ポストコロナの大学入試問題(01)慶応義塾大学法学部FIT入試 変更公表から見えるこれからの大学入試問題の変化
★7月31日、慶応義塾大学法学部は、FIT入試の変更について発表。
(写真などは同校サイトから)
★出願や第二次選抜などの日程については、同校サイトや願書を参照してください。ここでは、次の変更点の意味について述べたいともいます。
<新型コロナウイルス感染症の影響にともなう,法学部 FIT 入試に関する主な変更につきまして,以下の通りお知らせします。第 2 次選考について
A方式:「論述試験」と「グループ討論」での選考から、「課題」と「面接」での選考へ変更
B方式:「総合考査」と「面接」での選考から、「課題」と「面接」での選考へ変更>
★パンデミックの今後の第2波第3波などを想定して、ノー3密をつくりにくいリアルな空間で試験は「面接」だけに限定し、最小限にしようというのでしょう。
★もしかしたら、この面接とてオンラインになるかもしれません。慶応は法学部に限らず出願作業はネット環境が充実していなければなりませんから、いざというときは会議システムを活用した全面オンライン入試に移行できるでしょう。
★SFCのAO入試などはすでにそれを想定して、自分とは何者かアピール動画を提出させています。第2波第3波の影響のときには、書類と動画などで代替できるように準備をするというわけです。
★こうなってくると、パンデミックがあろうがなかろうが、今後の総合型選抜入試は、慶応型になっていく可能性があります。だいたいAO入試を最初に始めたのは慶応SFCですから、今回もそのスーパーモデルになるのは当然なのかもしれません。
★そういえば、全学部の一般入試で大学入学共通テストを利用しないのも慶応義塾大学の特徴ですが、これも参考にする大学は多くなるかもしれません。
★さて、こうなってくるとどうなるのでしょう。まずは、総合型選抜入試ですが、「志望理由書」「自己推薦書(法学部のFITB方式は不要です)」と「小論文」「面接」が中心になるのですが、今回の法学部FIT入試のように、「小論文」は「課題」という形式で、自宅で編集作成して提出という形式になっていくかもしれません。
★「面接」は、その「課題」や「志望理由書」「自己推薦書」などに基づいて行われるでしょが、それらをくし刺しする横断的問いを投げられることが想定されます。
★基本は「口頭試問」。ただ、その解答のプレゼンの時に、「志望理由書」に書いてある内容や「自己推薦書」に書いてあることがハイパーループしているかを確かめるでしょう。
★要するに高次コミュニケーションは「一貫性」というオーラが必要なんです。
★この「一貫性」という高次コミュニケーションは、実は「志望理由書」「自己推薦書」「小論文」「面接」の背景に現れてくるものです。慶応義塾大学の場合、このオーラ―が面接担当官である教授陣のオーラと共感共鳴共振するかどうかにかかってきます。
★異彩な才能を有した学生が欲しいのですが、もう一方で共に学んでいく時に気が合うや馬が合うというポイントは大事なことです。同調圧力とは違います。クリティカルシンキングは必要です。しかし、最初からモチベーションを自分で上げられない学生よりは自分でモチベーションをあげることができる学生を選ぶでしょう。もちろん、それでもモチベーションは途中で萎える時もあるんですが、そこはコラボレーションで乗り切ろうという学び方を知っているか知らないかは重要なんです。
★つまり、今流行っているGRIT~「度胸(Guts)、「復元力(Resilience)」、「自発性(Initiative)」、「執念(Tenacity)」~というやり抜く力があるかどうかです。
★もちろん、GRITは鍛えることができるのですが、それは高校までにトレーニングしてきて欲しいというのが慶応義塾大学でしょう。逆にGRITはわが大学で鍛えますというところがあってもいいわけです。
★今まで、一般入試だとここが読めなかったのです。成績がよくても才能があっても、実現力として生かしきれない学生が入学してくるリスクを回避できなかったのです。暗記力ではなく思考力を重視する入試へという流れは、ポストコロナでもう一段明快になります。ロジカル・クリティカル・クリエイティブ思考という高次思考とGRITの両方がある学生と共に研究していきたいというのが大学側の本音でしょう。
★となると、慶応義塾大学のFIT入試やAO入試のようにならざるを得ないのです。一般入試よりAO入試で楽して合格したいというその損得勘定が見えてしまう生徒は少なくとも慶應義塾大学はお断りということになるでしょう。
★でも慶応義塾大学だって一般入試があるじゃんと言われるかもしれません。そうです。FITやAOほどリスクを回避できませんが、それでも簡易ポートフォリオは出願時にネットで打ち込むようにはなっているはずです。得点が近接している場合、参考にするのは言うまでもないですが、おそらく文系の場合は、小論文もあるので、スコアで並べるだけではなく、3者の相関は計算するくらいのことはするでしょう。
★いずれにしても、「課題」提出形式になると、意外や意外、知識も重要になります。調べることができるからです。やはり知識がなければ思考ができないということをいいたいのではないのです。自分の頭の中にある既存の知識だけでなく、リサーチして知識を活用するのは当然ですが、それが思考のハイパーループとしてコネクトしていなくてはなりません。
★それは「面接」でわかります。ああ、カット&ペーストだなあとか血肉になっているなあということはすぐに了解できます。学んだことや創ったこととしてのコンテンツと学び方や論じ方、発信の仕方など知のフォームの耐性もすぐに了解できるのが面接の妙技です。
★結局、慶應義塾大学のFIT入試やAO入試は、普段から多様な人々との対話とメンターとの一対一の対話が必要になります。コンテンツとフォームと高次思考力とGRITをコーチしてくれる教師が必要です。
★逆に言えば、慶応のFITやAO入試で合格している生徒の数が多いということは、このような質の高い対話ができるコーチそしてメンターである教師がたくさんいるということでしょう。PBL授業が必要な理由はこういうところにもあります。
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