ポストコロナ時代の教育(06)和洋九段女子のPBL 豊かな質感と新しい世界へのイノベーション①
★昨日(7月18日)、和洋九段女子の先生方とZoom対話。定期的にPBL型授業の研究会的な話し合いになっています。今回は本多先生の地理のPBL型授業の実践についてプレゼンがあり、それを参加メンバー5人でアナリーゼして新たな気づきを次に生かしていく流れになりました。
★チェックインは、緊急事態宣言下の一斉休校の時に行ったオンラインPBL授業の未知なる経験をやり切って今を迎えて、ポスト以前とwithコロナの今では、PBL授業について何か変化や新たな気づきがあったかどうか語るところから始まりました。
★対話をする際、デフォルト本として「協同と表現のワークショップ第2版~学びのための環境のデザイン~」の中から3つの図と表を活用しました。同書は私が敬愛し何度もワークショップを同行させていただいた上田信行教授と仲間の共著です。
★実践編であると同時に、本格的なケースメソッドで、その実践から抽出した一般化された考え方やシステムを考えるときの参考にしてきた本です。私にとってははワークショップの教科書です。
★しかしながら、同書はコロナ以前のワークショップの話であり、私たちが行っているPBLの参考である教育系のワークショップもそうです。ですから、同書をデフォルトにして、どこが変化したと感じているのか話すところからスタートしたのです。話すとっかかりは、3つの点にしました。
1)ポジショニング:座標軸に位置する多様なワークショップの中で和洋九段女子のハイブリッドPBLはどこに位置するのか?
2)パブリックオーディエンスとの関係デザイン:PBLを教師と生徒の間の完結型からパブリックオーディエンスにシェアしていく組織づくりはいかにして可能か?
3)学習観の変容:獲得型学習観、徒弟型学習観、協同型学習観に変わる新しい学習観は?
★1)に関しては、一点あるいは格子点としてのポジショニングは定まりにくく、むしろ座標にあるまわりのものと繋がりを持ちやすくなってきたと思いますとか、こういう座標軸としての授業デザインを意識するようになったのは確かに変化ですねという話が飛び交いました。
★さらに、客観的な知識だけではなく、第一象限の精神世界系、つまり自分と学びのかかわりの世界が大きくなったと思います。座標全体を縦横無尽に往来する授業が行われるようになったと思います。学校教育ですから、外との直接のつながりはかなり制約されていますが、今後の展開としてオンラインでならもっと繋がる可能性は増えてきていると感じていますという世界観や社会とのつながりの話にまで展開していきました。
★2)というのは、パブリックリレーションの話です。セミナーやワークショップに参加された方はすぐにイメージできると思いますが、そのようなイベントの時には、ビデオや写真を撮るスタッフがいたり、様子を取材している記者がいたりするもでのす。そして、その様子をパブリックオーディエンスにシェアしていきます。
★リフレクションを自分たちだけではなく、公にすることで、社会と共に豊かになるという<相互貢献の動き>を創ることが、ワークショップの醍醐味でもあります。自分たちが学ぶことが即社会貢献になるというわけです。
★授業も、結果的に学んだことが社会に生きるのですから、社会貢献につながるのですが、そこに行くまでに受験勉強とか入試とかいくつかのフィルターがあり、そこを通過しているうちに生徒は自分の学びが社会貢献につながるという意識は薄れていくものです。
★しかし、PBL授業は、学びが社会につながる実感を抱くことも目的にしていますから、パブルックリレーションは大切なのです。
★さて、この第2点めについては、まさに本の図にあるようなものが和洋九段女子でもできつつあると思います。新井先生がいつZOOMに来るか毎日ドキドキしています。だんだん今日は訪れてくれなかったんだ明日は来てくれるよねと生徒も待ち焦がれるようになっています。見られること、見せることの意識が少しながら広がったのでは?自分の顔は自分で見られませんし、ネット社会はオープンにすることで自分の価値を高めていくことでもあるという意識も生まれてきているような気がしますと。
★そのような対話を聴きながら、新井先生は、最初は新しい経験ですから、興味津々でZoomの全体のホストとして訪れましたが、まさかオンライン授業見学とその発信がこのような広がりを持つことになるとは思いませんでした。そしてこのパブリックリレーション、つまりPRの再定義に気づきましたと自分の気持ちをシェアしました。
★3)については、獲得型学習観や協同型学習観の融合が凄まじいという話になりました。
★2時間や3時間つづきのPBLは、生徒が配信したスライドを見て「前の時間、なにやったっけ?」と思い出しやすくなることで、より深く考えられるようになっています。反転学習のツールとしてオンラインが有効に活用もされましたと、生徒が自ら知識を獲得しに行ったり、そこから思考を深めていく能動性が如実に生まれてきたというのです。
★また、今後、外部の人をZOOMで呼びやすくなるので、より刺激的な授業になるという点では新しい協同型PBLを展開できます。ブレイクアウトルームを通して、協同の要素が強くなっていると思います。もちろんメリット・デメリットはあるのですが、このブレイクカウト時空は、完全に生徒主導の時間ですから、ここで豊かに対話ができる環境を私たちがどうデザインするかがポイントだと気づきましたという話も飛び交いました。
★今回は、Zoomやオンディマンド、プラットフォームの使い方の話はいっさいでず、そこはすでにニューノーマルになっていて、やはりハイブリッドPBLという新しい授業デザインの質感に先生方の意識は広がっていました。さあ、ここから、本多先生のハイブリッドPBL授業のケーススタディが始まったのです。(つづく)
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