中高生の活躍(02)聖学院「中高生社会起業家トークセッション開催!」
★本日8月8日(土)、聖学院協力のもと「 中高生社会起業家トークセッション〜次世代から学ぶアフターコロナの社会のつくり方〜」開催。司会はもちろん児浦先生(聖学院21教育企画部長・国際部長・広報部長)。
★コロナ禍の中でも様々な取り組みを進め、活躍している山口由人さん(Sustainable Game代表・聖学院高1年)と佐藤夢奏さん(株式会社まなそびてらこ代表・千代田区立麹町中2年)によるトークセッションでした。小学生から私のようなお爺ちゃんまで多くの方が参加していました。
★山口さんは中学生の時、佐藤さんは小学生の時に起業し、現在社会起業家として活躍しています。2時間、児浦先生の名司会のもと、お二人は対話しっぱなしでした。
★最初は自分たちの想いを語っていました。もちろん想いといっても近況報告ではなく、起業の理念や精神、起業哲学です。社会を変える一つの場として教育もあって、学校も変えたいと。なぜなら、学校は客観的なものを重視し主観を大事にしない。でも好奇心や興味関心、本質的なMotivationこそ大事で、そこを大切にするには教室という箱では収まり切れないのだと。とくに、客観的でなければという強制はすべてをぶちこわすと。ここは佐藤さんが強調していました。
★だから、もっと主観や好奇心を大事にして、みんなでそこでつながりながらワクワクする活動をしたいと。それがいろいろなワークショップだったりプログラムだったりするのだと。仲間がどんどんふえていくと、その延長上に未来社会があるのだと。
★ここは実におもしろいですね。実は戦後日本の教育は、主観は蓋をしなくてはならなかったわけです。特にGHQはそこは蓋をして、日本人を生かさず殺さずにしたかったのでしょう。1957年のスプートニクショックでそれはピークになりました。
★徹底した客観主義と科学主義で、テレビでは鉄腕アトムや鉄人28号、ウルトラマンとそれは拍車をかけたわけですが、主観は恣意的になってあの第二次世界大戦の悪夢を生み出す温床だとみなされてきたわけです。もちろん、それを証明する手立てはないのですが、国語の教科書が主観と客観の二元論どまりで、相互に依存し合う主観が客観を生み出しているという思想界や科学界のパラダイム転換はずっとスルーしてきたのです。
★ところが、主観が大切であることと仲間が大事だというお二人の思想は、intersubjectを前提にしています。とにかく分断をなくすことをしたいのだと。その根源は実は主観と客観の二項対立図式だったんだというのでしょう。ファシズムに封じ込まれたフッサールが、この危機の警鐘を鳴らしながら死を迎えるのですが、今フッサールのintersubjectの松明がようやく中高生起業家によってふたたび輝きを取り戻したのです。
★私はもうお爺ちゃんなので、彼らのつくる未来社会では生きていませんから、静かに耳を傾けていようと思っていたのですが、日本人は自分の立場をはっきりさせない。ちゃんと立場をはっきりさせて対話をしたほうがよいという話を聞いたり、ところで具体的にどんな仕事をしているのですかという質問に、多くの企業や団体とコラボレーションし、SDGsのように格差をなくし、誰一人おいていかない社会をつくるために、そのような企業をサポートしていますと。
★これはおもしろい。ここまで明快に意思を表明し、起業をしたというのはすごいことだなと思い、もう少し起業のフィロソフィーを聞いてみたいとつい思ってしまいました。それで「もし応援している企業が表向き社会貢献活動をしていても、実は利益第一主義だったとしたら、応援し続けますか?」と。コロナ禍ですから自粛か経済かともつながり、立場がはっきりすると思ったのです。
★すると、明快に、革命ではなくトランスフォーメンションだから、たしかにそういう企業もあるけれど、対話によって少しでも変わってくれるとよい。バランスではなく、やはり対話によって気づいてくれればよいと。そこからなんだと。
★世界を見ているなと感動しました。さすがは経営者だとも感心しました。そして、山口由人さんが「社員をサーフィンに行かせよう」という本を紹介してくれました。イヴォン・シュイナード(米パタゴニア社創業者)が書いた本です。山口さんも彼の哲学と共振するから、詳しくはこの本を読んでくださいと。
★アウトドア関連製品をつくっている会社ですね。優秀なアスリートを社員として迎え入れているようです。そして、サーフィンは比喩で、自分のスポーツをいついかなるときでもやりにいってよいよと。その代わり、自分の仕事を肩代わりする仲間をみつけなくてはなりません。それはお互いにですから、今度は自分がどうぞいってらっしゃいと言う番になるかもしれません。
★登山もサーフィンも人間の予定に合わせてくれません。登り時や波の状態に合わせて人間は動かなくてはいけません。予定は常に未定です。ですから、いつでもどうぞと。これは効率が良いし、でもエゴイズムではなく、ちゃんと協力する。
★あれっ、こんな社会を夢見て実際にテキスタイルのアート工房を経営していた作家がいたな、そうそうウイリアム・モリスだ。なんとお二人もアートコミュニケーションをワークショップにと入れているから、なるほどなるほどつながったなあと。
★そして、何よりこの本の巻頭推薦文はあのナオミ・クラインが書いているのです。ミルトン・フリードマンのリバタリアン主義や20世紀末から驀進している日本の新自由主義をはじめグローバリズムに対する批判者です。だから、山口さんも佐藤さんも、リバタリアンでもコンサバでもないわけです。それを明快に主張できるフィロソフィーを表明しながら資本主義の活動をしている。
★まさにrevolutionaryではなくregeneratorです。格差を増幅させる資本主義から格差を解消する新しい資本主義に変容させる活動。社会的インパクト投資のねらいはここにあったわけです。
★このようなことを今の教育で行うことは無理でしょう。やはりregeneratorの活躍に期待するしかなさそうです。私のようなお爺ちゃんは、せめてregeneratorが生まれる環境をつくる挑戦をするのが精いっぱいかもしれません。孫がお二人のような中高生になるには、12年以上かかります。
★そこまで生きていたいですが、こればかりは神のみぞ知るですから。遠い未来ではなく、この近未来をどう生きるかですね。もちろん、それは遠くにつながっていると信じて。今回のテーマである「次世代から学ぶ」を思い切り堪能できたトークセッションでした。すばらしい機会をありがとうございました。
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