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2020年8月13日 (木)

新渡戸稲造の学校 恵泉の内なる光 神谷美恵子の「生きがい」

★昨日、恵泉女学園中学・高等学校の校長の本山早苗先生からハガキをいただきました。その中に、「・・・このような状況下だからこそ、生徒のために益々事を行動にうつしていきたいと願っております。・・・8月9日 長崎に祈りを込めて」というメッセージがありました。

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★本山先生は、ご自身も恵泉で学んでいますから、新渡戸稲造に薫陶を受けた河井道の精神を今に伝える私学人です。その精神に大きな影響を与えたのはクウェーカーというプロテスタンティズムです。「フレンド」と言った方がわかりやすいかもしれません。

★300年前に、ピューリタン革命がイギリスであったのですが、その革命の大切さを認めながらも、戦争絶対反対という絶対平和主義者の小さなグループがルーツだと言われています。

★300年も時がたっているわけですから、フレンド派も紆余曲折ありました。オバマ大統領のマインドにも影響を与えていると言われている米国のかつての神学者ラインホルド・二―バーからは、批判の対象にもなっているのは有名です。二ーバーの心を揺さぶる存在だということですね。

★ニーバーは聖戦論者であったらしく、絶対平和主義とはあり得ない理想を掲げていると思ったのでしょうか。しかし、20世紀以降のフレンド派は、理論よりもまずは「事を行動にうつす」ことを第一にしているのです。

★ですから、河井道は、フレンド派の支援によって、米国留学も果たせたし、戦後教育基本法の教育刷新委員として成立メンバーでもあったのです。しかも、そのときのメンバーの多くは、新渡戸稲造の弟子だったのです。その弟子たちの娘に神谷美恵子がいました。彼女もまた新渡戸稲造の精神に影響を与えたフレンド派のマインドに共感しています。

★語学堪能で、医学への道に進み、精神科医の道にもすすむ「事を行動にうつす」人でした。その神谷美恵子の著作「生きがい」は今もベストセラーですが、その中にこうあります。

 「答のないことを自覚する者は、自己陶酔に安住することを許されず、この虚無を克服するすべを、社会のありかたのなかにも、毎日の生活のいとなみかたのなかにも、心の持ちかたについても、探求しつづけなくてはならない。自分だけ、または自分の属する集団だけが「救い」にあずかれば、―― そう確信することにそもそも問題がありそうだ が―― あとは知らん顔することはゆるれない。 また自分を「救った」生きがいが万人に有効であると信じて押しつけるのも、単純すぎるというものではなかろうか。

神谷美恵子. 生きがいについて――神谷美恵子コレクション (Kindle の位置No.3480-3485). 株式会社みすず書房」

★新しい学習指導要領にある、答えのないの問いや「探究」のコンセプトとは随分違いがありますね。

★その違いは、「事を行動にうつす」ことを「生きがい」とするかにあります。神谷美恵子はこの「生きがい」を「存在理由」とか「生存理由」に置き換えていますが、それはともかく、本山先生のマインドと共鳴共振していると感じ入ったのです。

★フレンド派は、戦後、ワールド・フレンドシップ・センターまでつくり、広島と長崎の原爆の悲惨さをわすれないために、日々活動しています。恵泉の平和教育とも、もちろん通じています。

★「長崎に祈りを込めて」というフレーズには、そのような新渡戸稲造―河井道―神谷美恵子と続くマインド、つまり、無限に続く内なる光の意味があるのです。

★戦後、天皇の処遇を巡って、河井道はGHQに働きかけました。「事を行動にうつし」続けたわけです。その皇室一家が、日本人が忘れてはならないと言っている4つの日がありますね。6月23日の「沖縄戦終結の日」、8月6日の「広島原爆の日」、8月9日の「長崎原爆の日」、8月15日の「終戦記念日」がそれです。この4つの日の1つの「時」に本山先生からメッセージを頂いたのです。

★平和を守り続けるためにも、この4つの日にかかわりながら、同時に「自分の属する集団だけが救いにあずかればよい」のではないという思いを再度確認しなければなりませんよ本間さんと、本山校長のメッセージにはこめられているのだと思います。

★たしかに、今も頻繁に流れている沖縄、香港、米中などのニュースを当事者として受けとめられるかどうか。明治開国の時から日本に訪れる「事を行動にうつし」てきたフレンド派のマインドは、今も恵泉に引き継がれています。河井道、南原茂といった戦後教育基本法にかかわったメンバーには、私学人がたくさんいます。

★私自身はフレンド派ではありませんが、≪私学の系譜≫を追って、私立学校研究家と称しているわけです。大いに共感するところがあります。しかし、「行動にうつさないと」意味がないわけです。どうやら出動せよと背中を押されたのだなと了解いたしました。気づきをありがとうございました。

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