PBLの再定義の時代(02)探究と教科の5つのパターン。そしてどのタイミングで外部ネットワークと組むか。
★新学習指導要領になって「探究」というキーワードがここ数年各学校で議論され、実践されています。そして武蔵野大の日野田校長のように、外部ネットワークを取り入れて、先生方に研究する時間を作りだしたいという展開もメディアが注目していますね。それもいいと思います。特にメディアはこの手の話好きですよね。だって、外部ネットワークウェルカムということは、自分たちももてなされるという話だからです。そもそも日野田校長もメディア誘導術が得意です。ナッジと装いながらマーケティングやブランディング誘導をいつの間にかしてしまうのです。普通の人にはなかなかできませんから、とても勉強になりますね。
★広尾学園や三田国際のように、直球マーケティング手法でないところが、日野田校長の次世代私学広報手法の新鮮さです。
★私のように本質にこだわったり、小難しいことを言っていると、日野田校長や大橋清貫学園長には、マーケティング的にはアウトとよく言われます。大橋学園長には、思考コードなんてわかりにくいよとかつて言われましたが、なるほどそうかあ、それなら価値があるなあと思う偏屈な私です(笑)。三田国際は思考力入試はやらないでしょう。マーケティング的には意味がないからです。
★そうはいっても、お二人と私はPBLという言葉を活用する点では一致するんですね。もっとも、大橋学園長はPBL=Problem based Learningで、日野田校長と私はPBL=Project based Learningです。日野田先生は、シリコンバレーやMITのPBLで、私はJ.デューイから連綿と続くPBLの背景を探って新しくしたものです。ちょっと日本的なマインドフルネスも入っています。
★一口にPBLといってもみな違うんです。それでよいのです。生徒獲得のためには、また生徒や保護者に理解を共有するには、ワクワクすればよいのであって、難しいことはどうでもよいというのが、今日の教育界では主流かもしれません。
★しかし、目を国際バカロレアやカナダやオーストラリアなどのグローバルジチズン教育などに向けると、難しい話は深イイ話で、それがかえってワクワクするねとなり、まあ、いろいろなんです。
★さて、探究の話ですが、必ず議論されるのは、探究と教科の関係です。それから探究は必ずしもPBLではありません。グループワークをやりながら調べ学習が中心の探究はPBLではないのはすぐにおわかりでしょう。
★授業もPBL型授業とは限りません。
★ここらへんの差異は、しかし、メディアはスルーしますよね。それはそうです。生徒の枚面的な成長に興味があるのではなく、外から見えて新しい情報であればよいのですから。しかし、教育とは、日常の持続可能な活動なのです。そのようなクオリティを追跡することはメディアはないですよね。なぜなら、クオリティは主観的なものですから、事実として記事にすることはとっても難しいからですね。私はメディアを批判しているのではありません。クオリティについては保護者自身が見るレンスを持った方が良いのではないかと提案しているだけです。
★探究と言っても、上の図のように、教科との関係で5つのパターンがあります。いろいろな学校(オンライン授業以降、各学校が動画PRをしていますから)を見て、私が独断と偏見で分類しました。したがって、そうではないといわれてもよいのです。私がいいたいのは、保護者なりにこういう分析レンズを磨いてはということです。見方は人によって違います。ですから、最近そのような進取の気性に富んだ保護者と対話をしながらレンズの厚みを増し、ますます磨き上げているわけですが、みなさんもそうされるといいのではと思うのです。
★さて、しかし、現状で乖離型の探究と教科の関係が多いでしょうね。探究は探究、教科は教科となって、教師は探究と教科の関係を深く考える必要性を感じてない場合が多いでしょう。
★ところが、教科の中でアクティブラーニングだとかPBL授業を行っている学校は、まだ交わりはないのですが、どこかで結合するのではという思いは響き合っている併存型というのもあります。
★日野田校長は、この段階で外部ネットワークを結び付けます。日本の教員免許取得や教育学部では、まだここらへんの学習理論や教育学を実装するプラクシスはやっていないので、アプリやコーチ、ファシリテーターは外部ネットワークを使った方がはやいし、その間に教師は学んでいきます。
★こうなってくると、探究も、授業もPBL型になりますから、必然的に教科横断型の学内雰囲気がでてきます。
★これで、かなりよいでしょう。世界大学ランキング300位くらいの海外大学はこの学びの経験はテコになります。
★しかし、それ以上の海外大学となると、IB型の探究と授業結合が必要です。ここになると、外部ネットワークはなかなかつなぎにくいものです。国際バカロレアのことを熟知し、ワークショップまで行えるコーチやファシリテーターはなかなかいません。IB機構の認定したIBコーディネーターと学内の先生方が研修を内製化していくことになります。
★そして、世界制作型になるとリベラルアーツ型探究とPBL型教科は包摂関係になり、完全な一体型です。ここになると、学校の教師自体が全員クリエイティブリーダーで理想的な学校となります。
★彼らは、他の学校に研修講師と招かれて、外部ネットワークを取り込むのではなく、外部ネットワークとして頼みにされる高い価値のある教師集団になっているのです。
★このような最高のチームが運営している学校は、世界でもあまりないでしょう。個人として優秀な教師はだいぶでてきました。しかし、最高のチームを共創しているメンバーの一人としての優秀な教師こそがこれからは必要です。もちろん、これから生まれてくる兆しはあるのですね。
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