« 工学院インパクト(07)PBL授業の進化~生徒が自らPBLを生み出す拠点としての教師のPBL授業 | トップページ | ポストコロナの大学入試問題(06)一般入試と総合型選抜の違いは縮まるか? »

2020年8月27日 (木)

ノートルダム女学院(07)ナレッジ・カフェ開催~広がる「学習する組織」

★昨日、ノートルダム(ND)女学院中高で、ナレッジカフェが開催されました。ND教育開発センターのセンター長の霜田先生がホストで開催しているフラットでナチュラルな対話空間です。今春オープンされて、しばらくリアルなスペースで行われていました。

★しかし、今回のパンデミックで、オンライン授業にシフトしてからはしばらく時間が経ちました。そこで、夏休みも終わったところで、オンライン授業やニューノーマルな空間での授業などについて情報を交換する柔らかい会が、Zoomで行われたのです。

Ndkcafe

★今回の知のソロ演奏者(=キーノートスピーカー)は、まずは霜田先生でした。3月から行われたNDのオンライン授業からはじまって、分散登校、ニューノーマルな生活の中における全面学校再開にいたる経過を振り返り、その中でどのような教育活動が生まれたかオンラインではどんなアプリが使われたかなどコンパクトに話されました。

★その後ブレイクアウトセッションで、対話をしました。キーノートスピーチは、多様なテーマが含まれていたので、それぞれのブレイクアウトルームによって対話のテーマは違ったようです。私の参加したチームでは、英語の授業におけるエッセイライティングとテクノロジー、スピーキングとテクノロジーという話題になりました。

★テクノロジーのメリットとデメリットの実践的な話が、実に興味深かったです。デメリットが新しいエッセイライティングの授業方法を創意工夫につながったとか、メリットは、スピーキングの能力開発の強化につながったとかいう話でした。テクノロジーの一般的なメリット・デメリットの話をさらに進めて、メリットをどう生かすか、デメリットを補完しさらに強化するにはどうするかというディテールにまで話は広がりました。

★まさに神は細部にやどるという内容で、NDの英語教育の今後の展開が楽しみになりました。

4_20200827033101

★しばらく各チームで対話が行われ、全体のスペースに戻ってきたところで、いつも使っているチャットやジャムボードではなく、“Padlet”で、気づきを各メンバーが書き込み、シェアしました。さりげなく活用したこのアプリは、ホストの霜田先生からの贈り物です。NDでは、今やオンライン授業で活用したアプリやソフト、プラットフォームをリアルな授業でも引き続き活用している教師も多く、本格的なハイブリッド授業になりつつあります。

★リアルな空間でも使いやすいICTの道具立ての情報交換も気軽にできるのがナレッジカフェのいいところですね。そして、カフェが豊かになるかどうかは、粋なホストの配慮と参加者の話をしたいという気持ちで決まります。この自由な雰囲気が、豊かにするのは間違いないでしょう。

★さらなるシェアは、facebookでもナレッジカフェが公開されています。もっとも、メンバー専用のページになっていますが、そこでまた豊かな分かち合いが拡大していくでしょう。

★ナレッジカフェでは、日ごろの基本的な学校組織活動では見せない顔を先生方は開示しているのがおもしろいですね。フィンランド教育や言語技術の研究と実践をされている世界的視野で授業に取り組んでいるというのは、このような場があるからこそ共有できます。

★また、参加した先生方1人ひとりは、この間、さまざまなオンラインセミナーで学んでいました。そんな外部で体得した情報もシェアできます。

5_20200827034501

(ナレッジカフェ終了後、少し「はっぱいガール【4点】」さんこと大河内さんと霜田先生と話しました。)

★さらに、今回はゲストとしてOGの大河内さんも参加。卒業後教師も経験し、その後独立して、新しい「農村」づくりやYoutubeでキャリアデザインや新しい学びをその世界で活躍している方をつないで発信し、ハッピーの種を森のように豊かにしてく活動もしています。このハッピーの成長を意味するために、自らを「はっぱいガール」と称して活躍しています。

★大河内さんによると、世界で活躍しているOGはたくさんいると。ご自身の同級生や知り合いの同窓生も、インドやロサンゼルスなどでバリバリ活動をしているということです。

★霜田先生は、大河内さんに、そういう社会活動をしているOGとNDの在校生をつなぐ企画を立ててよと依頼していました。それはいいアイデアですねと大河内さんも即反応。今注目されているハーバード大学のロバート・キーガン教授の成長の最終段階である「自己変容型マインド」の持ち主であることがすぐに了解できました。

★キーガン教授は高校までに、「自己変容型マインド」が育たないと、大人になってからはなかなか自分を変えられない。そこで、大人になってから「自己変容型マインド」を拓くにはどうしたらよいのかという研究をしているわけです。

★しかし、NDは,すでに高校までに「自己変容型マインド」を体得する教育がベースにあるのかもしれません。そういえば、NDの母体であるノートルダム教育修道女会を創立したマザーテレジア・ゲルハルディンガーは、「人が変われば、世界が変わる」と言っていたといいます。OG大河内さんのライフデザインがそれを明らかにしてくれたのではないでしょうか。今後が楽しみです。

★一般に、学校は、校務分掌に現れているように、基本的な学校組織に基づいて、教育活動が実施されています。どちらこというと垂直構造の組織です。成果主義的組織の在り方としての基盤を伝統的に築き上げてきました。

★しかしながら、21世紀に入ってソサイエティ5.0やSDGsなど時代の激動を見通しながら柔軟に舵を切る組織が求まられはじめました。特に今回のパンデミックという予測不能な時代に世界同時的に直面した私たちは、そのことを強く実感しています。

★こういうリスクをマネジメントするには、この縦の組織は必要です。しかしながら、しなやかに速度感をもって対応するには、横や斜めの組織的動きや外部とのネットワークも欠かせません。世界に開かれつつ、リスクを回避するというセキュリティマネジメントの両立が校長の重要な使命です。

★校長先生の使命も、今までにない新しい使命に変容しています。そういう意味では、NDの栗本校長のマネジメントは縦と横と斜めと外部ともっと大きな世界を丸ごと視野にいれて強く柔らかいものです。校長にとって新しいマネジメントの典型ではないでしょうか。

★私はこのような組織こそ「学習する組織」だと思います。

|

« 工学院インパクト(07)PBL授業の進化~生徒が自らPBLを生み出す拠点としての教師のPBL授業 | トップページ | ポストコロナの大学入試問題(06)一般入試と総合型選抜の違いは縮まるか? »

創造的才能」カテゴリの記事

中学入試」カテゴリの記事

創造的対話」カテゴリの記事

入試市場」カテゴリの記事