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2020年7月27日 (月)

PBLの時代(02)PBLはポップ哲学を基礎とする。

★私たちがPBLの基礎としたのは、「3Rから3Xへ」というコンセプトで、それを提唱したシーモア・パパート教授の発想にヒントを得たということは前回話しました。今、レゴ®シリアスプレイ®に基づいてPBLが展開していますが、このレゴとICTを学びに結びつけたのが、そもそもシーモア・パパート教授なのです。

★今でこそ、聖学院のレゴ®シリアスプレイ®をつかった思考力セミナーや思考力入試が認知されて、多くの学校でレゴを使うようになりましたが、7年前はなんで遊ぶの?という声もありました。一方で中学受験って「ドラえもん」が使われることがしばしばで、教育道徳主義的業界人は、戸惑いました。何せ、麻布や女子学院が活用してしまうからです。

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★それでも、ICTを活用したPBLをやっていると、ICTなんか取り入れている学校は大学合格実績が出せないとか大手塾のシンクタンクの方が上から目線でした。でも、今となってはそうは言ってられませんよね。

★中学入試に臨む児童や大学の帰国生入試に臨む生徒と共通して話し合えるのが、「ドラえもん」以外には「スターウオ―ズ」があります。こんな本を使ってどうするの?ただおもしろいだけではないの?ともよく言われます。

★しかし、学びが楽しいというのはPBLでは無視できません。シーモア・パパートのレゴを使った3X学習はもともと幼児教育が原点ですから、楽しくなくてはというわけです。これはこれで、学びと遊びの関係について800字以内で書きなさいという小論文はひところ流行りましたから、受験屋こそここは腕の見せ所なんです。

★だから、ドラえもんやスーターウォーズが出てくるのは、本当は受験屋なら当然なんですね。それはともかく、「スターウォーズ」の著者ジル・ヴェルヴィッシュ先生は、フランスの高校で哲学を教えている教師です。同書はあらゆる哲学的テーマを扱っています。ジョージ・ルーカスの評価を所詮は娯楽に過ぎないじゃないかとかいやいやポップ哲学だよこれはとか分かれるところなどから書き始めていて、日本に限らず、真面目と非真面目は議論の分かれるところだなと読みながら笑ってしまいました。

★ジョージ・ルーカス自身は、シーモア・パパート教授と同様子供が楽しめるものづくりを目標としていました。ルーカスは映画、パパート教授はレゴという違いはありますが。子供はグリム童話や昔話は大好きですね。ディスニーランドは、多くの子供が好きです。もちろん、うちの娘のように、あれはグリムをアレンジしすぎ、あんなにハッピーエンドじゃないから好きでないと、いっしょにいこうよというパパの誘いを断る子は少ないでしょう。もっとも、これはパパとはいきたくないというのが本音でとりあえずもっともらしい理由を言っていただけだろうと思っていますが(汗)。

★それはともかく、ジョージ・ルーカスが、神話学者ジョセフ・キャンベルに大きな影響を受けている話は有名で、ジル・ヴェルヴィッシュ先生もそのことは同書で述べています。この神話学は、物語の構造論に影響を与えていて、現代思想の1つの軸になっています。RPGゲームは当然この普遍的な物語構造を活用していますね。ゲーミフィケーションというポップ哲学で了解していくことができるのは、この神話学が背景にあるからでしょう。神話学はユングにも影響を与えています。いやユングが神話学に影響を与えているのかもしれません。河合隼雄さんが人気なのは、やはり昔話の構造を紐解いたからかもしれませんね。

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★そんなわけで、上記の本は、この物語の構造を読み解く本としては実におもしろいのです。ジョージ・ルーカスやスティーブ・ジョブスが日本の文化に興味があり、GAFAがマインドフルネスに興味があるのは、実はZENの背景にある十牛図の物語があります。実はこの十牛図物語の構造もまたキャンベルの神話学があてはまります。源氏物語や更級日記なんかにもあてはまります。

★リベラルアーツや哲学は一見難しいのですが、ジル・ヴェルビッシュ先生のようにポップ哲学の切り口でアプローチすれば、子供からでも大丈夫です。P4C(子どものための哲学)ができるのも、実は日常のマテリアルを活用したポップ哲学的接近でいけるからです。

★というわけで、3XのPBLとは、そのベースにポップ哲学があります。レゴだとかスターウォーズだとかドラえもんだとか思考のツールとしてはなかなか優れものですよ。

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