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2020年9月

2020年9月30日 (水)

思考コードがつくる社会(25)新タイプ入試エリア別シェアの意味すること PBL授業の割合とおそらく対応

★新タイプ入試に関するデータは、首都圏中学入試にしかないので、あくまでホンマノオト21のログ解析からの予測でしかないのですが、各エリアの中学受験市場で新タイプ入試に関心がある割合は、以下のような感じだと思います。

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★上記のエリアは、実際に私が活動した範囲でもありますから、実感にも合うかなあと。

★そして、新タイプ入試に関心がある学校や受験生・保護者は、授業のスタイルがPBL(そのベースに思考コードがあるから)であることを好む傾向にあります。

★ですから、上記のエリアのシェアを合算した30.3%というのは、日本全体で、そのくらいはPBL授業を好む傾向がでてきたということでしょう。

★各エリアに閉じこもっていると新しい動きはないように見えますが、オンラインによって、全国の先生方がつながり始めました。新しいウネリが生まれていることに気づく教育関係者が増えていくことは確実です。

★関西エリアは、首都圏の動きをみつつ独自の展開をしようとします。だからといって、反動的な動きになることはまずあり合えないでしょう。イノベーションがなければ、産業や経済は立ち行かなくなるというのは、そもそも首都圏を見ていて判断するのではなく、伝統的にグローバル経済圏をつくってきた関西圏だからこそすぐにわかることです。

★どうなるかわりませんが、大阪万博や大阪都構想の行方など注視していく必要アリですね。

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思考コードがつくる社会(24)超難関校国算入試 vs 共学7校新タイプ入試 「能力主義から才能主義へ」

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」掲載の「思考コード」データを見ていくと、時代を創る学校がみえてきます。開成、麻布、武蔵、駒東、筑駒、桜蔭、女子学院、豊島岡女子という東京エリアのいわゆる「超難関校」の国算入試の思考コード別出題割合平均と同じようにデータをだした東京エリアの共学校7校(工学院大学附属、文化学園大学杉並、かえつ有明、駒込、宝仙理数インター、安田学園、開智日本橋)の新タイプ入試を比較してみました。

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★やはり、真っ二つですね。A軸B軸思考=知識・論理思考がメインストリームの超難関校。B軸C軸思考=論理・創造思考がメインストリームなのは共学7校。

★「超難関校」という受験市場のネーミングを受け入れてきた上記8校は、自分たちはそうではないと仮に言ったとしても、能力主義=メリトクラシーの影響を振り払うことができないでいることは否めないでしょう。生徒個人の持っている能力によってそのポジショニングが決まり、能力の高い生徒が将来社会のアッパー層になっていくという構造があるのは誰もが認めるでしょう。

★しかしながら、これが生まれるのは、8校だけではもちろんなく、社会の方にも問題があります。この「能力」というのを国算を中心とする教科の学力に偏向していたこともまた否めないからです。「能力」というのは本来多様です。ですから、その多様な能力を測るというより認めるシステムが必要だというのは、時代の要請です。これももう説明する必要はない事態になりました。それが今回のパンデミックのもたらした一つの答です。

★上記のデータが示すように、共学7校は、今までの能力とは違う領域を認めようとしているということがわかります。そして、これらの才能を持った生徒が入学後目覚ましい活躍をすることも追跡調査でだんだんわかってきました。

★この才能の持ち主は、超難関校に入学することはできませんが、共学7校に入学して、6年後あるいはもっと先かもしれませんが、超難関校の卒業生と肩を並べて活躍するようになっているでしょう。

★そして、そのことには能力主義から才能主義の社会、ファーストクラスからクリエイティブクラスへシフトしている社会になっているでしょう。

★今は過渡期ですから、能力主義と才能主義はミックスされています。首都圏中学入試市場も、入試応募者5万人のうち2万人は、共学7校のような新タイプ入試に挑戦する体験をします。実際に進むのは1万人くらいかもしれません。それでも最低でも首都圏中学入試市場で新タイプ入試受験者は20%シェアです。

★2013年ころまでは、10%シェアいかなかったでしょう。2021年は、ますますシェアの割合をあげてくることでしょう。

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2020年9月29日 (火)

アサンプション国際小学校(01)世界に誇れる小学校 対話の竜巻が生まれる学校

★アサンプション国際小学校の先生方とのZoom対話は柔らかいし広がりがあるし子供という人間存在の魂を大切にする心が伝わってきます。私の年齢の半分以下の若い先生方が自分たちで授業リサーチをして、リフレクションミーティングをして笑顔で問いを私になげかけてくれます。

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★毎回2チームずつ対話に参加。最初は阿弥先生率いるPBL研修部の先生方と小さく始めたのですが、今では学内全体に広がっています。PBL研修部の先生方とPBLリフレクションシステムを共有して、このシステムに少しずつ先生方が参加する予定だったのですが、このシステムのファシリテーターを一挙に生み出し、そのファシリテーターごとにチームを組んでいるのです。

★ファシリテーターが若手の先生方ということもあり、フラットなチームワークが出来上がっています。

★ですから、コミュニケーションの雰囲気が柔らかく、また私のような年寄の言うことも寛容に受け入れてくれますから、対話は竜巻になって広がっていきます。

★だいたい私の話は難しいと言われて嫌煙されるのですが、懐の深い先生方は、忍耐強く聴いてくれます。そしてよくわかりますよと逆に励ましてくれます。高齢者を大切にしてくれ、ありがとうございます。

★算数と音楽の授業についてリフレクションしたのですが、先ほども言いましたが、すでにリフレクションしたあとのリフレクションですから、質問も絞られていて、上質です。

★ですから、先生方の話は学びと遊びの話ですねと置き換えてもすっと受け入れられます。また算数の小数の割り算であまりが出る計算の授業は、中高ではどこにつながっていくのだろう。面積はと問うと、「無限」や「微積分」につながるという認識も持ちえます。

★そして、小学校では、無限や微積分をもちろん教えるのではなく、いろいろな解き方を身の回りのもので生徒自身が気づいていく豊かな環境を創っていくことが大切なのだという話も盛り上がりました。久保田先生は、その環境は学びと遊びのバランスだねと。

★リボンを切ったり貼ったりする手作業は、Jamボードで再現した時、結局は関数方程式になっているじゃんということになったり、気づきも多かったですね。

★井上先生の音楽の授業も同じでした。楽曲のアナリーゼを言葉のみならず身体感覚で感じるようなプログラムの話に広がり、実はそれは言葉って何だろうにつなげられるという話にもなりました。井上先生は音楽と国語を教えているので、そこの理解とイマジネーションが一瞬に結びつき広がっていました。

★ウーンと一瞬思索の世界に入り込んだり、あっと気づいたときに笑顔があふれる対話になってり、すてきでした。Zoomでもそんな気持ちのやり取りができるというのは、やはり先生方の情熱がオンラインを超えるほどパワフルだということでしょう。

★学校はやはり教師同士のチームプレイの質にかかっているなあと。

★そうそう、それに、アサンプション国際はネイティブスピーカーの教師が10人くらいいます。そのチームに岡市先生が入り込み日本人教師とのブリッジをしているわけですが、同校のネイティブスピーカーの先生方は筋金入りのPBL実践家です。大いに交流して学ぶ機会を設けたいと。

★阿弥先生も私たちはは最高の財産に恵まれていたのですね。どんどんやりましょうと。

★いよいよ世界に誇れる小学校になってきました。

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思考コードがつくる社会(23)新タイプ入試の意味「能力主義から才能主義へ」 

★新タイプ入試の意味がだんだん明らかになってきました。そのきっかけは、1つは、時代が求めている精神にマッチするものであるということ、もう1つは、晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」のデータ「思考コード」のスコアによってです。

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★マイケル・サンデル教授は、新著の中で、今回のパンデミックは、世界中の人々が脱能力主義の重要性を感じ、公益性の意味の再定義を論じるようになってきたと認識しています。また、来春のダボス会議は、テーマが「ザ・グレート・リセット」で、今までの貪欲なリバタリアン功利主義では、今後の世界はたちゆかなくなる。リセットして、1人ひとりの才能を開花するタレンティズムに移行しようという流れをつくろうとしています。しかも、その才能は、協働することによってしか生まれないわけです。

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★落合陽一氏は「働き方改革5.0」のキーワードを「クリエイティブクラス」に的を絞っています。どうやら、時代の精神は、「能力主義から才能主義へ」というものでしょう。

★新タイプテストは、今までの2科4科中心の入試問題が、学歴社会という能力主義へ結びつく、簡単に言い換えれば、偏差値だけで選抜するのではなく、ほかの才能にも目を向けたものです。象徴的に脱偏差値という表現もとりますが、偏差値は統計学の計算式で、それ自体はいいもわるいもありません。

★ただ、一つの指標だけで選抜すると優れた潜在的な才能の持ち主を振るい落とすだけではなく、その子の才能に結果的に蓋をしてしまうおそれがあることに気づいたのです。

★そして、一つの評価指標から多様な評価指標へ移行していることが、スローガンや理念だけではなく、晶文社の思考コードのデータを分析するとなるほどそうだということが証明されたわけです。

★上記のグラフを見てください。晶文社の同書の中に、東京都の共学校のデータうち、国算入試と新タイプ入試の両方のデータを掲載しているところがあります。工学院、東洋大京北、宝仙理数インター、かえつ有明、文化学園大学杉並、安田学園、開智日本橋がそうです。この7校の国算数と新タイプ入試の思考コードの領域別に平均出題割合をグラフにしたものです。

★明快ですね。国算入試では、A軸B軸思考が中心で、新タイプ入試では、B軸C軸思考が中心です。

★公立中高一貫校の適性検査は私立学校の新タイプ入試と同じ傾向です。

★ざっくり、首都圏の中学入試(公立中高一貫校を含むを準備している生徒の40%は、新タイプ入試の準備をします。上記の新タイプ入試を行っている学校は、新タイプ入試で入学する生徒の割合は、入学者の10%~20%です。

★この生徒は、入学後、多様な才能を発揮し、リーダーシップも引き受けていく傾向が共通してみられるようになりましたが、論理的に思考し、クリエイティビティを放つのが好きなわけですから、実は学力面でも活躍していまいます。

★このような生徒は、2012年までは、私立学校では、合格をもらえなかったのです。論理的で創造的でも、知識が俄然不足しています。不足というより知識は調べながら考えていけばよいという生徒です。中高になって伸びるのはちょっと考えれば明らかなのですが、慣習上、その才能を見破る入試をやってこなかったのです。

★それが公立中高一貫校の適性検査によって入学した生徒の活躍をみて、私立学校もハタと気づいたわけです、。

★このような新タイプ入試は、時代の精神「能力主義から才能主義へ」という流れにマッチングするし、新タイプ入試で出題される深イイ問いが入試市場でも受け入れられるようになっていきているのです。

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2020年9月28日 (月)

2021年変わる中学入試(10)保護者の見方・考え方が大きく変わっている実感

★ここのところ私立中学校の選択について保護者と対話することがあります。私は別に受験塾を経営しているわけではないのですが、うちの会社で小さな絵画教室を開催していることとGLICCから小学生から高3までときどき講座依頼をうけているということもあるからなのかもしれません。

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★絵画教室の講師は、女子美の大学院の研究生が多いので、かなり先端のアート発想や技術を提供できます。知る人ぞ知るアート空間です。また、詩や児童文学、SDGsなどの情報共有は私の方で仕掛けるので、ちょっと特色があるかもしれません。コロナ禍でもあるので、人数を制限しているために、空席待ちで口コミだけで生徒は参加します。

★不思議なことに、小学校4年生まではアートを楽しみ、そこから先は中学受験のために塾に行くのでと退会する生徒も2割ほどいます。そのため、学校選択の相談も受けます。年中さんからやっていますので、毎年慶應幼稚舎と慶応横浜初等部の相談もあります。これも口コミです。

★慶応は、いわゆるお受験ペーパーテストはなく、絵画か工作、それに身体能力、集団活動、面談がメインストリームですから、お受験対策をやってはいないのですが、どこからか聞いて尋ねてきてくれます。幼稚舎や初等部に入学後、絵画教室に入会して、慶応大学では文学部の美学に進んだという子もいます。

★中学受験組の中で多いのは、女子美です。ウチの絵画教室は室長を始め、卒業生もなぜか美術系は女子美族です(笑)。とにかく女子美中高はめちゃくちゃ楽しくてクリエイティブだと夏の特別ワークショップのときなど手伝いに来てくれる中高生は語っています。

★もう20年以上続けられているので、年中さんからキャリアデザインが、実は描かれていることに驚くことが多いですね。

★そして、女子美以外に相談があるのは、グローバル教育の豊かな学校はどこかです。おそらく講師の過半数は留学生だったり帰国生だったりするので、その影響もあるのかもしれません。

★いわゆる中学受験塾の英語教育に対する見方が違うというか、近くのインターナショナルスクールの外国の生徒も参加しているので、英語教育とグローバル教育の違いについて感覚的に理解しているのかもしれません。

★まあそれに、私の影響も少しはあるかもしれませんね(汗)。三田国際に行ってハーバードに行くとか、富士見丘に行ってオックスフォードに行くとかいう生徒がでてきてしまいます。

★もちろん、東大王の伊沢さんの影響も絶大で、開成に行って東大に行くという生徒もいます。いずれにしても、影響力というのは無視できません。

★そういう中で対話していくので、保護者も優勝劣敗は勘弁してくれという方が、どうしても多くなります。そして、はっきりと英語教育とグローバル教育の違いを認識し、自分の力で生き抜いていく力を身につけられる学校を選びたいと語ってくれます。

★そんな中で、私が勧めたわけでもないのに、富士見丘と八雲学園の情報を知りたい教えて欲しいと最近何件か質問されました。何か大事な情報がきちんと発信されっていないのではというのです。なるほど、そういう見方を保護者がするようになったのかとちょっと驚きです。

★別に自分のように弁護士とか医者になって欲しいとか思わないです。進路先よりもグローバルな思考様式とサバイバルスキルを身につけられるところをというのです。そのような保護者の共通点は、三田国際は必ず受けますというのです。

★二子玉川から桜新町エリアの特徴的な入試相談かもしれません。

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ミッションプロジェクト(01)聖ドミニコ修道会の小さな教会から内なる光を照らす

★大学生の頃出会った聖ドミニコ修道会のアリバス神父。40年以上前の話です。その後、3回ほどお会いし、今回で4度目です。そのあまり会わない間に、アリバス神父は、西宮エリアの甲陽園の近くの丘に修道院を建設し、30人ぐらいの信徒が入れる聖堂を建設していました。その事業は30年前に始まったといいます。今回訪れて、ミサに預かりましたが、私と同じようにみな高齢者でした。お孫さんを連れてきている方もいましたが(笑み)。

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★ミサが終了した後に、ロビーで立ち話です。これはいつものことで、カトリック教会では、大切な対話の時間です。アリバス神父は特にこの時間を大切にしています。それぞれに、思い思いの話をするだけです。気を遣うこともありません。いや本当はとても気遣いのある対話なのです。

★このシーンは、40年以上前に出会ったとき今はなき大森山王の修道院で行われていた対話と変わりありませんでした。いずれにしても、信者の皆さんは、私と同様30年前は若かったわけですが、どんな30年を歩んのでしょう。互いに自分が持っている疾患の話をして笑顔で共感しているぐらいですから、いろいろあったに違いありません。

★私と同じ疾患をお持ちのレディーと症状や薬や快復に向かう過程まで同じだと私もすぐに仲間に入れてもらえました。もちろん、100%快復しているわけではありません。みな身体の衰えと痛みを持っているからこそ、笑顔で静かに対話できます。

★それは、アリバス神父も同じです。「身体は大変なことになっているけれど、私は元気です」と微笑みながら話すアリバス神父と私たちもよと対話している姿は、なんともいえないマインドフルネスの光がそこに灯っているではないですか。

★そんなシーンに心地よさを感じながら、信者の皆さんが帰った後、お互いにこの40年間何を考え何をしていたのか思い出話に話を咲かせながら学生時代にタイムスリップしたかのように時間は過ぎました。

★そして、まさか新たなプロジェクトが生まれるとは。全くもって驚きでした(つづく)。

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2020年9月27日 (日)

新しい学校の条件(04)聖学院 数学的思考ベースの社会解題解決

★聖学院の本橋先生(数学科)とZoom対話をしました。本橋先生は高校時代から大学まで米国留学をして、帰国後はICUでも学んでいましたから、基本はリベラ―ルアーツベースの授業をします。はじめ、といってももう10年以上前ですが、英語の先生かと思っていたら、数学の教師で、英語も話して数学もというわけですから、当時としては新鮮でした。

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★今でこそ当たり前になった中学入試の新タイプ入試ですが、7年前に本橋先生や伊藤豊先生が思考力入試を立ち上げたときは、適性検査型入試が広まり始めた時代でした。

★当時は、それ以外のユニークな私学らしい新タイプ入試といえば、聖学院とかえつ有明の思考力入試でした。今では、思考力入試もチームで作成され運営されていますが、立ち上げ当初は、チャンレンジャーが隗より始めよという感じで小さく始め、今は大きく成長したという感じでしょうか。

★ともあれ、ユニークな私学らしいという意味をどう設定しデザインするか毎回のように議論しながら進化してきたわけです。聖学院は21世紀型教育機構のスターティングメンバー校ですから、同機構のアドミッションポリシーの共通約束である「思考力入試」をやろうという局面のリーダー校でした。カリキュラムポリシーの共通の学びは「C1英語×PBL×STEAM」ですから、そのエッセンスとしての思考力入試をどう設定するのか。また、ディプロマポリシーの共通約束である海外大学への道も開くという点でも世界標準の思考力って何だろうという議論もしてきました。

★本橋先生は、リベラルアーツベースの思考様式を有していたし、英語のみならず東南アジアの幾つかの言葉にも精通していたとうこともあり、数学と言語といリベラルアーツの思考とは何かを追究していくということはすぐに決まったわけですが、その具現化と何といっても普段の授業との結びつきをどうするかは毎回議論し深めていくことになったのです。

★今回も、今聖学院は、35分の6時間授業で、週4日はリアルに週2日は自宅で課題解決日というハイブリッド型授業(高3に関しては週6日学校で学んでいるそうです)になっています。リアルな授業でもロイロノートなどのプラットフォームを活用していますから、いつでもどこでもICTは学びのツールになっています。

★35分授業ですから、残りの15分は自宅と連動する反転学習になっているそうです。

★このようなフルスペックのリアルとオンラインのハイブリッド授業になっているために、ふだんの授業の中に今まで以上にリベラルアーツ的な数学的思考を盛り込めないだろうかという議論で盛り上がったわけです。

★今まで思考力入試を作成するにあたって、どのようなマテリアルを何のためにあるいはどんな意味づけをしてきたかを、対話しました。Zoom対話の便利なのは、話しながらイメージしたいなあと思うものはインターネットで画像を検索すれば、すぐに出てくるので、視覚化しながら対話ができるということですね。本橋橋先生と私と2人の対話なのですが、実際にはweb上に参加しえいる多くの人の力を借りることができます。グローバルブレインを活用しながら対話ができるので、対話も広がり深くなります。グローバルブレインの方々に感謝です。

★さて、どんなマテリアルを背景に使ったかを思い出しながら話していきました。本橋先生は東南アジアの自然や神社の森の空間を散策するのが大好きということもあり、自身が撮影してきた写真を活用することが多いのですが、空間の美というものを生徒と共有するにはどうしたらよいのだろうという気づきを大切にしていました。

★ですから、黄金比と白銀比を背景に「無限」という美をいっしょに考える思考力入試にチャレンジしています。多くのバリエーションがプロダクトされてきました。しかし、そこで大事なことは数列や微積における「無限」という考え方を哲学的あるいは言語技術的な考え方に置換・適用できるかという数学的思考を、思考力入試や授業で楽しめるかということだそうです。文系だから微積はやらなくてよいではなく、難問を解けなくても、数学的思考は身につけていくことが大事だと。リベラルアーツ的な発想がこういうところに見え隠れしますね。

★空間を代数的にアプローチするだけではなく、幾何的なアプローチをするときは、トポロジー(位相空間)という置換操作を活用することもしばしばです。本橋先生は、IB(国際バカロレア)のディプロマの数学の海外の研修に参加して学んでいますから、高次の数学思想を学ぶプログラムにも共感しています。ですから教科書からはみでて、そのような数学者の知見も活用するわけです。同時にIBはオーセンティックを求めますから、社会課題に実際に数学的思考を活用する機会も創意工夫します。

★本橋先生は、トポロジーという柔らかい幾何の発想が、フラーレンのような新物質発見につながったり、IoTや物流でネットワーク・トポロジーという形で、実用化されていることなど授業にどう結びつけるか考えているそうです。ネットワークのパターンを見つけていくというのは、まさに数学的思考ですよね。

★エッシャーのトリックアートも活用しています。モノの見方を変えることの面白さは、数学的思考の醍醐味だし、エッシャーのトリックアートは、数学者の友人からインスピレーションをもらっているものが多いので、フラクタルやパラドクスの数学的な発想に気づく優れた芸術だそうです。

★代数的なアプローチと幾何的なアプローチと東南アジアの自然や神社の森を歩いたり、その地域の人びととコミュニケーションすると、その空間には時間が流れているのに当然気づくのだそうです。

★聖学院の生徒がSDGsや平和学習に取り組んでいる姿を見ながら、また実際いっしょに取り組みながら、数学的思考と結びついている片鱗が見えるそうです。そこをもっと強みに転換したいとも思うそうです。ですから授業でどうなるのかと。

★そこで、ファイマンプロジェクトでも立ちあげようかと。ノーベル物理学賞を受賞したファインマンが幼いころに父親とチョロQはなぜ動くのかという対話をしたというエピソードが話の発端です。

★ゼンマイ仕掛けで動くとファインマンがこたえると、父親は、どうやってゼンマイは動くのかと聞くわけです。引っ張るからだよとこたえると、またまた父親はなぜひっぱることができるのかと、腕があるから、ああ筋肉があるからねと。するとまたまた父親は、その筋肉はどうしてできているんだと。肉を食べているからだよと。で、何の肉?動物の肉だよと。で、その肉はどうやってできたの?もう草や穀物食べてるからでしょう。草や穀物には栄養があるからね。なぜ?光合成だよ?じゃあチョロQは、結局は?ああ!太陽だよねとなるというエピソードです。

★結局チョロQがなぜ走るのかという問いは、問いの連鎖を生み、生態系の仕組みを、つまり自然のトポロジー的なネットワークを耳出すエピソードだけれど、大人になったファイマンはそこから、太陽光のエネルギー測定や光合成のカルビン回路のネットワークトポロジーに発想をとばしたでしょうねと、議論はシステム思考トポロジーになっていきました。

★エネルギー量を関数的に転換するには、物理でやるのだけれど、そこには速度というものが何であるかが必要になります。ということは、結局時間と速度と距離の関係を学ぶ微積分に到達すると。

★SDGsや平和学習には、この自然と産業と科学とマインドが循環型トポロジー変換をいかにするかというとことですねと。この循環をするには、カルフォルニア州のゼロミッション政策や現状のプラスティックゴミを使わない政策だけでは完ぺきではない。ミッシンクリンクがまだある。それは光合成の謎をまだ人間が解けていないからだと。

★ザ・グレート・リセットによって社会組織というネットワークの循環型トポロジー変換をしていくのはいかにしたら可能か?それは思考力入試ー授業ーキャリアデザインというシステム循環を創ることでもあると。あっという間の2時間の対話でした。

★フルスペックのハイブリッド授業の中で数学的思考というリベラルアーツの精神が流れている聖学院。官製教育にはない私学教育の面目躍如。そして聖学院の伝統と革新のハイブリッドという新しい学校の条件を垣間見ることができました。

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2020年9月26日 (土)

新しい学校の条件(03)新渡戸文化学園 自分変奏曲の響きのある学校。

★「僕はね、君のことを初めてみたとき、世界に生まれてきた意味がわかったんだ」。セカオワのMAGICはこの一撃から始まります。恋の歌だけれど、恋に限らず、自分や世界の意味は、出会いの中から紡がれていくという自分変奏曲だと読むこともできます。

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★クリエイティビティは、この意味を紡ぐことだし、意味を他者と世界と紡いでいくことはなんて幸せなんでしょう。しかしながら、他者はいつも優しいわけではないのです。世界は安心安全だとは限らないのです。MAIGICの最後はこう響きます。「僕がさ、こんなに頑張って生きてきたのに本当に大切なモノさえ失ってしまうんだね。でも僕はさ、知ってるよ、それでも人生は素晴らしいと、生まれてきてよかったと僕は本当にそう思うんだよ」と。

★まさにセカオワ=世界の終わりの臨界点に達した時に、素晴らしい意味を紡いできたことが希望につながり、逆説的かもしれませんが幸せなのです。まさか?と思うでしょうか?おそらくその感性は、戦後日本の教育が過保護にも過干渉にも社会の課題を子供たちから遠ざけて、マスクをかけてきて、進路指導をしてきたからでしょう。社会から隔離された閉じられた社会で18歳になるまで徹底的に知識を教え込まれてきたのです。その知識は客観的で、そこに何ら問題になるような難しい情況や文脈や五感で感じる色も臭いもきれいに拭かれて取り除かれている無菌知識が与えられてきたのです。

★そんな閉じられた社会から、いきなりウイルスだらけの社会課題が充満する社会に放り出されたとき子供たちはどうなるのでしょうか。今回のパンデミックは、まさにその問題点を明らかにしました。閉じられた社会に居つづづけていると、社会課題や社会リスクを自分で洞察し、仲間と協力して、解決して乗り越えることができないのだと。

★しかし、逆にオンラインで自由に世代を超え、国境を越え、世界同時的な今回の社会課題について語り合える学びの環境を創った新渡戸文化学園の生徒は、いまここで社会課題を直視し、自分も解決する主体者としてあるいはエージェンシーとしてかかわれるのだと実感できたわけです。

★開かれた学びが他者と協働して社会課題をいっしょに解決するクリエイティビティの竜巻を生み出していけるのだと。いっしょに新しい世界をその価値をその意味を創造することこそハピネスブリッジなのだと。

★閉じられた社会を開放する教育のパラダイムシフトが新渡戸文化学園で起きています。今までの教育改革は、閉じられた社会の中の修繕でした。大学入試改革をしたとしても、この閉じられた社会の中の話です。well-beingはそこから解放されることでしょう。この解放が、まるで神の計画かのように、パンデミックと学校改革が重なるタイミングで新渡戸文化学園から生まれたのです。

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★そして、その意義は、第二次世界大戦のときの極限の状況から生きる意味を見出すことで近代の矛盾解決に立ち向かったフランクルのマインドに通じます。しかし、根本的に解決されていない瞬間を9・11や3・11で体験した世界は、シリコンバレーの新しい近代国家を越境する動きに揺らいでいます。GAFAなどは、閉じられた社会から解放を宣言しています。

★そのシリコンバレーの地に、テクノロジーとエンジニアリングを駆使して、その閉じられた社会の象徴である進路指導(実は根本的には欧米でも同じなのです)を開放してしまう学校が誕生したのです。それがHTH(ハイテックハイスクール)で、この設立の理論的支柱であるハーバード大学のトニー・ワーグナー教授のアイデアは、まったく新渡戸文化学園とシンクロしています。

★しかし、HTHは、そのドキュメンタリー映像の最後で、テクノロジーやエンジニアリングだけではなく、ガーデニングに象徴されるZENの思想が必要なのだと。この思想は、キリスト教と武士道の両方の思想の架け橋となった新渡戸稲造の発想を後追いしていますね。もっとも、テクノロジーやエンジニアリングの元祖エジソンの座右の銘は、「武士道」だったということはあまりにも有名です。

★新渡戸文化の新しさは、かくして決定的なのです。

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2020年9月25日 (金)

工学院インパクト(12)グローバルティーチャー高橋一也先生による羨ましい研修。

★工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)には、あの高橋一也先生がいます(※)。高橋先生は、同校のラーニングマネージャとして教員研修プログラムの開発及び実施を担当しています。定期的にその研修が実施されていて、今回は「インストラクショナルデザインのつくり方」がテーマでした。

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★工学院の先生方は、生徒ファーストなPBL授業を中心に行っていますが、単元の流れの中で、レクチャーももちろんします。レクチャーと対話や議論のミックスのバランスはいつも試行錯誤です。同じ単元同じ学年でも生徒によって嗜好性や考える深さなど違います。そこをどう読むかです。

★高橋先生は、そのバランスを教育理論や学習理論によって、先生方の実践を検証し、ブラッシュアップやアップデートなどの教師自身の恒常的な自己変容を生み出す研修をしているのです。

★11月くらいからはPBLのベースになる「コンストラクショナルデザイン」という教授法を研修しますから、レクチャーと対話や議論のバランスをいかにデザインするかを、先生方は学び、自身の授業の方法やコンテンツを改善していくストーリーになっています。

★実に興味深いのは、高橋先生は、インストラクションかコンストラクションかという二項対立を展開しないことです。理論というのは、いずれの方法にもあるメリットとデメリットを明白にします。

★完璧で絶対的な教授法があると考えるのは、経験至上主義者の陥る罠です。多様な理論や方法のそれぞれのメリットやデメリットを洞察できる力が大切なのです。そのうえで、生徒の認知能力と非認知能力の状況に対応するように、あるいはこう言い換えてもいいのですが、最近接発達領域を見出して、デメリットを出来るだけ回避して、メリット同士の組み合わせをしてデザインしていきます。

★とはいえ、何がメリットかデメリットかは簡単に分けられません。生徒にとってはそのメリットがデメリットということがおうおうにしてあるのです。

★そこで、今回のワークショップは、生徒のニーズをいかにしてリサーチ・分析できるのかというものでした。これはあらゆるデザインをするときの基本です。ビジネスにおいても教育においても、クライアントや生徒の欲するものを知るための技術は重要です。ビジネスでは、ここの部分に相当投資しています。一方教育は広報の部分では行っていますが、毎回の授業ではどうかといえば、教師の観察眼に任せるで終わっていると思います。

★改めて、この生徒ニーズを分析することの重要性を先生方はシェアしました。

★そんな流れの中で、今回のパンデミックでオンライン授業を行ったために、生徒とグーグルフォームでアンケートをしながらニーズ分析やリフレクション分析をしている片瀬先生の報告がありました。

★高橋先生は、まさにこれですよと現場の先生方の実践の優秀性を指摘しました。

★理論と実践のスクランブルが広がった瞬間でした。

★インストラクショナルデザインによるレクチャーと今後のコンストラクショナルデザインによるPBLのハイブリッド授業が工学院の授業の大きな財産であることが証明される年末が楽しみです。

※高橋一也先生は、Global Teacher Prize Top10、Phi Kappa Phi(全米優等生協会)などの受賞歴があるスーパーティーチャーです。

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新しい学校の条件(02)品川翔英がスーパーモデルになるわけ。校長がCOIマインドの持ち主。

★品川翔英はスマート21世紀型教育を進めています。そういう意識があるかどうかはわかりませんが、外から見ていてそのような条件を満たしています。では、どこの学校でもできるかというとそれがそうはいかないのです。というのも、B1英語ぐらいならできるし、アクティブラーニングやPBLも探究の時間でならできるし、STEAMも3Dプリンタぐらいは用意できるし、プラットフォームを使って動画や課題を配信するオンライン授業は可能だけどというレベルでの21世紀型教育ならなんとかなるくらいだからです。

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★ただし、それでは世界標準の学校とは言えないのです。別に世界標準でなくてよいということであれば、それでよいと思います。しかし、品川翔英のように海外大学も射程に入れると宣言することは、C1英語まで行う授業をするよということです。C1英語をやるにはPBL授業の環境設定をしなくてはなりません。1人1台のタブレットやラップトップは当たり前です。

★ビジョン・ミッション・コンセプトに突き動かされて教育を行う学校(VMC-driven School)であれば、校長が世界標準の21世紀型教育をやると断固たる決意をしたらそうなるでしょう。

★したがって、品川翔英は、C1英語×PBL×ICTの環境はフルセットなオンライン授業を実践したこの5カ月の間に組み立ててしまったのです。つまり、はやくも世界標準の21世紀型教育の土台ができたのです。

★20年前に、柴田校長は、ソニーのVAIOとミニプロジェクターを軽やかに持ち運び、あちこちでプレゼンテーションをやっていました。ICTがいろいろな意味で脱達人化・脱職人化・脱技能化する速度感を知っています。オンライン環境が必要だとなった瞬間にすぐに動いたのはそういうわけでしょう。ホームページでの発信力の影響力も自ら体現済みですし。

★したがって、強力にICTを導入した21世紀型教育にシフトするでしょう。今まではグローバル21世紀型教育だったとすれば、これからはAI21世紀型教育へとシフトするのは間違いありません。VUCAという予測不能な時代、グローバル21世紀型教育は有効です。しかし、VUCAに振り回される時代は終わりにしようというのが、今回の世界同時的パンデミック体験の気づきです。

★もちろん、予測不能は避けようがありませんが、何が起ころうと動じない強い構えを身につけるということなのです。それは1人ではできないのです。

★今までは、1人で歩んでいくのが美徳でした。しかし、それは細い道を懸命に走り、大学受験という壁をなんとか早く通過しかつポジションの高いところにいければ目標は達成されたのです。

★しかし、VUCAの時代はその程度では、世界市民として生きていくことは困難です。やはり、広い視野と深い洞察力が必要になります。するとチームワークやシステム思考が必要になります。だからこそPBLなのです。

★これで、チームが歩いていく道が広くなります。オンライン上で世界の人びとも協働できますから、ますます広くなります。細い道をふさいでいた壁も、道が広くなることによって、壁自体が塞ぎようがなくなります。崩れます。どんどん先に進めます。

★このとき、メンタルモデルに自己変容が起こります。

★かたくなな自己もまた崩れていきます。好奇心と開放的精神となぜだろうと深く問う洞察力(COI)が内側からあふれでてきます。

★COIマインドの持ち主は魅力的な人間です。COIマインドであふれる学校は、多くの人といっしょに遠くまで歩ける幅の広い道を開拓できるでしょう。あらゆる人が頼りにする学校。そして自分も同時に頼られる才能があることに気づける学校。

★柴田校長が今先生方といっしょに向かっているのは、このような体制を作ろうとしているわけです。先生方の潜在力を個人の力量で終わらせるのではなく、COIマインドの顕在化のために奔走しているのでしょう。

★AI21世紀型教育というシステムとCOIマインドの統合がスマート21世紀型教育です。システムはできても、マインドのシェアはそう簡単ではありません。柴田校長のように、校長自身が強く柔らかいCOIマインドの持ち主でなければ難しいのです。もちろん、断固たる意思決定は必要です。

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2020年9月24日 (木)

新しい学校の条件(01)品川翔英は3年以内に新たなポジショニングを生み出す。

★今回のパンデミックによって、ポストコロナ時代の新たなウネリが色々なところから生まれています。2011年の東日本大震災後に、世界標準の学校をと21世紀型教育機構が立ち上がったときのように、今回も新しい動きが生まれています。21世紀型教育機構自体のアップデートも目覚ましく、そのウネリの1つですが、それとはまた別に今回のパンデミックを経て新たな気づきを得て断固たる意志をもって教育出動している学校があります。今回は、品川翔英について考えてみましょう。ある意味、同校はスマート21世紀型教育校です。

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★品川翔英は、今年3月から、校名変更、共学化、カリキュラム改革を行いました。同校は幼稚園から高校までの総合学園です。昨今、認知能力だけではなく、非認知能力の重要性が話題になっていますが、その話は幼稚園から高校までの学びと生徒の成長の話です。この重要な根源的な教育をバックボーンに持つ中高一貫校品川翔英は、今までの中高一貫校とは全く違うポジショニングを獲得する可能性があります。

★共学になったことによって、その教育の一貫性が実施することもできます。

★パンデミックによって、オンライン授業とリアルな授業の両方をできるハイブリッド型になりましたが、これは中高だけではなく、小学校もそうなのです。ハイブリッドな教育が行えるには、クリエイティブな教師が必要ですが、パンデミックは、同校の先生方がいかにクリエイティブな機動力を有しているかを証明もしたのです。

★ダボス会議もサンデル教授も落合陽一氏も、今後は大量生産・大量消費・大量移動というアンチSDGs的な経済社会はグレートリセットされ、あらゆる物や事態の見直しが起こると言っています。そしてそのけん引人材をクリエイティブクラスだと。

★コンパクトシティーとかスマートシティとかこれまで言われてきましたが、この流れはどんどん進み、AIガーデンシティが生み出されます。教育も例外ではありません。

★品川翔英は幼稚園から高校まで、コンパクトに収まった教育共同体です。そしてテクノロジーやエンジニアリングを駆使したハイブリッドな学びの環境も整えています。

★これまで、中学入試市場で広まってきた21世紀型教育のエッセンスは、同校はすべて揃えています。C1英語×PBL×STEAM、ルーブリック、探究、留学などの世界標準の教育を着々と実行しています。

★21世紀になって、柴田校長は、この教育をいろいろな学校で実践してきました。ですから、柴田校長にとっては、未知の教育ではないし、校長自身が創り上げる現場にいたし世界を駆け巡ってきました。ビジョンだけ言って、あとは現場に任せるというタイプの校長とは違います。

★ですから、昨年9月に副校長として就任して、4月に校長に就任したとたん、パンデミックに見舞われても、なんら動揺せず、突き進みました。あっという間に世界標準の土台ができたのです。もちろん、完ぺきではありません。新たな伝統をつくるべく、教師と生徒のみならず、保護者も同窓会も入試市場も巻き込んで共創していくわけです。

★しかし、世界標準の土台ができてしまっているのですから、大きな期待と希望があります。一般にこの土台をつくりあげるのに3年はかかります。それが柴田校長就任半年で組み立てたのです。

★さて、これまでの21世紀型教育やそのTTP(徹底的にパクる)学校と大きく違うところは、出発したその日からフルスペックのオンライン授業を試行錯誤するところから始まったということです。

★本日も台風接近に対応するため、オンライン授業というリモート対応をしているぐらいです。

★ふつうはここまでくるのに3年かかるのです。それがもうできているのです。21世紀型教育校が6年かけて実績を出してきたのに比べ、3年早く成果を出すことになります。

★21世紀型教育が有効であることは、すでに多くの学校が証明しています。ですから、この教育と共通する土台を有している品川翔英は、3年後、すなわち2023年には成果を世に示すことになります。

★しかも、21世紀型教育をもっとスマートにコンパクトに行うことになります。ハイブリッドな学習環境は、あらゆる領域で効率化と合理化が進みます。そして時空を超えます。見た目は小さいですが密度が詰まっている教育共同体になります。もちろん、効率化した分、豊かな人間力を育む時間が生まれます。

★実は、シリコンバレーで有名なHTH(ハイテックハイスクール)が目指しているエンジニアリングからガーディニングへという新しい学校のコンセプトと品川翔英をマネジメントしている柴田校長のビジョン・ミッション・コンセプトは親和性があるのですね。

★これは新渡戸文化学園の山本崇雄先生や横浜創英の工藤勇一先生のアイデアともシンクロするところがあります。もちろん、手法は違います。それでよいと思います。いろいろな角度から新しい学校が誕生する。だからこそ私学だし、だからこそ多様な教育が、多様な子供の才能を生みだすことができるのです。

★それでは、その新しいスマート21世紀型教育とはどんな教育なのでしょう。その片鱗は、今年の後半、見え始めます。またご報告いたします。

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21世紀型教育機構5.0(02)シノプティコンパラドクス!パンデミックで公益性や黄金律=一般意思の再定義に気づく。

★9月19日に行われた21世紀型教育機構のオンラインセミナーは、それだけでもポストコロナ時代の教育のプロトタイプを示すものでした。同機構理事長吉田先生もオンラインで現実と未来を結びつける高感度なミッションを語り、副理事長の平方先生が資料を共有しながら語りました。お二人はZ世代ファーストといいながら、団塊世代の自身の世代を越境して語り、何よりZ世代といっしょに学びの環境を実際に創っている当事者です。

★巷の世代論をすでに破壊していますね。私学人の一大特色である創造的破壊者の面目躍如でした。小賢しいマーケティング日和見主義者とは違います。世代を超えて、共感できるのは、このブレない創造的破壊をなし、日和見損得勘定主義という悪貨に良貨が駆逐されないように、踏ん張る教育出動をするところです。

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★そして、この理念を具現化すべく、各加盟校の21世紀型教育コーディネーターがオンライン上で対話しました。ナチュラルな感じで、互いの実践をリスペクトしながら独自の実践を共有するという公益性を生み出していきます。

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★この公益性は、しかし不思議なもので、日ごろから語り合っているものでもありません。なぜなら加盟校はそれぞれ独立して学校を経営しています。ですから、吉田理事長や平方副理事長が、加盟校に上意下達的な指令を出す組織ではないのです。すなわち、加盟校が独自に判断しているわけですが、このような公益性というか共創の行為を展開しているのです。

★おそらくこれは、機構の規約の前文にある「黄金律」を受け入れることを同意しているために、ピラミッド型組織ではなく、≪私学の系譜≫の原点である啓蒙思想の社会契約的な組織が出来あがtっているのだと思います。

★平方先生が、NY国連の平和のギャラリーにディスプレイされているノーマン・ロックウェルのモザイク画を共有しながらそのことを語りました。ロックウェルのモザイク画は21世紀型教育機構の理念やミッションのシンボルだからです。

★国連は、「あなたがしてもらいことを他者にもしなさい」という黄金律はキリスト教だけのものではなく、すべての民族、人種、宗教など分断している壁を越境する共通する理念であると語っています。グローバル教育を掲げている21世紀型教育機構もそれは同じ想いです。

★このことは2011年発足以来、機構の中で何度も語られてきたのですが、今回のパンデミックに直面したいまここでこそその重要性を身に染みてわかることになるとは驚嘆です。

★機構の組織の在り方自体、この黄金律のミッションを共有するゆるやかだけれど21世紀型教育を実装する教育コミュニティです。たんなる合同説明会のコミュニティとは違います。J.J.ルソーが、リスボン大地震以降、キリスト教を持ち出して論じることができなかったので、普遍的な視点から社会契約や一般意思について論じました。これはまた明治以降生まれた私学の精神に引き継がれ、以降≪私学の系譜≫が連綿として続いています。21世紀型教育機構は、この系譜であることを改めて感じ入りました。

★いずれにしても、今回のパンデミックで、黄金律や公益性、一般意思というものの再定義を始めたのが同機構なのでしょう。黄金律や一般意思は、国会できめたものでもないし、誰かが強制するものでもないのです。社会契約とて、私たち一人一人が契約書を書くわけではないのです。

★それなのに、そのルールを認識し、共に組織や社会を創っているのです。21世紀型教育機構のこの在り方こそ、明治維新のときに、官製教育を生み出した官僚近代社会に対し、もう一つの近代社会をつき続けてきた私学の本意でしょう。

★しかし、なぜこれがなかなか成り立たなかったかというと、時間と空間の制約があったからです。情報の非対称性がそれを阻み、格差社会を生み出してきました。それがオンラインによって越境できるようになたったのです。新しい経済、新しい社会、新しい教育の生まれる時がきたようです。

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★21世紀型教育機構の各加盟校は、自粛期間中に、同じように悩んでいる世界の学校と共に語り合ってきました。別に彼らと社会契約も黄金律に従うこともサインしているわけではないのです。

★パンデミックの世界同時的経験を通して、ダボス会議もサンデル教授もあの落合陽一氏も、新しい経済、新しい倫理を生み出すクリエイティブクラスの台頭を予言しています。

★21世紀型教育機構は、加盟校の規約に、黄金律とクリエイティブクラスを大事なキー概念として採用してきました。

★平方先生は、それを今一度確認しました。しかし、その確認は、今だからこそとても大事です。オンラインという国家法を超えたアーキテクチャー法によって私たちは今回動きました。フェイクニュースやヘイトスピーチも山ほどあるサイバー空間でも、それらから自由を守り、生徒の息吹を汚さないようにするには、そのアーキテクチャー法が黄金律をリスペクとするものであるとよいわけです。

★楽観主義かもしれませんが、ブロックチェーンという相互監視のシノプチコンアーキテクチャーのパラドクス。シノプチコンが黄金律を共有する世界を創っていきます。そのようなことを考え実行することこそ世界の学校としてリーダーシップを発揮していくことができるでしょう。

★ダボス会議でもサンデル教授も、今「哲学」が必要だと。21世紀型教育機構は、すでに「哲学」の重要性を語り、実際にPBLという授業の中に内燃させてきました。そして、今回のパンデミックで、英語で哲学的対話を世界の人びとと出来るようにしようと動き始めました。

★そのプロトタイプとして、小学生と中学生対象の哲学セッションも同時開催しました。ファシリテーターは、機構の盟友アレックス・ダッツン先生です。アレックス先生は、ケンブリッジ大学で哲学を学び、日本の多くの中高や慶応大学などで哲学授業を英語で行ってきました。

★今はイギリスにいったん帰国し、哲学の博士号を獲得さるために研究しています。オンラインセッションだからこそダイレクトにアレックス先生と生徒が対話できるのです。

★このような人材と知の共有を時空を超えて出来てしまう学びの組織。世界の学校と言わずして何と言いましょう。文科省がこれをやろうとすると10年かかるでしょう。ですから、10年後のシーンを21世紀型教育機構と共にいまここで思い描く生徒や保護者や学校が増えることを大いに期待したいですね。

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21世紀型教育機構5.0(01)AI社会日本を牽引する加盟校「世界の学校」へ

21世紀型教育機構のセミナーシーズンが例年より1カ月はやくクライマックスを迎えています。今回のパンデミックのために、不測の事態が起こる子かもしれません。来春の中学入試、高校入試、大学入試のリスクマネジメントの準備を10月から本格的にしなくてはならないのです。

★それにしても、2011年に発足し昨年2019年まで8年かけて、本物21世紀型教育を日本で初めて立ち上げて、海外のエスタブリッシュスクールと同じレベルの教育の質を創り上げてきた加盟校の先生方。先生方の歩いてきた道を、TTP(徹底的にパクる)で後追いしてきた多くの学校を創り出しました。それだけでも社会的貢献は絶大です。

★しかし、ここまでは、21世紀型教育機構3.0です。2020年、パンデミックに対応するフルスペックなオンライン授業を加盟校一斉に行って、この5カ月で10年分のさらなる進化を一気呵成に遂げています。私は2019年度で21世紀型教育機構の事務局を退任していますから、この21世紀型教育機構4.0へのシフトは、岡目八目で良く見えます。世の中、まだまだオンライン授業が完備していない中、完璧に実施し、さらなる展開を開始しているのです。さらなる進化とは何でしょう?ともあれ、菅政権になって、ようやくデジタル庁が新設される準備がなされ、デジタルファーストが加速しそうです。

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(2020年9月19日の21世紀型教育機構オンラインセミナー「世界の学校へ」から)

★ところが、今の中高は、デジタルネイティブである≪Z世代≫と呼ばれている生徒が学園生活を営んでいます。ですから、21世紀型教育機構はデジタルファーストではなくデジタルネイティブ≪Z世代≫ファーストで、動いてきました。先駆けですね。

★デジタルの世界は、国境のような壁がリアルな世界に比べてありません。ですから、世界の大学の有名講義も中高在学中に受講できます。そのため、講義が聴け、議論できる英語のレベルをと、加盟校の先生方はCEFR基準でC1英語を学べる環境をつくってきました。

★そして、世界と結びつくには、留学や海外研修をするにも、デジタルを使わなくては身動きがとれません。そのため1人1台タブレットやラップトップを使って授業もデザインしてきました。そうなるとSTEAMへの道を歩むことに必然的になりました。

★STEAMの世界は、協働世界です。したがって、普段の授業がPBLという構成主義的なデザインをしていたのも功を奏しました。

★デジタルファーストではなく≪Z世代≫ファーストでできたのは、そもそもPBLが生徒ファーストな授業ですから、中高生自らが社会課題を発見し、議論し、アイデアを出し、さらに起業活動などもして世界制作のスキルを社会実装していきました。当然ICTはその社会実装を強力にサポートするクリエイティブツールです。

★こんな状態でしたから、すでに海外大学(世界ランキング100位以内を中心に)にも各加盟校からどんどん進学するようになりました。国内の大学も、AO入試でいわゆる偏差値の高い大学にも進学するようにもなりました。

★もちろん、機構にとって、それは目標ではなく、世界の学校の一員として当たり前の話なのです。

★大事なことは、日本社会の中だけで通用する教育ではなく、世界標準の教育を行うことが目標です。そのため、すべての加盟校が、なんらかの世界標準のコミュニティの加盟校になっています。

★世界の学校につながる準備ができたのです。

★そんなとき、このパンデミックでした。加盟校は動揺することなく、生徒の命を守りながら普段通りの学びを続けました。しかし、その道のりが、5カ月で10年分の進化を果たすことになったのです。今回のセミナーは、その成果をふんだんに披露しています。21世紀型教育機構4.0の姿を見ることができます。

★おそらくあまりに先を行き過ぎて、文科省も経産省も追いつかなくなっているでしょうし、見えていないでしょう。それはもったいないし、そのことを知ることは日本社会にとっても有益です。またTTP学校が増えて、教育のアップデートも加速します。

★ですから、ぜひセミナーに参加していただきたいと思います。

★そして、はやくも2021年には、21世紀型教育機構5.0がスタートします。ますます先に進んでしまいます。そこで、しばらく、これから日本の教育の10年後を映し出す21世紀型教育機構5.0への移行の動きで見ていきましょう。

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2020年9月23日 (水)

品川翔英の進化(07)台風12号接近に備えるリモート学習。

品川翔英は、今回のパンデミックのリスクを回避すべく実施したオンライン授業を、明日の台風12号接近に伴う対応として行うことを決断しました

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★生徒の安全確保及びこれからの不測の事態対応の備え、新しい学びのスタイルの基盤を形成することもねらいとしているということです。

★菅政権になって、デジタル庁新設、デジタルファーストの流れがようやく生まれてきましたが、品川翔英はその先を走ります。いずれ、モデル校として注目されることでしょう。

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思考コードがつくる社会(22)世界市民の生き方を考え、対話し、実装するために。

★ここのところ対話している先生方のものの見方・考え方は、簡単にまとめると、今のデジタルネイティブの中高生に、大学受験勉強の環境だけつくっていたのでは、もったいないということでしょう。

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★大学受験は、ナチュラルにパスしてもらう方法を考えたいということだと思います。どうせ学ぶなら、世界市民として自分はどう生きるのか、何を行うのか、それが今見つからないのなら、見つけるための旅を見つけるリベラルアーツの道を開く環境をつくるとかしたいということでしょう。

★ただし、後者の道は、日本にはなかなかないので、海外の道も開けるようにトレーニングできる学びの環境も創りたいと。

★そのためには、メタルーブリックの位置づけにある「思考コード」を生徒とシェアするというコトですね。あらゆる領域を越境するための思考力や多角的視点を身につける必要があるからです。

★俯瞰してみるということではありません。俯瞰していると思っても俯瞰できていないことを知るためです。

★この謙虚な寛容性が、クリエイティビティを生み出しますし、共感的コミュニケーションをとれるようになります。

★もし自分は俯瞰してみているのに、それができない人がいると思った瞬間、そこにパターナリズムが忍び込みます。真理はゆがみますね。

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品川翔英の進化(06)国語科PBL型授業2.0へ 単元テストとPBL型授業の相乗効果

★先日、品川翔英を訪れました。正門から受付ロビーまで歩いていると左手から、サッカー部の練習の大きく低い声が聞こえてきました。手入れの行き届いた芝生でグリーンな世界が躍動していたのです。今年の3月まで女子校だったとは信じられないと思いつつ国語科の先生方のところへ案内していただきました。

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★中1のドラマエデュケーションも始まり、部活に探究に生徒はパフォーマンスから内面を鍛えていく躍動的な学びに翼を広げ始めました。そんな躍動感を、日々の授業からも生み出そうというのが柴田校長の発想ですが、それを言語そのものによっても生み出そうともしています。多角的な発想が1つにつながるには、どうしても言葉の力が大切だというのが柴田先生の考え方なのでしょう。

★たしかに、歴史を顧みれば、熟慮、傾聴、共感、交渉力、そして雄弁というのはリーダーにとって必要な条件です。言葉は大切ですね。中学の学校説明会が終わり、講堂から戻ってきた柴田校長に廊下で出会いました。「本間さん、今日だったんですね。国語科の先生方がんばっているでしょう!次があるからすぐに抜けなきゃならないけれど、たまに顔出してみようかな。いいですか」と声をかけられました。

★「もちろんです」と校長を交えた国語科研修が始まりました。今回のテーマは、第1ステージのPBL型授業のデザインは到達したので、第2ステージに進みます。テーマは、「単元テストの意義を確認する」です。広井良典教授の「日本社会はどう変わるべきか」というインタビュー記事を素材に、中3向けと高3向けに分けてプロトタイプを先生方はつくってきました。2チームに分かれて作成したようです。

★柴田校長は、今ちょうど、今年から定期テストをなくして、単元テストにシフトする話をしてきたところだから、おもしろいと前のめりになって参加していました。そして、次があるからすぐ退席するはずだったのが、2チームのプレゼンを傾聴し、質問し対話するところまでいました。

★テストというのは「評価」の機能を果たします。しかし、その評価が世界標準でなければ意味があるのだろうかという疑問を常日頃抱いていた柴田校長は、国語科の先生方のPBL型授業と一貫性をもって連動している単元テストの問いの立て方と、単元を超えて次につながる意味を先生方が語っているのを聞いて、自分の教育の考え方とすり合わせをしたくなったのだと思います。

★国語科の先生方も丁寧に回答していたし、中3では、東大の社会の一般入試の記述に似ているレベルだとか、高3は東大の推薦入試や帰国生入試のレベルになってしまっているけれど、私たちの生徒は考えていくことができるという手ごたえを感じているとかという話題もでました。そのような自信を持っている姿に柴田先生は改めて感動していました。

★別に東大のためというわけではないけれど、東大の一般入試の記述は、教科書に書かれていることをきちんと理解しているかどうかを検証するのにちょうどいい問いだし、東大の推薦入試や帰国生入試の問いは、国際バカロレアのTOK(知の理論)の問いと同レベルなわけですから、世界標準の評価視点を国語科の先生方は持っているとピンときたのでしょう。

★柴田校長の前職の学校から、毎年10人前後の東大合格者が輩出されていたし、実際に自分の教え子が進学しているので、感覚的にもわかるのだと思います。

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★柴田校長が次の仕事のために退席された後、国語科の先生方は、それまでの対話や議論をまとめる作業に入りました。ポストイットに情報を書き出して、カテゴライズして並べていく作業は、もはやルーチン化していて、さくさく進んでいきます。

★日ごろのPBL型授業と同様にワークショップ型展開はお手の物です。ICTも活用しているので、話し合っていることを、その場で同時並行的に言語化していきます。なんと第2ステージはこれにて到達完了です。単元テストの意義をまとめるのに、2時間強でやってしまったのです。一般にこの手のコンセプトを創っていくとなると、1週間から1カ月はかかるでしょう。

★しかし、風通しの良い品川翔英は、校長もいっしょになって考え、ワークショップで議論して合意形成もしていけるし、ICTですぐに作成もできるという意思決定の時間圧縮に成功しているのです。

★ところで、単元テストの意義はどうなったの?それは実際に学校説明会でお聞きください。現実的で世界観を広く深くしていける、かつキャリアデザインにつながる未来性もあるものになっているはずです。

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★チェックアウトは、井庭崇教授監修の「プレゼンテーションパターン」のカードを使いました。単元テストは、その単元を通して生徒に先生方の想いと未来を魅せるプレゼンテーションでもあります。どんな想いでテストを作成しているのか、カードを3枚ずつ選んで自分の想いを語り合って終わりました。「成功のリマインド」「心に響くプレゼント」「自信感の構築」「生き方の創造」などのカードを手に熱く語り合う姿に、品川翔英の希望が映し出されていたように感じました。

★第1ステージは、先生方1人ひとりのPBL型授業のデザインや実践のブラッシュアップを国語科全員で対話しながら行ってきました。今回のパンデミックで、オンライン授業の応用も一挙にシェアできました。

★国語科の活動やICTの使い方について、全教員とシェアする研修も国語科の平岡先生はやってのけました。

★第2ステージは、動きながら考えている「単元テスト」の意義をこれまた一挙にまとめました。

★帰り際に伊佐野教頭先生と少し話をしました。校名変更、共学化、カリキュラム変更、PBL授業化、そしてオンライン授業・・・とあっという間でした。気づけばもう9月も終わりです。文化祭のシーズンを迎えます。この密度の高さを先生方と一丸となって取り組んで、何かに突き動かされて進化している感覚を日々感じていますということでした。

★次回からは第3ステージです。またご報告します。

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2020年9月22日 (火)

【速報】三田国際日本一!N高、開成を打ち破る。「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2020」の「クラッシュ・ロワイヤル」部門で。

★本日9月22日、三田国際日本一!N高、開成を打ち破る。「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2020」の「クラッシュ・ロワイヤル」部門で優勝しました!

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★この高校生e-スポーツ祭典は、日本最大で、コカコーラ主催、電通、TBSも協力、文科省も大応援の大会です。e-スポーツの市場は、2018年の世界規模で約1000億円。今年は推計約1400億円とも言われていると文科省。財務省からは金を出さないと言われ、経産省からはなんとかデジタル化を急げと言われ、今回のパンデミックでは先進諸国でICT教育最低と言われ、ふんだりけったり。

★そこへ菅政権にシフトするや、デジタル庁新設で、デジタルファーストがますます推進されます。文科省や文化庁も焦っている時に、この祭典が行われるというのですから、文科省も渡りに船だったでしょう。

★8月31日、テレビ局やメディアも、東大王の伊沢さんというスターに続き、関東①ブロックで勝ち進み決勝戦に進んできた開成に期待をかけました。また、関東ブロック②でも、別の開成チームが勝ち進んでくると予想していましたが、三田国際が勝ち進んできたので、TBSも電通も驚きました。

★テレビ局や電通などの大手広告代理店の社員たちは、大学だけではなく中高も伝統的名門校出身者が多いので、三田国際という学校をマークしていなかったでしょう。すぐに、調べ始めたに違いありません。なんと3年間で一学年20名の女子校が全学年200名の共学校になって躍進しているではないですか。偏差値も70に迫る勢いです。

★通信制のN高だけが、革新的な学校ではなく、普通高校にも革新的な高校があったのだと改めて思い知ったということのようです。

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★本日の決勝戦では、三田国際はまずは開成をぶち破り、次に四日市中央工業を破り、ついにN高(沖縄)と決勝戦に。私も決勝戦を見ていましたが、さっぱりゲームの内容はわかりませんでした。しかし、両校とも、頭脳戦の激突であることはわかりました。ブレインスポーツであると言われる意味はすぐに了解できました。

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★よくわかりませんでしたが、追い詰められたかに見えた三田国際の「かんなさん」が、中継スタッフによると、隠し玉を使う機転の利いた戦術で防衛し、勝ち進むという鮮やかな手法だったようです。

★それにしても、N高の生徒の落胆ぶりはすごかったのかもしれません。ツイッターからみていたので、やはりよくわかりませんでしたが、なぜか大会アンバサダーのアンガールズさんやみちょばさん、アルコ&ピースさんたちは、ヒーローインタビューのところで、N高三銃士に、準優勝だからすごいじゃんとか、今日の最終戦に勝ち進んできた高校は8校あるのに、最初に三田国際に敗れた開成三銃士に、ここまできたのは凄いよとエールを贈っていました。

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★おそらく、シナリオでは開成と開成の火花をちらす模様や開成とN高校の対戦をドキュメンタリーにするつもりだったのかもしれませね。

★全日制の獅子と通信制の不死鳥との激突とかなんとか。スポーツですから、そのぐらいの表現になったのでしょう。

★それにしても、発想の自由人を生み出すべく、最高の英語教育と最高のPBL授業、そして最高のテクノロジー&エンジニアリング環境を作り上げた三田国際。学力では開成も打ち砕く勢いだし、デジタル教育では飛ぶ鳥を落とす勢いのN高も寄せ付けないといった感じになる。いわば双頭の獅子さながらです。

★本間は、何をそんなに興奮しているのかと。そりゃあ興奮しないではいられないでしょう。

★なぜかというと、2014年4月23日 (水) にホンマノオト「2015中学受験生のために【059】三田国際学園の競合校」で、こう書いたからです。「☆三田国際学園誕生の話は、インパクトがあった。これからもっと事の重大さについて、世の中は知ることになるだろう。」

★受験生対象の保護者会で三田国際の誕生について話した直後の感想を書いています。そして、今三田国際はその通りになっています。ですから、三田国際の先生方も最初は私のことを訝し気に見つつも、距離をあけながら、まあおっしゃる通りですよくらいの気持ちはもっていてくれたようです。

★しかし、3年も過ぎると、どんどん生徒が増えますから、新しい先生方も増えます。そして、順風満帆、飛ぶ鳥を落とす勢いは持続していますから、もはや私が発信するまでもなく、多くのメディアが三田国際の情報を発信するようになりました。

★私の役目は、先駆けです。フリーのブログですから、何を書いても自由だし、まだ定着していない予想を書くことも、表現の自由の範囲内で書けます。しかし、一般メディアの場合は、そこは慎重だし、学校側が書いてよいという制限があります。

★ですから、実績が検証され、書いてもどこからもクレームが来ないように書いていくのです。私にはその制約はありません。

★私のは、ホンマというのを信頼してくれる人は、おもしろがるし、そうでない人は、インターエデュとかに散々な中傷を書き込みますよね。でも、私は革新的な学校にエールを贈っているだけです。6年経てば、それらの学校のほとんどが中学入試市場で良好なポジショニングを得、良質のイノベーティブな教育を行っています。

★今「ほとんど」といったのは、6年間待てなくて、途中でがまんできなくなって、イノベーティブ教育を伝統的な教育に理事会が戻してしまうケースがあります。理事会というのは、教育の粋や深みを知らずに、財務の話に長けている人が多いのと、あとはご想像にお任せしますが、ニューパワーが結集しているとは限らないわけです。校長1人頑張っても先祖がえりしてしまうケースもたくさん見てきました。

★理事会の中までわからないので、予想が外れる時もあります。とても悲しい気分にしばらくなりますが、そのようなケースに立ち会った校長や教頭は復元力が強いので、他校に移籍してまたイノベーティブなことをやり、そこで成功するということもしばしばです。

★そんなわけで、三田国際が今のように隆々たる姿は、眩しいですね。しかし、私は先駆けです。そのあとは、他のメディアにお任せします。三田国際のような学校を真似してどんどん新しい学校もでてきています。TTPを得意とするとメディアに公に宣言している学校も出現しているぐらいです。

★そのような学校にも私はエールを送ります。なぜなら、三田国際だけが革新的であっても日本の未来に希望はそう簡単には生まれません。理念や手法が違ってもいいんです。公共の利益に反せず危害もないのであれば、危害原理から言って、革新的であれば、市場が新しくなり盛り上がればそれでよいのです。

★だから、私はこのホンマノオト21でN高校にもエールを贈っています。すると、なぜ応援するのだと揶揄もされます。揶揄するということは、イノベーティブな学校に恐れを感じている証拠です。恐れぐらいでは、イノベーティブな学校の進行を止めることはできないのです。

★自ら新しい道を開拓する学校にエールを贈ります。その道の後をTTPよろしくついていくのもエールを贈ります。だって、その道が歩きやすいように幅広くなり舗装されていくのですから。

★便乗商法なんてビジネス界では当たり前ですよね。

★そして、できれば、そのようなイノベーティブな学校がそれぞれ別々の道を切り拓いていって欲しいと思っています。そして、それぞれに付いていくTTP学校が増えて欲しいと思います。すると、線はやがて面になります。

★私は先駆けですから、三田国際の今の高3生が中1として入学するときのことを2014年に書きました。順調に育っているわけです。もはや新しい情報はそうないわけです。と思っていました。

★しかし、本日今後日本の知と経済を回復させるe-スポーツで三田国際のチームが優勝したのです。今回の参加者は、全国1779校、2158チーム、5555名でした。その頂点に立ったのが三田国際のチームなのです。またまた情報の先駆けの役割を果たす時が来たという感じです。

★しかも、ただ優勝した凄いという意味だけではないのです。

★今回のようなe-スポーツを盛り上げる流れの背景には、「eスポーツ活性化検討会」の動きがあるのです。座長は、あの中村伊知哉 iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長。検討会のメンバーは、プロのeスポーツ選手やチーム代表、イベント主催者、ゲーム業界代表らの当事者、IT企業やテレビ局、投資・調査といった産業界に加え、法律、医療、健康、自治体などから構成される横断的学際的なチームです。

★e-スポーツはオンラインスポーツです。パンデミックの最中でも大丈夫なのです。今後、オリンピック競技としても認められていくでしょう。

★中村伊知哉学長によると、日本のe-スポーツ市場規模はまだ50億円ぐらいだそうです。これを2025年には、700億円に成長させたいと。当然そこに参加する起業家やイノベーターには、今年立ち上げた専門職大学iUの卒業生がプレイヤーになるということは織り込み済みでしょう。

★e-スポーツは単独で行われるわけではありません。広告業界、飲食業界、教育産業、テクノロジー産業、インフラ産業、仮想通貨による金融業界など多様な方面を巻き込んでいきます。野球やサッカー、ラグビーといっしょです。

★そういえば、中村伊知哉学長は、Jリーグの仕掛け人でもありました。e-スポーツの波及効果は織り込み済みでしょう。相互連携の社会です。700億が1兆円に化ける錬金術は資本主義や市場経済の十八番です。

★しかも、SDGsにも有効です。オンラインですからね。格差を超えて、国境を超えて参加できるし、環境にやさしく行うこともできます。

★おそらく、しかし、中村伊知哉学長の本意は、知財というソフトパワーが、アニメのように日本に根づくと考えているでしょう。

★日本の経済の回復力は、ソフトパワーなしのハードパワーではなく、ソフトパワーアありのハードパワーにあるからです。

★それはなぜか、中村伊知哉学長が、20年以上前に、新進気鋭のリーダーとして政財界で活躍した当時、どこの国がハードパワーからソフトパワーにシフトする人材を育成できるのかという競争がスタートしていたのです。サッチャーからブレアークリトン時代にかけて、教育!教育!教育!でした。

★イギリスは一気呵成に専門学校が大学になり、大学教育が一大産業になりました。それに加え、世界大学ランキングビジネスを英米で共創してしまいました。世界標準を造ったもの勝ちというのは、大英帝国の言語戦略のときからこれまた十八番です。私たちは、まんまと英語のソフトパワーに支配されていますね。紅茶が世界標準になって抹茶がなれなかったのも、イギリスとのお茶戦争で日本が敗北したからでした。

★また今回も教育で日本は遅れましたね。それで、中高では21世紀型教育を生み出そうという動きが私立学校から生まれました。そして大学では中村伊知哉学長が指揮するiUが誕生しました。新しい野心ある大学です。

★遅れはしましたが、IT産業の得意技は、時間を縮減するということです。洗足学園や鴎友学園女子が、30年かけて今のポジショニングを得たのに対して、三田国際は3年でやってのけました。10倍速ですね。

★今回の三田国際のe-スポーツの祭典で日本一になったのは、その流れが大きくウネリだしたということを象徴しています。そういえば、双頭の獅子は、時空を支配する神でしたね。

★それから、IT産業の得意技は、年老いるのも速いということです。神話の世界を創るのですから、浦島太郎を生み出すのはわけもありません。

★GAFAだって、ここ20年で出来上がってきた産業です。あのマイクロソフトやIBMは持続可能を見出していますから、GAFAもそれに倣って何かを模索しています。

★しかし、なんといっても、相手はビル・ゲイツです。彼は、GAFAの行方に手を差し伸べながら、ダボス会議で、「ザ・グレート・リセット」を仕掛けようとしているのです。

★2021年、その時代の精神を読み取り道を開く学校はどこでしょう。N高校?三田国際?開成?それは神のぞ知るということでしょうか?いいえ、必ず新しいウネリがでてきますよ。

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2020年9月21日 (月)

PBLで世界は変わる(04)今なぜ30人学級か?

NHK(2020年9月20日 7時50分)は、<「30人学級」実現へ法改正求める方針 自民 教育再生実行本部>という記事を掲載しています。久しい前から議論されていたのですが、菅政権になって、安倍政権を継ぐということで、教育再生実行本部もホッとしたのでしょう。しかし、継ぐとはいっても、実務レベルでは菅政権の独自の動きがあります。脱経産省、デジタル庁新設というのは結構大きいですね。同本部は、すかさず菅政権の意向を忖度(?)したわけですね。

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★経産省は、PBLのみに集中し、そこで活用されるアプリを中心にIT産業を保護しようとしてきました。未来の教室に協力する学校も多いですが、菅政権は、そんな一握りの学校の話に乗らないでしょう。自助・共助・公助!国民のためですから。だいいち、この背景には大学入試改革をはじめOECD/ PISA、全国学力テストなどで、文科省が散々苦しんだ巨大教育産業との関係がありますから、断ち切らねばなりません。

★教育実行再生本部もそこらへんは怪しいのですが、いち早く菅政権の好きそうなデジタル化へ邁進する提案をしたわけです。がしかし、財務省との関係でどうなるかは?しかし、そんなことより、デジタル庁の長官の椅子を巡って、デジタルファーストへの移行をいちはやくというわけでしょう。

★30人学級がどうしてデジタルファーストと絡むの?というと、財務省がお金を出さないから、なかなか進展してこなかったわけですよね。ところが、今回のパンデミックで、未来の教室でモデル校をなんていっていた経産省の思惑は外れ、どんどん勝手に多くの私立学校、少なくとも100校はオンディマンド×プラットフォーム×テレビ会議システムというフルセットのオンライン授業を展開してしまった。フルセットをやると、PBLはやらざるを得なくなるわけです。

★もはや経産省の未来の教室は役割を終えてしまったわけですね。ともあれ、お金がないから、すべての授業を30人学級でできるわけはないのです。フィンランドはシンガポールはすでにしてるぞという方もいますが、両国は、国民の人口が550万人くらいです。日本は、少子高齢化といっても、中高生だけで600万人います。

★教育道徳哲学者や教育心理学者は、目の前の学校の葛藤の解決という点では大事な働きをするのですが、社会全体やその背景を無視して語るし、それに対するクリティカルシンキングを作動させようとしない方々がSNSで自分の正義を語るということになります。それでも、何が問題になっているかのサインでもあるので、無視はできません。

★ともあれ、金がないから、12人というソクラテスメソッドを使ったPBLと200人くらいまとめて授業ができるオンライン授業のハイブリッドでいこうと。12人学級とはいきなり言えないから、「30人以下」と言っているわけです。

★さて、そうなると、ダメージを受けるのは私立学校ですね。私立学校は、公立学校と違って、教師の給料は生徒からの学費で賄います。塾と同じ構造です。しかし、塾は生徒を増やすのに制限はないのです。

★ところが、私立学校は法人型NPOで、学則定員以上は生徒は獲得できません。時代の精神と攻防したり共創したりしながら新しい教育を開発実践するには、施設や機材も重要です。ざっくり言うと、教師の給料と施設にお金がいります。ところが、学費は今の3倍にしなければ、全部賄うことができないのです。米国の私立学校が、年間300万くらい学費がかかるのは、国や自治体からの助成金がないからです。

★しかし、日本はたとえば、東京は、戦後子供の人口が爆発していましたから、ジャパンアズナンバー1の道を歩む人材を育てるための学校の準備が間に合わなかったのです。それで、私立学校に頼んだのです。ですから、海外と比べて異常なほど東京は私立学校が集積しているのです。高校などは60%の生徒が私立学校に通っているのです。

★そして、それができたのは、戦後教育基本法で、私立学校の所轄を教育委員会ではなく知事にしたというのが大きいですね。文科省から相対的に自由なのはそういうリーガルな問題で私立学校ががんばったからのです。エッ!私立学校がどうやって?戦後教育基本法を成立させるときに、新渡戸稲造、内村鑑三の弟子や吉田茂と共に皇室外交を仕掛けた慶応や白洲次郎、カトリックのグループが、麻布の前校長氷上先生のお爺さんである東大総長南原繁を座長に踏ん張ったのですね。

★ですから、安倍政権はその教育基本法を改正したかったんです。2006年に変えたわけです。そのとき実務で動いたのは下村文科大臣です。彼が文科大臣の時に、日本私立中高連合会会長の吉田晋先生とぶつかりました。下村博文氏は、吉田先生に、俺の言うことを聞けないのなら目にもの見せてやるとまで抑圧したのは今でも有名なエピソードですね。

★ともあれ、吉田先生や東京私立中高協会会長の近藤先生は、南原繁時代がつないだ江原素六、福沢諭吉、新島襄の≪私学の系譜≫第一世代を継ぐ新渡戸稲造、内村鑑三、石川角次郎(聖学院)の意志を継ぐ私学人なのです。

★私立学校は、明治の時から政治・経済と本物教育との葛藤を強いられてきました。麻布やJGもつぶされそうになりました。慶応と中江兆民の学校は当時ライバル同士でしたが、両方危ない目にあい、中江兆民学校は廃校に追いやられました。富国強兵・殖産興業の正当化理論「優勝劣敗」を叫び、天賦人権説の福沢諭吉、中江兆民らを厳しく排除しようとしました。その<官学の系譜>の総帥が加藤弘之という東大初綜理です。東大時代、加藤弘之と論戦をはったのが聖学院の初代校長石川角次郎です。

★そこから連綿と≪官学の系譜≫と≪私学の系譜≫は官製教育と本物教育をめぐって闘ってきたのです。もちろん、闘うばかりではなく、日本の教育という点で協力もしてきました。

★私学人は、官製教育やそれをとりまく民間企業には警戒を怠らずしかし協力すべきところはしてきたのです。そして、助成金を巡り吉田先生と近藤先生はロビー活動をしてきたのです。今回の30人学級を巡っても財務省がうごくわけです。何も私学が働きかけなければ、助成金は少ないでしょう。しかし、そこは吉田先生と近藤先生が奮闘するわけです。

★なのに、お二人に対して私学の先生の中には、ときどき揶揄する方がいます。正々堂々と批判するのは大いに結構ですが、塾のシンクタンクと一緒になって揶揄するのですから悲しいですね。私学は理事会というか理事長が私財をなげうって施設などを創ります。何億という借金をかかえて校舎を建て替えるとき、その保証人の印鑑を押すのは理事長なんです。銀行も資金を貸す時、いろいろ査定をしますから、そこでも攻防戦があるわけですね。

★で、先生方の給料は学費で賄えるかというとできません。助成金の80%は先生方の給料に補填されます。1人ひとりの先生方の給料の半分は助成金です。デフレ政策をとってきた政治と経済があるので、学費を3倍にするわけにはいかないのです。

★また、自治体が準備ができないところを私学に頼んでおいて応援しないということも自治体側もできないわけです。これらをきとんとするには法創造が必要です。私学振興法とか自然にできたわけではありません。私学協会を中心に、私学が提案をしていくからできるわけです。とはいえ、最前線で交渉したのは吉田先生と近藤先生です。

★知事選や都議会選挙のときに、私学の力は無視も出来ないということもあります。世界は相互依存でできています。それでいて自由を保守しなければなりません。そういう背景を知った上で、中学入試市場、中学受験市場のステークホルダーは、市場を持続可能にすべく盛り上げることを考えなければならないでしょう。そんなの関係ないは、今回のパンデミックで通用しないことは肌身に染みるほど感じているはずです。

★そういう、政治経済と教育を巡る話が「30人学級」の議論の背景にはあるのです。

★いずれにしても、GIGA構想、デジタル庁、デジタルファーストという流れには、お金がかかります。一部の学校ではなく、公立私立問わず、全体にオンライン授業を使って、30人以下のクラスの授業と200人単位の授業のハイブリッドができるようにするカリキュラム作りをしていかねば、日本は乗り切れないでしょう。

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2020年9月20日 (日)

思考コードがつくる社会(21)オールドパワーではポテンシャルは開花できない。だからニューパワーが誕生。

★これまで、晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」の「思考コード」分析をしてきました。そこでデータ的に判明したことは、オールドパワーでは、生徒のポテンシャルを生徒と共に見出し、開花することができないということです。

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★オールドパワーとニューパワーの違いは、いろいろあるのですが、抑圧的コミュニケーションか共感的コミュニケーションかという違いがわかりやすいでしょう。自由の制限の仕方がパターナリズムか、危害原理かの違いと、制限の基準が強制か共創かということです。あるいは、倫理的判断とリーガルマインドによる判断の両方をするかどうかです。倫理的判断だけでは、強い弱いの違いはありますが、パターナリズムに陥りがちです。

★どうしてそうなるかというと、もちろん要因はいろいろあるのですが、社会が学歴社会を受け入れ、それを強化してきてからです。学歴社会は富裕層を正当化する社会構造です。基本的には脅威論をかざして、だからがんばるんだと競争主義を当たり前とするパターナリズムが受け入れられてきたからです。女性の社会進出が先進諸国で最低なのを解消しようとして、政策論的に進められたとしても、パターナリズムの解消がない限り、元の木阿弥です。

★学校社会のみならず、家庭や企業、大学、お役所、国会、医療関係などあらゆるところで、パターナリズムの解消を哲学なり活動なりをしていく必要があるのですが、教育哲学がすでにパターナリズムに陥っていてなかなか難しいチャレンジなのです。

★倫理や哲学では、この自家撞着から抜けることが難しいのです。どうしてもリーガルマインドで法的な基準を考えるところまでいかんければなりません。そのとき、数学的思考や科学的思考がスクランブルします。教科横断的といても、哲学や心理学段階では、自由を制限する実態を把握できません。

★リーガルマインドで、世の中の問題を解決しようとすると、エビデンスを数学的に科学的に見出すリサーチが必要になります。そして解決には絶対的方法があるのではなく、法の解釈と法の創造と国民的感情をもとに最終審の判断の論理的構成物によって解決されます。もちろん、裁判にしようというわけではないのです。

★リーガルマインドは、2022年に改正民法が施行されて、18歳成人になる高校生にとっては身につけなければならない大テーマです。法解釈と法創造と法感情と数学的思考と科学的思考がリーガルマインドには必要です。特にシノプティコンというAI社会になったとき、ここの法整備がまだできていません。デジタル庁がそこを考えているかどうか?

★ともあれ、SNS上のフェイク問題一つにしても、表現の自由問題ですぐには解決できないのです。混迷しているのは、倫理観や道徳感情で騒然となっているからです。

★だからといって、法律問題にしても実は解けないということがわかります。哲学が無力であり、道徳感情は多様なパターナリズムの応酬になってしまうのです。哲学や道徳は、思考事件では役に立ちますが、社会実装段階では無力です。それはすでにJ,J,ルソーが指摘していました。社会契約しか解決という暫定的方法はないのです。

★最近のドコモのクレジット問題も道徳問題ではなく、セキュリティという法律問題です。

★今後、ブロックチェーンによるAI社会のシノプチコンになっていきます。すでになっているのですが、ここを誰がどう考えるか?総務省の問題でしょうか?デジタル庁の問題でしょうか?

★まずは、グローバル市民一人一人が学ばなければなりません。そして法解釈、法創造、法感情はロジカルで、クリティカルで、クリエイティブな思考が必要ですね。

★それなのに、リーガルマインドは高校生には無理だとか、創造性は大学入試には関係ないとかいうことを平然と言うオールドパワーは、生徒1人ひとりのポテンシャルを共に見出し開花する環境を創ることができないのです。

★それもそのはずです。東大の一般入試は、思考コードでA1A2A3B1B2思考で合格できます。オールドパワーはこの思考ができることで止まります。それ以上は東大の入試問題に関係ないのです。では、他の大学はほとんどが、東大の真似で、偏差値に合わせて易しくしていくだけです。

★ところが、このオールドパワーから抜け出ようとするニューパワーの動きがSFCに代表されるAO入試(総合型選抜)の動きとなっているのです。同じことが中学入試の新タイプ入試に言えるのです。

★麻布や開成、武蔵は、その新タイプ入試の発想を教科テストの中に埋め込んでいます。これで思考力入試と同じだとみなす学校も最近出てきました。思考コードでB3やC1を少し出すわけですから、それに興味を持って合格する生徒もいるし、合理的にそのような問題を切り捨てて勉強する生徒もいます。

★したがって、ポテンシャルを積極的に開発しようというより、そういう生徒が入ってきて、6年間の中で、いろいろな経験を糧にしてポテンシャルを開花するのが自由だと考えているのです。ですから、ポテンシャルが開花する生徒もいるしそうでない生徒もいるのです。全員がポテンシャルを開花するかどうかは、学校のミッションではないと。こういう学校は生徒によってニューパワーだったりオールドパワーだったりするので、グレーパワーとしておきましょう。

★ニューパワーの学校は、すべての生徒がポテンシャルを開花する環境やプログラムをつくっています。そしてある時点で、授業自体生徒といっしょにつくっていきます。パターナリズムが無化されて共感的コミュニケーションで満ちている学校でしょう。

★もちろん、新タイプ入試を行う学校が完全にパターナリズムから解放されているかというと、それはないのです。すべてを法律で判断できないので、必ずパターナリズムの判断に迫られます。ニューパワーの学校は、そのとき議論をします。対話をします。江原素六時代の麻布は、そうだったのです。今はどうか、本当のところはわかりませんが、期待は大きいのです。

★しかし、聖学院やカリタスや工学院などのように、その期待を学びの環境やプログラムに具現化しているニューパワーの学校こそ、クリエイティブクラスの人材が多数輩出されることが実証されるでしょう。このニューパワーへのシフトが、教育におけるポスト社会のザ・グレート・リセットなのです。

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思考コードがつくる社会(20)クリエイティブクラスが生まれる神奈川女子校が引き起こす価値の転換 カリタス・北鎌倉女子・相模女子・聖セシリア

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」が示す極めて重要なコト。価値の転換を果たしている女子校の発見です!オールドパワーの権化のようなある2つのシンクタンクは、新タイプ入試を謎の入試といい、鼻で笑い、一蹴し、ついでに、新タイプ入試の応援をしている私を私の仲間を介して石を投げてきました。もちろん、その同調者はもはや仲間だともなんとも思っていないからよいのです。

★私は真のニューパワーを探しているし、自分自身そういう生き方をしようとしています。本当は互いを尊重したいところです。価値選択は私事の自己決定ですから。しかし、その私の自由を制限しようと、陰に陽に仕掛けてくるのですからたまったものではありません。私は断固、オールドパワーの軍門に下るつもりはありません。

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★こんなことを言っていると、私一人が孤軍奮闘しているかのようですが、もちろんそんなことはありません。大切な仲間もいます。しかし、1人2人とやられています。悔しくてしかたがないのですが、着々とオールドパワーからニューパワーにシフトしている私立学校も増えてきているのです。もちろん、私のことなど歯牙にもかけていませんから、私がエールを贈ること自体迷惑だと言っている学校もあるぐらいです。

★なぜかというと、私立学校は、まだ自前の新タイプ入試のマーケットを確立していません。塾主導の中学受験市場が大勢を占めています。だから、そこと対峙している私と組んでいると思われるのが嫌らしいのです(大笑)。

★でも大丈夫。そんなことを気にしないで、どんどん進めばよいのです。だって、時代の要請は、私とは関係なくウネッているからです。私はなぜか時代の要請と気が合ったというだけです。オリジナルは私ではなく時代の精神そのものにあります。

★まあしかし、思想の自由ですから、オールドパーワーという忍び寄るパターナリズムは勘弁してください。パターナリズムは最近手が込んできていて、リバタリアンパターナリズムという派があって、シノプティコンコントロールをしてくるのです。いやはや。。。

★そういうわけですから、カリタス女子、北鎌倉女子、相模女子、聖セシリアの学校の皆様と私はなんら関係ありません。そのことをお断りしておきます。ご迷惑をおかけしたくありませんから。

★あくまで、晶文社の冊子のデータに基づいて語るだけです。お許しください。

★国算のデータと新タイプ入試のデータを別々にグラフにしました。一目瞭然、国算はA2B1思考がメインです。一方新タイプ入試では、B1B2C1C2思考がメインです。

★オールドパワーの受験業界の常識を覆していることがわかりますね。本間さん、そこ明快にしないでよというわけでしょうが、私が語っているのではありません。データが語っているのです。

★聖学院をはじめ、思考力入試などの新タイプ入試で入学してきた生徒が入学後成績でも学園生活においてもリーダーシップを発揮すると言われています。それはそうですよね。上記の図からわかりますよね。偏差値ランキングで国算の入試を通過してくる生徒とランキングに関係なくしかも特に受験塾で勉強しなかった生徒が受けられる新タイプ入試で入ってきた生徒では、学びに対する考え方が違うのです。

★入学後、論理的創造的思考を持った級友が、知識積み上げ方の生徒の考え方にインパクトを与え、シナジー効果を生み出していくのです。これは実は帰国生がそうなるのと同じです。帰国生は英語ができるからリーダ―になるのではないのです。海外の学校で、新タイプ入試でもとめられる学び方を行ってきたからです。

★新タイプ入試市場は、まだ受験塾主導の中学受験市場の10%くらいの規模です。まだまだ偏差値ランキングに従った応募と新タイプの応募のハイブリッドで行くしかないのです。こういう戦術や戦略は、静かにやっていきたいというのが本音でしょが、データが公開されてしまったのですから、大いにアピールするしかないでしょう。

★新タイプ入試や帰国生入試で入学してくる生徒のポテンシャルは、麻布やJGに入学する生徒と同じようなエネルギーを持っています。そんなことを認めたら、オールドパワーのコントロールする偏差値ランキングが崩れかねません。

★ニューパワーの学校は新タイプ入試を行いC軸思考を前面に出してきます。菅政権が本当にやりきれるかどうかはわかりませんが、経産省からデジタル庁にシフトしました。経済産業全般を考え、未来の教室などICT産業も支援すると2年前からやっていますが、今回のパンデミックで、それはアリバイ作りだったということが露呈したわけです。そんなあ!がんばってきたよ!と協力学校は言うでしょう。

★そうだと思います。でも、ルサンチマンの塊をエネルギーにしている菅政権は、それでは満足しないのです。オールドパワーを守る団体を追い詰めるでしょう。もちろん、よいかわるいかそんなのはわかりません。菅政権がルサンチマンにこだわっているうちは、自身もニューパワーの仮面をかぶったオールドパワーかもしれません。

★しかし、それは時代の変わり目の過渡期はアルアルです。それでも、厳然と居座り続けるオールドパワーの牙城が崩れていくことは真正自由市場にとって重要なのです。

★限定的でしょうが、菅政権の脱経産省、IT産業一極主義は一時的には時代を大きく変えるでしょう。菅政権には、教育に関しては、グローバルティーチャーというブレインがいます。秋田県出身のその教師は、グローバルティーチャー最終エントリーに残った教師です。彼は階層構造大っ嫌いです。オールドパワーは断固崩すべしという活動もしています。

★恐竜の教育産業を打ち倒すべく企業も立ち上げています。財務省出身のIT産業もおそらくそこに合流するでしょう。ようやく、ニューパワーがオールドパワーと入れ替わる兆しが明らかになってきました。

★クリエイティブクラス!ザ・グレート・リセット!ニューパワー!の時代です。もうオールドパワーは引退しましょうよ!もちろん、悠々自適な生活ではなく、ニューパワーを支える仕事に回りましょう。

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思考コードがつくる社会(19)クリエイティブクラスが生まれる神奈川共学校 桐蔭と湘南学園

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」の「思考コード」データによると、神奈川共学校の中で、桐蔭と湘南学園は国算と新タイプ入試のデータが掲載されています。いつものように、グラフ化してみました。

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★従来の中学受験は、国語と算数など教科入試でした。2013年以降、適性検査型や思考力入試など新タイプ入試が増えてきました。しかし、塾自体は依然として教科中心の講座が続いていますから、このグラフにある新タイプ入試の問いの対策はほとんどされていません。

★していないのに、謎の入試として葬り去ろうとする圧力をかけるシンクタンクもあるくらいです。しかしながら、落合陽一さんがクリエイブクラスの誕生や来春に向けてダボス会議の座長シュワブ博士がグレートリセットを提唱しはじめました。

★テクノクラートやファーストクラスが創り上げてきたNHKのいう欲望の資本主義の限界を指摘し、社会を変えようとしているわけです。そして、そのためには、論理×創造ベースの思考です。

★今までの進学指導や受験指導は、欲望の資本主義の中で勝ち組になる競争教育です。その覇者がテクノクラートやファーストクラスです。このグループの再生産社会の過程に競争教育があったのです。

★こういうことをいうと教育哲学者や教育心理学者にしかられそうですね。その競争教育の綻びを懸命に修繕してきたのですから。

★しかし、その呪縛から今や解放されそうなのです。そこは桐蔭や湘南学園のような受験システムの中に新タイプ入試を埋め込むことによって、それが起爆剤となって、クリエイテブクラスが生まれる場を広げていくことになるのです。

★クリエイティブクラスは協働関係をつくって仕事をしていきます。ですから競争より共創なのです。

★もちろん、現在欧米に増えているクリエイティブクラスは、年収2000万以上稼げるソフトパワーの持ち主です。ファーストクラスからクリエイティブクラスへ。一握りの富裕層や準富裕層の資金をクリエイティブクラスに配分するということになります。

★もちろん、これは過渡期の話で、2050年くらいには、富裕層は追い詰められるでしょう。すべての人がクリエイティブクラスになるにはいかにしたら可能か?この議論とベーシックインカムの話が統合されていきます。

★それがポストコロナ時代の流れです。それに気づいているのがC軸思考を積極的に入試で活用している桐蔭や湘南学園のような新タイプ入試を開発している学校です。

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思考コードがつくる社会(18)神奈川共学校の良心 慶応湘南藤沢と公文国際と関東六浦

★同じように晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」の「思考コード」データを活用して、神奈川エリアの共学校の分析をしました。2科目のデータ掲載が多かったので、2科目に絞って各領域の平均スコアを出して比較しました。湘南学園と桐蔭学園は新タイプ入試のデータも出ていますので、次回紹介します。

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★さて、グラフを見ていただければすぐおわかりになると思いますが、基本はどの学校もA2B1思考が中心です。合格戦略としてはこの思考領域をトレーニングしていればOKです。

★関東学院と青山学院横浜英和は完全にそうですね。そして、これが神奈川エリアの共学校で多く採用されている1つのパターンです。

★ところが慶応湘南藤沢と公文国際、関東学院六浦は、B2C1思考領域も出題しています。B2思考については慶応湘南藤沢の場合は合否の決め手になりますが、他の3校はなりません。ですから合格戦略としては関東六浦や公文国際はスルーしてよいわけです。

★ただ、公文国際は、受験に臨む生徒や在校生は、この創造的思考を活用した学びができることは同校の誇りであると語ってくれます。自分の学校のことをどう思うかと聞くと、良質の学校について具体的に誉めますね。そして、在校生としての誇りを表現します。

★海外のエンスタブリッシュスクールでは、訪問すると、日本人の在校生が学校案内や授業についてプレゼンしてくれることが多いですが、自分の学校への愛や誇りを語ってくれます。

★さすが公文国際、同じ質感を感じます。

★慶応湘南藤沢も同じでしょう。卒業生は、慶応の中でもSFCは特別だと自信を持っているし、三田の学生は三田の学生で、SFCは私たちとは違うと語ります。どちらでもかまいませんが、やはり誇りを抱ける学校というのは、すてきではないですか。

★関東六浦もそうですが、学内の先生方の燃え方が最近違いますね。そう感じます。内部のメンタルな良質な部分について幾人かの信頼できる見識者がよく話してくれます。何より校長が学びの真理に燃えています。何度かセミナーでごいしょしましたが、そう思います。

★そして、その通りのテストになっていますね。A2A3の問題を問いの流れ上、出さざるを得ないものは出題していますが、そこは合否の決め手ではないでしょう。出題割合も低いですね。その代わりB1B2思考領域を大量に出しています。論理的に考えていけば問題は解けるのだと。そしてB3やC1というプロセスのクリエイrヒティとコンテンツのクリエイティビティを活用する問いが投げかけられています。

★これは、新タイプ入試に近い考え方で国算の入試問題もデザインされています。

★関東学院六浦に向けて中学受験勉強をしていく生徒は、結果的に論理駅・創造的思考を楽しみながら学べます。これは慶応湘南藤沢と公文国際も同じです。前回述べたフェリスや横浜雙葉同様、中学受験勉強を通して学びの本質を追究できる仕掛けを提供しているわけです。

★慶応湘南藤沢、公文国際、関東学院六浦は、神奈川私立共学中学において、学びの良心を有しているといえましょう。

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思考コードがつくる社会(17)神奈川女子の良心 フェリスと横浜雙葉

★晶文社の「2021首都圏受験案内」に掲載されている「思考コード」データをいつものように活用して、神奈川女子中学5校を比較するグラフを作ってみました。湘南白百合については、社会と理科のデータが掲載されていなかったので。国語と算数の2科の平均です。

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★どの学校もA1A2思考とB1B2思考までは学ぶ必要があります。合格戦略としては、湘南白百合は、B2の問題はスルーしてもよいかもしれません。つまり、湘南白百合は、合格戦略としてはA1A2B1思考でよいわけです。

★ですから、横浜共立と―湘南白百合の併願の場合は、このA1A2B1思考だけできっちり押し進めていけば効率はよいかもしれません。横浜共立は湘南白百合よりB2思考を出題しますが、20%くらいの出題ですから、合否の決め手にはならないからです。B1まできっちり学んでいれば、B2思考の問題も合格するのに必要な分は解けるでしょうし。

★横浜雙葉―湘南白百合、フェリス―湘南白百合の受験生の合格戦略は、A1A2B1B2までしっかりやらなければなりません。が、結局、3校の併願校湘南白百合は、色を出さないという戦略です。

★そんな中で、洗足学園は、複数回数入試でゲリラ戦をしかけてきました。上記4校は、伝統校です。洗足学園は革新校です。破格のグローバル教育で魅力を発信してきました。帰国生の心をがっちりつかみ、国際学級で実績も出していきます。国際学級の影響を学内の一般クラスにもシェアしていきます。今では多くの学校で当たり前の現地校の3か月留学、9カ月留学も、中学段階で行うことを最初にやってのけたのは洗足学園です。

★ハーバードや東大も出始めました。伝統ブランドだけでは満足しない進取の気性に富んだ保護者も増えました。そこに、A1A2A3B1B2の入試問題を行うようになりました。フェリスや横浜雙葉に向けて受験勉強した生徒の学力にマッチングするように問題作成をしたのでしょう。

★このレベルの生徒は、易しい問題ばかりや暗記問題ばかりだと、自分の学びのプライドから判断して、その学校を選択しないという傾向があります。すでにに日常化されたモノを覆す発想を持っている受験生です。こういう受験生の学びは、実はフェリスや横浜雙葉のC1思考に突き動かされます。合否に関係なく、中学受験を通して本物の学びをしたいという判断力や意志を持っています。すでに小4のときからそういう志向性を持っています。

★彼女たちが引き込まれる世界はC軸思考だし、自分にとって本物の学びは何かの判断力がちゃんと働くのです。

★そして、ついでに、本物の学びと合格戦略はまた別だという見識も持っています。豊かさと戦略の両方を使い分ける知性と合理性を持ちえています。ある意味、合格戦略のためだけの学びに偏らないようにしているのは、フェリスや横浜雙葉のC軸問題があるからですね。男子校だと栄光がそうです。

★フェリスや横浜雙葉の問題は、中学受験生を通して本物の学びの大切さに気付かせる良心だともいえましょう。

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2020年9月19日 (土)

思考コードがつくる社会(16)首都圏模試の教務陣のテスト創出力は未来のソフトパワー~麻布、開成、武蔵、栄光の入試問題と聖学院の思考力入試問題が凄いわけ

★このパンデミックで、超絶忙しい首都圏模試センターの教務陣「哲学」派(今回は「科学」派は別の仕事でした)とZoom対話。ポストコロナ時代の「思考コード」の使い方について話し合いました。同センターの教務陣は、テスト作成がメインの仕事ですが、この重要性は一般人や学校の先生でも、教えること中心の塾の先生方も理解しづらい仕事です。しかし、この世界は、みなテストをベースに回っています。評価をベースに回っていると置き換えてもよいでしょう。リフレクションをベースにと置き換えたほうが根源的かもしれません。

★つまり、日常化しているのに、それを生み出す人材が実に少ないというこの事態は何を意味するのでしょう。

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★エっ!?テストなんて誰でも作っているよと皆いうでしょう。首都圏模試などのテストセンターが作る試験とふだんの授業の中で作成しているテストの違いがわからないのは当然ですよね。

★もし、普段授業で行っているテストを1万人の生徒に行ったとしたらどうなるか想像してみてください。ほとんどが成り立たないでしょう。当たり前です。授業では、教師の想いを反映しているのがテストですから、1人の教師の想いが1万人に反映すること自体無意味です。信頼性、正当性、妥当性の保障もありません。

★テストセンターのつくるテストは、万人に適用できる普遍性や正当性、信頼性、妥当性をリフレクションするデータシステムがあります。このシステムがあるテストとないテストでは、そこから見えてくるものが違います。

★授業のテストでは、未来が見えるモノは少ないですね。入試問題においては、見えるモノと合否の選別しか見えないモノがあります。麻布や開成、武蔵、栄光の入試問題、聖学院の思考力入試の凄みは、選抜テストであると同時に未来のキャリアデザインが見える未来テストだということです。

★選抜×未来テストが入試問題に存在するのだから、首都圏模試センターの模擬試験もそれは可能なのかだとか、その前に、選抜×未来テストを思考コードでどう語っていけるのかなど、対話は盛り上がりました。

★大学入学共通テストが、選抜テストでしかないところに、本当の問題がありますね。日本の未来は、万人テストを作成する組織が、テスト作成方針において、選抜テストから未来テストにシフトするということが求められるでしょう。ポストコロナ時代のテスト作成の価値や方法も「ザ・グレート・リセット」ということでしょう。

★そうなると、首都圏模試の教務陣のようなテスト創出力は、未来の社会を創り出すソフトパワーといういことができるのです。

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思考コードがつくる社会(15)総合力の栄光、英語の聖光、安定した進学校浅野

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」の思考コードのデータを見ていると、様々なことがわかります。合格戦略、併願戦略、6年後、10年後の社会的活躍など受験勉強、進路選択、キャリアデザインまで予想することができます。神奈川男子校といえば、栄光、聖光、浅野とすぐに思い浮かぶので、開成を基準に比較してみました。いつものように、科目別ではなく、4教科の合算の平均です。

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★すると、栄光と開成はほぼ同傾向なのですが、栄光が難問というより、思考の基礎を徹底して出題し、開成はどうしても難問を出題しなければならない状況だということがわかります。

★もともと、栄光は今と違って、通学時間を考慮して、一定の範囲から受験をするように制限していた経緯もあり、難問で選抜をする競争原理を働かせる必要がなかったのです。それにどちらかというと、風土が学問の基礎を大切にするカトリックのイエズス会が経営バックですから、思考の基礎の基礎であるB2思考を重視しえいるのでしょう。

★開成は、全国から受験しにきます。それゆえ、差がつく問題を出題せざるを得ないでしょう。しかも、科目別にみると、国語も算数も重たい問題を出題します。

★これに比べ、聖光学院は、算数でややB3問題を出題しますが、これは合格の決め手になるほど出題しませんから、他教科がそれほど難しくないという傾向にありますから、同校に合格する生徒にとっての受験勉強戦略はそれほど厄介ではありません。そうはいっても、B3を出題しますから、受験勉強では、そこを捨てるわけにはいきません。

★ところが、浅野は、B3以上の問題はほぼ出題しないのです。その代わり知識・理解思考のA3レベルの問題を聖光学院同様10%以上出題します。東大の一般入試は、A3のような知識の関係性をショートカットする力は確かに必要だし、B1B2思考力があれば十分です。つまり、A3B1B2思考がポイントです。浅野はそこにピンポイントであてているわけです。

★聖光学院は、併願する生徒がB3の力を持っているので、出題する必要がありますが、実はB3はC1を含む力なので、海外大学を狙うには、ここも必要です。

★浅野は、いわゆる東大を頂点とした学歴階層構造の中で、、東大から早慶上智に相当する大学くらいまでに進学できることが最終目標ですから、その意味で、安定した進学校校です。進学を第一に希望する場合は、とてもすばらしい教育システムを持っています。

★聖光学院の場合、入試問題で求める力以上の生徒が入学するということもあり、入試問題から見ると、栄光や開成より、浅野よりですが、東大の数がたくさんでます。これはなぜでしょう。明らかに英語の力です。

★聖光学院の帰国生入試の応募は毎年たくさん集まっています。洗足の帰国生入試と同じくらい応募があります。しかも帰国生を大量に合格させるわけではないので、相当難関の帰国生入試になっていると推察できます。そうまでして受験したいということは、帰国生が期待する学校だということです。聖光学院の英語教育に魅力を感じるということでしょう。

★東大の一般入試で、英語が出来る生徒は、特に帰国生は満点に近い得点をとります。他の教科が難しいので、差がつきにくいのです。そのときに英語でガツンととれば、合格します。

★栄光学園で、学問の基礎にこだわり、深みのある学びをして東大に行くのと、聖光学院で軽やかにグローバル感覚を身につけて東大に行くのとでは、将来のキャリアデザインも自ずと違ってきます。学者になる道は狭き門です。官僚やビジネスの世界で成功するのも狭き門ですが、教授の道よりは広いですね。それに、収入も違います。同じカトリックの学校でも、伝統的か革新的かの違いはあるわけです。

★もちろん、どちらがよいかわるいかの問題ではありません。私事の自己決定で、価値自由であることを何度も確認させていただきます。

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2020年9月18日 (金)

思考コードがつくる社会(14)ポストコロナの社会を変えるリーダーが生まれる場が絞れた②

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」の思考コードのデータを活用して東京エリアの私立中学の入試問題の思考特性をみてきたわけですが、それをまとめると以下のようなデータが作れます。関西圏や高校入試、大学入試も分析してみたいのですが、何せ思考コードのデータ作成源は、首都圏中学受験専門の首都圏模試センターですから、それ以外のデータがありません。受験案内に掲載されているものも晶文社以外にはないのです。

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★それゆえ、今回のような大切な気づきは、一般にはまだまだという感じなのです。しかし、ダボス会議の革新的な動きを感じるセンサーを有しているのは、この首都圏の私立中学入試市場でもあるのです。よいかわるいかは、別として、ダボス会議の情報にフロンティアンテナを張り巡らして仕事をしている家庭層がここに集中しているのです。

★首都圏の私立中学に進む中1は、全国の同年代の中1に対してどのくらいの割合だと思いますか?ざっくり3%です。この3%の意味は何でしょう。それは、日本の富裕層は、全世帯の3%だということなのです。

★もちろん、実際の富裕層は高齢者に多いですから、中学入試市場のプレイヤーではありません。しかし、70%以上を高齢者層以外の若者層が占める準富裕層(アッパーマスも含めた広い意味での:純金融資産保有額3000万以上5000万未満)は、全世帯のおよそ23%です。

★首都圏ではなく、全国の私立中学と公立中高一貫校を合わせると、同世代人口の10%です。日本全体の地方は、公立王国が多いです。東京の日比谷みたいな高校に進学する層も含むと、だいたい20%になるでしょう。

★そして、ここから東大を頂点とする学歴階層構造のアッパーの部分に進むわけです。「富裕層経済―学歴階層構造―私立中学・公立中高一貫校などの選抜が中学段階である学校」という一連のつながりは、今更いうまでもなく、強いことは周知の事実です。

★この層をファーストクラスと私は呼びます。私立学校研究家というのは、この層の光と影を見据えて、社会が変わるヒントを掘り起こそうとするわけです。ですから、私立学校の光以外の部分には、辛口になるので、私立学校からも嫌われるのです。もちろん、意気投合する私立学校もあるわけです。そしてその意気投合するという価値を共有する学校が、世界を変えて未来を創っていくクリエイティブクラスの人材を輩出していくという信念を私は持っています。

★それゆえ、私立学校が、明治の時に、官僚近代社会とは違うもう一つの近代社会の理念やコンセプトを抱き、歩んだように、今回のパンデミックによる「ザ・グレート・リセット」も、ファーストクラスからクリエイティブクラスへというウネリが存在するのだといいたいわけです。

★来春のダボス会議の「ザ・グレート・リセット」はあくまでファーストクラスの制度設計の変更です。日本の私立学校の「ザ・グレート・リセット」は、クリエイティブ・クラスによる制度設計の創造です。

★このクリエイティブ・クラスを輩出する学校は、東京エリアの私立中学においては25%の学校だということが、今回の「思考コード」の分析でわかったのです。

★とはいえ、クリエイティブ・クラスは、B3思考とC軸思考の両方を含みます。男子校は圧倒的にB3思考です。これは、「ザ・グレート・リセット」の情報やウネリを察知するも、あくまでファーストクラスの枠内になりがちです。それでも、20世紀型経済成長モデルをリセットするのですから期待はかかります。

★しかし、C軸思考でクリエイティブ・クラスを輩出しようというのは、上記の表のような学校です。いずれもC軸思考のスコアです。すべてが、工学院、聖ドミニコ、聖学院、文杉のように、C1英語×PBL×ICT×リベラルアーツを先鋭的に推進する学校ではありませんが、B2英語×アクティブラーニング×ICTはやはり力を入れています。

★上記の表の学校は、今回の自粛の際のオンライン授業でもいち早く実行していった学校の面々です。こういう学校が世界を変え、未来を創るクリエイティブクラスを生み出す拠点となるでしょう。

★そして、これらの学校を御三家と比べ揶揄してきた方々もいます。その方々は、ご自身をファーストクラス至上主義者だということを示しているのだということでもあります。その何が悪いと言われるでしょう。その通り、私事の自己決定ですから、価値自由です。

★しかし、ダボス会議で、そのファーストクラスでさえも、「ザ・グレート・リセット」されるのです。クリエイティブクラスという彼らにとって両刃の剣でもあるソフトパワーの手を借りようとしているのです。

★25%といっても、同世代人口全体から見れば、0.5%です。しかし、このファーストクラスの階層構造経済社会を造った層もまた3%です。90%の国民の意識を変えることはそう簡単ではありませんが、3%の意識や価値意識を変容させることはかなり可能でしょう。タイミングがそうなってきています。

★今回の菅政権も、医療と教育に対してはICTを導入する規制緩和をすると言っています。総裁選で、「グレート・リセット」をぶち上げたのは石破さんんでしたが、菅政権もその流れをつかんでいることは確かでしょう。ファーストクラスグレートリセットになるかクリエイティブクラスが活躍する「ザ・グレート・リセット」になるか、今のところ、神のみぞ知るではありますが。

★いや、このクリエイティブクラスについて「働き方5.0」で触れている落合陽一さんは知っているかもしれませんね。

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思考コードがつくる社会(13)ポストコロナの社会を変えるリーダーが生まれる場が絞れた①

★2021年のダボス会議のテーマは「ザ・グレート・リセット」。座長であるクラウス・シュワブ博士は、フランス出身の個人投資家ティエリ・マルレ氏と、書籍という形でブローシャ―を先駆けて出版しています。それによると、こうあります。

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「今回のパンデミックによって人は皆、哲学的議論に引きずりこまれた。市民も政策決定者も、好むと好まざるにかかわらず、ダメージをできるだけ抑えつつ公共の利益を最大 化する方法をめぐって深く考えさせられた。何よりも、これを機に公益の本当の意味をじっくり見つめるようになった。公益とは、社会全体のためになることを指すが、社会 にとって何がベストかをどのように決めたらいいのだろうか?何がなんでも失業の増加を食い止めるために、GDPの成長と経済活動を維持することが公益なのか?社会的弱者に手厚くし、お互いのために犠牲を引き受けることなのか? それとも公益はその二つの中間にあるというなら、どのようなトレードオフが存在するのか?リバタリアン( 個人の自由を最優先する自由至上主義者)や功利主義者(最大多数の最大幸福を求める人々)のような哲学者は、公益は追求する価値のある大義だという意見に異論をはさむ だろうが、道徳論的な対立は解決できるのだろうか? パンデミックによってこうした人々の議論が沸騰し、対立する陣営の間で熱のこもった議論が交わされた。「冷徹」で 合理的だとされる意思決定は、その多くが経済、政治、社会のみを考慮したものだ。しかし実際には、人としての在り方を教えてくれる思想をひたむきに求める道徳哲学の深い影響を受けている。もっと言え ば、パンデミックへの最善の対応を目指した判断はすべて、倫理的選択だと捉え直すこともできるだろう。 」

(クラウス・シュワブ; ティエリ・マルレ. グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界 (Kindle の位置No.3085-3091). 日経ナショナル ジオグラフィック社. Kindle 版.)

★リバタリアン的な経済がつくってきた格差社会を覆すような哲学議論をみんなが考えるようになったのが、今回のパンデミックの衝撃なのだと。グレート・リセットが起こるのだと。そこには「哲学」が生まれたのだと。

★大事なことは、格差社会を、今までのように公正資本主義などの経済的な制度によって解消しようというのではないということです。そのような制度改革はもちろん大切です。しかし、パンデミックは、もっと大事なことに気づかせた。そのような制度改革を突き動かす背景に、「人としての在り方を教えてくれる思想をひたむきに求める道徳哲学の深い影響」があることをというわけです。

★だからといって、「道徳」が大事だと飛びつかないでください。あくまで、法と経済の制度設計と良心の総合的な判断力を、シュワブ博士は念頭に置いています。日本の教育哲学者は、この法と経済の制度設計の部分を射程に入れていないので、パターナリズムをクリティカルシンキング出来ずに、べき論を排したべき論を振りかざします。自由の制限を柔らかいパターナリズムによってあたかも相互自由の承認みたいなものがすばらしいというようなすり替えを行ってしまいます。

★これが教育を改革しないサイレントキラーを増やします。とても世界のグレートリセットの動きについていけないでしょう。しかし、そこを嘆いても仕方がないのです。日本の教育の90%は、そういう相互承認の自由みたいなべき論によってがんじがらめです。そこに、そうでないと言っても響きません。

★私の友人の1人は、その90%に向かってそうではないとクリティカルシンキングを繰り返し、打ちひしがられ、心を弱くし、心身共に疲れています。この90%を何とかするには、別の方法を考えなくてはなりません。

★実は、これがグレート・リセットの本意です。

★90%は、救われたいと思っているのですが、変わるのも嫌だと思ってもいるのです。このアンビバレンツな人間像は、実は近大が誕生するや生まれ、ますます広がる格差を生み出す近代社会に寄り添ってきた資本主義によって持続可能にされてきました。産業革命以前は、戦に負ければ奴隷になる、生きるべきか奴隷になるべきか、それとも死かそれが問題だだったのですから、それに比べれば大きな進歩です。

★しかし、2011年から広がる格差は、純金融資産保有額5000万以上の富裕層の数も増やしてきました。格差が広がるということは、富裕層も増えるということです。純金融資産保有額とは、ざっくり言えば、すぐに現金として使える経済力を示唆しています。日本全体の9%が富裕層だそうです。3000万以上5000万未満の準富裕層をいれると23%になります。

★ダボス会議に参加する世界の政財界人、起業家、慈善事業家は、この層までです。

★自分たちがこのような格差社会を造っておいて、今度は道徳哲学を持ち出すなんてと驚きませんか?77%%は驚かないのです。そんなもんだなんです。しかし、このままいくと、世界はしぼんでしまいます。目の前でその光景が広がっているわけです。これが今回のパンデミックの凄いところですね。

★90%の中の10%ぐらいの部分の人びとは、もしかしたら変わらなければならないのかもと思い始めたわけです。

★だから、私の友人は、その富裕層の9%を含む準富裕層以上の23%にグレート・リセットの火をつける仕事をしたほうがよいのです。これによって、救われたいけど動けないと思っている人々が、動ける制度設計に変えることができます。

★富裕層・準富裕層は、経済はある程度循環しなくてはならないことは理解しています。今回のパンデミックで、出入りの循環がストップしました。この状況によって、自分たちが造ってきた制度設計が間違っていたことに気づくわけです。あまりにリバタリアンで損得勘定旺盛な功利主義で動いてきたために、というよりも、その価値観がうまくいくような制度設計にしてきたために、パンデミックのように、あらゆる階層や壁を乗り越えて襲い掛かるリスクを回避することはできなかったのだと。

★そこでグレートリセットだというのです。シュワブ博士は、「幸せの王子」や「サロメ」で有名なオスカー・ワイルドの次の言葉を引用します。「あらゆるものの値段を知っているくせに、いかなるものの価値も知らない人間のことである」(クラウス・シュワブ; ティエリ・マルレ. グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界 (Kindle の位置No.3174-3176). 日経ナショナル ジオグラフィック社. Kindle 版.)。

★リバタリアンや損得勘定旺盛な功利主義者である準富裕層の人びとのことを示唆しています。もちろん、シュワブ博士自身、その仲間です。しかし、そこから抜けなければどうしようもないことを知り、21世紀にはいるや、制度設計を変更しようと警鐘をならしてきたのです。しかし、リーマンショックにも耐えて、強欲資本主義は洋々たるものでした。ところが、今回のパンデミックで、パタッと循環が止まったのです。

★シュワブ博士はこのタイミングを見のがさなったわけです。

★制度が壊れたのだから、新しくしようと。公益のためにだが、準富裕層の持続可能のために。情けは人のためならず戦略で行こうと。タイミングとしては、産業革命以降、これまでの経済社会を支えてきた機械産業からAi産業への飛躍の時代でもあるから、すでに痛みを強いられてしまったのだから、思い切りAi社会に切り替えようと。するとベーシックインカムのような制度設計に変わり、今回のようなパンデミックが発生しても、経済循環は止まらないと。

★そして、それには、産業革命時代に技術革新を生んだ発明家、つまりクリエイティブな人材が活躍したように、AI時代にふさわしいクリエイティブ人材の集団、クリエイティブクラスが必要なのだと。ここは、テクノクラートのような論理明晰な人材だけではなく、創造的思考に満ち溢れた人材が必要だと。

★では、そういう人材が育つ場所はどこなのか?これが思考コードでいうB3思考とC軸思考を学べる教育を実施しているところなのだということになるわけです。そして、それと共に、救われたいけれど、変わりたくないというアンビバレンツな近代的自我もグレート・リセットされることになります。

★変わりたいけれど、産業革命以来の延長上の変容ぐらいでは満足がいかない。現状を救うけれど、準富裕層の利益を守るだけでは嫌だと。クリエイティブ・クラスは、実はダボス会議にとって両刃の剣ということになります。

★思考コードでB3を重視する教育は、グレート・リセットと称して、準富裕層以上のファーストクラスの人生を幸せにするでしょう。しかし、C軸思考を重視する教育は、その準富裕層とマスの間にある境界線も突破してしまいます。それは道徳哲学でではなく、法と経済の制度設計と倫理とテクノロジーというトータルな<哲学>によってです。ファーストクラスからクリエイティブクラスへ。ダボス会議とは違うもう一つのザ・グレート・リセットの誕生です。(つづく)

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2020年9月17日 (木)

思考コードがつくる社会(12)東京私立共学中学校の入試問題 革新的本物教育が勢揃い 辛めの本音を少し(汗)

★前回同様、東京私立共学中学校の入試問題の思考コード分析をしました。新タイプ入試(ここでは、このタイプの入試は、思考力が中心ですから、思考力入試と呼んでいます。思考コードを使って分析しているということもあるため)に果敢に挑戦している学校は共学の中にはたくさんあります。しかし、共学全体では国算B3思考とC軸思考を行っている学校は93校中、35%の29校でした。

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★時代を語り、未来を語り、トークのうまい校長で有名な学校は共学校に多いわけですが、ふたを開けてみれば、そうでもないということです。ランキングを並べてみると、工学院と東洋大京北がダントツです。両校とも堅実で真面目な話をする校長がリーダーシップを発揮している学校ですね。TTP(徹底的にパクる)路線とは違います。革新的で本物教育を行っています。両方とも哲学をしっかりやっている学校です。

1:工学院 100★
1:東洋大京北 100★
3:日本工業大学駒場 66.7★
4:ドルトン東京学園 53.5★
5:文化学園大学杉並 50★
6:八王子実践 47.5★
7:城西大城西 44★
8:実践 40★
9:目黒学院 40★
10:東京成徳 39★
11:開智日本橋 35★
12:多摩大聖 35★
13:八王子八王子 32.5★
14:宝仙理数インター 30★
15:安田学園 30★
16:かえつ有明 28.5★
17:桜美林 22.3★
18:聖徳学園 20★
19:駒込 11★
20:早稲田実業 9
21:広尾 7.5
22:渋谷教育学園渋谷 6.5
23:中央大附属 6.5
24:慶応中等部 5
25:共栄 3.5★
26:国学院久我山 2.5
27:都市大等々力 2.5
28:三田国際 2.5
29:成蹊 1

(スコアの隣の★印は、思考力入試のスコアです。ないものはB3のスコアです)

★生徒募集だけ増えて、きちんとクリエイティビティを授業で行っていない学校は革新的なことを大げさに言いますが、全部外部ネットワークの力でやっていて、学内のソフトパワーはありませんね。

★外部ネットワークに頼るのは構わないのですが、学内のソフトパーワーがない学校は、口先リーダーがいなくなったら持続可能になっていないわけですよ。

★ともあれTTPを行っている校長の話はうまく、驚くことに、自らTTPをやっているくせに、それはあたかもオリジナルで、みんな自分の真似をしていると高らかに言えてしまう学校は、確かに人気がありますよね。

★それも、別に取り締まる法律はないわけです。表現の自由ですよ。ですから、そんなリバタリアンや損得勘定功利主義の校長のトークに共感する人たちも、またリバタリアンだし功利主義です。市場において、そのような価値は自由ですから、全く問題ないのです。

★ただ、事実はそうだという認識はあってよいでしょう。その事実をどのように解釈し、選択するかは私事の自己決定だし、価値自由です。

★いずれにしても、思考力入試(新タイプ入試)のスコアが20以上の学校は、真剣に革新的な教育に取り組んでいる本物であることは間違いないでしょう。もちろん、それ以外の学校もがんばっています。スコアに現れていないだけです。ただ、ご自身の目で確かめに行って、校長のトークがすばらしく、この思考力入試のスコアが低い場合、なんでギャップがあるのか?とクリティカルシンキングを働かせるのは当然ですね。

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思考コードがつくる社会(11)東京私立男子中学校の入試問題 創造性も重視傾向

★前回に続き、同様の計算方法で、東京私立男子中学のクリエイティビティ度を算出。何らかの形でクリエイティビティの思考特性を測ろうとしている男子校の方が多いという結果になったのです。男子校30校のうち、57%の17校がクリエイティビティまで問う入試問題を出題していました。

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★これは意外な感じがするでしょう。しかし、B3思考をプロセスのクリエイティビティをみているとみなすことによる結果です。算数でB3を出題している男子校が多くなるので、当然と言えば当然です。ランキングで並べるとこうなります。やはりプロセスもコンテンツも両方のクリエイティビティを重視する聖学院が突き抜けています。(スコアの横の★印は、思考力入試のスコアであることを示します。)

1:聖学院 65★
2:開成 34
3:足立 30★
3:佼成学園 30★
5:武蔵 29
6:日本学園 22.3★
7:麻布 17
8:暁星 12.5
9:芝 12
10:早稲田 10
11:駒東 9
12:早稲田高等学院 7
13:海城 6.5
14:東京都市大 6
15:攻玉社 5
16:高輪 3
16:桐朋 3 

★足立と佼成学園が、進学実績面でも伸びてきています。プロセスだけではなく、コンテンツの面のクリエイティビティも重視する、つまりクリエイティビティの社会実装は、今後ますます注目される可能性大です。

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思考コードがつくる社会(10)東京私立女子中学校の入試問題の思考特性

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」の思考コードのデータで、東京の私立女子校が出題する入試の問いのうち、B3とC軸の問題の割合を抽出してみました。国算でB3問題を出題している割合と思考力入試でC軸を出題しいる割合に注目しました。B3は国語算数の問題の中での割合を計算。C軸は、思考力入試の中で、C1C2C3の合算の割合です。両方とも100点満点で換算してあります。すると、65校中31校が、クリエイティビティ度を問う問題を出題していることがわかりました。東京の私立女子中学校の48%は、何らかの形で入試の段階でクリエイティビ度を測る問いを投げかけているということなのです。

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★データが煩雑なので、単純にB3の割合とC軸の割合を混ぜて、ソートすると、次のようになりました。

1:聖ドミニコ 80
2:目黒星美 60
3:北豊島 58.5
4:淑徳SC 57.5
5:東京女子学園 57.5
6:大妻多摩 55
7:大妻中野 55
8:共立女子 50
9:女子聖学院 50
10:白梅清修 42.5
11:共立女子第二 40
12:佼成学園女子 40
13:神田女学園 39.5
14:十文字 39
15:東京純心 37.5
16:桜蔭 36
17:藤村女子 33.4
18:品川女子 32.5
19:桐朋女子 31
20:トキワ松 30.5
21:光塩女子 30
22:東京家政学院 30
23:中村 30
24:富士見丘 30
25:女子学院 12.5
26:豊島岡女子 11.5
27:昭和女子 10
28:鴎友学園女子 8
29:雙葉 4.5
30:学習院女子 3
31:江戸川女子 1 

★江戸川女子のように、割合は少ないですが、B3問題にまでチャレンジしている女子校は、当然カリキュラムポリシーでも創造的思考を大切にしているということが見え隠れするわけです。

★B3は、論理的思考の軸なのに、なぜクリエイティビティが測れるのかと思われる方もいるでしょう。B3を出題する学校が少ないので、そこは単に難問だと思われがちです。たしかに、難問なのですが、論理的に積み上げていくだけでは時間内に解けないのです。考えるプロセスを創意工夫する必要があります。これはまさにクリエイティビティなのです。

★C軸の問いは、実際に正解のない解を、生徒が自分なりに創る創造性が必要なものです。プロセスだけではなくコンテンツも必要です。要するに作品ですね。

★実は、今後世界が求めるクリエイティビティは、プロセスのクリエイティビティとコンテンツのクリエイティビティの両方を充実していなければなりません。クリエイティビティの社会実装ということです。常識や従来のやり方を変容させかつ新しい作品やアイデアを生みだす。C3は、そのような両面備えたクリエイティビティへの問いなのです。晶文社のデータは、この2つの因子が入り込むとわかりにくくなるので、当然、創造的思考は作品が創られるかどうかで判断されます。そのような曖昧性はデータにはなかなか反映されにくいのです。

★そこは、少し今後解釈をしていきますが、今回は、しばらくは、晶文社のデータをシンプルに活用していきます。

★ソートをみると、聖ドミニコ学園のクリエイティビティ度の割合が高いですね。1学年80名という小さな学校だし、共学の附属の小学校からの内部進学の生徒がいますから、卒業してしまう男子生徒の分の募集です。ですから目立たないというのが実情です。

★しかし、ゆったりした豊かな時間を過ごせる教育環境だし、進学実績も驚くほどよいのです。海外大学も毎年進学しています。ダンスやコーラス、美術などの教育も豊かで、芸術系の大学も毎年多いですね。

★女子校と言えば、大妻グループ、共立グループが思い浮かびます。伝統校ですが、新機軸も次々と仕掛けてきます。やはり、クリエイティビ度が高い教師がいるということですね。思考コードをこうやって活用してみると、教育の中身や教師の特徴も予想できます。

★もちろん、あくまで推理ですから、興味と関心がわけば、実際に足を運びたいものです。ですから、はやくコロナ収束を願うばかりです。

★クリエイティビティと言えば、桐朋女子です。やはり上記のリストの中にちゃんと位置していますね。

★C軸ではないのですが、B3を出題している学校に、桜蔭、女子学院、雙葉、豊島岡女子も入っています。東大合格実績だけにこだわっている教育ではないことを示唆しています。

★もちろん、入試問題だけで、創造性に満ち満ちている学校かどうかはわかりません。女子美のように、クリエイティビティ豊かな生徒が受けに来るのはわかっているので、作品だけではなく、プロセスの創造性のポテンシャルを見るために、論理的思考の基礎は最低限みておこうとうする学校もあるからです。

★ですから、あくまで参考としてのデータなのですが、時代の精神と呼応していることもまた否定できないのです。

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2020年9月16日 (水)

PBLで世界は変わる(03)アサンプション国際小学校 内なるエネルギーを豊かにする対話

★昨夕、アサンプション国際小学校の先生方とPBLについて対話を行いました。今回は森本先生がコーディネーターで、いつもとは違い、フリーな対話を行いました。

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★いつもは、PBLの小さき泉をワイガヤで対話して、そこからPBLの竜巻が生まれるというシナリオの対話なのですが、今回は、PBLの意義や生徒の成長の発達段階だとか、現場の授業で生徒が興味関心をもったり、没入していく仕掛けはありやいなやとか、実はPBLを学校を上げて実施している学校はほとんどなく、自分たちで創っていく必要があるとかいうPBLの前提条件や価値論が話題になりました。

★PBLの背景や価値について、改めて共有して、泉のエネルギーを豊かにするシナリオを森本先生はコーディネートしました。

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★小さく始めて、大きく育てるという学びのパターンの逆を行ったわけです。

★ミクロからマクロへというシナリオからマクロからミクロへというシナリオと置き換えてもいいかもしれません。

★実際には、ミクロからマクロへ向かう時、そのつど広がらない理由や壁に気づいて、そこで質疑応答を行いながら軌道修正していきますから、両方を往復するのですが、これだと、速度がゆったりなのです。

★しかし、マクロからミクロへというシナリオで始めるのは、速度感があり、ダイナミックなのですが、その分ハードルが高いのです。宙に浮いたままになってしまいがちなのです。

★よく俯瞰してという言葉を使う人がいますが、多くの場合、現場を見ないで、俯瞰するので、かゆいところに手が届かないわけですね。

★ところが、アサンプション国際小学校の先生方は、現場でPBLのチャレンジをしていますから、マクロから入ったほうが、一気呵成に疑問を解消できるというわけです。

★そのうえで、またミクロから始めてみる。そういうミクロからマクロ、マクロからミクロという2つのシナリオの循環が起こると、大きなPBLの竜巻が生まれるでしょう。阿弥先生といい、森本先生といい、婦木先生といい、海見先生といい、それ以外にも多くのPBLコーディネーターがいるアサンプション国際小学校は、生徒にとって希望の学校ですね。

追伸:マクロから入ると、私のような年寄は話が長くなります。先生方、耳を傾けて下さり、感謝申し上げます。

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思考コードがつくる社会(09)工学院 自己変容率が半端ない。偏差値を突き抜ける仕掛け。

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」の工学院の思考コードデータでは、2科入試と思考力入試の両方が公開されています。それをグラフ化すると、次のようになります。

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★とてもシンプルな作り方になっています。国算2科目入試は、A1A2とB1B2の思考特性を求める出題になっています。思考力入試では、C1C2の思考特性を求める出題になっています。

★いわゆる偏差値で40~53くらいのレンジの生徒が入学していきますから、受験勉強の準備がやりやすいですね。驚くべきことは、この生徒たちが6年後、すさまじい成果をあげることになるという自己変容率の高さです。

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(入学後教師が豊かにする思考特性のターゲットが明快で、そこを鍛える学びのデザインがされているのが、工学院の教育の奥義なのです。21世紀という予測不能な時代を牽引する人材は、クリエイティブクラスだと言われています。そのクラスが輩出される学びの経験ができるわけです。)

★6年間で、自分の人生を人から指示されて選択するのではなく、自分の内側から選択する思考力・判断力・創造力を養えるのです。しかも志が高いので、自ずとそこを乗り越えて自己実現していくGRITマインドや高次スキルを身につけていくことになります。

★ただ、自分ひとりでそれは限界がありますから、仲間同士協働しながら立ち臨みます。その仕掛けは、授業を中心にすべてがPBL型(プロジェクト型)になっているからです。

★高1から高2にかけて探究論文やグローバルプリジェクトに学年一丸となって取り組む豊かで最強のハードルが設定されています。それをやりきるためにも中学からGRITマインドを多様なプログラムで鍛えていきます。高入生は、そのことを知っていますから、その3年分を追いつくために必死になれるモチベーションの高い生徒が入ってきます。

★したがって、入学後、A3、B3、C3は難しいのではなく、ワクワクしながら挑戦していける思考特性だと感じられるプログラムが発達段階に応じて設定されています。そのプログラムが多様なために、外から見ていると複雑系なのですが、教師や生徒にとっては、複雑適応系であり、あるいは自律分散協働系の学びの環境であると感じられるわけです。

★生徒の自己変容率は、いわゆる御三家に比較するとすさまじいでしょう。世界大学ランキング200位以内の大学にたくさん進学するし、医歯薬系にも進みます。中高6年間で、自分とは何か、何をすべきか、見つめ、悩み、自信を持ちながら疾風怒濤の青春を通過できまるのです。

★なぜこんな複雑適応系の学びのデザインができるのか?それは工学院が自らの「思考コード」を有し、それを生徒も共有して活用しながら、リフレクションする内省型・共感型のコミュニケーションができる雰囲気があるからです。緻密でかつ愛が溢れる教育デザインが生まれる泉が同校の思考コードです。

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2020年9月15日 (火)

PBLで世界は変わる(02)ノートルダム女学院の場合 生徒が<新しい学びの経験>を共有していく

★昨年、ノートルダム女学院中高(以降「ND」)は、教育のアップデートを開始しています。そして、今期のパンデミックで、一気呵成にオンライン授業をフルセット(オンディマンド×プラットフォームで課題配信×テレビ会議システム)で行い、それはさらに加速しました。

★ソサイエティ5.0やVUCAの時代と呼ばれて久しいですが、新型コロナウィルスは、それは遠い未来ではなく、いまここですでに起こっていることを世界同時的に示したのでした。

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★それでも、動けた学校もあったし、動けない学校もありました。危機感を感じながらも、自粛が解除になってから、元に戻る反作用もあります。もちろん、さらにアップデートを果敢に行っていく人も学校もあります。ノートルダム女学院は、アップデートにチャレンジしていく学校です。

★ある日中1の3クラスの授業をいくつか拝見しました。すると、社会の森兼先生は、カースト制度について調べ、その問題点を見出し、解決策を考えて、プレゼンするPBL授業を行っていました。森兼先生は、中身の深さとか論の組み立て方とかは、中1だから完璧なものは求めません。調べ方や、編集の仕方、チームワークなど、これからの学びで大切な方法を、試行錯誤しながら悩みながら身につけていくことがこの時期大切ですと。

★そして、遠くの国の話と自分の身の回りとを比較して、同じ問題があることを知り、自分ごとであることも知って欲しいのですと。関心や好奇心は、他者や出来事への愛から生まれるのだと。森兼先生は、ケアフルでフィードバックでは鋭くかつ温かいメッセージを投げかけます。カトリック学校の真骨頂です。

★数学の北島先生は、中1では代数が担当です。方程式や関数(特に微積)や数論につながっていく式の計算の基礎の授業を展開していました。自分で考える姿勢、考える過程をていねいにたどる授業展開でした。北島先生は、リアリスティックなリフレクションをその都度、生徒自身、生徒同士、黒板でのプレゼンなどで行っていきます。

★計算は手順を暗記するのではなく、分解と合成という数学的思考の基礎が詰まっている。この基礎が次への応用や発展にもつながる。6年後、自分のやりたいこと研究したいことのためのモチベーションが高ければ、この数学的思考の基礎力は必ず役に立つと。長年多くの専門家が議論し、多様な目がはいって編集されている教科書は、その数学的思考の基礎を生徒とひもといていく体験をするのには適していると。根源的な基礎の意味を語ってくれました。

★星野先生の英語の授業は、調べたことを英語でキーノートやパワーポイントでまとめ、プレゼンしたり、1人ひとりの生徒の作品をギャラリーウォークをしながら、ピアエンパワーメント評価をしていました。タブレットを1人1台活用して学ぶ自然な姿に驚愕でした。もちろん、生徒の皆さんは、オールイングリッシュに挑んでいました。

★英語のノートルダムと言われているのは、なるほど納得でした。中1からこのようなシーンが、あの高2、高3のディーン先生をはじめとするネイティブスピーカーの先生方のスペシャルな授業に結びつくのだと感じ入りました。

★理科の村田先生の授業は、昆虫類やクモの生態について授業を展開していました。虫というのは、世界でその数が人間よりもはるかに多い生物で、生態系にとって欠かせないとか、ゴキブリを研究する大学の研究室の話とか、牧野先生の植物学の話など、多様なエピソードを瞬時に挟み込みながら、生徒の虫に対する恐怖心を好奇心に転換していく見事な博物学的なPBL授業です。

★実際に野に観察に行くことはできませんからと、タブレッドに資料を配信し、その映像をみながら、生徒に昆虫類やクモの違いがわかるように図式化する作業時間も設けていました。フロー状態(没入状態)はPBLの醍醐味です。村田先生は、観察して図式化するという学びは科学的思考の基礎をつくる入口なのですと。

★フィールドワークも大切ですが、いつもそれができるわけではないので、デジタル環境を効果的に活用していくことはやはり大事だとも。

★別の時間で数学の中村拓先生の授業を拝見して、驚愕だったのは、生徒が三角形の合同条件を自ら議論してチームで見つけていくというゲーム感覚のPBLを行っていたことです。ルールや法則、あるいは公理をはじめに教えてしまうのではなく、自ら発見していく体験を大切にしていますと。

★生徒は教科書にない4番目のルールを発見してもいました。2つのチームがそこに到っていました。教科書を突き抜ける授業。

★しかしながら、なぜ合同条件は3つなのだろうと、中村拓先生は問いを投げかけます。生徒たちは思考をフル回転させていました。中村拓先生は、いろいろ発見していくプロセスを体験する。そして、一見違う物でも見方を変えれば同じだと気づいたりする。そんな置換操作をするのも数学的思考の基礎です。基礎とは易しい問題をやることを意味するのではないと。代数と幾何の授業という違いはありますが、北島先生と中村拓先生のND数学科の共通点は、数学的思考の基礎を大事にすることなのだと了解できました。

★ND教育開発センター長の霜田先生は、PBLをやろうというのは、共有していますが、何か一つのマニュアルをみんなでやるというのではなく、本間さんもいっている5つの基本要素(前回紹介しました)の組み合わせは共通していますが、アプローチは様々でいいんですと。観察をベースにしていたり、社会課題をベースにしていたり、数学的思考や科学的思考をベースにしていたり、ピアプレビューをベースにしていたり。

★大事なことは、それぞれの教師のPBLを生徒はみな体験するということなのです。本間さんが見学してくれた中1の先生方がそれぞれのPBLを実施することによって、生徒は小学校では体験してこなかったPBL体験をしているわけです。

★1人の先生だけがPBLをするのではなく、多くの教師がチャレンジすることによって、生徒は<新しい学びの経験>をドーンと受け止めます。PBLは、学力や非認知的な面をサポートしますが、人間存在の価値の気づきが生まれてくる場でもあります。しかし、それは自ら気づかなければ自分の血肉にはなりません。しかも、生徒によって嗜好性が違いますから、いろいろなアプローチのPBLが行われることの方が相乗効果は生まれやすいのですと。

★そう語る霜田先生の高2の授業を覗くと、生徒たちはその見出した価値をGoogleサイトでホームページを作成して発信する編集活動を行っていました。アメリカの学校だと、最終的に本として出版して、果たして市場価値を得られるかという教育まであるわけです。まさにPBLの醍醐味です。

★しかし、お金がかかりますね。クラウドファンディングもいいのですが、その前に、今ではホームページは簡単にできますから、そこをうまく使ってみようかなと思ったのです。パンデミックでオンライン授業を実施しながら、新しいアプローチも発見できましたと。

★自らサイトを立ち上げる時に、SNS上の様々な問題にも気づきます。フェイクニュースが表現の自由問題でなかなか解決できないというリーガルマインドも学びます。18歳成年はもう直です。自分の良心や正義の重要性とそれだけでは解決できない紛争もあるということに気づくわけです。倫理と法のせめぎ合い。霜田先生は哲学の先生でもありました。

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PBLで世界は変わる(01)学内シェアと世界シェアの相乗効果

★PBL(Project Based Learning)という学びの環境を創る学校が増え始めています。PBLとは何か定義がわからないと叫ばれる時代は去ったかもしれません。もちろん、定義にこだわる人もまだまだ多いですが、自然科学のような法則の定義みたいなものではないので、それぞれPBLを行う人の定義から出発するのがよいわけです。

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★そして、学校の場合は、アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシーがあるので、その3ポリシーに連動する形でPBLの定義とか方針とかできていきます。各学校の3ポリシーは独自のものですが、それでも一般的なPBLとして次の5つは共通しています。

①根源的問い:テーマやBig questionを自ら見出し追究する。

②システム思考:そのために「リーサーチや経験→仮説→対話あるいは議論→検証の編集→表現→公共的な発信→・・・」という思考の作業工程の循環の輪=システム思考を豊かにしていく。

③最近接発達領域:生徒は①にいきなり到達できない。そのため生徒の発達段階に合わせて、ファシリテートやコーチをしながらケアやサポートをする。

④リフレクション:思考コードやメタルーブリックに基づいたルーブルックによるリフレクションを随時行う。

➄存在の価値:最終的に、生徒は「私とは何か」「私のやりたいことは世界にどうかかわるのか」という自らの世界観のプロトタイプを生み出しては、リファインし続ける生涯学習PBLを生み出していく。アイデンティティは成長する。

★このような5つの共通点をベースに、各学校のミッションと3ポリシーなどに基づいた手法や価値を組み合わせていくことになります。教師の役割もファシリテーターやコーチ以外のものも学校によってはあるでしょう。

★そして、1人ひとりの教師が自分のPBL授業のデザインを磨いていくのですが、学校というのはチームワークが大切です。いや学校に限らず、人間は社会的動物ですから、チームワークを創ったり、互いに信頼関係を築いたりすることは大切です。

★そのために、互いのPBL授業の想いや方法をシェアしていきます。

★まずは、教科でシェア、そして同時に、各教科間で学内シェアをしていくわけです。

★そして、世界では、PBLの動きは初等中等教育ばかりではなく大学でも広がっています。したがって、世界とのシェアも必要です。とはいえ、いきなり海外の先生方と始めるのはハードルが高いので、図にあるように世界で活用されているPBLに関する学習理論や教育方法、教授法など多角的なレンスを通してリフレクションしながら行っていきます。

★そのうち、オンライン授業をすでに多くの学校で行っていますから、海外の先生方とシェアしていくことになるでしょう。

★いずれにしても、「PBLの自己マスタリー→学内シェア→世界シェア」の循環を豊かにしていくことになります。

★もともと、医療現場や看護の現場でチームワークは重要だし、命に係わる問題は、今回のパンデミックもそうですが、新しい問題や課題が現場で生まれます。未知との遭遇は生命の現場では常に生まれています。昨今のPBLはそういう医療現場から生まれてきたものです。

★そして、医療現場のように生命の危機に常にさらされているわけではないように見える私たちの日常生活も常に生命にかかわっています。生命は、たんなる物質システムでも機械システムでもありません。では何か?誰も正解を持っていませんね。

★定義や法則がなければダメだと叫ぶ方も、実は絶対的定義や法則の正解がまだできていない生命を生きているのです。しかし、それを解明しなくてはいられないのが私たちでもあるのです。PBLとは私たちの生命とは何かを追究するプロジェクトです。多角的なアプローチで、そして新しいアプローチを生み出しながら、人類は誕生したときからずっとPBLを生きてきたと考えることもできるのです。

★日本の大学だけではなく、海外の大学も、独自の入試制度と同時に共通した接続方法としてPBLに対応する入試制度をつくりつつあります。日本の学習指導要領に対応する入試制度の発想そのものが問われる時代でも実はあるのです。オンラインで世界はつながっているので、このウネリを止めることは難しいでしょう。

★そのような世界的視野からみて、慶応のようなAO入試が生まれたことを、今一度再認識したいものです。

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2020年9月14日 (月)

思考コードがつくる社会(08)思考コードで、ますます女子学院の価値があがる。そして聖学院のM型思考力入試の価値も。

★偏差値で見えないことが「思考コード」でみえます。その典型が女子学院(以降「JG」)でしょう。桜蔭とJGと豊島岡の4科の入試問題の問いが「思考コード」のそれぞれの領域でどのくらいの割合が出されているかをいつものように見てみる(データは晶文社「2021年首都圏中学受験案内」)と、次のようになります。

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★これをみると、桜蔭はB2B3思考の領域が多いわけです。なんだ偏差値順ではないかと思うでしょう。しかし、算数だけ取り出してみてみるとどうでしょう。

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★豊島岡は、算数においてはB1思考ベースで、桜蔭もJGもB2ベースだということがわかります。B3は3校とも同程度出題しています。結果的には難問を出すわけだから同じじゃないかと思うかもしれませんね。

★ところが、違います。というのは、この入試問題に向けて中学受験生は学びを積み上げてくるわけですが、豊島岡は、B3思考の問題は解けなくても、B1までの問題が解ければ合格できるわけです。ですから、B2までチャレンジして、B2も少しできてB1までの問題ができればよいという合格戦術になりがちです。

★桜蔭とJGは、B3までしっかりやるわけです。

★この差が何を意味するか?それはB3の問題は、実にC3の問題なのです。エ~?!と思うでしょうね。これは、思考コード分析の難しいところです。算数は、正解が出てしまうために、クリエイティビティは関係ないと思う方も多いのですね。しかし、B3レベルは、思考のプロセスにおいてクリエイティビティが必要なのです。

★何か「モノ」を作るというのがクリエイティティビティの領域だというのは、間違いないのですが、実はそのプロセスという「コト」こそが真正のクリエイティビティなのです。つもり現象や事象や生産物を生み出す諸関係(プロセスとは関数関係)の創造こそクリエイティビティの腕のみせどころなのです。

★いわゆる一般入試では、算数のB3領域の問題を出題する学校は少ないですね。どうしても難しくなってしまうからです。

★しかし、この領域をきっちりやっておかないと、ソサイエティ5.0やVUCAの時代に、イニシアチブをとれなくなります。JGの生徒のコミュニケーションを見ていると、頭の回転が速く、雄弁で、ユーモアというよりエスプリがきいていると感じる場合が多いのですが、それは、中学入試準備の時に、算数のB3思考というクリエイティビティと面接のトレーニングを積むわけですから、なるほどそうだとなるような気がします。

★桜蔭もそうなのですが、どの教科も難しいので、JGのようなある傾向の生徒がなだれ込むということはないのです。JGの場合は、算数以外の教科ではあまり差がつかないのです。それゆえ、算数のB3思考ベースの問いにチャレンジする学びを積み上げます。

★しかしながら、本番では、テストというのは不思議なもので、同じレベルの生徒が受けると、ほどほどの難易の問題と難問という問題のミックスは、差がつかないのです。JGの場合、最終的には差がつかないのです。そうなると面接は重要です。もちろん、当局は、面接で合否は決めませんというわけです。

★桜蔭はというと、どの教科もある程度難問を出題するので、得意不得意がでてきます。それなりに差がつくわけです。JGとどう違うのかというと、JGは算数だけが難問が出題されるのです。ところが、たとえば、国語が得意な生徒もそうでない生徒も、国語でそう差がつかないのです。算数がそう得意でない生徒も得意な生徒も難しいので差がつかないのです。

★算数的なクリエイティビティの勉強を受験生は皆してJGに臨むも、面接で言語技術と言語感性の優れた生徒が通過していく独特の中学入試システムはJGだけかもしれません。

★いや、聖学院のM型思考力入試も、言語技術と言語感性と数学的クリエイティビティを備えている生徒が通過していきます。もちろん、JGのように全面的にそういうシステムを打ち出しているわけではありません。しかし、そのシステムを聖学院はしっかり根付かせているところが凄すぎます。

★またかあ、本間の言うことはわからないといわれるかもしれません。たしかに、その通りです。このB3算数の価値やM型思考力入試の価値は、数学がただ得意だという方には理解ができません。また、数学がそもそも嫌いだとか不得意だとか、高校時代文系コースで数学を学んでこなかったという方には理解不能でしょう。しかし、数学的センスや数学的思考の持ち主は、理解が出来ると思います。

★私の説明がうまくなく、理解ができないと言われようと、JGの中学入試や聖学院のM型思考力入試のように、未来を創るイニシアチブをとる人材に必要な才能を見出すシステムはあるのです。現状そんな価値があるというこに気づかれていないだけです。気づかれていなくとも、あるものはあるわけです。認識ギャップと存在するコトとは乖離する場合があるのです。

★算数一科目入試が行われているところも増えてきました。しかし、聖学院のM型思考力入試のようなシステムであるかどうかはまた別問題です。数学の難問がただ出題されているだけではダメなのです。JGは4科全体×面接で、聖学院はM型思考力入試で、言語技術と言語感性と数学的プロセスクリエイティビティ(関数関係の創造)を必要とするような仕掛けになっているのです。

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2020年9月13日 (日)

思考コードがつくる社会(07)ブランドを切り崩すブランド戦略 洗足 vs フェリス

★晶文社発刊の「2021年首都圏中学受験案内」は実に面白いですね。学校のブランド戦略まで見えてしまうんです。たとえば、同書のデータで、洗足とフェリスの4科目入試で出題されている問いの「思考コード」の各領域の割合を比較してみると、次のようなグラフになります。

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★同書によると、首都圏模試の偏差値は、両校とも73です。四谷大塚では、洗足は64、フェリスは65です。今では、両校とも鎬を削っているわけです。しかしながら、1986年(なぜこの年かというと、それ以前は、中学入試には偏差値というものが本格的には存在していなかったのです。その年、高田馬場に中学入試情報センターを日能研が業界初めて設置し、本格的偏差値を世に出しました)は、洗足は偏差値40いっていなかったでしょう。それは鴎友学園女子もそうです。

★そういう意味では、洗足学園や鴎友学園女子は、「ブランドを切り崩すブランド戦略」を成功させた私立女子校です。その後、両校に続けと多くの私立学校が研究するも、なかなかうまくいかなかったですね。ブランド戦略は競争戦略ですから、うまくいかないところが多いのは当然です。

★したがって、女子校では、先にこの戦略がうまくいった頌栄女子、豊島岡女子とその後に続く洗足、鴎友学園女子が、東京や神奈川のいわゆる御三家女子を跳ね飛ばす勢いですが、その後が続かないわけです。

★そうなると、別路線の戦略が必要です。それで、共学化という流れができたわけですね。たとえば、渋谷女子が渋谷教育学園渋谷に、戸板女子が三田国際に、順心が広尾学園に、日本橋女学館が開智日本橋に。しかし、共学化路線だけでは、これもまた後が続かないわけです。

★ということで、さらに第三の路線として、才能主義になっていくのです。生徒1人ひとりの才能を共に見出し、豊かにしていく本物の教育を共創する時代に。

★しかしながら、この第三の道にいたるに至っても、洗足と共通の教育が連綿として続いているのです。それは破格の英語教育ということです。

★洗足学園は、フェリスと、難しい入試問題で競うのはやめたわけです。塾を一つ一つ周る丁寧な広報戦略の先駆けをおこなったわけです。フェリスは塾を訪問することは今でもしません。当局はそのつもりはないですが、塾側は、ずいぶん上から目線だと思ったことでしょう。それに、塾もフェリスだけで合格者を出す競争をしていたのでは、それは不毛です。限りある資源をとりあっても、あまり儲からないのです。

★だったら、中学受験市場を作ってしまえ!というのが日能研だったわけですね。洗足や鴎友学園女子をうなぎ上りに成長させ、そこの合格実績の覇者になればよいのだと。洗足学園は、そのときウェルカム戦略をとりました。鴎友学園女子は、半分開放、半分は慎重という路線でした。

★同じキリスト教主義なのになぜ違うかというと、洗足は英語にこだわり、鴎友学園女子は学問にこだわったということです。

★洗足は、ポストモダニズムをうまく利用しました。鴎友学園女子は、理念上、また学問上ポストモダニズムの大量消費、大量生産、大量移動に批判的でした。

★いずれ洗足と鴎友学園女子の思考コードの比較もしますが、洗足とフェリスと同じような関係になるでしょう。

★洗足ははっきりしていたのです。学問は大学で大いにやりなさい。あなたの最高の人生を追究できる大学に行ける学びを提供するのが中高で、学問をやってもしかたがないのだと。学問は常に最先端の成果に気配りしていなければなりませんから、そんなコストはないのです。

★私立学校は、教師の入れ替わりが激しいわけではないので、最初は学問的なカリキュラムは新鮮ですが、すぐに学問的価値は劣化します。先生方の趣味に転じます。そうならないように、情報アンテナを張り巡らすわけですが、洗足学園のように、そのアンテナをフルに生かしながら、中高の限界を見定め、中高の役割を徹底的に追求するわけです。

★だから、生徒にとって最高だと思えば、海外の大学にも道が開かれるシステムをどんどん作っていったわけですね。なんだ見たようなことを言うじゃないかとおっしゃる人もいるかもしれません。そう立ち会っていたんですね。それでよくわかるのです。英語ができる仲間と洗足の先生方(当時の前田校長もそこにはいました)とカルフォルニア州のエスタブリッシュ校との連携プロジェクトを実施していました。中学の中長期の現地校の留学プログラムをつくる3年間をいっしょに行ったり来たりしていました。

★そのときに、新しい帰国生入試のアイデアも。当時は、海外で帰国生を行っている学校として、洗足はまだまだ有名ではなかったのです。その後、本間とその仲間たちだけでやってるんじゃねえとなんだかいろいろグループ会社で立ち上がって、今日のような帰国生入試の市場ができました。1998年から2005年くらいまで、私は自由にできていたのですが、本間はビジネスにしないからダメだと。たしかにそうですね(汗)。そんなわけで、仲間たちと別れることになります。いろいろな思い出があるんですが、その当時の仲間は、みなそれぞれ多方面で活躍していて、ホッとしています。何人かは、今でも離れていても連携してプロジェクトを共創していますし。

★にしても、1999年1月、社内ベンチャーをした2つめの仕事(一つ目は、ブリティッシュヒルズの紹介宿泊セミナー。できたばっかりのことろで、今では多くの学校が使っていますね。そのとき集まった先生50名くらいで話し合っているうちに、合同説明会の先駆けアイデアが生まれました。会社側からは、紹介しただけで、ビジネスにしなかったと責められました:汗)は、予算がないから盟友と二人で20万円をきるロサンゼルスリサーチに飛びました。それもチャレンジだったわけです。HISが中学受験大衆化と呼応するように成長していたころです。それが学校の先生方とセミナーを開く大きな転機になったのは鮮明に覚えています。今では当たり前のように塾系列のシンクタンクが学校先生向けセミナーをやっていますが、当時は珍しかったですね。

★それも、ビジネスにしないと責められました(汗)。ネットワークこそ財産だと思ったのですが。。。そのことを支えてくれた当時の社長の通夜の翌日、独立することにしました。ロサンゼルスに導いてくれた盟友とともに。そして、すぐに二人でそれぞれ本をだしました。ベストセラーにはならなかったですが、その編集プロセスこそ二人が創ってきたPBLの結集でした。

★ある新聞社の幹部の会議にも呼ばれましたが、創造的思考の話は、ダメだったみたいです。NHKにも二人は呼ばれましたが、創造的思考はやはりダメでした。プレゼンが下手だったということでしょうが。ただ、盟友はいつも先を行っていますが、時代とマッチングさせるマーケティングは得意ではなく、私が支えなければならなかったのですが、私もマーケティングはダメでした。ただただGRITよろしく、しつこく創造的思考を中高にと活動をしてきましたし、しています。その盟友は、創造的思考を大切にしているとある私立学校でグローバルでイノベーティブな教師として活躍しています。

★思考コードを分析していると、そんな余計なこともつい思い出してしまいます(汗)。

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2020年9月12日 (土)

思考コードがつくる社会(06)思考コードは裏切らない。三田国際・広尾・都市大等々力・武蔵野大・八雲

★何かと話題になっている共学校5校の国語と算数の入試問題の問いの思考コード領域の割合をいつものようにグラフにしてみました。

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★入試問題をみると、シンプルにその学校の本音がみえてきます。三田国際、広尾、都市大等々力は、合格者は、A2とB1がかなりできて、B2で差がつきます。

★武蔵野大と八雲は、A2とB1をしっかりやってきて欲しい。難問を解ける必要はないという姿勢です。

★いずれも革新的な教育を標榜していますが、最初の3校は、本音は偏差値が高くなりたいし、偏差値の高い大学に合格する生徒が欲しいというのが本音です。〇APIX出身の受験生が増えることを期待しているというのはそういうことで、思考コードはちゃんと本音を表現してくれます。

★一方、武蔵野大と八雲は、難問を頑張る必要はない。基本的なものの見方と考え方ができれば、あとは入学後ぐいぐい伸びますよと。もちろん、偏差値だけではなく、クリエイティブクラスになれる才能がです。

★ですから、適性検査以外に、両校とも独自の新タイプ入試問題を出題しています。基礎力は入学後で、創造的才能を豊かにしてからと。つまり、基礎から始まって、創造へという特性の生徒とその逆の生徒が学内で相乗効果を発揮します。

★このような創造的思考力が偏ってある生徒は、最初の3校では合格できません。

★それにしても、外から見ていると武蔵野大と八雲は全く違う学校のようにみえるのですが、多様な才能を大切にするという点と生徒のその才能を信頼しているので、学内が芸術的な豊かさでいっぱいにになるという点で共通しています。

★一方最初の3校は、芸術もICTなどの延長で、リベラルアーツ的な芸術の雰囲気はあまりありません。合格実績をあげるのに、芸術は不要だとはいはないでしょうが、三校の経営陣からバッハやモーツアルトの話は聞いたことがありません。

★ところが、武蔵野大と八雲の経営陣からはそのような教養はいつも話に出ます。実際、武蔵野大の講堂にはパイプオルガンがあり、毎日のように稼働しています。八雲は、近藤理事長校長がピアノの弾き語りをするほど芸術を大事にしています。

★日本ではアート市場は世界標準ではないので、ネオリベラリズム的マーケティング戦略が得意な学校は、当然日本ではアート市場の弱小を知っているため、教育でもそこは重視しないのです。極めて明快な戦略です。成功の秘訣はそこにあります。優先順位!比較優位!

★ところが、武蔵野大や八雲学園は、J.デューイ以降のプラグマティックなマーケティング理論ですから、芸術も大切にします。なぜなら、それが世界標準だからです。両校とも茶道も大切にしています。シリコンバレーが憧れるマインドフルネスな場ですね。

★バッハやモーツアルトを古い売れないと思っている私立学校と新しく再現できる学校とどちらを選択するか。選択の価値意識の違いがでてきます。どちらがいいかわるいかではないのです。思考コードはそんな価値意識まで映し出してしまうということを言いたいだけです。選択はあくまで、私事の自己決定です。

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思考コードがつくる社会(05)晶文社が世界を開く時代 聖学院 vs 筑駒

★晶文社の「2021年首都圏中学受験案内」は、2019年春の首都圏模試センターの思考コード分析データを加工して掲載しています。それに基づいて、筑駒(4科)と聖学院(M型思考力入試と難関思考力入試)で出題された問いの思考コード領域割合比較を出してみました。その違いは一目瞭然ですね。これが従来型入試と新タイプ入試の典型的な違いです。もっとも、聖学院の思考力入試は2021年にはもっと進化して、C2・C3領域が増えてくるということです。

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★入試問題なので、今までは、筑駒のように、A軸思考、B軸思考で構成されていました。筑駒のようにA3やB3の問題をたくさん出すことはありませんが、これで日本で一番難しい中学入試の従来タイプのパターンを知ることができます。

★聖学院も、2科4科の入試も行っています。筑駒と同じようなタイプですが、A3とB3の部分はさすがに出題しません。聖学院は、このようなA軸・B軸思考をがんばってトレーニングしてきた生徒に道を開いていますが、一方で、B軸思考・C軸思考が得意な生徒にも道を開いています。

★従来の試験だと、このB軸・C軸思考タイプの生徒の中には、合格できない生徒もいました。当然筑駒はムリですね。

★しかし、聖学院の思考力入試で合格した生徒は、入学後ものの見事に、授業だけではなくそのほかのプロジェクト活動でリーダーシップやイニシャチブをとり、A軸・B軸思考の生徒と学内で相乗効果を生み出していきます。

★その結果が、海外大学では、開成やそれこそ筑駒と肩を並べる実績を出しているわけです。当然クリエイティビティを欲する総合型選抜入試でも成果を収めていきます。

★この傾向はどんどん強まっているのが聖学院です。

★晶文社の編集者の画期的なところは、このようなものの見方を読者にナッジするという新しい出版戦略にうってでているということです。世界を変えるナッジ出版戦略ですね。

★織田信長が今川義元を打ち破ったように(勝ち負けではないので比喩としてはズレていますがイメージしやすいので)、聖学院が筑駒や開成とは別路線で、あるポジショニングをゲットするという予兆が生まれているのです。

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2020年9月11日 (金)

思考コードがつくる社会(04)晶文社「2021首都圏中学受験案内」が世界を開く時代

★今年も晶文社は、「2021首都圏中学受験案内」に各学校の入試問題の「思考コード」分析スコアを掲載しています。入試問題は学校の顔ですから、このスコアによって、昨今予測不能な時代に必要とされている思考力の各学校の特性がわかります。

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★思考の特性がわかることはどうして重要なのでしょう。それは、中学入試で使う思考力は、入学後学校の授業で求められる思考の在り方そのものです。また、その思考の在り方を使って先に進む卒業後の状況が予想できます。かりに知識・理解ばかりの思考の在り方が入試問題で出題されたとしましょう。そうすると、大学はMARCHまでしか進めない。海外大学は射程にないキャリアデザインが展開されていると読むのは容易です。

★もちろん、生徒によっては、そうでない場合もありますが、それはその学校の教育によってではありませんね。

★このような学校選択ができるのは、しかしながら、首都圏だからなのです。首都圏という一つのエリアに私立中高一貫校が300も集まっているという国は日本にしかないのです。特にその3分の2が東京に集積しています。中学入試の段階で、一部のエリートだけではなく、教育を選択するという経験が出来る日本には、本来希望があるはずなのですね。

★しかし、偏差値で選択していた時代は、偏差値ランキングの価値意識、簡単に言えば学歴社会価値意識で画一的に選択されていたので、多様な価値意識のマッチングができる有効性を発揮できない教育市場だったのです。そう考えれば、もったいないですね。ところが、ようやく偏差値基準の価値だけでは乗り切れない予測不能な時代がやってきたわけです。

★晶文社は首都圏模試センターと協力して、新しい教育価値の選択肢を増やす画期的な受験案内を出版したわけです。

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★たとえば、麻布、開成、武蔵、駒東の思考の特性(出題された問いの思考コードの9つの領域の割合分布)を出して比較したら、上のようなグラフになります(4教科の出題の平均)。

★開成と駒東は、知識・理解のA2と適用・論理のB1・B2の領域で十分に考えることができる思考の特性が求められています。麻布は、B2思考の特性が明確ですね。ここを鍛えていればまずは大丈夫ということです。

★武蔵は、B2・B3の思考の特性が求めれれています。

★こうしてみると、開成や駒東は、手堅く知識も暗記し、論理的に思考する力を重視しているということがわかります。東大合格の力のマッチングは最強です。

★麻布は、B2思考を身につければ、知識はあとでついてくるし、B3まで根詰めなくても、そこは別の方法で軽やかにクリアすればよいというカジュアルで自由な思考様式が極端に求められています。

★武蔵は、B3にまで立ち向かっていく重厚なあるいは執拗な思考力がこれまた極端に大切にされていますね。学問知をはじめから求めているということのでしょう。

★こう見ていくと、なんとなく、それぞれの進路先のイメージと合うような気がします。

★4つの学校からは、もちろん、高いクリエイティティビティを有した人材が輩出されていますが、それは学校の教育とはまた別の要素でしょう。同窓力とか家庭の力とか。

★ですから、そういうことを重視している家庭や本人は、クリエイティビティを養成することは、別に学校に期待はしていないということでしょう。

★しかし、時代は変わりました。来春のダボス会議で、「ザ・グレート・リセット」宣言がなされ、よいかわるいかは、ともかくクリエイティブクラスを積極的に育成する教育が必要だとなるでしょう。経済学側からも内生的成長論がノーベル賞を受賞しているぐらいですから。

★このようなリバタリアン・パターナリズムの是非は、世界標準な議論になっていますが、日本ではまだまだ法学部のしかも先端的な法学部を形成している大学でしか話題になっていませんね。

★しかし、この今後WebやVRの世界で教育がなされると、一気に話題になるテーマです。この流れに対応できる学校を探さなければならないわけです。そのとき、晶文社の同書が大いに役立ちます。クリエイティブクラスはC領域の思考の在り方を必要とします。このC領域の思考様式を大切にして、入試問題をデザインしている学校を見つけることができるのです。(つづく)

 

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2021年変わる中学入試(09)山本崇雄先生が仲間と拓く新しい中学入試 10月3日緊急教育座談会で保護者と想いを共に

★来月10月3日(土)、新渡戸文化学園は、特別企画「教育座談会」を開催します。同時開催で、iPadを使った算数と国語の体験授業もあります。「教えない授業」とは何か、PBLとは何かを体験できるわけですね。

★教育座談会は、新渡戸文化小中高等学校統括校長補佐の山本崇雄先生が座長で、石川一郎先生となぜか私も(汗)参加して、対話をします。エポックメイキングな対話になると思います。ぜひいっしょにその時間を共にしませんか。

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★テーマは、「どうなる!?中学入試」です。入試は学校の顔とよく言われます。難しく言うと、アドミッションポリシーなわけですが、その学校の中学入試問題を見ると、その学校のカリキュラムや授業の様子やシステムがわかります。そして、どんな未来を実現するために生徒が卒業していくかもシナリオがわかります。カリキュラムポリシーとディプロマポリシーが予想できるということですね。

★それを端的にいうと、入試は学校の顔ということです。高校入試や大学入学共通テストなどは、学校や大学の顔は見えないので、どうしても偏差値などのランキングで選抜されてしまいます。一方、私立学校の入試問題や山本先生も携わっていた公立中高一貫校の適性検査は、学校の顔がちゃんとわかるものです。学校と生徒の多面的な能力とのマッチングが可能なわけです。

★しかしながら、山本先生は、私立学校全体の状況が必ずしもそうなっていないことに気づき、学校の仲間といっしょに、この多面的な能力のマッチングの意味をもっと深く踏み込み、突き抜けてしまいました。新渡戸文化学園の画期的な中学入試については、すでにホンマノオト21「2021年変わる中学入試(03)新渡戸文化の画期的な中学入試 生徒が主語である学校のアドミッションポリシーとはこれだ。」で取り上げていますからご覧ください。

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(山本崇雄先生の著書の中にある重要な図)

★さて、この画期的な意味とは何か?それは、当日の教育座談会でさらに明らかになることと思います。山本先生も石川先生も教育改革や新しい教育のアドバイザーとして学校以外でも活躍されていることは、みなさんもご存知だと思います。ですから、今回の新渡戸文化学園の画期的な中学入試は、新渡戸文化学園のためだけの事態ではないでしょう。

★おそらく、同校のチャレンジが今までの学校が社会と分断されていたことを赤裸々に映し出すでしょう。そして、その分断を無意識の内に強化していたのが、一発ペーパー入試問題だたっということが。

★生徒は、ソサイエティ5.0の道を歩んでいます。今回のパンデミックでVUCAの時代に直面していることに痛いほど感じています。2022年に改正民法が施行され18歳成人になります。

★学校は、そんな予測不能で激しく変動している社会と分断しておいて、卒業おめでとう、さああとは自力でがんばってと、ライオンが子どもを崖から突き落としてはいあ上げって来いというような教育を、実はしていたのですね。そのことに気づいたら、みなさんはどうされますか?今回のパンデミックでケアの大切さマインドフルネスの必要性を時代は要請しているのに、教育だけは真逆というのでよいのでしょうか。

★自分のお子さんだけではなく、世界の子どもの状況にも想いを馳せてみると、なんとかしなくてはと思うことでしょう。でも、それはいきなりはできないのです。でも大海も一滴が大切です。いまここですることが、世界に未来に波及するプロトタイプづくりになる。あるいは種づくりになる。そういうことが大切です。

★中学入試のあり方を問うことは、実は、そんなことを問い返すBigQuestionだったわけです。ぜひ共に!

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2020年9月10日 (木)

聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(04)吉留先生のCuriosity-Drivenなサイエンス

★吉留先生の化学の授業はCuriosity-DrivenなPBLです。聖パウロ学園の教師は、PBL授業を行っていますが、「リサーチ→思考(対話や議論、小論、物語創作などを通して)→プレゼンテーション」という3Xサイクルは共通しています。そのうえで、それぞれ特徴的なPBLをするのです。化学の吉留先生の授業は、そう!Curiosity-DrivenなPBLです。つまり、生徒たちが好奇心に突き動かされてサイエンス思索をしていく授業です。

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★実験室にこもり大学の研究室で行うような白衣を着て実験しているのではなく、徹底した科学的な思考を多様なアプローチでシミュレーションしていく授業です。

★たとえば、ベンゼンという化学物質がでてきたら、教科書定番の置換の仕組みを覚えるだけではないのです。ベンゼン誕生エピソードから身近にある洗剤や衣服、殺虫剤、薬品などに使われているケースをたどっていきます。

★そして、使い方を間違えると、身体に有害なことまでイメージを飛ばします。マインドマップが頭の中でどんどん広がっていきます。

★当然、ベンゼンの使用についてはリーガルマインドも発動します。法律で、ベンゼン使用の自由の制限をするわけですから、とても大切なテーマですね。

★ベンゼンというあの有名な亀の甲羅型モデルの物質にかかわる学際知をがんがん学んでいきます。

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★もちろん、学際知の驚愕に好奇心を燃やす生徒もたくさんいる一方で、覚醒しない生徒もいます。そんなとき、吉留先生は、臨機応変に、シミュレーションゲームをします。イオンカードゲームなどで、元素のどんな組み合わせでどんな物質ができるのか、競うゲームです。ボードゲームとは、なぜか最終的には大いにもりあがります。やっている最中に覚えていなかった化学記号や物質に出会い、無性に知りたくなるなんてことはしばしばですね。

★そんなことも交えながらとにかく好奇心を膨らませ、それにナッジ(背中を押され)され、生徒はサイエンス的な思考を楽しみ深めていくわけです。

★吉留先生は、ベンゼンは人間が神の領域に踏み込んだ科学の世界の1つです。部活の後に使う洗濯洗剤が、そんなすごいことなんてとなるわけです。実際SDGsなど学ぶとき、この人工的な有機化合物は、大いに問題を引き起こすわけですから、化学物質の両刃の剣という矛盾にぶちあたるわけですと。

★プラスティックゴミの問題も、ただ使わなければよい、減らせばよいという道徳的・倫理的な意識だけではなく、科学的にクリティカルシンキングを学ぶコトは、実効的な社会課題解決のアイデアを出すときにはとても大切です。吉留先生は、物事を精神論的に解決するのは限界があるのは、今回のパンデミックで思い知らされましたと。経済と自粛のジレンマの解決不能な状況に直面し、世界同時的に共有されたわけです。そこを一歩進めるには、科学的思考力が極めて重要だと思いますと吉留先生は科学者らしく語ります。

★好奇心に突き動かされて、デザイン思考や哲学的思考だけでは、解決不能な領域に進むには、サイエンスの力は必要です。STEAMと言われたとき、実際には、テクノロジとエンジニアリングを活用していればサイエンスも行っているとなりがちです。科学的思考なきSTEAMやデザイン思考が、経済や産業の復興には役立ちますが、地球規模の環境問題を解決するには力不足なのです。

★吉留先生は、神の領域で自分たちはどうするのか?生徒といっしょに考えていく授業はワクワクしますよと。その通りです。

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2020年9月 9日 (水)

PBLの再定義の時代(02)探究と教科の5つのパターン。そしてどのタイミングで外部ネットワークと組むか。

★新学習指導要領になって「探究」というキーワードがここ数年各学校で議論され、実践されています。そして武蔵野大の日野田校長のように、外部ネットワークを取り入れて、先生方に研究する時間を作りだしたいという展開もメディアが注目していますね。それもいいと思います。特にメディアはこの手の話好きですよね。だって、外部ネットワークウェルカムということは、自分たちももてなされるという話だからです。そもそも日野田校長もメディア誘導術が得意です。ナッジと装いながらマーケティングやブランディング誘導をいつの間にかしてしまうのです。普通の人にはなかなかできませんから、とても勉強になりますね。

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★広尾学園や三田国際のように、直球マーケティング手法でないところが、日野田校長の次世代私学広報手法の新鮮さです。

★私のように本質にこだわったり、小難しいことを言っていると、日野田校長や大橋清貫学園長には、マーケティング的にはアウトとよく言われます。大橋学園長には、思考コードなんてわかりにくいよとかつて言われましたが、なるほどそうかあ、それなら価値があるなあと思う偏屈な私です(笑)。三田国際は思考力入試はやらないでしょう。マーケティング的には意味がないからです。

★そうはいっても、お二人と私はPBLという言葉を活用する点では一致するんですね。もっとも、大橋学園長はPBL=Problem based Learningで、日野田校長と私はPBL=Project based Learningです。日野田先生は、シリコンバレーやMITのPBLで、私はJ.デューイから連綿と続くPBLの背景を探って新しくしたものです。ちょっと日本的なマインドフルネスも入っています。

★一口にPBLといってもみな違うんです。それでよいのです。生徒獲得のためには、また生徒や保護者に理解を共有するには、ワクワクすればよいのであって、難しいことはどうでもよいというのが、今日の教育界では主流かもしれません。

★しかし、目を国際バカロレアやカナダやオーストラリアなどのグローバルジチズン教育などに向けると、難しい話は深イイ話で、それがかえってワクワクするねとなり、まあ、いろいろなんです。

★さて、探究の話ですが、必ず議論されるのは、探究と教科の関係です。それから探究は必ずしもPBLではありません。グループワークをやりながら調べ学習が中心の探究はPBLではないのはすぐにおわかりでしょう。

★授業もPBL型授業とは限りません。

★ここらへんの差異は、しかし、メディアはスルーしますよね。それはそうです。生徒の枚面的な成長に興味があるのではなく、外から見えて新しい情報であればよいのですから。しかし、教育とは、日常の持続可能な活動なのです。そのようなクオリティを追跡することはメディアはないですよね。なぜなら、クオリティは主観的なものですから、事実として記事にすることはとっても難しいからですね。私はメディアを批判しているのではありません。クオリティについては保護者自身が見るレンスを持った方が良いのではないかと提案しているだけです。

★探究と言っても、上の図のように、教科との関係で5つのパターンがあります。いろいろな学校(オンライン授業以降、各学校が動画PRをしていますから)を見て、私が独断と偏見で分類しました。したがって、そうではないといわれてもよいのです。私がいいたいのは、保護者なりにこういう分析レンズを磨いてはということです。見方は人によって違います。ですから、最近そのような進取の気性に富んだ保護者と対話をしながらレンズの厚みを増し、ますます磨き上げているわけですが、みなさんもそうされるといいのではと思うのです。

★さて、しかし、現状で乖離型の探究と教科の関係が多いでしょうね。探究は探究、教科は教科となって、教師は探究と教科の関係を深く考える必要性を感じてない場合が多いでしょう。

★ところが、教科の中でアクティブラーニングだとかPBL授業を行っている学校は、まだ交わりはないのですが、どこかで結合するのではという思いは響き合っている併存型というのもあります。

★日野田校長は、この段階で外部ネットワークを結び付けます。日本の教員免許取得や教育学部では、まだここらへんの学習理論や教育学を実装するプラクシスはやっていないので、アプリやコーチ、ファシリテーターは外部ネットワークを使った方がはやいし、その間に教師は学んでいきます。

★こうなってくると、探究も、授業もPBL型になりますから、必然的に教科横断型の学内雰囲気がでてきます。

★これで、かなりよいでしょう。世界大学ランキング300位くらいの海外大学はこの学びの経験はテコになります。

★しかし、それ以上の海外大学となると、IB型の探究と授業結合が必要です。ここになると、外部ネットワークはなかなかつなぎにくいものです。国際バカロレアのことを熟知し、ワークショップまで行えるコーチやファシリテーターはなかなかいません。IB機構の認定したIBコーディネーターと学内の先生方が研修を内製化していくことになります。

★そして、世界制作型になるとリベラルアーツ型探究とPBL型教科は包摂関係になり、完全な一体型です。ここになると、学校の教師自体が全員クリエイティブリーダーで理想的な学校となります。

★彼らは、他の学校に研修講師と招かれて、外部ネットワークを取り込むのではなく、外部ネットワークとして頼みにされる高い価値のある教師集団になっているのです。

★このような最高のチームが運営している学校は、世界でもあまりないでしょう。個人として優秀な教師はだいぶでてきました。しかし、最高のチームを共創しているメンバーの一人としての優秀な教師こそがこれからは必要です。もちろん、これから生まれてくる兆しはあるのですね。

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PBLの再定義の時代(01)自由制限の限界を超える時代到来。忍び寄るパターナリズム。ゆえに学力のみならず人生を生み出す拠点へ。

★今回のパンデミックは、世界同時的にあらゆる自由思想を覆してきました。リバタリアンや功利主義の他者に危害を加えない限りすべて自由という危害原理は、あっさり打ち砕かれました。他者に危害を加えているかもしれないし加えていないかもしれない。感染しているかどうかわからない中づり状態では身動きがつかなかったのです。自らの身体を守るには自粛という制限を受け入れざるを得なったのです。

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★コンサバの人びとも、エゴむき出しになり法の支配の中でマスクを着けない自由を叫べども、自ら感染し、マスクを装着して自粛せざるを得ないシーンを世界に見せつけました。

★リベラリズムも、福祉のために救済経済を発動すれども、それも限定的であることがわかり、経済的に自由を守る手立てがとれなくつつある焦燥感が膨らんでいます。

★コミュニタリアニズムは、自粛という行動をとるのはなんなくできるのですが、その基準である最高善を果たせるのかどうかは、パンデミックの科学的解明がまだできていないため、その信頼性・正当性・妥当性はわからないままなのです。

★今回のパンデミックの科学的早期解明への期待はされているのですが、いまだ明らかでないため、私たちの行動の自由を保ちながら最低限の規制を法制化することもできず、既成の倫理基準も定まらないまま、トリアージに突入していたり、自粛警察が暴走したり、自律神経の機能が破綻したり、精神的に困窮したり、経済困窮に陥いったり・・・・。

★世界規模で、従来の自由な判断、自由な行動を自ら行うことができないでいるわけです。

★そして、この自由な行動をとれない理由が、自己責任なのか、他者からのあるいは社会からのサポートなのか、干渉によるものなのかわからないという問題が浮上してきています。

★つまり、守らなければという思いが過干渉になる抑圧というパターナリズムがニューノーマルな生活空間に静かに広まっているのです。

★法律も倫理もここをチェックできないのです。個人の判断で自由に本当に自粛したりマスクを装着しているかどうかは実は正解がいまのところないのです。

★このまま放置しておくと、気づいたときには不自由な社会が出来上がるのがニューノーマルとなりかねないのです。

★これを回避するには、私たちはリフレクション対話を繰り返し、クリティカルシンキングを共に発動していく必要があります。特に、18歳成人未満(現状は20歳未満)である幼児・児童・生徒は、リーガルマインドのトレーニングも倫理判断のトレーニングもうけていません。道徳を押し付けられるパターナリズムはおこなわれているかもしれません。これはこれで問題ですが、これとて問題だと判断するリーガルマインドや倫理判断を養うにはどうしたらよいのでしょう。そのトレーニングの場は、リフレクションあふれるPBLが拠点となるでしょう。

★もちろん、大人も、マイクロ・プロジェクトをそれぞれ生んで、対話とリフレクションを展開していくことは重要です。

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2020年9月 8日 (火)

2021年変わる中学入試(08)BCオフショア認定校の文杉のグローバル教育の日本の教育への影響

首都圏模試の「おうちdeオンライン説明会・相談会」のサイトを閲覧していて、文化学園大学杉並(以降「文杉」)のDDコースにつながる中高一貫校教育の完成をみることができました。改めて感動しました。というのも、DDコースというのは、高校のコースで、カナダのブリティッシュコロンビア州が認定しているコースです。それだけでも、すごいのですが、その教育が中学にまで広がり、独自のBC州DDプレップ教育が完成していたからです。

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カナダのBC州のオフショア認定校(わかりやすい動画を文杉は提供しています。ぜひご覧ください。)とは、国際バカロレア認定校と同レベルの国際的な進学準備教育を実践しています。したがって、文杉のDDコースの授業を見ると驚きのハイレベルなのです。もちろん、すべての教科が英語です(こちらの様子も動画で見ることができます)。

★文杉のDDコースの生徒は、定期的にBC州のテストを受けます。イギリスの入試制度に似ていますね。それはともかく、世界で日本人の勤勉さは定評がありますが、ここでも文杉生はそれを証明し賞賛されています。つまり、圧倒的に優秀な成績を収めるのです。

★偏差値ランキングが、いかにドメスティックで、グローバルでないか示唆していますね。BC州では、文杉生は世界大学ランキング100位の大学に進学する資格を持っていることを認めているわけですね。学費の問題がありますから、海外大学に進むかどうかは、そう簡単ではありませんが、国内の大学でも見事な実績を残しています。

★そんなDDコースに入るには、英語がなんとかならないと難しいのですが、そこを文杉の中学ではきっちり英語準備教育のコースを構築してききました。それがいよいよ完成したようです。そのシステムについて、国際部長の窪田先生が動画できっちり説明しています。ぜひご覧ください。ちなみに、窪田先生は、BC州認定教師です。カナダのBC州の学校で授業ができるほどの方なのです。

★さて、何より凄いのは、DDコースに進むには、英語だけではなく、学際知やルーブリックの活用が必要ですが、今では、それが他のコースにも浸透しているのです。IBの学校は、やはりディプロマに進めるのは一握りです。しかし、進めなくてもIBのエッセンスを学べる環境を創っているところが多いですね。

★文杉もそのような教育デザインになり、全体的にクオリティの高い教育に進化しているのです。このことは、文科省が今後の新たな教育のモデル校としても認定していますから、文杉の先生方のモチベーションも格別です。

★それにしても、染谷昌亮先生によると(入試広報部長補佐・理科主任)、「今年度中学1年126名中、36名が英語アドバンストクラス(英検2級レベル)所属。DDコースの今後が、本校教員としても楽しみで仕方ありません」ということです。

★このことは何を意味しているかわかりますか?中学段階で、上智大学級の公募推薦を受験する資格を36名も持っているというコトなのです。いかに文杉の教育がハイクオリティかおわかりいただけたと思います。

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ノートルダム女学院(08)「プレップ」の大切な意味の問い返しはじまる。日本で最も最先端の教育発想。

★ノートルダム女学院の高校のコースは3つあります。プレップ総合コース、グローバル英語コース、STE@M探究コースがそれです。ところが、入試市場では、「グローバル英語コースやSTE@M探究コースは、コースをイメージしやすいのに、プレップはしにくい」ともいわれているらしいのです。そこで、同校サイトによると、プレップ総合コースの高校生有志が、フューチャープロジェクトで学んだ「サウンドロゴ」ブランディング手法で、アピールしようということになったようです。

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★米国では、エスタブリッシュな私立学校のことをプレップスクールと呼んでいます。ハーバード大学やスタンフォード大学などに進学する準備教育を行うというダイレクトな意味が込められています。

★ただし、この進学準備は、日本の一般入試のように、知識重視の試験問題対策を行うのではありません。リベラルアーツをベースに自分とは何か、自分は社会のために何ができるのか、だからこの大学で学びたいのだということを明らかにしていく教育がプレップスクールの教育のコンセプトです。

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youtubeで聞けます。

★しかしながら、リベラルアーツ?と受験市場ではなりますよね。そんな2000年以上も前の教育なんて古いでしょうということになります。政治経済的にはグローバルな日本も、教育はまだまだドメスティックですから、グローバル教育の基礎であり伝統的革新教育であるリベラルアーツという学際知や言語思考、数学思考、アート思考、フィジカル思考を育成する教育のイメージがつかないわけです。

★本来最高の人生のつくり方を身につけることができるリベラルアーツなのですが、自己肯定感を低くしてしまうネガティブマインドや出る杭は打ち砕く日本の教育の呪術的な側面に気づかないので、そんなすてきな教育があることに気づかないのです。

★しかし、ノートルダム女学院は、同校の母体であるノートルダム教育修道女会の創設者マリアテレジア・ゲルハルディンガーのリベラルアーツ的素養を継承していますから、むしろリベラルアーツは日常なのです。弦楽演奏が有名なのはそういうわけです。保健体育科の先生方がライフデザインの授業をするのもそういうわけです。

★そして、何よりそのことに一番気づいているのは、プレップ総合コースの生徒のみなさんです。それは、今回作成されたプレップ総合コースのサウンドロゴの生徒の皆さんによる次の作詞を読めば了解できるでしょう。

なりたい自分を探そうよ

プレップのみんなと過ごす3年間

自由にいろいろやってみて

自分の答えを見つけだす

探すことって楽じゃないけど楽しい毎日

きっと卒業したら大好きだったって気付くんだ

ノートルダム プレップ総合コース 

★これは「プレップ」の意味や「リベラルアーツ」の意味を端的に表現しています。そして同時にノートルダム女学院のマインドの土台でもありましょう。

★学校の魅力を一番知っているのは、やはり生徒の皆さんだということでしょう。

★日本の教育改革は遅々として進まないと言われていますが、今年もポストコロナ時代の新ての総合型選抜(AO入試)開発が加速しています。この入試制度はハーバード大学やスタンフォード大学に進学する準備、つまりプレップスクールのような入試なのです。

★残念ながら、受験市場は、一般入試を対象にしている塾が大勢なので、まだここの情報がきちんと理解されていないようです。

★真理は真理なのです。いずれノートルダム女学院のプレップ総合コースの教育における重要性が理解される時がくるでしょう。

★しかし、このような逆境の時代を、生徒の皆さんはテコにして最高の人生のつくり方を実装していますね。その象徴が、今回のサウンドロゴ制作でありましょう。そして、先生方も大いに応援しています。その応援は、行事や特別プログラムだけではなく、普段の授業でも行われています。

★PBL授業がそれです。PBLとは、ゲルハルディンガーがそうだったように、逆境を逆手にとって、世界を変える叡智と徳を身につけることです。自分にとってみんなにとって最高の人生を共創するプロジェクトなのです。

★今後、先生方のそのプロジェクトの拠点であるPBL授業についてご紹介していこうと思います。

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2020年9月 7日 (月)

2021年変わる中学入試(07)啓明学園 グローバル×サイエンス×ICT

首都圏模試の「おうちdeオンライン説明会・相談会」のサイトを閲覧していて、啓明学園の動画におおっ!と思いました。啓明学園と言えば、国際生(帰国生)30%で、国際私立学校(IBレベルの)コミュニティであるラウンドスクエアに加盟しているということがすぐに思い浮かびます。

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★ところが、今年就任した下條校長のスピーチでは、さらに脳科学ベースの生きる力を育てる教育を実践していくということです。下條先生は、公立学校や私立学校などの校長を歴任してきているし、全国情報教育研究会会長でもあります。サイエンスやICT教育の切り口で啓明学園の新たな教育を構築しようということでしょう。

★そういえば、同校中学校は昨年から算数特待入試を実施し盛り上がっています。

★グローバル教育で長年実績のある北原先生が、今年校長から理事長に就任。これで、下條校長と二人三脚で、グローバルとサイエンスとICTの総合的な教育を新たなに行っていこうということなのでしょう。

★今回のパンデミックで、予測不能な時代では、総合力が生きる力を支えます。啓明学園の新たな挑戦に期待がかかります。

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2021年変わる中学入試(06)京華中学のオンライン説明会の表現力 5Gで男子校を語る。

★首都圏模試の「おうちdeオンライン説明会・相談会」のサイトを閲覧していると、なるほどっとか、これいいねとか感じる動画に出会います。男子校の京華中もその一つです。5月に作成されたものなので、その時世間が注目していたオンライン授業についてまずはきっちり発信していました。

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★オンディマンド(反転学習)×プラットフォームで学習課題のやりとり(グーグルクラスルームのフル活用)×双方向型対面オンライン授業というオンライン授業フルセットで行っていることがよくわかります。私立学校はなんらかのオンライン授業を行っていますが、プラットフォーム経由で課題配信だけというのが首都圏私立中学では70%くらいでしょう。

★オンディマンド×プラットフォーム配信とさらにそれにテレビ会議システムを加えたオンライン授業というのは30%くらいです。日本全体となると、ここまでフルセットで実施するというのはとてつもなく少ないと思います。

★その意味では同校は、果敢にチャレンジしたということですね。

★もう1つ興味深かったのは、男子校の特徴を長々と述べるのではなく、同校の教育の特徴を5つの側面(5G:Gentleman・Generate・Genuine・Global・Grit)から説明し、そのそれぞれの中に男子校の特徴をコンパクト織り込んでいました。

★たとえば、Genuineという本質に迫る教育を行っている。自分の考えを開放的な雰囲気の中で述べることにより、失敗しても恥ずかしくない環境が必要だと。物事の本質に迫っていくには、この開放的な雰囲気が大事だけれど、それは思春期において女子の目を気にしなくてよいからできるという男子校のメリットがあると。

★男子校の特徴としてよく言われることなのですが、この京華の5Gというコンセプトの中に男子校の一般論を織り込むことで、同校ならではの男子校の特徴として受けとめられるわけです。広報の表現の創意工夫が際立つ局面です。

★こういう抽象と具体のカップリング表現によって、いろいろな要素がバラバラに語られ、盛沢山の説明になるのを回避しています。それによって、聴いている方はズシンと塊感を受けとめるのです。

★またGRITを持ち出しています。本来的なGRITの考え方というより、根性とか、逞しい身体とか、確かな学力を統合している教育があることが伝わってきます。男子校らしい根性も、どこかソフィストケートされた感じだし、新しいという感覚、革新的という雰囲気が伝わってきます。

★授業がPBLやアクティブラーニングになっているかは、前面にはでてきませんでした。それはまだ教師によるのであり、かえつ有明や和洋九段女子、三田国際のように全面的に学校で取り組むということではないのでしょう。しかし、GLOBALという切り口では、当然そのような授業展開が映し出されています。

★かくして、合理的で熱い説明に、息子を持っている多くの保護者が共感するはずです。

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2020年9月 6日 (日)

工学院インパクト(11)工学院のPBL授業は、最高の人生のつくり方を学ぶ場!

★今回の片瀬先生の家庭科のPBL授業の多次元モニタリング分析の対話を通して、多くの気づきを共有できましたが、私自身が驚愕したのは、生徒1人ひとりが自分の「最高の人生のつくり方」を体験し学ぶ場だったという気づきでした。

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★「最高の人生のつくり方」を生徒が体得するには、才能を見出すこととそれを実際に活かす努力が必要ですが、それだけでは自分の才能やアイデアを社会実現できません。つまり画竜点睛を欠くわけです。詰めが甘いということです。ところが、工学院の家庭科と保健体育は、どちらも実習や実技というプラクティスをベースにしますから、スキルを磨きあげるという活動があるわけです。

★才能―努力―スキル―実現というプロセスがPBL授業の中で体験できるのです。なるほど、これは田中歩先生(教務主任)がいつも語っているGRITマインドです。

★この点に関しての対話も盛り上がったわけですが、そのプラクシスの生徒の非認知能力を鍛えていくストーリーは、基本的にはUカーブでした。

Grit2

★柴谷先生(保健体育科)が、浅い問い→深い問い→自己への問いというUカーブの流れで授業展開しているという話をしているのを聞いて、上のような図をイメージしました。そして、さらに柳田先生(社会科)と臼井先生(国語)の話を付け加えると次のような図にイメージが拡大しました。

Grit3

★常に最後までやり遂げたとき、実は次がまたあるという授業なのです。これは、田中歩先生の授業の展開ですね。達成したと思ったら、少しハードルを上げるというか、さらに深い問いを投げかける。あるいは生徒が自分で自分に投げかける。したがって、Uカーブのボトムの点だけをつなぐとポジティブな軌跡を描くようにデザインされているのです。紆余曲折在るけれど、常にポジティブな精神を保てる秘密がここにあるわけです。

★こうした最高の人生のつくり方を学べるPBL授業をデザインする教師は、ファシリテーターというよりコーチだったということに改めて気づきました。

★もちろん、ファシリテーターのロールもしますが、それだけでは、社会実装にはいきません。実績も成果もでないでしょう。やはりコーチングは重要です。そうでなければ神は細部に宿るということができないのです。神が細部に宿る時、画竜点睛を欠かない人生のデザインができるのです。

★今回対話をした先生方は、ファシリテーターでもありますが、名コーチでもあります。こういうリーダーシップは、「熟慮」「共感」「共創」「語り部」「交渉力」を統合しているすぐれたナチュラルリーダーです。

★メンター田中歩先生の野望は、タイトルリーダーだけではなく、このような最高の人生のつくり方を生徒にエクササイズできるコーチング力あるナチュラルリーダーが生まれてくる機会をファシリテートしているのかもしれません。

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2020年9月 5日 (土)

【緊急ミーティング】聖学院の児浦先生と。多くのマイクロプロジェクト立ち上げが、大きな流れを創る。

★パンデミック下にあって、いろいろな制約が起きています。本日先ほどまで聖学院の児浦先生と緊急ミーティングをしていました。入試のことやら、今後の総合型選抜の話やら、高校新クラスGICのことやら、目の前のことから5年後の2025年問題のことまでどうしようかと。ライオンのようにキツネのように(私の場合はタヌキですが^^;)、制約の中で創造力を発揮するしかないということでした。

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★すでに超高齢者社会ですが、2025年にはいよいよです。医療・介護の問題が前面にでてきますが、今回のパンデミックで、その体制づくりの政策判断の脆弱さが見えたし、労働者不足に対応するICTによるシステムの拡大を抑えるような社会的な動きや官僚の動き。文科省が大学入試はオンライン入試でといえば、2025年問題解決へ一気呵成に教育が進むのに、やらない理由が山ほど。

★そんな制約があっても、そこでくじける21世紀私学人ではないので、ワクワクするような話で盛り上がりました。明治期に活躍した20世紀私学人と戦後私学人とパンデミック後の21世紀私学人はどうやら質感が違うようです。

★ミーティングの途中で、メッセンジャーやメールに複数の学校の先生方からメールがきました。みなそれぞれポジティブなGRITマインドで立ち臨んでいるので、嬉しいですね。

★でも、こういうときっておもしろいのは、あっという間に多様なプロジェクトがあっちこっちにできるのです。大きなダムも針の穴ほどの大きさで決壊します。

★クリエイティブなマイクロプロジェクトがあっちこっちで生まれれば、2025年問題の解決の流れが激流になります。

★Z世代のためにと思うのなら、2025年、Z世代に寄りかかるなということです。介護も税金も労働も、今のままならZ世代は過労死ですよ。それでも、変えない高齢者諸君!いいかげんにしろよと心の叫びです。実は2025年には、私もとっくに高齢者です。ですから自戒を込めて。

★Z世代のみならずパンデミック世代を本当に大事にするのなら今すぐ動きましょうよ。誕生したばかりの目の前の孫をみながらそう思います。マイクロプロジェクト、わたしも3つくらい新たに立ち上げるので、皆さんもどんどんそれぞれにやりましょうよ。それぞれにやるのが肝です。その全体を共創することが新しい共創です。仲間が集まって共創するだけではなく、それぞれが新しい仲間とマイクロプロジェクトを実施し、それが結果的に大きな共創になっている。そんな感じです。

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工学院インパクト(10)私はどんな結婚観を抱いているのか?生命と結婚の人類史。

★民法改正によって、2022年から、140年ぶりに改正された成年の定義が施行されます。18歳成年になるということですね。高校卒業時になるのです。ですから、これからの中高生はその準備をしなくてはなりません。今回の片瀬先生の家庭科のPBL授業やその授業とダイレクトに連動している柴谷先生の保健体育の授業は、そこを見据えているということでした。

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★民法改正によって変わることは、結婚の時期が、女性も男性も18歳からということです。高校卒業同時に女性も男子も成年として家庭を持つことができます。契約やクレジットカードや10年パスポートや多くの点で法的に変わります。今までのような倫理観をベースにする授業だけではなく、社会生活すべてに存在する法律が適用されるわけですから、リーガルマインドも学ぶ時期でもあります。

★しかし、そう言われてもピンとこない部分もあるでしょう。成人するということは即法律的な意味での男女の契約である結婚という話なのだと言っても、頭で分かっても自分事にはなかなかならないのは世の常です。

★そこで、事実としてどのような結婚のスタイルがあるか調べ、その結婚について感じたことや自分の考えを書いてプラットフォームで授業前に送信するという反転学習から入りました。

★このさりげない問いですが、これは慶應義塾大学の法学部のFIT入試(総合型選抜)B方式で出題する問いのスタイルと同じです。リーガルマインドでは、存在から規範が生まれるのか、存在から規範は生まれないのか、存在と規範の関係は重要な法の基礎症ということになっています。

★婚姻は長い間男性と女性が結ばれてきたという事実が存在しているから、それが結婚なんだとするのか。それは時代や社会がそうしてきた要因があり、だから男女でなければならないということではないのだとするのか、そもそも事実とは存在とはを巡って法的紛争は紛糾するのです。

★ですから、まず世界にはどんな婚姻形態が存在しているのか生徒は調べることになったのです。単婚、複婚、異類婚、同類婚、同性婚、おめでた婚、ドラクエ婚、VR婚など、さすがじゃデジタル世代だけのことはあって、様々な婚姻の形態を調べてきました。

★その中から一つを選んで調べていくというような学びを行ったり、日常当たり前のはずの婚姻も、明治の民法と現行の民法を比較スタディをすると違うことがわかります。

★最近のニュースで報道されたタイでもようやくパートナシップ法案が通過したという記事を読んで、国によっても考え方や価値観が違うということも話し合ったようです。

★人口推移表や人類誕生来の世代がどのくらい続いているのかなどデータを読み込みながら、婚姻と子孫の関係も考えたということです。

★その歳、同性婚についてミニデイべーとをするなど、結婚の価値と法律のズレをどうするのかなど視野は広まり深まてちきました。しかし、一方で結婚と誕生があれば、別れもあり死もあります。人間の存在とは、そのすべてに直面します。そこをさけることなく、正面から見つめる授業が片瀬先生の授業だったのです。

★保健体育の授業でも、結婚と妊娠という生命の誕生の議論、同時に中絶などの社会的、文化的、政治的問題を語り合うそうです。しかし、なんといっても女性のケアの問題やハラスメントの問題など身近な法律問題についても対話するそうです。

★ケア、倫理、そして法律。それらを考えるうえで、文化人類学、カルチャラルスタディ、フェミニズム学など多角的なアプローチをする授業が工学院の家庭科と保健体育で行われてきたのです。

★柳田先生が、社会科の授業では、そこを触れたくても、そこまで触れる機会は創れていないけれど、その人として大切なことを自分のこととして考えたり思いを馳せる授業でなくては確かに意味がないと。改めてそこを盛り込んだ授業デザインをしたいと。

★そういうわけで、自らハードルを上げて、次回のPBL多次元モニタリング分析会で自身のPBL授業のプレゼンをするということになりました。

★このモチベーションの高さとそれを誘う仲間たち。恐るべし(汗)。

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工学院インパクト(09)家庭科×保健体育科 人間にとって大切なコトにかかわる自己存在をみつめる 英検や総合型選抜にもつながる

★片瀬先生の家庭科のPBL授業は、「反転授業→講義→ミニディベート→リフレクション→テスト(論述もあり)」という流れになっています。思考コード的には、知識の発見、論理的構築、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングが埋め込まれています。何より、リフレクションは、常に自分だったらどうするという自己存在への気づきを大切にしています。

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★いきなり自己とは何かと問うのではなく、身近なニュースや情報、出来事などから気づきが生まれる反転学習と講義をしてからミニディベートやピア・シンク&シェアを通して掘り下げていきます。するとドキッとしている自分にぶち当たります。このときケアが必要な時もありますが、片瀬先生は信頼関係を創るのにものすごい時間をかけていますから、生徒もそこを乗り越える勇気を持っています。だから、チャレンジするのです。自分ならどうするか?自分が大切にしている価値とは何だったのか?その価値を大切にするならば、自分の言動はこうなるのだと。

★このU型のストーリーは、柴谷先生の保健体育の授業も田中歩先生の英語の授業も同様だし、柳田先生の先生の社会の授業、臼井先生の国語の授業もそのバリエーションではあると。

★実はこのUのストーリーの構造は、物語構造論的には、最も人々が大切にしているシークエンスです。そして、現実はそうでないからこそ好まれるのでしょう。人気のスヌーピーなどは、小学生と話していると、⋂カーブなんだけど、おもしろい、いったいなぜだろうともなりますが。

★ともあれ、この授業のストリー展開、子供たちはどーんと自分や仲間との世界に没入していきます。このときの興味と関心の持ち方は、反転学習のときのものとは違うのではないかというZoom対話にもなりました。

★そして、授業と物語のU展開の大きな違いは、授業は生徒自身がそのUカーブを生きるのですが、物語はあくまで読者です。工学院のPBLは、自分とは何かを、家庭科や保険の授業で身近な社会で起きている問題を自分が引き受けて考えることによって、物語を眺めているだけではなく、その物語に実際にダイブする授業です。家庭科と保健体育科のPBL授業は、自分とは何か?人間にとって大切なものは何か?その大切なものは引き受けるかどうか?など実際的な地平で哲学する授業だったのです。

★それは、柳田先生の社会科の授業もそうです。ただ歴史的事実を並べ、その背景を調べ、歴史の物語を客観的に眺めているわけではないというのです。もし自分が吉田茂だったらそのとき自分はどうするというような主観も大切にしていると。臼井先生の国語の授業もそうです。現代文で学ぶ小説や論説文は、心情の変化や文章の論理構造を分析して終わりではなく、社会を見る目、自分を見る目を実装します。

★田中歩先生も、生徒たちがC1(英検1級レベル)を目指すプロセスで、2級、準1級とクリアしていくけれど、そのレベルでは、科学や政治、経済、心理学など様々な社会課題についてスピーチしたりエッセイライティングを創っていくが、それには、結局片瀬先生や柴谷先生のようなPBL授業を行う必要があるし、身近な社会課題はニュースに関心をもつ、つまり他者に興味と関心を持つということを生徒と大切にしていると。

★それはまた、自分とは何かをプレゼンする総合型選抜の膨大な書類や志望理由書、課題に対応する力にもつながると。

★マザー・テレサが愛の反対語は無関心であると語ったのは有名ですが、工学院の先生方が興味と関心を生徒が抱けるようになるPBL授業をデザインしようとしているのは、無関心の反対語である愛に満ちているからということだと気づきました。

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2020年9月 4日 (金)

工学院インパクト(08)興味関心を生み出すパターンランゲージを創るプロジェクトが立ち上がる

★前回の柴谷先生(保健体育科)のPBL授業の多次元モニタリング分析をZoom対話を通してやっていくうちに、もはや教師だけではなく生徒も自らPBLを普段の学びのベースにする広がりが見えてきました。

★そのとき、片瀬先生(家庭科)が生徒が自らPBLをデザインしていくには、興味と関心を持っている必要があるが、どんな対象や出来事、現象、情報などに対しても興味と関心をいだけるとは限らない。みんなはどうしているかという根源的な問いが投げかけられました。いろいろ話した結果それぞれにアプローチがあることに気づきました。

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★そこで、次回は片瀬先生が、生徒が興味と関心を抱いて授業に入り込んでくるPBL授業をデザインし、実践してきますと。というわけで、今回は片瀬先生の家庭科のPBL授業の多次元分析を仲間の先生方とZoom対話しました。

★「結婚」と社会の関係を、人類誕生の歴史からひもといたり、現代の社会問題に結び付けたり、海外と比較スタディをしたり、そしてなんといっても自分という人間存在の価値意識にまで及ぶ壮大な家庭科文化人類学の様相を呈していました。

★また、保健体育も結婚と妊娠は学習指導要領の範囲でもあり、ちょうど同時並行的にPBL授業を行っていたたために、片瀬先生と柴谷先生は相乗効果が生まれるように、スクランブルカリキュラムになるように組んだということです。先生方のこのような授業デザインのバックヤードの協働活動があること自体、間接的にですが、生徒が興味と関心を抱く泉を創っているということでしょう。

★興味と関心を生み出すには、片瀬先生は授業デザインには、ストーリーが大事だと。すると、いっせいに、国語科の臼井先生も、社会科の柳田先生も、柴谷先生も、この会のメンターでもある田中歩先生(教務主任・英語科)も、大いに同意とそれぞれのシークエンスを語り始めました。

★すると授業という非日常に入る前と後があるUのカタチをしたシークエンスが多いということがわかりました。⤴型のシークエンスは柳田先生、といってもUの字を斜めにした感じですが。臼井先生はUを螺旋型で経過していく複雑系でした。

★そして、このシークエンスの各ステージごとに興味と関心の質感が違うのだと。みんなで対話しているうちに、なんとパターン化できるのではないかと。

★というわけで、興味と関心を生むパターンをパターンランゲージ化しようということになりました。今までの多次元モニタリング分析は、多くの専門家の智慧をパターンランゲージ化したもの、アイコン化したもの、座標軸化したものなどを活用しながら多次元分析をしてきました。

★今度は、自分たちでもモニタリングの鏡を創ろうということに発展したのです。専門家に学びながら自分たちも創意工夫していく、すなわちユーザーからクリエーターになっていく工学院の先生方の姿は、生徒が自らPBLをデザインしていくチャレンジングな姿に重なります。

★そして、この姿に学びそのもののおもしろさを感じる生徒もでてくるでしょう。(つづく)

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2021年変わる中学入試(05)パンデミック入試の本質

★2021年の東京の私立中学の入試において、オンライン入試は自粛ということになりました。それだけ、オンライン入試をやろうとする私立中学が多かったということでもあります。東京私立中高協会の役員の方々が経営する学校も、オンライン授業やオンライン説明会を効果的に実施しています。それゆえ、あえて自粛という判断をしたのは熟慮の末ですね。

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★しかしながら、本当に万が一の際には、ダボス会議のようにデジタル入試(オンライン入試より広義)やSFC方式にスムーズに移行できる準備もしようというのが背景にあります。リアルな空間で、ニューノーマル入試、空間越境入試、時間越境入試まで八方手を尽くすのだから、世の人々が納得してできる戦略戦術を考案したのです。

★そうはいっても、実はすでにパンデミック入試を運営しているパンデミック広報活動が始まっているのです。今までは、入試当日が盛り上がっている部分が光があたっていたのですが、パンデミック広報活動は、現在進行形のすべてのプロセスを見える化しています。

★今までのように、学校対不特定多数の広報活動ではなく、学校対個人という広報活動に変化したのです。入試問題も大切ですが、受験生1人ひとりと対応できる共感的な感動的なコミュニケーション能力が重要になってきたのです。

★今までは、そのプロセスの中心は塾での学習でした。学校と受験生が共有するのは入試問題の結果でした。ところが、そもそも生徒募集とは、共に生徒の人生や未来を創っていけるか契約をどう結んでいくかというプロセスです。その交渉がオンライン説明会でダイレクトにできるようになったのです。

★ですから、オンライン入試を行うかどうかより、こういう生徒がきてくれるといいなあとここで学びたいというマッチング契約ができればよいのです。その工程に入試問題があるだけです。ですから、いわゆる入試をしなくてもよいのです。こんなことをいうと、従来型の塾が怒り出すし、学校も塾の市場もターゲットになっていますから、そこが衰退するのは好ましくないわけです。

★学校も塾も共に変わっていく道を見出す戦略の方が、賢い広報戦略でしょう。

★そうはいっても、オンライン授業とオンライン説明会は、そのマッチングの本質を明らかにしてしまいました。それは、オンライン説明会は、たとえ多数がウェビナーとして参加したとしても、個人に語りかけているように聞こえるし見えるので、そこを巧みなパフォーマンスを行ったところは、がっちりファン層を握ります。

★しかも、パフォーマンスといってもエンターテイメントではありません。もちろん、その要素を取り入れている学校も増えていますが、大事なことは、

1)熟慮:参加者は、その学校の教師が深い思考力を持っているか

2)共創:競争よりも共創が際立つ教育活動が多いか

3)共感:共感的コミュニケーションが学内にはあるか

4)決断:経営陣は公平な判断力や断固たる意思決定ができるか

5)雄弁:教師も生徒も自分自分の気持ちや考えを誠実に効果的に雄弁にスピーチできるか

★といった5つの側面です。

★オンライン説明会や予約限定ニューノーマル説明会では、この5つが可視化されてしまうのです。この5つの要素は、慶應義塾大学の田村次朗教授のハーバード流儀の交渉学におけるリーダーシップの5つの要素に重なります。

★予測不能な未来を切り開いて生きていくのには、役職リーダーではなく、人間として大切な価値を共に掘り起こしシェアし、実現していくスキルを実装しているナチュラルリーダーでなければならないでしょう。世界であふれるほどの問題を解決するには、信頼に値する人間同士が結集する必要があります。そのような信頼に値する人間は5つの要素を統合したリーダーシップを有しています。

★そのようなリーダーシップをもった学校に出会ったら、何がなんでもそこで学びたいでしょう。そして、学校もその強い意志と5つの要素の素養があれば、入学の契約を結びたいでしょう。パンデミック入試の本質はそこにあります。新タイプ入試の登場は、その本質を背景に抱えていたからでしょう。それが今明らかになったのです。

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2021年変わる中学入試(04)パンデミック入試に影響を与える文科省

★昨日9月4日、一般財団法人東京私立中学高等学校協会が、2021年の中学入試・高校入試でオンライン入試自粛することを決定したことに影響を与えているのは、文科省の公表した「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(2020.9.3 Ver.4)」であることは推測に難くありません。

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★このマニュアルは、すでに公表されている「「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」(令和2年6月5日事務次官通知)」をベースに最新のデータなどを追加したもので、ベースは変わっていませんから、中身の紹介をすることはしません。

★ただデータとして、児童生徒の感染者数が増加はしているけれど、右肩下がりになっているグラフや感染経路が家庭というのが多い現状とか死亡率が他の世代に比べて少ないデータとかが公開されていて、それを見る限り、ガイドラインに沿って、3密を避け、マスク着用、消毒、検温などの徹底をすることが優先されると判断せざるを得ないというコトもあります。

★そうはいっても、感染リスクがゼロであるわけではありません。本来PCR検査を諸外国のように広範にできるようにすればよいわけですが、日本はそうしない事情があるわけです。

★その事情に正面からぶつかるようなオンライン入試を公然とするわけにもいかないでしょう。

★もちろん、文科省に私立学校が従う必要はないわけですが、あまり無視すると、助成金を絞られるというパワーコントロールの逆種があります。このパンデミック下で、それに応戦するのは戦略・戦術的には賢いやり方ではありません。

★それで、いざというときには、しかたがないという道を残したのです。つまり、オンライン入試あるいはSFC方式で乗り切れる道を残したのでしょう。

★ダボス会議のように、来春1月の定期総会を9月に延期し、1月はデジタル上でつまりオンライン上で「ザ・グレート・リセット」について「ダボス・ダイアローグ」をする仕掛けを創るという動きは、私立学校も本来できるわけですが、ダボス会議の背景にいるGAFAのように、国家や中央銀行をスルーして新たな貨幣を活用できる巨大なしかもボーダレスな会員数を保有しているIT産業とはまた違います。攻防戦には巨額の資金がいるのです。かれらは、それとて投資だぐらいにしか考えていないでしょう。

★その点は、私立学校は資金繰りはたいへんな日々なのです。経営か感染完全予防か?しかし、この二者択一の危うさを回避する高等戦術も大切です。

★それゆえ、限られた資源で最大の智慧を生み出す方法を編み出しているのです。そして、それができる背景にはパンデミック入試の本質を今回のオンライン授業やオンライン説明会の経験を通して深く理解したからでした。なんて逆説的な!(つづく)

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2021年変わる中学入試(03)パンデミック入試へ

★昨日、森上教育研究所代表の森上氏は、SNSで、「東京私立中高協会、オンライン入試自粛を申し合わせ」と速報を流しました。原則、東京都の私立学校はオンライン入試を行わないと。ただし、万一感染拡大する状況になれば2月1日からの解禁日を先送りし、全体的に日程をずらすということらしいですね。また、新型コロナウィルス感染防止のためにキャンパス内での試験会場が密になる場合、校外施設で実施することは可だということです。

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★オンライン入試の公平性・信頼性・正当性・妥当性の見通しがたたない現状で、オンライン入試はいったん見送り、最大限新型コロナウィルス感染防止策をリアルな空間で努力してからということでしょう。

★大所高所から比較考慮した結果出された判断であり決断だったと思いますが、オンライン入試をいったん保留しても、結局は従来の試験を行わないという点こそが重要なんですね。オンライン入試のデメリットとメリットを考えたうえで、オンライン入試でのメリットのエッセンスをリアルな入試でまずはやろうとしているのですから、もうこれは「パンデミック入試」と呼ぶしかないでしょう。

★どういうことか?まずはデメリットですが、国内外の「オンライン授業」はメディアの多くがそのデメリットや評判の悪さを報道し続けています。実際には、ミネルバ大学や秋田の国際教養大学のように、効果的にオンライン授業を実施しているわけですが、その点を取り上げる報道が少ないわけです。

★というのも、オンライン授業や入試は、学校と受験生の双方のインフラ環境やネットの環境の調整が意外と難しいのとデバイスによっては受験生はいろいろなことができてしまいます。そもそもオンライン授業では、画面上に資料を映し出しながら、やりとりしているわけです。それがオンライン入試でも行えるわけです。もちろん、それを監視することは可能ですが、そんなことはコストがかかりすぎます。現状では現実的ではありませんね。

★しかし、今でも学校再開になり、検温、アルコール消毒、マスク、ソーシャルディスタンス、アクリル板設置などのリアルな場での感染防止策でなんとかなっているのですから、このニューノーマルなリアルな空間を使った方が入試の公平性、信頼性、妥当性、正当性などが担保されるだろうと。

★そのとき、校外の施設を活用していよいのだと。すると、ここに意外にも、いや想定内なのかもしれませんが、校外入試が広がる可能性があるわけです。オンラインは使わないけれど、キャンパスから飛び出るわけですから、ちゃんと空間越境入試になるわけです。

★また、万が一のときには、2月1日から入試を行うという紳士協定は、特例として解除され、1月にうってでてよいと。これも、オンライン入試はしないけれど時間越境入試になるわけです。

★このように、オンライン入試はしないけれど、「ニューノーマル入試」であり「空間越境入試」であり「時間越境入試」です。リアルな空間でぎりぎり、オンライン入試が得意とするメリットのところは活用するわけです。「パンデミック入試」と私が呼ぶ理由はまずはこの3点ですね。

★しかしながら、「パンデミック入試」の凄さは、もっと本質的な様相を既に呈しているのです。(つづく)

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2020年9月 3日 (木)

八雲サードインパクト(04) 個別最適化システム「YES」の意味。

★前回、八雲学園が、個々の生徒の能力に合わせて個別に対応できる総合的な同校独自のeラーニングシステム『YES』(Yakumo English:Gateway to Success)を導入しことを紹介しました。この個別最適化システムは、今トレンドのICTで知識をサポートすればよいという考え方とはだいぶ違います。しかも英語なのに、教科横断的な力も身につけることができるのです。

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★現状のICTによる個別最適化システムの発想は、知識の多寡は生徒1人ひとりのレベルに合わせて合理的に定着させ、思考力や教科横断的な学際知は、PBLなどで学校の授業でやるという話が主流です。もし、本当に思考力や学際知を身につけることができる授業が展開できるのなら、なかなかよい発想です。

★しかし、現状は知識の過不足状態をなくしスタートを合わせ、さらなる知識の体系を教えようとする授業が主流です。これとて、知識が不足している生徒がいると、授業が進まないわけですから、そこを是正できるでしょう。また、知識が不足しているためについてこれない生徒を少しでもなくそうという創意工夫でしょうから、ICTの活用は必要です。

★ところが、八雲学園のYESはその両方を含みつつ、さらに高次思考や学際知まで身につけることができるシステムなのです。というのもCEFRでC1レベル(英検1級)をみんなが取得できる機会を設定しているからなのです。

★もちろん、全員が英検1級の試験にパスするかどうかはわかりませんが、少なくとも、徐々にそのレベルの学びをみんながするわけです。ラウンドスクエアに加盟して、国際会議に八雲生も参加するようになり、B2レベルの英語でもなかなか難しいという体験をしています。

★英語で会話したり、自分の主張を3分間スピーチで表現することはできても、つまり英検で2級や準1級をとったとしても、ディスカッションができないのです。国際会議はチームごとに会話もしますが、それはだんだんディスカッションに移行します。その段階になると、なかなか参加できなくなるのです。

★そのとき、八雲生は気づきした。世界課題について、世界の歴史について、世界の文化について、幅広い教養と高次思考がまだまだということではないかと。もちろん、この領域は英検2級からは学び始めます。準1級だとかなり進展します。日本の大学入試だと2級、準1級で十分です。

★しかし、世界の公用語英語としては、まだまだなのです。そのことを国際会議から帰国した生徒は実感し、帰国後在校生たちと国際会議の様子と英語のレベルを上げることが必要なんだという気持ちを分かち合うのです。

★今まで、準2級には全員が合格し、2級レベルが多くなればよいと学校の先生方も思っていたし、日本の大学入試を考えればそれ以上をあまり望まなくて十分だったので、生徒も同じような想いでいたでしょう。

★ところが、国際会議に行って、英語でディスカッションしなくては、世界解題を共に解決するワールドプロジェクトに参加することができないと生徒自身が実感してしまったのです。そして、一部の英語のできる生徒が学べばよいと思っていた他の生徒も、ラウンドスクエア加盟校である世界の学校から毎月のように留学生がやってくるようになり、単なる会話だけでは自分も満足しないし、ウェルカムの精神からいって、留学生が満足しないのは、在校生は最もいやがることなのです。すると、できるだけ高いレベルの英語力を身につけようとします。

★そして、高い英語力を学ぶには時間があればいつでもどこでも英語を学べる環境があればよいのです。それが「YES」システムです。しかも、エッセイライティングは、日ごろからワールドニュースにアンテナを張り巡らしている必要があります。時事問題だけではなく、世界のエンターテイメントなどにも興味と関心を持っていないとディスカッションはワクワクしません。社会科や理科の授業に臨む姿勢は当然変わりました。

★また、日本語を学びに来る留学生も多いのですが、彼らは日本人以上に日本の文化を学んでいます。源氏物語について話したいとか、村上春樹について話そうよ、アニメ文化について語り合おうよ等々となるわけです。

★もはや、教科横断的な学際知も身につけなければなりません。英語を学びながら、世界と日本の両方に視野を広げます。これがC1レベルの学びです。CEFRテストは本来存在していなくて、それぞれの民間英語資格会社が換算しているだけです。ですから、C1レベルの学びの環境を創ることと資格試験をとるということは、必ずしも一致する必要はないのです。

★ただ、海外の大学を考えると、資格試験は必要で、やはりB2以上の資格を証明しなくてはなりません。日本の大学は一部を除いてだいたい英検2級で十分ですから、この環境の中で以前よりも八雲生は確実に英検2級取得者の数を増やすでしょう。おそらく近藤隆平先生は、2級はいずれ全員が到達するだろうと考えています。

★特に、八雲学園はチューター制度が定着していますから、生徒1人ひとりの英語の学びの状況がポートフォリオとして共有できるので、フィードバックやアドバイスもできます。ICTによる個別最適化といっても、必ずチュータがサポートしてくれるのです。

★かくして「YES」は、世界でディスカッションしながら活躍できる英語力と教養や学際知、高次思考を身につけられるシステムなのです。それを生徒1人ひとりの状況に合わせて進めて行けるのですから、極めて画期的といえるでしょう。

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八雲サードインパクト(03)「ラウンドスクエア」と「YES」 生徒全員がC1英語への環境 その重要な意味。

★前回ご紹介した読売新聞の記事「独自のeラーニングシステムで生徒の学習意欲向上と海外大志向を後押し…八雲学園」にはこうあります。

「グローバル教育に力を入れる同校は、卒業時までに、語学力の国際標準規格「CEFR」のC1レベル(熟達した言語使用者)に到達することを目標に、生徒の英語力を磨いてきた。

 そのために、レシテーションコンテストや「英語祭」などの学内行事を始め、アメリカのサンタバーバラにある学校の研修施設「八雲レジデンス」を拠点とした海外研修や留学プログラム、国際私立学校連盟「ラウンドスクエア」の国際会議など、さまざまな機会を充実させてきたが、これらを補足してさらに効果的なものとする学習法を検討してきた。」

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★ここは、八雲学園のインパクト史を同校の英語教育の発展段階に沿って記述している箇所です。1996年に中学再開を八雲ファーストインパクトが世に広がりました。そのとき着手した英語の行事が、「レシテーションコンテスト」や「英語祭」、「サンタバーバラ海外研修&留学プログラム」などでした。「英語劇」も最高に盛り上がっていました。この時点では英検2級(CEFR基準でB1)をクリアできる生徒が増えてくれればという目標だったでしょう。

★そのレベルに達した生徒が、進学実績も出してくれたからです。

★そして、2015年からイエール大学との国際交流が始まって、生徒たちの中からもっと英語力を上げたい、イエール大学に行くにはどれくらいの英語力が必要なのかという質問が出始めます。イエール大学の音楽国際交流は、音楽が共通言語という雰囲気で、英語力育成ということではなかったと思いますが、それでも英語で対話する親密な2日間は、八雲生にとっては印象深かったはずです。

★今人気のミュージカル部「グリー」のサークル活動がすぐに始まりました。

★イエール大学へのパスポートとしての英語力はどれくらいか?先生方は英検で準1級くらいないと難しいと。そこで今度は国際私立学校連盟「ラウンドスクエア」への加盟の動きを開始します。2017年に加盟が認定されますが、2015年から準備し始めたのです。そして、国際私立学校連盟に加盟すると一つの問題が起こりました。世界は共学校が多いのです。SDGsのグローバルゴールズの目標の一つであるジェンダーの格差問題にも関連する社会課題も背景にあります。

★そこで、2018年共学校にシフトチェンジします。八雲セカンドインパクトが生まれたわけです。

★読売の記事は、しかしながら、その先を描いています。「さらに効果的なものとする学習法を検討してきた」と。それが、「YES」です。記事にはこうあります。

「「個々の生徒の能力に合わせて個別に対応できる総合的なシステムがあれば、一人一人の力をさらに伸ばすことができるのではないかと考え、本校独自のeラーニングシステム『YES』を導入したのです」と近藤隆平先生(英語科主任、海外・英語特別委員長)は背景を話す。
「YES」の名称は、「Yakumo English:Gateway to Success(八雲の英語 成功への道)」の頭文字から取っている。生徒全員が所有しているタブレットPCやスマートフォンなどを利用し、割り当てられた自分のアカウントで「YES」にアクセスする。システム内には、中1から高3までに学習する英語の練習問題やテストなどのコンテンツが収められており、授業で活用したり、自宅での宿題あるいは自主学習に使ったりすることができる。」

★ついに、八雲サードインパクトの幕は切って落とされました。C1英語への環境を、すべての生徒に作ったということを意味するからです。そして来春2021年から高校の共学化が始まります。3年前に中学から共学化をはじめて、その1期生が高校に進む段階から高校の共学化を開始するという丁寧な進化を果たしています。

★しかし、その丁寧な進化と同時進行で、ICTの授業の中での活用を模索してきました。それが今回のパンデミックで一気呵成に進みました。その流れに個別最適化学習の「YES」が合流したのです。(つづく)

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八雲サードインパクト(02)伝統のチュートリアルが再び新しい力を発揮!個別最適化へ。

★今回のパンデミックのために、八雲学園のアドミッションポリシーの広報戦略はさらにクオリティをあげています。オンラインとリアルのハイブリッドな説明会や個別相談をスモールサイズで多くの回を重ねて行っているのです。

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★ほかの学校でもそうではないかと思うかもしれません。ところが、全く違います。リアルな説明会では、新型コロナウイルス感染防止のために20組単位の説明会と100組単位の説明会を行うし、個別相談はZoomで行っていきます。つまり、オンライン説明会と2タイプのリアルな説明会とZoom個別相談会の組み合わせで行っていきます。

★おそらくこの形態は、受験生の志望の強さによって分かれます。第一志望の受験生は、ほぼすべてに参加するでしょう。おのずと20組限定の説明会は第一志望者の参加が多くなると推測するのは難しくないでしょう。

★100組限定説明会は併願を考えている受験生が多くなるのは当然です。しかしまがら、予約不要ではなく、要予約になります。これは八雲学園にとっては新機軸なのです。ウェルカムの精神ですからどなたでもいらしてくださいというメッセージを流し続けてきたからです。

★ところが、今回のパンデミックによって、方向転換せざるを得なったわけです。そのときに八雲学園ならどうするか?今までのウェルカムの精神のメッセージ以上のメッセージを発信する必要があります。

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(説明会では中高生が同校の魅力をプレゼンする場面も)

★それが、長年積み重ねてきたチュートリアル制度の活用でした。チュートリアルは、イギリスやカナダの教育、医療教育などで行われる1人の教師に対して数人のチームで学ぶシステムです。数人が1人になる場合もあります。1対1の対応ですね。八雲学園はその両方を行ってきました。前者をPBLと呼び、後者をチューター制度と呼んできました。

★この1人ひとりを大切にする精神やチームワークを大切にする精神が少人数限定学校説明会で発揮されないわけがありません。今ままでだって、どなたでもどうぞ、1人ひとりのニーズに従って変幻自在に個別最適化をしますよということだったのです。その点は変わっていないのですが、ICTやネットを活用した要予約少人数限定説明会という形でその姿勢を可視化したのが画期的なのです。

★教師の側からマッチングの対応をしかけるだけではなく、明確に受験生の側からもその意志を示して説明会に臨んでくるわけです。マッチングシステムの最適化がなされているのです。もちろん巧んだわけではありません。パンデミックの猛威を回避するための方策として、控えめなことは言っていられなくなって、ち密で合理的な説明会を行うことになったわけです。

★ウェルカムの精神は個別最適化と共感的コミュニケーションの場を作ります。互いの気持ちを共有する工程が速くなったわけです。チュートリアルの精神が遺憾なく発揮されるのです。

★論より証拠、次々と満席のため予約は終了いたしました。キャンセル待ちと次回の説明会にぜひご参加くださいというメッセージが流され続けているのです。

★年末になると、個別Zoom説明会というかダイレクトにZoom個別相談の日々となるでしょう。もちろん、リアルな予約限定説明会も継続されるでしょう。

★しかしながら、第2波第3波の可能性があります。すでに来ているなどという諸説もあります。そうなったときは、慶応大学のFIT入試やSFCのAO入試のようにスムーズに対応できるでしょう。

★そして、このアドミッションポリシーはカリキュラムポリシーにも呼応しているのです。どういうことか?今年から個別最適化のオンライン上でのシステム「YES」がスタートしたのです。詳しくは読売新聞「独自のeラーニングシステムで生徒の学習意欲向上と海外大志向を後押し…八雲学園」をご覧いただきたいのですが、リード文にはこうあります。

「八雲学園中学校高等学校(東京都目黒区)は、今年度から独自のeラーニングシステム「YES」を導入し、さらなる英語力の強化を図る。同様に今年度に加盟した「海外協定大学推薦制度(UPAA)」による海外大学の推薦入試にも、「YES」を使ったe-ポートフォリオなどの情報で出願が容易になる」

★今後、海外大学も国内大学もオンライン講義とゼミや実験・実習などのハイブリッドになりますから、実は八雲学園型になっていきます。すなわち、学びの高大接続もアドバンテージが高くなります。

★2021年は高校共学化元年でもあります。

★以上のように多角的な側面で八雲サードインパクトが巻き起こっているのですが、不思議なことにパンデミックのタイミングです。近藤理事長・校長の時代を読む眼は、もはや神の領域に位置しているというしかないでしょう。

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2020年9月 2日 (水)

水都国際教頭太田晃介先生に聞く(了)私が私になるwell-beingな学校

★昨年7月水都国際が開校1年目の前半に立ち寄りました。すでにそのときから、生徒たちはラップトップを持ち歩き、図書室に集まって何やら議論し、それに書き込んでいました。太田先生よると、生徒会を創るためのプロジェクトなんだということでした。

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★そういえば、水都国際の校歌の作詞も生徒たちが創りました。これも、生徒が自ら学校を創っていくプロジェクトの一環なんだそうです。この徹底したプロジェクトベースの活動は、当然授業にも及んでいます。いや授業がPBLだから課外活動や部活もプロジェクト型になるのかもしれません。

★PBL授業を行っている学校で、ここまで徹底している学校は東京でも数少ないですね。太田先生のイメージは、シリコンバレーのHTH(ハイテックハイスクール)もあるそうです。ただ、カリキュラムもテストもないというところまではいかないので、日本の教育事情の枠組みの中で、PBLを回していこうということでしょう。

★でも、このやり方、実はHTHが望んでいることの1つでもあります。日本では気づかれていないのですが、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授のマルチプル・インテリジェンス(多重知能)は、日本では完成されているのです。エーッ!と思う方もいるでしょう。外国では、こんなにたくさん教科を学ぶカリキュラムは存在しないのですね。

★ガードナー教授の8つの知能は、すべて小学校から高校まで等しく全員が学ぶ環境に日本にはあるのです。ですが、ちょっとしたボタンの掛け違いがあり、知性の一部である知識に力点が置かれた授業になっているのです。

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授業や施設紹介は、すべて生徒が主語で行われています。CEFR基準でB2以上の英語教育×PBL×ICT×IB的素養をすべての生徒が体験します。今回のパンデミックによるオンライン授業へのシフトも完璧なまでにスムーズに実行できたということです)

★教科書がそうなってしまっているので、しかたがないのですが、もしも、各教科で教科書の背景にある知性やマインドを学べると、生徒たちはガードナー教授のいう多重知能を体得するコトになります。

★そこに気づいている学校は、知性やマインドを各教科で学ぶためにPBLになっているわけです。知性やマインドを学ぶので、知識の背景を深堀します。すると教科横断的な鉱脈にぶち当たります。また深堀するだけではなく、知識が連合しますから、思ってもいないところで教科同士がスクランブルしていることにも気づきます。

★当然、知識という客体の背景には、すべて人間同士のかかわりがあふれています。そこで生徒たちは、自分だと思っている以上の自分に出会います。PBLはコラボレーションしますから、今までやったことなのないチーム作りやモノ作りをします。リーダーシップとは何か?ものとは人間や自然とどう関係しているのか?わかってきます。その集大成がSDGsの活動です。

★太田先生は、SDGsの活動が象徴的ですが、PBLをやると、最初はみんなで知る・理解するから、それをどうやって世の中に活用していくのか、そして次には、自分なら新しくどんなリーダーシップをとっていくのか、モノを創っていくのかという広がりと深堀りが大きくなっていきますと。大きくなっていくたびに、私はまた大きくなっていくわけですねと。

★なんと、このステップは、ちゃんと太田先生の「内なる思考コード」のレンズで認識されているではないですか!一貫性!そう太田先生は科学者だったんです。大学院で研究した来たわけですよね。だから、一貫性をとても大事にしています。量子力学者デビッド・ボームの「対話論」の肝は一貫性です。量子力学的世界と一貫性というのは、一見相反しますよね。揺らぎの世界で、計算が特定できない世界を見ているボームが一貫性を語るのです。それぐらい太田先生のシンプルな学校づくりは、その背景は複雑系だということでしょう。

★さて、HTHが羨ましがっている発想は、水都国際のどんなところにあるのでしょう。それは茶室発想です。ガーデニングの発想です。HTHはエンジニアリングは最終的にはガーデニングに行き着くのだと。

★それはあのジョブスも行き着いた世界でもありますね。ラップトップを生み出したアラン・ケイもそうでしょう。

★宇宙ステーションに使われているミウラ折りは黄金比ではなく白銀比の折り紙の世界です。茶室やガーデニングも白銀比の世界です。コンパクトな世界が広げると大きな世界になるという発想ですね。テクノロジーの世界はどんどんミクロになっていきます。ナノテクノロジーはその代表的な科学の世界ですね。しかし、そのミクロの世界がとてつもない宇宙を創っているわけです。

★これを観念ではなく、建築空間や対話空間や医療の世界や教育の世界でやってのけているのが日本ですね。もちろん京都学派の西田幾太郎はそれを見抜いていました。ですから世界の若い哲学者は、西田哲学を新しいマインドを語るときに引用するほどです。

★ミクロと宇宙単位の一見結びつかないものを結びつける発想こそクリエイティビティだし、それを社会実装するほどの技術王国が日本です。そこを前面にだして共創していく人材の拠点が大阪市立水都国際だということでしょう。

★ともあれ、水都国際は、教師と生徒がチーム一丸となって学校づくりをしています。共創のプロトタイプは、まずはこの学校づくりにあるのです。そして、それが伝統になるのでしょう。

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水都国際教頭太田晃介先生に聞く(2)「人材採用―人材育成―well-being」と「内なる思考コード」

★今回のパンデミックのような予測不能な事態に直面する昨今、組織は、報連相が循環する機能的な階層構造であり、メンバーが生き生きと価値を見出し共有する機動性を生み出す機能的(ファンクションですから相互関係や関数関係、シナジー効果作用などと置き換えられます)働きが求められています。

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★従来の組織は、格付(等級)、配置・異動、評価、報酬といった外発的なモチベーションで組織活性化を図ろうとしてきました。しかし、そういう功利主義的な考え方はどうも通用しなくなってきたというのが、世界標準の雰囲気です。来春のダボス会議でも「ザ・グレート・リセット」というテーマで多種多様なサブテーマの分科会がありますが、この新しい組織開発も話題になるでしょう。

★しかも、学校は利潤を生み出す組織ではありません。学費と自治体からの助成金で成り立ちます。ゼロサムなわけで、毎朝今日の売り上げがんばろうという朝礼はありません。ですから、今も昔も勢いのある学校組織は内発的モティベーションで燃えています。well-beingにつながる生徒や教師一人一人にとってかけがえのない価値が生まれてくる組織創りが最終目的なのだと太田先生は語ります。

★ですから、人材採用のとき、応募してきた先生方に「自由にどれらけ耐えられますか?」という問いを投げかけるそうです。これは、どういうことかというと、無秩序に耐えられるかということではなく、民主主義社会における社会通念や習慣、法律など大人が遵守しなければならいものと同じルール以外は生徒に課していないという自由のことです。

★学校は、特殊な校則がいっぱいあってマスメディアのスクープの対象の1つになるぐらいですが、そういう校則がないのです。灘や麻布みたいな学校ですが、「~すべきではない」という道具が使えないけれど、それにストレスを感じない教師を採用したいというのです。

★むしろ、「みんなで何かしたいことをいっしょにする自由」を喜んでやれる資質のある教師を採用しているようです。もちろん、みんなでしたいことで、自分のしたいことではないのです。ここはちょっと理解が難しそうです。自分のしてもらいたいことを生徒にもするという自分のしたいことを自由に楽しめるということのようです。深いですね。

★エっ!これってNY国連のギャラリーにあるノーマン・ロックウェルのモザイク画に刻まれている「黄金律」ではありませんかと気づく方もいるかもしれません。人類共通の最高のルールで、このルールに従うのではなく全うすることが最高のwell-beingなのだという信念です。国連自ら言っているように、あらゆる民族、人種、宗教などに共通する精神であり、一部のグループのルールではないと。

★宗教性や異文化の特徴を超えた国際的なリーガルマインドを水都国際はちゃんと意識しているということですね。まさに水都国際の名にふさわしい、面目躍如の人間観です。IBのディプロマを認定されているので、当然と言えば当然ですが、これを組織開発に一貫させているところは驚きです。

★そして、そのように入ってきた先生方は、経験豊富で、たとえばアジアやアフリカで教育に携わり、とかく日本の功罪をあげつらわれがちですが、現地では日本人の精神や行いに感謝している人はたくさんにるのだから、世界的視野を日本の子どもたちがもっと広げればよいのだと、情熱と意欲を持っている教師もたくさんいるそうです。すてきですね。

★太田先生も、それは生徒だけではなく教師も同じで、生徒と共に世界的視野を広める刺激をし合える組織でありたいし、そうすることではじめて社会で共創できる人間力が生まれてくる。そういう組織にしたいと。そういえば、太田先生自身、闊達に世界を経めぐり、リサーチをしたり、セミナーに参加したり、やがては自らが多くのセミナーのファシリテーターとしてセッションを行ったりしています。

★そして、今水都国際で最終的にはwell-beingを共創できるところまでもっていきたいと。功利主義的な競争の自由は一握りの幸せを生んできたし、それとて本当の幸せだったかどうかわからないのであって、やはり一人一人の才能を生かし大切な価値を共創する幸せを生み出すのだと。それは生徒だけではなく教師の未来もそうなのだと。

★デストピアが渦巻く世の中で水都国際はユートピアの拠点になるかもしれないと感じながら聞き入っていました。

★そして、そのように確保した人材が生き生きと機動力を発揮する仕掛けは何かと問うたところ、すべてはコミッティというチームで活動するのだけれど、やはり活動の仕方はプロジェクト型で、それは授業もPBLなので、親和性のあるあるいは一貫性のある思考と行動をするようになっているからですと。

★PBLでは、ルーブリックが必要ですが、それはメタルーブリックである思考コードのレンズを通せば、先生方のファシリテーターの仕方の視野がどれくらいなのかが見えます。フィードバックする時は、コンテンツや方法というより、どこまでいくのか、そこで終わってしまっていいのかなどを問い返します。基本的には生徒にも教師にも問いを投げかける役なのですが、それは場当たり的な問いの投げかけでは、先生方も生徒もいつも対処療法で終わり、未来のビジョンにうながる日々の活動ができません。

★価値を生み出すには、太田先生は、コラボレーションが大事ですと。そして一貫性。そうなっているかどうかをモニタリングするレンズは「内なる思考コード」だということです。「内なる思考コード」は、東京時代に前職の学校で同僚と創ってきた経験と他の学校や企業とも連携してきた経験があるので、いずれ可視化して共有したいのだとも。

★太田先生は、教務の中だけではなく、組織全体で「内なる思考コード」を発動させるようになっていたのです。もちろん、このシンプルな思考コードには、認知心理学、MITメディアラボの学習理論、ハーバード大学の自己変容理論など多くの知の粋が凝結したものです。評価とかに特化しては使える人も多いですが、領域横断的に活用するには、太田先生のように、広く深い見識が必要です。

★そんな組織のフォームと相互作用で価値を生み出す人材がいる有機体的な環境の中で、生徒が自由闊達にそれでいて共創する学びが広がっています。それについて次回少し触れましょう。(つづき)

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水都国際教頭太田晃介先生に聞く(1)現実的で未来性のある組織開発

★大阪市立水都国際中学校・高等学校(以降「水都国際」)が、国家戦略特区制度を活用した全国初の公設民営の中高一貫教育校で、高い人気と評判を得ていることは説明するまでもないでしょう。中学は、今後も5倍前後の高い倍率を維持するでしょうし、高校も自治体の公正な配分に沿ってレベルがあがるでしょう。

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水都国際の中学説明会の様子などがわかる動画が公開されています。

★この高い評判が生まれた理由を知りたくて、同校高等学校の教頭太田晃介先生にZoomインタビューをしました。太田先生とは、7年前に東京で出遭いました。先生の前職の学校のPBL授業授業デザインのプロジェクトをごいっしょさせていただいたのです。

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★学内外の研修でファシリテーターも共にしたり、ルーブリックのルーブリック(メタルーブリック)である思考コードの活用について東大の入試問題を分析しながら議論したりした思い出がいっぱいあります。特に、国立大学入試問題研究やPBL授業トレーニング研修を「思考コード」を前面に出して先生方と行ったときの太田先生のファシリテーターとしての活躍ぶりは今でも鮮明に記憶に残っています。

★そのときの様子をたまたま覗いたミネルバ大学の当時のアドミッション・オフィサーの山本さんが、日本の学校もやるではないですか新鮮です!最後まで見学していいいですかとなったのは印象的でした。太田先生は、私たちのやっていることは世界標準だと改めて感じましたと、山本さんを見学者としてではなく、ゲストとして巻き込んでやっていった臨機応変な姿も目に焼き付いています。

★そして、そんな太田先生のファシリテーターとしてのリーダーシップが、水都国際の組織開発方法論に活かされているというのが、了解できたのが今回のインタビューの結論です。

★太田先生は学内外でファシリテーターをやっていますから、内外のネットワークをつなげて相乗効果を出すのが巧みです。また、たとえば山本さんをいつの間にかゲストとしてしまうように、巻き込む力と瞬発力があります。

★そもそもPBLの研修は生徒であれ教師であれ、参加者の様子や状況、行われている空間に応じて、あらかじめ予定していたプログラムの内容やプロセス、道具を変えていく必要があります。構想力とブリコラージュ的な創発力が大事ですが、それによって、PBLもチームのグロースマインドセットは大きな影響をうけます。チーム作りは学校組織のマネジメントと親和性があると実感できたのも今回のインタビューの成果です。

★水都国際の組織図、いわゆる校務分掌は、実にシンプルだそうです。大きなカテゴリーは3つしかありません。教務とwell-beingとPRということです。これらは、コミッティという表現がされ、それぞれのカテゴリーにサブ・コミッティがあるというのです。年間通じての組織を形成する部署ですから、プロジェクトではありません。かといってデパートメントという言葉もぴったりこないそうです。

★というのも、水都国際にはIBのディプロマコースがありますから、外国人教師も多く、かれらにとって、ディパートメントという表現は、上下の位置づけがはっきりしているイメージで、フラットな感じがしないからということのようです。

★自由闊達に対話し、何かあったらすぐに動ける組織にするには、ある程度自由度のあるフラットな感覚が必要だと太田先生は語ります。世界標準の教務力だけではなく、世界標準の組織開発力まで身につけた太田先生がそこにはいました。

★太田先生はめったなことでは愚痴はこぼしません。何か思っているなあと感じることはありますが、すぐにニカーッと白い歯を見せて、乗り越えるフェーズを考案し前進します。

★それゆえ、外から見ていると、公設民営という複雑な力学が働く組織をゆっくりじっくりいつの間にか急激なチーム力を生み出して進んでいるのわけです。

★自治体と民間企業が協力して学校を運営するなんて想像しただけでたいへんだと思うのですが、太田先生の場合は、自治体に対する私が想像するような階層構造をイメージしていません。それはファンクションとして逆に必要だと。権威の権力構造ではなく、機能としての階層構造だというのです。

★そこは、さすがに生物の教師です。生物の組織だって階層構造ができあがっていますが、サイバネティックスやオートポイエーシス、自己組織化などの自発的秩序化としての機能を果たしています。

★世界を共創の渦に巻き込むグローバル市民を育成するのが太田先生の本意ですし、そこは自治体と運営会社とは共有しています。ならば、自治体も運営会社も世界標準の価値観を共有すれば、おのずとそういう機能的な自己組織化された組織になるはずという信念があるようです。建築学で特に応用されている認知心理学のアフォーダンス手法を巧みに活用していますね。

★それにしても、PRというのは、アドミッションポリシーとディプロマポリシーの両方を行うコミッティなんだというのはおもしろいですね。広報部と進路指導部は、一般的には別々の校務分掌のツリー構造になりますが、パブリックリレーションとして機能は同じだとみなしているのでしょう。新しい組織に入会するスキルを生徒が身につけるには、内外のネットワークをつなげる力と交渉するコミュニケーションスキル(ハーバード大学流儀の交渉は、取引ではありません。夢を共に創っていくコミュニケーション力です。慶応の田村教授のウケウリですが。)が大切です。中学入試や高校入試でその潜在的能力を測り、その能力を最大化して大学というネットワークをリサーチし交渉しながらシフトしていく生徒たち。

★太田先生は、大学合格することだけが目的ではありませんが、生徒のライフデザインのプロセスにそれが必要なら、それを実現する環境を創るのは学校のミッションでもありますから、一期生がどんな実績をだすかまでは、そこはあまり多くを語らないことにしますと。でも、期待していて下さい。今でもすでに20%は海外大学に行ける実力をもっていますからと。

★これについては、前職の学校で改革に携わっていた時の生徒たちが海外大学にたくさん羽ばたいていったデータと感触を太田先生は既に持っていますから、そう言えるのでしょう。

★それに、水都国際の開設準備の時代に、教師はみな英語を話せるという方針をたてるべく、自らも英語の勉強をしてきました。生徒の英語の実力が開校2年目にして急激に伸びている実感を肌身で感じているのでしょう。

★かくして、太田先生の組織開発手法の一つの柱である、機能的な組織図は、自発的に秩序化する有機体モデルを活用し、しっかり根付かせているということが了解できました。そして、もう一つは、組織は機能だけでは動きません。人材開発のよしあしで、活性化もし老化現象も起こします。次はこの点に関して紹介したいと思います。(つづく)

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2020年9月 1日 (火)

ポストコロナの大学入試問題(07)本日9月1日、SFC 夏のAO入試 面接中止を発表 3分間プレゼンのビデオの扱いは?

本日9月1日、慶応義塾大学湘南藤沢事務室アドミッションズ・オフィスは、「総合政策学部・環境情報学部」の「2020 夏 AO」において、2次選考=面接を実施しないことを発表しました。

★新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるもののようです。したがって、合格発表については、1 次選考合格発表(9 月 24 日(木)~)は行わずに、いきなり最終合格発表(10 月 6 日(火)11:00~)となります。

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★このような判断ができたのは、このようなこともあるかもしれないと初めから織り込み済みで「3分間プレゼンテーション」を課していたからでしょう。ですから、1 次選考免除申請者の最終合否は書類(資料を含む)と「3 分間のプレゼンテーションビデオ」により選考し、総合的に判定するということです。

★そして、2021年度の1 次選考免除申請は,総合政策学部・環境情報学部のいずれかの学部で 1 回限りとしていたのですが、2020 夏 AO の 1 次選考免除申請者の判定が不合格だった場合、次回以降の 1次選考免除の再申請を、1 回限り認めるようです。

★さて、今年の募集要項には、志願者全員に、「f.任意提出資料」の項目に、必須資料として「3 分間のプレゼンテーションビデオ」を提出することを課していますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、急遽決定したため、オンライン出願システムの改修が間に合わないため、必須の提出物ですが、「f.任意提出資料」へのアップロードをお願いするというものでした。

★そして、今回、1次選考免除申請者には、「3分間プレゼンテーション」を活用すると明快に知らされているのに、そうでない場合は、どうなるかは明記されていません。任意提出資料にアップロードするけれど、必須提出物なのだから、結果的には「3分間プレゼンテーション」ビデオは、判定判断の重要な項目であることは間違いないでしょう。

★入試も俳優などのタレントのオーディションのようになってきました。タレントは才能という意味もありますから、そのオーディションの方法と親和性は高いのでしょう。

★本質と表現力は違うという時代から、本質と表現力は一致する時代に入ったことになります。ホンネとタテマエは真逆ではなく、ホンネ以上を表現するタテマエづくりの時代になったわけです。思いや感じていることと表現行動が一致以上という時代が、コンピテンシーの時代ということです。大学入試問題が、一つの正義を規定してしまうとは!

★偏差値は、想いや感じていることと表現行動が一致しているかどうかは関係ありませんでした。よって、コンピテンシーもまったくどうでもよかったわけです。

★それが総合型選抜が増えるにしたがって、コンピテンシーの時代になってしまいました。これは、想いを表現しなければ入試市場のプレイヤーになれないことを意味します。コンピテンシーとはビジネスの世界で成功した人材の能力に絞りこんだものです。

★思想=行動が市場の競争原理にさらされるわけです。1919年以降、米国ではすでにそういう方向でした。100年たって、日本でもそうなるということですが、それがよいのかどうか?

★偏差値でもない基準、コンピテンシーでもない基準はあるのだろうか?あるんですね。これまでは、偏差値の推移も作品の軌跡も、ポートフォリオという発想で評価されてきました。これ以外にプロセスフォリオというハワード・ガードナー教授の提唱する考え方があります。

★いずれそのような手法を活用する総合型選抜入試もでてくるでしょうが、現状ではAO入試は、ポートフォリオどまりです。自分を自分以上に表現するスキル、つまりサバイバルスキルを身につけなくてはならない時代ということです。

★ありのままにではなく、ありのままに以上に気づいた新しいありのままの自分を表現するということです。たいへんな時代になりました。要素還元主義から構成主義にシフトする一つの意味は、こういうことだったのですね。シナジー効果とはこういうことだったのかあと少し戸惑っていますが。

★AO入試に臨むには、今の自分をリフレクションし、願書を出すまでの間に早急にさらに大きな自分を完成しなくてはならなくなるのですから、大変です。

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