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2020年7月29日 (水)

ポストコロナ時代の教育(16)聖学院と開成 「未来ドラフト2020」に挑戦!

NHKの記事「難民アスリートに注目を!アイデアコンペに若い力が結集 2020年7月28日(火)」が興味深い。率直に言っておもしろい。何か本質がここにはあるのです。「未来ドラフト2020」に挑戦する聖学院の生徒と開成の生徒の取材がなされているのですが、この組み合わせが歴史的通奏低音を響かせています。

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(左が聖学院初代校長「石川角次郎」、右が開成初代校長「高橋是清」)

★それに、模擬国連のようなニュースはよく取り上げられ、注目もされるのですが、ダイレクトに難民救済を考え、行動を起こす若い市民を取り上げることはあまりないはずなのに、ガッチリ記事が編集されています。

★NHKにかかわるディレクター(NHKはいろいろな団体と委託契約を結ぶので、NHKのコンセプトかどうかわからないこともあります)の中には、欲望の資本主義といったミヒャエルエンデの遺言を追跡する流れを継承するコンセプトを持った方もいて、ときどきオッーと思うのですが、今回の記事もそういう視野や視座のあるパワフルな気概と繊細な視点の両方を持ち合わせたディレクターなのでしょう。

★聖学院の由人さんとその仲間のことや、開成の「K-Diffusionors」とぃうチームのことについては、ぜひ記事をご覧ください。私がおもしろいと思ったのは、聖学院の初代校長は石川角次郎で開成の初代校長は高橋是清だということです。

★高橋是清は、24歳で開成の初代校長に就任しています。その開成に石川角次郎は入学しています。両者はすれ違っているかもしれません。

★高橋是清は、横浜でヘボン夫妻に学び、渡米し紆余曲折奴隷生活を送りながら学んで、1689年に帰国し、そこからは大蔵大臣、日銀総裁、総理大臣等々まで務め、金融恐慌を乗り切った偉大な人だというのは有名です。二・二六事件で暗殺されてしまうのですが。ともあれ、その手腕は、現日銀は参考にした方がよいかもしれません。

★そして、石川角次郎は開成から東大に進み、当時の東大初綜理加藤弘之の優勝劣敗進化論的な教育や法制度のデザインに反論を展開しつつも、殖産興業や富国強兵の正当化理論が進む日本の姿勢に失望して、やはり渡米し米国で学び直して、帰国します。

★明治初期の時代は、日本は世界から見れば、野蛮な国とみなされていました。この国をなんとかしようと若い血潮が沸騰していたわけです。加藤弘之らの近代官僚国家に対し、もう一つの近代の在り方を模索したのが私学人で≪私学の系譜≫だというわけです。高橋是清は、開成からたくさん東大に生徒を入学させ、官僚の内側から近代国家をデストピアにならないようにしようとしたんですね。

★石川角次郎は、外からもう一つの近代を生み出す人材づくりをしようとしたわけで、アプローチは違うのですが。

★いずにれしても高橋是清も、石川角次郎、内村鑑三、新渡戸稲造は≪私学の系譜≫の第2世代で、第1世代江原素六(麻布)、福沢諭吉(慶応)、新島襄(同志社)のもう一つの近代国家のコンセプトは引き継がれています。そして、その流れが内村と新渡戸の弟子たちに引き継がれ、彼らが戦後教育基本法をデザインしていく流れになっていきました。

★2006年に安倍政権によって改正されてしまったのですが。何せ安倍政権の系譜は、戦後憲法や教育基本法を改正することを野望としていますから。。。

★ともあれ、こんな歴史的背景を意識しているかどうかはわかりませんが、少なくとも文化という環境を受け入れた聖学院の生徒と開成の生徒が難民問題解決に自分たちになりに動いているのです。ですから、そういう系譜の通奏低音の響きが聴こえてくるように感じるわけです。

★さて、NHKの想いは世に通じるでしょうか。来年のダボス会議の大テーマはザ・グレート・リセットです。それは、ある意味近代官僚国家のリセットにも重なります。資本主義から才能主義へというサブテーマもあります。この流れは欲望の資本主義という企画の流れにも結び付きそうですね。

★こういうことをいうと、近代官僚国家の系譜に与している方々からは根拠がない、証拠がないといわれるわけです。ですが、歴史は根拠で動いているわけではありません。本質の体現でウネッています。その過程は紆余曲折で過酷でもあるのですが。とにもかくにも、妄想と言われるのは大いに結構ですが、ウネリはウネリ、真理は真理だということです。

★芥川龍之介も夢見たもう一つの近代の在り方、それは国家ではなくコミュニティ的な組織なのかもしれませんが、その通奏低音が大きく響きはじめたようです。

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