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2020年7月18日 (土)

ポストコロナ時代の教育(04)普通科の再編?細分化?脱構築?

★朝日新聞(2020年7月18日)の記事に「中教審、高校普通科の再編案の議論スタート 21年初めにも答申へ」という高校の普通科再編の動きが掲載されていました。こうあります。

<文部科学相の諮問機関・中央教育審議会の特別部会で17日、高校生の約7割が通う高校普通科の再編案が示された。文系・理系の枠を超えた学びや地域社会の課題にとりくむ新学科の設置を可能にする案について議論し、中教審は2021年初めにも再編案などを文科相に答申する。早ければ22年度から新学科の新設が認められる。>

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(データは同記事から再加工)

★普通教育と専門教育を合わせた学科を増やせばよいのではと思うのですが、「探究」という新設定が、新学習指導要領で前面に出るので、そこはそういう流れにならなかったのでしょう。

★それより、今行っている73.1%シェアの普通科の内部編成で教科主義を探究主義に移行しておこうというわけですね。

★そのねらいは、大学入試を総合型選抜を90%にしたいということでしょう。大学入学共通テストをやるのはもうやめようということでしょうか?あのテストの決定的な問題点は、暗記主義を脱却するのが難しいという点と選択肢を分析するのが思考だといわれるのもまあ間違いではないのですが、それではクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングを養えない。

★この2つのCシンキングは、今回のパンデミックで実に重要だというのは文科省やその諮問機関のメンバーは身に染みているわけですね。小手先の大学入試改革では、それはどうしようもない。

★であれば、教科主義を排するわけにもいかないので~抵抗圧力がすさまじいのは学習済みでしょうから~、じわじわと内堀を埋めていこうということで、普通科再編という戦術をとったのでしょう。

★パンデミックや気候変動といったリスクを考えると、オンラインで口頭試問をやっていくベクトル量が増すのは当然ですね。

★それに、ダボス会議という外圧です。資本主義から才能主義へというニューノーマルな生活=ニューノーマルな政治経済社会となります。それを担っていくのは、18歳成年の時代に突入します。高校段階で私事の自己決定ができない教科知識主義では日本の先行きが危ういわけです。さすがに教科主義のリスクマネジメントをしなくてはということですね。

★今までは、初等中等教育というのは、国家を強化する政治経済社会の再生産能力を養っていたのですが、その政治経済社会自体がゆらいできているので、いまさらそのぐらぐらしている組織を再生産する能力を身につけてもしかたがないのです。それよりもそれを再構築したり脱構築したりするクリエイティビティの育成が重要になってきたということでしょう。

★文科省は経産省とも協力して、世界の教育のコンパラティブスタディ(比較研究)は行っていますから、世界がそうなっていることも百も承知です。要素還元主義から構成主義へという流れは、当否は別として~というものも、これは中世から解決できていない普遍論争で、要素を超える普遍性なんかあるなしの価値の葛藤は今もなお神々の闘争ですから~、大きくなっています。

★日本は、教科主義ですから、要素還元主義がベースです。八百万の神々の国ですから、それでよいのですが、せめて教科の内容と教科の独自のスキルと一般スキルのシステムをしっかり見定め、ストレートに専門知識に結びつくカリキュラムに変えられないものでしょうか。この高校の教科と大学で学ぶ専門知識との間に大学入試が接続役ではなく分断役で介在しているのが現状です。

★普通科再編より、教科のカリキュラム再編の方が実ははやいのですが。。。

★しかし、それを阻むのが教科書主義です。

★ウーム。結局、問題は教科書主義というマテリアル産業構造の問題だということが見えてくるわけです。

★教科書そのものがわるいわけではありません。教科書が実用的になっていないということでしょう。大学入試問題に対応できるという意味では実用的と言えば実用的ですが、それが探究への入口だったりガイドになり、専門知識へ続いていく編集がされていれば問題はありません。

★それと、どの教科も教科独自のスキルと一般スキルの両端子を学ぶことができると、生徒の方で勝手に教科横断はつくっていきます。

★今はこの一般スキルを意識して教科の授業が行われていません。簡単に言うと細分化と統合化の両方のスキルを身につけることです。

★結局リベラルアーツということですね。

★つまりは、システム思考を身につけるとよいということですね。

★しかし、それを現状の普通科ではできないないでしょう。ですから、リベラルアーツを背景にした新しい科を普通科の内部に盛り込んで、今の普通科のシェアをどんどん少なくしていこうということでしょう。

★私立学校の場合は、普通科がほとんどですが、その中で特色あるコースがあって、すでに再編は実質的に実施されているので、学校関連法規の改正に合わせて柔軟にしのいでいけます。今回の件はほとんど影響はないでしょう。

★公立学校の場合は、その影響は甚大です。しかし、普通科の10%は、すでに私立学校化していますから、そこも影響は受けないのです。

★こうしてみていると、公立学校の普通科の90%、全体では60%強の公立学校の生徒は問題があっても解決されないまま放置されてきたというのが改めてわかります。放置とは、自分の未来を切り開く学びのマッチングはできない環境にあったということです。もちろん、心ある教師と出会った場合はラッキーだったのです。

★さて、そこを文科省が動いて普通科再編というわけですが、少し選択肢を増やしたからといって、そのマッチングはできないでしょう。

★この問題は国主導でやるとうまくいかないということで、今始まったことではありません。

★オンラインによって、生徒が自由に学校を超えて教師を選び、自分の探究に必要な知識を自ら獲得して、総合型選抜に臨むというのでいいわけです。もちろん、各高校はゼミナール形式になります。

★知識と教科スキルと一般スキルは、オンラインで、対話や議論などで思考を深めクリエイティビティを発揮する場は各高校のゼミナールでというわけです。大学もそうなるでしょうし。ともあれ、高校生は18歳成年への準備時期です。カリキュラムのセルフデザインはキャリアデザインの一環となるでしょう。

★2022年4月1日から民法改正は施行され、18歳成年ということになりますから、そこに向けて高校のなんらかのカリキュラム再編が急がれているということでしょう。これは大学入試改革とは別線で進めないとたいへんです。当初は合わせ技で行こうとしたのしょうが、その戦術はうまくいかなかったので。

★とにかく、このような体制ができれば、パンデミックや気候変動に備えることもできます。がしかし、本意は18歳成年への移行をどうするかということなのです。

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