« PBLの再定義の時代(02)探究と教科の5つのパターン。そしてどのタイミングで外部ネットワークと組むか。 | トップページ | 2021年変わる中学入試(09)山本崇雄先生が仲間と拓く新しい中学入試 10月3日緊急教育座談会で保護者と想いを共に »

2020年9月10日 (木)

聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(04)吉留先生のCuriosity-Drivenなサイエンス

★吉留先生の化学の授業はCuriosity-DrivenなPBLです。聖パウロ学園の教師は、PBL授業を行っていますが、「リサーチ→思考(対話や議論、小論、物語創作などを通して)→プレゼンテーション」という3Xサイクルは共通しています。そのうえで、それぞれ特徴的なPBLをするのです。化学の吉留先生の授業は、そう!Curiosity-DrivenなPBLです。つまり、生徒たちが好奇心に突き動かされてサイエンス思索をしていく授業です。

Dsc02891

★実験室にこもり大学の研究室で行うような白衣を着て実験しているのではなく、徹底した科学的な思考を多様なアプローチでシミュレーションしていく授業です。

★たとえば、ベンゼンという化学物質がでてきたら、教科書定番の置換の仕組みを覚えるだけではないのです。ベンゼン誕生エピソードから身近にある洗剤や衣服、殺虫剤、薬品などに使われているケースをたどっていきます。

★そして、使い方を間違えると、身体に有害なことまでイメージを飛ばします。マインドマップが頭の中でどんどん広がっていきます。

★当然、ベンゼンの使用についてはリーガルマインドも発動します。法律で、ベンゼン使用の自由の制限をするわけですから、とても大切なテーマですね。

★ベンゼンというあの有名な亀の甲羅型モデルの物質にかかわる学際知をがんがん学んでいきます。

1_20200910170901

★もちろん、学際知の驚愕に好奇心を燃やす生徒もたくさんいる一方で、覚醒しない生徒もいます。そんなとき、吉留先生は、臨機応変に、シミュレーションゲームをします。イオンカードゲームなどで、元素のどんな組み合わせでどんな物質ができるのか、競うゲームです。ボードゲームとは、なぜか最終的には大いにもりあがります。やっている最中に覚えていなかった化学記号や物質に出会い、無性に知りたくなるなんてことはしばしばですね。

★そんなことも交えながらとにかく好奇心を膨らませ、それにナッジ(背中を押され)され、生徒はサイエンス的な思考を楽しみ深めていくわけです。

★吉留先生は、ベンゼンは人間が神の領域に踏み込んだ科学の世界の1つです。部活の後に使う洗濯洗剤が、そんなすごいことなんてとなるわけです。実際SDGsなど学ぶとき、この人工的な有機化合物は、大いに問題を引き起こすわけですから、化学物質の両刃の剣という矛盾にぶちあたるわけですと。

★プラスティックゴミの問題も、ただ使わなければよい、減らせばよいという道徳的・倫理的な意識だけではなく、科学的にクリティカルシンキングを学ぶコトは、実効的な社会課題解決のアイデアを出すときにはとても大切です。吉留先生は、物事を精神論的に解決するのは限界があるのは、今回のパンデミックで思い知らされましたと。経済と自粛のジレンマの解決不能な状況に直面し、世界同時的に共有されたわけです。そこを一歩進めるには、科学的思考力が極めて重要だと思いますと吉留先生は科学者らしく語ります。

★好奇心に突き動かされて、デザイン思考や哲学的思考だけでは、解決不能な領域に進むには、サイエンスの力は必要です。STEAMと言われたとき、実際には、テクノロジとエンジニアリングを活用していればサイエンスも行っているとなりがちです。科学的思考なきSTEAMやデザイン思考が、経済や産業の復興には役立ちますが、地球規模の環境問題を解決するには力不足なのです。

★吉留先生は、神の領域で自分たちはどうするのか?生徒といっしょに考えていく授業はワクワクしますよと。その通りです。

|

« PBLの再定義の時代(02)探究と教科の5つのパターン。そしてどのタイミングで外部ネットワークと組むか。 | トップページ | 2021年変わる中学入試(09)山本崇雄先生が仲間と拓く新しい中学入試 10月3日緊急教育座談会で保護者と想いを共に »

創造的対話」カテゴリの記事

入試市場」カテゴリの記事

PBL」カテゴリの記事

高校入試」カテゴリの記事