新しい学校の条件(04)聖学院 数学的思考ベースの社会解題解決
★聖学院の本橋先生(数学科)とZoom対話をしました。本橋先生は高校時代から大学まで米国留学をして、帰国後はICUでも学んでいましたから、基本はリベラ―ルアーツベースの授業をします。はじめ、といってももう10年以上前ですが、英語の先生かと思っていたら、数学の教師で、英語も話して数学もというわけですから、当時としては新鮮でした。
★今でこそ当たり前になった中学入試の新タイプ入試ですが、7年前に本橋先生や伊藤豊先生が思考力入試を立ち上げたときは、適性検査型入試が広まり始めた時代でした。
★当時は、それ以外のユニークな私学らしい新タイプ入試といえば、聖学院とかえつ有明の思考力入試でした。今では、思考力入試もチームで作成され運営されていますが、立ち上げ当初は、チャンレンジャーが隗より始めよという感じで小さく始め、今は大きく成長したという感じでしょうか。
★ともあれ、ユニークな私学らしいという意味をどう設定しデザインするか毎回のように議論しながら進化してきたわけです。聖学院は21世紀型教育機構のスターティングメンバー校ですから、同機構のアドミッションポリシーの共通約束である「思考力入試」をやろうという局面のリーダー校でした。カリキュラムポリシーの共通の学びは「C1英語×PBL×STEAM」ですから、そのエッセンスとしての思考力入試をどう設定するのか。また、ディプロマポリシーの共通約束である海外大学への道も開くという点でも世界標準の思考力って何だろうという議論もしてきました。
★本橋先生は、リベラルアーツベースの思考様式を有していたし、英語のみならず東南アジアの幾つかの言葉にも精通していたとうこともあり、数学と言語といリベラルアーツの思考とは何かを追究していくということはすぐに決まったわけですが、その具現化と何といっても普段の授業との結びつきをどうするかは毎回議論し深めていくことになったのです。
★今回も、今聖学院は、35分の6時間授業で、週4日はリアルに週2日は自宅で課題解決日というハイブリッド型授業(高3に関しては週6日学校で学んでいるそうです)になっています。リアルな授業でもロイロノートなどのプラットフォームを活用していますから、いつでもどこでもICTは学びのツールになっています。
★35分授業ですから、残りの15分は自宅と連動する反転学習になっているそうです。
★このようなフルスペックのリアルとオンラインのハイブリッド授業になっているために、ふだんの授業の中に今まで以上にリベラルアーツ的な数学的思考を盛り込めないだろうかという議論で盛り上がったわけです。
★今まで思考力入試を作成するにあたって、どのようなマテリアルを何のためにあるいはどんな意味づけをしてきたかを、対話しました。Zoom対話の便利なのは、話しながらイメージしたいなあと思うものはインターネットで画像を検索すれば、すぐに出てくるので、視覚化しながら対話ができるということですね。本橋橋先生と私と2人の対話なのですが、実際にはweb上に参加しえいる多くの人の力を借りることができます。グローバルブレインを活用しながら対話ができるので、対話も広がり深くなります。グローバルブレインの方々に感謝です。
★さて、どんなマテリアルを背景に使ったかを思い出しながら話していきました。本橋先生は東南アジアの自然や神社の森の空間を散策するのが大好きということもあり、自身が撮影してきた写真を活用することが多いのですが、空間の美というものを生徒と共有するにはどうしたらよいのだろうという気づきを大切にしていました。
★ですから、黄金比と白銀比を背景に「無限」という美をいっしょに考える思考力入試にチャレンジしています。多くのバリエーションがプロダクトされてきました。しかし、そこで大事なことは数列や微積における「無限」という考え方を哲学的あるいは言語技術的な考え方に置換・適用できるかという数学的思考を、思考力入試や授業で楽しめるかということだそうです。文系だから微積はやらなくてよいではなく、難問を解けなくても、数学的思考は身につけていくことが大事だと。リベラルアーツ的な発想がこういうところに見え隠れしますね。
★空間を代数的にアプローチするだけではなく、幾何的なアプローチをするときは、トポロジー(位相空間)という置換操作を活用することもしばしばです。本橋先生は、IB(国際バカロレア)のディプロマの数学の海外の研修に参加して学んでいますから、高次の数学思想を学ぶプログラムにも共感しています。ですから教科書からはみでて、そのような数学者の知見も活用するわけです。同時にIBはオーセンティックを求めますから、社会課題に実際に数学的思考を活用する機会も創意工夫します。
★本橋先生は、トポロジーという柔らかい幾何の発想が、フラーレンのような新物質発見につながったり、IoTや物流でネットワーク・トポロジーという形で、実用化されていることなど授業にどう結びつけるか考えているそうです。ネットワークのパターンを見つけていくというのは、まさに数学的思考ですよね。
★エッシャーのトリックアートも活用しています。モノの見方を変えることの面白さは、数学的思考の醍醐味だし、エッシャーのトリックアートは、数学者の友人からインスピレーションをもらっているものが多いので、フラクタルやパラドクスの数学的な発想に気づく優れた芸術だそうです。
★代数的なアプローチと幾何的なアプローチと東南アジアの自然や神社の森を歩いたり、その地域の人びととコミュニケーションすると、その空間には時間が流れているのに当然気づくのだそうです。
★聖学院の生徒がSDGsや平和学習に取り組んでいる姿を見ながら、また実際いっしょに取り組みながら、数学的思考と結びついている片鱗が見えるそうです。そこをもっと強みに転換したいとも思うそうです。ですから授業でどうなるのかと。
★そこで、ファイマンプロジェクトでも立ちあげようかと。ノーベル物理学賞を受賞したファインマンが幼いころに父親とチョロQはなぜ動くのかという対話をしたというエピソードが話の発端です。
★ゼンマイ仕掛けで動くとファインマンがこたえると、父親は、どうやってゼンマイは動くのかと聞くわけです。引っ張るからだよとこたえると、またまた父親はなぜひっぱることができるのかと、腕があるから、ああ筋肉があるからねと。するとまたまた父親は、その筋肉はどうしてできているんだと。肉を食べているからだよと。で、何の肉?動物の肉だよと。で、その肉はどうやってできたの?もう草や穀物食べてるからでしょう。草や穀物には栄養があるからね。なぜ?光合成だよ?じゃあチョロQは、結局は?ああ!太陽だよねとなるというエピソードです。
★結局チョロQがなぜ走るのかという問いは、問いの連鎖を生み、生態系の仕組みを、つまり自然のトポロジー的なネットワークを耳出すエピソードだけれど、大人になったファイマンはそこから、太陽光のエネルギー測定や光合成のカルビン回路のネットワークトポロジーに発想をとばしたでしょうねと、議論はシステム思考トポロジーになっていきました。
★エネルギー量を関数的に転換するには、物理でやるのだけれど、そこには速度というものが何であるかが必要になります。ということは、結局時間と速度と距離の関係を学ぶ微積分に到達すると。
★SDGsや平和学習には、この自然と産業と科学とマインドが循環型トポロジー変換をいかにするかというとことですねと。この循環をするには、カルフォルニア州のゼロミッション政策や現状のプラスティックゴミを使わない政策だけでは完ぺきではない。ミッシンクリンクがまだある。それは光合成の謎をまだ人間が解けていないからだと。
★ザ・グレート・リセットによって社会組織というネットワークの循環型トポロジー変換をしていくのはいかにしたら可能か?それは思考力入試ー授業ーキャリアデザインというシステム循環を創ることでもあると。あっという間の2時間の対話でした。
★フルスペックのハイブリッド授業の中で数学的思考というリベラルアーツの精神が流れている聖学院。官製教育にはない私学教育の面目躍如。そして聖学院の伝統と革新のハイブリッドという新しい学校の条件を垣間見ることができました。
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