ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(38)e-portfolio運営団体の許可取り消しか?
★今朝NHKが「大学入試の新システム 運営許可取り消す方向で調整 文科省」という記事を発信しました。「高校生に、学習した内容や部活動の実績を記録してもらい、大学入試で活用する新たなシステムについて、文部科学省は、これを運営する一般社団法人への許可を取り消す方向で調整していることが関係者への取材でわかりました。このシステムは、およそ18万人の生徒が利用していることなどから影響が懸念されます」というのです。
(写真はJapan e-portfolioのサイトから)
★高校生の学習履歴や部活動、ボランティアなどの受験学力以外の活動の記録を入試でも評価しようという流れでポートフォリオをプラットフォームで一元管理しようと、<去年から一般社団法人の「教育情報管理機構」に運営が任され、今年度の入試から本格的に導入される予定でしたが、関係者によりますと、入試に利用する大学が少なく、財政上の安定が見込めないことなどから、文部科学省が運営許可を取り消す方向で調整していることがわかりました>ということのようです。
★しかし、なぜ利用する大学が少ないかというと、<機構のシステムの運用は、教育産業大手の「ベネッセコーポレーション」が担っていますが、生徒が学習内容などを記録する時に、ベネッセが発行するIDを取得する必要があったことから、教育現場から、「企業への利益誘導につながるのではないか」などと懸念する声があがっていました>という信頼性・妥当性へのリスクマネジメントからでしょう。
★同記事には<国が進めてきた大学入試改革は、大きな柱だった英語の民間試験と記述式問題の導入が、すでに見送られるなど、混乱が続いています>とありますが、この両方にもベネッセがかかわっていることは明らかになっていますので、ますますリスクマネジメントが作動したのでしょう。
★しかし、ベネッセのせいでは本当はないでしょう。だいたい、これだけ大規模な試験を処理できるのは、他にないでしょうし、全国学力テストだって、OECD/PISAの情報リサーチ団体だって、ベネッセがかかわっていて、それに全部文科省もかかわっています。
★つまりは、文科省の問題ですね。それに同記事では、こんな文章もあります。<大学入試に詳しい東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授は、「『主体性』を測ることは、部分的には可能かもしれないが、生徒のあらゆる活動が入試を意識した高校生活になってしまう懸念が生じる。そういったシステムが本当によいのか、生徒の大事な個人情報を適切に管理できるか、議論が甘かったのではないか」と指摘しました。そのうえで、「生徒の秘匿性の高い情報を入試で扱うという公共性の高い仕事を、民間に運営させるのであれば厳しい審査があってしかるべきだ。入試改革の柱と言われた制度が中止や延期になったことを、文科省は検証しなければいけない。今の受験生はその制度の変更や中止に翻弄されてきた。できるかぎり、丁寧に説明することが必要だ」と話しています。>というものです。
★おお~い(汗)、そもそも大学入試改革を行わなければならなかった学歴社会の弊害の元凶は東大なのですが、他人ごとのように語っている無責任な発想にはちょっと驚いてしまいますよね。もちろん、学者として客観的なコメントで、無責任とかの問題ではないのでしょうが、一般市民にはなんとも不可解です。文科省も学歴社会形成の根源である東大も、ベネッセのせいにして逃れようというのは、私たちの国のおかしなところでもあります。
★でも、そんなことを言っていても仕方がないので、自分たちで乗り越えましょう。ベネッセもやりかたを間違ったかもしれませんね。
★実は、オンライン授業に加速したことによって、早稲田大学などは、ポートフォリオも含むアプリケーションをオンラインで行っていく方向、しかも協働コミュニティをつくり、同一フォーマットでオンラインで提出できるようにしていく方向が進んでいます。
★欧米では、こういうコミュニティは多様にあって、国は一元管理で介入しようとしません。市場の原理が働くわけです。評価学がきちんと研究されていますから、信頼性や妥当性のチェックが働くわけです。もちろん誤りもあるでしょうが、そこは大いに議論になります。
★しかし、教育では市場原理が働くのを忌み嫌う日本の文化があります。だからベネッセに対してもこういう仕打ちをするのでしょう。NHKまで巻き込んで報道しているのですからすさまじい国ですよ。
★ともかく、自分たちで教育コミュニティを創るなり、既存の信頼のおける教育コミュニティに加盟するなりして、自衛していきましょう。それが可能なのがオンライン化と英語などの世界言語の習得により成立します。だからようやく今なのかもしれません。そうそうPBLをやって、自分の考えをきちんと表明して議論できるクリティカル&クリエイティブな思考スキルの実装は必須です。
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