工学院インパクト(02)複雑適応系組織 森も木も見る構えがポイント
★工学院を眺めて丸ごと理解しようというのは難しい。どうやら通常の電子顕微鏡や宇宙望遠鏡の倍率では見えない大切なものがあるようです。あるいは量子力学ではないですが、見ようとするとそこから粒子はするりと移動してしまっていて、位置が特定できないという感じかもしれません。おそらく多くの広告代理店やメディアからもっとわかりやすくと言われているだろうし、広報が上手でないとか言われてもいるかもしれません。
★広報部長の水川先生はまったくもってたいへんです。でも、水川先生の能力をもってしても、工学院の全貌を表現するのは難しいのだと考えるのだ妥当でしょう。
★ほかの学校だったら、名物先生のインタビュー、優秀な在校生やOG/OBのインタビュー、目玉になるイベント、カリキュラム表、活躍している部活などを取材すればよいわけです。そして、それだとあまり差が際立たないので、偏差値と大学合格実績のランキングの違いで表現せざるを得ないわけです。
★偏差値と大学合格実績は受験業界からの要請だし、一般に教育投資の観点からいって、保護者にとってはわかりやすい指標だったというのもあります。しかし、本当は、学校当局が<わかりやすさ>の罠にはまって、自らの大切な教育内容を表現することを怠ってきたということも実はあったのです。
★そして、いつの間にかわかりやすい表現に自縄自縛に陥っていくという業界私学が増えたのです。
★ケインズではないですが、今までの経済社会は人気投票だし、悪貨は良貨を駆逐するというグレシャムの法則が成り立ってきた世界ですから、仕方がなかったのです。
★ところが、工学院の先生方は、そのような壁を突破する教育出動をここ何年かしてきました。この人気投票と悪貨が良貨を駆逐する格差社会、自己肯定感を打ち砕く社会で90%の生徒は困ていたのです。ランキング社会は10%くらしか幸せにならないのは、説明するまでもないでしょう。もちろん、そのことが果たして幸せなのかは、多く議論されています。
★したがって、業界私学の固定観念をぶち破るために、あらゆる活動を再定義していったのです。その再定義を本格的に始めたのが、今の高3です。1年目のGPがこの学年から始まったのには、そのような再定義の集大成という意味があったのです。
★授業から始まって、部活やイベントあらゆるものを再定義していきました。再定義なので、過去の否定ではないのです。アップデートという方が妥当かもしれません。野球部のファシリティーズも変えました、新宿キャンパスで週1回学ぶコースもできました。通学バスの経路も都内全方位に拡大しました。海外研修の数も質も大転換しました。3か月留学などの留学プログラムも定着しました。1人1台のPC環境は全学年揃いました。進学実績も伸びました。海外大学の実績もがっつり出始めました。
★国内外の革新的でパワフルなコミュニティのメンバー校としてリーダーシップも発揮しています。
★グローバルなコンテストに生徒は果敢に挑戦して優秀賞を勝ち得ています。国際数学コンクールと模擬国連だけが国際コンクールの時代は終わっています。多様な時代です。多様な才能が生かされる時代です。
★NPOや企業、スーパーアスリート、作家、大学人など多様な人材ネットワークとも接続ができ、毎年どんどん増えています。
★もちろん、肝心の授業もPBL型で広く深く生徒は学んでいます。今回のパンデミックの時に最も光を浴びたのは、学園生活の日常をどうオンラインで非日常的に乗り越えるかでした。その学園生活の日常こそ普段/不断の授業でした。
★これら1つひとつの再定義は、傍から見ていて複雑系でした。しかし、よく見てください。複雑系は混乱系とは違うのです。複雑だけれど適応して、成果を上げているのです。私は工学院の組織はピラミッド型のわかりやすい組織とは違って、複雑適応系組織だと思っています。
★この集大成の動きのアウトカムが証明されたのが、昨年のGPでした。教師も生徒も今までを振り返り、大きな自身と誇りを持ったことでしょう。
★ある意味、ホッともしたのでしょう。しかし、神様はそう簡単な方ではありません。またまた試練の道を用意しました。このコロナ禍にあっては、昨年のレールを歩くことができないのです。教師も生徒もこの立ちはだかる壁を今一度飛び越えなくてはならないのです。
★ただ、工学院の教師も生徒も、常に再定義して進むので、今回も同じ道を歩まないだけのことだと思っているでしょう。しかし、この豊かな環境は伝統となっているのです。伝統と革新の複雑適応系システムが工学院にはできているのです。
★複雑系とは森にたとえることができます。森の中に入って、一本の木とそこに集まる生態系を語ることはわかりやすいですね。しかし、森全体を語るとしたら、どうでしょう。そうです。難しいですよね。
★とはいえ、わかりにくい、難しいと言ったって、森は存在しているのです。最近、保護者がそこに気づきはじめました。なぜなら、私立学校を選択しようとしている保護者はグローバルな波を世界的視野で乗り越えている人が多いのです。木を見て森を見ない構えは、サバイブでききません。そして実は森を見て木を見ない構えも、サバイブできません。
★両方を見る目が育つ環境はどこか!?保護者のリサーチの目もまたアップデートしています。
★ですから、森も木も見て、パブリックオーディエンスに発信をしなくてはなりません。工学院のサイトの更新率が高いのはそういうことなのでしょう。
★雨宮先生の発信も実に楽しみです。→「GPオンライン事前学習!」
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