八雲サードインパクト(04) 個別最適化システム「YES」の意味。
★前回、八雲学園が、個々の生徒の能力に合わせて個別に対応できる総合的な同校独自のeラーニングシステム『YES』(Yakumo English:Gateway to Success)を導入しことを紹介しました。この個別最適化システムは、今トレンドのICTで知識をサポートすればよいという考え方とはだいぶ違います。しかも英語なのに、教科横断的な力も身につけることができるのです。
★現状のICTによる個別最適化システムの発想は、知識の多寡は生徒1人ひとりのレベルに合わせて合理的に定着させ、思考力や教科横断的な学際知は、PBLなどで学校の授業でやるという話が主流です。もし、本当に思考力や学際知を身につけることができる授業が展開できるのなら、なかなかよい発想です。
★しかし、現状は知識の過不足状態をなくしスタートを合わせ、さらなる知識の体系を教えようとする授業が主流です。これとて、知識が不足している生徒がいると、授業が進まないわけですから、そこを是正できるでしょう。また、知識が不足しているためについてこれない生徒を少しでもなくそうという創意工夫でしょうから、ICTの活用は必要です。
★ところが、八雲学園のYESはその両方を含みつつ、さらに高次思考や学際知まで身につけることができるシステムなのです。というのもCEFRでC1レベル(英検1級)をみんなが取得できる機会を設定しているからなのです。
★もちろん、全員が英検1級の試験にパスするかどうかはわかりませんが、少なくとも、徐々にそのレベルの学びをみんながするわけです。ラウンドスクエアに加盟して、国際会議に八雲生も参加するようになり、B2レベルの英語でもなかなか難しいという体験をしています。
★英語で会話したり、自分の主張を3分間スピーチで表現することはできても、つまり英検で2級や準1級をとったとしても、ディスカッションができないのです。国際会議はチームごとに会話もしますが、それはだんだんディスカッションに移行します。その段階になると、なかなか参加できなくなるのです。
★そのとき、八雲生は気づきした。世界課題について、世界の歴史について、世界の文化について、幅広い教養と高次思考がまだまだということではないかと。もちろん、この領域は英検2級からは学び始めます。準1級だとかなり進展します。日本の大学入試だと2級、準1級で十分です。
★しかし、世界の公用語英語としては、まだまだなのです。そのことを国際会議から帰国した生徒は実感し、帰国後在校生たちと国際会議の様子と英語のレベルを上げることが必要なんだという気持ちを分かち合うのです。
★今まで、準2級には全員が合格し、2級レベルが多くなればよいと学校の先生方も思っていたし、日本の大学入試を考えればそれ以上をあまり望まなくて十分だったので、生徒も同じような想いでいたでしょう。
★ところが、国際会議に行って、英語でディスカッションしなくては、世界解題を共に解決するワールドプロジェクトに参加することができないと生徒自身が実感してしまったのです。そして、一部の英語のできる生徒が学べばよいと思っていた他の生徒も、ラウンドスクエア加盟校である世界の学校から毎月のように留学生がやってくるようになり、単なる会話だけでは自分も満足しないし、ウェルカムの精神からいって、留学生が満足しないのは、在校生は最もいやがることなのです。すると、できるだけ高いレベルの英語力を身につけようとします。
★そして、高い英語力を学ぶには時間があればいつでもどこでも英語を学べる環境があればよいのです。それが「YES」システムです。しかも、エッセイライティングは、日ごろからワールドニュースにアンテナを張り巡らしている必要があります。時事問題だけではなく、世界のエンターテイメントなどにも興味と関心を持っていないとディスカッションはワクワクしません。社会科や理科の授業に臨む姿勢は当然変わりました。
★また、日本語を学びに来る留学生も多いのですが、彼らは日本人以上に日本の文化を学んでいます。源氏物語について話したいとか、村上春樹について話そうよ、アニメ文化について語り合おうよ等々となるわけです。
★もはや、教科横断的な学際知も身につけなければなりません。英語を学びながら、世界と日本の両方に視野を広げます。これがC1レベルの学びです。CEFRテストは本来存在していなくて、それぞれの民間英語資格会社が換算しているだけです。ですから、C1レベルの学びの環境を創ることと資格試験をとるということは、必ずしも一致する必要はないのです。
★ただ、海外の大学を考えると、資格試験は必要で、やはりB2以上の資格を証明しなくてはなりません。日本の大学は一部を除いてだいたい英検2級で十分ですから、この環境の中で以前よりも八雲生は確実に英検2級取得者の数を増やすでしょう。おそらく近藤隆平先生は、2級はいずれ全員が到達するだろうと考えています。
★特に、八雲学園はチューター制度が定着していますから、生徒1人ひとりの英語の学びの状況がポートフォリオとして共有できるので、フィードバックやアドバイスもできます。ICTによる個別最適化といっても、必ずチュータがサポートしてくれるのです。
★かくして「YES」は、世界でディスカッションしながら活躍できる英語力と教養や学際知、高次思考を身につけられるシステムなのです。それを生徒1人ひとりの状況に合わせて進めて行けるのですから、極めて画期的といえるでしょう。
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