新しい学校の条件(03)新渡戸文化学園 自分変奏曲の響きのある学校。
★「僕はね、君のことを初めてみたとき、世界に生まれてきた意味がわかったんだ」。セカオワのMAGICはこの一撃から始まります。恋の歌だけれど、恋に限らず、自分や世界の意味は、出会いの中から紡がれていくという自分変奏曲だと読むこともできます。
★クリエイティビティは、この意味を紡ぐことだし、意味を他者と世界と紡いでいくことはなんて幸せなんでしょう。しかしながら、他者はいつも優しいわけではないのです。世界は安心安全だとは限らないのです。MAIGICの最後はこう響きます。「僕がさ、こんなに頑張って生きてきたのに本当に大切なモノさえ失ってしまうんだね。でも僕はさ、知ってるよ、それでも人生は素晴らしいと、生まれてきてよかったと僕は本当にそう思うんだよ」と。
★まさにセカオワ=世界の終わりの臨界点に達した時に、素晴らしい意味を紡いできたことが希望につながり、逆説的かもしれませんが幸せなのです。まさか?と思うでしょうか?おそらくその感性は、戦後日本の教育が過保護にも過干渉にも社会の課題を子供たちから遠ざけて、マスクをかけてきて、進路指導をしてきたからでしょう。社会から隔離された閉じられた社会で18歳になるまで徹底的に知識を教え込まれてきたのです。その知識は客観的で、そこに何ら問題になるような難しい情況や文脈や五感で感じる色も臭いもきれいに拭かれて取り除かれている無菌知識が与えられてきたのです。
★そんな閉じられた社会から、いきなりウイルスだらけの社会課題が充満する社会に放り出されたとき子供たちはどうなるのでしょうか。今回のパンデミックは、まさにその問題点を明らかにしました。閉じられた社会に居つづづけていると、社会課題や社会リスクを自分で洞察し、仲間と協力して、解決して乗り越えることができないのだと。
★しかし、逆にオンラインで自由に世代を超え、国境を越え、世界同時的な今回の社会課題について語り合える学びの環境を創った新渡戸文化学園の生徒は、いまここで社会課題を直視し、自分も解決する主体者としてあるいはエージェンシーとしてかかわれるのだと実感できたわけです。
★開かれた学びが他者と協働して社会課題をいっしょに解決するクリエイティビティの竜巻を生み出していけるのだと。いっしょに新しい世界をその価値をその意味を創造することこそハピネスブリッジなのだと。
★閉じられた社会を開放する教育のパラダイムシフトが新渡戸文化学園で起きています。今までの教育改革は、閉じられた社会の中の修繕でした。大学入試改革をしたとしても、この閉じられた社会の中の話です。well-beingはそこから解放されることでしょう。この解放が、まるで神の計画かのように、パンデミックと学校改革が重なるタイミングで新渡戸文化学園から生まれたのです。
★そして、その意義は、第二次世界大戦のときの極限の状況から生きる意味を見出すことで近代の矛盾解決に立ち向かったフランクルのマインドに通じます。しかし、根本的に解決されていない瞬間を9・11や3・11で体験した世界は、シリコンバレーの新しい近代国家を越境する動きに揺らいでいます。GAFAなどは、閉じられた社会から解放を宣言しています。
★そのシリコンバレーの地に、テクノロジーとエンジニアリングを駆使して、その閉じられた社会の象徴である進路指導(実は根本的には欧米でも同じなのです)を開放してしまう学校が誕生したのです。それがHTH(ハイテックハイスクール)で、この設立の理論的支柱であるハーバード大学のトニー・ワーグナー教授のアイデアは、まったく新渡戸文化学園とシンクロしています。
★しかし、HTHは、そのドキュメンタリー映像の最後で、テクノロジーやエンジニアリングだけではなく、ガーデニングに象徴されるZENの思想が必要なのだと。この思想は、キリスト教と武士道の両方の思想の架け橋となった新渡戸稲造の発想を後追いしていますね。もっとも、テクノロジーやエンジニアリングの元祖エジソンの座右の銘は、「武士道」だったということはあまりにも有名です。
★新渡戸文化の新しさは、かくして決定的なのです。
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