工学院インパクト(12)グローバルティーチャー高橋一也先生による羨ましい研修。
★工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)には、あの高橋一也先生がいます(※)。高橋先生は、同校のラーニングマネージャとして教員研修プログラムの開発及び実施を担当しています。定期的にその研修が実施されていて、今回は「インストラクショナルデザインのつくり方」がテーマでした。
★工学院の先生方は、生徒ファーストなPBL授業を中心に行っていますが、単元の流れの中で、レクチャーももちろんします。レクチャーと対話や議論のミックスのバランスはいつも試行錯誤です。同じ単元同じ学年でも生徒によって嗜好性や考える深さなど違います。そこをどう読むかです。
★高橋先生は、そのバランスを教育理論や学習理論によって、先生方の実践を検証し、ブラッシュアップやアップデートなどの教師自身の恒常的な自己変容を生み出す研修をしているのです。
★11月くらいからはPBLのベースになる「コンストラクショナルデザイン」という教授法を研修しますから、レクチャーと対話や議論のバランスをいかにデザインするかを、先生方は学び、自身の授業の方法やコンテンツを改善していくストーリーになっています。
★実に興味深いのは、高橋先生は、インストラクションかコンストラクションかという二項対立を展開しないことです。理論というのは、いずれの方法にもあるメリットとデメリットを明白にします。
★完璧で絶対的な教授法があると考えるのは、経験至上主義者の陥る罠です。多様な理論や方法のそれぞれのメリットやデメリットを洞察できる力が大切なのです。そのうえで、生徒の認知能力と非認知能力の状況に対応するように、あるいはこう言い換えてもいいのですが、最近接発達領域を見出して、デメリットを出来るだけ回避して、メリット同士の組み合わせをしてデザインしていきます。
★とはいえ、何がメリットかデメリットかは簡単に分けられません。生徒にとってはそのメリットがデメリットということがおうおうにしてあるのです。
★そこで、今回のワークショップは、生徒のニーズをいかにしてリサーチ・分析できるのかというものでした。これはあらゆるデザインをするときの基本です。ビジネスにおいても教育においても、クライアントや生徒の欲するものを知るための技術は重要です。ビジネスでは、ここの部分に相当投資しています。一方教育は広報の部分では行っていますが、毎回の授業ではどうかといえば、教師の観察眼に任せるで終わっていると思います。
★改めて、この生徒ニーズを分析することの重要性を先生方はシェアしました。
★そんな流れの中で、今回のパンデミックでオンライン授業を行ったために、生徒とグーグルフォームでアンケートをしながらニーズ分析やリフレクション分析をしている片瀬先生の報告がありました。
★高橋先生は、まさにこれですよと現場の先生方の実践の優秀性を指摘しました。
★理論と実践のスクランブルが広がった瞬間でした。
★インストラクショナルデザインによるレクチャーと今後のコンストラクショナルデザインによるPBLのハイブリッド授業が工学院の授業の大きな財産であることが証明される年末が楽しみです。
※高橋一也先生は、Global Teacher Prize Top10、Phi Kappa Phi(全米優等生協会)などの受賞歴があるスーパーティーチャーです。
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