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2020年8月 2日 (日)

ポストコロナで変わるコト(03)2022年立川国際中等教育学校 小中高一貫になる意味。英語と総合型問題入試主流に。

★アーバンライフメトロ(2020年8月2日)の記事「東京都が公立「小中高一貫校」開校の衝撃 開始は2年後、12年間の「国際人育成」目標は吉と出るか凶と出るか」によると、「東京都は2022年4月、全国初となる公立の「小中高一貫校」を開校します。学校の理念に基づき12年間の教育を行う私立学校は少なくありませんが、公立となると前例がありません」ということです。

★「新たに設ける小中高一貫校は、立川国際中等教育学校(立川市曙町)に隣接するグラウンドに設置された同校の付属小学校です」ということですから。同記事にもあるように、英語に力点を置いた小中高一貫教育改革という流れでしょう。

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★この政策が、公私格差を是正することをねらいながらも、公立学校内格差を生み出すパラドクスを起こすというのは議論の余地があるけれど、そこは議論にならずに進むでしょう。この背景には、ジェンダー問題が色濃くあります。当面日本はここの問題はマスクをかけたまま進みます。SDGsがまだまだ主流にならないのは、17のゴールの1つにジェンダー問題の解消が入っていますからね。

★しかし、東大が隈研吾さんを招聘し、SDGsを建築学に活かす新しい分野を設置する予定のようですから、教育委員会も変わらざるを得ないかもしれません。その前に東大は女子学生入学生の比率をもっと上げなくてはなりませんが。

★あっ!そういうことですね。それゆえ英語を重視するわけです。迂遠な作戦ですが、ちゃんとジェンダー問題を解消する政策をとっているわけですね。つまり、英語に力を入れて、なおかつ総合型問題を出していく。あんまりそれを強調すると、逆チェンダー問題を生み出すので、そこは静かにということでしょうか。。。

★またまた、本間はわけのわからないことを言い出したと思われるかもしれませんが、そういう方はジェンダー問題に関心がないと思ってくだされば、それで結構です。

★さて、総合型問題というのは、2021年大学入試において、早稲田の政経や青山などで行うものが典型です。AO入試/総合型選抜入試ではなく、一般入試の個別独自入試で行うものです。

★小論文は当然ですが、英語と日本語の両方の素材文が出題されます。もちろん、クリティカルシンキングがコアです。京都大学の特色入試や東大の推薦入試ではすでに当たり前になっていますね。大学入試改革がとん挫したという話と同時にパラレルに大学入試改革が加速度的に進んでいる。不思議の国日本です。

★しかし、急に始まったわけではなく、OECD/PISAとCEFRによって始まったわけです。つまり1989年ベルリンの壁崩壊後のシナリオプランニング通りなわけです。欧州に東からどっと移民がおしよせてきたわけですから、学びの権利と言葉の権利を守る政策としてこの2つは生まれてきました。どちらも拠点が人権の国フランスにあるのが象徴的です。

★IBも拠点がスイスにあるわけですから、日本の教育改革は世界の国々のいいとこどりをするも、基本はヨーロッパですね。

★ともあれ、PISA型入試を導入したのが、全国学力調査テストであり、公立中高一貫校の適性検査であり、昨今一部の公立高校入試でも取りいれています。中学入試においても適性検査型入試をはじめとする新タイプ入試が浸透してきています。

★もちろん、この路線をつくったのはベネッセと文科省の巧みな連携です。文科省の学力調査テストの運営の大半はベネッセです。数的には大学入学共通テストとなんら変わりなく、本当はできたはずなんですが、大学受験業界の壁はベネッセ一社ではどうにもならなかったということでしょう。

★しかし、シナリオプランニングは複数路線で進みますから、一つや二つダメでもベネッセは実は問題ないのです。多くの学校や自治体でベネッセの元社員は大活躍していますから、キングダムは不滅でしょう。東大本郷の赤門左にそびえる福武ホールはその象徴ですね。

★大学と就職という生涯学習系では、ベネッセ以外にリックルートがドンと構えています。教育・進路系はほぼその2社が独占しているというのが本当のところで、その2社がどういう動きをしているのか、注目しておくと役に立ちます。それから、2社が手こずるのが私立学校です。もちろんしっぽを振る私学も結構ありますが、ここは河合塾、ロイロノート、Apple、Microsoftなどのシェアとの競合関係になっています。

★それゆえ、公立中高一貫校や公立小中高一貫校などをつくって、私立学校の領域のシェアを拡大したいわけですね。自治体の背景にあるベネッセとリクルートがです。

★痛し痒しですが、この2社ががんばることによって、ピアソンとETSという英米系教育ビジネスに飲み込まれなくて済むというのが日本の教育産業界の状況でしょう。そこでフランス―ドイツを中心とする欧州教育で世界標準競合関係を巧みにベネッセは活用し、リクルートは米国のコンピテンシーでETSに対抗をしているわけです。

★この競合の状況を眺めながら一挙両得を考えているのが日能研や首都圏模試センターです。中学受験というマーケットにのみ軸足を置いているのがそれを意味しています。

★なんだか話がズレてしまいましたが、今年から小学校の5年生6年生における英語の教科化がスタートしました。片方で着々とPISA-IBーAレベル系列の入試問題、つまり総合型入試の準備も着々と進んでいます。大学入学共通テストは米国ETSの戦略を残して、言い訳ができるようにしているわけですね。

★日本の外交や国際戦略は、基本は長崎の出島戦略です。国民はだれもダイレクトに交流しないけれど、出島を通して、世界標準のシミュレーションの恩恵に浴せる状態になっている。ダイレクトに交流している人々が富を増やし、国民はその富裕層が喜ぶ素直な消費者ということですね。

★ところがポストコロナは、一般市民がネットでダイレクトに交流してしまう。そのためにも英語は重要なのですね。クリティカルシンキングは必要なんですね。ICTは大事なんです。ポストコロナ時代の三種の神器は、英語×クリティカルシンキング×ICTで、その三種の神器を使いこなす市民をクリエイティブクラスというのでしょう。

★来春のダボス会議では、この話が主流だし、そのような時代の要請を敏感に先取りする落合陽一さんもクリエイティブっクラスが働き方改革を促すでしょと語っていますね。

★というわけで、そのクリエイティブクラスが大量に輩出できる大学が、投資効果があるわけで、入学者を増やしていくことになります。

★ポストコロナ直後は、変わらない大学が安心安全だということで、そこに入学者が集まるのですが、すぐにそこではクリエイティブクラスは生まれないことに気づき、英語とクリティカルシンキングとICTを統合した「総合型入試」を行う大学の人気が出るようになります。

★安心安全を求めるタイプは、リーマンショックとかパンデミックとか気候変動という体験を通してはじめて身に染みるわけです。ベネッセやリクルートはその両方のシナリオプランニングをしているはずです。一市民の私でもそう考えるのですから、2社の幹部が考えないはずがありません。

★複線マーケットの両方でビジネスを行うリスク分散は考えるでしょう。

★日能研と首都圏模試が、一挙両得戦略をとれるかどうかは、マーケットのおもしろところですね。マーケットは時代の歴史的狡知と歴史の普遍的精神のせめぎ合いで動きます。激動の時代、マーケットはどんな新しいシナリオプランニングを立てるのでしょう。時代変革ゲーム!ワクワクしますね。

★もっとも、私自身は、そのゲームには参加しませんが。

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