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2020年8月26日 (水)

工学院インパクト(07)PBL授業の進化~生徒が自らPBLを生み出す拠点としての教師のPBL授業

★昨年末から工学院の保健体育科の柴谷先生と浜崎先生と家庭科の片瀬先生、国語科の臼井先生、社会科の柳田先生が教科横断型のPBL授業を共創しようと動きはじめました。きっかけは、保健体育科と家庭科とでセルフ・エバリュエーション・プログラムのPBL授業がデザインされたことでした。両教科は、生徒1人ひとりが、将来にわたってのライフデザインを身体、心、社会性の全体を統合して考え、実践し、軌道修正していけるようになるかということがおそらく最終的な目標でしょうから、そのような授業デザインを開始したのでしょう。

【PBL銀河】

Seitono

★そして、生きるということは豊かなコミュニケーションを生み出し続けることでもありますから、臼井先生が国語科的アプローチも必要であろうと、そしてとくに社会性に関しては社会課題とも関係するので柳田先生も結びつくことになったようです。

★ところが、今回のパンデミックで、オンライン授業という新たな局面に対応しなくてはならなかったので、その共創活動があまり進まなかったのです。工学院は、技術的環境的にオンライン授業にスムーズに移行できましたが、個々の授業のプログラムデザインは、やはりリアルな時空での授業とは予想外に違い、それはそれで新たな創意工夫が必要で、そこに注力する時間が必要だったようです。

★そんな創意工夫の一つとして、保健体育科では、実技が思うようにならなかった分を、実技を体験のままに終わらせないように体育理論の体得をこの機会に行うことにしたというのです。たとえば、スポーツというのが自分たちの生活や生き方にどういう影響があるのかというのをリサーチし、新たな提案をしてみようというのです。

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★そこで柴谷先生が、「生涯スポーツの見方・考え方」という体育理論のPBL授業をデザインし実践しました。浜崎先生もその授業を実践したということです。今後の共創の切り口を共有するために、オンラインでその授業の分析をしてみることにしました。

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★メンターとして、教務主任の田中歩先生も参加し、様々な角度から分析をしていきました。あまりにも複眼思考で参加者全員が対話していったので、その内容は興味深いものでしたが、さすがに私の力ではそのプロセスを表現できないのが残念です。ともあれ、結論をいうと、1つは、もはや柴谷先生の授業は、軽くステージ5.0に達していて、あとはクオリティを向上させていけばよいということになりました。

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★そして、2つ目は、そのクオリティをどう豊かにしていくかという新たな課題が見つかったということです。

★昨年までは、PBLのステージを4.0以上にもっていけるかどうかに力点があったわけですが、今では、そこはクリアして、クオリティを豊かにしていくことに力点が移行しました。クオリティの豊かさには2タイプあります。それは、PBLを構成する要素の精査です。今回も批判的な思考の意味が、参加者それぞれ違っていて、その異なる視点を受け入れることで、批判的思考の質が高まることを共有しました。

★また、教師の時間と生徒が引き受ける学びの時間への意識の必要性も気づきました。

★構成要素は無限にあるので、その相乗効果をどう測るかですが、それは今までは生徒のアウトプットで行われてきたわけです。しかし、今回そこが単なるアウトプット評価ではないということに気づいたのです。

★柴谷先生の今回のプログラムは、最終的にそれぞれの年代レンジで生活を豊かにしていくニュースポーツを提案するというものでした。机上の体育理論ではなく、理論の社会実装まで求めるものでした。

★したがって、生徒1人ひとりが、リサーチ→ディスカッション→閃き→リサーチ→ディスカッション→プロトタイプ→提案編集→プレゼンというまさにPBLプロセスを通して創っていくわけです。

★生徒の作品はすべてプラットフォーム上に格納されています。柴谷先生はいくつか例を挙げ、成果を紹介していました。すかさず、メンターの田中歩先生は、この格納されている生徒の作品こそ重要なのではないかと。この作品をどのように今後扱っていくかによってさらなる柴谷先生のPBL授業のクオリティは豊かになっていくということになりました。

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★田中歩先生は、生徒のアウトプットである作品の評価から先を考えているようです。生徒がオンラインを経由して多様なアプリを使いながら作品をつくり、プラットフォームに格納していくので、作品が出来るまで、作品が発表されるまでのプロセスも実は可視化されポートフォリオになっているのです。いつでもどこでも教師はそれを見ることができます。これは今までの教育にはない革命的なことです。

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★柴谷先生のPBL授業は、生徒が作品を創るアウトプットに導くわけですが、その背景にある生徒自身のPBLまで生み出しているというのが可視化されているよということでしょう。

★田中歩先生は、したがって、ピンと来たのだと思います。生徒中心主義のPBL授業というのが田中先生の信念ですから、当然生徒自身が自らPBLを行うようになるのが本意でしょう。田中先生は、こうしようという抽象的なビジョンは先に言うことはあまりしません。ビジョンが生まれる環境を創ることを優先します。

★その環境の中から柴谷先生の生徒のPBLを生むPBL授業が飛び出てきたと感じたのでしょう。工学院の生徒によるPBL銀河が広まる予感がしました。

★と思った瞬間、片瀬先生が、授業の一つ一つのテーマをすべての生徒がすべて興味を持つということはない。すべてに興味を持つ生徒もいるし、持ったり持たなかったりの生徒もいるし、すべてに興味を持たない生徒もいる。興味関心は大事だが、すべての生徒が持てるようにするにはどうしたらよいのか。その生み出す仕組みとは何かは考えたいと根本的な問いを投げかけました。

★ということで、次回はそこを盛り込んだPBL授業デザインについて片瀬先生がプレゼンします。「PBL授業をどう組み立てるか」から「PBL授業の構成要素の内的連関の質をいかに向上するかと生徒が自らのPBLをいかに立ち上げるかそのきっかけづくりとなる授業をどうしたらデザインできるのか」にシフトチェンジしたZoomミーティングとなりました。

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