ポストコロナの大学入試問題(05)高3生徒との対話を通して1919年に立ち戻る 思想の自由の市場化の原点へ
★AO入試に取り組んでいる高3生は、今猛烈に自分の学びのアップデートをしています。彼らと対話をするとき、やはり体験から学ぶということは互いに大切にしていますから、いまここで何が起きているか、何が問題なのか、見えない何かが見えてくるのか、ファクトと思いこんでいることが実はファクトとしてどのように創作・捏造れたものなのか、紐解いていきます。
★マスク問題、トリアージの問題、安楽死の問題、芸術の自由の問題、インフォデミックの問題、監視問題、情報の非対称性の問題、都市デザインの問題、もちろん民主主義の問題などについて対話していくわけですが、対話をしていくにつれて、専門的な知識や技術、戦略の話は、深くは大学に行ってからの話で、今は当然そこにはいることはできないわけですから、大学に行きたいというモチベーションや情熱がメラメラと生まれてくるのです。
★そうなってくると、彼らは、論文を見つけてきては、その論点を整理して、それぞれテーマは違うのに、原理的なというか基本的な考え方というか基礎の視点は、にかよってくることを了解していくようです。そして、その視点が自分の内なる視点でもあるところにまで気づき始めます。ここが極めて大事ですね。
★私の方は、論文の書かれた時代背景や歴史的なルーツの展望について知っておくとT字型探究が促進し豊かになるかもと気づいたときは、この点を調べるとよいのではと、いっしょにweb検索しながら対話していきます。今は一冊の本を読んでみたいということになって、この時間がないときにがんばるなあと感心しています。
★彼らは、問題をまとめるときには、マトリクスとフローチャートを使いますね。そういう思考ツールの使い方ができているのですから、ああ彼らの学校の先生方はやるなあと学校の学びの姿勢が伝わってきます。基本PBLの授業だそうです。なるほど。
問題になっていることについて
・個人と国家の関係
・当事者の関係
・個人の意思の問題と壁の葛藤
・制度と倫理の関係
・文化の多様性の問題
・技術の問題
★などについて議論になるわけですから、これらの多様な切り口というかアプローチはどの問題にも共通しているなあと彼ら自身が感じ始めています。彼らなりの社会分析理論を構築しているわけです。これも極めて重要ですね。世界制作の視点は内なる自らの視点になてちることが大切でしょう。受験という枠を超えているかもしれませんが、これからの大学入試はそういうことを求めるようになるでしょう。
★もちろん、その視点が視野狭窄的では困ります。だからリサーチだし、論文だし、文献だし、何より対話なのです。
★そんな感じで対話をし続け、上記の関係が相互にどうなっているか関係づける段になていきます。これがまた一苦労です。
★それに、その苦労を通して、決定的に足りないところがあることに彼らは気づいていきます。「ああ」という響きは、オンライン上を駆け巡ります。そこから、もちろん自分の考えは深まるけれど、やはり専門的な扉をたたきはじめます。それが探究のいや研究の始りかもしれません。
★そんな対話を通して、私自身も、1919年に日本を訪れたときのデューイの講演集が「哲学の改造」としてまとめられていることの歴史的意味にぶちあたりました。
★今コロナ禍で起きている問題は、1919年(戦争とパンデミックという状況でしたね)に戻ることによって、とんでもないことが起きているということがわかります。それは100年後の2019年の愛知トリエンナーレの問題で噴出していました。このときから、コラナ禍の政策が、1919年に生まれた多様な近代の発想を封印していることがわかります。
★デューイはその渦中にあって、PBL型のプラグマティズムを形成していきます。もちろん、本人はそういうつもりはなかったようです。というのも、当時プラグマティズムというのは、イギリス功利主義の影響を受けたジェームズの思想を代表していたようです。
★しかし、ヘーゲルに学び、その観念論を実用的な、今でいう社会実装に持ち込もうとしたデューイも社会有用性という観点から今ではプラグマティズムの系譜にはいっているわけですが、プラグマティズムでさえ、複雑です。
★がしかし、東大、一橋、慶応大学、関西大学の学問の価値様式は、1919年の思想の自由の市場化という流れにあるということがみえてきました。もちろん、ひとくくりにはできませんが、その流れはかなり濃いですね。詳しくはいずれ。
★デューイとは違うけれど、功利主義的でリバタリアン的な自由の市場化の流れが、あって、日本社会では、それはせき止められているということもわかてきました。新自由主義と思想の自由の市場化とは全く違う概念です。PBLはさらにデューイ時代は看護系や医療系でも生まれていますから。なんとも今日のパンデミックにおける医療の在り方が、たしかにPBL的なプラグマティックな様相を呈しているのも、歴史の重みを感じるのですが、そこを見えないようにしているなんらかの作用は一体何なのか?
★もちろん、彼らとは、ヘーゲルのへの字も出さないし、プラグマティズムがどうのという話もしませんが、論文を読んでいくことで、彼らが自分で見つけてきます。
★そして、彼らは、答えのない問いを見つけて愕然とし、だからこそ奮い立ち、挑もうとするわけです。
★学校の授業で、答えのない問いを学ぶというのとはちょっと違う、根源的な問いです。その問いを見つけたからには、避けて通ることはできません。いや避けて通ることはできます。
★時代の流れに便乗するか、流されるかといった道を選ぶか、自ら新たな道を開くのか。その根源的な問いを前に意思決定がなされるわけです。
★エっ!?根源的な問いとは何?それは自ら発見するものです。PBLとは、この根源的な問いを掘り起こす場だということが1919年に立ち戻ることによって改めて実感しました。「改造」という日本語があまりよくないですね。原文の<reconstructipn>のほうがピンときます。デューイが日本に立ち寄って、<reconstruction>を考え語ったわけです。PBLの原点はここですね。今更ですが、あっ!つながったという感じです。
★高3生と対話しながら、100年の系譜と未来への系譜に想いを馳せることになりました。彼らに感謝です。気を引き締めて対話を続けていこうと思います。
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