アサンプション国際小学校の意義(03)生徒を迎える前日の研修コミュニケーションの質の高さ③コミュニケーションの大切な意味
★各チームのPBL授業分析の議論が終わった後、それぞれのチームのファシリテーターとZoom越しで対話をしました。シェアとリフレクションです。そこで改めてわかったことは、PBL授業で、教師と生徒、生徒と生徒のコミュニケーションを大切にしていることです。
★このコミュニケーションは、実は思考力を開発するという大きな目的もありますが、何よりも生徒1人ひとりの存在の質や価値を生成しているということです。
★モチベーションとかワクワクするということを大切にしているのは、思考力を開発する前提であると同時に、生徒1人ひとりのかけがえのない存在の価値の泉を掘り当てているのだと感じました。
★この点はネイティブスピーカー教師も日本人教師も、当然同じで、だからこそPBLを行う意味があるのだと。
★そして、それが理念やスローガンで終わるのではなく(そうこれが極めて大事で、一般にはここから先は外からは見えない部分です)、授業の中でどう実践されているのかということです。どの教科も内省(リフレクション)を1人でするだけではなく、ペアやチームで行うときに、つまりコミュニケーションをするわけです。
★教師と生徒がコミュニケーションをするときと、生徒と生徒がコミュニケーションをするときとでは、実は違う側面を生徒は表すものです。この2つのコミュニケーションにおけるときの生徒の様子の差異が、その生徒の存在の価値を複合的に映し出しますが、そこを教師は見出します。
★しかも、1人の教師だけではなく、学年を中心とする教師チームで情報交換をするわけです。生徒1人ひとりの存在の価値を多様な視点で映し出していくわけです。「個別最適化」という言葉がはやっていますが、この個別最適化は、知識の集積度合いの違いを言っているだけで、生徒1人ひとりの存在価値を豊かにしていく過程の個別最適化ではなさそうです。
★しかし、アサンプション国際小学校の教師は、知識の集積度合いも含め生徒1人ひとりの存在価値を豊かにしていく過程を大切にしています。当然その過程は、生徒1人ひとりによって違います。
★だから、やはり、その1人ひとりの過程を見出し、促進するために、いろいろなアクティビティを組み込んでいるわけです。ディスカッションが得意な生徒もいるでしょうし、書くことが得意な生徒もいるでしょうし、プレゼンすることに意欲を燃やす子もいるでしょう。すべてのアクティビティに積極的な生徒もいるでしょう。
★行動は思考や感情を掻き立てます。しかし、行動の種類によってどう反応するかは生徒によります。アクティビティは単独では存在しません。必ず人間関係の中で発生します。コミュニケーションは、言葉と言葉だけのやりとりだけではないのは当たり前ですが、今まで私たちは、一方的に言葉を生徒に浴びせてきただけです。そのとき、生徒1人ひとりの存在の価値までみようとしてはこなかったのかもしれません。
★今では、そんなことはないアサンプション国際小学校の先生方だからこそこう言うでしょう。「そんな恐ろしい授業があったなんて」と。でも、いまだにそういう授業を行っている学校があるわけです。なんとかしなくてはなりません。アサンプション国際小学校の先生方は、自らモデルづくりをし、それを今後社会に発信しなくてはならないでしょう。
★さて、もう一つ気づいたことは、アサンプション国際小学校の教師は、まさに「神は細部にやどる」というステキな考え方を実践している先生方だということです。体育の授業チームのファシリテーターの安本先生と国語のチームの婦木先生と山之内先生の話(阿弥先生はリフレクションの時もメンバーの先生から話を引き出していました)から感じたのですが、スキルの使い方の話です。
★スキルというと、なぜかテクニックにすぎないとか型ではないんだよとかいう話になりがちです。表面的な思考力ではないんだと。howではないwhyなんだとか。
★でも、スキルは表面には現れてきません。あのiPhoneの美しい曲線美には、繊細な職人の技術が使われていますが、そのスキルの痕跡は見えません。本物のスキルは最終的には見えなくなります。モノやコトに内在化するわけです。ですが、そこまでの過程ではすぐれたスキルが必要なのです。
★同じ筆やパレット、キャンパスを使ってもピカソのような絵をみな描けるわけではありません。ピカソの絵との違いはスキルの違いが大きいのです。
★各学年の授業は、生徒にとっては、実は自分の価値を豊かにする過程であり、その価値を互いにシェアし深めていく過程であり、価値を表現し合う過程です。
★スキルが見える化されるのはむしろ当然です。どうやって?それは身体と言葉の相互変換の繰り返しによってなのです。そのことを安本先生と婦木先生と山之内先生は語っていました。今回は別々に私は聴いているので、私の中では統合されましたが、先生方はまだでしょうから、どこかでシェアするとよいのではと思います。
★体育で、ゲームなどをしているときと国語で詩を読むときとはてとても似ていま。「置換」というスキルを瞬時に使っていく瞬発力がポイントだからです。ゲームや技術を振り返ることと物語を読んでいくときとは「根拠」とか「比較」というスキルを使っているということもわかりました。
★つまり、ここには非連続型論理思考と連続型論理思考が行われているのです。それを身体感覚と言語感覚の相互変換で、生徒はシャッフルしているのですね。「セカンドブレイン」というアクティビティにどのチームも注視していたのはそういうことでしょう。この非連続と連続、身体感覚と言語感覚の4つのシャッフルが、うまくいくいかないで批判的思考が生まれてくるし、化学反応が起きて創造力が爆発するわけです。
★どのチームも、創造的な領域についての議論に行き着いていたのはそういうことでしょう。
★おそらくこの非連続と連続、身体感覚と言語感覚のシャッフルの重要性は幼児期から小学校4年生くらいまでになされていることが重要だということになるのだと予想できます。非認知能力の話を追究していくとそういうことになるのではないかと。そんな話もリフレクションのときにちらっとでました。
★ポストコロナ時代は、リアルな時空での授業とサイバー時空での授業が交差するハイブリッド授業にならざるを得ません。2025年までには、1995年のWindows95が世間をあっと驚かせたように、5Gと量子コンピュータが席巻しているでしょう。
★今回のハイブリッド研修は、もっとやりやすくなるし、リアルとサイバーの境界線がますます曖昧になっていくでしょう。
★そして、そこで重視されるのは、「マス・コミュニケーション」ではなく「1人ひとりの存在コミュニケーション」です。そこまで接近できるのは、ICTの進化に拠ることが大きいでしょう。それは遺伝子工学やバイオテクノロジーの進化をもたらせたのと同様、教育においても起こるのです。
★アサンプション国際小学校の先生方の創意工夫と協働性、そしてチャレンジングな精神に触れて、その流れを先生方は牽引していくのだと感じました。
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