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2020年8月28日 (金)

ポストコロナの大学入試問題(06)一般入試と総合型選抜の違いは縮まるか?

★一般入試も総合型選抜も「リサーチ」能力があるかどうかは問われます。ただ、問い方が、どれだけ調べてきて記憶して素早く取り出せるかという傾向になりがちなのが一般入試であるのは、言うまでもないでしょう。

★総合型選抜は、これから研究していこうという学問領域が明確になっていますから、当然その分野やその分野に関連する事象や現象、時事的問題については、興味と関心を広げ、自分なりに気づいたテーマであろうが提示されたテーマであろうが、その明快な領域についてリサーチしているかどうかを問われます。当然知識は必要になってきますが、それを覚えたかどうかで、そのリサーチ能力を測ることはありません。

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★一般入試では、したがって、リサーチ能力はダイレクトに測るのではなく、これだけ知識の量があるのだから、リサーチ能力もあるだろうという確率論的な評価です。

★総合型選抜ではダイレクトにリサーチ能力を評価されます。とはいえ、一般入試であろうと総合型選抜であろうと、一般的なあるいは基礎的なリサーチの方法は変わりはないのです。

★何が違うかというと、総合型選抜はリサーチの対象がはっきりしているし、そのリサーチの視点は、これから研究したいという学問の視点がどうしても必要になってきます。ICT関連の研究にしても、経済学関連の研究にしても、医療関連の研究にしても、専門的な高度な視点は、大学に入ってからですが、リサーチの切り口の視点が、その専門的なものの見方や感じ方の素養があるかどうかは必然的に問われます。

★一般入試は、基礎的(易しいという意味ではありません)な視点があればよいのですが、総合型選抜は、基礎的な視点と専門的視点を感じさせる素養が必要になってきます。

★経産省や文科省が「未来の教室」でPBLを推奨するわけですが、プロジェクトである限り、自分の興味と関心の色が濃くなりますから、一般的あるいは基礎的な視点だけを求めて終わる時代ではないことは、国もわかっています。

★法的拘束力があるので、なかなか変えられない学習指導要領ですが、それでも「総合的な探究の時間」や「理数探究」などの学際的な新教科を埋め込んでいるのは、一般と専門という特殊の複眼思考が大事だということでしょう。

★したがって、2021年の早稲田大学政経学部の一般入試は総合型の形式にシフトするのでしょう。

★そして、こうなってくると、一般入試でも総合型選抜でも、複眼思考型リサーチに基づいたアイデアとそれを証明するストラクチャーが問われることになります。もちろん、その本格度の開きはまだまだありますが、従来の一般入試に比べ少しギャップは縮まるかもしれません。

★そして、このアイデアにもストラクチャーにも、専門的知識の素養(あくまで素養ですが)が入り込みます。どうやって、それはリサーチがしっかり行われているかどうかにかかっています。小手先の素養風を書いても、口頭試問や面接のときに、アイデアのバックボーンについて問われたとき、入試対策の一環だけの話だったのかどうかはすぐに見破られます。

★そして、このバックボーンが、システム思考として表明したアイデアにうまくつながっているかどうかが質を感じさせるわけです。

★では、この質はどうやって豊かになるのか?それはリサーチ→ディスカッション→編集→プレゼンのサイクルを何回も回すことでシステム思考のループが増えていきます。まるで神経突起が、経験から学べば学ぶほど、対話すれば対話するほど、脳内で増えていくかのように。

★そして、このサイクルを何回も回す学びをPBLといいます。このPBLを教師が環境を整えている段階では、生徒は自分の血肉にはなりません。自らPBL環境をつくりそのサイクルを回していく必要があります。

★このPBLを体得する一つの方法として、上記の田村次朗教授の「交渉学」が役立つでしょう。志望理由書や小論文、面接の準備にも参考になります。

★「交渉学」は駆け引きや説得術とは違います。戦略的コミュニケーションと共感的コミュニケーションのシナジー効果を生み出すスキルです。ここでいうコミュニケーションとは、言語行為のことをいいます。

★さて、こうしてみてみると、やはり予測不能な時代の学びはどうなっていくかは自ずと見えてきますね。一般入試と総合型選抜の違いがいずれ縮まるビジョンが見えてくるはずです。いや、もともと一般入試だって、早稲田の政経のような方向をとりたかったわけです。しかし、数多くの受験生の選抜には難しかったわけです。

★しかしながら、今回のパンデミックがもたらしたオンライン授業の体験を通して、ここを乗り越えるアイデアがどんどん生まれてきています。

★今混迷している海外の大学の中で、ミネルバ大学が注目を浴びています。一万人を超す受験生を思考力入試で選抜しています。もちろん、オンライン上で行っています。

★入試がどうあれ、生徒自身がPBLを自ら行えるようになる時代であることは間違いないようですね。

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