ポストコロナの大学入試問題(05)2021年以降の小論文の当然のテーマは「シノプティコン」。しかし難しい。それに真摯に対応できる高校は?SEIGのGIC。
★総合型選抜の入試にかかわらず、一般入試や医学部で出題されるテーマは当然のごとく、「パノプティコンからシノプティコンへ」に関連する問いでしょう。ミシェル・フーコーの監視モデルは、まだアナログメディアからのイメージでしたが、今やメディアはデジタル化しているし、今回のパンデミックで、デジタルワールドに否応なしに突入してしまいましたから、「シノプティコン」現象というより制度としての「シノプティコン」の存在が、一部哲学者の話ではなく、市民生活にも影響を及ぼすようになってしまいました。
★「シノプティコン」が現代の哲学者の中で論じられていることについては、2016年に岡本教授が書籍で著わしてからメディアでも取り上げられました。しかし、まだ本の世界の話でした。
★しかしながら、パンデミックが起こる前から、産業界では「シノプティコン」が当たり前になっていたのです。そして、20世紀の哲学や社会学の領域からみてしまうと、「シノプティコン」をめぐる話でも、国家や行政の権力の監視のチェックをどうするかということで終わってしまっていたわけです。
★ところが、特定秘密保護法の制定などをめぐり、実際には、特定秘密の取り扱いは、産業界でも行われるようになってきたわけですから、国のコントロールばかり見ていても、アンダーコントロールやオーバーコントロールの現象が市民生活に浸透していることがみえてこないので、時代に合わない小論文対策をしてしまいがちだったんですね。
★しかしながら、毎日のようにテレビで、医療従事者や教師、企業人の遠隔操作、煽り運転の証拠としての動画が流され、「シノプティコン」現象はまさにニューノーマルになっています。つまり、制度化されていたのだということが明らかになったのです。
★特にパンデミックにおける医療関係の話は、膨大な個人の遺伝子情報、血液やホルモンの成分情報、疾患情報などがやり取りされている様子が報道されています。「シノプティコン」をただ批判するだけでは、この生死の問題を解決することはできなくなっているわけです。
★このような状態の中に、ブロックチェーン、5G、量子コンピュータの話が加わり、2025年までには、PCの世界も全く違った次元に突入しています。今までは、2011年以降のSNSの勃興がありすが、まだ1995年のWindows95インパクトの延長線上で捉えられてきました。しかし、どうやら「シノプティコン」とは何か再定義しなくてはならなくたりました。
★「シノプティコン」の再定義は、<「自由か規制か」から「自由か幸福か」へ>を巡るテーマをどうとらえるかを意味し、結局「自由」とは何かの再定義であり、「自由」な存在としての「人間」の再定義でもあります。
★今のところ、ここを制度設計の視点から高校生が考えるための書籍はなかなかありません。そんなとき、AO入試の準備をしている生徒と対話していて、大屋雄裕教授の「自由かさもなくば幸福か」という本が参考になるということになりました。
★法哲学の教授ですが、古典的な法の哲学を扱うのではなく、AI社会を前提とする法制度を考察しつつ、法哲学というより、哲学の基礎が語られているので、思想の歴史を未来にまで眺望することができます。
★サンデル教授の正義の座標系を知っているとさらにわかりやすいかもしれません。
★とはいえ、受験生は時間がないので、一冊丸ごと読めないかもしれません。そのときは第2章は最低限読んでおくとよいでしょう。
★もちろん、一冊読んでも構いませんが、その体力があるということは、それだけでもう相当思考力があるということの証しでしょう。
★大屋教授の社会に対する知見は、東大、一橋大、名古屋大学、慶応義塾大学、関西大学に通底するものです。上智大学と京都大学はそれぞれ独自の路線を保守しているでしょう。
★なお、大屋教授の法哲学は、哲学とは当然違います。また法律哲学とも違います。かなり学際的な視座が広がっているので、文系理系にかかわらなくおススメです。高校1年生、2年生は読書会をするとよいですね。
★社会は、その背景に制度設計がありますが、国家法だけが制度設計のルールではありません。今回のパンデミックで、私たちが、電車通勤するかどうかを決めるルールは、国家法で決められているものでないことを実感しています。テレワークをするかどうかもです。また、自粛の最中に何を食べるかどこで食べるかもももちろんそうです。
★インフラ、健康、実は学びですら、制度設計の影響を受けてしまっているのだと気づいてしまったのです。パンデミックで、今までの制度設計では解決できない問題が露になって、メディアと市民が、そこを決めてよと言いつつ、そこを埋める判断をしていますが、それとて、制度設計がほころびているから、そうしているわけで、制度設計を補完・補強・強化しています。
★この補完・補強・強化の自動装置こそが、制度設計の妙技です。
★そのことがはっきりしたわけです。つまり、私たちはよかれあしかれ、制度設計の掌の中でアフォーダンスされているということが了解出来てしまったわけですね。
★大学入試問題は、その大学の先生方の研究の成果の最前線で出題されるものです。どこかで見たことがあるというような手抜きの問題を出題する大学ももちろんありますが、そういう大学は選ばれなくなります。これは中学入試でも同じです。高校入試は、まだまだ焼き直しの問題です。基本選抜ではなく、配分の進路ですからそうなります。進路がシノプティコンという制度設計で行われている典型が高校入試だということも改めて了解できる時代がやっていきているわけです。
★大学入試問題の内容と高校の教科書の内容のズレがどんどんでてくる時代でもあります。このズレを埋めるにはどうしたらよいのでしょうか?逆に言えば、ここを埋め、さらに次の次元に飛ぶ高校が重要だということになります。
★そこはどこでしょう?そんな思いで学校探し・学校制作をしていきたいと思います。今はっきりいえることは、聖学院の新コースGICがそれであるということです。
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