品川翔英の進化(05)国語科PBL完成形もうすぐ
★今春から、品川翔英は名称変更、共学化、授業のPBL化(アクティブラーニングという名称も使っているようです)、ルーブリック創出、探究プログラムのデザインなど大きく展開しはじめました。そのとたん、今回のパンデミックで、一気呵成にオンライン授業に挑戦という劇的な教育出動を開始しています。
★3月に柴田校長に呼ばれて、言語で考える教科である国語科の先生方とランゲージアーツやIBのTOK、認知科学などの世界で行われている言語活動も結びつけられないかと頼まれました。PBLやアクティブラーニングでは、国語で学ぶ言語以上の幅のある言語学的要素が必要になるので、何の権威もない私ですが、ただただ多くの学校の先生方と研修やワークショップの経験値だけがそこそこあるのでよければということで、先生方と状況の確認と大転換の状況下で先生方が何をしたいのかその都度リフレクションしながらやっていくことにしました。
★20年以上、学習系の領域について語り合ってきた柴田校長の友人らしいので、しかたがないと国語科の先生方は思ったでしょうし、思っているでしょうが、互いに尊重し受け入れ合う関係がすぐにできました。この信頼関係を創ろうとする寛容でウェルカムの精神は、品川翔英の先生方のメンタルモデルの大切な特徴の一つだと感じています。
★先日、田中幸司先生のハイブリッドPBL型授業を国語科でシェアしました。プレゼンを聞いて、7つの切り口で相互にフィードバックし合うリフレクションワークショップです。リアルなワークショップだと、U理論に基づいたスクライビングから出発するのですが、すぐにオンライン授業に突入したため、ワークショップもオンラインに突入しました。
★そこで、いつもならスクライビングのあとに分析する10人くらいの専門家(教育学、学習理論、社会学、認知科学、文化人類学、コミュニケーション理論、哲学など)の目をカード化したりアイコン化したり、座標軸化したりして、対話するシステムを創りました。
★以前は、この専門家の目を、私なりに文献リサーチと実践と専門家とのメールのやり取りなどで身につけたノウハウとして、ワークショップの時に共有するという形式で行ってきたわけです。
★その過程で、専門家の本を読みたいという先生も現れてくるという流れでした。
★ところが、Zoomだとミュートを使わざるをえないし、ドコデモシートやイーゼルパッドで自在にスクライビングすることもできないし、対話の息づかいを感じるセンサーが制約をうけるので、専門家がフィードバックする多様な目を見える化し、その目を通して語り合うシステムを創りました。
★これは品川翔英の先生方をはじめ多くの私学の先生方とオンライン上で実際に行いながら、精査されてきたものです。このシステムで大いにフィードバック&シェアのリフレクションができると、多くの気づきを生み出すことができます。そして、それを先生方はすぐに授業に活かします。こうして、PBLの授業のアップデートが起こっています。
★今回、田中先生のオンライン・リフレクションは2度目です。当然アップデートしていたのですが、その質の豊かさと生徒の学びの充実度が急激な進化を遂げていました。仲間の先生方は、こんなコメントを田中先生に贈っていました。
今井先生 : ありがとうございました。1学期の生徒の反応や取り組みを踏まえて、2学期にさらに発展させた内容になっていて、とてもよかったと思います。生徒主体の表現の授業は飽きずに楽しめそうですね。生徒に題材を決めさせてもいいかもしれませんね。
平岡先生 : 教員が作った動画を複数人で観るというのはとても面白いと思いました。また、1分間スピーチのお題ややり方が練られていたので私も高1で使わせていただきたいと思いました。しかし、何より興味深かったのは様々なアクティビティがある中で、先生がお話しする雑学が楽しかったという意見が出ていたところです。私たちの役割の大事な一面だと改めて感じました。
西山先生 : 大変勉強になりました。ありがとうございました。様々なアクティビティーを駆使した、創造的な授業作りをしていらっしゃり、感心いたしました。本間先生の最後のお話を聞き、焦りを感じますが、日々変化ですねー。頑張ります。
平岡先生 : 田中先生の授業研究の熱意に感動しました。今授業を担当している高校1年生でもいろいろな表現方法を身につけさせて、3年生になったときに自分の進路に向けて自分を物語れる子になってほしいと思いました。本日はありがとうございました。
今井先生 : 田中先生の授業から、生徒主体の授業で楽しい授業を展開するためには、やはり教員側のレクチャーも同様に生徒の興味を引くものでなくてはならないと改めて実感しました。生徒の発達段階に応じて、そういったレクチャーの面も改めて考えていく必要があると思いました。
★今回は、古典と漢文、国語表現の授業をデザインし、実践したものを田中先生はプレゼンしてくれましたが、生徒が考えアウトプットするアクティビティが充実していたことと、何より思考スキルを生徒が使うラテラルシンキングのオリジナルの言語ゲームが創意工夫されていたのは驚きでした。
★意味論、モチベーション、ツール、ロール、ルールを統合した学習状況を生み出すPBLになっていたのです。
★2時間半のワークショップが終わった後に、田中先生は、こう述べています。
田中先生 : 本日は、様々なご意見をいただき、また新たな方向性や可能性をご提示くださり、本間先生、国語科の先生方、ありがとうございました。学年にも報告いたします。志望理由書作成の新たな指導方法にも取り組んでみたいと思います。学校改革をしていく上でのヒントもたくさんいただくことができました。今回の研修を励みにして、一層取り組んでいきます。
★そして、自らこう述べてしまってから、ああ、しまったハードルを上げてしまったと。一同大笑いでした。毎回、こうして先生方は自らハードルを上げてしまうのです(笑)。そして今回の田中先生のように、次々とクリアしてしまいます。
★今回の田中先生の授業デザインの内容といい、ICTを含めたシステムといい、フローといい、アンケート調査というリフレクションといい、ある意味パーフェクトでした。10人以上の世界の専門家の目をクリアしているのですから、世界標準のPBLです。しかし、これでよいということはないのです。新たなハードルを自らマインドセットしていくわけです。
★田中先生の国語表現は、高2で行っていますから、志望理由書の表現に行き着きます。ということは、物語構造分析とそれを活用した編集視点は重要であり、それは現代文の小説の授業で扱えるとなりました。これについては、今井先生が授業デザインを描きまたシェアするということでした。
★もちろん、その学びが、「私は何者か」を物語る志望理由書にもつながるようにと。
★また、実は、ここまでの完成度の高いPBLのデザインと実践は、1年かかると思っていたのですが、オンライン授業によって加速度的に進化したという点もあります。それは、みな実感しています。
★そこで、田中先生が絶賛するアクティブラーニングとICTの学内教員研修をやってのけた平岡先生が、生徒のラーニングバイメーキングによる作品を創って同時に発表する技術も含め「国語科ICT教育」のシステムについてシェアするということになりました。
★さらに、西山先生は、志望理由書は、言葉によって相手の気持ちをゆさぶり響き合う魅せる表現技法が大切だからと、短歌・俳句・詩歌の表現技法と相手を自分の世界に巻き込むことばの使い方を授業で実践したいと。それをみんなでまたシェアしようということになりました。
★それらをすべて集大成させた国語表現の授業デザインについては三度田中先生が挑戦するということになりました。
★あっ、それから、次回は<PBL授業ーテスト―ルーブリック評価―ポストコロナの新しい大学入試問題>のサイクルにつながるような「テスト」を作成してみようということになりました。中学入試問題や高校入試問題は学校の顔です。同じようにミニテストや実力テスト、単元テストはPBL授業の顔であり、未来へのトランジションなのですから。
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