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2020年7月 3日 (金)

2021年の入試(39)ハイブリッド時空での入試に変容するのは必至。クリエイティブ・クラスの時代が現実化。

★昨日の朝日新聞(2020年7月2日)に「筆記も面接も…入試もオンライン化 知識偏重変われるか」という記事が掲載されました。またその日、産経新聞では「東京は第2波が来たのか 経済止めたくない政府の思惑 」という記事を掲載。

★これだけ見ると、パンデミックの影響で入試オンライン化となり、もしかしたら知識偏重変わるということになりそうですが、コトはそう簡単ではなさそうです。

★パンデミックに限らず、世界リスクが身近になり、分断ニュースが流れているけれど、それだけ相互依存のグローバルな世界が拡大したというのが事の新相/真相/深層でしょう。世界フォーラムはここに一気に切り込み「ザ・グレート・リサーチ」だというわけだし、落合陽一さんも「働き方5.0」だと言っているわけです。

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★世界フォーラムは、「ザ・グレート・リセット」とは、<キャピタリズムからタレンティズム>だと言っています。COVID-19は、確かにこのコトをテーマに押し上げる大きなきかっけになっていますが、クラウス・シュワブ世界経済フォーラム会長は、このテーゼを、2013年にはすでに語り始めています。

★なによりも、落合陽一さんが「働き方5.0」の中でもキーワードとして活用している「クリエイティブ・クラス」もタレンティズムを象徴する言葉ですが、落合陽一さんは、この言葉はリチャード・フロリダ教授の造語だと説明し、それを再定義しながら使っています。

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★「ザ・グレート・リセット」という言葉自体、2010年にリチャード・フロリダ教授が著書のタイトルにしているくらいです。私が21世紀型教育機構にかかわって、2013年に同機構加盟校になるための規約の起草を手伝ったときに、「クリエイティブ・クラス」という言葉をいれさせてもらいました。また、同機構は、リベラルアーツの現代化も大事にしていますが。このリベラルアーツが「クリエイティブ・クラス」に関係するコトは、落合陽一さんも、同書で述べています。

★連綿と続いているなあと感じながらも、感慨にふけっているひまはないのです。タレンティズムやクリエイティブクラスという1人ひとりの才能を見出し、それを発揮する実装スキルをいかに身につけるかが今後重要です。

★落合陽一さんは、同書で、「オンリーワンにも、ナンバーワンにもなりなさい」と語っています。オンリーワンになったら、そのポジショニングでナンバーワンになりますから、自分の才能にこだわることは大切ですね。

★かくして、今回のパンデミックは、エポックメイキングな衝撃だったのですが、パンデミックが収束に向かったとしても、「ザ・グレート・リセット」は止まることはないでしょう。そして暗記知識偏重はなくなりますが、オンリーワンであるには、その領域やポジショニングにおいて誰にも負けない専門知識は必要だし、実は知識は経験によって創造されますから、主体的に知識を創ってもいかなくてはなりません。残念ながらこのようなことができるクリエイティブ・クラスとそうでないクラスの格差は、過渡期では生まれてしまうでしょう。

★そのような才能を見出す入学試験は、大学院であれ、大学であれ、高校であれ、中学であれ、小学校であれ、オンラインとリアルの時空のハイブリッド型になるのは必至です。

★落合陽一さんは、同書の中で、そんなクリエイティブ・クラスになれるかどうかは、自分に次の5つの問いを投げてみようと語っています。

①それによって誰が幸せになるのか。
②なぜいま、その問題なのか。なぜ先人たちはそれができなかったのか。
③過去の何を受け継いでそのアイディアに到達したのか。
④どこに行けばそれができるのか。
➄実現のためのスキルはほかの人が到達しにくいものか。

<落合陽一. 働き方50~これからの世界をつくる仲間たちへ~(小学館新書) (Kindle の位置No.1069-1072). >

★これは、それぞれ次のように置き換えることができます。

①´コントリビューション

②´クリティカルシンキング

③´コミュニケーション

④´コラボレーション

➄´クリエイティブシンキング

★の5Cです。21世紀型教育スキルとしてMicrosoftやAppleが立ち上げたそれぞれの21世紀コミュニティは、このうち①´を除く4Cでした。このパンデミックの経験を経て、コントリビューションというCが一番目に加わったのは、いよいよ強欲資本主義と決別しようというウネリでしょう。落合陽一さんだけではなく、世界フォーラムも動き出しているし、私たちの仲間も21世紀型教育を推進して動いています。

★この5Cのスキル。そして落合陽一さんの示す5つの質問は、世界の大学はすでに行ってきました。日本の入試も、中学入試における新タイプ入試では、すでに行われてきました。そういう意味では暗記知識からの解放はあるでしょう。

★先述の朝日新聞の記事では、東京都立大の「ゼミナール入試」を紹介しています。この入試を目指す<高校生らが、理学部生命科学科の講義をオンラインで受けた。同学科の「ゼミナール入試」は、6月~9月に前期・夏期・後期の約10日間の講義を受けて出願。受講成績などと、10月の面接で合否が決まる。新型コロナウイルスの影響で急きょ、前期ゼミはオンライン講義に切り替えた。夏期もオンラインにする可能性がある。同じ入試をしている地理環境学科もオンライン講義で始めた。担当者は「10月の面接などは今のところ対面で行う予定。ただ、第2波などがきたらどうするか。面接ならオンラインでもできるかと検討している」と話す>とあります。

★このように、面接や講義はオンラインで、実習や実験などはリアルな時空で、第2波が来たら、オンラインで実習などの代替をというコンビネーション、リスクまジメント、つまりハイブリッド型入試になるのは必然で、この入試がいかにタレンティズムのウネリにシンクロするかは説明するまでもないでしょう。

★もっと端的な形態は、すでにミネルバ大学がオンライン入試を最初からやってきました。それにミネルバ大学は、アクティブラーニングはオンラインで、フィールドワークはもちろんリアル時空でとハイブリッド講義です。

★教育の「ザ・グレート・リセット」の象徴的な大学です。ミネルバ大学のような形式は以前は異彩を放って受けとめられましたが、オンライン授業やテレワークが進むいまここでは、ニューノーマルとして受け入れられるでしょう。

★この「ニューノーマル」という言葉も、リチャード・フロリダが「ザ・グレート・リセット」という本の中で章立ててで語っています。クリエイティブ・クラスの時代がいよいよ現実的になってきました。その人材を生みだす教育の入口として、入試はハイブリッド型入試になっていくでしょう。大学や学校も、そのほうが世界の才能者と結びつくことができるからです。

★才能者あるいはクリエイティ・クラスの潜在的才能者とのマッチングシステムがAIによってより進みます。トークン化やコード化はその流れを促進します。そういう意味でもオンラインと結びつくハイブリッド型入試はますます拡大・促進するでしょう。

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