思考コードがつくる社会(07)ブランドを切り崩すブランド戦略 洗足 vs フェリス
★晶文社発刊の「2021年首都圏中学受験案内」は実に面白いですね。学校のブランド戦略まで見えてしまうんです。たとえば、同書のデータで、洗足とフェリスの4科目入試で出題されている問いの「思考コード」の各領域の割合を比較してみると、次のようなグラフになります。
★同書によると、首都圏模試の偏差値は、両校とも73です。四谷大塚では、洗足は64、フェリスは65です。今では、両校とも鎬を削っているわけです。しかしながら、1986年(なぜこの年かというと、それ以前は、中学入試には偏差値というものが本格的には存在していなかったのです。その年、高田馬場に中学入試情報センターを日能研が業界初めて設置し、本格的偏差値を世に出しました)は、洗足は偏差値40いっていなかったでしょう。それは鴎友学園女子もそうです。
★そういう意味では、洗足学園や鴎友学園女子は、「ブランドを切り崩すブランド戦略」を成功させた私立女子校です。その後、両校に続けと多くの私立学校が研究するも、なかなかうまくいかなかったですね。ブランド戦略は競争戦略ですから、うまくいかないところが多いのは当然です。
★したがって、女子校では、先にこの戦略がうまくいった頌栄女子、豊島岡女子とその後に続く洗足、鴎友学園女子が、東京や神奈川のいわゆる御三家女子を跳ね飛ばす勢いですが、その後が続かないわけです。
★そうなると、別路線の戦略が必要です。それで、共学化という流れができたわけですね。たとえば、渋谷女子が渋谷教育学園渋谷に、戸板女子が三田国際に、順心が広尾学園に、日本橋女学館が開智日本橋に。しかし、共学化路線だけでは、これもまた後が続かないわけです。
★ということで、さらに第三の路線として、才能主義になっていくのです。生徒1人ひとりの才能を共に見出し、豊かにしていく本物の教育を共創する時代に。
★しかしながら、この第三の道にいたるに至っても、洗足と共通の教育が連綿として続いているのです。それは破格の英語教育ということです。
★洗足学園は、フェリスと、難しい入試問題で競うのはやめたわけです。塾を一つ一つ周る丁寧な広報戦略の先駆けをおこなったわけです。フェリスは塾を訪問することは今でもしません。当局はそのつもりはないですが、塾側は、ずいぶん上から目線だと思ったことでしょう。それに、塾もフェリスだけで合格者を出す競争をしていたのでは、それは不毛です。限りある資源をとりあっても、あまり儲からないのです。
★だったら、中学受験市場を作ってしまえ!というのが日能研だったわけですね。洗足や鴎友学園女子をうなぎ上りに成長させ、そこの合格実績の覇者になればよいのだと。洗足学園は、そのときウェルカム戦略をとりました。鴎友学園女子は、半分開放、半分は慎重という路線でした。
★同じキリスト教主義なのになぜ違うかというと、洗足は英語にこだわり、鴎友学園女子は学問にこだわったということです。
★洗足は、ポストモダニズムをうまく利用しました。鴎友学園女子は、理念上、また学問上ポストモダニズムの大量消費、大量生産、大量移動に批判的でした。
★いずれ洗足と鴎友学園女子の思考コードの比較もしますが、洗足とフェリスと同じような関係になるでしょう。
★洗足ははっきりしていたのです。学問は大学で大いにやりなさい。あなたの最高の人生を追究できる大学に行ける学びを提供するのが中高で、学問をやってもしかたがないのだと。学問は常に最先端の成果に気配りしていなければなりませんから、そんなコストはないのです。
★私立学校は、教師の入れ替わりが激しいわけではないので、最初は学問的なカリキュラムは新鮮ですが、すぐに学問的価値は劣化します。先生方の趣味に転じます。そうならないように、情報アンテナを張り巡らすわけですが、洗足学園のように、そのアンテナをフルに生かしながら、中高の限界を見定め、中高の役割を徹底的に追求するわけです。
★だから、生徒にとって最高だと思えば、海外の大学にも道が開かれるシステムをどんどん作っていったわけですね。なんだ見たようなことを言うじゃないかとおっしゃる人もいるかもしれません。そう立ち会っていたんですね。それでよくわかるのです。英語ができる仲間と洗足の先生方(当時の前田校長もそこにはいました)とカルフォルニア州のエスタブリッシュ校との連携プロジェクトを実施していました。中学の中長期の現地校の留学プログラムをつくる3年間をいっしょに行ったり来たりしていました。
★そのときに、新しい帰国生入試のアイデアも。当時は、海外で帰国生を行っている学校として、洗足はまだまだ有名ではなかったのです。その後、本間とその仲間たちだけでやってるんじゃねえとなんだかいろいろグループ会社で立ち上がって、今日のような帰国生入試の市場ができました。1998年から2005年くらいまで、私は自由にできていたのですが、本間はビジネスにしないからダメだと。たしかにそうですね(汗)。そんなわけで、仲間たちと別れることになります。いろいろな思い出があるんですが、その当時の仲間は、みなそれぞれ多方面で活躍していて、ホッとしています。何人かは、今でも離れていても連携してプロジェクトを共創していますし。
★にしても、1999年1月、社内ベンチャーをした2つめの仕事(一つ目は、ブリティッシュヒルズの紹介宿泊セミナー。できたばっかりのことろで、今では多くの学校が使っていますね。そのとき集まった先生50名くらいで話し合っているうちに、合同説明会の先駆けアイデアが生まれました。会社側からは、紹介しただけで、ビジネスにしなかったと責められました:汗)は、予算がないから盟友と二人で20万円をきるロサンゼルスリサーチに飛びました。それもチャレンジだったわけです。HISが中学受験大衆化と呼応するように成長していたころです。それが学校の先生方とセミナーを開く大きな転機になったのは鮮明に覚えています。今では当たり前のように塾系列のシンクタンクが学校先生向けセミナーをやっていますが、当時は珍しかったですね。
★それも、ビジネスにしないと責められました(汗)。ネットワークこそ財産だと思ったのですが。。。そのことを支えてくれた当時の社長の通夜の翌日、独立することにしました。ロサンゼルスに導いてくれた盟友とともに。そして、すぐに二人でそれぞれ本をだしました。ベストセラーにはならなかったですが、その編集プロセスこそ二人が創ってきたPBLの結集でした。
★ある新聞社の幹部の会議にも呼ばれましたが、創造的思考の話は、ダメだったみたいです。NHKにも二人は呼ばれましたが、創造的思考はやはりダメでした。プレゼンが下手だったということでしょうが。ただ、盟友はいつも先を行っていますが、時代とマッチングさせるマーケティングは得意ではなく、私が支えなければならなかったのですが、私もマーケティングはダメでした。ただただGRITよろしく、しつこく創造的思考を中高にと活動をしてきましたし、しています。その盟友は、創造的思考を大切にしているとある私立学校でグローバルでイノベーティブな教師として活躍しています。
★思考コードを分析していると、そんな余計なこともつい思い出してしまいます(汗)。
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