思考コードがつくる社会(08)思考コードで、ますます女子学院の価値があがる。そして聖学院のM型思考力入試の価値も。
★偏差値で見えないことが「思考コード」でみえます。その典型が女子学院(以降「JG」)でしょう。桜蔭とJGと豊島岡の4科の入試問題の問いが「思考コード」のそれぞれの領域でどのくらいの割合が出されているかをいつものように見てみる(データは晶文社「2021年首都圏中学受験案内」)と、次のようになります。
★これをみると、桜蔭はB2B3思考の領域が多いわけです。なんだ偏差値順ではないかと思うでしょう。しかし、算数だけ取り出してみてみるとどうでしょう。
★豊島岡は、算数においてはB1思考ベースで、桜蔭もJGもB2ベースだということがわかります。B3は3校とも同程度出題しています。結果的には難問を出すわけだから同じじゃないかと思うかもしれませんね。
★ところが、違います。というのは、この入試問題に向けて中学受験生は学びを積み上げてくるわけですが、豊島岡は、B3思考の問題は解けなくても、B1までの問題が解ければ合格できるわけです。ですから、B2までチャレンジして、B2も少しできてB1までの問題ができればよいという合格戦術になりがちです。
★桜蔭とJGは、B3までしっかりやるわけです。
★この差が何を意味するか?それはB3の問題は、実にC3の問題なのです。エ~?!と思うでしょうね。これは、思考コード分析の難しいところです。算数は、正解が出てしまうために、クリエイティビティは関係ないと思う方も多いのですね。しかし、B3レベルは、思考のプロセスにおいてクリエイティビティが必要なのです。
★何か「モノ」を作るというのがクリエイティティビティの領域だというのは、間違いないのですが、実はそのプロセスという「コト」こそが真正のクリエイティビティなのです。つもり現象や事象や生産物を生み出す諸関係(プロセスとは関数関係)の創造こそクリエイティビティの腕のみせどころなのです。
★いわゆる一般入試では、算数のB3領域の問題を出題する学校は少ないですね。どうしても難しくなってしまうからです。
★しかし、この領域をきっちりやっておかないと、ソサイエティ5.0やVUCAの時代に、イニシアチブをとれなくなります。JGの生徒のコミュニケーションを見ていると、頭の回転が速く、雄弁で、ユーモアというよりエスプリがきいていると感じる場合が多いのですが、それは、中学入試準備の時に、算数のB3思考というクリエイティビティと面接のトレーニングを積むわけですから、なるほどそうだとなるような気がします。
★桜蔭もそうなのですが、どの教科も難しいので、JGのようなある傾向の生徒がなだれ込むということはないのです。JGの場合は、算数以外の教科ではあまり差がつかないのです。それゆえ、算数のB3思考ベースの問いにチャレンジする学びを積み上げます。
★しかしながら、本番では、テストというのは不思議なもので、同じレベルの生徒が受けると、ほどほどの難易の問題と難問という問題のミックスは、差がつかないのです。JGの場合、最終的には差がつかないのです。そうなると面接は重要です。もちろん、当局は、面接で合否は決めませんというわけです。
★桜蔭はというと、どの教科もある程度難問を出題するので、得意不得意がでてきます。それなりに差がつくわけです。JGとどう違うのかというと、JGは算数だけが難問が出題されるのです。ところが、たとえば、国語が得意な生徒もそうでない生徒も、国語でそう差がつかないのです。算数がそう得意でない生徒も得意な生徒も難しいので差がつかないのです。
★算数的なクリエイティビティの勉強を受験生は皆してJGに臨むも、面接で言語技術と言語感性の優れた生徒が通過していく独特の中学入試システムはJGだけかもしれません。
★いや、聖学院のM型思考力入試も、言語技術と言語感性と数学的クリエイティビティを備えている生徒が通過していきます。もちろん、JGのように全面的にそういうシステムを打ち出しているわけではありません。しかし、そのシステムを聖学院はしっかり根付かせているところが凄すぎます。
★またかあ、本間の言うことはわからないといわれるかもしれません。たしかに、その通りです。このB3算数の価値やM型思考力入試の価値は、数学がただ得意だという方には理解ができません。また、数学がそもそも嫌いだとか不得意だとか、高校時代文系コースで数学を学んでこなかったという方には理解不能でしょう。しかし、数学的センスや数学的思考の持ち主は、理解が出来ると思います。
★私の説明がうまくなく、理解ができないと言われようと、JGの中学入試や聖学院のM型思考力入試のように、未来を創るイニシアチブをとる人材に必要な才能を見出すシステムはあるのです。現状そんな価値があるというこに気づかれていないだけです。気づかれていなくとも、あるものはあるわけです。認識ギャップと存在するコトとは乖離する場合があるのです。
★算数一科目入試が行われているところも増えてきました。しかし、聖学院のM型思考力入試のようなシステムであるかどうかはまた別問題です。数学の難問がただ出題されているだけではダメなのです。JGは4科全体×面接で、聖学院はM型思考力入試で、言語技術と言語感性と数学的プロセスクリエイティビティ(関数関係の創造)を必要とするような仕掛けになっているのです。
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