような総合型一般入試には必要だとされているスキルを育成するということを生徒は了解しているのです。

★これらが、探究の活動で合流します。探究は各教科のPBLでみつけたマイプロジェクトをワールドプロジェクトにできるかどうかの挑戦でしょう。

★こうして自己肯定感があまり高くない自分から自己の際の才能を見つけ、その自己実現のために仲間と教師と取り組んで、自己変容していけるのが聖パウロ学園です。偏差値に囚われていた自己が、そのくびきを自ら解くことになる瞬間瞬間を体験できるのです。一般の進学校は、このくびきをますます強固なものにし、人と比較してランキングを競う人生に迷い込んでしまいがちですが、聖パウロ学園はその逆をいくのです。

★英語と国語というバイリンガル思考スキルが明快になっている学校はそうは在りませんから。

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新しい教育社会(12)私立中高の価値志向に対応した組織の4タイプ。

★座標系で首都圏私立中高一貫校の価値志向を4つに分類し、コンサバから3つの革新教育が出現していることを眺めています。その動きには、①学校の学習観の違いがあり、②革新教師の特徴の違いがあるという話をしてきました。そして、今回は③組織の佇まいの違いを紹介したいと思います。

★もちろん、きっちり4つに分けることはできないのです。個々に見ると、あてはまらないということに、この手の分類は必ずなります。しかし、各類型の集合となるとそれぞれのタイプの特徴を感じ取ることができます。感じ取るですから、あくまでも私の経験値による独断と偏見です。学校選択の時の1つのものの見方・考え方として参考にしてもらえればとおせっかいな話なわけです。

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★組織開発や人材育成の研究は世の中に山ほどあります。多くの教育コンサルタントは、その研究成果を活用して学校経営を指南していきますが、前提として、それは収益増大ビジネスモデルで、誰かが得をすれば誰かが損をするゼロサムモデルです。しかも昨今の情勢は、誰かが得をし続け、誰かが損をし続ける可能性のある利益非対称型あるいは偏向型ですから、学校教育では、少なくとも初等中等教育では直接活用することはできません。

★私立中高一貫校の場合、学則定員が決まっていますから、定員確保維持が目標で、定員確保増大はそもそもないのです。基本学費と助成金で私立学校は成り立つ循環経済モデルです。学費は、生徒の学びの環境にすべて適用し、基本利益はでないというモデルです。実際には土地を売却したり、寄付金を募ったりして、学費と助成金以外に入ってきますが、誰かの利益になるわけではありません。

★施設の建て替えや、新しいテクノロジーの入れ替えなどに投入されます。先生方の給料だって、教師の生命維持だけではなく、生徒の学びを豊かにするための創意工夫ができるコンディションをととのえる分も必要です。学校の先生をやっていて、ビル・ゲイツのようになりたいというのは本末転倒です。最近そういう教師も現れてきていますが、どうなるかおもしろそうですね。

★しかし、循環経済モデルで、実はウィリアム・モリスやミヒャエル・エンデがユートピアとして描き、それを社会実践しようとしてきた歴史の成果がひっそり私立学校に継承されてきたというのが、私立学校の思想としての≪私学の系譜≫を支える経済システムの在り方です。ケインズもすでに「雇用・利子および貨幣の一般理論」でそこを重視していますね。トマ・ピケティやその仲間たちの税金配分の正義の政策もそこに論点があります。

★かくして、革新教育は、実は、この循環経済モデルをぶっ壊す動きとコンサバの学校が無自覚に継承してきた循環型モデルを再定義し、それを学校モデルから社会の経済システムモデルに変えようとしている動きに二分されます。

★マーケティングやGAFAはゼロサム経済モデルの動きをする組織です。コンサバとDAVOSタレンティズムは循環経済モデル組織です。ただ、おもしろいのは、ブランディングマーケティング主義は、旧来の市場の覇者を駆逐しようとダイナミックに動くので、階層構造を戦略的に書き換える経営組織です。

★一方GAFAタレンティズムは、学校現場は教師も生徒もフラット・フリー・フェアで、一見循環モデルですが、それを支えている経営組織はブランディングマーケティング型組織です。

★コンサバは、本来循環型で、今もそうですが、校務分掌がいつのまにかピラミッド型機能になってしまうところもでてきています。本来は役割を互いに尊重しひたすら遂行することに幸せを感じる循環経済効用型なのですが、そこのマインドセットが、偏差値によって影響を受けてしまっているということですね。

★ですから、DAVOSタレンティスム組織は、循環経済モデルを自覚的に遂行し、経済利益向上に幸せを見出すのではなく、様々な内発的プロジェクト創出の行為自体に幸せや生きがいを感じる組織にシフトしているのです。well-beingの経済モデルは循環モデルです。ですから、このドメインの学校はSDGsの取り組みが広く深いのです。

★この学校は、クリエイティブシステム思考とクリエイティブシステム組織(これも頭痛が痛いと同じ表現でしつこすぎますが^^;)が一致している組織です。ダイアレクティブ組織です。理想的なものは現実的なもの、現実的なものは理想的なものというマインドフルネスに溢れている<ルソーの系譜>=≪私学の系譜≫というわけです。ここにきて、この≪私学の系譜≫も4タイプあったということでしょう。第Ⅰ象限がルソー型、第Ⅱ象限がロック型、第Ⅲ象限がアダム・スミス型、第Ⅳ象限がハイエク型ということになりましょうか。そして、公立はサヴィニー型なのかもしれません。

★学習指導要領の中で、このサヴィニーを取り扱っていないのが実に謎ですね。U理論を述べるコンサルタントが、逆Uを研修で扱わないのと似ています。あるいは、マーケティングにおけるイノベーター理論で、レイトマジョリティやラガードの背景にある権力のパラドクスを語らないのと似ています。U理論のオットー・シャーマー教授もイノベーター理論を発展させたジェフリー・ムーア氏も、ちゃんとその点を論じているのに。。。

★教育コンサル系のシンクタンクや社団法人がこれからどんどん生まれてきます。そのとき、ここらへんの情報を共有してくれるところが信頼できるのかもしれません。

★要するに、あらゆるものの見方や考え方には光と影があります。メリットとデメリットと置き換えてもいいのですが、そこを確認することが大切です。コンサバは安定的価値観を追い求めますが、行き過ぎると抑圧的になります。ブランディングマーケティング価値は、行き過ぎると一望監視型組織になります。

★GAFAタレンティズムは行き過ぎると、相互監視型組織になります。

★DAVOSタレンティズムは、行き過ぎると新しいパターナリズム型組織に陥ります。

★学校選択は、やはり多角的に複眼的にリサーチする必要があります。自分一人ではなかなかできません。玉石混合ですが情報はたくさんあります。学校自体が豊富な情報を発信する時代にもなりました。情報の収集・分析の目をいっしょに磨いていきましょう。

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2020年10月20日 (火)

新しい教育社会(11)私立中高の価値志向に対応した革新教師の4タイプ。

「新しい教育社会(09)首都圏私立中高一貫校の革新性のベクトルが3方向に拡張。その背景で、教師の新しい生き方が生まれている。」で、首都圏を中心とする私立中高一貫校の価値志向を4つに分類しました。同記事の【図1:首都圏私立中高一貫校の学校の価値志向性分類】をご覧ください。今回は、それぞれの領域で革新教師がどんな動きをするのかその特徴を座標に重ねてみました。

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★革新教師は保守教師同様、いずれの領域にも存在します。しかし、その領域の組織の在り方や人間関係という環境の影響で動き方が変わります。コンサバ領域では、圧倒的に保守教師が多いので、相手にされませんから、我関せずで「わが道を行く学者型教師」として動きます。広報活動や部活の顧問など自分の探究時間をとられるようになると、他の領域の学校を探し始めます。

★もちろん、自分を変容できない場合は、他の領域は魅力がありません。だって、今まで以上に忙しくなりそうだからです。じっと我慢して居座ります。しかし、環境がそうさせてきただけの場合は、どうせ忙しくなるなら、自分の特徴を生かせる領域に移ろうという動きになります。

★ブランディングリバタリアンの領域では、経営陣がマーケティング分析をして新市場のニーズに合う道具立てや施設を用意しますから、それを有効活用するようにマネジメントされます。新しい道具や武器、特にテクノロジーをガッツリ操作できるので、ある意味モチベーションはあがります。しかし、これ以上内発的なモチベーションが生まれてこないと判断した時は、やはり他の領域に移ります。

★タレントリバタリアンの領域では、基本資金力がある学校なので、先生に変われということほど厄介でコストがかかることはないと算段し、外部の専門家に外注します。つまり、「最先端の専門家と生徒の学びを結びつけるコーディネーター型教師」としてのロールプレイが、この領域では中心になります。

★コーディネートだけではなく、自分もプログラムをデザインするソフトパワーを発揮したいという場合は、やはり他の領域に転職します。

★こうして、流れ着く領域がDAVOS型タレント主義です。進取の気性に富んだ起業家精神旺盛の教師がたくさん集まってきます。それでいて、倫理観やジャスティスを重んじる、つまりfor othersの精神を大切にしています。そう表現した方が市場のニーズに適合するというブランディングリバタリアンの領域とは全く異なる領域です。

★for othersのマインドが内燃しているのです。ですから、「最先端の技術と学習する組織を結び付けシナジー効果を外注ではなく内製的に生み出すクリエイティブ教師」の動きをします。

★だんだんこのようなクリエイティブ教師が多くなり保守教師は他の領域に逆シフトします。非常に幸せでマインドフルネスなメンタルモデルに自己変容していく組織になっていきます。ただし、問題は、このDAVOS型タレント主義領域は、慈善事業家の力が必要です。日本ではまだまだそれがうまくいきません。したがって、市場の覇者に成れるかどうかは常に問題です。にもかかわらず、踏ん張っています。

★そこにこそやりがいやかけがえのない(Only One for Othersということらしいです)境地があり、ブランディングリバタリアン領域からみたら、大丈夫かね?ということのようです。

★リバタリアンは、スピードを大事にします。DAVOS型タレント主義は、そのような人のこと時間泥棒と呼ぶモモに親和性を感じていますから、違いは明白です。

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八雲サードインパクト(06) 2つのYの絆に向けて着々 八雲の野望

★前回、八雲学園は、<Cword>を身につける教育を着々と進めているとご紹介しました。<CWord>とは、C1英語×Critical thinking×Creative thinking×Contribution×Care×Code Mind×Computer Scienceです。

★そのために、ケイトスクールとの姉妹校交流、ラウンドスクエア、UPAAなどに加盟しているわけですが、この<Cword>を身につける八雲学園のもう一つの野望は、イエール(Yale)大学との太い絆をつくりあげることです。現状、イエール大学とは、東京で国際音楽交流を行っていますし、八雲生がイエール大学に実際に訪問もしています。

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★そして、今後は、八雲生がイエール大学に進学する目標があるのです。お茶の水女子大とか秋田国際とかに進学したOGが続々教師として戻ってきています。ラウンドスクエアのノーブレスオブリージュな世界の学校との交流は、大学でも続きます。それには世界大学ランキングの上位の大学に進むということに八雲生は野心を燃やします。

★八雲生が正しく望むことは、教師は一丸となってサポート体制を作ります。実際に世界の大学との連携も創っちゃいました。それがUPAA加盟です。UPAAはサイトで加盟大学(★印)の世界大学ランキングのポジショニングを次のように公開しています。

 Times Higher Education
2021 世界大学ランキング

rank Name Location
1 University of Oxford UK
2 Stanford University USA
3 Harvard University USA
4 California Institute of Technology USA
5 Massachusetts Institute of Technology USA
6 University of Cambridge UK
7 University of California, Berkeley USA
8◎ Yale University USA
9 Princeton University USA
10 University of Chicago USA
36 東京大学 JPN
51★ The University of Manchester UK
54 京都大学 JPN
169★ The University of Alabama at Birmingham USA
174★ University of Exeter UK
178★ Newcastle University UK
200★ University of East Anglia UK
200★ Queen’s University Belfast UK
201 - 250★ The University of South Florida USA
201 - 250 東北大学 JPN
251 - 300★ George Mason University USA
301 - 350★ University of Stirling UK
301 - 350 東京工業大学 JPN
301 - 350★ Washington State University USA
351 - 400★ City, University of London UK
351 - 400 名古屋大学 JPN
351 - 400 大阪大学 JPN
401 - 500★ Colorado State University USA
401 - 500 九州大学 JPN
401 - 500★ Oregon State University USA
401 - 500 筑波大学 JPN
501 - 600★ Hofstra University USA
501 - 600 北海道大学 JPN
601 - 800 慶應義塾大学 JPN
601 - 800 神戸大学 JPN
601 - 800★ Manchester Metropolitan University UK
801 - 1000 立教大学 JPN
801 - 1000 早稲田大学 JPN
1001+ 青山学院大学 JPN
1001+ 中央大学 JPN
1000+ 同志社大学 JPN
1000+ 法政大学 JPN
1000+ 関西大学 JPN
1000+ 関西学院大学 JPN
1000+ 明治大学 JPN
1000+ 立命館大学 JPN
1000+ 上智大学 JPN
1000+ 東京理科大学 JPN

★すでに、世界大学ランキング200位くらいまでは、手が届く段階にある八雲ですが、UPAAで、50位から100位の大学に手が届くようになります。

★しかし、ラウンドスクエア×UPAAそして、同士校21世紀型教育機構などと協働して、イエール大学進学に弾みをつけるでしょう。YakumoとYaleという2つのYの名実ともに絆が生まれるのはもうすぐです。

★すると、Yale卒のOGが八雲に戻ってくるでしょう。八雲のOGは、不思議とそういう帰巣本能を持っていて、後輩を広い世界へ深い世界へ旅立てるようにします。

★世界大学ランキングが上位の大学は驚異のネットワークを有しています。八雲学園は2つのYによって、そのディープなネットワークにつながります。

★八雲の野望、近藤家の野望でもあります。八雲から世界は変わります。

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2020年10月19日 (月)

八雲サードインパクト(05) 2025年問題に対応できる学校 未来の公用語<Cword>を身につけられる。

★八雲学園は、2021年から高校も共学化します。中学1年から高校1年までが共学となります。この高1が卒業するのは、2024年春です。2022年18歳成年施行ですから、共学化のコンセプトでこの中高生の劇的な変化に対応するのは間に合います。

★2025年問題は、超高齢社会に突入し、若年の労働者人口が極端に減ります。移民の動きはすでに国の政策でセットされて動いていますから、本格的なグローバルな時代に突入します。医療介護問題、年金問題、労働人口問題、治安の悪化問題、移民問題、コンピューターサイエンスの各段の進化、スマートシティ化、SDGsの社会課題への取り組みの強化がもたらす産業構造の大変化。。。。

★とにかく、今の中高生が自力でサバイブする能力を身につける確固たる環境を創り上げるというのが八雲学園の断固たる意志なのです。このサバイブする能力は、人類が経験したことのないものでもあります。なぜなら、よいかわるいかはわかりませんが、あらゆる神の領域に人工的な手が入る時代だからです。つまり、神の領域で活躍できるという意味のサバイブ能力を意味します。

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★神の領域でサバイブできる能力。このスーパーコンピテンシーは、AI時代では当然求められます。脳科学はもっと進化するでしょうし、量子コンピューターも2025年には、タブレットで操作しているでしょう。いや眼鏡型PCなど五感センサー操作型PCで日常生活を送っているでしょう。医療関係のサイエンスもすでに進化しています。国が認定していないものが膨大に多いだけです。一気呵成に進むでしょう。

★スマートシティ化が進むわけです。ただ、当面はものすごい格差社会です。光ばかりか影の部分も想像以上にすさまじくなります。サイバージャーのアーキテクチャー上のリーガル問題は噴出です。リーガルマインドやモラルの再構築も必要であり、強く柔軟なチームワークリーダーシップが必要になります。これもスーパーコンピテンシーの1つです。

★要するにスマートライフになるわけですが、当然学校もスマートスクールになっています。今グローバル世界は学校の外にありますが、スマートスクールは、学内がすでにグローバル世界です。学校空間が巨大なVR空間になっていて、まさにどこでもドアで海外の生徒や教師と対話し議論し、18歳成人の準備として、社会課題をグローバル政府と話し合っているでしょう。

★そのための道具立ての準備として、C1英語×PBL×コンピュータサイエンス×リベラルアーツ(ないしは哲学)×リーガル&モラルマインドが必要です。この準備ができているところは日本の教育にはほとんどありません。ホンマノオト21で紹介している学校ぐらいです。何せ、本サイトのコンセプトは“for the Children of Men(人類の子どもを救うために)”ですから、そのための学校をリサーチしているのです。

★さて、スーマートシティ、スマートライフ、スマートスクールというように、地球上の社会課題を解決するサバイバル生活でチームワークリーダーシップを発揮できるス-パーコンピテンシーがポイントです。新学習指導要領では、追いつきません。学習指導要領は一部のファーストクラスを生むシステムです。スーパーコンピテンシーを有するクリエイティブクラスを生み出せません。

★スーマートシティのアッパー層(この表現を使わざるを得ないのは残念です)は、クリエイティブクラスなのです。移民によって、このCクラスが中国から押し寄せてくるでしょう。いや、すでに中国の友人はスタッフとして私の隣でてきぱき仕事をしていますね。めちゃくちゃ優秀です。今までの偏差値優秀性が、この準備をしなければ、プアホワイトカラークラスに転落します。放置しておくと、プア日本人クラスができてしまいます。

★トランプ大統領に象徴されるようにそこを煽って分断世界を造ってはいけません。そのためにもチームワークリーダーシップを有したスーパーコンピテンシーをもつサバイバーを輩出する必要があります。

★クリエイティブクラスというCクラスのCは、C1英語とクリティカル&クリエイティブシンキング、コンピューターサイエンスとコントリビューション&ケアとリーガルマインドを持ちえています。リーガルミンドはCじゃないじゃないかといわれるかもしれません。リーガルは実はCodeをベースにしています。Codeの意味は、記号であり、暗号であり、法典です。言語と思考と協働とコンピューターと法のすべてを貫き通す共通言語です。

★クリエイティブクラスの公用語は、このC語だったのです。八雲学園はこのクリエイティブクラスのスーパーコンピテンシーを生み出す言葉<Cword>を身につける準備を着々と進めているというわけなのです。

★この八雲の準備について詳しくは次のサイトをご覧ください。

私立中高進学通信10月号「一人ひとりの英語力を伸ばすeラーニングシステム『YES』」

 

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新しい教育社会(10)首都圏私立中高一貫校の革新性の3つのベクトルと学習観の違い。

前回、首都圏私立中高一貫校の革新的教育の大きな3つの流れが広がっていることについて述べました。コンサバ教育も含めて、教育に対する価値志向が4つあることを述べたわけです。ここでは、その革新的教育のそれぞれの価値志向がどんな学習観を求めているのかあるいは生み出しているのかというのを考えてみましょう。

【図1:教育の価値志向と学習観】

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★一般に、学習観は、「知識と理解」という「基礎」をしっかりして、「応用と論理的思考」を身につけるというものが多いでしょう。入試問題は学校の顔ですから、入試問題を分析すればわかります。中学入試の2科・4科入試、公立の高校入試、大学入学共通テストをみれば納得がいくでしょう。

★カリキュラムというのは、この入試問題に接続するものであるからです。よく大学入試問題を超える学びが必要だという話を聞きますが、それは本来おかしな話なのです。

★というのも、入試問題は、多様な才能を評価できるものでなければならないからです。思想・表現や学問の自由を制約するものであっては民主国家ではいけないのです。その自由を制限できるのは、危害原理や不快原理ぐらいなのに、日本の文化だとか称して家父長的なパターナリズムで制限をかけているのが、日本の入試問題です。

★学校教育は、民主主義を学ぶ場所なのに、民主主義について語ることは政治的中立をはみ出るからしないことになっています。民主主義はあくまで、教科書の中の客観的な知識として覚えるのが勉強だったということなのです。

★もちろん、私立学校はここはさすがに少しはみでていますが、コンサバの枠内での自由の表現であったのです。競争して自由に階層構造の椅子取りゲームすることが保守されてきたのです。しかし、階層構造をどうしたらよいのかという議論はタブーでした。

★そんなわけで、革新的教育はそこを脱しようとしたわけです。ですから、それには「批判的思考や創造的思考」を組み込まなくてはならないと、「知識と理解」という基礎力を土台に「応用と論理的思考」「批判的思考と創造的思考」の両方を乗せる動きがでてきました。もっとも、ブランディング、つまりマーケティングが基本的発想ですから、目に見えない本質は語りません。それはマスにはウケないからです。

★もちろん、マスは「本質」という言葉は大好きです。ですから、「批判的思考と創造的思考」こそ「本質」だというわけです。

★一方コンサバをぶち破るもう一つの流れは、GAFAの影響を受けていますから、そもそも「本質」という考えそのものが自由を制限するではないか、自由を制限することは楽しくない、ワクワクするには徹底的に自由を!というわけです。かくして自由を制限するものを徹底的にとっぱらうという過激なリバタリアンですから、学習指導要領でやらなければならない最小限のことを学習アプリに任せて、あとは自由に興味と関心のあるものを徹底すればよいのだという学習観です。

★ですから、基礎を何にするかは、生徒1人ひとりの興味と関心に任せ、本来なら既成の教科書的知識もいらないのだけれど、つまりHTHのようにやりたいのだけれど、ナショナルカリキュラムがあって、一条校はそれを守るということになっているので、最小限にとどめ、あとは最大限自由にという学習観です。

★コンサバからみれば、基礎である知識と理解は権威の象徴です。それをたくさん仕入れて使える能力が高いことが知識階級の本質ですから、そこをワクワクしないからいらないといわれると頭にくるわけですね。ブランディング主義のリバタリアン志向性は、本質は市場が決めるから、市場のニーズに従うことが本質です。批判的思考と創造低思考を欲していると思えば、それを本質とすればよいわけです。生徒ファーストではなく、市場ファーストです。

★コンサバは、権威市場のニーズ、ブランディングリバタリアンは、新規市場のニーズを本質としています。GAFAリバタリアンは、生徒ファーストで、生徒の興味と関心が本質と言えば本質ですが、個別最適化ですから、普遍的な本質はどうでもよいのです。

★そういうと本間は何かこのリバタリアンを認めていないのではないかと誤解する方がいます。しかし、誤解する方は、権威市場のニーズという本質か新規市場のニーズという本質を唯一正しいと思っているから、そのメガネでホンマノオト21を読んでいるからです。

★このGAFAリバタリアンのお話は、ギリシアの哲学が生まれて以来、ずっと議論されてきて、中世で普遍論争という葛藤の一端をになっていて、未だに解決がついていない価値論争の延長の話です。もし文化論を語るのなら、ここはおさえておく一つの流れです。専門的には極めて複雑で、それを整理して、一つの提案を語ることなど私には無理です。

★ただ、唯名論(ノミナリズム)か実在論(リアリズム)かというざっくり二つの論争があるというのはわかります。本質なんてないよあるのは個物だけ、だから名前があるだけで、本質は実在しないよというのが唯名論です。いや本質は普遍的に実在するんだよというのが実在論です。これをめぐって、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの若き新進気鋭の哲学者やアーティストらは再定義しようとダイナミックな展開をしていますね。NHKも欲望の資本主義という特集を流していましたが、その中で、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルが度々登場してきたのは、そうした壮大なグローバル文脈を追っているからですね。

★さて、もうおわかりですね。実はコンサバにしてもブランディングリバタリアンにしてもGAFAリバタリアンにしても、唯名論的価値志向であることは変わりなく、普遍的本質は必要としていないのです。コンサバ本質かブランディングリバタリアン本質かGAFAリバタリアンとして本質を認めないかの違いはありますが、いずれも普遍的本質を排除しているのです。

★かくしてDAVOS型革新教育は、普遍的な本質があるという立場です。ですから、「知識・理解」という思考にも、「応用と論理的思考」にも「批判的思考と創造的思考」にも共通する本質があるという学習観なわけです。しかも、それらはクリエイティブシステム思考として全部結びついていてシナジー効果を生み出す掛け算になっているわけです。

★この本質的な部分が「基礎」なわけですね。とはいえ、この「本質=基礎=普遍」が何かは、またいろいろなのです。キリスト教精神だったり、リベラルアーツだったり、IBでいうTOKだったり、哲学だったり、知の横断だったり、サイエンスだったり、マインドフルネスだったり。しかし、いずれにしても生徒ファーストであることは一致しているのです。

★「思考スキル」というのが、たんなるツールだとするか、本質だとするかはこの普遍論争的な価値観の違いが反映しています。IBのプログラムの中では、スキルは本質を生成する媒介項です。哲学的には形相というものです。ですから、IBを探究している先生方とはスキルの話は盛り上がります。IBはもともとリベラルアーツがベースですから、リベラルアーツを実践している先生方ともスキルの話は盛り上がります。

★スキルなんてツールだよ受験テクニックだよという価値観の先生と話しているとスルーされてしまいます。ロイロノートで使っている思考チャートは、ツールでしょと。

★いずれにしても、この多様な学習観が顕れてきたということが極めて重要なことなのです。日本にも未来が見えてきたのは、この学習観の多様性がでてきたということです。それを一つの価値観にしようという話をするのは権威主義的な一つの価値観であり、その価値観を認めはするけれど、一色にしようというのは危険です。

★コンサバあり、ブランディングリバタリアンあり、GAFAリバタリアンあり、普遍主義ありでよいのです。学歴社会のまずいのは、コンサバ色一色になっていることですね。

★いずれにしても、この普遍論争は、アリストテレスの形而上学に端を発しているのはたしかです。サンデル教授が頻繁に引用する哲学者がアリストテレスというのもおもしろいですよね。

★私自身は普遍主義者ですから、この価値が認められるには、多様な価値観が顕れることによってのみ可能だと思っています。コンサバ一色の学歴社会が多様な価値によって、one of themになることは、普遍主義的な人間の生きる自由を認めるうえで重要だと思っています。マックス・ヴェバーではないですか、この価値の神々の闘いという価値自由の社会を持続可能にすることこそ大切だと私は願っています。

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2020年10月18日 (日)

新しい教育社会(09)首都圏私立中高一貫校の革新性のベクトルが3方向に拡張。その背景で、教師の新しい生き方が生まれている。

★私立学校は、基本コンサバです。多くの学校が「自由」を標榜していますが、経済的自由は重視しますが、階層構造を維持する権威は大事にしています。最近、このコンサバは、グローバリズムの中で、ゆらぎハイエクやコトラーのようなリバタリアンやブランディング主義に基づく学校がでてきています。

【図1:首都圏私立中高一貫校の学校の価値志向性分類】

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★その象徴が、広尾学園と三田国際です。両校とも高人気校で、この流れをしっかりつくりました。ブランディング主義ですから、階層構造は維持するので、大手塾の70%は応援します。大手塾の中でも、真正という意味で伝統的な私学の在り方を支持する大手塾は、距離をあけています。

★一方、この階層構造から抜け出そうとする革新的な学校も人気をあげてきています。聖学院の思考力入試や海外大学の実績は、メディアでも取り上げられています。工学院も同様ですが、中学入試の応募者人数は少ないので、目立ちませんが、高校の人気は半端ないのです。コンピュータサイエンスの学びと破格のグローバル教育の評判も高いのです。

★工学院同様ランドスクエア加盟校で、この加盟のIB以上の重要性に気づき始めた保護者が八雲学園を注目しています。偏差値階層構造ではなく、生徒1人ひとりの潜在的才能を開花する環境があります。

★その環境で大事なことは教えない授業という場ですが、この点で傑出しているのが新渡戸文化学園ですね。

★そして、この正義と才能主義の領域を切り拓いている老舗は桐朋女子です。ダボス会議のボードの日本代表も桐朋女子のOGというのもなるほどです。

★IBをベースにしている開智グループ、特につくばの開智望は、PYPとMYPをしっかり根付かせています。IBスクールはDPからというより、PYPやMYPからしっかり土台をつくっているかどうかがポイントです。

★かえつ有明は、このIBのエッセンスをとり入れながら、独自のマインドフルネスの学校として確固たるポジションを築きました。

★今大ブームのN高校は、あらゆる壁をぶち壊すグローバルな動きをしています。リバタリアンだし、階層構造もぶっ壊します。武蔵野大も同じように動きます。両校ともGAFAの動きを参考(TTP)にしていますね。スケールがデカイのです。

★さて、保護者とよく話すのは、この革新的な動きは持続可能になるのか?ということです。校長が変われば元の木阿弥ということはないのか?ということですね。それは、理事長―校長―革新教師―保守教師の勢力割合を考えればよいという話をします。

【図2:革新勢力と保守勢力の割合イメージ図】

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★組織というのは、すべて革新勢力とかすべて保守勢力とかということはそうあるものではありません。その方が偏らない判断テンションがあり続けるので、経営マネジメントとしては、両方を取り込みます。ただ、どちらの勢力を多くするのかは、経営判断です。

★とはいえ、理事長と校長が革新的教育を実行するとなると、革新的教師が多くなり、改革路線は持続可能になり安定的です。

★理事長が保守的であるけれど、経営上革新的校長を起用すると、確かに革新的な教育は実行されていくのですが、それが過激だと、理事長の思惑を超えるので、任期が来たら継続ではなく、そこで新しい校長と交代です。当然揺り戻しが起こりますね。

★校長が保守勢力で、理事長が革新的な場合、革新教師が盛り上がりますが、校長と保守教師がサイレントキラー的な壁をつくります。学内の雰囲気がよくならないまま、改革路線が動きます。

★上記で挙げた例の中では、八雲学園は理事長校長が近藤先生ですから、理事長と校長の葛藤がありません。革新的なオーナー学校は、最も安定的で実際的な改革路線=伝統と革新の統合を持続可能にできます。

★今年立ち上がったばかりで、まだ実績がでていませんが、品川翔英は理事長と校長の連携が良い関係で、革新教師の勢力がどんどん大きくなっているので、将来性があると私は予想しています。

★このような動きは、サイトで調べれば概ねわかります。あとは実際に足を運んだりオンライン説明会などでリサーチをすればよいでしょう。

★それにしても、このような大きな革新的な流れは、自然にできたわけではありません。このウネリをつくった革新的な教師がグローバルに活動する中で、ニューパワーを増大しています。

★彼らは、パラレルワークやコンサルティング会社を起業したりしています。どういう方々が活動しているのかは、サイトの中では誰でも知ることができます。いずれ、具体的にご紹介しましょう。とにかくたくさんいます。

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新しい教育社会(08)クリエイティブシステム思考をどんどん身につける小学生

★盟友鈴木裕之氏主宰のGLICCという21世紀型学習塾があります。ちょっと不思議な塾です。2教室分と事務スペースだけの小さな空間です。1教室5人が限界でそれ以上だと3密になるので、リアルだとそこまでです。ところが、外国にいる日本人生徒が小学生から高校生までオンライン授業で学んでいるので、小さいけれどめちゃくちゃグローバルです。

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★もともとは、口コミで鈴木氏のIBジャパニーズの指導や大学の帰国生入試の実績、ケンブリッジやロンドン大学などの海外大学の実績がよいので、生徒が集まってきたという経緯があります。大学の帰国生入試は、活動報告書、志望理由書、日本語の小論文と英語の小論文、英語と日本語の面接があります。もちろん、大学によって英語だけのところもありますし、書類選考だけのところもありますが、複数受験をするので、一通り対策講座を開設してきましたし、今もそうしています。

★そういうこともあり、このGLICC空間の公用語は英語と日本語です。スタッフは、外国人が中心だし、アルバイトの学生は、GLICCの帰国生入試対策を受講した卒業生です。英語を使う比率が圧倒的です。

★私ぐらいですね。英語ができなくて、メールのやりとりをdeepl翻訳を活用しながら、スタッフの方々とやりとりをしているのは。鈴木氏とはもう25年以上も前から友人なので、日本語の小論文のところは頼まれます。私の授業は昔から対話や議論がベースなので、GLICCの21世紀型学習とシンクロするらしいのです。

★また、GLICCにくる帰国生は、大手の予備校ではなく、あえてGLICCを選択するのですが、それは彼ら自身が現地校で、対話ベースでチュータリング方式の経験をしているからです。それに基本インディペンデントですから、自分のペースでできる、つまりセルフマネジメントできるのがよいのでしょう。

★それから、プラットフォームがCANVASで、課題管理や自分の考えの痕跡であるポートフォリオと教師と帰国生、帰国生と帰国生のフィードバックのプロセスフォリオが残るので、リフレクションもシステム思考でできます。Googleとかロイロとかが日本ではプラットフォームになっていますが、米国ではCANVASの利用も多いのすが、日本ではほとんど知られていないというのも、GLICCの特別なところです。

★アドミニストレーターとすべての共有ができるので、マネジメントプラットフォームとして相当優れています。教師は世界の生徒と学びます。時差もあります。生徒のスケジュール変更は頻繁にあります。教師と生徒のレベルで、ダイレクトに変更を加えていきます。

★それをCANVAS上で行えば、すべての変更が自動的にスケジュール管理してくれるので、アドミンに何か連絡がはいっても、聞いていない知らないということがないのです。情報共有がフラット、フリーになっています。もちろん、CANVASのシステム自体がせキュリーティーやリスクマネジメントを行うわけですから、自由と規制が程よい関係になっているわけです。

★私自身もZoomでやりとりをする帰国生や総合選抜型入試対策の高校生もいます。彼らとやりとりしていて、IB(国際バカロレア)やAレベルの考え方を私自身が学んでいなければならなかったということもあります。あとは、各国の文化や教育事情を知らなければならなかったということもあります。娘がイギリスで4年間大学と大学院で学んでいたので、彼女や彼女の友人たちから情報を共有してもらうこともしばしばでした。

★私自身も1998年から2015年くらいまで、米国とフランスでPBL研修旅行を行ったり、リサーチをしていたということもあります。だからIBを学ぶとかAレベルを学ぶということではなく、IBやAレベルの背景にある学問や研究をリサーチしていたということが幸いしたのかもしれません。GLICCで英語ができなくても、使ってもらえるのは、世界の共通言語としての学習理論がある程度わかっているからと勝手に思っています。

★つまり、グローバル文脈において、英語は重要な共通言語なのですが、思考理論や学習理論という共通言語も必要だということです。それからもう1つ、小論文を書くときに、モラルコードだけでは、帰国生入試や社会課題解決型の総合選抜型の小論文は乗り切れません。経済コードとリーガルコードとサイエンスコードが必要です。

★IBの優れているところは、これらがほとんどシスタマティックになっているところです。

★しかし、そのシステムを支えている学習理論は、クリエイティブシステム思考です。これはモラルコードも、リーガルコードも、経済コードもサイエンスコードもループでつないでいく理論です。学際的かつ実際的です。

★最近、中学受験を考えている小学生もGLICCに集まり始めています。ただ、おもしろいのは、〇APIXにはいかないで中学受験ができないかという生徒です。英語入試や国際入試、思考力入試をはじめから考えています。とはいえ、国語と算数も学ぶというわけです。ただし、リベラルアーツ的というかIBでいうPYP的なプログラムを好む保護者ばかりです。保護者の学びの履歴や意識も高いですね。

★小学生は、アイデンティティとリレーションの両方の要素をベースに学んでいきますから、オンラインよりもやはり対面が必要になります。お菓子も食べながらやりますから、やはりリアルでとなりがちです(菓子)。外出自粛期間はオンラインでしたから、そちらもできますが、今はリアルです。80分授業なのですが、あっという間です。

★スピーチ、図式化、論述が基本アクティビティです。コアブック(テキストとは別)は、池上嘉彦先生の本と落合陽一氏の本です。それから今月の本として、物語の本(新書版・文庫版)と漫画本を読みます。今月は「星の王子様」と「コボちゃん」です。

★授業は、まずたいてい生態系に関する写真をみて、1分間スピーチ。それに関する動画やデータ、あるいは文章を活用して、最初1分スピーチで話したことを再構築値して、100字で要約するということをやっています。100字に関しは、5年生は生徒同士ピアレビューをします。4年生は、まだアイデンティティが勝ってしまい、リレーションシップは盛り上げる時に使います。

★ただ、最近ようやく、思考スキルを生徒が自分で認識できるようになってきたので、4年生も5年生も、100字の論述を思考スキルアナリーゼを行うようになってきました。これはシステム思考の基礎です。ループづくりの基礎になるのです。日本の教育では、モラルコードが圧倒的なので、こういう認知科学的な思考スキルはなかなか使いません。IBでは、はっきりと思考スキルを活用することになっているのに。。。。

★生態系やSDGsに関しては、生徒によってはマイクラで取り組んでいる生徒もいるので、システム思考的な話はそんなに抵抗はないようです。

★漫画は、ドラえもんやスヌーピー、コボちゃんを今のところ使っています。キャラクター分析や物語の構造分析、キャラクター同士の心情の交差の図式化など、コンパクトにできるのです。最近では、「鬼滅の刃」が流行っているらしく、おもしろさの共通項を対話したりもします。私はこのアニメを知らないので、生徒が鼻を膨らませて説明してくれるのを凄いね、かわいい話なんだね、怖いと思ったけど愛の話なんだねと相槌をうっているだけでけですが、オーヘンリーやコボちゃんなどとこんなところが共通していてとかオチがどうのこうのとか、バッドエンドかハッピーエンドかどちらが好きだとか、キャラクターどうしのメンタルモデルの話になってくるのをワクワクしながら耳を傾けています。

★こうして、クリエイティブシステム思考(本来システム思考はクリシティブなので、腹痛が痛いみたい表現なのですが、システム思考というとマシンモデルと誤解する方がいるのであえてくどく表現)は、ふくらんでいきます。

★文章に関しては5000字から8000字を一本読みます。物語と論説文をそれぞれ交互に活用します。物語は、漫画で活用した物語構造分析や心情分析の図式化をイーゼルポストイットで書いてプレゼンしたり、200字で書いたりするのがルーチンです。物語の続きを200字で書くという作業もたいていいれます。物語の構造を論理的に分析し、途中で終わっているので、そのあとを論理的に推理しつつ、クリエイティビティを発揮するという流れです。

★生徒は、スポーツと一緒で、論理的分析はめんどだとかつまらないとはじめ言いますが、書いているうちにああ~そこかあと続きを創作するきっかけを発見して、没入していきます。もちろん、創作こそ楽しんでいます。バッドエンドにするのは、今流行りの銭天童によるのだと生徒が言います。互いにどう書いたのか当然ピアレビューは自然に始まるし、お迎えにいらした保護者に自分はこう書いたのだと語り掛けています。

★物語の学び方は、IBジャパニーズのやり方を参考にしています。この科目のトレーナーとして、オンライン上では鈴木氏はちょっとした有名人ですから、教えを乞うています。

★それと、池上嘉彦先生の記号論とロラン・バルトの物語構造論を活用しています。ここらへんは、麻布や開成の対策でずっとつかってきた考え方です。

★論説文は、まだ、本格的に行っていません。ゆくゆくはミニパーソナルプロジェクト風にしたいなあと思っていますが、今は今月の図書、たとえば星の王子様の月は、星の王子様関連の論文を読んで、自分の読み方との違いに気づいてくれればよいかな程度です。論理的文章の構造はもちろん分析していきます。物語の創作に対応するのは、自分の意見や推理を書くということです。

★中学入試の2科4科だと、100字から200字が書ければよいので、その感覚をと思っていたら、500字から800字くらい書くようになりました。

★最初は、200字なんて書けないとか防衛機制をそれなりに働かせるのですが、書いているうちにあれもこれもになります。抽象から具体へ、そして今度は具体から抽象へという、削除・挿入の編集スキルをまずは体感からということですね。

★この作業は、最終的に生徒の満足度は高くなります。そうなるちょっとした仕掛けがあります。実はA4の100字原稿用紙を使っています。字を大きくはっきり書くという目的で始めたのですが、あっという間に1枚の原稿用紙がかけてしまうというのが、生徒の実感です。ですから、もう一枚となります。またまたもう一枚となります。振り返るとA4用紙5枚も埋まっているわけです。ある生徒は8枚も書いているのです。そうなると、字数に関しては大学の小論文レベルですね。

★ともあれ、それなりの達成感があります。それに、あとで並べ替えたりできます。ポストイットと同じ要領です。

★並べ替えるという順序づけの編集スキルもトレーニングできます。

★論説文とか説明文は、要約と意見を別々にやります。4年生のうちは、書いているうちに混在してしまいます。作者がどう考えたかと自分がどう考えるかを分けることができるのは、実は傾聴するコミュニケーションスキルの補強にもなります。

★少しずつ、意見を書くときに、作者の提示した課題についてから自分がさらに発見した課題について深堀していくパーソナルプロジェクトまではいきませんがマイプロジェクトにシフトしたいとは思っています。

★長くなりましたが、この一連の帰国生入試→総合型選抜→新タイプ中学入試という大学入試から中学入試に逆算していく流れをたどっていくと、この流れに全体に沿ってGLICCが塾として成立しているということは、やはり社会の何かが変わってきたということなのでしょう。

★この新しい変化で、大学合格実績はどうなるのだと攻めよられても、相当すてきな結果はでていますよと応えるしかありません。毎年三田国際の国際入試や英語入試で3人も合格している塾はあまりないのです。

★ですから、口コミで、三田国際や広尾学園の国際入試や英語入試の対策に駆け込んでくる受験生も増えています。ネイティブスピーカーの教員が英語での面談トレーニングができる塾というのも少ないということもあるでしょう。

★今年は小学校の5、6年生の英語教科元年です。これからこの流れはどんどん増えるでしょう。ちなみにGLICCの中学受験生は、みんな英語も学んでいます。SDGs関連、生態系関連の動画をみるとき、海外のものもOKです。動画の内容を生徒から教えてもらう昨今です。お爺ちゃん先生に教えてあげるよという感じです。教えながら学ぶというパターンも、こんなところで使えます。

★すべては、クリエイティブシステム思考と共に。

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2020年10月16日 (金)

工学院インパクト(15)チームSCT!誕生。興味と関心が生まれるパターンカードを創っちゃいましたあ!

★工学院大学附属中高の先生方とZoomでPBLアップデート対話を時々しているのですが、先月行ったとき、「PBLの授業をやったとしても、必ずしもすべての生徒が興味と関心を示すということはない。そもそも自分が興味関心のあるモチーフ以外のものに、興味関心を抱けるとはどんなことか?」という問いがどこからともなく生まれてきました。いろいろなアプローチがでてきたので、だったら、みんなで「興味と関心が生まれるパターンカード」を創っちゃおうと盛り上がりました。

Sct

★そして1ヵ月がたちました。臼井先生から、創りました!とメールが届きました。開けてびっくり感動しました。32枚のパターンカードができあがっているのです。かわいらしいイラストで!

★慶応義塾大学の井庭崇教授のパターンランゲージのカードのヘビーユーザーである先生方は、ついに、自分たちで創ってしまったのです。臼井先生によると、メンバーは、臼井先生、柴谷先生、片瀬先生、柳田先生、濱崎先生と田中歩先生だそうです。

★思考コードを最初に創ったのも工学院です。今や思考コードはいろいろなところで使われています。

★そして、今度は「興味と関心を生むパターン・カード」を創ったのです。どんなにすばらしい教材があっても、プログラムがあっても、生徒が内側から燃えないと授業じゃないよねという生徒ファーストな想いと情熱と愛情が、学びのもっとも根本的な領域のデザインをしたわけです。

★いずれ紹介があると思います。次回のオンラインミーティングで、まずは先生方が活用してから、ご紹介したいと思います。

★いずれにしても、ダボス会議はグレートリセットと才能主義だとビジョンを広報し始めました。あの落合陽一さんもクリエイティブクラスの時代だと本を出版しています。

★そして、ついに!そのクリエイティブな先生方が、目の前に誕生したのです。スーパークリエイティブティーチャー(SCT)があらわれたのです!

★臼井先生にチームSCT誕生ですねとメールを送ったら、すぐに仲間と共有して、次のようなメールが返ってきました。

<そんなSCTだなんて!嬉しいですが、そんなんじゃないのです。自分たちですごいことをやっていると思わず、自然とアイデアを形にすることができるというのが私たちメンバーの本当にすごいところだと、一緒に活動していて改めて感じているのです。>

★なんて謙虚なことば。クリエイティブクラスの3要素は、タレント(才能)、テクノロジー(技術)、トレランス(寛容)です。これはSCTも同様です。この謙虚な寛容なマインドこそ、紛れもないSCTの証拠でしょう!

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ノートルダム女学院(11)中村拓先生の数学はニュートンのプリンキピアの探究だった。

★先日ノートルダム女学院(ND)で、ナレッジカフェが開催されました。ND教育開発センター長の霜田先生が主催する学内外の先生方の対話の場です。ウェビナーではなく、参加したメンバー全員が対話する空間です。今回は、NDの数学科主任の中村拓先生の「数学における基礎学力」についてでした。

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★中1から京大の数学まで、「幾何」をきっかけに中村拓先生からプレゼンテーションがあり、同僚の数学の先生、英語、理科、社会、保険体育の先生方がそれぞれご自身の基礎学力観を語り合うという場となっていました。

★基礎学力とは、一般には知識の定着のように思われますが、この場に集まった先生方はそういう志向性はありませんでした。「構造」「置換」「変換」「知識の拡張性」「身体化」「五感」「モチベーション」「面白さと興味の違い」とかを手掛かり足掛かりに語っていました。

★中村拓先生の2次元の図形を3次元の立体に変換したり、3次元の立体を2次元に置き換えたりするときに、まずは生徒が実際に手を使って図形を組み立てる体験を設定するわけです。4面体の2次元の図は、実は説明がなければ四角形です。

★それが立体に見えるのは、脳神経系の錯覚という復元力、つまりイマジネーションの作用ですが、この作用を第二の脳(セカンドブレイン)である手による図形づくりの体験によって身体化されていきます。

★その図形づくりの際に、生徒は、投影図をイメージしたり、分解してまた組み立てるという、数学的思考(分解・統合・発想)のまさに基礎を第二の脳で体験します。その後、紙上で、今度は多様な図形を描き、その構造に痕跡をいれていきます。

★今年の京都大学のベクトルの問題は、提示されているのは数式だけですから、解き明かしていくには、数式を図形に変換する必要があります。球と三角面と座標軸を組み合わせた図形を描くに至る道のりは中1から始まっているということでした。

★NDでは、各教科PBL型授業のアップデートのための研究もおこなわれています。ND法人のリサーチャーとして私も協力しているのですが、すでに行っている先生方のPBLが世界標準のPBLであることをシェアしているわけです。日本の国内のPBL達人の先生方のセミナーは、今やあちこちでオンラインで行われています。そういう自己マスタリー(学習する組織の一つの柱)も、どんどん行うように霜田先生のほうで情報を共有しています。

★自分のPBLを世界標準のPBLや他校の先生や外部のPBLと対照してリフレクションするというのがねらいです。

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★そして、もう一つ今そのリフレクションリサーチを行いながら、各教科を結びつけるものは何かについても対話をするようになっています。ちょうどそのタイミングで、中村拓先生のプレゼンを聴けたので、あるインスピレーションが降りてきました。

★その各教科の関係づける何かこそ基礎学力で、その基礎学力は知識定着ではなく、ものの見方・考え方だということです。それを思考スキルで先生方と対話しているのですが、ここは当たり前すぎる話になりがちです。

★しかし、この当たり前すぎる思考スキル(ロイロノートでは図式化されています)はツールではなく、哲学だったのです。哲学といっても多様ですが、言語哲学と数理哲学、脳神経哲学という領域なのだと気づきました。これって、リベラルアーツの自由7科を集約したものです。

★今回、中村拓先生のプレゼンは、京大の数学の問題に至ったところで、はっきりしたのは、2次元と3次元どうしの変換と幾何と代数の変換という二重の変換が行われていましたから、これはニュートンがプリンキピアで行った微積分を数式を使わないで幾何で証明していったり、活用して見せた数学の基礎哲学そのものだったということです。

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★中村拓先生の数学は、生徒といっしょにニュートン体験をしているのだとピンときたのです。これは、国際バカロレアのハイレベルマスと親和性があります。

★いろいろな気づきをいただき、先生方ありがとうございました。

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2020年10月15日 (木)

新しい教育社会(07)総合型選抜の質が上がる。思考コードで明らかになる。

★今年の総合型選抜の状況について、先生方と対話して気づくことは、活動報告書に記入する内容や小論文の問いが深まりを見せているのではないかということです。

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★活動報告や自己アピールの文章は、1つの体験で優れた実績をだし、それが自分の人生に影響を与えることを明らかにするものでなければならないということが明らかになってきました。部活や生徒会でがんばっただけでは差がつかなくなったわけです。

★しかし、多くの生徒が限られた有数のコンクールで優れた実績を獲得することはできません。ですから、そうでない場合は、多くの体験でそこそこの実績を上げ、それによって自分は何に覚醒したのか論述しないと難しくなってきました。

★さらに、コンクールとか海外研修とかレールを敷かれた経験の中で優れた実績を残すだけではなく、多くの体験を通して自分なりの新たなイベントを生み出し、その活動が即社会貢献に結びつくものであることをアピールするレベルもでてきました。

★このような3つのレベルは、思考コードのB1C1思考、B2C2思考、B3C3思考に対応します。レべル1の活動報告、レベル2の活動報告、レベル3の活動報告と分けられるでしょう。

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★小論文にしても同じことが言えます。

★一般的には、1つの課題文が提示され、その要約を書き、その要約した作者の考えに対し自分の意見を述べるというレベルでしたが、今ではそう単純ではなくなってきました。

★複数の課題文やデータが提示され、それぞれの関係づけをしていきます。その関係づけて明らかになったテーマについて小論文を書くというレベルまで求められるようになってきました。

★究極は、その複数の課題文やデータの関係を結びつけると、その関係の背景にさらに別の関係があることに気づき、つまり根本的な問題にいきつき、それについて小論を書く。自分だったらどうするのかどう解決するのかまで書き込んでいきます。

★活動報告書と同じように、3つのレベルがあり、思考コードのB1C1思考、B2C2思考、B3C3思考に対応します。

★そして大事なことは、B3C3思考は、レールに敷かれた枠内にとどまらず、自分で事を起こすことが必要です。もちろん、そのように突き動かす動機がポイントです。は根本的な問題を発見し、それを解決したいという動機付けです。

★かくして、とにかく大学に合格するためだけなら、一般入試の方が勉強しやすいというパラドクスが生まれています。すなわち、一般入試より総合型入試の方が易しいということはなくなりつつあります。

★しかし、本当のパラドクスは、世界の影響力のある大学で学んでいく生徒は、日本の一般入試のような体験を高校時代にしないということです。総合型選抜のような体験をして大学に進みます。

★これは、世界で活躍するクリエイティブクラスは、この総合型選抜のような体験の場から、生まれているというコトを示唆しています。

★つまり、クリエイティブクラスとそうでないクラスと階層構造ができてしまうということです。もちろん、これを解消するには。。。なのです。2025年にとんでもないことになりますね。

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2020年10月14日 (水)

新しい教育社会(06)桐朋女子「ザ・グレート・リセット」時代に活躍する人材を輩出

★桐朋女子の広報部長の吉川先生から、数年前のリーフレットを頂きました。江田 麻季子さん(世界経済フォーラム 日本代表)がインテル株式会社の社長時代、当時の千葉裕子校長と対談している記事が掲載されていました。お二人とも、インテルの初の女性社長、桐朋女子の初の女性校長として、女性の社会進出が遅れている日本社会において、希望の語りだったと思います。

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★そして、今江田麻季子さんは、世界経済フォーラム日本代表です。ダボス会議の動きを日本の政財界と共有していく重要な役割を担っています。今回のダボス会議は、本ブログで幾度も述べていますが、「ザ・グレート・リセット」がテーマです。欲望資本主義をリセットし、健全な資本主義に変容させようというウネリをつくっています。

★江田さんは、マーケティングやブランド戦略のプロですが、桐朋女子→早稲田→米国の大学院で社会学を学んでいます。社会の構造を分析して、矛盾を見出し、それを資本主義の条件の中で解決していく見識を持っているはずです。

★社会学は、いろいろ派もあるでしょうが、コミュニケーションと社会の構造の再構築をするアプローチができる学問です。桐朋女子で好奇心を育み、尊敬するといえどもその人に盲従することはないアイデンティティをもって育ったということです。またそのコミュニケーションもオープンで素直に謙虚にダイレクトに話すというエスノメソドロジー的社会学のアプローチも桐朋女子時代に潜在的にカタチづくられたのでしょう。

★そのマインドと思考の視点が、大学、大学院、企業、そして世界経済フォーラムで限りなく生かされています。

★千葉先生にしても江田麻季子さんにしても、それぞれユニークですが、桐朋女子OGとして、好奇心、独自のアイデンティティ、オープン&ダイレクトコミュニケーションというマインドは共有しています。

★お二人に続くOGがどんどん増えていく。つまり、健全な資本主義経済社会を形成していく才能者が実力を発揮していくことでしょう。オープン&ダイレクトコミュニケーションは、多様なネットワークとコラボレーションも拡張しますから、今後の社会の変容はポジティブな未来へ向かう希望がみえてくるのではにでしょうか。

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アサンプション国際小学校(02)問いの対話というアソビがある小学校 学びの竜巻が生まれている。

★今回のアサンプション国際小学校との対話は、森本先生チームと西先生チームの先生方。この両チームは、1人ひとりが共通のテーマでPBLのアイデアを持ち寄り、それぞれはそのアイデアを通して生まれてきた問いを私に投げかけるスタイル。投げかけられた私は、自分の経験から答えると同時にそれが教育学や学習理論ではどのように捉えられているか簡単に説明。それから新たな問いを投げかける。そんな問いの出し合いゲームというアソビができるチームです。

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★今回は、「3枚の数字のカードを組み合わせて、最大の数がでてくる筆算をつくろう」というPBL型授業は可能か?というテーマでした。先生方は小学校3年生に対し実際に授業を行ったり、学年が違っても行ったと仮定して、こんなPBL型授業のアイデアなんだけれど、そのときこういう疑問が湧いてくるのですがと問いかけてくれます。

★1つの流れは、「プロトタイプ→疑問→私からの解答」となります。いろいろな疑問が投げかけれました。生徒の純粋な疑問から出発したらよいのか、それとも問いは教師が用意をし生徒が考えていくというスタイルがよいのか?前者はPBL的で、後者はインストラクション的だけれど、アクティブラーニングには持ち込めると私はこたえました。

★すると、PBLかアクティブラーニングというより、生徒が考える仕掛けをデザインすることが重要ということですね。そういう考え方もある。つまり、先生方は因果関係に縛られるのではなく、いろいろな関係性をつなげる視点をすでに持っているということですね。

★そういうアソビ、ハンドルのアソビトいう意味のアソビ、あるいはモーツアルトのピアノ協奏曲やジャズセッションでアドリブを入れることができるのだけれど、その部分を許容できるかどうかですよね。

★すると、ということは、インストラクションというかアクティブラーニングとPBLの間はグラデーションだということですよね。目の前の生徒の状況にマッチングするように、そこはデザインするということでしょうか。

★このような流れが2つめの流れです。私は、そういう柔軟な考え方をもてるということは、すでにPBL型授業を行っているということですよと付け加えます。

★また、ゴールとは何か?という問いもでました。目標と目的とわけて、答えました。PBL自体の目標、myプロジェクト→ourプロジェクト→worldプロジェクトというはてしない物語(ミヒャエル・エンデ)なんだとか、算数の数の世界の目標というのもあるよね、そしてまず計算の仕方の定着とか自分で法則を見出す体験をするとかいうのは目的とかマイルストーンとか、オブジェクティブとかいうのだろうけれどとブルームのタキソノミーの考え方を紹介したりしました。そして、私からも問いを投げます。「ところで、なぜ5は4より大きいの?」と。それを生徒が考える時間をつくることは可能ですか?と。

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慶応義塾大学SFC井庭崇教授のサイト“Learning Ptterns”から

★対話が続くかどうかは、アソビ心があるかです。柔軟かどうかです。こういう問いを投げかけて、わかりません。それは授業デザインから外れていませんかという対応になる場合も当然あります。因果関係、しかも自分の設定した決定論的な因果関係を変えるつもりがなければ対話は成立しません。アサンプション国際小学校の先生方は、そういう呪縛から完全に解放されています。すてきです。

★このアソビは、実は自分たちが用意したアイデアどうしを掛け合わせていくと、それまで気づかなかったあらたな隠れたピースを発見できるという面白さがあります。慶応義塾大学のSFC井庭崇教授の「ラーニング・パターン」のカードにある「隠れた関係性から学ぶ」という学びのパタンを私は大切にしています。

★対話をしてこの隠れたピースを発見できた瞬間から、学びの竜巻は生まれます。盛り上がります。今回は、ルビンの壺でその話を置き換えました。すると、すぐに掲示板からこれですね!と。トリックアート的感覚は、やはり先生方は日常の中ですでに持っているんですね。

★つまり、すでに先生方の中に潜在的にあるから、そういう本質的な問いがでてくるわけで、私はそれを映し出す鏡なだけなのだと、すべては先生方の内側にあるのだと。そうはっきり言いきれる能力を持っている先生方ばかりだと確認しました。

★この隠れたピースの発見やトリックアートは、実はランディ・パウシュ教授の「最後の授業」の話と交差します。彼は癌で余命いくばくもないのに、いやないからこそ最後の授業をユーモアたっぷりに行いました。感動というより、動画を見るたびに涙がとまりません。彼は偉大なコンピュータサイエンスの教授です。今日のICT環境に大きく貢献しています。

★しかし、子供の頃はフットボール選手になってNFLに出場することが夢でした。大真面目で語るので、会場からは、ランディ・パウシュ教授の巧んだ通り、笑いが溢れます。当然、その夢はかなわなかったのだかれど、チームワーク、スポーツマン精神、粘り強さを学べた。これは私の今の電子工学技術の研究のときに役に立っているのだと。このような学びを「間接的学び」というのだと。そして、この学びにこう名付けました。「ヘッド・フェイク」と。

★隠れたピースを発見する対話、トリックアートをデザインするような対話、ヘッド・フェイクという創造的対話などアソビがあること。これはPBL型授業の極意であると、私はランディ・パウシュ教授の「最後の授業」から学びました。

★森本先生は、このヘッド・フェイクを持ちえていて、PBL型授業で行うアクティビティ「グループワーク」のチーム人数の問いへの私の解答を、非認知能力の話だと置き換えていました。

★今回は、このランディ・パウシュ教授の話はしませんでしたが、「置換」=「模倣」=「メタファー」=「ミメーシス」=「遊び」というアソビの話はしました。

★先生方の授業や仕事の合間でみつけた貴重な1時間。それゆえ、シンプルなスタイルの対話を森本先生と西先生は選択したのでしょう。それがかえって問いの竜巻を生み出しました。この竜巻こそ、アサンプション国際小学校の先生方のエネルギーの顕在化です。ありがとうございました。

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2020年10月13日 (火)

アサンプション国際中高(01)山根先生のPBL型授業はリフレクションの竜巻でGRITな「言葉」のチカラを身につける。

★アサンプション国際中学校高等学校(以降「アサンプション国際中高」)の国語科教諭山根先生のPBL型授業は、生徒の才能があふれる場です。PBLは、最終的にはパブリックオーディエンスに自らの考えや企画、問題解決の提案、実践の報告などをプレゼンするまで上昇気流に乗る学びの場です。

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★クラスの中だけのプレゼンの体験しかしないと、しないよりはましですが、視野が広まりにくいし、複眼思考も鍛えられないでしょう。度胸もつかないかもしれません。自分の言葉のチカラがあるかどうかもわからないかもしれません。何といってもモチベーションの持続可能が生徒によってマチマチになります。

★そこで、山根先生は、東洋大学の百人一首大会や朝日新聞社の「私の折々のことば」コンテストを活用します。学習指導要領の中の詩歌や論説文のところと結合して行うので、授業の中でできてしまいます。

★全体で200分かけて実践したということです。教科書に載っている短歌や評論文をモデル(模倣)にして、どういう点を見て講評をつくる(内省)のかスキルや視点などの知識を発見(格納)していくことをまずします。

★その後、生徒は短歌か折々のことばを創作編集(創出)していきます。そして、まずは、身につけた講評視点やスキル(想起)で、自己添削をします。置き換えて言えば、自己リフレクションをします。そしてそれを山根先生がみて、さらにフィードドバックします(他者リフレクション)。

★そして、今度は生徒同士が講評を言い合います。相互リフレクションをするわけです。

★こうして、自己→他者→相互というリフレクションを幾重にもしていくことで、講評という思考スキルが生徒の中で明らかになっていきます。足りないものは追加されていきます。

★山根先生によると、セルフリフレクションのとき、没入し、相互リフレクションの時には、大いに盛り上がるそうです。

★リフレクションを重ねるたびに、視点もスキルも増えるわけです。生徒は自ら知的に成長していると実感できる授業だということです。

★山根先生のこの授業プレゼンを受け、岡本先生と松平先生も参加し、8つの視点で分析シェアしていきました。

★アクティビティという学びのデザインが、生徒の思考を刺激し、豊かな学びの表情を見せてくれていることが再現されていきます。深い思考には、リフレクションを幾重にもらせん状にセットしていくことが改めて重要であるということに気づいたのです。

★自己添削、相互添削。実はこれは編集過程の基礎でもあります。言葉のチカラは、リフレクションが埋め込まれた対話を幾度も重ねられることと、そのチカラが世界の人びとと共感を生むものであるように考え抜くGRITマインドが必要であることにも気づくことができました。アサンプション国際中高の先生方、ありがとうございました。

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神崎史彦先生との対話 Xエバンジェリストを求めて 1万人計画

★昨夜は、神崎史彦先生とあちこち飛翔しながら対話していました。対話というより、昨今の総合型選抜の市場分析や学問の最前線についてレクチャーを受けていたという感じです。ありがとうございました。神崎先生の話は、ご自身のフィールドワークによるものばかりだから、臨場感があっておもしろい!のです。

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★また、起業家でもあるので、経営手腕のレクチャーも実に勉強になります。ブランディング戦略の話も、ご自身が経験値を日々アップデートしていますから、迫力がありますね。私はノーロゴタリアンなので、たぶん経営的には、私と対話していても、神崎先生にとっては有益情報は何もないのですが、最高善を追究するという神崎先生の資質と私のノーロゴ志向性は親和性があるのかもしれません。

★つまり、神崎先生ような信念をもったマルチネットワーカーと私のような欲望資本主義に距離を置くノーロゴタリアンは、行き着く先は普遍性ということになるのかもしれません。

★その普遍性の境地。普遍と特殊は一致するという境地ですが、もっと身近な話に置き換えると、この社会の経済と命の葛藤解決と神崎先生も私も、家庭という経済と生き方をどうしようかという日々対話の中でいきていますが、この課題解決とは一致する境地ということです。

★あらゆる組織の葛藤解決と世界の痛みの葛藤解決は一致するという境地に行き着くには、どうしたよいのでしょう。

★いろいろシミュレートしてみました。しかし、いずれも膨大な資金調達が必要だし、新しい制度設計も大掛かりになるなあと。ここでワクワクするかしないかで、起業家資質とノーロゴタリアン気質は分かれますが(汗)。

★その新たな制度設計の道は道で今後考えていくわけですが、同時にXエバンジェリスト1万人計画というのはいまここで現実的だということになって、秋の夜長というより、秋の夜中に突入していたので、終了ということでZoomをプチッと切りました。

★Zoomの別れ際は、なんとも歯切れがよすぎ、チェックアウトの余韻がありませんね。

★しかしながら、Xエバンジェリストとはいかなるものか考える対話となったこっとは心地よかったわけです。ここでいうXとは、tarans-とかex-という接頭語がつく言葉の集合体です。未来の重要なキーワードを含んでいる集合体だと思います。特に変容と実存。ちなみにPBLに必要な意味も網羅しています。

★私たちは人間は、内面的つながりや関係がつながらないとき、そこに形式的な圧がかかります。つながっていないことを見えなくする厚化粧をするわけです。これが心身を蝕みます。この関係を断ちながらそれを隠蔽するように厚化粧する社会的文化的心性は人間の根源的なものをないがしろにするメンタルモデルです。

★ここの解きほぐしには心理学や哲学だけではなく文化人類学的なアプローチも必要になってくるでしょう。この根源的なものの回復は、星の王子さまやモモが道を開いています。そこを駆け抜ける神崎先生のようなXエバンジェリストの登場を予感していたかのように。

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品川翔英の進化(09)国語科の突き抜けるPBL型授業。②

★平岡先生の2つめの提案は、「国語表現」でGoogleサイトを活用して、生徒1人ひとりがホームページを制作編集してしまうことでした。校訓である「自律」「創造」「貢献」を、身を持って体験できるクリエイティブな学びです。自分が何を考え感じ、それを世界に発信することでどんな貢献ができるのかダイレクトに実行できてしまうからです。

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★しかも、思い付きでは世間は納得しません。しっかり調べて、データや根拠を提示しなくてはなりません。生徒は、論理的・創造的思考ばかりか知識・理解レベルの思考もフル回転させて取り組みます。まさに思考の領域をすべて活用する「個別最適化」学習です。

★田中幸司先生は、これは私たち教師も学ぶ必要があるとさっそく取り組むという前のめりの姿勢を示しました。今井先生は、中1でプログラミングの授業があるので、自分の体験をポートフォリオ風に掲載もできますねとアイデアを膨らませていました。西山先生は、国語表現は、文字ベースばかりではなく、動画や画像などメディアミックスもできるようになり、生徒の得意な手法で自己表現ができるようになるのは、新しい局面だと。

★平岡先生は、ワードプレスなどを使うより、SNS感覚なので、生徒はすぐに活用できるようになります。技術的なハードルは高くないけれど、表現の出力パワーはすさまじいので、生徒1人ひとりの才能を引き出しやすいかもしれませんと。

★品川翔英の個別最適化は、知識量の最適化ではなく、自自己表現の最適化だったわけです。

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★今回の振り替えりは、「探究パターン・カード」を活用しました。国語と探究をICTで結ぶと生徒はどのように成長していくのか。2枚ずつ選択し、語り合いました。

★そして、その2枚のカードの選択は、結果的に先生方のメンタルモデルの片鱗を示唆してもいました。学習する組織は、互いのメンタルモデルをシェアし尊重し合うことが重要だと言われています。

★どんな想いに突き動かされて語り行うのか、その根源的なそれぞれのエネルギーを生み出す心のパターンに、探究パターン・カードは導いてくれました。

★かくして、ビジョン共有、チームワーク、システム思考、自己陶冶に加え、メンタルモデルを互いに知り尊重するオープンマインドもあふれ出ました。これにて、国語科の学習する組織の態勢が整ったわけです。

★田中幸司先生は、改革委員会の副委員長でもあります。したがって、この国語科の学習する組織をモデルに、学内でシェアし広げていくと告げました。すると、平岡先生が、その際にICTを活用できるところがあれば、全面的に応援しますと。

★アンサング・ヒーロー、そしてアンサング・シンデレラの誕生です。このようなリーダーが存在する組織は最強です。

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2020年10月12日 (月)

品川翔英の進化(08)国語科の突き抜けるPBL型授業。①

★品川翔英の国語科の先生方は、PBL型授業を全員が展開できます。しかも毎回自らハードルをあげていく研修を続けてきたために、世界標準の授業デザインを出来るところまでになりました。すごいですね。

★今では、先生方は、PBL型授業をベースにそれぞれテーマをもちより、その探究成果をシェアする研修となりました。いわゆる学習する組織になっています。今回、平岡先生のテーマは、ICTによるPBL授業のエンハンスメントです。エンハンスメントとは、「巨人の星」を知っている人はあの「大リーグ養成ギブス」を思いだすとよいかもしれません。いや、そんなメタファーがわかるのは団塊の世代だけかもしれませんが(汗)。

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★ともあれ、すでに健全なPBL型授業ができるのに、さらに今までの人智を超えたPBL型授業に挑戦するというわけです。平岡先生は、今回具体的なICTを活用したPBL型授業ケー2つを提案しました。1つは、ルーブリックの集計をグーグルフォームで効率的に行うことができるようにしたのです。2つめは、Googleサイトを活用し、生徒1人ひとりが自己表現ホームページを作成することができるというものです。いわゆる「個別最適化」の動きとは全く違う次元の「個別最適化」です。

★「効率化」などというと、首都圏の私立中高一貫校でも80%は、教育は効率化ではないという勢力が学内で番をはっているものです。こうして、若き才能ある教師は出る杭を打たれ、静かになってしまいます。そして改革なんて動かないものです。

★この頑迷固陋な風土やルサンチマンが渦巻く組織と闘ってきたのが、柴田校長自身ですから、国語科の先生方のようにいイノベーティブな教師は、創意工夫に没入できるわけです。しかしながら、一方で、そこをわかっている柴田校ですから、ハードルも高いのです。どういうことかというと、「効率化」が表面的な楽になる程度の意味しかなければ、はねのけられるし、知識や理解は生徒の学力に合わせてAIやアプリで個別最適化し、創造的才能を豊かにするのは授業でなどというような一見合理的ですが、脳を非人間的に分断する個別最適化もまた認めないでしょう。

★知識・理解も、論理的思考も創造的思考も、きちんとICTを浸透させる挑戦をせよと。

★「個別最適化」をするには、一つはその生徒の学びの状況や考える幅や深さを知る必要があります。今までは、知識・理解ベースの定期テストで見てきたために、生徒の状況を全体像を知るのは、それぞれの経験値に任されてきました。

★それを4月から、ルーブリックに基づきながら単元テストを小まめに行って、痒いところに手が届く学びの環境をつくることにしたわけです。

★しかし、このルーブリックは、言うは易く行うは難しなのです。すでに大学入試改革でeポ-トフォリオが挫折しているところからもわかります。平岡先生が言う「効率化」は、実はルーブリックを行っても、それをデータ化見える化が困難だということに先生方がぶち当たっているので、そこを突破しようという提案で、「効率化」ではなく、不可能を「可能」にしようという話だったのです。そこを謙虚にも「効率化」と表現していただけなのです。

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★多くの学校で、ルーブリックの重要性を語っていますが、そういう学校でフルセットのオンライン授業をやっていない場合、スローガンにすぎません。実行力はなにのにルーブリックだと語っているのです。現場は大混乱だし、徹夜してもデータ処理ができない状況が起こります。それゆえ、現場でルーブリックの持続可能性は挫折してしまうわけです。

★ところが、それを可能にする研究を平岡先生は行い、国語科は、改革の1つの要素である「ルーブリック」を実現可能にする取り組みを実行していきます。しかもグーグルフォームの選択肢型アンケート機能と自由記述アンケート機能の相関を見ることができるので、経験だけでは見逃してしまう生徒の心と身体と頭脳の状況に気づくことになります。

★今回も、生徒の自由記述を分析しながら、どのようなフィードバックが可能か分析し統合していきました。そのうえで、アンケートデータとの相関を考えていくことになりました。声掛けの重要性は教師は皆知っていますが、その声掛けが生徒の状況をきちんとみないで、つまり俯瞰しつついまここでを把握する両方を見ることは、よほどの達人でなければできません。でいない場合、抑圧的でパターナリズム(父権主義的)なコミュニケーションが学内に蔓延します。

★品川翔英学園は、実はもともと柔らかいコミュニケーションが土台になっていますから、そこをエンハンスメントできることは歓迎です。生徒が自律して、創造的に活動し、それが貢献につながることをより促進し豊かにできることであれば、一気呵成に広がるでしょう。

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ノートルダム女学院(10)探究×保健体育×哲学対話②

★保健体育科の三井先生は、前回ご紹介したように、時間の都合がつけば、他教科の授業も見学したり、探究の時間などファシリテーターとして参加したりしています。また教育学や組織開発、医療関連研究、心と身体の研究など外部のセミナーとのネットワークも広い先生です。教科横断を身を挺して実践する越境人です。そのPBL型授業は、まさに生徒といっしょに学際的な知の冒険をするデザインが工夫されています。

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★保健体育科で扱うテーマは、そのすべてがSDGsに関連する社会課題につながっています。ジェンダー問題や感染症の問題は、遠くの話ではなく、まさに自分事として受け入れざるを得ない問題です。探究→議論→探究を深め自己編集していくという過程がベースの授業です。ICTの活用も画期的で、プレゼンなどは、録画して共有したりしています。

★生徒にインタビューすると、「自分とは何か見つめる時間だし、大学入試の時に志望理由書や自己アピールの動画を提出するときにも役に立つ授業ですよ」と。

★三井先生は、「受験勉強のために授業を組み立ててはいませんが、今年京大の医学部医学科学科に合格した生徒が持ってきてくれた特色入試の問題を同僚から見せてもらいましたが、感染症やチーム医療の話などに関して分析的問題もある一方、自分のアイデアも記述する骨太問題も出題されていて、こういう問題にも立ち臨める授業であれば、それはそれでよいと思っています。いずれにしても、みな自分の弱さを見つめ、相互にそこをサポートしていけるオープンなチームワークを創っていけるリーダーシップを授業の中で身につけてもらえたらよいと思っています」と。

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★三井先生は、山川先生とも協働して、哲学対話の経験値も積んでいますが、その山川先生は、宗教科の主任です。カトリック学校なら、宗教の時間はたいていあります。NDもそれの例外ではないのですが、山川先生は、哲学と文化人類学(サブカルチャーも含めて)と神学を学際知で統合して授業をデザインしていきます。ICTもフル活用するディスカッション授業と対話以外何も使わない哲学対話の授業の両方をミックスしていきます。

★そして、すべてのテーマが「人間存在と人類愛」のバリエーションです。来春以降、ダボス会議でも話題になる「ザ・グレート・リセット」の時代に突入していきます。ポスト・パンデミックは、自然とは何か?社会とは何か?人間とは何か?を世界市民レベルで議論されていく時代です。

★山川先生は、「大事なことは、それぞれ要素が深く議論されていって、いつの間にかそれぞれが分断されてしまうようにならないことです。要素間の関係をつないでいく熟慮と対話と気遣いを大切にする授業をしていきたいと思っています。キリスト教的には、関係を断つことは罪です。その罪悪感は、どんどん人の繋がりを疎遠にします。欧米の精神分析学などの出発点はここを無視しては成り立たなかったでしょう。ですから、心理学的には、抑圧の壁ということですね。この障壁があるから私たちは大切なものを見失ったり、手放したりしてしまいます。それを回復するにはどうしたらよいか。生徒たちは、身近なところに、その普遍的な心の動きがあるのを鋭く察知します。その課題解決には、つながることが大切だということは議論しながらあるいは哲学対話をしながら気づいていきます。もちろん、頭ではわかっているのですが、議論や哲学対話の中で、身に染みて内側からつながる=関係=ケア=隣人愛という連鎖が溢れてくる体験を大切にしたいと思っています」と。

★山川先生と対話していると、本当に謙虚で、「この存在の根源を生徒が深刻に受けとめながらも、その本質にワクワクしながら探究していけるには、やはり学びの環境の創意工夫は大切だと考えています」と語ります。そのため、私ともいっしょにPBL型授業のデザインスキルの研究をしてくれているわけです。

★学問的であり現実的であり、生徒の身近な生活のいまここに本質を映し出す授業を追究し続けているのです。このような授業が探究の時間以外にあるNDは重要な何かを生み出そうとしているのでしょう。

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ノートルダム女学院(09)探究×保健体育×哲学対話①

★ノートルダム女学院中学高等学校(以降「ND」)の授業は興味深いシステムです。まるで植物のように有機的に成長しています。今まで各教科のPBL(Project Based Learning)型授業の取り組みを紹介してきましたが、探究の授業、保健体育の授業、宗教の哲学対話が行われている意味を少しご紹介します。

★いずれも、NDの生徒全員が学ぶ場であるといのがポイントです。

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★中1のSTEAMクラスの探究の授業を拝見しました。STEAMクラス担当の先生方がリレー形式で行っていきます。つまり、スーパーバイザーとファシリテーターが順番に入れ替わっていきます。今回私が拝見した探究の授業は、数学科の北島先生がスーパーバイザーでした。また学年主任で理科の村田先生や保健体育の先生も参加していました。ファシリテーターは理科の田中大先生と赤田先生でした。

★中1のこの時期ですから、文献リサーチと好奇心・興味・関心を広げ深めるスキルを身につけていきます。図書館で、関心のある事柄を、1事象1情報カードにまとめていきます。

★そのとき、北島先生は言語技術に基づいて、テーマ、トピックセンテンス、比較、理由、具体例など意識して書くように思考スキルを生徒と共有します。また、ファクトとオピニオンをきちんと区別する習慣も確認します。ファシリテーターがそこを見守り、声掛けをしていきます。

★教室に戻ってきたら、そのカードの中から、一つ選び、選んだ理由やその事象に対する意見や感想をワークシートに書きます。もちろん、その情報のまとめをパラグラフライティングという言語技術をベースにまとめます。ここでもファシリテーターは、サポートします。なかなか書けない生徒や情報があふれて収拾がつかない生徒がいたら、書く前に話を聴くという瞬間を設けます。

★そして、ピアシンクシェアをしながら、プレゼンしたとしたら、パブリックオーディエンスと共感できるかどうか対話していきます。リフレクションシートに生徒による相互フィードバックも書き込んでいきます。先生方もフィードバックしていきます。

★この探究は、リサーチや観察からはじまり、好奇心・開放的精神を培い、問いの問いを生徒自身が生み出すプロセスですが、Zoomで北島先生と村田先生とリフレクション対話をしたときに、分析→統合を往復し、その過程の中から発想が生まれてくるという数学的思考や科学的思考の基礎をトレーニングしているのだということでした。

★なるほど、北島先生はご自身の数学の授業でも、そこを大事にしているし、村田先生も観察から始まり、分析→統合→発想という循環を大切にしています。

★こうして、探究と教科の結びつきも見えてきましたが、北島先生と村田先生は、「それができるのは、コンテンツ(内容や素材)は違っても、ものの見方や考え方のプロセスが互いに親和性があるように授業デザインしているからです」ということでした。私にはデザインというよりアートのように感じました。機会を組み立てるような感じではなく、有機的な自然の循環を生成しているような感じなのです。(つづく)

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2020年10月11日 (日)

工学院インパクト(14)教務主任田中歩先生の生徒とつくる未来シナリオ

★工学院の教務主任田中歩先生は、長男が寝るのを見届けて、Zoomに現れました。就寝前の娘さんもおやすみと顔を出してくれました。保育園の友達関係の話や、弟が保育園に通うようになったら、自分もお迎えに行くんだという話も聞かせてくれました。田中先生の目じりはさがりっぱなしでした。

★歩先生の教育の原点「生徒ファースト」は、ここにあるなあと感じながら、22時ごろから対話が始まり、いつものように午前1時を回ってしまいました。お疲れのところ、ありがとうございました。

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★例によって、特にテーマがあるわけではなく、現状感じていることの情報交換の中で、話は拡散していきます。その中で、深堀りする話題がでてきます。

★たとえば、18歳成年の話とカリキュラムのアップデート、総合型選抜、探究論文、生徒の活動などをいかに有機的に結びつけて密度を高めるかなど、具体的な結び付け方についてどんなことを実践しているか、どう改善していくか、どんなビジョンがあるのか、かなりプラグマティックな話になっていきました。

★歩先生の話は、いまここで生徒がどう感じているかどこまで成長しているか、どう未来を開いて欲しいかから立ち上がります。一方で、2060年に何が起こるか予測不能ではあるけれども、今国や自治体、企業などの団体が想定して動いている情報やデータを収集し、そこから生徒自身のオリジナリティが生まれてくる環境をどう作るかといういまここでの共時間と共未来時間を往復して話していきます。

★要するに、すでに誰かが想定した未来を歩くというよりは、どのような未来を多くの人が想定しているのかをリサーチしたうえで、それらの選択肢から未来を選ぶのか、自分で創っていくのかをいっしょに考えていく環境を創りたいと。

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★工学院の新しい教育へのチャンレンジは、かなり突き抜けてしまっています。学内では、それが当たり前になっているので、今となっては、その価値の重要性に気づいていない先生方かもしれません。

★そこに先生方が気づいて、その価値を収斂して、質を増大させるには、ICTを活用して価値を見える化することだと。世の中のいろいろな動きに目移りしないで、いまここで質を高める。それはグローバル教育とICT教育をいかにコインの表と裏の関係にするかであり、それをつなぐのはPBLと思考コードだと。

★ICTをPBL授業のサポートツールだけではなく、価値を共有するメタツールとして活用するにはいかにしたら可能か。世界標準の創造的思考とプラグマティックな発想と生徒ファーストの愛の結合体を生徒といっしょに創っていくのだという気概を共有させていただきました。ありがとうございました。

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2020年10月10日 (土)

新しい教育社会(05)総合型選抜で、実はCASが重要。高1・高2のみなさんへ

★総合型選抜を考えている高1・高2のみなさん、IB(国際バカロレア)のDP(ディプロマ)のコアカリキュラムにTOK(知の理論)、EE(小論文)、CAS(創造性、活動、奉仕)という3本柱があるのは知っていると思います。今年の総合型選抜は、コロナの影響もあって、突然面接がなくなったり、動画を選抜資料の代替にするなどの動きがありました。

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★いわゆるMARCH以上の総合型選抜や東大の推薦入試などは、IBのTOKを意識して問いを創っているということは、広く知られています。ですから、志望理由書や小論文指導は、どちらかというとTOKやEEの取り組みを参照にしながら準備をしているのは当然だったわけです。私も関係している生徒さんとはその情報をシェアしています。

★ところが今年は、大学入試改革のe-ポートフォリオは中止になりましたが、総合型選抜における「活動報告書」は、効力を発揮しています。いくら小論文や志望理由書などの対策をしても、高校生時代の活動は何もやっていなければ、書けないのです。

★部活レベルでは、差がつかないわけです。

★ですから、ボランティアや起業活動をすることは有効です。ただし、それは総合型選抜の対策として行っているというのでは、見透かされます。やるなら、心底ミッションをもって遂行することが大切です。

★もう30年前の話ですが、IB一号店でもあるイギリスのウェルズにあるアトランティックカレッジを訪れたことがあります。断崖絶壁に聳えている古城跡が学校になっていました。キャンパスの案内をインドの生徒がしてくれました。

★この学校に奨学金をもらって入れたのは、自分のインドでのボランティアが認められたからだと思いますということでした。そのときはぼんやりしていましたが、CASは、中学のプログラムMYPとも連続しているので、当然ボランティアはポイントです。

★で、高校のDPのCASで何をやっているのか聞くと、この海は嵐によくなるのです。日々海難救助のトレーニングをしていますと。エッ?それって命危なくないですか?とあまりに愚かな質問をしてしまいました。

★インド時代もそうですけど、命がけでない奉仕活動は、ないのですよと。結果的に奨学金をもらえたし、大学も進めると思いますが、そこでは、今やっている私の1人の力だけではなく、学問と科学と仲間と出会って、社会を良くしていくことは使命ですからと。

★CASの重みと奉仕活動を行う気概と大切な価値を思い出しました。

★ともあれ、総合型選抜を考えている高1・高2のみなさんは、自分の使命や社会課題に対する覚悟を確認し、どうやって、社会に働きかけるかIBのCASの手引きを読んでみてください。きっとヒントが得られると思います。

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新しい教育社会(04)総合型選抜が知の循環を生み出す端緒かも。

★昨日、リアル神崎先生と少し対話ができました。時間がなかったので、今度Zoomでとなりましたが、今総合型選抜の頂上決戦の最中なので、生徒のいまここでの挑戦と未来のゴールのビジョンが互いにパッと共有できました。ですから、ものすごい刺激的でした。

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★神崎先生は読書家でもありますから、いや文献リサーチャーでもありますから、ドネラ・メドウズのシステム思考の本もすぐに共有できます。私にとって本はデータ情報です。こんな貴重で大量の情報が安価に手に入れられるのは、個人商店で資金がない私にとってはありがたいのです。

★ですから、あの本のシステム思考のループ図2枚で社会課題を全部解決するヒントがあるよね、そうそう、あれですよねと瞬時にコミュニケーションがとれるのは、知の竜巻を生み出すことができてハッピーです。

★コミュニケーションも交換ですが、その共訳可能性は「知」です。経済社会では、今のところ交換システムの共訳可能性は貨幣です。これがポストコロナ時代に、知>貨幣という組み合わせに移行するわけですね。

★すると教育と経済の組み合わせも変わります。

★そんなことを、パンデミック前に、アスタミューゼ 株式会社テクノロジー インテリジェンス 部 部長・薬学 博士 川口伸明さんが、「2060 未来創造の白地図 ~人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる」ですでに書いているのですから、自分のアイデアは、まったくありふれているなあと落胆していたところ、久々の神崎先生との対話で、俄然元気がでてきました。

★川口さんの本は、当然ですが、アスタミューゼの成果発表も兼ねていますから、少し距離をとって読む必要があるかもしれませんが、痛快丸かじりです。

★とある日から「はじめに」がスタートします。こんな感じです。

<私の朝は、生体情報のスキャンから始まる。睡眠中の脳波や心電図、体温変化、体動(寝がえり)などのセンサーデータが解析されて、その日の体調にあった朝食がフードコンピューティングにより提供される。腸内細菌や脳の働き、ホルモンバランスまでコンピューターが計算して、食事の内容を最適化してくれる。ゲル化された加工食材を組み合わせて、5Dフードプリンターで好きな形に出力することもできる。

川口 伸明. 2060 未来創造の白地図 ~人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる (Kindle の位置No.78-82). 株式会社技術評論社. Kindle 版. >

★あるあるですが、もっとはやくこうなってくれれば、パンデミックの対応も違っていたでしょう。

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★川口さんの本とドネラ・メドウズさんの本とユバル・ノア・ハラリさんの新刊本とサンデル教授の新刊本(まだ邦訳がないので、deepL翻訳で読んでます)と神崎先生の対話を重ねると、私の中に上記のような知の運動が身体全体に広がり元気になります。

★これはもしかしたらクリエイティブクラスの方々と同じ知の運動かもしれません。神崎先生も、嫌かもしれないけれど、こんな感じで私と共鳴共振共感した瞬間があったかもしれません。

★ギリシア語で「アルケー」は根源という意味や始りという意味があるそうです。プリンキピアという言葉ともシンクロする使い方がされてきたとか。wikipedia情報ですが。

★いずれにしても、総合型選抜や帰国生入試、中学入試などで対話し続けている生徒は、年齢にかかわりなく、上記のような広がりと深堀の知の循環を互いにつなげていけるかが大切だということは経験上了解しています。

★この知の循環の輪が広まることがハピネスブリッジ(山本崇雄先生の言葉)を創ることだと信じたいなあと。ダイアローグというのは遠くギリシア時代からあるわけで、地政学的には、当時はそこはアジアです。ダイアローグは欧米の専売特許ではなそそうです。

★それゆえ、HTHもガーデニングだというのでしょう。GAFAがマインドフルネスを重要だと思うのでしょう。

★経済社会をダイアローグベースの知の循環に置き換える時代がやってきたのかもしれません。経済か命かのせめぎ合いが根底にずっとある様々な社会解題を解き放つ時代の到来ではないかと。

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2020年10月 9日 (金)

キャリアガイダンスVol.434 未来という言葉、禁止!?今、目の前に向き合うことが大切!?

★キャリガイダンスVol.434をいただきました。ありがとうございます。相変わらず編集長山下真司さんのアクロバティックな頭脳に感服です。

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★特集<学びを進化させる「6つの視点」>は、絶妙な高い水準でいながらわかりやさを維持しています。同誌は、公立私立問わず配布されているので、このような読む気になる編集の影響力は絶大です。

★神崎史彦先生の論考もあって、今の時期の総合型選抜や国公立、特に医療系の一般入試の小論文の取り組みに悪戦苦闘している進路担当の先生にとっても大助かりでしょう。神崎先生の鋭く思いトーンぐらいでないと、小論文や志望理由書は差がつかないのです。というと神崎先生は怒るかもしれません。差をつけることが目的ではないのだと。

★そうですね。でも一般入試であろうと総合型選抜であろうと、格差を生む装置です。

★山下真司さんは、そのパンドラの箱を開けることを片方で編集しています。

★矛盾がダメなではないのです。きれいな未来をにんじんとして掲げ、Something importantにマスクをかけるのではなく、直視するようにと。だから、若新雄純さんに「未来という言葉、禁止にしませんか?」と言わせているのです。

★若新さんは、にんじんとしての未来をぶらさげ、鞭をいれるな。未来はいまここで子どもが自ら内側から生み出していく創造的な才能の開花にヒントがあるんだよと。めちゃくちゃ未来を語るんです。

★同じようなトーンで登場してくる東大の教育学部の重鎮秋田喜代美先生は、公立の先生にターゲットをあてて言っているので、本気で今が大切だよと。若新さんとは少しニュアンスが違って、ターゲットが子どもか教師かで違いを魅せる編集はスリリングでした。

★いずれにしても、全体的に未来を語る編集。でも、立ち止まってねと、大切なものはなかなか目に見えないよという編集ですね。すてきです。

★さて、とはいえ、教師向けなので、決定的に足りない要素があります。なぜなら、それは学習指導要領にないので、あえて省略してあります。

★ところが、総合型選抜で、そして今回のパンデミックで、それから2022年の改正民法施行を踏まえて、学ぶ必要のある学問があります。一般入試ではその問いはないのです。先ほども言いましたように学習指導要領にないからです。

★でも、国民としてグローバル市民として学ぶ準備は欠かせないものがあります。それを、SNSなどで語っているのが神崎先生ですね。受験業界では唯一無二ということでしょう。山下真司さんの編集が幾重にも、表現に注意しながら、現状に気遣いながら、でも子供の未来を守るために、Something importantをちゃんと潜ませています。さすがですね。

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工学院インパクト(13)生徒がいまここで未来への新しい価値を見出す 生徒会の挑戦

★工学院大学附属(以降「工学院」)は、まるで2カ月で細胞が全部入れ替わりながらもアイデンティティは変わらない人間の新陳代謝のように、あらゆるものやことを再定義していきます。ある意味独特の組織開発の動きです。グローバル教育の再定義、授業の再定義、部活の再定義、テクノロジーの再定義、進路指導の再定義、カリキュラムの再定義、入試の再定義・・・。これは今後も続くわけですが、その一つの中に生徒会の活動もあります。

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(写真は工学院の生徒会のブログから)

★生徒会というと、みなさんは、どんなイメージを抱くでしょう。戦時中の軍政府の統括の末端組織というイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、連合国においては、生徒が自治を行使し、学校生活を一つのコミュニティやシティとみなす活動だったでしょう。各学校の連合はユースコミュニティを形成し、民主主義を活性化する重要な役割を果たしたりもしています。

★2022年、18歳成年が動き出します。民主国家や市民社会のメンバーとして、国や社会を形成する思考や行為、義務、責任が発生します。日本の学校は古いパターナリズムの文化を根っこで維持しているところも多く、生徒会の役割の新しい価値をどうするかは、実はあまり議論されていません。

★大学入試改革と同じで、動きたくないというのが根底にあるのでしょう。だから、1989年ベルリンの壁が崩壊した時を同じくして、子供の権利条約が採択されても、それに対照して生徒会の役割を再定義することをそれほど活発にしてこなかったのでしょう。

★一方、だからこそなのでしょうが、生徒会の新しい価値を創ろうというウネリもあります。そういう団体に積極的に参加して、自ら生徒会の新しい役割を創り出そうとしている1つが工学院の生徒会のメンバーです。

★同校の生徒会は、現状の国や企業が有している組織上の問題と実は学校や生徒会などの活動も同質のものがあるという根源的な問題に気づき、風通しよくするために、PR活動をしなくてはならないと動いています。情報公開、情報共有の動きをしているわけですね。

★しかし、この作業は果てしなく細かい作業が必要で、相当気合を入れなければできません。お金が潤沢にあるわけではありませんから、SNSなどのテクノロジーを使う必要があります。一方で部活や勉強もあります。それに、工学院の場合は様々なプロジェクトがあり、それにも参加しなければなりません。また2年間かけて自分のテーマをとことん追究する探究論文も作成する必要があります。

★その中で、やらなければそれでスルーできる生徒会の新しい価値を見出し、共有していくGRITな活動をしているのです。

★その活動が認められて、昨年の生徒会長の高校3年生仲野想太郎さんが、一般社団法人生徒会活動支援協会が実施した、日本生徒会大賞2020の個人の部で優秀賞を受賞しました。

★また、生徒会通信によると(「『生徒会通信』No.4~報告:松下政経塾オンラインリーダー研修に参加して~」)、他校の生徒会のメンバーとリーダー研修に参加し、海外とのコンパラティブスタディなどを通して、未来を拓くリーダーとは何か、何をするのか考える機会を得たようです。そして、私たちが普段忘れている何か重要なコトを感じたようです。

★このような活動をしている生徒会のメンバーが50人参加したそうです。50人もなのか50人しかなのか。各学校複数参加しているでようですから、実際には50校参加はしていないわけです。かりに50校参加したとしても、全国の高校の1%です。

★参加したくても都合でできなかったところもあるでしょうが、ここに集った生徒会のメンバーは相当意識が高いということを示唆しています。

★ラウンドスクエアに参加している日本の学校は工学院を含めて5校くらいです。日本の高校の0.1%です。

★つまり、工学院の行っていることは、学内ではあまりに日常化していますが、実は外から見ると尖り過ぎていて、見えないのです。

★出すぎているので、出る杭は打たれるということもありません。杭の先がどこにあるのか見えないのですから。

★星の王子様ではないですが、大切なものは目に見えないのです。でも隠しているわけではないのです。オープンにしているのです。見る側の問題なのです。

★でも、生徒会は、だからこそ情報共有するPRの手立てを駆使し始めているのです。わかってくれる人がわかってくれればよいという諦念はないのです。その気概に敬服です。

★新しい価値は、最初は世の中の人には目えないものです。でも見えるようにしようというアクションが生まれたとき、世界は変わります。工学院の生徒会の活動は、そんな大きな目標に向かっているのでしょう。

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2020年10月 8日 (木)

2021年変わる中学入試(13)西武文理 大胆なクラス名称の変更と算数1教科入試の廃止、教養と思考力と英語力を前面に

★西武学園文理中学校(以降「西武文理」)の改革のラインナップを送っていただきました。京都にいることが多く、だいぶ前に頂いていたのに、今じっくり拝見しています。加藤潤先生、遅くなってごめんなさい。それにしてもこんなに大胆に改革するとは!驚きました。

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★おそらく、進学実績は安定的に伸長しているので、進学教育を前面に出すのではなく、西武文理が本来めざしていた世界標準の教育を前面に出すことにしたのですね。

★クラス名を、「特別選抜クラス」から「グロ―バル選抜クラス」に、「中高一貫進学クラス」を「グローバルクラス」に変更するということはそれを示唆しています。これまで、埼玉エリアは、大学進学実績第一主義の教育が主流でしたが、昨今IBスクールも増え、アクティブラーニングを前面に出す学校も増えてきました。

★進学実績も知識詰込み型授業ではなく、同校のようなPBL型授業を通して出るというのが、いろいろな学校で証明されてきていますから、埼玉エリアで西武文理が新しい挑戦のリーダーシップを発揮するのは自然な流れでもありましょう。

★実際、今回のパンデミック下で、フルスペックのオンライン授業も行ったわけですから、今回の改革の流れは日々の教師の活動から支えられて生まれてきた地に足がついたものだと思います。

★幅広い教養や課題解決型の思考力をベースにしているため、「算数1教科入試」を廃止し、教科入試と適性検査型、思考力入試、英語4技能入試を行うことにしたのは、慧眼です。

★もし本当に、教養や課題解決をベースにした算数の入試をやるのなら、「算数1教科入試」ではなく、適性検査型や思考力入試で行う方が理に適っています。

★「算数一教科入試」は、結局のところ創造的な数学的思考力の問題というより、難問を出題するというケースが多く、将来医歯薬系や理系大学への合格者を出したいという目的の方が大きいでしょう。もちろん、それはそれでよいのですが、西武文理の場合は、そのカリキュラムポリシーやディプロマポリシーからいけば、それではブレてしまうということでしょう。

★こういう一貫性を通す学校の姿勢が眩しいですね。

★そして、パンデミックの第2波第3波にも備えて、出願書類の種類を変えたり、2月は入試日ではなく、代替日を設定するなどリスクマネジメントもしっかりしています。

★教養や課題解決型思考や熟慮されたリスクマネジメントを一貫して行うということは、生徒ファーストな学校であるということでしょう。地政学的にっても西武文理は東京に影響を与える立地です。中央線沿線や京王線沿線の私立学校に多大なハッピーな影響を与えて欲しいと期待しております。

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沖縄から世界を変える(02)沖縄国際学院の数学の豊かさ 中村裕吾先生との対話からの気づき

★前回「沖縄から世界を変える(01)沖縄国際学院 高等専修学校」で、沖縄に新しいコンセプトかつ新しい形態のIBスクールが活躍していることを紹介しました。理事長・校長の知念正人先生は、出会うやすぐに動き、同校の数学科の中村裕吾先生とつないでくれました。なんという俊敏力。ミッション・ビジョン・プランニング(MVP)を現場とつなぐ組織づくりをされています。

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★とはいえ、中村先生はオックスフォード大学で数学を学び、IBスクールでの経験も積み、かつあの憧れのTOKの授業も展開しています。私は何を語ればよいのでしょう。特に仕事というわけではなく、ゆるやかな対話をすればよいのでしょうが、いきなりZoomでとなると、お互いWin-Win(ということばがよいかわかりませんが)あるいは、Give and Takeではなく、Give and Giveという対話ができるのだろうかと思いました。

★同校は、リベラルアーツ・コースというのがありますが、ふとアリストテレスの配分の正義、矯正の正義、交換の正義を想起しました。これが手を変え品を変え、現在の経済システムにつながっているという説があります。一般に貨幣経済は交換の正義がもとになっています。税金徴収や刑罰は矯正の正義です。配分の正義は?実はこれは、貨幣経済の中では、サラリーなのですが、どちらかというと社会学や文化人類学的なアプローチからすれば贈与経済の元型です。愛や徳に基づく慈善・援助などの贈り物を相互に与え合うというノーブレス・オブリージュ的な感覚です。

★今回OISとの出会いは、このノーブレス・オブリージュ的な繋がりになるわけですが、それには私なりのソフトパワーがなければなりません。ソフトパワー同士のシェアという新しい社会のプロトタイプづくりでもあります。

★この<新しい学びの経験>=<新しい社会>の構想に<新しい教育>という位置づけが知念理事長にはあるでしょう。見た目は現状貨幣経済のフローの流れですが、基本は愛と徳に基づいた寄付と教育の贈与経済社会圏の構想です。もともと私立学校は寄付行為で成立していますから、これを本気で貫き通せば、新たな道が開けるのですが、助成金という縛りがありますから、難しいところがあります。

★その点、高等専修学校であったり、インターナショナルスクールは株式立だったりするOISは、はやくも新しい道を歩んでいるわけです。

★中村先生の数学は、分配法則の計算をただ計算の順番を覚えるというのではなく、ギリシア時代の数学の発見の世界に生徒を導き、図形に変換して論理的に納得し証明していきます。当然ディスカッションしながら、手を使いながら、考えていきます。

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(奇しくも2つの似た図が出会いました。OISのリベラルアーツコースのコンセプトと私のPBL授業デザインの8つの視点が共振しそうな予感がします。)

★やがて、平面から立体にシフトする生徒もでてきます。目の前の図形の現象を今度は式にシフトしていくというのです。

★数学史的な話を独立してただエピソードとして話すのではなく、実際の問題に関係づけて展開していくのです。数学を発見した古代エジプトやギリシアの哲学者に生徒はなりきるわけです。IBらしいし、ある意味TOK的でもあります。分配法則がやがて数学的な世界制作につながっていくその可能性を授業の中で生徒は体験してしまうのですから。

★IBの高次思考をフルに生かす授業には「デンジャラスマス」という領域があります。たとえば、無限の世界に没入する数学者たちの天才的でクレージーな(良い意味で)世界を旅する領域です。ゲーデルの話なども中村先生は語ります。

★その先生の話を、私の方では8つのアプローチで分析して全体像を統合していきます。もちろん、中村先生との対話を経ながらです。中村先生は柔軟でかつリベラルアーツの根源と結びつきつけながら対話をされます。

★ともあれ、IBのプログラムの具体的な展開の時に、教師が壁にぶつかるところを今回の対話で突破できそうだという具体的な対話ができたのです。なんとか私のソフトパワーは役に立ちそうだと安心しました。

★8つの切り口がありますが、結局は

1)次元

2)行動

3)時間によるナッジ

4)メンタルモデル

5)マインドを燃やす思考スキルと記憶術

★に集約されるわけですが、4)と5)は、日本の教育現場では、授業の中で展開するのは難しい点でもあります。しかし、IBのTOKやリベラルアーツを実践している中村先生とは、そこにグッと入り込んで対話ができたのです。

★IBのTOKやリベラルアーツのベースが世界の教育ではあるのに、日本の教育にないのが、実は問題であるということが今回私の中で明快になりました。

★いずれにしても、新しい教育社会のプロトタイプが沖縄で広がりそうだと感じ入りました。沖縄プロジェクトというミッションが生まれる予感がします。

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2020年10月 7日 (水)

新しい教育社会(03)かえつ有明×和洋九段女子 新しいSDGsへ

★今、和洋九段女子の新井教頭とかえつ有明の佐野副教頭と私立学校研究家本間とで、新プロジェクト構想について対話しています。どうなるかわからないのですが、私たちは、ドネラ・メドウズとピーター・センゲのシステム思考とマインドフルネスに共感しているので、それに基づいて、新社会構想を18歳成人間近の中高生と練り、社会実装していく段取りを始めました。両校ともアクティブラーニングやPBLを実践しているので、システム思考はノーマルになっていますから。

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★両校はSDGsに関連する活動もしています。文化祭で、和洋九段女子の高1の発信や活動を見ていると、SDGsとは何かを知り、それを広める活動(SDGs1.0)からSDGsの目標達成の解決策を考える段階(SDGs2.0)も経て、もしかしたらそれはまだまだ対処療法かもしれないという気づき(SDGs)を得始めていると感じています。

★そうなってくると、SGDsの目標の根本的問題とは何か(SDGs4.0)を探究する段階になるはずです。

★ここまでは、システム思考の1つのモデルである氷山モデルでたどりつきます。

★しかし、ここから先はシステム思考を新しい場に適用する必要があります。というのも、根本的な問題は産業革命から生まれて進化してきた20世紀産業社会自体が持っている問題であり、この社会の枠の中でのシステム思考では、自ら限界を見出したという話にすでになっているからなのです。

★これは、しかし産業社会に対する革命を起こすような話ではありません。産業社会の限界によって、ストックやアセットが枯渇する前に、それらを新しいカタチで新しい場である創造的教育社会に移行しようという話です。これは自然な話です。

★今やらなければ、完全に枯渇してしまっては新しい社会に移行できないのです。

★そんなようなことを構想し実現できればよいなあと新井先生や佐野先生と話し合っています。とはいえ、3人が一堂に会して話し合っているわけではないのです。それぞれ別々に話し合っているのです。

★新井先生と私が対話している時、佐野先生とできるとよいよねとなり、佐野先生と私が対話している時、新井先生の取り組みとジョイントできないかなあとなり、新井先生と佐野先生が対話しているとき、本間さんともつながらないかなあとなっているわけです。

★そんなこんなで、メールやZoomのおかげで、時間と空間を超えてバーチャル対話が行われていますが、そろそろ一堂に会する予定です。もちろん、金井先生もジョイントするでしょう。

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2020年10月 6日 (火)

聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(05)高橋先生のクリエイティブでイノベーティブな授業

★聖パウロ学園の国語科主任の高橋先生とZoom対話をしました。先生の3つのPBL授業の分析を通して、同校の授業がポストコロナに対応するデザインになっているかどうかをリフレクションしたいということでした。高橋先生は研修部のメンバーでもあるため、新たな企画を提案しているのですが、その一環のようです。

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★3つの授業をリサーチさせていただき、驚いたのは、生徒はスマホとノートの両方を使い、対話しながら、自己沈潜しながら授業に臨んでいたことです。その姿がとても新鮮だったのは、手元にサイバー空間とリアル空間を置いて学んでいたからです。

★ハイブリッド学習というのは、学校と自宅をつなぐリモート学習という意味とリアルな空間でサイバー空間もパラレルに活用する学習という二重の意味があったわけです。

★来年から、高1から順次クロムブック1人1台の環境になります。自粛期間のオンライン授業は、自宅のパソコンやスマホが使えたわけですが、今後は学校でもPCを使えるようにと、それに向けて準備もしているということです。

★それにしても、高橋先生は、Googleクラスルームを巧みに活用しています。フォームのアンケート機能を選択肢問題に適用し、生徒の反応率をグラフ化して、なぜこういう分布になったのかリフレクションしながら展開したり、論述やプレゼンを共有しながら授業を展開していきます。

★グーグルスライドは、パワーポイントやキーノート程のデザイン性はありませんが、自分の考えや気づいたことを見える化してクラスで共有していくことは十分にできます。

★アップルペンシルなど使えなくても、ジャムボードを活用しているので、デジタルポストイットでマインドマップもつくれます。

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★高橋先生は、高校3年生の受験態勢にあって、デジタル活用は2つの意味で効果的だと語ります。「1つは、入試で出題される知識問題の整理や定着。既存のアプリを使わずに、オリジナルの問いをグーグルフォームで連打していくわけです。クラスの反応率(正答率)と自分を比較ができますから、励みにもなるし、自分の弱みをモニタリングもできます。リフレクション機能が受験に対するモチベーションを挙げます」と。

★もう一つは、「国語の授業では、私小説を編集して書き込み、共有しているわけですが、これは自分を見つけることにもなるし、自分を突き動かす深い動機を発見することにもなります。これは志望理由書を書くときにも役に立つはずです」と。

★両方に共通している点は、仲間とリフレクションを共有する機能が充実しているということですね。

★PBLはmyプロジェクト→ourプロジェクト→worldプロジェクトと螺旋を描きながら生徒が成長していく学びの場ですが、それに相互リフレクションが欠かせないということです。

★だとすると、テクノロジーによって、この相互リフレクションが豊かにサポートされるのは、欠かせないということです。

★高橋先生は、小説を編集するというクリエイティブな活動と相互リフレクションを加速させるイノベーティブなサポートの統合を果たそうとしているわけです。

★もちろん、パンデミック以前も、このチャレンジはずっとなされてきました。だから入学後の生徒の成長は目覚ましかったわけですが、今後はますます自己変容度が豊かなになるということでしょう。

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新しい教育社会(02)中等教育と高等教育の新しい流れ たとえば、新渡戸文化学園やiU

★ポストコロナショック時代をどう描くのか?私たちは今回のパンデミックに見舞われる前は、未来を予測不能と称し、VUCAの時代だと語っていました。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の英語の頭文字をとって総称していたわけです。すでにその状況下で暮らしていたわけですが、どこか遠い話のように感じ、変わることより変わらないことを選択して生活していたきらいがあります。しかし、パンデミックに直面した今は、私たちはまるで黒船がやってきたように変化を迫られています。しかも、世界同時的に。

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★この変化の竜巻を教職員全員が一丸となって生み出している学校の1つが新渡戸文化学園です。統括校長補佐の山本崇雄先生をはじめ同校の先生方は、このVUCAを読み替え=De-sign(脱表現)してしまったのです。変動性に揺らぎながらも動じない重心を生徒1人ひとりが見つけられる環境を創っています。その重心こそ、生徒1人ひとりのかけがえのない価値(Value)でしょう。

★不確実性は、つながりを切るリスクがあります。関係が立ち切れること、それは愛をも切り裂きます。それゆえ、関係を持続可能にするためにも、いつでもどこでもつながるようにテクノロジーを駆使できるようにしています。Ubiquitousの環境を生徒自身がコロナ禍ですでに活用できるようになっています。

★複雑性は、それがゆえに創造性(Creativity)を生み出すというパラドクスを生めるような環境、特に授業の変容ぶりはすさまじいですね。山本先生は上智大の奈須教授と「ポストコロナの授業づくり」という本を発刊したばかりです。奈須教授といえば、授業とオープンスペースの関係を各自治体と共創した教育学者です。山本先生と共鳴共感共振するのはなるほどです。

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★そして曖昧性。もやもやして鬱屈している時代。でも、大丈夫。コンパッションという寛容にも世界の痛みを引き受ける清浄(Airy)なマインドが生まれる余白が時間と空間の中に設定されています。

★新渡戸文化学園はこども園から短期大学まである総合学園です。新しい教育社会が生まれる1つの強烈で柔らかいモデルになるでしょう。

★さて高等教育の方でも大きなウネリがあります。新設のiU(情報経営イノベーション専門職大学)の中村伊知哉学長が中心となって、11校による専門職大学コンソーシアムが立ち上がりました。

★専門職大学は、大学時代に起業や専門知識の応用をしてしまいます。大学時代に専門知識を研究して、就職したらそれを生かしていこうというわけではないのです。

★2022年に改正民法が施行され18歳成年が誕生します。今までのように、大学卒業してから働くでは、遅すぎますね。というか、このリニアーなキャリアデザインこそ変わる必要があります。いつでもどこでも学び働ける環境が本当は必要なのです。日本の社会は、まだ40%は高校で職に就きます。

★AI時代、この領域の職がなくなる可能性もあります。であれば、専門職大学で学びながら働くというか、学び即仕事となる動きが必要になるでしょう。

★そうなってくると、中等教育までにリベラルアーツを行っておく必要があります。新渡戸文化学園のように新しいリベラルアーツを行い、専門職大学のように学ぶコトは仕事を生み出すこと、仕事をすることは学ぶコトという、まるでウイリアム・モリスの描いたハピネスユートピアのような社会が到来するのかもしれません。

★コロナ以前は、一部のファーストクラスを生み出す社会でした。ポストコロナ時代は、みんながクリエイティブクラスになる時代です。それには教育は社会に出る執行猶予期間ではなく、教育即社会なのです。

★以上のような中等教育と高等教育の2つの動きは、一見別々のようにみえるのですが、そのウネリは、クリエイティブクラスが生まれる教育社会を創出する合流となるでしょう。

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2020年10月 5日 (月)

新しい学校の条件(06)新渡戸文化学園 決定的に新しいsomethingがある②。

前回「新しい学校の条件(05)新渡戸文化学園 決定的に新しいsomethingがある。」で、こう書きました。

<ミーティングの過程の合間と終了後、山本先生とキャンパス内を対話しながら散策した時にでてきたキーワードが5つほどありました。決定的に新しい学校の条件は、その5つがすべてある学校だなあと感じました。そのキーワードとは?当日お待ちしています(笑み)。>

★実際に、山本崇雄先生と石川一郎先生と対話をし終えたときには、5つどころではありませんでした。幾つかご紹介します。

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★「共感」「共創」は、対話している中であふれていることは、参加された保護者もすぐに気づいたことでしょう。実際に座談会の後に行われた在校生による説明会で、それはそれこそ共感されたことでしょう。

★「トランスフォーメーション」という生徒も教師も学校も柔らかい発想を大切にしているというのも了解できました。指示待ちの精神はありませんでした。それからお山の大将的なリーダーシップではなく、みなが気遣う寛容的なリーダーシップがあらゆる場所で発揮されていました。そういう自己変容マインドにあふれていました。

★そう「寛容」もキーワードですね。寛容は「余白」も生みだします。自分主導で邁進するのではなく、共に歩んでいくには、傾聴し、受容する心の余白や時間の余白が互いに必要です。時間はリニアーに進むのではなく、螺旋を描いていきます。アクセルを踏むだけではなく、エンリッチメントな広がりが感じられました。

★そうですね。その豊かな心や時間の広がりこそ「心地よさ」を生み出します。それは対話を中心とする授業やキャンパス空間にもありました。間接照明や窓からの光が柔らかいのもすてきでした。

★この「心地よさ」はダブルメッセージが含まれています。1つは<comfortable>という意味です。安全・安心な場所です。Cゾーンとよく言われる学びの場です。そしてもう一つ<homish>。私という存在とは何か考え、苦悩し、思索し・・・そんな想いを包み込む内なる存在の故郷をマインドセットできます。だから失敗しても安心なのですね。試行錯誤への挑戦が可能性を広げます。

★かくして、このような学びの場を<デザイン>する創造的マインドを有している教師がたくさんいるわけです。そして、そのデザインを可能にするには<テクノロジー>が必要ですが、教師も生徒も共有し共創しています。

★何より生徒が<主語>です。だから一人ひとり<才能>をのびのびと豊かに広げていきます。

★<才能><テクノロジー><寛容><余白><共感><共創><心地の良さ><トランスフォーメーション><デザイン><創造的教師>・・・・。そしてそれぞれのキーワードがダブルメッセージを持っています。2×2×2×2×・・・・・。2のn乗は、もはや無限です。「できないとは可能性なのだ」という山本崇雄先生のメッセージに収斂していきますね。

★新しい学校の条件は、シンプルだけれど複雑系です。でも当然です。人間の存在は本来そういうものなのですから。

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2020年10月 4日 (日)

新しい教育社会(01)石川一郎先生と5度目の出会い

★昨日、今までにない新しい学校である新渡戸文化学園の教育座談会で、石川一郎先生と久しぶりに会いました。コロナ禍というのもあったけれど、お互いに大阪の学校から離れたということもあり、1年半ぶりぐらいという感じでした。

★もちろん、オンラインではすれ違っていましたが、リアルに対話するのは久しぶりでした。過去を振り返れば、ロサンゼルスでばったり会ったときも、かえつ有明で会ったときも、21世紀型教育機構をいっしょに立ち上げたときも、大阪の学校で会ったときも、今回新渡戸文化で会ったときも、いつも次のステージの予感が降りてきているときでした。

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★新しいことをやろうよと出会うのではないのです。新しいことの予感がするタイミングと場の交差点で出会うのです。そして、さて、どの道が次のステージに導かれるのでしょうかねとなるわけです。

★今回も山本崇雄先生に誘われて二人は座談会で出会ったのですが、その場は今までにない時空でした。それについては、前回と前々回で語りましたから、ご参照ください。

★ともあれ、一つの学校の説明会で、三人ともマルチネットワーカーなわけです。外部のセミナーであれば当たり前ですが、学校説明会で、内部も外部も往来する越境人が座談会をやるなんて今までにない新しいsomethingが生まれているに違いないと石川先生も私も何かが降臨しているのを感じているし、おそらく山本崇雄先生とその仲間の先生方も感じているでしょう。

★それは学校を去る瞬間に芥先生や小林先生の眼光と交差した時にも感じました。

★そして奥津先生ですね。あの松下村塾も海援隊も京都学派も名プロデューサ―、つまり仕掛け人がいたと言われています。まさに奥津先生はそんな感じでした。

★石川先生と4年後の2024年にマインドセットしようと約束して丸ノ内線の新宿駅で別れました。仮称は「プロジェクトSSS(スーパースマートスクール)」です。

★おそらく一条校もそうでない学び舎もつながって再編される時代が到来します。学校1つひとつの改革ではないでしょう。その構想とそのときのためのスーパークリエイティブティーチャー(SCT)の育成システムの構想をやりましょうと。そして教育世界圏という新しい社会を創りましょうよと。軍事的帝国でもなく、経済国家でもなく、教育社会は世界制作をする新しいカタチです。歴史はそう流れているのですから。

★したがって、2021年のグレートリセットが求めるビジョンは、おそらく教育社会構想です。資本主義から才能主義へというのは貨幣価値から教育価値へパラダイムシフトするということです。

★共約コードがAIによって貨幣価値から教育価値になります。貨幣価値は商品生産プロセスの価格と利益の象徴です。教育価値はプロジェクト学習のプロセスフォリオ(ポートフォリオではありません。プロセスのプロセスです。これはAIによって可能になります。今までは多重知能とEQの提唱者ハワードガードナー教授の頭の中にあっただけです。慶応のAO入試やFIT入試はその発想で志望理由書を書く必要がありますが)の価値と貢献度の象徴です。

★まさに昨日同校で対話をした山本崇雄先生や奥津先生、芥先生、小林先生は、この高い教育価値を持っているSCTです。

★21世紀型教育は、スーパー受験ティーチャー(SJT)からスーパーグローバルティーチャー(SGT)へシフトさせました。次のフェーズはスーパークリエイティブティーチャー(SCT)の誕生です。

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2021年変わる中学入試(12)新渡戸文化学園のハイブリッド説明会 キラキラ輝く光あふれる②

★新渡戸文化学園の決定的に新しい学校の理由は、にわかにはもちろんわかりませんが、そう感じてしまうのです。今までにない新しさなのです。それは、たぶん「デザイン」の意味の広がりと深さがちがうんですね。「デザイン思考」を取り入れている教師がいる革新的な学校はたくさんあります。ところが新渡戸文化学園は、その教師が1人や2人ではなく10人以上の単位でいるということです。そしてさらに決定的に「デザイン」の意味が本当の意味での「デザイン」なのです。

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★その象徴的なのは、山本崇雄先生の2つの物語です。1つは、「できないことは可能性」と読み変えるという話です。目から鱗、ものの見方を変える、認識や意識のコペルニクス的転回をデザインする教育ということです。先生ご自身の「教えない教育」というこの絶対矛盾的自己同一という境地。これです。シリコンバレーがエンジニアリングではなくガーディニングだというのと別の文脈で山本先生はシンクロしているという話もそうです。

★今回のパンデミックで、マズローの五段階欲求説の話がいろいろなところで話されています。その際、5段階目の自己実現は、6段階目の「超自己実現」に進むことが必要だという話ですが、それはマズロー自身が予想していました。しかし、それは心理学の話ではなく、ZENという宗教的マインドフルネスなので、科学ではそこは寸止めですね。

★しかし、私たちは科学的考え方やもの見方を大切にするけれど、私たちは科学である前に人間です。精神的な要素に「超」というものがあるならば、科学的でないと斬り捨てるのではなく、いかなるものか一度寛容的な態度で耳を傾け、眼を開いて眺め、認めてみるのもよいでしょう。

★そういう深い話が、「できないことは可能性」「教えない教育」新しくて普遍的な「絶対矛盾的自己同一」という「アイデンティティ問題」です。このようなデザイン力は、Designではなく、De-signですね。前者はビジネスデザインの意味の時に使います。クライアントのニーズに対応すればそれでよいのです。

★でも、後者は生徒の絶対矛盾的自己同一の領域で求められる・探究される才能を生徒自身がDe-signできるように、慣習的・因習的蓄積物を脱デザインするわけですね。De-signはオリジナルです。ソフトパワーです。Designは既存の組み合わせで満足します。

★ですから、De-signは、なかなか真似はできません。もちろん、いずれ真似られるでしょうが、ハードルが高いのです。どうぞ私をどんどん真似してくださいという軽やかに語る方もいますが、さて、それは幸せの橋を創ることでしょうか。高いハードルを共有してこそハピネスブリッジでしょう。できないことは可能性というのは、一見誰も取り残さないと語っているように見えます。たしかにそうなのです。でも自立/自律に挑戦するから開かれるのです。その約束は必要なのです。その後は、徹底的にその勇気をサポートするのです。新渡戸文化学園はそういう学校になったのです。だからこそ、フラットな感じで語れるのでしょう。

★もう一つの山本先生の物語は寛容な社会、余白を大切にできる社会を創りたいという想いでしょう。もちろん、その種が学校です。

★この「寛容」と「余白」のダブルメッセージは、私の中で、「教えない教育」=「涵養教育」というイメージを結びました。「涵」という字は「水」と「函」から成り立ちます。命の水が心の余白という「函」にたまるからこそ、創造性は生まれ開花し世の中に役立つマインドの竜巻を生み出すのではないでしょうか。

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★教育座談会が終了すると、体験授業が終わった生徒がキラキラした目をして会場に戻ってきました。そして迎え入れたのは在校生です。中学生が学校説明会をするのです。柔らかく、緊張することなく、満面の笑顔で語り掛けます。参加した生徒や保護者もグーグルフォームで質問をします。1つひとつに対応していきます。

★保護者は、新渡戸文化の教育、教師のすばらしさに共感し、そして在校生に感動し、その姿に自分の子どもの未来を描いたでしょう。偏差値でDesignするのではなく、わが子の未来の才能でDe-signする術を学んだことでしょう。

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2021年変わる中学入試(11)新渡戸文化学園のハイブリッド説明会 キラキラ輝く光あふれる①

★昨日3日(土)、新渡戸文化中学校は説明会を開催しました。柔らかい映像と癒される音楽が流れるミニホールさながらの居心地の良い空間に保護者は集まってきました。密にならないように分散して着席。すぐに一杯になりました。今回は対面の説明会ですが、生徒といっしょに来る方が圧倒的に多く、そうでない場合はオンラインで参加している方も多かったようです。リアルな対面とウェビナーの両方で参加できるハイブリッド説明会でした。こういう瞬間にも選択ができる気遣いが心地よさを生み出しているのでしょう。

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★保護者向けの説明会は同時開催教育座談会から始まりました。「同時開催」?ではないではないかとお思いの方もいるでしょう。そうですね。普通は同時開催で体験学習もやっていますという表現になるかもしれません。しかしあくまで、主体は「生徒」です。体験授業と保護者の説明会がセットなのです。

★生徒がテクノロジーを使いクリエイティブな体験授業にキラキラ輝きながら取り組んでいる間、同時開催で教育座談会を行うよというメッセージが込められていたのです。誰が主語か、つまり生徒ですが、その存在の価値への気遣いが、新しい学校の条件の1つです。

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(右下の私が語っている写真は、小林先生が撮影して送ってくれました。ありがとうございます)

★教育座談会は、山本崇雄先生(小中高等学校統括校長補佐)が主旋律を第一バイオリンで奏でました。石川一郎先生(聖ドミニコ学園カリキュラムマネージャー)は、第二バイオリンで主旋律の中の大テーマを繰り返し変奏していました。私は私立学校研究家であり学校法人ノートルダム女学院リサーチャーとして中学入試の時代とともに変わりゆく通奏低音を奏でました。

★新渡戸文化学園がこれまでの革新的な学校と大いに違うのは、このような3人で学校説明会を実施できてしまうということもその一つでしょう。というのも、山本先生も新渡戸文化学園だけではなく、多くの学校やメディアも巻き込みながらある意味ハイブリッドワークを行っています。

★石川先生も校長・学院長経験者であり現在は多くの学校のアドバイザーであり理事や評議員委員です。やはりハイブリッドワーカーです。

★私もある意味そうです。塾・学校アドバイザー、先生方のPBL研修ファシリテーターなどを行っています。

★それに3人とも執筆活動も行っています。もっともお二人はベストラー作家で私は売れない作家ですが(汗)。学校外の講演会やセミナーでこのような座談会はありますが、一つの学校の説明会で行われるのは珍しいと思います。行ったとしても、講演者を1人招いての講演で、対話型の座談会にはならないと思います。

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★それに、この説明会をコーディネートやデザインしている同校の先生方も全く新しい未来型の教師です。テクノロジーを使うのは当たり前で、大事なことはデザイン思考やアート感覚です。それともちろん、プラグマティックな実践家です。おそらく、理事長平岩国泰先生、校長小倉良之先生、統括校長補佐山本崇雄先生のもとに集結してきているのでしょう。参加された保護者も、新しい学校の情熱と息吹を感じながら参加できたと思います。

★山本先生の旋律は、すでに生徒が主語になって教科を横断して社会課題を自分事としてとらえて、自分はいかにして解決していけるか取り組んでいるカリキュラムの話でした。そして、生徒が主語になる、つまり自律するには、教師がどう変わったのか、学びの環境や授業をどうデザインしているのかをすばらしいデザインのスライドで語りました。

★山本先生はApple、私はMicrosoft。参加者は新しい学校とはプレゼンテーションも違うなあと感じたことでしょう。とにかく、山本先生のデザインは、スライドに限らず学びの空間づくり、学びの時間、教師の仕事に、生徒の生活に余白を大事にしていくという話が一貫していました。パンデミックの時にニュートンが外に出ないで有り余る時間を思索に自然法則の発見に新たな数学記号の構築に費やしたような余白を創出することに情熱を傾けていることは明らかでした。

★石川先生は、その話を受けて、家庭ではどうすると生徒が主語になれれるのか、そうはいってもつい不安になって余白を生めるような指示をしてしまう。それは、日本の学校がそもそもそうだからで、家庭と学校が安心して余白を大事にしていける協力ができることが大切だと今回の大テーマを変奏曲よろしく語っていました。

★私はその余白を大事にするという点に関しては「モモ」の話を少し引用しました。時代の流れの中でこのコロナ禍で何が起こっているのか、それを象徴するのには、8月にNHKで特集されていた「モモ」の話はピッタリだと思ったからです。時間泥棒から大事な時間を取り戻す話は、物語でありながら、社会課題を子供たちといっしょに考える時を生み出します。

★モモの話に参加された保護者の目は輝き笑顔も見えました。やはり集った保護者は高感度の方々なのだと。

★山本先生は、その余白を生むには、不安や恐怖に追いかけられたりあるいはその逆につきつけたりする不寛容な社会になってはいけないと語ります。寛容性(Tolerance)がクリエイティビティを生み出す要素の1つだとは、リチャード・フロリダ教授や落合陽一氏もフロリダ教授を引用して語っています。ダボス会議のテーマ「ザ・グレート・リセット」もフロリダ教授の影響を受けています。世の中はそういう道を開こうとしています。新渡戸文化学園は、今までにない新しい学校として、その時代の交差点に出現したのです。(つづく)

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2020年10月 3日 (土)

聖学院インパクト(07)サイトが語るソフトパワーの拠点「教科学習」

★聖学院について、私は10年以上ずっと注目してきました。自称聖学院アンバサダー(汗)、いや応援団長かもしれません(おせっかい汗)。思考力入試やタイ研修、中高生の活躍、オンリーワン・フォー・アザーズ、初代校長石川角次郎のことなど、ホンマノオトで触れてきました。しかし、ブログは全貌が見えずらいですよね。ところが、最近同校のサイトがリニューアルされていて、全貌が明快・感銘・感動の三拍子揃った表現に変貌しているのです!必見です。

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★まず、トップページのヘッダーメニュー(本でいう章立て分類)を見て驚きです。「探究・PBL型教育」という名称が表示されているのです。他の学校ではまずない名称です。それだけ、聖学院は「探究・PBL教育」に力を入れているということの証です。

★みなさんは、まずここをクリックして入るといいなあと思います。そして、「グローバル教育」もいいですよね。次にここをクリックすることをお勧めします。驚くべき光景がそこには広がっています。

★しかしながら、私は「教科学習」のメニューを最初に選びました。だって、多くの学校は、「教育内容」というメニューの中に埋め込められるサブメニュー扱いなのに、ドーンと前面に「教科学習」がでてきています。しかも「教科教育」ではなく「教科学習」です。

★ちなみに「教科学習」を聖学院と同じように前面に打ち出しているのは筑駒です。同校では「教科」は教科書を超えた(範囲は国立なのではみ出さずに)エッセンスを学べる場です。そして、聖学院は、教科書を横断的につなぎながら深堀していく探究型教科学習、つまりPBL型教科学習です。

★どういうことか?多くの学校は、アクティブラーニングや探究、PBLは、特別な教育活動だったり、LHRや総合学習の時間で取り扱われるのであって、ふだんの教科の授業は知識定着型の古典的なスタイルです。前面に出す特徴がないのですね。ルーチン扱いなわけです。

★ところが、ルーチンなだけに、学園生活の中で、生徒が最も多くの時間を費やす場なのです。

★もったいないですね。その時間を有効に活用すればよいのに。

★そう!そうなんです。聖学院はそこをしっかりやっているのです。教科学習で好奇心!自己開示!なぜだろうと深い問いを投げかけるリフレクション能力!の三拍子が揃っているのです。

★「探究・PBL型教育」「グローバル教育」を見てきた皆さんが、このヘッダーメニューをクリックしたとき、カリキュラムポリシーというのがすぐに目に飛び込んでくるはずです。さあ、クリックしましょう!ほかの学校のどこにもない教科学習のシステムが広がっているのを目にするでしょう。なるほど、「教科学習」が「探究・PBL型教育」「グローバル教育」と連動していてシナジー効果をあげているはずだと気づくでしょう。

★そのシステムとは?次回みていきましょう。(つづく)

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2020年10月 2日 (金)

学びのNew Impactを求めて(01)現状の束縛から解放される場をつくる。

★2011年から2019年まで、21世紀型教育機構の新しい教育創りに参加させてもらい、その過程でいろいろなものが見えてきました。今は来年の<学びのNew Impact>創出の準備をしています。そのために相変わらず独断と偏見ですが、現状の学校の地図を描いてみました。

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★21世紀型教育機構を運営していく過程で、日本語IBだとかその他の海外の優れたプログラムなども検討する機会を得ました。そして、当たり前ですが、日本というのは、「一条校」に縛られているということがだんだんわかってきてました。

★先生方や教育関係者が、自分の良心と正義で憤懣やるかたない情熱を語り合いますが、その葛藤が生まれるのは「一条校」であるからという制約があるからなのです。もしこの制約から逃れようとすると、IBのような世界の大学受験資格を有しているプログラムと提携しなければなりません。

★また、「一条校」としての高校卒業資格がなくても、大学受験資格は高校卒業資格に相当するレベルのものを認めるという領域もあります。助成金がもらえないので、勇気がいるのですが、そういうことです。

★そう、「一条校」というのは、学習指導要領ベースでやることによって助成金がでるという国家システムです。

★だから、「一条校」の枠内で特色を出す競争は閉じられた世界での競争なので、強迫観念の応酬となってメンタル的には鬱屈しがちです。心理学はそのような抑圧社会をどうすることもできないのだから、その中でどのようにハッピーに生きるかを研究するわけです。

★倫理や道徳も、その「一条校」としての枠内での話になりますから、世界から見たら、極めて孤立した倫理や道徳で、世界からすれば危うく見えてしまうのです。

★はてさてどうしたらよいのか?今すぐ「一条校」から離れるわけでにも行きません。今のところいたるところで枠を突き抜けることの意味を対話する以外に方法はないでしょう。その過程で突き抜ける意識がウネリとなったとき、世界は変わるでしょう。それが<学びのNew Impact>になるでしょう。

★今も「一条校」の中にいて、そこへ突き抜けようという動きをしている先生方はいます。しかし、それが「一条校」という当たり前の前提を崩そうという意識からでているわけではないので、突き抜けることはなかなかできません。

★現状、私は、この<New Impact>につながるウネリを見つける作業をしているわけです。改革や革命というより、過冷却アップデートという感じです。機が熟する状況を対話によってつくっていくことと、あるタイミングでザーッと雨が降り出すように、事が成就する。アップデートが生まれるという感じでしょうか。

★期待できる先生方はいっぱいいます。そのような先生方が理事長・校長になれば、あっという間に世界は変わるでしょう。そうでない限りは、アンビバレンツという近代の人間のシステムと交渉しながら進まなくてはなりません。

★ただし、今回のパンデミックで、この近代的人間像をアップデートしようという動きがでていることも確かです。アーキテクチャー法というオンライン上の新しい慣習法を国家はどうするか今躍起となっているのがそれを示唆しています。IBの学習者像にその意識を加えて11の学習者像にしてくれれば、一条校でないIB校で<New Impact>につながるウネリが生まれますが、それはまだ難しいでしょう。なぜか?それは言うまでもないでしょう。

★であれば?一条校でないIB校で全員がDPコースをとれない場合、IBのエッセンスをベースにした21世紀型教育をやるところがでてきます。そこには、その可能性が見えます。

★一条校であっても、株式立や公設民営など民間が連携しているところは、そのような希望がありますが、経営上なかなか難しいのですね。

★しかし、現状、経営上無理でも、その制約があるからこそマインドの醸成は可能なわけです。そのマインドを受け入れる資金調達をどうするかですが、助成金を当てにしているとできません。いや、あるいは、助成金を活用して、相互にシナジー効果が生まれるような交渉をするか。

★現状は両方の筋でアプローチしていけばよいとは考えています。いずれにしても、この<New Impact>コンパッションを共有できる方々との対話を進めていきたいと思います。

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2020年10月 1日 (木)

新しい学校の条件(05)新渡戸文化学園 決定的に新しいsomethingがある。

10月3日(土)、新渡戸文化中学校で学校説明会が開催されます。同時開催で教育座談会もあります。山本崇雄先生と奥津憲人先生、石川一郎先生と私で。それで、本日ミーティングをしました。石川先生は、執筆活動で忙しいということで、Zoomで参加。時代の変わり目の大局的な話と生徒や保護者との信頼関係といったかゆいところに手が届くような両サイドからの話になりました。

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★当日は、奥津先生のナビゲートで山本先生の新渡戸学園の教育への想いと具体的な取り組みを聞くことができます。山本先生のマインドと実装スキル!を共有できます。そのうえで、その取り組みを石川先生と私というそれぞれ違う角度から日本の教育や世界に向けて決定的な意味があることについて対話していくことになると思います。

★ミーティングの過程の合間と終了後、山本先生とキャンパス内を対話しながら散策した時にでてきたキーワードが5つほどありました。決定的に新しい学校の条件は、その5つがすべてある学校だなあと感じました。そのキーワードとは?当日お待ちしています(笑み)。

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★そして、その新しい学校は何をもたらすのか?それはVUCAの再定義だということに気づきました。山本先生ありがとうございます!ものの見事にテリブルVUCAをハッピーVUCAに転換してしまうのが新渡戸文化ですね。また本間は何を言っているんだい?といわれそうですね。まあ、そう言わず、当日楽しみにしていてください。

★山本先生に案内していただき、どこの教室も活力ある情熱的な教師であふれていることに驚きました。そして、生徒の皆さんは、あるときは思考の森を散策し、あるときは創造の世界に没入し、とあるときは魅せる歌声を響かせ、私たちをすてきな世界に導いてくれました。当日その活力ある息吹を共有いたしましょう。

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ポストコロナの大学入試問題(08)東北大学、立命館大学のスマート留学は早晩入試を変えるだろう。

朝日EduA(2020年10月1日)の記事「コロナ時代の「留学」オンラインで「留学」、単位もOK 東北大と立命館大の取り組み」は、東北大学や立命館大学だけの話ではなく、多くの大学や海外留学を行っている中高にも確実にも広がるでしょう。

★要は、海外提携大学の授業に日本の大学生がオンラインで参加でき、またその逆で海外の大学生が日本の大学の授業に参加でき、相互に単位がとれるというシステム。

★そのシステムには、段階があり、パートタイムの授業の単位からはじまり、相互の授業の単位をとり最終的にダブルディグリーがとれてしまうというところまいきますね。

★リアルな大規模な移動がないし、学費もめちゃくちゃ安く抑えられる。立命館大学は、仮称としてスマート・グローバル・ラーニングと呼んでいるが、オンラオンでダブルディグリーまで取得できるようになると、もはやスマート留学でしょう。

★リアルな留学は?となると、ホームステイでできてしまうので、オンラインで受けても良いし、自費で現地に行って受講してもよいとそのうちなるでしょう。つまり、ハイブリッド留学です。

★社会に出て、海外大学の別の専門を学びたいと思えば、社会人も参加できるようになるでしょう。オンラインで安価にできます。

★実習や実験がある学部学科もVRでできるようになるでしょう。きちんとお金を支払えば、リアルに実習も実験もできる。でも学部段階は、オンラインで十分なシステム構築がでるようになるでしょう。

★もはや大学は学問をするところではないのです。「学問」という言葉は50年後には、差別用語になるかもしれません。学問を受けることができる人とできない人というように。大学という存在自体変わります。大学院は研究機関です。今でもそうですが、ちゃんと給料を支払って研究するということですね。

★大学の役割は変わるのもそう遠くはないでしょう。大学入試改革という小手先の改革ではなくということです。

★このようなシステムは中高でも同じですが、もっとも変わるのが高校でしょう。リベラルアーツ色が強くなり、大学は専門知識をすぐに学ぶ場になるでしょう。

★大学入試勉強という時間がもったいないということになります。リベラルアーツを学びながら、自分のやりたい技能を学ぶために大学にいきます。技能は多様ですから、社会で新たな技能が必要だということになれば、また学べばよいのです。

★スマート留学やスマート学習がどんどん拡大するでしょう。リアルかオンラインかの区別はあまり意味がなくなります。リアルの中にオンラインをミックスして学べるわけです。いつでもどこでも。

★中高の授業や大学の講義で活用する教科書はすべてデジタルでクラウド上に格納できますから、本当にいつでもどこでも学ぶコトができるようになるでしょう。

★そんな流れの中で、入試はどうなるか?自分の感じたことや考え方が他者と共振共感できるような表現力と思考力を問う問題に集中するでしょう。そして、独りよがりな正義感や狭い考え方を捨てる勇気が試されるでしょう。

★その力がなければ、スマート留学もスマート学びもできませんから。

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沖縄から世界を変える(01)沖縄国際学院 高等専修学校

★昨日、沖縄国際学院高等専修学校(学校法人PSTアカデミー)の理事長・校長知念正人先生とお会いしました。30年以上前からの友人の紹介でした。今年高等部が立ち上がり、国際バカロレアのディプロマ(DP)認定候補校です。来年の高2から国際バカロレアコース(IBコース)が展開していきます。

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★2003年から開校された同校は、すでに保育部、幼稚部、小学部、中学部は、オキナワインターナショナルスクールという土台が出来上がっています。つまり、幼稚園から小学校のIBプログラムであるPYPと中学校のIBプログラムであるMYPは実践済みなのです。

★したがって、世界標準の教育に精通・熟練したIBコーディネーターもいます。TOKをはじめユニークなIBのDPプログラムの専門のスタッフも揃っています。日本語IBではなく、バイリンガルIBなので、哲学や言語学、サイエンスをきっちり研究してきた外国人スタッフもいます。

★ですから、もうひとつのコースが国際リベラルアーツコース(ILAコース)だというのも十分に納得がいきます。

★そして、未来の学校に向けてこれから作っていくというわけではありません。準備はもうできた。さあ、次のステージへというお話だったのです。

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★知念先生のお話は、俯瞰視点と細部視点の両方がらせん状になって展開していくため、スリリングだし、実現力もあり、とても魅力的でした。

★なんといっても、IBの授業の本質的な話がベースになって、その現場と理事長としての知念先生のミッション・ビジョン・プランニングというMVPをブレずにつなげようとしている断固たる決意の静かな迫力は、なるほど沖縄から世界を変える気概があると伝わってきました。

★高等専修学校が校のIB校としては日本初です。インターナショナルスクールのIBだと、各種学校ですから、一条校として認定されてないため、日本の高校卒業資格がとれません。つまり、助成金が国から支払われません。その代わりカリキュラムは学習指導要領から自由です。

★高等専修学校だと学校法人として登記されているですが、一条校ではないので、助成金はでません。しかし、カリキュラムは自由です。そして、大学受験資格はあるのです。この助成金がないというハンディーと自由というアドバンテージを巧みに創造的に経営しているのが理事長知念先生です。

★すなわち、一条校としての高卒資格はないけれど、カリキュラムは自由で、IBなどの国際基準を使っても使わなくても大学受験の資格はある。これによって、学習指導要領とIBの単位の読み替えとか、時間数を増やすとか、無駄な調整が不要となり、「探究」をベースにIBとIBのエッセンスを取り入れた柔軟で創造的なカリキュラムやプログラムが生み出せるのです。

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★御三家だとかかつてのナンバースクールだとか高偏差値学校だとかいう肩書きの必要性が崩れてきている今日、特に今回のパンデミックで、よりいっそう、フラット、フリー、フェア―という3Fが重視される時代の精神にマッチングした学校が誕生したということでしょう。

★東南アジアの時代でもあります。目と鼻の先といってよいほど台湾は近いのです。当然知念先生は、沖縄世界圏の構想をお持ちです。地政学的にも言語的にもグローバルな教育エリアとなる条件が揃っています。

★平和学、SDGsなどの問題は、生徒にとって遠くの社会課題ではなく、身近にあり日々自分事として接していかなければならない環境にもあるわけです。

★IBにおいて学びは即社会実装につながるオーセンティックなシステムであり、高次な思考と高い倫理観を求められます。それらを生徒は実装して世界に役立つため10の学習者像も、学びのたびにリフレクションして成長していきます。

★学校経営と教育理念を結合した理想的なコトは現実的なコトという統合をめざす高邁な精神の息吹に子供たちの未来、日本の未来、世界の未来に希望を頂きました。

★沖縄から世界を変える。このことを折に触れ考察していきたいと思います。

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9月アクセスランキング20が示唆するコト

★9月は、菅政権発足と米国大統領選挙など政治経済の話題とGotoキャンペーン、カリフォルニア州の化石燃料使わない宣言、パリの15分都市などwithコロナの話題をメディアは頻繁に取り上げる月でした。withコロナの政治経済が本格的に動き出したということかもしれません。

★一方、初の大学入学共通テストの出願受付がスタート。文科省の目論見はだいぶ外れましたが、2020年大学入試改革は船出。すでに始まっている総合型選抜などでパンデミック対策に向けての変更などもあり、2021年の入試列島シーズンは、パンデミック入試という様相を呈してきたのは確かです。

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★もちろん、中学入試もその例外ではありません。9月のホンマノオト21のアクセスランキングを20位に絞っただけで、例年とは違う話題や学校に対する新しい関心=新しい価値が生まれているのが了解できます。次に20位まで公開します。1位に記事ではなく、カテゴリー「中学入試」が登場しているのも新鮮です。

★ようやく「中学入試」について集中的に情報収集しようという動きが出てきたということでしょう。

1:中学入試: ホンマノオト21
2:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して
3:ポストコロナの大学入試問題(05)2021年以降の小論文の当然のテーマは...
4:【速報】三田国際日本一!N高、開成を打ち破る。「Coca-Cola ST...
5:品川翔英の進化(06)国語科PBL型授業2.0へ 単元テストとPBL型授...
6:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。: ホンマノ...
7:2021年変わる中学入試(09)山本崇雄先生が仲間と拓く新しい中学入試 ...
8:2021年変わる中学入試(02)英語入試広がる。江戸川取手インパクト。実...
9:思考コードがつくる社会(06)思考コードは裏切らない。三田国際・広尾・都...
10:工学院インパクト(12)グローバルティーチャー高橋一也先生による羨ましい...
11:新しい学校の条件(01)品川翔英は3年以内に新たなポジショニングを生み出...
12:ポストコロナの大学入試問題(07)本日9月1日、SFC 夏のAO入試 面...
13:2021年変わる中学入試(08)BCオフショア認定校の文杉のグローバル教...
14:新しい学校の条件(02)品川翔英がスーパーモデルになるわけ。校長がCOI...
15:ポストコロナの大学入試問題(01)慶応義塾大学法学部FIT入試 変更公表...
16:2021年変わる中学入試(03)パンデミック入試へ
17:2020年春の大学合格実績(3)鴎友学園女子
18:ポスト・コロナショック時代の私立学校(90)カリタス女子、横浜創英、横浜...
19:ポストコロナの大学入試問題(02)同志社大学のAO入試&公募推薦が内的な...
20:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出

 

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