思考コードがつくる社会(04)晶文社「2021首都圏中学受験案内」が世界を開く時代
★今年も晶文社は、「2021首都圏中学受験案内」に各学校の入試問題の「思考コード」分析スコアを掲載しています。入試問題は学校の顔ですから、このスコアによって、昨今予測不能な時代に必要とされている思考力の各学校の特性がわかります。
★思考の特性がわかることはどうして重要なのでしょう。それは、中学入試で使う思考力は、入学後学校の授業で求められる思考の在り方そのものです。また、その思考の在り方を使って先に進む卒業後の状況が予想できます。かりに知識・理解ばかりの思考の在り方が入試問題で出題されたとしましょう。そうすると、大学はMARCHまでしか進めない。海外大学は射程にないキャリアデザインが展開されていると読むのは容易です。
★もちろん、生徒によっては、そうでない場合もありますが、それはその学校の教育によってではありませんね。
★このような学校選択ができるのは、しかしながら、首都圏だからなのです。首都圏という一つのエリアに私立中高一貫校が300も集まっているという国は日本にしかないのです。特にその3分の2が東京に集積しています。中学入試の段階で、一部のエリートだけではなく、教育を選択するという経験が出来る日本には、本来希望があるはずなのですね。
★しかし、偏差値で選択していた時代は、偏差値ランキングの価値意識、簡単に言えば学歴社会価値意識で画一的に選択されていたので、多様な価値意識のマッチングができる有効性を発揮できない教育市場だったのです。そう考えれば、もったいないですね。ところが、ようやく偏差値基準の価値だけでは乗り切れない予測不能な時代がやってきたわけです。
★晶文社は首都圏模試センターと協力して、新しい教育価値の選択肢を増やす画期的な受験案内を出版したわけです。
★たとえば、麻布、開成、武蔵、駒東の思考の特性(出題された問いの思考コードの9つの領域の割合分布)を出して比較したら、上のようなグラフになります(4教科の出題の平均)。
★開成と駒東は、知識・理解のA2と適用・論理のB1・B2の領域で十分に考えることができる思考の特性が求められています。麻布は、B2思考の特性が明確ですね。ここを鍛えていればまずは大丈夫ということです。
★武蔵は、B2・B3の思考の特性が求めれれています。
★こうしてみると、開成や駒東は、手堅く知識も暗記し、論理的に思考する力を重視しているということがわかります。東大合格の力のマッチングは最強です。
★麻布は、B2思考を身につければ、知識はあとでついてくるし、B3まで根詰めなくても、そこは別の方法で軽やかにクリアすればよいというカジュアルで自由な思考様式が極端に求められています。
★武蔵は、B3にまで立ち向かっていく重厚なあるいは執拗な思考力がこれまた極端に大切にされていますね。学問知をはじめから求めているということのでしょう。
★こう見ていくと、なんとなく、それぞれの進路先のイメージと合うような気がします。
★4つの学校からは、もちろん、高いクリエイティティビティを有した人材が輩出されていますが、それは学校の教育とはまた別の要素でしょう。同窓力とか家庭の力とか。
★ですから、そういうことを重視している家庭や本人は、クリエイティビティを養成することは、別に学校に期待はしていないということでしょう。
★しかし、時代は変わりました。来春のダボス会議で、「ザ・グレート・リセット」宣言がなされ、よいかわるいかは、ともかくクリエイティブクラスを積極的に育成する教育が必要だとなるでしょう。経済学側からも内生的成長論がノーベル賞を受賞しているぐらいですから。
★このようなリバタリアン・パターナリズムの是非は、世界標準な議論になっていますが、日本ではまだまだ法学部のしかも先端的な法学部を形成している大学でしか話題になっていませんね。
★しかし、この今後WebやVRの世界で教育がなされると、一気に話題になるテーマです。この流れに対応できる学校を探さなければならないわけです。そのとき、晶文社の同書が大いに役立ちます。クリエイティブクラスはC領域の思考の在り方を必要とします。このC領域の思考様式を大切にして、入試問題をデザインしている学校を見つけることができるのです。(つづく)
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