2021年変わる中学入試(05)パンデミック入試の本質
★2021年の東京の私立中学の入試において、オンライン入試は自粛ということになりました。それだけ、オンライン入試をやろうとする私立中学が多かったということでもあります。東京私立中高協会の役員の方々が経営する学校も、オンライン授業やオンライン説明会を効果的に実施しています。それゆえ、あえて自粛という判断をしたのは熟慮の末ですね。
★しかしながら、本当に万が一の際には、ダボス会議のようにデジタル入試(オンライン入試より広義)やSFC方式にスムーズに移行できる準備もしようというのが背景にあります。リアルな空間で、ニューノーマル入試、空間越境入試、時間越境入試まで八方手を尽くすのだから、世の人々が納得してできる戦略戦術を考案したのです。
★そうはいっても、実はすでにパンデミック入試を運営しているパンデミック広報活動が始まっているのです。今までは、入試当日が盛り上がっている部分が光があたっていたのですが、パンデミック広報活動は、現在進行形のすべてのプロセスを見える化しています。
★今までのように、学校対不特定多数の広報活動ではなく、学校対個人という広報活動に変化したのです。入試問題も大切ですが、受験生1人ひとりと対応できる共感的な感動的なコミュニケーション能力が重要になってきたのです。
★今までは、そのプロセスの中心は塾での学習でした。学校と受験生が共有するのは入試問題の結果でした。ところが、そもそも生徒募集とは、共に生徒の人生や未来を創っていけるか契約をどう結んでいくかというプロセスです。その交渉がオンライン説明会でダイレクトにできるようになったのです。
★ですから、オンライン入試を行うかどうかより、こういう生徒がきてくれるといいなあとここで学びたいというマッチング契約ができればよいのです。その工程に入試問題があるだけです。ですから、いわゆる入試をしなくてもよいのです。こんなことをいうと、従来型の塾が怒り出すし、学校も塾の市場もターゲットになっていますから、そこが衰退するのは好ましくないわけです。
★学校も塾も共に変わっていく道を見出す戦略の方が、賢い広報戦略でしょう。
★そうはいっても、オンライン授業とオンライン説明会は、そのマッチングの本質を明らかにしてしまいました。それは、オンライン説明会は、たとえ多数がウェビナーとして参加したとしても、個人に語りかけているように聞こえるし見えるので、そこを巧みなパフォーマンスを行ったところは、がっちりファン層を握ります。
★しかも、パフォーマンスといってもエンターテイメントではありません。もちろん、その要素を取り入れている学校も増えていますが、大事なことは、
1)熟慮:参加者は、その学校の教師が深い思考力を持っているか
2)共創:競争よりも共創が際立つ教育活動が多いか
3)共感:共感的コミュニケーションが学内にはあるか
4)決断:経営陣は公平な判断力や断固たる意思決定ができるか
5)雄弁:教師も生徒も自分自分の気持ちや考えを誠実に効果的に雄弁にスピーチできるか
★といった5つの側面です。
★オンライン説明会や予約限定ニューノーマル説明会では、この5つが可視化されてしまうのです。この5つの要素は、慶應義塾大学の田村次朗教授のハーバード流儀の交渉学におけるリーダーシップの5つの要素に重なります。
★予測不能な未来を切り開いて生きていくのには、役職リーダーではなく、人間として大切な価値を共に掘り起こしシェアし、実現していくスキルを実装しているナチュラルリーダーでなければならないでしょう。世界であふれるほどの問題を解決するには、信頼に値する人間同士が結集する必要があります。そのような信頼に値する人間は5つの要素を統合したリーダーシップを有しています。
★そのようなリーダーシップをもった学校に出会ったら、何がなんでもそこで学びたいでしょう。そして、学校もその強い意志と5つの要素の素養があれば、入学の契約を結びたいでしょう。パンデミック入試の本質はそこにあります。新タイプ入試の登場は、その本質を背景に抱えていたからでしょう。それが今明らかになったのです。
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