ノートルダム女学院(04)哲学対話を大切にする学校。
★前回ご紹介したように宗教の山川先生は書道の授業とコラボレーションしていたわけですが、実は保健体育の授業や社会科の授業ともコラボしています。山川先生は中1~高2までの全学年全クラスの宗教の授業を担当しています。そこでは、哲学対話ベースの授業を展開していますが、そこで大切にする問いを互いに投げ合うスキルは同校の国語科で活用している言語技術のスキルとも親和性があります。
★カトリック学校の宗教の時間は、聖書訓詁学の場合が多く、多くの生徒が忍耐を強いられるのですが、山川先生の授業は評判が高いのです。対話ベースですから、考えることをします。しかも宗教は、自らを振り返る内省的マインドフルネスが膨らみますから、真剣にならざるをません。
★ノートルダム女学院の教育を知るには、山川先生の宗教の動向における位置づけを探る必要があるとピンときたので、オープンスクールが終わったその日の夜にZoom対話を申し込みました。お疲れにもかかわらず、快諾していただけました。
★哲学的に深く時を超える壮大な話であったので、私の力ではうまくまとめられませんが、山川先生の宗教の授業は、哲学的なアプローチであるということとその哲学が現実の中の矛盾を見出し、それを引き受け解決の道を切り拓いていくかなり実存主義的なものだと了解できました。
★最もおもしろかったのは、ノートルダム女学院では宗教はテストも成績もないにもかかわらず、多くの生徒が授業に立ち臨むモチベーションが高いということです。山川先生は授業の素材はできるだけ身の回りで起きている旬の話題を使うし、動画も使います。オンライン授業でおそらくICTを多元的に活用する優れた面も見せました。
★そういう意味ではハイテク実存哲学対話を生徒に仕掛けているのでしょう。
★もちろん、教師になりたては、この成績に関係しない宗教の時間へのモチベーションを生み出す創意工夫は想像を絶する苦労をしたようです。
★しかしながら、生徒は気づき始めたのでしょう。実存的宗教の時間は、自分を見つめる時間だし、アイデンティティを再構築する時間でもあると。すると、AO入試/総合型選抜入試にも直接つながる授業でもあると。
★このタイプの入試は、知識の定着度よりも、自分とは何者かを振り返り創出していることを表明する入試ですから、学びと進路がつながる大切な時間が学校の中にあるというのは同校の生徒にとってはアドバンテージが高いでしょう。
★卒業するまでにすべての生徒が哲学対話を体験することができる学校。そんな学校は他にあるでしょうか。
★しかも、同校にはアカデミックな哲学授業を展開する社会の霜田先生までいます。ポストコロナは新しい哲学の時代だと言われています。来年のダボス会議の大テーマは「ザ・グレート・リセット」であり、サブテーマは「資本主義から才能主義へ」です。
★山川先生は、この背景に哲学や聖書のマインドが隠れていることを見て取り、霜田先生と同様、しかし別角度からこの世界の動きを哲学対話してみるということでした。
★コールバーグとギリガン論争という道徳とSDGsのジェンダーの問題についても今後話していこうということにもなりました。またご報告いたします。
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