アサンプション国際小学校の意義(01)生徒を迎える前日の研修コミュニケーションの質の高さ①
★ローマは一日にしてならずという言葉は、アサンプション国際小学校の質の高い教育構築においてもあてはまります。昨日午前午後と夏期教員研修を開催しました。阿弥先生、海見先生、谷口先生というPBL部会のチームが企画して運営、実行しました。私は、午後の部からZoomで参加。ブレイクアウトルームを使わずに、各チームごとリアルな教室に分かれて授業分析をしたのです。ハイブリッド研修です。
★各教室に一台PCを開いて、Zoomを接続しておきます。離れているので、ハウリングは全くありませんでした。このような環境を創意工夫するPBL部会チームとそれを絶大にサポートするICTに精通しているメンバーのおかげで、今回のようなハイブリッド研修を実施できるに至ったのです。
★各チームが話し合っている中で、ときどき質問がきます。たとえば、「Do Nowって?」「プラットフォームとはここでは何を意味しますか?」「言葉の定義よりも、その言葉から私たちなりの意味やイメージを語り合うでよいのですよね?」「セカンドブレインって?」「これって、メタ認知ですか?ベタ認知ですか?」「スキルよりストラテジーに集中して議論しているのですがOKですか?」「内省とは、ここではリフレクションのことを想定していますか?」「リアル時空とサイバー時空に分けて考える理由は?」など。
★ホストの阿弥先生が、プラットフォームで質問があるチームがありますと先生方に投げかけると、そのチーム以外は、ミュートにします。各チームにはファシリテーターがいるので、スムーズに事は運びました。
★最初の90分くらいは、質問以外は耳を傾けています。すべてのチームの議論や対話がいっぺんに聴こえてきます。聖徳太子ではない私には、細かい内容までは、わかりませんでしたが、先生方の情熱と生徒への愛情が伝わってきました。
★今日から生徒が登校してきます。その前日に先生方が集まって、自分たちのPBL授業について、抽象的にではなく、授業実践例をもとに、多角的に分析していき改善しています。多くの気づきやアイデアも生まれたようです。
★多角的というのは、いろいろな理論を活用しますから、どうしてもファシリテーターが必要になります。今回各チームにファシリテーターがちゃんと存在しているのはそういうわけです。
★学問的な理論と現場の実践例からうまれてきた先生方1人ひとりの理論が結びついたとき、化学反応が起こり、授業の質が高まります。豊かになります。しかし、それには対話という場が必要だし、化学反応が起こる触媒が重要な役割を果たします。ファシリテーターがそうなのですが、今回、ファシリテーター自身も分析やアイデア出しに参加するので、ジェネレーターという二重のロールプレイを果たしました。
★いや、本来ジェネレーターのロールプレイでよかったのですが、ファシリテーターを行うということで、引っ張り過ぎないセルフマネジメントが働くようにしたのです。この阿吽の呼吸は、教務主任阿弥先生と出会って5年目くらいになりますが、研修対話を重ねることで、生成されたものです。
★まさにローマは一日にしてならずです。基本「学習する組織」を形成することもねらいにしていますから、研修を行うにいたる準備段階の私との対話や先生方との幾重となく実施した対話が広がり深まっています。先生方はとにかく忙しいですから、副校長の三宅先生や教頭の蒲生先生のコーディネートサポートも重要でした。
★もちろん、理事長のシスター宮本、校長丹澤先生のPBL授業でカトリック精神を育み、世界を変えるのだという大いなる信念があるからこそできるということもあります。
★とはいえ、そんな良好な環境が最初からあったわけではありません。三宅先生は途中で姉妹校のカトリック校に異動になるし、最初の3年くらいはPBLはそもそも必要なのかというせめぎ合いの攻防戦でした。
★阿弥先生と協力してきたファシリテーターの教師もやむを得ず途中で離脱したということもありました。それでも、海見先生のように阿弥先生といっしょになってPBL授業にチャレンジする先生もあとをたたなかったのです。
★だって、授業の中で教師と生徒ばかりではなく、生徒と生徒がコミュニケションや対話、議論をとるときのワクワクしている様子や、真剣なまなざしなど、愛と情熱と創造が教室に響き合うのです。
★必ず、教え込む授業よりPBL授業が圧倒するはずだと確信していました。学習する組織とは、生徒中心主義ではないのです。学習者中心主義です。学習者は教師も生徒もなのです。
★ハーバード大学のロバート・ギーガン教授らによると、大人も成長するし自己変容するのです。最近はやりの単語では「トランスフォーメーション」ですね。変容、変身、変化、成長・・・。喜怒哀楽の大波小波はありますが、それを乗り越えていくときのワクワク感を一度味わうともうやめられません。
★それにしても、ルソーやピアジェ、MITメディアラボの教授らの成果を、自分たちの実践の中で証明しています。阿弥先生とよく話をするのは、理論は実践の後付けであることを忘れないようにしようと。理論に引きずられると、生徒不在ということはよくある話ですねと。しかし、にもかかわらず、理論は鏡だしモニタリングのときには必要なのだと。
★だから、阿弥先生の実践をリサーチすると、ここにはビゴツキーが顔を出し、あちらにはピアジェが顔をだし、そこにはデューイが顔を出し、向こうにはシーモア・パパートが顔をだしている。そしてルソーが飛び回って祭りをはやし立てているねと。つまり、多様な理論が整合性をもって適合されているのです。しかも、ICTの技術も身につけました。最強です。
★自己変容とは、実は過去現在未来にわたって多くの人と内省的ネットワークや出会いがあることです。ワクワクしないはずがありません。風通しが良く、オープンな学校は大事なのですが、たいていの場合、外形的ネットワークです。こんな偉い人と会ったとか知り合ったとか、招いたとかいう話です。
★それももちろん刺激的でよいのですが、どうせつながるのなら内省的絆です。置き換えると「愛と情熱と創造」的な絆といいます。この絆こそ「学習する組織」の真骨頂ですね。
★このような組織が、学校全体に広まるには、時間がかかります。たいていの場合、待ちきれません。すぐに回答がでるパッケージに飛びつきます。しかし、授業は自分たちでいっしょに創っていくチームワークでなりたちます。もちろん、そのチームメンバーは教師と生徒とです。
★そのような組織づくりをGRITよろしくやってのけているのがアサンプション国際小学校です。(つづく)
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