PBLの時代(03)世界を変えるPBLリーダーシップを創出 アサンプション国際小学校の挑戦
★昨日、アサンプション国際小学校の先生方とPBLについてZoom対話をしました。仕掛け人は同校の教務主任の阿弥先生。ニコニコしながら凄いことを実行してしまうので、驚かされます。昨年から何回も回を重ね、コロナ禍もZoomで幾度か対話して、実に慎重に進めていたかと思うと、ふと急転回のアクションにでたのです。
★PBLというプロジェクト型の学びの環境デザインは、都市創りと似ています。都市は物語であり、マシーンでもあり、自然との融和であり、幸せな人間存在の在り方を決定づけます。
★アリストテレス以来、人間は独りでは生きていけないというのは当たり前ですが、20世紀末はなぜか個人主義に陥り、再び社会性を見直す流れがあらゆる領域で生まれています。要素還元主義ではなく関係主義だとか構成主義だとか、認知科学や哲学の世界では言ってますね。
★この流れは、学習理論でも例外ではなく、ピアジェやデューイの関係主義的なPBLを現代化したのがMITメディアラボのシーモア・パパート教授やレズニック教授です。IQから多重知能へと提唱しているハワード・ガードナー教授(ハーバード大学)も別アプローチですが大きな流れとしては合流しています。
★建築現代思想家のクリストファー・アレグザンダーは、パタン・ランゲージで都市生活のwell-beingを鷲づかみにする手法を編み出したのもその流れでしょう。ですから、井庭崇教授は、このデューイ、ピアジェからアレグザンダー等々まで包摂するパタン・ランゲージで学びや対話、プロジェクト、就学前教育におけるプレイヤーの動きや想いをカード化していったのです。
★この流れに、21世紀に入って合流してきたのが、リチャード・フロリダ教授のクリエイティブクラス論です。才能主義こそ世界を変えるという考え方ですが、これはノーベル経済学賞を受賞したポール・ローマー教授の内生的成長理論ともシンクロします。新しい学びの経験を創出することこそ新しい経済社会を創りだすのだと。
★来年のダボス会議の大テーマは、「ザ・グレート・リセット」です。サブテーマは「資本主義から才能主義へ」です。PBLはこんな大きな潮流の中で、新しい学びの経験を生み出す教育の現場の出来事です。
★阿弥先生は、そんなことを言っても、世界と目の前の授業をつなげるのは、本間さんのいうようには簡単にはいかないですよ、もっと現実的で創造的なことはできないのかと自ら試行錯誤してきたのです。
★しかしながら、自らアリストテレスの記憶術や詩学を現代化した思考ツールを使ったり、パタン・ランゲージのカードを使っているうちに、そういう学者の考えや成果を現場で使うことができるという手ごたえを感じたのでしょう。
★そしてツールというのは、達人の奥義を広く多くの人に伝授してしまう脱技能を生み出す効果があるというのも、今回のコロナ禍におけるオンライン授業でピンと来たようです。
★師匠に何年もかけてつかえ、技能を盗みとる徒弟制度も、テクノロジーがある程度習得時間を短くしてしまう脱技能現象は、いたるところで目にします。もちろん、最高峰の技能は修業が必要ですが、むしろ基礎的なことは短縮して、そこへ今まで以上に時間をかけられるようになったのです。
★ピンときたら阿弥先生は速いのです。だったら、みんながPBLのリーダーシップを発揮できるようになる対話をすればよい。そこにベテランもニュフェースも境界線はないのだと。
★というわけで、自分たちの試行錯誤しているPBLデザインを、シェアをしながら、パタン・ランゲージやアクティビティタイプ、スキル、ブルームのタキソノミーをアレンジした座標など多角的な切り口で対話していこうと。
★プロトタイプを協働してつくり、リフレクションして、またリファインするというサイクルは、まさにパパート教授やレズニック教授、そしてピーター・センゲ教授のいうハイパーループという思考と感情と創造のリンクの広がりです。あの「もし世界が100人の村だったら」の背景にあるシステム思考です。
★ハイパーループは、ピラミッド型組織では生まれにくいのです。「学習する組織」のようなチームワークと自己陶冶のケミストリーが必要です。ですから、PBLリーダシップを発揮できるような環境デザインは大切です。
★阿弥先生は、自己陶冶を積み上げてきましたし、これからも同時に積みあがていくでしょう。同時に、チームを創出するのですが、それは今まで、学校ではあまり存在しなかった、みんながリーダーシップを発揮する新しいチームワークづくりとなるでしょう。
★アサンプション国際の文化がそうでもあるので、拍車がかかるでしょう。実際、昨日対話をしながら、柔軟に自分軸をモニタリングしながら、対話をする自己変容型の教師ばかりだと感じました。従属型→自己主導型→自己変容型という人材成長の理論は、今注目されています。「トランスフォーメーション」という言葉は、いたるところで目にします。しかしながら、自己変容型に達するにはなかなか難しいと言われています。
★ところが、コロナ禍のオンライン授業を乗り切ったアサンプション国際の先生方は、やはり自己変容型だったということでしょう。自己変容を止めない学校。それが本当の意味で学びを止めない環境ということだと改めて感じいりました。
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