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2020年7月

2020年7月31日 (金)

ポストコロナで変わるコト(02)中学入試も大学入試もYoutube、TED、プレパタが役に立つ時代

★この収束がみられないパンデミックに対応するために、中学入試や大学入試では、願書作成段階で3分間プレゼンの動画を添付(ネットで送付)することを求めるようになってくるでしょう。SFCや湘南学園などはすでにそういう動きになっています。

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★表現力で差がつく時代の到来です。

★Youtube、TED、プレパタ(プレゼンテーションパターン)のカードが役に立ちます。

★入試なんだから、内容さえしっかりしていればよい。そう思うかもしれません。

★しかし、アフォーダンスという心理的な反応があります。

★自分の無意識の内に眠っている潜在パワーを道具が誘引するのです。

★ですから、道具を活用することで、思ってもみなかった自分の力があふれ出る場合があるのです。

★コロナ禍において、各種ICT関連ツールを活用して、そういう経験をしている人が増えています。

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ポストコロナで変わるコト(01)大学入試の小論文の質が変わる

★入試において小論文の価値が今まで以上に重要になってくるのが、ポストコロナの大学入試であり、ふだんの授業です。大学入学共通テストは、なんだかんだといって教科書のレベルの枠組みに収まっています。リーディングリテラシーさえあれば、教科書を読めば7割はとれるでしょう。もうそれで8割とらなきゃとか9割とらなければというのは、本当はあまり意味がありません。

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★しかしながら、この部分で競い合う不思議な事態が起きてるのも事実です。もしここを7割以上はAとして、8割でも9割でも差がつかなければ、すてきテストになるはずです。

★と、私でも思うぐらいですから、そうなるでしょう。

★7割できれば、知識が定着したということを示すというより理解力があるという意味で、このぐらいでよいのではないでしょうか。現実のコミュニケーションで100%理解するということはそもそもないでしょう。

★30%くらいはズレがあるのが普通でしょう。もちろん、それでは誤解の屋上屋を重ねるので、チェックします。しかし、そのチェックは対話という多角的な目を通すというやりかたです。

★このとき、ミスを目クジラ立てて指摘し、叱責する抑圧的な態度だと、真理は見えてきません。共感的なコミュニケーションが必要です。

★となると、大学入学共通テストで差がつかなくなります。どこで差がつかというと独自入試の小論文です。もちろん、すべての大学が800字以上の小論文を課すことはないでしょう。でも、400字くらいの小論文を課すことは難しくありません。

★おそらくそういう大学が増えてくるでしょう。さて、そうなってくるとどこで差がつくのか?400字ですから、2つくらいしかパラグラフは書けませんから、いわゆる一般的な小論文対策が効果的ではありません。

★ジレンマを見い出すクリティカルシンキングともう一つ重要なスキルを必要とします。

★今までののように、ファクトとオピニオンなどの基礎スキルだけでは差がつきません。ジレンマを見つけられるか、そしてそれを解決するために、実はなぜその学部を選んだのかがわかるスキルを活用することを要求されるようになります。

★大学入試は今までは、知識がどれくらい定着しているのかその多寡と一般的な論述スキルが身についているのかどうかが評価の対象でしたが、今後は、知識の定着度はレンジ別になり、論述スキルは一般スキルと学部特有な視点を使うスキルが評価対象になります。

★なぜその学部を選択するのかの理由だけではなく、その学部で必要とする基礎的な視点を持っているかどうかが評価対象に加わります。そんな馬鹿な?と思われるでしょうが、2021年度の総合型選抜をはじめ多くの入試でそういう傾向になっていきます。

★それが18歳成年への準備にもなっています。もちろん、意識してそうなっているのではなく、テクノロジーとエンジニアリングの進化がいつのまにかそうしているのかもしれません。

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2020年7月29日 (水)

中高生の活躍(01)和洋九段女子の中高生 外部ネットワークを広げる 社会に影響を与える学びへ

和洋九段女子の高校生がつくるTeam Amiの活動がラジオ新聞で取り上げられています。SDGsについて、日本でも世界でもまだまだ知られていません。まずはその意義について知ってもらおうと、SGDsを達成する活動をしている様々な団体のインタビューにとどまらず、連携しながら深く学び結果的にSDGsの活動を促進するプロジェクト「SDGsすごろく」ワークショップを次々と行っています。

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(写真は同校サイトから)

★「すごろく」というボードゲームを通して、経済を優先するか環境を持続可能にすることを優先するのか、ジレンマを乗り越えるクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングを養う場にもなっています。教育的な意義と社会を改善していくインパクトを参加者とシェアできる画期的なソソーシャルゲームでもあります。

★また、Team Amiのメンバー以外にも、他の中高生とディスカッションするPBLイベントにも参加しています。同校が加盟している21世紀型教育機構の加盟校の知のシナジー効果を生み出すワークショップです。

1つは、英語で行う哲学的対話で、もう1つは教師といっしょに「世界の幸せ」について議論するワークショップでした。

★同校のサイトには、参加した時の生徒の感想が掲載されていますが、多くの気づきや知的刺激があったようです。何より、自分のアイデアが共感されたときの驚愕と歓喜と自信があふれ出ている様子が伝わってきます。

★21世紀型教育機構の加盟校は、C1英語×PBL×ICTを基本的な学びのツールとして確立してきました。ここ数年STEAMやリベラルアーツの現代化にもチャレンジしてきました。その要が哲学対話です。

★今回のパンデミックによる一斉休暇も滞ることなくオンライン授業を行えました。もちろん、和洋九段女子も同様です。

★そして、オンラインによって、ディスカッションの重要性と有効性を身に染みたし、オンラインのブレイクアウトルームがかなり優れたディスカッション時空だということがわかったということで、このようなイベントが行われたのだと思います。

★おそらく、今後どんどん加盟校が協力し合ってオンラインPBLワークショップを行っていくでしょう。互いに刺激を受け与え、様々なアイデアが創発されることでしょう。

★また、このことは各加盟校が、自分たちの生徒の地球市民としての言語能力、発想、思考力が世界に通じる自信や誇りがもてたということを示唆します。

★今後、加盟校の枠を超えてさらに拡大していくでしょうから、新しいネットワークの中で和洋九段女子の中高生も自己を磨き、社会に貢献できる活動を探究していくことになるでしょう。

★このよう活動は、生徒1人ひとりが自己変容するというコトも意味します。

★和洋九段女子の中高生をはじめ、加盟校やその他の学校の生徒が、こうして自己変容することこそが、世界が変わる第一歩です。

★PBLとは、まずは自分が変わるというマイプロジェクトでもあったのです。私が変われば、世界も変わるのです。あらゆるモノやコトが変容=トランスフォームする時代です。その起点がTeamAmiのような中高生という時代が到来したといえましょう。

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PBLの時代(03)世界を変えるPBLリーダーシップを創出 アサンプション国際小学校の挑戦

★昨日、アサンプション国際小学校の先生方とPBLについてZoom対話をしました。仕掛け人は同校の教務主任の阿弥先生。ニコニコしながら凄いことを実行してしまうので、驚かされます。昨年から何回も回を重ね、コロナ禍もZoomで幾度か対話して、実に慎重に進めていたかと思うと、ふと急転回のアクションにでたのです。

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★PBLというプロジェクト型の学びの環境デザインは、都市創りと似ています。都市は物語であり、マシーンでもあり、自然との融和であり、幸せな人間存在の在り方を決定づけます。

★アリストテレス以来、人間は独りでは生きていけないというのは当たり前ですが、20世紀末はなぜか個人主義に陥り、再び社会性を見直す流れがあらゆる領域で生まれています。要素還元主義ではなく関係主義だとか構成主義だとか、認知科学や哲学の世界では言ってますね。

★この流れは、学習理論でも例外ではなく、ピアジェやデューイの関係主義的なPBLを現代化したのがMITメディアラボのシーモア・パパート教授やレズニック教授です。IQから多重知能へと提唱しているハワード・ガードナー教授(ハーバード大学)も別アプローチですが大きな流れとしては合流しています。

★建築現代思想家のクリストファー・アレグザンダーは、パタン・ランゲージで都市生活のwell-beingを鷲づかみにする手法を編み出したのもその流れでしょう。ですから、井庭崇教授は、このデューイ、ピアジェからアレグザンダー等々まで包摂するパタン・ランゲージで学びや対話、プロジェクト、就学前教育におけるプレイヤーの動きや想いをカード化していったのです。

★この流れに、21世紀に入って合流してきたのが、リチャード・フロリダ教授のクリエイティブクラス論です。才能主義こそ世界を変えるという考え方ですが、これはノーベル経済学賞を受賞したポール・ローマー教授の内生的成長理論ともシンクロします。新しい学びの経験を創出することこそ新しい経済社会を創りだすのだと。

★来年のダボス会議の大テーマは、「ザ・グレート・リセット」です。サブテーマは「資本主義から才能主義へ」です。PBLはこんな大きな潮流の中で、新しい学びの経験を生み出す教育の現場の出来事です。

★阿弥先生は、そんなことを言っても、世界と目の前の授業をつなげるのは、本間さんのいうようには簡単にはいかないですよ、もっと現実的で創造的なことはできないのかと自ら試行錯誤してきたのです。

★しかしながら、自らアリストテレスの記憶術や詩学を現代化した思考ツールを使ったり、パタン・ランゲージのカードを使っているうちに、そういう学者の考えや成果を現場で使うことができるという手ごたえを感じたのでしょう。

★そしてツールというのは、達人の奥義を広く多くの人に伝授してしまう脱技能を生み出す効果があるというのも、今回のコロナ禍におけるオンライン授業でピンと来たようです。

★師匠に何年もかけてつかえ、技能を盗みとる徒弟制度も、テクノロジーがある程度習得時間を短くしてしまう脱技能現象は、いたるところで目にします。もちろん、最高峰の技能は修業が必要ですが、むしろ基礎的なことは短縮して、そこへ今まで以上に時間をかけられるようになったのです。

★ピンときたら阿弥先生は速いのです。だったら、みんながPBLのリーダーシップを発揮できるようになる対話をすればよい。そこにベテランもニュフェースも境界線はないのだと。

★というわけで、自分たちの試行錯誤しているPBLデザインを、シェアをしながら、パタン・ランゲージやアクティビティタイプ、スキル、ブルームのタキソノミーをアレンジした座標など多角的な切り口で対話していこうと。

★プロトタイプを協働してつくり、リフレクションして、またリファインするというサイクルは、まさにパパート教授やレズニック教授、そしてピーター・センゲ教授のいうハイパーループという思考と感情と創造のリンクの広がりです。あの「もし世界が100人の村だったら」の背景にあるシステム思考です。

★ハイパーループは、ピラミッド型組織では生まれにくいのです。「学習する組織」のようなチームワークと自己陶冶のケミストリーが必要です。ですから、PBLリーダシップを発揮できるような環境デザインは大切です。

★阿弥先生は、自己陶冶を積み上げてきましたし、これからも同時に積みあがていくでしょう。同時に、チームを創出するのですが、それは今まで、学校ではあまり存在しなかった、みんながリーダーシップを発揮する新しいチームワークづくりとなるでしょう。

★アサンプション国際の文化がそうでもあるので、拍車がかかるでしょう。実際、昨日対話をしながら、柔軟に自分軸をモニタリングしながら、対話をする自己変容型の教師ばかりだと感じました。従属型→自己主導型→自己変容型という人材成長の理論は、今注目されています。「トランスフォーメーション」という言葉は、いたるところで目にします。しかしながら、自己変容型に達するにはなかなか難しいと言われています。

★ところが、コロナ禍のオンライン授業を乗り切ったアサンプション国際の先生方は、やはり自己変容型だったということでしょう。自己変容を止めない学校。それが本当の意味で学びを止めない環境ということだと改めて感じいりました。

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ポストコロナ時代の教育(16)聖学院と開成 「未来ドラフト2020」に挑戦!

NHKの記事「難民アスリートに注目を!アイデアコンペに若い力が結集 2020年7月28日(火)」が興味深い。率直に言っておもしろい。何か本質がここにはあるのです。「未来ドラフト2020」に挑戦する聖学院の生徒と開成の生徒の取材がなされているのですが、この組み合わせが歴史的通奏低音を響かせています。

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(左が聖学院初代校長「石川角次郎」、右が開成初代校長「高橋是清」)

★それに、模擬国連のようなニュースはよく取り上げられ、注目もされるのですが、ダイレクトに難民救済を考え、行動を起こす若い市民を取り上げることはあまりないはずなのに、ガッチリ記事が編集されています。

★NHKにかかわるディレクター(NHKはいろいろな団体と委託契約を結ぶので、NHKのコンセプトかどうかわからないこともあります)の中には、欲望の資本主義といったミヒャエルエンデの遺言を追跡する流れを継承するコンセプトを持った方もいて、ときどきオッーと思うのですが、今回の記事もそういう視野や視座のあるパワフルな気概と繊細な視点の両方を持ち合わせたディレクターなのでしょう。

★聖学院の由人さんとその仲間のことや、開成の「K-Diffusionors」とぃうチームのことについては、ぜひ記事をご覧ください。私がおもしろいと思ったのは、聖学院の初代校長は石川角次郎で開成の初代校長は高橋是清だということです。

★高橋是清は、24歳で開成の初代校長に就任しています。その開成に石川角次郎は入学しています。両者はすれ違っているかもしれません。

★高橋是清は、横浜でヘボン夫妻に学び、渡米し紆余曲折奴隷生活を送りながら学んで、1689年に帰国し、そこからは大蔵大臣、日銀総裁、総理大臣等々まで務め、金融恐慌を乗り切った偉大な人だというのは有名です。二・二六事件で暗殺されてしまうのですが。ともあれ、その手腕は、現日銀は参考にした方がよいかもしれません。

★そして、石川角次郎は開成から東大に進み、当時の東大初綜理加藤弘之の優勝劣敗進化論的な教育や法制度のデザインに反論を展開しつつも、殖産興業や富国強兵の正当化理論が進む日本の姿勢に失望して、やはり渡米し米国で学び直して、帰国します。

★明治初期の時代は、日本は世界から見れば、野蛮な国とみなされていました。この国をなんとかしようと若い血潮が沸騰していたわけです。加藤弘之らの近代官僚国家に対し、もう一つの近代の在り方を模索したのが私学人で≪私学の系譜≫だというわけです。高橋是清は、開成からたくさん東大に生徒を入学させ、官僚の内側から近代国家をデストピアにならないようにしようとしたんですね。

★石川角次郎は、外からもう一つの近代を生み出す人材づくりをしようとしたわけで、アプローチは違うのですが。

★いずにれしても高橋是清も、石川角次郎、内村鑑三、新渡戸稲造は≪私学の系譜≫の第2世代で、第1世代江原素六(麻布)、福沢諭吉(慶応)、新島襄(同志社)のもう一つの近代国家のコンセプトは引き継がれています。そして、その流れが内村と新渡戸の弟子たちに引き継がれ、彼らが戦後教育基本法をデザインしていく流れになっていきました。

★2006年に安倍政権によって改正されてしまったのですが。何せ安倍政権の系譜は、戦後憲法や教育基本法を改正することを野望としていますから。。。

★ともあれ、こんな歴史的背景を意識しているかどうかはわかりませんが、少なくとも文化という環境を受け入れた聖学院の生徒と開成の生徒が難民問題解決に自分たちになりに動いているのです。ですから、そういう系譜の通奏低音の響きが聴こえてくるように感じるわけです。

★さて、NHKの想いは世に通じるでしょうか。来年のダボス会議の大テーマはザ・グレート・リセットです。それは、ある意味近代官僚国家のリセットにも重なります。資本主義から才能主義へというサブテーマもあります。この流れは欲望の資本主義という企画の流れにも結び付きそうですね。

★こういうことをいうと、近代官僚国家の系譜に与している方々からは根拠がない、証拠がないといわれるわけです。ですが、歴史は根拠で動いているわけではありません。本質の体現でウネッています。その過程は紆余曲折で過酷でもあるのですが。とにもかくにも、妄想と言われるのは大いに結構ですが、ウネリはウネリ、真理は真理だということです。

★芥川龍之介も夢見たもう一つの近代の在り方、それは国家ではなくコミュニティ的な組織なのかもしれませんが、その通奏低音が大きく響きはじめたようです。

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2020年7月28日 (火)

新しいコミュニティの誕生(01)一つのリアルなコミュニティではなく多様なコミュニティがオンライン上で対話するコミュニティ

★昨年の末から不思議な出会いが不思議な経験を広げています。その出会いも、今日の不思議な経験もデジタル上で起きています。しかし、デジタル上で出遭うには、すでにコンセプトやアイデアや感情の共鳴音がリアルな世界ですでに響き合っていたという感じなのです。共意識は先行的に存在していたということでしょうか。

★中学入試に興味がありつつも、日本の教育システムの息苦しさを、自分の子供のためになんとかしようと仕事や活動をしている母親とのZoom対話でした。仕事と活動と言っても、いずれも教育や社会構造を変えようという行為なのです。出会った方々は、母であり、革新的な市民だったのです。

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(この写真の背景に対話した方々の写真がありますが、そのみなさんの精神性は、モモやダライ・ラマ、内村鑑三、マザーテレサと共鳴する音を奏でるものでした。私も1981年にマザーにカテドラルでお会いしています。モモは1989年年以降ミヒャエルエンデのネバ―エンディングストリーが邦訳されてしばらく中学入試で注目されていた時期に読んで、これだと思いました。内村鑑三は2006年教育基本法改正のときに、麻布の前校長氷上先生と≪私学の系譜≫を語る時に再読しました。2013年21世紀型教育機構が本格始動した当時、機構の加盟校である八雲学園を訪れたダライラマ法王の取材に行きました。いずれも、今の私に影響を与えた精神でもあります。)

★革新的な母であり市民が議論する問いは、実に広い視野、深い洞察が必要なものばかりでした。たとえば、新しい未来を創る学校とはどのくらいあるのか?そのような学校の教育とは何か?自治体を巻き込んで新しいシステムを提言し実現するにはいかにしたら可能か?国に失望し、海外を拠点に新しい学びの共同体をつくっているが、どう拡散していくか?人から与えられた基準ではなく、子供が自分の基準を自分で創っていくにはどうしたらよいか?子供たちの未来を創ろうとする行為をサポートするシステムは可能なのか?

★私は権利の闘争を仕掛けている頼もしい母親であり市民ですねと表現しましたが、それは共感的コミュニケーションを大切にしている私たちにとっては共創的なアクションなのだと置き換えられました。極めて高い意識をもった母であり革新的市民なのですが、私たちのような考え方をもつ保護者はたくさんいるというのです。

★それぞれが、なんらかのコミュニティや団体で活躍したり新しい拠点づくりをしています。ある意味多様なコミュニティがパラレルに存在しながら、共鳴共感共振する自律分散協働系のコミュニティがオンライン上で対話しているといった感じです。

★1つのコミュニティにみんが所属するのではなく、それぞれのコミュニティで活動しながらオンラインコミュニティで対話する。新しいコミュニティの誕生なのかもしれません。主宰者はKさんですから、Kコミュニティと呼んでおきましょうか。

★Kコミュニティのみなさんは、自らの子供のために今の状況が適切なのかどうか、つまり、正当性・信頼性・妥当性を評価し、決してこれでいいわけではないと認識し、正当で信頼できる妥当な学校を探そうとしています。そして、そのためにこのようなコミュニティ対話をすることで、自分の子供のための教育を探すだけではなく、社会全体に目を向けています。

★眺めているだけではなく、それぞれの流儀で、意識をカタチにするスキルを駆使し、U理論やNVC理論、EQ理論などをそれぞれのパラレルなスモールコスモス生成に適用しています。

★未来の学校はどうやら、大学入試改革のためなどという制度上の大義名分に沿ううものではなく、このような母であり革新的な市民である心性を引き受ける教育を実践する役割を担っているということでしょう。子供たちの未来で困難に立ち向かう果敢な姿を想像すれば、私たちがそのくらいの責任を引き受けるのは当然のことでしょう。

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2020年7月27日 (月)

PBLの時代(02)PBLはポップ哲学を基礎とする。

★私たちがPBLの基礎としたのは、「3Rから3Xへ」というコンセプトで、それを提唱したシーモア・パパート教授の発想にヒントを得たということは前回話しました。今、レゴ®シリアスプレイ®に基づいてPBLが展開していますが、このレゴとICTを学びに結びつけたのが、そもそもシーモア・パパート教授なのです。

★今でこそ、聖学院のレゴ®シリアスプレイ®をつかった思考力セミナーや思考力入試が認知されて、多くの学校でレゴを使うようになりましたが、7年前はなんで遊ぶの?という声もありました。一方で中学受験って「ドラえもん」が使われることがしばしばで、教育道徳主義的業界人は、戸惑いました。何せ、麻布や女子学院が活用してしまうからです。

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★それでも、ICTを活用したPBLをやっていると、ICTなんか取り入れている学校は大学合格実績が出せないとか大手塾のシンクタンクの方が上から目線でした。でも、今となってはそうは言ってられませんよね。

★中学入試に臨む児童や大学の帰国生入試に臨む生徒と共通して話し合えるのが、「ドラえもん」以外には「スターウオ―ズ」があります。こんな本を使ってどうするの?ただおもしろいだけではないの?ともよく言われます。

★しかし、学びが楽しいというのはPBLでは無視できません。シーモア・パパートのレゴを使った3X学習はもともと幼児教育が原点ですから、楽しくなくてはというわけです。これはこれで、学びと遊びの関係について800字以内で書きなさいという小論文はひところ流行りましたから、受験屋こそここは腕の見せ所なんです。

★だから、ドラえもんやスーターウォーズが出てくるのは、本当は受験屋なら当然なんですね。それはともかく、「スターウォーズ」の著者ジル・ヴェルヴィッシュ先生は、フランスの高校で哲学を教えている教師です。同書はあらゆる哲学的テーマを扱っています。ジョージ・ルーカスの評価を所詮は娯楽に過ぎないじゃないかとかいやいやポップ哲学だよこれはとか分かれるところなどから書き始めていて、日本に限らず、真面目と非真面目は議論の分かれるところだなと読みながら笑ってしまいました。

★ジョージ・ルーカス自身は、シーモア・パパート教授と同様子供が楽しめるものづくりを目標としていました。ルーカスは映画、パパート教授はレゴという違いはありますが。子供はグリム童話や昔話は大好きですね。ディスニーランドは、多くの子供が好きです。もちろん、うちの娘のように、あれはグリムをアレンジしすぎ、あんなにハッピーエンドじゃないから好きでないと、いっしょにいこうよというパパの誘いを断る子は少ないでしょう。もっとも、これはパパとはいきたくないというのが本音でとりあえずもっともらしい理由を言っていただけだろうと思っていますが(汗)。

★それはともかく、ジョージ・ルーカスが、神話学者ジョセフ・キャンベルに大きな影響を受けている話は有名で、ジル・ヴェルヴィッシュ先生もそのことは同書で述べています。この神話学は、物語の構造論に影響を与えていて、現代思想の1つの軸になっています。RPGゲームは当然この普遍的な物語構造を活用していますね。ゲーミフィケーションというポップ哲学で了解していくことができるのは、この神話学が背景にあるからでしょう。神話学はユングにも影響を与えています。いやユングが神話学に影響を与えているのかもしれません。河合隼雄さんが人気なのは、やはり昔話の構造を紐解いたからかもしれませんね。

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★そんなわけで、上記の本は、この物語の構造を読み解く本としては実におもしろいのです。ジョージ・ルーカスやスティーブ・ジョブスが日本の文化に興味があり、GAFAがマインドフルネスに興味があるのは、実はZENの背景にある十牛図の物語があります。実はこの十牛図物語の構造もまたキャンベルの神話学があてはまります。源氏物語や更級日記なんかにもあてはまります。

★リベラルアーツや哲学は一見難しいのですが、ジル・ヴェルビッシュ先生のようにポップ哲学の切り口でアプローチすれば、子供からでも大丈夫です。P4C(子どものための哲学)ができるのも、実は日常のマテリアルを活用したポップ哲学的接近でいけるからです。

★というわけで、3XのPBLとは、そのベースにポップ哲学があります。レゴだとかスターウォーズだとかドラえもんだとか思考のツールとしてはなかなか優れものですよ。

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PBLの時代(01)PBLとは問いを生きること。

★昨日、品川翔英で先生方とワークショップを行っていた時、かつての同僚石井麻実さんにばったり会いました。別件で同校を訪れていたようです。1998年に立ち上げた教育研究所(今は閉鎖)のスターティングメンバーの1人です。今はAIで部長をやっている石井さんとリクルートの編集などにかかわっている教育コンサルタントの江森さん、工学院のカリキュラムマネージメントリーダーの岡部先生といっしょに始めました。

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(1999年に実験をして、2000年にまとめました。この本もまた絶版です。)

★10年くらいいっしょにやりましたね。懐かしくて、石井さんと数分を共有しました。すると、結局1998年から2007年の間にやってきたことが、今まさに生きていると思い出話しにドッと。当時はPBLを2泊3日で行っていました。「発見体験」という名でHondaとコラボしてやっていたんですが、すでにチーム学習、ディスカッション、ポストイット、対話、ノートパソコン、インターネット、プラットフォーム、ネット上で瞬時に集計できるルーブリックによるエンパワーメント評価、LA(ラーニングアドバイザー)という今でいうファシリテーターをチームごとに一人配置するなど、ほぼ今いろいろなところでやっているPBLのワークショップのプロトタイプはできあがっていました。

★特に、現地で石井さんチームがプログラムを実施している時、常に私が同行するわけにはいかないので、プラットフォームを通じてリモートサポートをしていました。生徒1人ひとりの状況が毎日ルーブリックのデータを集計していくと、把握できます。

★チームの状況がどうなっているかは、LAから連絡がはいります。LAの状況はスーパーバイザーである石井さんや江森さんから連絡が入り、画面でデータを見ながら携帯電話で対話していました。今ならもっとインタフェースが使いやすいのでしょうが、基本は同じです。

★岡部先生は、当時は国内ではなく、米国のロサンゼルスやフランスのストラスブールのPBLでのワークショップをやっていましたから、同じように連絡をし合っていました。1999年の時なんかは、まだネット環境が今のように便利ではなく、ホテルの電話線からネットにつなぐダイヤルアップでした。しかし、コンセプトやデザインは今と変わりません。

★実にシンプルなコンセプトです。3Rから3Xをやるんだ。クリエイティブクラスを生み出すんだ、それで世界を変えるぞだけでした。そのためのリサ―チ、ディスカッション、リフレクション、ルーブリックの環境をいかにデザインするかでした。

★ディスカッションは、結局生徒が自らどんな問いを生み出せるかでした。しかし、当時は学校の先生方もまだまだ解決の成果主義だったので、最終段階のプレゼンではそれなりの成果がでないと困ると言われて私たちも困りました。

★3Xは最後はビッグクエスチョンの発見でオープンエンドで終わりたかったのです。よく、先生方と激論を交わして、最後は業者のくせに生意気だ、今すぐ生徒を引き上げるとかいわれたこともありました。石井さんや江森さんが調整してくれなければたいへんなことになっていたでしょう。

★とにかく、私は怖い人と言われていました。石井さんとか江森さんとかに随分迷惑かけたと深く反省し、今でもときどき連絡をとってくれるのに感謝しています。大親友(と私だけが思っているのですが)の岡部先生とは思い切り決裂する大げんかをしたこともありました。トップダウン型の父性が強いリーダーシップをとっていたのが私で、ボトムアップ型でファシリテーター型リーダーシップをとっていたのが岡部先生ですから、時代錯誤も甚だしい、ついていけない、やめると言われてICT関連の大手の会社やベンチャーの会社に移籍してしまいました。

★でも、国内のPBLが軌道に乗ったので、帰ってこないかいと声をかけて、海外と私学のジョイントプログラムを創ろうよということになりました。基本的には3Rから3Xは、当時のMITメディアラボのシーモアパパート教授のアイデアですから、コンセプトは欧米では誰も反対する人はいませんでした。

★しかし、9.11やリーマンショックには、ちょっと勝てなかったですね。活路をそれぞれいったん見出そうということになりました。当時は教育研究所でPBLのプログラムを創っているところに資金を集積させようという人はいなかったということです。Hondaもだんだん手を引き始めたぐらいです。ただ一人資金の応援してくださっていた社長ががんで亡くなったのを機に、私と岡部先生と江森さんは社を離脱しました。

★今も何かをいっしょにやることはありませんが、基本仕事のベースはPBLであることはみな共通です。石井さんと江森さんはICU出身で、大学当時からPBLを英語で行っていました。岡部先生はUCLA卒業ですから、大学時代はまさに英語でPBLがあたり前でした。私は国内の大学と大学院だったですから、英語は文献調査で使いましたが、まったく議論やスピーチはダメでした。3人がいなければ、英語×PBL×ICTを活用したプログラムや海外出張などできなかったでしょう。

★ただ、PBLは、偶然米国法ベースの教授と法哲学や法制史の教授についていたので、ゼミ形式でPBLそのものでした。アメリカのイエールとかハーバード留学経験の教授だったり、イギリス留学経験、ドイツ留学経験の教授だったので、おまえは英語ができないできないとよくしかられまくっていました(汗)。真面目にやっておけばよかったと3人をみて思いましたが、創造することの方が好きで、どうも真面目にトレーニングするのが苦手でした。

★私の大学は実定法や実務法というか司法試験がベースの大学だったので、法哲学をやるヤツなんて何なんだといわれながらも、当時の法哲学の助教授森末先生が、上智大学のホセ・ヨンパルト教授を呼んでくれました。随分両先生には影響を受けましたが、当時はやっていた現代思想にはまっていた私は、十分にヨンパルト教授や森末助教授の意向には添えなかったのだと思います。世界が狭かったのですね。いやそもそも能力がなかたtのですが(汗)。

★しかし、ヨンパルト教授の対話スタイルのゼミはとにかく楽しかったわけです。この間、GLICCの鈴木代表と帰国生やAO入試を受験する生徒で法学部を受けたいという生徒のプログラムについて議論しましたが、一橋と東大と慶応はある特色があることに気づきました。もし上智大学を受けるとなると、戦略的に2タイプの対応の必要があるなあと。

★早稲田や他の大学はその色はあまりないので、一般的な小論文対策でいけるでしょうが、「一橋と東大と慶応」と「上智」は大きく二つの色がはっきりしています。

★結局、その対応はPBL型にならざるを得ないということで、オリジナルでテキストは作成していこうと。

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★当時、ヨンパルト教授や森末助教授にひょこひょうこついていった東大の法哲学の会で出遭っていた若き俊英たちが、今や、一橋や東大で、あのときの彼ら自身の思想や発想をきちんと発展させていて、その弟子が慶応にいるとは。過去問を見てみると、ちゃんとその影響下の問いが出されているなんて!驚きでした。東大やケンブリッジ、一橋に進学した生徒は、たしかにそういう発想をベースに論じることができたし、上智に進んだ生徒はヨンパルト教授(今は他界していますが)の伝統的なカトリック法思想ベースの論理構築というか倫理観を展開できたなあと。いずれもPBLをやりながら、戦略的なコミュニケーションをㇳレーニングしていたことがよかったのかどうか。。。

★帰国生入試やAO入試は、内申点あるいはIBのスコアと小論文、口頭試問でだいたい決まるので、合格の手ごたえをダイレクトに感じるものです。特にケンブリッジに行った生徒の論理的構築力と哲学的ベースとスピーチ力には驚きました。彼女たち彼らたちはとにかくオープンエンドな問いを考えるのが大好きだし、自らビッグクエスチョンを生み出し、それを考えたりしていくのがワクワクするというのです。

★まさに問いを生きるという感じです。MITのハレ・グレガーセン・シニアフェローの「問いこそが答えだ」という本は問いを生み出すプロジェクトで、これぞPBLの真髄だという本です。私が仲間と挑戦してきた世界を変えるPBLは、まさにビッグクエスチョンを生み出す旅そのものです。

★かつての仲間がそれぞれのポジショニングを得ながらもPBLという探究の道を歩み続けているのは、その原点である問いを生きるということを大切にしているからでしょう。どこかで、また互いの問いのスクランブル対話ができたらいいねと石井さんとは話を終えました。

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2020年7月26日 (日)

就学前の教育(01)内田真哉先生のビジョン

★久しぶりに内田真哉先生と対話をしました。Zoom越しでしたが期待通り子供の新たな宇宙を生み出す教育出動を着々と進めていました。

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★まずはレゴ®シリアスプレイ®に基づいたレゴの学びをご自身のみずき野幼稚園ではじめたのです。もちろん、これは理事長の権限でというのではなく、幼稚園の先生方からの要請だったようです。聖学院時代の思考力セミナーでの活躍は、幼稚園の先生の目にもとまっていたのですね。

★そして、幼稚園の先生方にレゴ®シリアスプレイ®は共感されていたわけです。

★そんな話をしながら、当然、就学前と就学後の教育の架け橋がレゴだということになるのは論理的必然だし、すでに内田先生は、人間の成長の発達を促す共通言語としてレゴは在ると直感していたようです。

★幼児期の砂場や積み木が人生の学びのプロトタイプという話はそういえば、アーティストや建築家からはよくききます。たとえば、建築家フランク・ロイド・ライトは積み木がそうだったと。

★彼らの時代にもしレゴがあったら、きっとレゴがそうだということになったでしょう。現代建築思想家クリストファー・アレグザンダーも、パタンランゲージをレゴでデザインしたかもしれません。河合隼雄の箱庭もレゴと似ているとも言われています。

★どうやら、アートや建築、心理学と親和性があるというだけでも、教育にも親和性があるというのは推測に難くありません。

★内田先生自身、テクノロジー、心理学、アートに精通しています。

★当然、新しい教育システムのビジョンを思い描いています。しかも、内田先生はある意味教育起業家です。新しいビジネスの方法を考えています。ちょうどダボス会議でも資本主義から才能主義への転換が話題になっています。

★新しい教育と新しい経済は一体になるでしょう。でもまだだれもそれを行う方法論を試していません。

★ところが、内田先生のプロジェクトの種はすでにいろいろ動いています。聖学院の内田先生の弟子たちも世界中に散って動いています。どこかであるとき繋がるでしょう。しかも、そう遠い話ではないでしょう。いずれ明らかになるでしょう。

★そういえば、内田先生の精神的ルーツの1人内村鑑三の話をお聞きするのを忘れていました。また今度話をお聞きすることにしましょう。

★それから、内田先生は、工学院校長の平方先生の聖学院時代の教え子です。弟子でもあります。私立学校というのは、こうして未来への普遍的なマインドをいまここで引き継いでいく不思議なコミュニティでもあります。そう感じないではいられません。子供たちの幸せは私たちの幸せでもあります。内田先生のプロジェクトが大きくなることを楽しみに待つと同時にどこかで結びつけるように私も活動していきたいと思います。

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品川翔英の進化(04)古典の授業の再定義 リベラルアーツとしての古典の授業へ

★品川翔英の西山先生のチャンレンジングな古典の授業。チェンジメーカーとしての教師の面目躍如。古典を大学入試で使わないコースと大学入試で概ね使うが看護系のように使わない生徒もいるコースとでは、古典の授業に対するモチベーションが違います。もしも、今までのように文法と古語を覚えて、古文の訳読をするような授業だったとしたら、そのモチベーションはたんに受験にでるかどうかで、自分には関係ないとか合格するためにがんばるしかないとかいうモチベーションの違い。違いというより、モチベーションがあるとかないとかの違いです。

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★ところが、西山先生のマッチングするモチベーションの質は違います。西山先生の授業のプレゼンを聴きながら、そのことに気づいた国語科の先生方は、もう一度、品川翔英のコース別の古典授業のゴール設定を議論しました。古典の教材のシラバスはありますが、その中身は必ずしもコース別ではありませんでした。教材の理解のゴール設定は違ったとしても、モチベーションの多様性は盛り込まれていなかったのだと思います。

★そのため、議論し、マインドマップで整理して行きました。すると、一枚の絵ができあがったのです。美しい絵で、いずれ公開されるでしょう。ともあれ、その絵を使って、具体的に生徒をイメージして、それぞえのモチベーションに合わせて、古典の学び方を学ぶ話をするとしたらという設定でロールプレイスピーチもしました。

★具体的な生徒像を共有できる先生方だからこそできる的確で愛のあるスピーチで感動しました。

★古典を入試で使うか使わないかの前に、古典の学びとは何か、その価値が大学入試で古典を使わなくても、役立つ糸口をたくさん用意しているのが西山先生の授業デザインの特徴でした。

★たとえば、「もののあはれ」や「身に染みる」という言葉の背景にある時代背景をリサーチし、Googlegraphのように知識を整理していったり、自分の考えを記述したり。。。そして、そのたびにペアワーク、つまり対話しながら学びを展開していきます。

★「もののあはれ」の日本文学の中での美的価値にとどまらず、日本文化への影響をどうとらえ返していくかという探究的なアプローチをしたり、「身に染みる」では、歌論の基準を巡る日本人の美学判断に迫る話に展開しています。

★インターネットでリサーチすれば、すでにそのような研究はされていますから、古典を入試で使わない生徒は、そちらのアプローチを示唆すれば、古典文法や古語を覚えるのが得意でなくても大いに興味と関心を持つだろうというのです。

★このアプローチには、多くの現代語訳、英語の得意な生徒は英訳も使えます。漫画やアニメも使えます。AUの宣伝のように古典のパロディー創作にも発展できます。

★古典を使って入試に挑む生徒は、このような探究的アプローチの時間はとれませんが、どんどん古典を読むことの新しい意味を見出せるでしょう。また総合型選抜を活用する生徒には、口頭試問のような場合、多様性の根拠をサポートする知識として活用できるということにも気づいていくでしょう。

★まさに、品川翔英の古典は、入試のための教科からリベラルアーツで学ぶ言語領域に深くつながっていくPBL授業が展開されはじめたのです。西山先生はファーストペンギンよろしく挑戦したのです。その準備にかけた時間は膨大でしょう。それは、多くのアクティビティやスキルを生徒が活用するように仕掛けているので、当然ですが、頭が下がります。

★生徒のアンケートの結果では、特にペアワークが刺激的だっという生徒と教えられることに慣れていて自分で考えていく学びに戸惑いを感じる生徒もいました。マインドセットはこれからもう一度やらなければならにでしょうが、西山先生の生徒の未来を思う気持ちは必ず伝わることでしょう。

★西山先生は、思い通りに生徒の反応をえられたときのワクワク感とそうでないときのガクっとなるショックを素直に先生方と共有していました。

★そのたびに、先生方は、どこを自分も取り込み、どこを共に改善していくか対話は大いに盛り上がりました。8月は、田中幸次先生の授業分析です。またご紹介します。

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2020年7月25日 (土)

ポストコロナ時代の教育(15)新渡戸文化中学校のクロスカリキュラム授業「Happiness Bridge」に期待!

★7月23日(木)、新渡戸文化学園は、中学校クロスカリキュラム授業「Happiness Bridge(以降「HB」と表記)をオンラインで実施しました。生徒のみさんが1学期間探究してきた学習の成果を、ブレークアウトルーム(分割した小部屋)で少人数に分かれて発表。

【図1】

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★ブレークアウトルームでは、生徒2名がそれぞれ自分の探究成果を、外部の人2~3名にむけて発表し、対話も含めて25分間くらいの時間で行うのですが、全部で3クールありました。

★この外部の人材ネットワークを結び付けるHBは、もう何度も行われていて、その中間発表という位置づけだと思います。ですから生徒の皆さんの発表はかなり深まっていました。

★生徒は、毎回未知との遭遇です。ブレークアウトルームをたくさん作るわけですから、参加する外部の人も毎回100人はいるのしょう。今回も120名を超えているということでした。いろいろな仕事に就いている人と出遭い、自分の想いや探究活動が共感が得られるかどうか、生徒の皆さんは緊張をしていますが、対話が始まるとそれはすぐに解けて、自分の世界を語ってくれます。

★どの探究の成果も、目から鱗というものばかりでした。ふだん私たちはいかにものごとを表面的にしか見ていないか反省させられました。

★いやあ感動した、すばらしいと第一声。しかし、生徒の皆さんはもっと具体的にフィードバックをというマインドセットがされていますから、襟をただして語らなければなりません。参加された他の外部の方が、プレゼンの形式や内容について具体的にポジティブに評価され、アドバイスをしています。

★私もなんとか頑張りますが、なかなか難しいと感じました。生徒のみなさんが、それぞれ深まりの行方が極めて個性的だったからです。ペアの組み合わせが中1と中3だったので、二人の別々の探究がどこで結びつくのかとか、使う側ではなく創る側になってみたとしたらとか、内省のポイントを聞いてみたりとか、どんな起業家や団体とつながるアイデアがあるかとか聞いてみました。

★瞬発力のある切り返しや対応が鋭く、驚かされました。また、ラジオ番組のパーソナリティさながらの声質の生徒やテレビ番組のキャスターさながらの表情の豊かな生徒もいてこんなに才能が豊かに開花するものなのだと感じ入りました。

★また、対話をしているうちに、本当はもう一つの探究の選択肢があったのだという話になる生徒もいました。この選択肢がたくさんあってどれにしようか迷ったがこういう理由で判断したという話は、その生徒の内面の奥行に触れ戸惑いました。その探究の内容も、まったく知らないことだったので、生徒のみなさんの世界の広さとその広さがグローバルにすでにつながっているという話を聞いて、いかにふだん生徒が大人に気を遣って話をしているのか衝撃でした。

★どうせ話してもわからないから、自分の世界にしまっておこうと。しかし、このHBではそれは開かれています。中3と中1の生徒が、そんな深いところで協同作業ができればすばらしいねと。すると中3の生徒も自分の知らない世界をありがとう。どこで結びつくか考えてみたいねと。先輩・・・という中1のその響きがなんともよかったわけです。

★さて、このHBでは、何が起こっているのだろう。思い巡らしているうちに、今朝方ようやく夢の中で【図1】が思い浮かびました。たしかに、HBで生徒さんは教科書の枠をはるかに超えていました。単純に文献情報をカット&ペーストしたものもありませんでした。

★書籍、インターネットの動画などの情報、先生方や外部の方と話し合った体験情報など多様な情報を収集し、それを整理する過程で、あるいは整理をする前の驚きに導かれて、さらに調べ、思考し、内省(リフレクション)し、何度もチームで対話し、生まれてきた世界でした。

★このHBにいたるまでの探究、議論、編集、リファインを繰り返すたびに、生徒の世界は拡大していきます。深くなっていきます。私たちは予測不能な時代そのものをいまここで体験してしまっているわけですが、教科書で学んで与えらえた世界を有しているだけでは、幸せになれないことは了解済みです。

★しかし、ではどうやったら新しい世界を自ら創り出し、それを共感してまた新しい世界を協働して創っていけるのか?その実装方法をまだだれも確立していません。そこに挑戦しているのが新渡戸文化学園なのだということに改めて気づきました。幸せの虹は、遠きにありて見えるモノです。虹の中にいると見えないようです。どうやら未来に投影される虹の根源はHB自体にあるということでしょう。

★まさに幸せの青い鳥だったのです。。。生徒のみなさん、そして先生方、参加されたみなさん、幸せな瞬間をありがとうございました。

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2020年7月24日 (金)

工学院インパクト(03)集団と個人の複雑適応系組織 生徒1人ひとりの価値が輝く

★まだ、生徒の皆さんとのインタビューができていないのですが、比較的多くの生徒さんと接して、それぞれ個性的で自分の才能の価値を見出し、それを高める活動をしています。しかも、とても大事なことは、だれも自分ひとりの力で自分の価値が生まれていると思っていないということです。つまり、個人の才能と集団との相互依存の複雑適応系の組織になっています。これは教師の集団も同じです。

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(左から、国語科の臼井先生、保健体育科の雨宮先生)

★なぜこうなっているのか、実はわからないのです。ということは、これが工学院の文化なのでしょう。ともあれ、教師も一人一人の才能が豊かです。臼井先生は、今回のGPでは、タイチームを担当しています。もちろん、タイはいけないので、変更しなければならないのですが、生徒のどんなやりとりに注目しているかというと、やはり何といっても言語ゲームです。

★国語の教師であるというだけではなく、実は言語理論の授業を担当したり、探究論文のプロジェクトメンバーだったりということもあるでしょう。言葉には意味があるわけだけれど、それは実用的な生活の中で生まれてくるもので、文化が違えばまたちがうわけです。

★その違いを生徒が意識しながら、タイという文化に接近していっくわけです。英語という言葉を使いながら、タイと日本の文化の違いで、意味のニュアンスが違っていたり、言葉の示す感情や言葉に反応する行動が違うわけです。

★私たちはゲームを楽しむとき、トリセツを読んで行うことはあまりしません。基本的なことは読むでしょうが、相手がこう来たらこう対応する、こちらがこう対応したら相手がこう反応するだろうというところまでは、書いていません。そこは、経験してみるしかないし、経験の中ではじめて参考になる文献を知ることになります。そこからようやく探究的な道が開けます。

★言葉の背景の文化や制度の情報の非対称性を、互いにコミュニケーションをとりながら理解していくのです。その非対称性をもしも埋められたら、すごいことです。誰も埋めてこなかったから葛藤や分断が生まれるということが、今パンデミックで赤裸々に問題になっているところです。

★そして、雨宮先生は、すでにご紹介したように、世界観からアプローチしていきます。個人個人の世界観の変容が、世界の変容にかかわっていくという壮大なビジョンです。しかし、自分が変わることが、世界が変わることにうながると生徒が気づいたらどうでしょう。

★想像しただけでわくわくしてきませんか。

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★雨宮先生と臼井先生のインタビューのあと、アメリカ班が緊急ミーティングを行うというので、覗いてみました。化学の新井先生が担当のようでした。なんでも、アメリカにはいかないので、国内のどこにするのか、事前学習のコンセプトは変えずに再編集しようという目標変更の共有をしていたようです。

★新井先生は、職員会議があるからと、こういってさっさと教室を後にしました。そのメッセージとは、「自由が大切だよ。自由に考えなさい。楽しくなくてはね。ただし、理屈は必要だし、理論は大事だよ。それがあれば、自由でよいから。あとは清水くんたちよろしくね」ということでした。

★自由と倫理という世界観の問題ではなく、自由と論理のデザインに着目するというのが、新井先生らしいですね。

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★その日にお会いした3人の先生だけでもこんなに価値意識や観点が違います。それでいて、集団として相乗効果を生み出してダイナミックに動いています。

★実に不思議だと思い巡らしていたら、教務主任の田中歩先生にお会いしました。どうですかねと聞くと、「PBLという泉からいろいろな支流ができて、それがやがて幾つかの大河になっていくって感じですかね。生成の持続可能性がキーワードかも」といつもながら飄々とシンプルに深いフレーズを残して去っていきました。

★GPの企画ミーティングなどの活動は、継続的にウォッチしていきます。また報告します。

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工学院インパクト(02)複雑適応系組織 森も木も見る構えがポイント

★工学院を眺めて丸ごと理解しようというのは難しい。どうやら通常の電子顕微鏡や宇宙望遠鏡の倍率では見えない大切なものがあるようです。あるいは量子力学ではないですが、見ようとするとそこから粒子はするりと移動してしまっていて、位置が特定できないという感じかもしれません。おそらく多くの広告代理店やメディアからもっとわかりやすくと言われているだろうし、広報が上手でないとか言われてもいるかもしれません。

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★広報部長の水川先生はまったくもってたいへんです。でも、水川先生の能力をもってしても、工学院の全貌を表現するのは難しいのだと考えるのだ妥当でしょう。

★ほかの学校だったら、名物先生のインタビュー、優秀な在校生やOG/OBのインタビュー、目玉になるイベント、カリキュラム表、活躍している部活などを取材すればよいわけです。そして、それだとあまり差が際立たないので、偏差値と大学合格実績のランキングの違いで表現せざるを得ないわけです。

★偏差値と大学合格実績は受験業界からの要請だし、一般に教育投資の観点からいって、保護者にとってはわかりやすい指標だったというのもあります。しかし、本当は、学校当局が<わかりやすさ>の罠にはまって、自らの大切な教育内容を表現することを怠ってきたということも実はあったのです。

★そして、いつの間にかわかりやすい表現に自縄自縛に陥っていくという業界私学が増えたのです。

★ケインズではないですが、今までの経済社会は人気投票だし、悪貨は良貨を駆逐するというグレシャムの法則が成り立ってきた世界ですから、仕方がなかったのです。

★ところが、工学院の先生方は、そのような壁を突破する教育出動をここ何年かしてきました。この人気投票と悪貨が良貨を駆逐する格差社会、自己肯定感を打ち砕く社会で90%の生徒は困ていたのです。ランキング社会は10%くらしか幸せにならないのは、説明するまでもないでしょう。もちろん、そのことが果たして幸せなのかは、多く議論されています。

★したがって、業界私学の固定観念をぶち破るために、あらゆる活動を再定義していったのです。その再定義を本格的に始めたのが、今の高3です。1年目のGPがこの学年から始まったのには、そのような再定義の集大成という意味があったのです。

★授業から始まって、部活やイベントあらゆるものを再定義していきました。再定義なので、過去の否定ではないのです。アップデートという方が妥当かもしれません。野球部のファシリティーズも変えました、新宿キャンパスで週1回学ぶコースもできました。通学バスの経路も都内全方位に拡大しました。海外研修の数も質も大転換しました。3か月留学などの留学プログラムも定着しました。1人1台のPC環境は全学年揃いました。進学実績も伸びました。海外大学の実績もがっつり出始めました。

★国内外の革新的でパワフルなコミュニティのメンバー校としてリーダーシップも発揮しています。

★グローバルなコンテストに生徒は果敢に挑戦して優秀賞を勝ち得ています。国際数学コンクールと模擬国連だけが国際コンクールの時代は終わっています。多様な時代です。多様な才能が生かされる時代です。

★NPOや企業、スーパーアスリート、作家、大学人など多様な人材ネットワークとも接続ができ、毎年どんどん増えています。

★もちろん、肝心の授業もPBL型で広く深く生徒は学んでいます。今回のパンデミックの時に最も光を浴びたのは、学園生活の日常をどうオンラインで非日常的に乗り越えるかでした。その学園生活の日常こそ普段/不断の授業でした。

★これら1つひとつの再定義は、傍から見ていて複雑系でした。しかし、よく見てください。複雑系は混乱系とは違うのです。複雑だけれど適応して、成果を上げているのです。私は工学院の組織はピラミッド型のわかりやすい組織とは違って、複雑適応系組織だと思っています。

★この集大成の動きのアウトカムが証明されたのが、昨年のGPでした。教師も生徒も今までを振り返り、大きな自身と誇りを持ったことでしょう。

★ある意味、ホッともしたのでしょう。しかし、神様はそう簡単な方ではありません。またまた試練の道を用意しました。このコロナ禍にあっては、昨年のレールを歩くことができないのです。教師も生徒もこの立ちはだかる壁を今一度飛び越えなくてはならないのです。

★ただ、工学院の教師も生徒も、常に再定義して進むので、今回も同じ道を歩まないだけのことだと思っているでしょう。しかし、この豊かな環境は伝統となっているのです。伝統と革新の複雑適応系システムが工学院にはできているのです。

★複雑系とは森にたとえることができます。森の中に入って、一本の木とそこに集まる生態系を語ることはわかりやすいですね。しかし、森全体を語るとしたら、どうでしょう。そうです。難しいですよね。

★とはいえ、わかりにくい、難しいと言ったって、森は存在しているのです。最近、保護者がそこに気づきはじめました。なぜなら、私立学校を選択しようとしている保護者はグローバルな波を世界的視野で乗り越えている人が多いのです。木を見て森を見ない構えは、サバイブでききません。そして実は森を見て木を見ない構えも、サバイブできません。

★両方を見る目が育つ環境はどこか!?保護者のリサーチの目もまたアップデートしています。

★ですから、森も木も見て、パブリックオーディエンスに発信をしなくてはなりません。工学院のサイトの更新率が高いのはそういうことなのでしょう。

★雨宮先生の発信も実に楽しみです。→「GPオンライン事前学習!」

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工学院インパクト(01)高校生市民がつくるグローバル拠点 GPはグローバル社会実装のインターンシップ

★工学院の高2で実施するグローバルプロジェクト(GP)は、先生方にとっては工学院の全体の教育活動の集大成。生徒にとっては、18歳成年を迎えるまでにグローバルな社会実装を準備するインターンシップの拠点。このように教師も生徒も学校生活全体を凝縮して未来を映し出すというビジョンを抱きながら教育活動するのは工学院が初めてかもしれません。一般には、一つ一つの行事は自己完結型ですから、工学院は一味も二味も違います。

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★GP全体をマネジメントするリーダー雨宮先生(保健体育科教師)は、「工学院は中学から入学した生徒も高校から入学した生徒もとにかくプロジェクト体験が多いのです。私も中3の生徒のオーストラリア研修に同行しましたが、生徒と同じように目からウロコという衝撃を受ける体験をしました。そして、やはり自分の人生は変わりました。世界的視野が広まりました。だから、このような教科を超える教育活動には身体が前のめりに動いてしまいます」と語ります。笑顔と情熱がマスク越しに伝わってきます。

★さらに「まして、多感な時期に多くのプロジェクトで経験すれば、生徒はもっと世界を見る目も自分の世界も変わるでしょう。実際そうでした。でも、まだままだです。もっともっと自分の世界を広げ深堀して、多くの仲間と世界を変えていく大きな体験をしてもらいたいと思っています」と生徒へ期待とエールを贈ります。

★GPは、今年で2年目ですが、なんと今回のパンデミックの影響で、タイやアメリカ、カンボジアなどは行くことができません。沖縄プロジェクトはそのまま実行できますが、ほかのプロジェクトは行き先を国内に変更です。雨宮先生がブログで発信している事前学習の様子を読むと、かなり密度の高いもので、一斉休校の時期に、頻繁にZoomで議論を交わし、企画会議を行っている様子がわかります。

★もちろん、その会議をしているときに、このパンデミックの影響力のすさまじさを意識していたので、行けなくなった時も想定して、進めてきたようです。

★ですから、生徒も教師も、そもそもGPは何なのか、それにかかわる自分たちは何者なのかを考え議論する瞬間も広がったようです。生徒は、デザイン思考やマーケティング、都市デザインの知識も学んでいますから、リスクをどう回避したり、予測不能な事態にどう対応するかも俊敏に動きます。まさしく、大学や社会に進み、不測の事態に遭遇することは山ほどありますから、回避のマネジメントや創造的解決の思考スキルやそれをサポートするテクノロジーやエンジニアリングも実装していきます。

★もちろん、1人ひとり全員がテクノロジーやエンジニアリングを高度に実装しているわけではありません。1人1台ラップトップを持って授業を受けていますから、かなりのヘビーユーザーであることは確かです。今回のオンライン授業もスムーズに移行できたのも、工学院の教師と生徒にとっては当たり前でした。

★ただ、そんな環境だからこそ突出した才能を持っている生徒が数多くいることも確かです。Fabコンテストで毎回優秀賞を獲得するテクノロジーやエンジニアリングに長けたクリエイーターもいるし、アーティストもいるし、ビジネスマン顔負けのマネジメント力を持った生徒もいます。英語が半端なく優秀な生徒も1クラス分はいるわけです。議論をしたり企画を運営するときに、多様なアプローチがで行っているのです。グローバル企業の在り方そのものです。

★そのような生徒だからこそ、その活動をクライシスマネジメントをしながらも基本は手を放して抱きかかえるかのように見守っているのが雨宮先生です。「やはりリーダーシップやチームワークは大切です。もちろん、柔軟なチームワークが大切ですから、1人のリーダーについていくという組織ではありありません。トップダウンとボトムアップの相互作用などというのは、もう生徒は知っていますが、そういう一般的な組織理論ではなく、この他では行われていない経験の中からどんなチームを創っていくのか学んでいることこそ貴重だと思います。

もちろん、理論は理論で大切です。体育科の授業の中に体育理論も行っていますから、コーチングやチームワークづくりの理論も生徒は学びます。でも、このような豊富なプロジェクト体験があるからこそ、体育理論が役立つでしょう。」と。

★工学院の保健体育科の先生方自身、柔軟で強靭なチームワーク力のある集団です。メンタルトレーニングのワークショップも導入しているし、エンパワーメントリフレクションやケアについてのPBL授業も行っています。

★たしかにアスリートは、スポーツ科学やチームワーク、リーダーシップ、そしていかにGRITの精神を内側から彷彿とさせるか学び続けています。今回のパンデミックのオンライン授業でも、ソーシャル、エモーショナル、フィジカルのコンディションをどうするかを引き受けたのも保健体育科の先生方です。

★雨宮先生とインタビューをしている最中、幾度か保健体育科の仲間の教師が、見守りに来ました。雨宮先生が本間にいじめられているのではないかと心配して(笑)。そんな暖かい教師チームワークが繰り広げられているからこそ、生徒も安心して取り組めるでしょう。雨宮先生の話に耳を傾けながら、<信頼>というマインドが大切なのだと<感動>したのでした。

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2020年7月22日 (水)

ポストコロナ時代の教育(14)N高100万人計画の背景に 18歳成年と高校普通科再編の流れ

★N高が100万人計画を立てているということはすでにご紹介しましたが、この背景には何があるのでしょう。それは民法改正によって2022年から施行される18歳成年の件と今議論され始めている高校普通科の再編の動きがあります。もちろん、これは私の妄想です。

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★今国公立の高校と私立高校の生徒数の比は、ざっくり7:3です。しかし、近未来においてN高校が100万人の生徒を抱えることができたら、その比は、ひっくりかえります。

★詳しく言うと、国公立:通信制:私立が1:1:1になるのです。

★したがって、これは鶏が先が卵がさきかわかりませんが、普通科の再編に拍車がかかります。ポストコロナは、リモート授業が拡大します。するとN高が目標を達成しなくても、現状でも増えている広域通信制高校がしのぎを削るでしょう。学習指導要領をこなすのは、つまり74単位とるのは難しくないのです。

★エっ!?と思うでしょう。実は、各学校が学習指導要領の範囲をこなすとき、基礎→応用→発展まで授業したり、副教材を加算します。そりゃあ膨大です。なかなか終わりません。しかし、通信制高校は高校卒業資格を出すのが役割です。例題と基本問題をしっかり学べる環境で十分なのです。やり方によっては、ちょっとそんなのでよいのと思うようなケースもありますが、それは市場の活性化で質は担保されるようになっていくでしょう。

★言いたいことは、普通科がかける時間の3分の1で履修できるということです。これで卒業資格をとり、あとの3分の2は自分の才能を直接社会活動に結びつけて学べるということになります。起業するもよし、弁護士資格を取る準備をしてもよし、グローバル市民の活動をするもよし。アスリートやスター街道を邁進してもよいのです。実際そうなっていますし。

★18歳成年ですから、その準備の方が大事になります。進路指導というより、社会につながるインターンシップの場といった方がよいでしょう。もちろん、そういう活動をしているわけですから、総合型選抜で大学にもどんどんつながります。

★グローバルネットワークは、オンライン授業が行われているわけですから、それも十分に可能で、海外大学も開けています。別に世界大学ランキング100位以内でなくてよいのです。たとえば、最初、イギリスでそれほどランキングが高くなくても、編入でいくらでもキャリアップできます。

★米国ならば、コミュニティ・カレッジから編入が可能です。

★とにかく、通信制高校はランキングにこだわらないので、選択肢が多様に開かれるのです。

★ですから、おのずと国公立のシェアは30%くらいになります。今年は、高校の実質無償化元年ですから、学費の問題は壁にはなりません。

★そうすると、普通科を再編しなくても実質再編ということになってしまいそうですね。国公立に進む生徒は、国家公務員や地方公務員として磨きをかけるということになりそうですね。健全な官僚システムの持続可能性ということです。

★そして私立高校は、さらに独自の路線を行くということなのでしょう。

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★まっ、妄想です。

★しかしながら、フィンランドやシンガポールのような教育大国の人口は、両方とも600万人いきません。少子高齢化といっても、日本の高校生数は300万人です。

★18歳成年の準備期間として、300万人がきちンと学びGrowthMindsetされたなら、日本の未来が明るくなります。

★国家というのは、優れた良質の官僚システムが必要です。それは国公立が担います。経済は、通信制国高システムのイノベーション教育が担います。ノーブレスオブリージュは私立高校が担います。

★ユートピアの実現へ近づきます。もちろん、そのときには、国家観や経済システムは今とはまるで違うものに変容しているでしょうが。

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ポストコロナ時代の教育(13)アサンプション国際中高 ハイブリッドPBLの実践

★一斉休校中のアサンプション国際中高のオンライン授業は、メディアでも取り上げられるほど先進的でしたが、学校が再開してからのさらなる研究への情熱が燃え上がっています。岡本副校長は、その情熱の火をまずは小さく燃やしていずれ大きくしようとプロトタイプづくりをしています。

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★その過程で、たまに私も呼ばれ、プロジェクトメンバーとZoom対話をしようと。昨日も英語科の松平先生のすばらしいハイブリッドPBL授業のアナリーゼをしました。私の使うハイブリッドPBL授業フォームも役に立ったようです。ただ、通常時間の合間で行うので、いつものように3時間はできません。ですから、コンパクトにして行いました。

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★松平先生のPBLは、コロナ禍のオンラインPBL授業を経て、その成果を学校再開後の通常のリアルな時空でも盛り込んでいます。特にZoomのブレイクアウトルームを活用したディスカッションは優れものです。

★生徒1人ひとりがマイク付きイヤホーンを装着して行うと1教室30人でもハウリングしないことが検証されました。イヤホーンを持っていない生徒には、ダイソーなどで200円くらいで売っているものを用意していて、それで対応したそうです。

★ニューノーマルな学校生活ですから、ノー3密をどうつくるかが課題です。マスク、静かに話す、手洗い励行で感染防止をするわけですが、ディスカッションをリアルにやると、興奮して声が大きくなったりします。ですから、よくある講義形式の机と椅子の配置のままで、オンライン上はディスカッションしているという環境を松平先生は考案したのです。

★もしみながマイク付きヘッドホーンを使用しなければ、ハウリングを起こして成り立ちません。そこを見越して準備をちゃんとしているところが、簡単なようでなかなかできないものです。授業デザインとは、学びのツールの計画も必要です。

★高2のイングリッシュコースですから、オールイングリッシュで授業は展開していきます。知識としては<used to >と<be used to>の使い分けの学びだったのですが、松平先生は、実用性と創造性を大切にしています。いわゆるオーセンティックな学びです。

★ですから、実際に英文をつくり、スピーチしてみるわけですが、その英文を創る時に、3段階の問いを投げていきます。

1)ソフトバンクの40歳ののび太が登場するCMのスキットをメタファーとして、簡単な物語を生徒自身が創る問いが投げられます。今の生徒と40年後の生徒の対話に変換するわけです。

2)生徒からビジネスマンに主語を変えて、40年前のビジネスマンと今のビジネスマンのやりとりを聞いて、そのあとに何が起きたのか説明する英文を創ります。

3)40年後の世界がどうなっているかを考え、2060年の世界をタイムマシーンで見てきて、2020年に戻ってきたときにどう語るのかをグループで英文を創作します。

★問いの設定が、主語が自分から他者へ、他者から世界へと広がっていくことで、クリエイティビティの発揮の仕方が広がります。

★英語という言語の特有のフォームと考えるという教科横断型のスキルの連合を仕掛けています。

★なおかつ、問いは、キャリアデザインというまさにマイプロジェクトを生み出す刺激にもなっています。

★ブレイクアウトルームに出たり入ったりしながらハイブリッドなPBL授業です。

★C1英語の環境×PBL×ICTが統合された、ある意味上智大推奨のCLILの手法とも重なる部分が多い授業でした。

★松平先生は研究熱心で、外部の多様なセミナーにも参加しています。

★松平先生自身「ここまでできたから満足するのではなく、自己変容し続けることことそ自分の役割です」と語ります。

★今回のZoom対話が、ハイブリッドPBLのプロトタイピングに役立てば幸いです。9月にまたやりましょうということになりました。今度は山根先生のハイブリッドPBL授業のアナリーゼ。楽しみです。

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ポストコロナ時代の教育(12)N高100万人計画、聖学院新クラスGIC、NDニューリベラルアーツ、田中歩先生共感的対話、内田真哉先生就学前教育、柳川範之東大教授 みんなつながっている。突き抜ける動き!井庭崇教授のパターンラーゲージが共約貨幣。

★N高校が、100万人生徒獲得を目指していると語っています。聖学院が今まで見たこともないような新クラスGICを創っています。ノートルダム女学院が新京都学派ならぬニューリベラルアーツを生み出しています。工学院の田中歩先生が共感的対話を学内外を越境的に拡大しています。内田真哉先生が就学前教育とすべての教育を接続しようとしています。柳川範之東大教授のライフデザイン力に世の中が覚醒し始めています。

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写真は、井庭崇教授のサイトから。

★いったいこのような現象は何を意味しているのでしょうか?実はみなつがっています。エっ!?と思われた方は井庭崇教授の多様なパターンランゲージでカード化しているツールを手にとってみましょう。あらゆる違う現象の背景に実は隠れたつながりがあることが見えてきます。井庭教授の創出したパターンランゲージ群は隠れたつながりを見出す共約通貨の働きをしています。

★上記のランゲージパターンのカードで見るならば、ここに挙げた現象は、近代社会の限界を突き抜ける現象です。そのために、学習指導要領をさらりと突破する学びの竜巻を生み出しています。そのためには、広げ深めるT字型学びのスキルを体得します。そのためには、一方で固定観念や頑迷固陋な自分を捨てる勇気が必要です。こんなふうに、多彩な現象を300枚以上ある多様なカードでできてしまいます。

★そして、大事なことは、共約可能性のないものがでてきたときに、それが異彩鬼才の現象となるわけです。希少価値というやつですね。でもでも、共約可能性のない共約不可能性はないので、両者はルビンの壺であることを気遣う必要はあります。

★というわけで、まずはここに挙げた現象はみなつながっていて、それでいて異彩鬼才の独自性を発揮します。この現象から異彩鬼才のクリエイティブクラスができることでしょう。

★それにしてもN高の100万人計画はすさまじいですね。シンガポールの教育やフィンランドの教育がすばらしいといっても、どちらも高校生は30万人いないでしょう。N高はそれを飲み込むというわけです。

★エっ!?日本の学習指導要領では飲み込めないでしょうと。ところが、聖学院のGCIでは、少人数ですから飲み込みはしないけれど、学習指導要領をミニマムにして、海外のエスタブリッシュスクールと組んでいきます。工学院の田中歩先生はその共感的対話でエスアブリッシュであろうがなんであろうが、クリエイティブ高校生に道を拓きます。ノートルダム女学院は、そのような動きに必要な知の世界共約可能性であるニューリベラルアーツの拠点づくりをしています。

★内田先生はすべての子供たちにその知(=非認知能力×認知能力)の松明を創出しています。柳川範之教授は自らそのような生き方を体現しています。クリエイティブクラスのスーパーモデルです。

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★で、N高100万人計画がどう関係あるの?かですね。通信制高校は、柳川範之教授のような独学のパワーがない生徒のサポートをすることによって、柳川範之教授のようなライフデザインを用意します。

★柳川教授は、グローバル市民でもありますから、N高校の生徒もその可能性を持っています。しかし、自力ではなかなかその可能性を顕在化できないでしょう。どうしたらよいのか?その突破口は聖学院や工学院のプログラムにあるわけです。それもN高は実は研究済みです。

★そして、N高が画竜点睛を欠かないために必要とするのが、非認知的能力の重要性です。この側面が就学前教育になかったのですから、巧く育っていないのが日本の高校生の現状です。N高は、三顧の礼を尽くして内田先生のもとにいくでしょう。

★そして、気づきます。ここにハーバード大学、MITメディアラボ、スタンフォード大学などの知が蓄積していることを。

★この知の蓄積は、内田先生と共に作り上げてきた聖学院や工学院の教育にも蓄積しています。ノートルダム女学院にはすでに19世紀創設者がその先駆けでした。それを掘り起こしています。

★やっぱり、本間の言うことはわからない!と言われるかもしれません。3カ月後わかりますから待っていてください。大切なものは自ら見ようとしなければ見えませんね。ただし、自分一人では見ることはできません。見たければ、対話が必要です。田中歩先生の共感的対話。共感的コミュニケーションを突き抜けた共感的対話です。

★そして、そして、そして、これに続く動きがどんどんこれからつながっていきます。多くの女子校が満を持して。

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2020年7月21日 (火)

ポストコロナ時代の教育(11)内田真哉先生に学ぶ 就学前の学びますます重要。

内田真哉先生のfacebookをみて、みずき野幼稚園で「レゴを使って表現するゾウ!」プログラムを実施しているのを知りました。さっそく同幼稚園のサイトを見て驚愕。内田先生がファシリテーターしているではないですか!子供たちが真剣にレゴで作品を創っています。

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(左の写真は、みずき野幼稚園から。右の2つの写真は昨年聖学院で行ったセミナーのシーン)

★そうでした。内田先生は聖学院からみずき野幼稚園に移籍されたのでした。4月からリアル聖学院に行っていないものだから、私の中で切り替えができていなかったのです。内田先生は聖学院にいるものとすっかり思い込んでいたのでした。

★しかし、いよいよ内田先生は<世界の創り直し>を始めたのだなあと思うとワクワクしてきました。

★というのも、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授の本がベストセラーになって以来、就学前の非認知能力教育が脚光を浴びているのは周知の事実ですが、それが世界を創り変える事態だということはまだあまり気づかれていません。だから、内田先生がそれをやるのです。

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★内田先生のものの見方・考え方と私のは、接点も多く、ときどきセミナーや研修をいっしょにやらせていただきました。U理論、MI、EQなどを内田先生はレゴ®シリアスプレイ®で結びつけていく達人です。

★私は、レゴをそこまでの域で使うことはありませんが、U理論、MI、EQをニューリベラルアーツ手法に持っていけないかとチャレンジしています。

★そんなスクランブル交差点で内田先生と出会っているのですが、そこに就学前の教育をどう結びつけるか私の中で大きな課題になっていました。そういう総合学園とかかわってきていたからです。特にコロナ禍にあって、就学前の子供たちの教育は家庭の中でどうやったらよいのか周りの友人たちと議論になってもいました。

★そうしたら、内田先生がご自身の幼稚園で実践されているではないですか!

★レゴが就学前の子供たちと、前職の中高の生徒をつないでいるのです。

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★就学前の生徒は、数学や国語、理科、英語という教科学習はしません。しかし、間違いなく学んでいる姿、しかもフロー状態(没入し世界を生成している)のシーンが写真には写っているのです。そして、中高生も教科学習はしているのですが、レゴを使う時教科横断型、あるいは多様な教科の枠をはみ出して、フロー状態で学んでいるのです。

★このフロー状態になっている学びこそ「非認知的能力」の現われなのかもしれません。

★ハイスコープカリキュラムという就学前教育があります。2000年に労働経済学の計量経済学的な分析を精緻化したことでノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授が論文の中で紹介したことによって有名になりました。その論文では、就学前にIQよりも非認知的能力を育てたほうが、子供たちの将来のバリューが高くなり、高収入の仕事に就くことによって、州や国に収める税金が増えることをデータで証明したといわれています。

★これによりオバマ大統領が、幼児教育に力を入れることの正当性を支持したとも。その論文の中で、1962年から行われたペリー就学前教育研究の追跡データを紹介しているのですが、そのときの研究のメンバーの一人がデビッド・ワイカート博士で、彼が米国ハイスコープ研究財団を設立しました。この財団の幼児教育はピアジェという構成主義的学習観の系譜に属し、21世紀型教育のルーツとも共通する部分も多いといわれてもいます。

★構成主義は、PBL型授業のベースでもありますが、こうしてみると、PBL型授業のルーツは、内田先生が行う就学前教育にあることになります。

★今まで長い間講義型授業を続けてきた中高で、生徒が自らプロジェクトを立て、多様なネットワークをつないで、協働して社会貢献できる能力を拡大していく能力を身につけるPBL授業に転換するのは厄介なことでした。

★それが、就学前からそのルーツにつながっている生徒が小中高と進んでいったらどうなるでしょう。さすがに認知能力ばかり伝授する授業は続けられなくなるでしょう。

★社会はいろいろ複雑なそう簡単にどうにかなるわけではたしかにありません。しかし、個人の才能の時代であることは確かです。国や組織が変わる前に、1人ひとりが変わってしまえば、あとはどうなるか予想することは難しくはありません。

★そもそも今までの教育は、これまでの国や組織を強化あるいは補完するための知識や労働力の再生産教育でした。改革する力があるはずがありません。

★しかし、これからは個人の才能ファーストの時代です。この才能は、革新的な教育を遂行する中高ででももちろん開花するのですが、就学前という教科の縛りがない学びの拠点でこそ始めるのが速いでしょう。

★内田先生のことですから縦横無尽にネットワークを張り巡らし、多くの方々を巻き込んで、非認知能力が育つ環境づくりをしていくでしょう。

★この営みが、子供たちが18歳になったとき、世界を創り直すエージェンシーとなることにつながります。あと15年かあ。私は80歳近くになっているはずですが、その世界の変容ぶりを見ることができないかもしれません。しかし、すべては、いまここで生まれていますから、妄想を膨張させることはできます。

★聖学院の生徒は、すでに高校生市民として社会インパクトを生んでいます。ある意味内田先生の弟子たちです。今後どうなっていくのでしょう。<世界の創り直し>の竜巻が大きくなるのが楽しみです。

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ポストコロナ時代の教育(10)アサンプション国際小学校のハイブリッドPBL チームワークと自己陶冶の学校組織

★昨日、アサンプション国際小学校の阿弥先生(教務主任・PBL推進リーダー)とZoom対話をしました。阿弥先生とは5年前から紆余曲折はあるもののPBLプロジェクトを継続しています。阿弥先生の進化はうなぎ上りいやドラゴンが飛翔するがごとくです。めちゃくちゃチャレンジャーだし、一つひとつ実現していく気力あふれる先生です。

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★ペンシルヴァニア大学のアンジェラ・リー・ダックワース教授が提唱したGRITとは、阿弥先生のためにあるような言葉といっても、言い過ぎではないでしょう。GRITとは、Guts(ガッツ:「闘志」)、Resilience(レジリエンス:「粘り強さ」)、Initiative(イニシアチブ:「自発」)、Tenacity(テナシティ:「執念」)の頭文字を並べているようです。

★当時PBLプロジェクトを始める時にワークショップで共有したのはピーター・センゲの「学習する組織」を創ることでした。PBLのコア・アクティビティにはディスカッションとかペアワークがありますが、それが成り立つ前提は信頼関係づくりと対話力です。

★阿弥先生のPBLの歴史は、この対話力を小学生がどう体得していくかということへのGRITだったと思います。もともとGEMSのプログラム作りを行っていたので、PBLの話は共有しやすく、毎回ワークショップは楽しかったですが、5年前は阿弥先生の周りはきつかったでしょう。抵抗もあったでしょう。でも、まさにGRIT!今ではそんなことはすっかり忘れて、アサンプション国際小学校は学校挙げてPBLに取り組んでいます。

★生徒の人数も増えたので、若い先生方もたくさん勤務するようになったことも、PBLの浸透速度と広がりに拍車をかけたと思います。しかし、重要なことはチームワークをつくるということでした。そこに阿弥先生は力を注いでいたし、今もそうしています。

★当時、私が阿弥先生に期待していたのは、PBLの授業をもし学内に浸透させることができたなら、その学校は学習する組織に必ずなるということでした。

①ビジョンを創造し共有する組織

②チームワーク力が豊かな組織

③あのドネラ・メドウズのシステム思考(「もし世界が100人の村だったら」に適用されています)を実践できる組織

④互いにメンタルモデルを尊重できる組織

➄自己研磨できるオープンな組織。

★ピーター・センゲの言う学習する組織は、この5つの領域の相乗効果が現れる組織です。

★阿弥先生は、この組織を生み出すまさにGRITリーダーなのです。この学習する組織は、校務分掌のように目に見える体制ではないのです。かなりマインドの問題なので、目に見えません。ですから、油断するとなくなります。豊かな泉があったはずなのにということは組織ではアルアルです。実に繊細で強靭なわけです。

★ですから、メンテやモニタリングは定期的に行う必要があります。特に今回のようにオンライン授業を学習する組織としてやりきったアサンプション国際小学校は、その成果を盛り込むことによって、それが可能になります。

★そういうわけで、阿弥先生は夏の教員研修を企画しているわけです。阿弥先生自身も小学校2年生を受け持っています。いきなりステージ5という最上級のPBLを小2の環境とすることはできませんが、雰囲気はそこまで行いたいというのです。

★PBLはステージ3.5以上にならないと生徒がワクワクしないのですね。ですから、ステージ2でも、ステージ5くらいの雰囲気を生み出すにはどうしたろよいのか?最近では子供のための哲学=P4Cを取り入れたり、ロイロノートというプラットフォームを活用して、ハイブリッドPBLにしています。

★学校というチーム作りと自己研磨というハイブリッドPBLのさらなる追究。

★人間の生きる道で、この組織と個人の知恵の輪を解いた人は幸せになるといわれています。阿弥先生は先生方と子供たちとこの知恵の輪を解くチャレンジをしているのでしょう。得難い教師の存在をZoom越しに見て、明日の子供たちのwell-beingはなんとかなるなと感じました。

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2020年7月20日 (月)

2021年変わる中学入試(02)英語入試広がる。江戸川取手インパクト。実質新タイプ入試拡大後押し。事実上ニューリベラルアーツ化。

江戸川取手インパクト!が千葉エリアで!首都圏模試センターサイトによると、「来年の2021 年入試はコロナ禍による受験生に配慮した入試を検討しています。また、再来年の(現在の小5 受験生が挑む)2022 年入試は、全員に英語を課して、全回の入試で5 教科入試を行いたいと考えています。ただし、最初からハードルを高くしても受験生に負担ですので、あくまで小学校での学習プラスアルファ程度の英語力を求める、易しい英語から課していきたいと考えています」

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(写真は同センターサイトから)

★今年は、小学校5,6年において、英語の教科化元年。今の5年生が卒業する2022年の中学入試では、2科4科に英語の入試問題が加わる学校が増えると予想されるが、その突破口をあけたのが江戸川取手です。

★すでに英語の入試は増えています。慶応湘南藤沢で国語、算数、英語で受験できる機会を設定して以来、中学入試市場の英語入試は広まりました。

★しかし、まだ国・算・社・理・英という教科入試はありません。江戸川取手が初めて旗を揚げました。このインパクトはすさまじく、茨城、千葉合わせて20校弱の公立中高一貫校が適性検査の中に英語を入れ込むきっかけを与えることになります。

★すでに埼玉の公立中高一貫校では、英語を取り入れているところもありますから、学習指導要領で教科化したわけですから、当然適性検査に盛り込むでしょう。2021年の早稲田大学政治経済学部の独自入試は総合型問題で、その素材文は日本語と英語の両方です。

★東大の推薦入試や京大の特色入試も、学部によっては、すでにそうなっています。

★東京、神奈川を中心に広がっている英語入試は、最初は難しいものではなかったのですが、近年は英検準2級以上を取得している生徒が増えています。将来増える可能性のある5科目入試や適性検査入試における英語のレベルも2025年までにはレベルは上昇せざるを得ないでしょう。

★そしてさりげなく、「2021 年入試はコロナ禍による受験生に配慮した入試を検討しています」とありますが、これはオンライン入試も射程に入っているということを示唆しているのでしょう。同校は、このコロナ禍にあってオンライン学習をきっちり実施してきましたから、パンデミック第2波第3波に柔軟に対応できます。

★かくして、英語入試は広がり、2科4科入試も3科5科入試にシフトしていくでしょう。そして、オンライン入試も増えていきます。これによって何が起こるのか?実はアクティブラーニングやPBL授業が増えていくことになります。

★なぜなら、英語のレベルがあがると、インディペンデントスピーチやディスカッション能力、エッセイライティングの能力が必要になりますから、英語の授業はアクティブラーニングやPBLにならざるを得ません。

★このレベルになると、受験英語ではなく、ランゲージアーツのレベルになります。英語でリベラルアーツに基づくランゲージアーツが行われているのに、国語科は旧態依然とした文学解釈授業をやっているわけにもいかないでしょう。英語と国語がランゲージアーツ化、つまりリベラルアーツをベースにするようになります。

★そしてオンライン授業のレベルがあがると、まるでアクティブラーニングあるいはPBL授業養成ギブスでも装着したように、対話やディスカッション、小論編集をやらざるを得なくなります。

★対話あディスカッション、小論編集には、哲学対話の方法論が取り入れようになります。そうしないとジレンマのエッジをクリティカルシンキングができないからです。

★結局、英語入試、オンライン入試、適性検査型入試、思考力入試などの新タイプ入試が主流になっていきます。

★そんな馬鹿な!と言われるかもしれません。しかし、もし2科4科、あるいは3科5科にこだわるのなら、麻布や武蔵のような入試問題を出題するしかないのです。両校のような基礎知識と深い思考力を問う問題を出題する教科入試は本道です。

★ところが、実際は、基礎知識を難しい知識問題にして出題する2科4科入試が多いのです。ですから、実は、麻布や武蔵の問題の基礎問題を難化させて出題しているのが、いわゆる2科4科入試で、両校の思考力問題を発展させているのが適性検査型や思考力入試などの新タイプ入試だったのです。

★ですから、江戸川取手のように、2科4科を保守するにしても英語を加えるという方向に向かうか、麻布や武蔵の思考力問題をベースにする適性検査型や思考力入試の新タイプ入試の2つの流れがウネリになります。

★しかし、先述したように、英語、オンライン、思考力といった流れは、リベラルアーツの流れに合流します。リベラルアーツと言っても、麻布が言うように「新教養主義」でなければなりません。

★つまり、GAFAや台湾のオードリン・タンデジタル大臣が希求しているように、ニューリベラルアーツの通奏低音がいよいよ大きく響き始めてきたということでしょう。

★時代の通奏低音は、その響きが舞台で響き始める前に聞こえる人と聞こえない人がいます。時代の先見性や先進性を有している人は、その音が聞こえます。

★知の最前線を子供たちと共有しようという学びの場を創っているところでそれはそうなります。入試の中でも中学入試市場は、知の最前線の成果に高感度なアンテナを張り巡らしています。学校だけではなく、保護者もそうです。

★思考力入試ベースの高校新クラスをつくっている聖学院インパクト、ラウンドスクエアに加盟して世界のエスタブリッシュスクールとの共同体を創っている八雲インパクト、新しいタイプの世界のエスタブリッシュスクールの共同体に加盟した巣鴨インパクト、高校生市民がデジタルベースでオーセンティックに大活躍する工学院インパクト、そして中学入試で初の5科入試を行う江戸川取手インパクト、SDGsの運動体を中高生が生み出している和洋九段女子インパクト。中学入試市場は沸騰し始めました。

★ここでいうインパクトとは、市場に貢献する=世界に貢献することです。偏差値があがって、どこの学校も真似できない教育を造ったあ!と自己完結型のリバタリアン学校は論外です。

 

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ポストコロナ時代の教育(09)ノートルダム女学院のPBLの再定義はニューリベラルアーツ

★昨夜(19日)、ノートルダム女学院中高の霜田先生とノートルダム学院小の梅下先生とZoom対話しました。小中高のPBLの接続の仕方について、いつも対話する仲間で、互いの実践をもとにこれからの時代を生徒といっしょにどう創っていこうかというのが共通のテーマになっています。

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★今回は、一斉休校中のオンラインPBL授業、分散登校、学校再開におけるハイブリッドPBL授業の実践を経て、次のステージはどこなのかシェアすることにしました。というのも、メディアをはじめ多くの教育関係者がオンライン授業の是非を現状のメリット・デメリットのアンケートの分析で留まっていると感じているからです。

★現状認識は大切ですが、デメリットを語るあまり、オンライン授業に対するネガティブな感じに足元をすくわれる議論も多く、仮にそのデメリットを改善したとして、結局は現状で停滞してしまうのでは、子供たちの未来はやってこないという危うさを感じているからです。

★この危うさは、今回のパンデミックによって、現状に留まっていることは、停滞どころか衰退を意味するというサインでもあります。

★霜田先生や梅下先生が行っているハイブリッドPBL授業は、そのリスクを回避したり解決するセンサーや思考力を子供たち・生徒が身につける場になっています。ですから、すでに第2段階に入っています。

★また、小学校でも中高でも「思考コード」というメタルーブリックを作成し始めています。まだ霜田先生と梅下先生の研究段階ですが、オンライン効果として学内シェアの可能性が見えてきたというのです。

★すでに、こうして小中高の横断的な対話が行われているし、霜田先生は哲学がベース、梅下先生は理科がベースですから、教科横断的な対話もなされています。Zoom対話で互いのケースをシェアし、ICTのテクニカルな話だけではなく、そもそも子供の能力とか知性とかは社会とどうかかわりながら発達していくのかという対話にもなっています。

★第1段階は、前者の話題が大勢を占めていましたが、第2段階では、ほぼ後者の話ばかりです。この物理的時空の越境性と精神的時空の越境性は、オンライン効果だったでしょう。そうして、その越境ができる共訳性の基準が「思考コード」という気づきもありました。

★第3段階は、おそらくニューリベラルアーツの実装が生徒にとって課題になるだろうと。

★こうしてその次の段階に到来する未来は、全く新しい経験となる社会が立ち上がるのだろうと。

★ゆるゆると話しながらもストイックな対話でもありワクワクするような物語でもあります。

★Zoom対話後、セルフリフレクションしていると、はたと次の本のラインナップを想起しました。

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〇ウィリアム・モリス(William Morris、 1834年3月24日 - 1896年10月3日)

『ユートピアだより』 1890年

〇マックス・ヴェーバー(Max Weber、1864年4月21日 - 1920年6月14日[1])

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 1904年~1905年

〇ヨハン・ホイジンガ(Johan Huizinga、1872年12月7日 - 1945年2月1日)

『ホモ・ルーデンス 人類文化と遊戯』 1938年

〇ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter、1883年2月8日 - 1950年1月8日)

『租税国家の危機』1983年

〇ヴァルター・ベンディクス・シェーンフリース・ベンヤミン(Walter Bendix Schoenflies Benjamin、1892年7月15日 - 1940年9月26日)

『複製技術時代の芸術』1936年

★お二人の話は、ニューノーマルな都市づくりという観点がありました。これはモリスの「ユートピアだより」の脱構築を意味すると思いました。

★それは、新しい経済社会を創ることでもあり、ヴェーバーの「プロ倫」の脱構築も意味するでしょう。脱構築の動きは、2017年ころから過労死やブラック企業を社会課題として受け止めたころから始まっていますが、未だに是正されていません。今回のテレワークでそれが明らかになってもいます。

★オンラインという新しいシステムは新しい「学び=遊び」も意味します。オンラインがストイックだと子供たちは疲弊します。ですから、「遊び=ゲーム=文化」の脱構築です。ホイジンガ―の「ホモ・ルーデンス」のアップデートも必要です。

★また、今政府の議論になっている政策が、税金の話であることに焦点があたっています。この税金とは何か?シュンペーターが予言している税金の限界を見直そなければなりません。「租税国家の危機」のアップデートはやはり必要です。

★そして、オンラインやYouTubeのような複製技術のグローバルな拡大。ベンヤミンが見通した通りの時代がやってきました。「複製技術時代の芸術作品」の再考も必要です。

★今挙げた学者や作家は、100年前に、それぞれの視点から20世紀社会の進化を見通しながらも、その進化がデストピアに突入するリスクを見破っていました。

★しかしながら、20世紀社会はその進化を驀進し、リスクは目に入らないままでした。それが21世紀になって顕在化してしまったということではないでしょうか。この顕在化した世界規模の社会課題を解決するには、100年前に彼らが見て取った20世紀社会のシステムの再/脱構築です。

★しかし、現状の解決策の多くは、20世紀社会のシステムはそのまま活用します。その問題を生み出しているのが20世紀社会なのに、その社会のシステムそのものはそのままにしておくという知見は、実は教養=リベラルアーツの欠如がもたらした可能性が大です。

★そこで、リベラルアーツの再興/再考が世界規模で、GAFAも含めて叫ばれています。

★しかし、そのリベラルアーツ自身もアップデートする必要があります。なぜなら、その知見を有したメンバーが20世紀社会システムを2000年以上の歳月をかけて作ってきたからです。

★しかし、作ってきた源がわかるのですから、そこをアップデートすることで、20世紀社会のシステムは再/脱構築されるはずです。21世紀は教育の時代だと言われるのは、このリベラルアーツのアップデートを示唆しているのではないでしょうか。

★そこに明快に気づくきっかけを与えたのが今回のパンデミックであり、それを乗り越えるためのオンライン授業だったということなのでしょう。ニューノーマルな生活圏でハイブリッド授業に移行しましたが、このハイブリッドPBL授業の本意は、どうやらニューリベラルアーツの生成ということかもしれません。そんなことを思い巡らすZoom対話でした。

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2020年7月19日 (日)

ポストコロナ時代の教育(08)和洋九段女子のPBL 豊かな質感と新しい世界へのイノベーション③

★和洋九段女子の先生方とZoom対話するといつもチェックアウトの際には、新しいアイデアが生まれ、次回に対話する時までに、何らかの形でそのアイデアが試されPBL自体がアップデートしています。特に変わらなければいけないとか、あるゴールがあるわけではないのです。

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★チェックインの時とチェックアウトの時は、まずチャットで個人で内省し、それから肉声で語り合います。これも日ごろのPBLで生徒が行う個人ブレストとグループブレストに対応していますから、先生方も自然と入り込んで、頭を挙げて互いに語り合えます。

★今回もチャットの文章をテキストマイニグしてみました。チェックインの時に感じていたり、考えていたりしたこととチェックアウトの時のを比較すると上記の図ようになります。

★この形態は、たいていの場合こうなるのです。こうなるというのは、チェックインのときはばらけているのですが、チェックアウトのときは核ができて、その周りを惑星のように共起ネットが広がっています。

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★AIがどう判断したかは、わからないのですが、変化したことは確かです。それをどう変化したと解釈するかは、参加者しかわからないのですが、これと同じことがふだんのPBL授業でも起こっているということだけは推測に難くないのです。

★対話を介したワークショップや授業、ミーティングというのは、どうやら変容を生み出すことは確かなようです。

★この変容をどのようにとらえかるかは、これからこのようなテキストマイニグのようなデータも含め、データエビデンスをとっていく必要があります。

★しかも、このデータは結果(ポートフォリオ)ばかりではなく、プロセスでも活用(プロセスフォリオ)できます。グーグルフォームという使いやすいアンケートのソフトがあるからです。今回のオンライン授業で多くの先生がこれを使っています。ただし、まだ授業の感想などのアンケートで、授業のコンテンツのモニタリングで活用する例はまだまだですね。

★今後は、そこにチャレンジしていくことになるなあと確信したのですが、そのきっかけは、このZoom対話には、数学科の石原先生(中1学年主任)も参加していて、今回も社会科の問いと解答の関係に方程式を持ち込むアイデアを提案されたのです。

★数学的思考が社会科の授業で活用されるという事例は実におもしろいのではないでしょうか。

★これぞリベラルアーツです。どうやら和洋九段女子の教科のPBLは、リベラルアーツ的素養が盛り込まれるように進化しているのかもしれません。これは新しい授業ですね。この発見はZoomで教科横断的に対話がしやすくなったということもあるでしょう。

★オンライン授業効果は新しい発想を生み出すという事例が和洋九段女子にはあるということでしょう。

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ポストコロナ時代の教育(07)和洋九段女子のPBL 豊かな質感と新しい世界へのイノベーション②

★本多先生のハイブリッドPBL授業のプレゼンの後、7つの視点でアナリーゼを行ってきました。全体から細部へと入っていき、チェックアウトでは、全体感を取り戻します。

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★最初は、ブルームのタキソノミーを4つの象限にわけてアレンジした座標を使います。本多先生の授業では、生徒はどの象限で学ぶのか対話します。

★この対話のとっかかりは、問いのデザインです。本多先生は3つの問いを生徒と考えていきます。

第1段階:生徒自身の価値意識の立場を明快にする問い。
第2段階:他者の立場で考える問い。
第3段階:自分の主張をつくり世界のだれにメッセージとして届けるのか世界的視野を広げる問い。

★ここには、なかなか自分の立場を明快にできないジレンマを見出す思考、他者と自分あるいは他者同士の争点を明快にする思考、自分の考えが世界とどのようにつながるかという思考が、それぞれ発動する仕掛けになっています。

★それぞれの段階で「個人ブレスト→グループブレスト→全体シェア」というワークショップ型プロセスを埋め込みます。

★特にグループブレストは、リアルなグループワークとオンライン上でのブレイクアウトルームでのディスカッションとでは質が違うという話にもなりましたが、この対話は今後の重要なヒントになります。

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★このブレストの流れがしっかり実践されているために、ピアソンとギャラガーが提示したGRRモデルによって分析した生徒が自ら学びを引き受ける時間はかなり多くなっていました。これもハイブリッドPBL授業のステージを決める大切な構成要素です。

★こうした分析がメンバーの対話でなされていったわけですが、いろいろなアイデアもそこで生まれます。

★数学科の石原先生からは、価値観を明快にするとき、基準軸をつくって統計をとりながら決めるという方法は、数学で学ぶから、その適用を考えてみてはどうかとか、数学的には囚人のゲームの理論をジレンマ問題を考えるベースにもでき、今回のパンデミックのジレンマ問題にも同様に適用できるという社会科と数学科のスクランブルが起きたりしました。

★2つ目の視点は、ハイブリッドPBL授業が生徒の能力の発達段階に応じてステージがどのくらいなのか考えていきます。今回の本多先生のPBLはステージ5.0でした。高校生のコンピテンシーやスキルの成長ぶりは相当なもので、そこを鍛えるには、ステージ5.0のPBLの授業が必要だということになるわけです。

★3つ目以降は、詳細分析視点です。全部やり切ると相当な時間になります。今回はやり切りましたから、全体で3時間かかりました。先生方のパワフルな研究への情熱に感動しました。

★座標軸に、どの学びのコンピテンシーがどの象限で作動しているか対話していったり、リアルな空間における座標とサイバー上の座標の各象限には、どんなアクティビティが配置されたのか対話していったりしました。

★本多先生のハイブリッドPBLの授業の特徴がリアルな座標とサイバー座標に配置されるアクティビティの違いから、リアルとサイバーの使い分けをしていることもあぶりだされました。

★リアルなPBLとサイバーPBLのメリット・デメリットを整理して、両方で相乗効果が出るように計算されたデザインになっていたことに参加者はひとしきり感銘を受けていました。

★まさに本多先生の珠玉のハイブリッドPBLを堪能したのでした。

★そして、この長時間にわたるアナリーゼは、チェックアウトの段階で水野先生の「生徒の学びが直観→思考→判断→創造の学びの竜巻に開かれていくいくつかの授業アイデアが浮かんだ!」という言葉に象徴されるように、全体感をシェアして終えたのでした。

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ポストコロナ時代の教育(06)和洋九段女子のPBL 豊かな質感と新しい世界へのイノベーション①

★昨日(7月18日)、和洋九段女子の先生方とZoom対話。定期的にPBL型授業の研究会的な話し合いになっています。今回は本多先生の地理のPBL型授業の実践についてプレゼンがあり、それを参加メンバー5人でアナリーゼして新たな気づきを次に生かしていく流れになりました。

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★チェックインは、緊急事態宣言下の一斉休校の時に行ったオンラインPBL授業の未知なる経験をやり切って今を迎えて、ポスト以前とwithコロナの今では、PBL授業について何か変化や新たな気づきがあったかどうか語るところから始まりました。

★対話をする際、デフォルト本として「協同と表現のワークショップ第2版~学びのための環境のデザイン~」の中から3つの図と表を活用しました。同書は私が敬愛し何度もワークショップを同行させていただいた上田信行教授と仲間の共著です。

★実践編であると同時に、本格的なケースメソッドで、その実践から抽出した一般化された考え方やシステムを考えるときの参考にしてきた本です。私にとってははワークショップの教科書です。

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★しかしながら、同書はコロナ以前のワークショップの話であり、私たちが行っているPBLの参考である教育系のワークショップもそうです。ですから、同書をデフォルトにして、どこが変化したと感じているのか話すところからスタートしたのです。話すとっかかりは、3つの点にしました。

1)ポジショニング:座標軸に位置する多様なワークショップの中で和洋九段女子のハイブリッドPBLはどこに位置するのか?

2)パブリックオーディエンスとの関係デザイン:PBLを教師と生徒の間の完結型からパブリックオーディエンスにシェアしていく組織づくりはいかにして可能か?

3)学習観の変容:獲得型学習観、徒弟型学習観、協同型学習観に変わる新しい学習観は?

★1)に関しては、一点あるいは格子点としてのポジショニングは定まりにくく、むしろ座標にあるまわりのものと繋がりを持ちやすくなってきたと思いますとか、こういう座標軸としての授業デザインを意識するようになったのは確かに変化ですねという話が飛び交いました。

★さらに、客観的な知識だけではなく、第一象限の精神世界系、つまり自分と学びのかかわりの世界が大きくなったと思います。座標全体を縦横無尽に往来する授業が行われるようになったと思います。学校教育ですから、外との直接のつながりはかなり制約されていますが、今後の展開としてオンラインでならもっと繋がる可能性は増えてきていると感じていますという世界観や社会とのつながりの話にまで展開していきました。

★2)というのは、パブリックリレーションの話です。セミナーやワークショップに参加された方はすぐにイメージできると思いますが、そのようなイベントの時には、ビデオや写真を撮るスタッフがいたり、様子を取材している記者がいたりするもでのす。そして、その様子をパブリックオーディエンスにシェアしていきます。

★リフレクションを自分たちだけではなく、公にすることで、社会と共に豊かになるという<相互貢献の動き>を創ることが、ワークショップの醍醐味でもあります。自分たちが学ぶことが即社会貢献になるというわけです。

★授業も、結果的に学んだことが社会に生きるのですから、社会貢献につながるのですが、そこに行くまでに受験勉強とか入試とかいくつかのフィルターがあり、そこを通過しているうちに生徒は自分の学びが社会貢献につながるという意識は薄れていくものです。

★しかし、PBL授業は、学びが社会につながる実感を抱くことも目的にしていますから、パブルックリレーションは大切なのです。

★さて、この第2点めについては、まさに本の図にあるようなものが和洋九段女子でもできつつあると思います。新井先生がいつZOOMに来るか毎日ドキドキしています。だんだん今日は訪れてくれなかったんだ明日は来てくれるよねと生徒も待ち焦がれるようになっています。見られること、見せることの意識が少しながら広がったのでは?自分の顔は自分で見られませんし、ネット社会はオープンにすることで自分の価値を高めていくことでもあるという意識も生まれてきているような気がしますと。

★そのような対話を聴きながら、新井先生は、最初は新しい経験ですから、興味津々でZoomの全体のホストとして訪れましたが、まさかオンライン授業見学とその発信がこのような広がりを持つことになるとは思いませんでした。そしてこのパブリックリレーション、つまりPRの再定義に気づきましたと自分の気持ちをシェアしました。

★3)については、獲得型学習観や協同型学習観の融合が凄まじいという話になりました。

★2時間や3時間つづきのPBLは、生徒が配信したスライドを見て「前の時間、なにやったっけ?」と思い出しやすくなることで、より深く考えられるようになっています。反転学習のツールとしてオンラインが有効に活用もされましたと、生徒が自ら知識を獲得しに行ったり、そこから思考を深めていく能動性が如実に生まれてきたというのです。

★また、今後、外部の人をZOOMで呼びやすくなるので、より刺激的な授業になるという点では新しい協同型PBLを展開できます。ブレイクアウトルームを通して、協同の要素が強くなっていると思います。もちろんメリット・デメリットはあるのですが、このブレイクカウト時空は、完全に生徒主導の時間ですから、ここで豊かに対話ができる環境を私たちがどうデザインするかがポイントだと気づきましたという話も飛び交いました。

★今回は、Zoomやオンディマンド、プラットフォームの使い方の話はいっさいでず、そこはすでにニューノーマルになっていて、やはりハイブリッドPBLという新しい授業デザインの質感に先生方の意識は広がっていました。さあ、ここから、本多先生のハイブリッドPBL授業のケーススタディが始まったのです。(つづく)

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2020年7月18日 (土)

ポストコロナ時代の教育(05)工学院の田中歩先生 オンラインを通してPBLの再定義を思考/試行する

★昨夜、工学院の教務主任田中歩先生とZoomで対話しました。ドラゴンのように上昇する学内の新しいPBL授業の様子をみて、PBLの再定義が必要だと語るでのす。私も同感です。

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★しかしながら、今回の緊急事態宣言による一斉休暇の間に、対面双方型の会議システム、動画作成などのオンディマンド、プラットフォームによる非同期型対話などを巧みに組み合わせてオンラインの学びの環境を作ってきた先生方でなければわからないコロナ以前とアフターコロナの変化の微差異については、世の中的にはまだまだ気づいていないというもどかしさもあります。

★というのは、オンライン授業といっても、オンディマンドで終わっていたり、課題プリントのWeb配信で終わっていたりというところが多かったですから、時代の要請する未来を実感できる機会があったにもかかわらず、できなかったケースもいっぱいあったでしょう。

★特に、その微差異は、実際に授業をやってみなければ気づかないようなので、外から様子を眺めているだけとか、テクニカルなサポートだけしていたのではスルーしてしまうのです。

★この十全なオンライン学習の臨床的な様々な気づきをどうやって、社会にとって重要な概念に一般化できるかは、田中歩先生や仲間の先生方の力にかかっていると言っても過言ではありません。

★とにかく、田中歩先生は、今まで意識を可視化する段階でよかったものが、どんどん操作という新しい知がうまれているということに驚いているというのです。

★今までレクチャーでただ受け身になっている授業は見直そうという動きだったのですが、その発想をさらに見直そうというのがオンライン効果だというのです。

★オンラインという操作は、教師と生徒が同時に互いに行わねばならず、仮にレクチャーであっても脳内変化としてはインタラクティブになっているのではないかという仮説を立てていました。

★いろいろなアプリがあるので、ノートテーキングも、その行為は同じでも、操作の性格は、生徒によって違ってくるわけです。操作スキルと操作知が統合されて新たな知が生まれているので、その知を見逃さないフレームやフォームが新たに要請される時代なのではないかと。

★どうやら、オンラインシステムは、学びのツールとか補完道具とかいったモノではなく、思考とツールが合体してできる第三の知が生まれているコトを示唆しているようです。それを言い当てる適切な「ことば」を必要としているのが今です。これは全く新しい経験です。

★そしてその「ことば」が生まれると、その「ことば」の学びの世界が広がりますから、その世界を表現する道具も新しく生まれてきます。まさに学びのイノベーションが生まれるわけです。

★とにかく、イノベーションというものは、今までカリスマや達人と言われてい熟達者の知や技能をデフォルトモードにしてしまいます。脱技能とか呼ばれてきたものになっていきます。

★ここでは、生徒が教師の技能をデフォルトモードに転換します。そして、教師もまた別のモノをデフォルトモードに変換してしまいます。

★いったいこの生徒と教師のデフォルトモードにするものは何なのでしょうか?

★それこそ未来を拓くビッグバンになる可能性があります。今後田中歩先生は、そこを巡る考察を、工学院の先生方のPBL授業をモニタリングしていきながら考察し、創造していくそうです。工学院の今後の変貌に目が離せません。

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ポストコロナ時代の教育(04)普通科の再編?細分化?脱構築?

★朝日新聞(2020年7月18日)の記事に「中教審、高校普通科の再編案の議論スタート 21年初めにも答申へ」という高校の普通科再編の動きが掲載されていました。こうあります。

<文部科学相の諮問機関・中央教育審議会の特別部会で17日、高校生の約7割が通う高校普通科の再編案が示された。文系・理系の枠を超えた学びや地域社会の課題にとりくむ新学科の設置を可能にする案について議論し、中教審は2021年初めにも再編案などを文科相に答申する。早ければ22年度から新学科の新設が認められる。>

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(データは同記事から再加工)

★普通教育と専門教育を合わせた学科を増やせばよいのではと思うのですが、「探究」という新設定が、新学習指導要領で前面に出るので、そこはそういう流れにならなかったのでしょう。

★それより、今行っている73.1%シェアの普通科の内部編成で教科主義を探究主義に移行しておこうというわけですね。

★そのねらいは、大学入試を総合型選抜を90%にしたいということでしょう。大学入学共通テストをやるのはもうやめようということでしょうか?あのテストの決定的な問題点は、暗記主義を脱却するのが難しいという点と選択肢を分析するのが思考だといわれるのもまあ間違いではないのですが、それではクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングを養えない。

★この2つのCシンキングは、今回のパンデミックで実に重要だというのは文科省やその諮問機関のメンバーは身に染みているわけですね。小手先の大学入試改革では、それはどうしようもない。

★であれば、教科主義を排するわけにもいかないので~抵抗圧力がすさまじいのは学習済みでしょうから~、じわじわと内堀を埋めていこうということで、普通科再編という戦術をとったのでしょう。

★パンデミックや気候変動といったリスクを考えると、オンラインで口頭試問をやっていくベクトル量が増すのは当然ですね。

★それに、ダボス会議という外圧です。資本主義から才能主義へというニューノーマルな生活=ニューノーマルな政治経済社会となります。それを担っていくのは、18歳成年の時代に突入します。高校段階で私事の自己決定ができない教科知識主義では日本の先行きが危ういわけです。さすがに教科主義のリスクマネジメントをしなくてはということですね。

★今までは、初等中等教育というのは、国家を強化する政治経済社会の再生産能力を養っていたのですが、その政治経済社会自体がゆらいできているので、いまさらそのぐらぐらしている組織を再生産する能力を身につけてもしかたがないのです。それよりもそれを再構築したり脱構築したりするクリエイティビティの育成が重要になってきたということでしょう。

★文科省は経産省とも協力して、世界の教育のコンパラティブスタディ(比較研究)は行っていますから、世界がそうなっていることも百も承知です。要素還元主義から構成主義へという流れは、当否は別として~というものも、これは中世から解決できていない普遍論争で、要素を超える普遍性なんかあるなしの価値の葛藤は今もなお神々の闘争ですから~、大きくなっています。

★日本は、教科主義ですから、要素還元主義がベースです。八百万の神々の国ですから、それでよいのですが、せめて教科の内容と教科の独自のスキルと一般スキルのシステムをしっかり見定め、ストレートに専門知識に結びつくカリキュラムに変えられないものでしょうか。この高校の教科と大学で学ぶ専門知識との間に大学入試が接続役ではなく分断役で介在しているのが現状です。

★普通科再編より、教科のカリキュラム再編の方が実ははやいのですが。。。

★しかし、それを阻むのが教科書主義です。

★ウーム。結局、問題は教科書主義というマテリアル産業構造の問題だということが見えてくるわけです。

★教科書そのものがわるいわけではありません。教科書が実用的になっていないということでしょう。大学入試問題に対応できるという意味では実用的と言えば実用的ですが、それが探究への入口だったりガイドになり、専門知識へ続いていく編集がされていれば問題はありません。

★それと、どの教科も教科独自のスキルと一般スキルの両端子を学ぶことができると、生徒の方で勝手に教科横断はつくっていきます。

★今はこの一般スキルを意識して教科の授業が行われていません。簡単に言うと細分化と統合化の両方のスキルを身につけることです。

★結局リベラルアーツということですね。

★つまりは、システム思考を身につけるとよいということですね。

★しかし、それを現状の普通科ではできないないでしょう。ですから、リベラルアーツを背景にした新しい科を普通科の内部に盛り込んで、今の普通科のシェアをどんどん少なくしていこうということでしょう。

★私立学校の場合は、普通科がほとんどですが、その中で特色あるコースがあって、すでに再編は実質的に実施されているので、学校関連法規の改正に合わせて柔軟にしのいでいけます。今回の件はほとんど影響はないでしょう。

★公立学校の場合は、その影響は甚大です。しかし、普通科の10%は、すでに私立学校化していますから、そこも影響は受けないのです。

★こうしてみていると、公立学校の普通科の90%、全体では60%強の公立学校の生徒は問題があっても解決されないまま放置されてきたというのが改めてわかります。放置とは、自分の未来を切り開く学びのマッチングはできない環境にあったということです。もちろん、心ある教師と出会った場合はラッキーだったのです。

★さて、そこを文科省が動いて普通科再編というわけですが、少し選択肢を増やしたからといって、そのマッチングはできないでしょう。

★この問題は国主導でやるとうまくいかないということで、今始まったことではありません。

★オンラインによって、生徒が自由に学校を超えて教師を選び、自分の探究に必要な知識を自ら獲得して、総合型選抜に臨むというのでいいわけです。もちろん、各高校はゼミナール形式になります。

★知識と教科スキルと一般スキルは、オンラインで、対話や議論などで思考を深めクリエイティビティを発揮する場は各高校のゼミナールでというわけです。大学もそうなるでしょうし。ともあれ、高校生は18歳成年への準備時期です。カリキュラムのセルフデザインはキャリアデザインの一環となるでしょう。

★2022年4月1日から民法改正は施行され、18歳成年ということになりますから、そこに向けて高校のなんらかのカリキュラム再編が急がれているということでしょう。これは大学入試改革とは別線で進めないとたいへんです。当初は合わせ技で行こうとしたのしょうが、その戦術はうまくいかなかったので。

★とにかく、このような体制ができれば、パンデミックや気候変動に備えることもできます。がしかし、本意は18歳成年への移行をどうするかということなのです。

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2020年7月17日 (金)

世界を変える女子校(05)恵泉女学園生活は、新しい時代の都市の有力なモデル。

★女子校の中で、恵泉ほどユートピア都市としての性格を持っているところはありません。今回のパンデミックで、恵泉という学校生活は、本当に大切な理想的な世界が広がっていると感じざるをえません。

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(写真は同校サイトから)

★論より証拠、同校のサイトの「感話」のページにはいってみてください。そこではこう説明されています。

<恵泉教育の特徴のひとつに「感話」があります。日頃感じたり考えたりしたことをまとめたもので、礼拝のときに年に3回他の生徒の前で述べます。1年生のときは原稿用紙で3枚から4枚、6年生になると7枚から8枚を書く生徒もいます。感話を書くということは、自己を見つめ、考える作業にほかなりません。従って、それは時に真剣な告白となって聞く者の心を揺さぶります。何を述べても受け容れられるという恵泉の環境があってこそ、はじめて成り立つものなのです。理想とする生き方、友人とのトラブル、留学から学んだこと、哲学や芸術について……多感な時期に感話を書き、また聞き続けることで、誠実に人生に向き合うことを学びます。>

★エッ!礼拝って聖職者の話を傾聴して祈っているだけではないの?と思う方もいるでしょう。いいえ、違います。自己を見つめ、自分の想いや考えを語る場でもあるのです。もちろん、好き勝手なことを語ることはできません。できないというより、聖書と英語と園芸を通して、ユートピアコミュティを生み出す知とスキルを学ぶ学園のメンバーとしての佇まいを生徒は表現します。

★最近の感話の中で、ある生徒は「自由について」というエッセイを1,500字くらいで書きあげて語っています。最後フレーズにはこうあります。

 <憲法にもある、言論に自由、表現の自由を間違った使い方をして、いじめや自殺がいまだに絶えることなく続いています。この出来事を通して私は「自由」は誰からも指定されない代償に人に流されてではなく自分でよく考え、人を傷つけるためではなく、みんなのために、みんなの利益になるように使わなければならないと思いました。>

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(写真は同校サイトから)

★「この出来事」とは、自身も見舞われているパンデミックによって流されるフェイクニュースがもたらす悲惨な事件のことです。パンデミックとインフォデミックの二重苦と自由の関係について考え抜いて書いたエッセイですね。

★この思考力と表現力と自由の倫理観については、同校が実践し続けている言語と聖書と園芸という三位一体の教育の結実です。もちろん、その伝統は、時代に応じて革新的なツールも使います。今回もオンディマンドと会議システム、プラットフォームを巧みに組み合わせた最高のオンライン授業を実施しました。

★この言語と聖書と園芸は、もちろんロゴスとイエスと神の国が背景にあります。

★そして、未来には共感とコンパッションとユートピア都市が前面にでてきます。

★パンデミックとインフォデミックを超えるには、相互に信頼できるコミュニケーションと世界の痛みを引き受ける自由と自律した生活ができる場が必要です。人間の生活には、ソーシャルとエモーショナルとフィジカルの重要性が顕在化したのが、今回のパンデミックがもたらした社会的影響でした。これに対応できる新しい都市。それが本当のお意味でニューノーマルな生活です。どうしたらよいのでしょう?

★それは創設者河井道と共に、彼女も探し求めたマイ・ランターンの光に導かれることでしょう。

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ポストコロナ時代の教育(03)高校生市民のオンライン活動が<探究市民>を生む。

★本日(7月17日)、TOKYOFMの番組「サステナ*デイズ」に、和洋九段女子の生徒が登場します。12:02から<町のSDGsリポート From イノベーション・チームdot>のコーナーでインタビューされるようです。同サイトには、こんな紹介文章があります。

<「SDGs探究AWARDS 2019」中高生部門で優秀賞を獲得した和洋九段女子中学校高等学校の高校1年生が登場!「楽しく学ぼうSDGsすごろく」をつくったすごいチームです>

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(写真は、和洋九段女子サイトから)

★この「すごいチーム」の名称は<team ami>。和洋九段女子の中学校からのSDGsの学びの過程で、SDGsの活動をしている団体~国連広報センターとか企業とかNPOとか自治体などなど~にインタビューしにいき、自分たちが何をやるべきなのか気づいていって、SDGsの重要性をすごろくというゲームで広める活動を開始しました。なるほど「すごいチーム」です。

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★また、聖学院の高校生の中には、中学の時に起業して「Sustainable Game]」という一般社団法人をつくったメンバーがいます。こちらもSDGsをきっかけに、国内外の世代を超えたグローバルネットワークをどんどん拡大し、多様なイベントを行っています。社会的インパクト投資活動に実際につながる基盤を形成しているところです。主宰者の山口由人さんは、アーティストでもあります。

★さらに、学校の先生方も活用しているオンラインイベントコーディネートをしているPeatixを活用して高校生が自ら合同学校説明会を開催する活動も現れています。

★こういった高校生による活動は従来からあったのですが、今回のパンデミックによるオンライン授業の拡大が、ユーザーである高校生をクリエーターにどんどん変容させている波が生まれているのでしょう。

★工学院のように、世界の高校生と交流をして、SDGsの議論や平和について議論し、シンガポールや国連にまで行ってスピーチをしているところは、オンライン交流がますます拡大しています。高校生によるオンライン哲学サークルまでできています。現状ではまだカリキュラムの枠内でしょうが、Sustainable Gameのように、どんどん弾けていくのでしょう。

★このような活動は、現状では、高校のアドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシーの3側面の領域のいずれかから生まれていますが、起業とか社会的インパクト投資活動とかに成長していくでしょう。

★大学もオンライン講義が主流になっていけば、大学で研究しながら起業活動やNGO活動をしていく探究市民が増えていくでしょう。そう高校生や大学生も住民税や所得税を支払う対象者ですから、すでに市民ですね。高校生市民と呼ぶか大学生市民と呼ぶかいろいろでしょうが、予測不能な未来を拓く探究をし続ける市民という意味では同じですから、<探究市民>と呼びましょう。

★どうやらポストコロナ時代は、学校や大学の役割は<探究市民>のインキュベーターだということかもしれません。グローバル市民から探究市民へ!探究起業家へ!

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2020年7月16日 (木)

ポストコロナ時代の教育(02)ノートルダム・グループ オンライン授業研究会スタートする。

★本日(7月16日)夕刻、ノートルダム女学院(以降「ND」と表記)法人本部の会議室で、「オンライン授業研究会」がスタートしました。最初の顔合わせだけは、リアルな時空でミーティングですが、今後ハイブリッドになっていきます。といっても、すでに今回私はリモートで参加していますから、すでにハイブリッドミーティングではあります。

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★参加者は、小学校・中高・大学からでオール・NDです。このコロナ禍にあって、NDは全グループ挙げてオンライン授業に取り組んできました。そのスタイルは様々ですが、対面双方向型オンライン授業とプラットフォームやアプリを巧みに組み合わせるものも多く、日に日にテクニカルな操作が向上していきました。

★そこに行くまでには、様々な問題や障害があり、それをどうやってクリアしてきたのかできなかったのか苦労話を共有しました。初回なので、ブレスト的な感じでした。

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★その苦労話をカテゴライズして、デメリットや障害を、オセロのように裏返しすると、一つ一つのピースが結合して、壮大なオンライン授業のグランドデザインが浮き出てきます。

★イノベーションとはこういうことなのかと感動しながら参加していました。

★座長のND常任理事の高橋博先生は、あるピンと閃く一点への気づきがあると、そこから全貌を一気に見えてしまう天才です。

★今回もまたそのピンとくるものがあったことでしょう。

★これからどう展開していくのか、お披露目する時がきたら、またご紹介しましょう。

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ポストコロナ時代の教育(01)激変する大学 大学実質消滅?!

★このコロナ禍の緊急事態宣言下において、小学校から大学まで、オンライン授業実施への流れが大きくなりました。初等中等教育段階では、21世紀型教育をすでに実践している学校グループがけん引しました。大学では、東京大学と早稲田大学が初等中等教育の牽引校同様、対面双方向型のオンライン講義とプラットフォームの組み合わせを巧みに行っています。

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★そして、宣言解除後も、大学ではオンライン授業が続いているところがあるし、初等中等教育段階では、ハイブリッドで進めているところもあり、コロナ以前の風景に戻ることはありません。

★産業構造も大きく変わり、テレワークとリアルな仕事は、やはりハイブリッドになっていく傾向は止まりません。

★そんな流れの中で、新型コロナウィルス感染者数は再び急カーブを描いて増え、第2波に備えながら経済的活動も行っていくという状況になっています。ハイブリッドな仕事、ハイブリッドな教育活動は定着することでしょう。

★そして、東京大学の柳川範之教授は「教育の概念、激変の可能性(日本経済新聞2020年7月16日)」という記事の中で、オンライン座学で極端な話、教室定員を超える人数の学生に講義をするようになり、座学でしかできない、ゼミや実習や実験は物理的な空間、つまりリアルな空間に集まって行うようになると見通しを立てています。

★しかも、だれでもその場に参加できるのではなく、選抜されるようになると。オンライン座学はいつでもだれでも参加できるが、議論や実習や実験、研究は、選抜された少人数の学生だというのです。

★一方、ニュースイッチ(2020年7月16日)「早稲田大学が9月から密度4分の1の対面授業、ニューノーマルな教育方法に」では、早稲田大学が、予定ではなく、実際にそのようなオンライン座学とゼミなどの少人数対面授業を組み合わせて行っていくことを発表しました。

★同日時に、同じような記事が東京大学と早稲田大学関連記事として世の中に出るということは、そういうマインドセットが業界内にできつつあるということでしょう。

★特に早稲田大学政治経済学部は、2021年度入試は「大学入学共通テスト」×「総合型の独自入試」になります。このアドミッションポリシーに、「オンライン座学」×「対面少人数型講義」はカリキュラムポリシーとして重ね合わせることができるし、ディプロマポリシーとしても、もはやクリティカルでクリエイティブな思考力を養った学生を社会に輩出し、しかもテレワークとのハイブリッドを定着させる企業にとっても、ねがったりかなったりのマッチングが可能になるのです。

★この二つの記事を重ね合わせると、近い将来、大学入試はオンライン入試による第一次選抜の絞り込みとオンライン論述・口頭試問というミネルバ大学型の入試体制ができああがるということでしょう。

★しかし、もっというと、このオンライン座学は、大学でなくてもよいというわけです。高校と大学が結合してしまうということになります。結合して、従来の大学入試の勉強は圧縮され、高校5年制になるでしょう。

★そして、高校3年で卒業すると高卒の資格、高校5年生を卒業すると学士がもらえるようになるでしょう。どこどこ大学というタイトルはもうどうでもよいのです。学士があれば、大学はオンライン論述・口頭試問を受ければ入れますから、高校5年生で起業したり就職したりして、大学に入りなおすということも可能です。

★もっとも、それは大学という機能なのかというと、もはや大学院でよいわけですね。

★こうして、実質全員が大学教育を受け、国力を教育の力で再構築するようになるでしょう。現状の大学は、大学院化していきますから、研究成果の競争が激化して、統廃合が進むでしょう。

★高校4年生5年生の教員はというと、ポスドクがいっぱいるし、大学の非常勤講師が安い講師費用で困っていますから、その支援にもなるでしょう。

★高校の価値は、もはや学歴ではなくなります。高校の価値は社会的貢献度の高い卒業生の輩出度によって決まるようになります。まさしく激変する教育です。

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ノートルダム女学院のハイブリッドPBL授業(03)リアル授業の中を貫くオンライン授業

★ノートルダム女学院中高(以降「ND]と表記)の櫻井先生の英語の授業をリサーチ。そしてその後Zoomで対話しながら、リフレクションしました。学校再開になったのですが、警報が続き、その間のリアルな授業でした。警報がでて学校が休校になったときも櫻井先生はオンライン授業を行っています。

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★ですから、オンライン授業→リアル授業→オンライン授業という流れの中で、リアル授業をリサーチしました。櫻井先生も生徒も、場所が違うだけで、コミュニケーションの質に変わりないようでした。

★この事態をどうとらえるか、今回のパンデミックによって中間試験ができていないため、生徒にとっては、範囲が膨大な期末試験になります。そのため、櫻井先生は、どんな機会も逃さず生徒と学んでいます。そのため、自分が行っていることを振り返る時間はなかったですねと。

★「自転車操業」とは、単にバタバタして忙しいということをいうのではありません。走るのをやめると、自転車は倒れてしまうということですから、櫻井先生は、パンデミックがこようが、豪雨が襲ってこようが、どうやって生徒と学び続けるのか、学ぶことはサバイブすることなのだという信念を貫き通しています。その熱い気持ちが伝わってきて、感動しました。

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★ポストコロナの時代のPBLの再定義をテーマにリフレクションしていきました。そして、PBLのステージを、英語ですから、CEFR基準に合わせて作っていきました。

★櫻井先生は、自分のPBLの授業の質が高いということを語るのではなく、生徒の英語力や学びの状況を踏まえ、ハードルを設定し、それを乗り越えることができるように調整しています。

★したがって、A2のレベルの生徒には、B1に飛べるようなちょうどよいハードルを設定します。そのハードルとは、もちろん、授業という環境がそのままハードルです。その環境は生徒が飛び越えていく問いの連打が三方向から飛んできます。インプットの方向から、思考の方向から、アウトプットの方向から。

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★生徒は、言葉と自分や他者の存在の在り方を英語という言語で学んでいきます。存在の在り方は経験という世界で起こることですから、経験に包まれるようなマテリアルを櫻井先生は用意します。

★そして、そのマテレリアルを分析できるフォームを学び、統合できるスキルを活用していきます。このマテリアル―フォーム―スキルの関係がうまく循環することで、生徒は達成感とモティベーションをふくらまします。

★ですから、櫻井先生は、最初の経験をインプットして、その経験から生徒が自ら学んでいく習慣を大切にしています。その習慣ができれば、マテリアルが複雑になっても応用することができます。

★単純なマテリアルから複雑なマテリアルに直面した時、生徒は試行錯誤します。ここが授業の醍醐味かもしれません。そのときふと気づきました。その試行錯誤をする生徒の学びの環境が変化しています。1人1台タブレットを操作しながら試行錯誤しているのです。

★以前だったら、黒板に書かれていることを写すことに終始していたでしょうが、今は電子黒板とタブレットは同期しています。教師と生徒がいっしょにマテリアルを分析しまとめていきます。複雑なマテリアルの分析を同時に互いが操作してできるということこそ、本当の「同期」なのでしょう。

★実は、同じ空間にいながら、教師の話を聞いて、生徒が聞いているのは、同時間であっても、シンクロはしていなかったのです。そういう意味では、教師と生徒が操作のシンクロをするには、オンラインに自分のデバイスが接続していることが必要だったのです。

★ですから、生徒は場所が自宅であろうが学校であろうが、オンラインで教師と結びついていると学びを同期して行うことができるのです。

★歴史を振りかえると、ダ・ビンチが師の技術を身につける時、盗み取るわけですが、同じ工房で師の模倣をつかず離れずしていくわけです。

★音楽もそうですよね。師と弟子はいっしょに演奏しながら、シンクロするまで行い、どこかのタイミングで弟子独自の技術が生まれるわけです。

★近代教育は、このような徒弟制度から解放されて、多くの人数の生徒と教師がシンクロする方法ではなく、情報を伝達して技術を伝えるという効率のいい方法だったのですが、実は教育が、自分や他者の存在の在り方への陶冶であったとしたら、そのやり方は大事なものを見落としてきた可能性があります。

★それが、今回のオンラインで、多くの人数でも、個人個人がシンクロできる学びを新たに発見したのかもしれません。ある意味新徒弟制度の誕生かもしれません。

★櫻井先生と対話しながら、今までと違う学びの意味を見出していくことができました。

★生徒のアウトプットの意味は、そのシンクロから解放される独自のアイデアを師と共有する瞬間です。もっともっとと言われ続け、最後に免許皆伝となるのでしょう。

★ですから、櫻井先生のインプット→シンキング→アウトプットというサーキュレーションは、生徒の成長に合わせてマルチスパライルへとステージアップしていきます。学びの竜巻がうまれるわけです。大事なことは途中までは、教師と生徒はシンクロしている必要があります。そうでなければ、その竜巻には教師だけが乗って行ってしまいます。

★PBLとはこういうものだではなく、生徒の状況にマッチングしながらPBL授業のステージも上げていくという、全体のデザインが大切であり、情報収集・格納→思考→表現のうち、特に思考の部分は教師と生徒が分析統合のシンクロをしているのだと。そしてそれを可能にするのはオンラインにつながっているデバイス操作という学びの媒介項が必要だったということなのです。

★ハイブリッドPBLとは、このような深い意味があったのだということに気づきました。櫻井先生ありがとうざごいました。

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2020年7月15日 (水)

ノートルダム女学院のハイブリッドPBL授業(02)2つのハイブリッド

★今回のパンデミックによって、一斉休校中、2カ月あまり、ノートルダム女学院中高(以降「ND」と表記)はオンラインPBL授業にシフトし、日々進化していきました。

★そして、なんということか、このパンデミックにさらなる苦境が襲いました。先週から、九州をはじめ西日本は、梅雨前線の影響で記録的な大雨に見舞われたのです。

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(豪雨のため警報がでて、休校中でしたが、オンライン授業をする先生、オンライン会議をする先生、アルコールで教室を消毒している担任の先生とNDキャンパスは活動していました。)

★特に、大雨特別警報が発令された熊本、鹿児島両県の一部では、「線状降水帯」が発生。洪水、土砂災害などが出る災害が起こりました。

★その影響は京都にも及び、昨日までに3回も警報がでて、そのたびに各学校は休校となりました。NDも例外ではありません。ただ、不思議なことがNDでは起こりました。ちょうど分散登校を経て、すでに学校は再会されていますから、ようやく期末試験を行う日を迎えています。

★そのため、生徒たちは、自宅で学習し、質問があればグーグルクラスルームなどのプラットフォームで先生に質問したり、試験準備のために、オンラインPBL(プロジェクト型)授業を開く先生もいました。警報がでたのですから、従来通り生徒は自宅待機で自学自習のはずです。これは今始まったことではありません。

★したがって、そこは学校当局は、一斉休校の時のように、オンラインPBL授業を全学年全クラスで実施するとは号令をかけませんでした。当然ですね。しかし、そこは教師と生徒の意思次第です。オンラインPBL授業とかプラットフォームで質問するとかいう幾つかの選択肢が新しく加わったのです。

★キャンパスのリアルな空間で行うPBL授業とパンデミックや災害の時にはテレワークとしてオンラインPBL授業を行うというのが、ニューノーマルな学校生活となっているのです。

★しかし、そのリアルな空間でのPBL授業も、実は新しいPBLになっていたのでした。

★ですから、NDのPBL授業は、平常時にはリアルなPBLで、非常時にはオンラインによるPBLという両方できるという意味でハイブリッドPBL授業であるという意味は間違いないのですが、そのリアルなPBL授業の中にオンラインが並走するという意味でのハイブリッドPBL授業というタイプもニューノーマルな学園生活のシーンになったのです。(つづく)

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2020年7月14日 (火)

2021年変わる中学入試(01)首都圏模試センター教務陣続々YouTuber!

★本日、首都圏模試センターの教務陣とZoom創発会議を行いました。教務陣は思考コードと思考スキルというリベラルアーツを中学入試に盛り込む画期的な発想を実現しました。

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★これらのリベラルアーツのスキルは、まだ業界に広まっていませんが、世界のエスタブリッシュスクールやCLIL、IBなどでは基礎スキルとして活用されています。これらのスキルや思考のルーブリックでもある思考コードは、首都圏模試の多様な模擬試験に取り組むことによって、自然に身について欲しという同社の願いがあります。

★もともとGAFAが席巻していて、リベラルアーツありきのイノベーションをうたっていますから、まだまだ日本では気づかれいなくても、未来への先行投資として山下一社長が企画、実行したものです。私も少し手伝いました。

★それが、今回のパンデミックで、世の中がテレワーク化し、首都圏模試もその例外ではなく、急激にリベラルアーツとテクノロジーの親和性が社内共有されてしまったのです。

★そこで、今ままでPDFで「この一問を通して偏差値アップ」という問題解説をしていものを、Youtubeでオンディマンドで解説してしまおうということになったのです。

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★同センターの取締役・教育研究所長の北一成氏が、首都圏模試のメンバーは全員YouTuberになるのですと、新しい発信力の革命が中学受験市場で起こるのだと。

★ああ、それで、「おうちdeオンライン説明会&相談会」を行い、105校もの私立学校が参加するイベントを巻き起こしているのだと合点がいきました。

★教務陣と動画編集の視点と思考スキルと思考のフローのデザインの対話を通して、これは結局システム思考を生徒は身につけ、中高に入学し、大学に進学・卒業したのちに、たいへんな思考のエネルギーを生みだす土台を創っているという実感を得ました。

★中学入試や大学入試では、ミネルバ大学のようなオンライン入試が行われていきますから、首都圏模試センターも当然準備をしているでしょう。しかし、それがメンバー全員がテクノロジーやエンジニアリングのスキルまで体得していくとは、さすが私学の先生方や受験生の保護者が頼りにする首都圏模試センターです。

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ノートルダム女学院のハイブリッドPBL授業(01)PBLの再定義

★ノートルダム女学院中高(以降「ND」と表記)は、数年前から21世紀型スキルをベースにPBL授業を試みてきました。その進化/深化の広がりやスピードはコースによって、学年によって違っていたのですが、昨年の夏以降、全学年全クラスで取り組んでいこうという話になり、私もサポーターとして先生方といっしょに授業リサーチをしてきました。

★同校の先生方の実践しているPBLと私の実践してきたPBLは、共通するところもあるし違いもあります。共感しながら差異を気づきとするかどうかは、あくまで先生方の問題です。対話によって、お互いにPBLの大切さに改めて気づいていく瞬間が実に快く、私自身もアップデートしていきました。感謝の連続です。

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(理科の村田先生の中1の理科の授業をリサーチしたのち、Zoomでリフレクション対話をしました)

★そんな時、今回のパンデミックでした。休校期間中は、当然ながら、リアルに授業リサーチに訪れることができません。オンライン授業にシフトしていましたから。そこで、しばらくは、ND教育開発センター長の霜田先生及び有志の先生方とオンライン上で、オンラインPBL及び学校再開に向けてハイブリッドPBL授業の模索をしてきました。

★この模索は、NDにととまらず、複数の私学の先生方とも行うことができましたし、今も続いています。オンライン上の知の茶室と称して継続しています。

★そして、いよいよ分散登校が始まり段階的に学校完全再開になってきました。しかし、COVID-19の感染者数は、第2波が来たかと思うほど拡大し始めてもいます。やはり、ノー3密のリアル空間では、以前のディスカッションやペアワークをベースにしたPBLは難しいということも実感しています。

★講堂や多目的ホールのような広いところで、マナボードを活用しながら以前から行っていたリアルPBL型授業は可能です。ただ、全学年全クラスが同時間に行うことができないのは言うまでもないでしょう。

★コンパクトに教室の中で行うしかないわけです。したがって、PBLの再定義をして、ハイブリッドPBL型授業を新たに創る授業リサーチを始めたのです。従来は多様なアクティビティタイプから取捨選択して、各授業の生徒の成長のゴールイメージ、つまり全人教育的な包括的なゴールイメージを実現するPBL授業をデザインしていくリサーチプロジェクトでした。

★どちらかというとアクティビティの再定義でした。たとえば、アクティブラーニングとかPBLは、「講義」はしないという極端な先入観があり、そのために自分はそのような授業はできないという壁が出来てしまう場合が、一般的に問題になっていました。

★しかし、講義の質をブルームのタキソノミーに対照して考えていくことによって、アクティビティとしての「講義」もあると再定義を共有していったりしました。講義といても、一方通行の講義は、そもそもなく、先生が問いを投げ生徒が考えながら、進んでいく講義がほとんどでした。問答法型ですね。

★先生方と、なぜ問答法型か?と対話していくと、思考力をトレーニングするには当然そうだろうと。そうでうよね。そこが根本ですよね。ただ、問答法のデメリットは?と。ラウンドテーブルで12人ぐらいで行うソクラテスメソッドのようにはいかないし、ミネルバ大学のアクティブラーニングフォーラムのようにはやはりいかない。人数の問題だということになります。単純に多いから少ないからというのではないのです。問答法は特定の限られた生徒になりがちで、他の生徒が同様に思考しているかどうかは実は不安が残るわけです。

★そんな対話をしていくと、すぐに問答法講義にペアワークが盛り込まれ、あるときはディスカッションが盛り込まれていくわけです。こうしてPBLのフォームはシェアされていきます。

★ですが、ディスカッションをやっても、調べ学習の延長に終わる場合どうしようという新たな疑問がすぐに現れてきます。そんな疑問を持った先生方が、私が訪れたとき用意して頂いている部屋にやってきてくださる機会も増えてきました。

★そこで、哲学対話もNDでは、宗教科の山川先生や保健体育科の三井先生が実践されているので、そのような雰囲気で私も対話をしていきます。「問いの創り方」が重要なのだと。そして、それが肝なのだと。しかもその問いは教師主導だけではなく、生徒自身が生み出すということなのだと。それにはペアワークやディスカッションは最高の場なのだと。

★ここまで共有し、オンライン授業にシフトしましたが、オンライン授業は、なおさら問いと対話が大切だということになっていったのです。

★ところが、学校再開は、withコロナです。ノー3密空間では、最高だと思ったペアワークやディスカッションは条件や制約が付きます。思うようにできません。そこで、PBL自体の再定義が始まったのです。

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(村田先生による牧田富太郎博士のサインの解読問答は実に興味深いもので、博士の人生そのものが凝縮されたものだという仮説を生徒ともに語っていったのです。もちろん、科学とは何かも。)

★昨日も、中1の理科の村田先生の授業リサーチに訪れました。先生も放課後までは時間が空かなかったし、私も移動しなくてはならなかったので、放課後Zoomでリフレクション対話をしました。今までは、忙しいので、私の描いたアクティビティのスクライビングをみながら、10分の休み時間で対話し、そのスクライビングに私からのコメントを添えたものをフィードバックしていました。

★気づきの共有がポイントでしたが、いかんせん対話の時間が短いですね。しかし、時間をどこかで別にとろうとすると、物理的に不可能ですから、瞬間瞬間でシェア・フィードバックという仕組みをつくっていったのです。

★ところが、今回のパンデミックによるオンライン授業体験が、授業リサーチの方法まで再定義してしまいました。私が東京にいても、Zoomでできます。

★リサーチもハイブリッドになったわけです。とはいっても先生方は忙しいので、40分ぐらいが限界です。オンライン研修をしようと5人くらいで行うのは2時間くらいですが、1人の割合は20分強です。やはり40分は少ないわけではないということなのかもしれません。

★これによって、再びレクチャーや生徒へのフィードバックなどの再定義についても対話が進みます。ハイブリッドですから、実は生徒がタブレットやラップトップを操作することもアクティビティになっているという発見もあります。

★村田先生の授業は、クラスルームを活用して問いを生徒が考える時間を同期非同期で進行していきます。そのとき生徒は自らデバイスやアプリを操作しなければ成立しないのです。

★リアルな時空のやりとりとサイバー上のやり取りがパラレルに進行するには、一見教師のスピーチだけが続いているようなのですが、生徒の能動的なデバイス操作が介在します。この重要な意味について対話するなどということは、コロナ以前にはなかったことです。

★そして、何より村田先生の講義におけるストーリーテリングが実にパワフルになっているのです。探究とはなにか?信念を持って生きるとどうなるのか?豊かさとはどういうことなのか?そしてもちろん科学とは何か?科学的思考とは何か?それらの関心を掘り起こし、科学の扉を開くマインドセットを中1のこのタイミングだからこそ語り行うわけです。

★従来のように事実説明ではないのです。TEDばりのキーノートスピーチになっています。これはオンライン授業では、丁寧に明示的にかつエピソードを交えた暗示的な要素を編集して語りかけるとことの重要性に気づいたからだということです。

★また、サイバー時空を活用すること自体が、脳内刺激を新たに活性化するという仮説推理の話にも広がっていきました。

★7つの切り口で、ハイブリッドPBL授業をアナリーゼし、統合していくわけですが、その対話の中でいろいろなPBLの構成要素の再定義が行われていくでしょう。これからも実に楽しみです。

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2020年7月13日 (月)

品川翔英の進化(03)授業を実施するたびに学校が変わる(了)脳科学も意識して

★今井先生のハイブリッドPBL授業は、ペアワークやディスカッション、クイックライト、問い作りなど多様なアクティビティを授業にデザインしていきます。また、グーグルやロイロのプラッとフォーム、アプリなど、適宜オンラインの学流ツールを活用していきます。リアルとサイバーのハイブリッドというわけです。これが第2波や第3波に直面した時の備えにもなっています。学びのリスクマネジメントの時代でもあります。

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★さらに、今井先生は、ハーバード大学の研究者と現場の教師が協働して授業の中でどのようなアクティビティが使われているかタイプ別にその生徒への効果について研究している成果を活用しています。欧米の学習理論は、AIのディープラーニング(機械学習)も同時に研究が進んでいて、fMRIなどを活用した脳科学は相当進化しています。その研究成果と学習理論は切っても切り離せない関係になっています。

★その研究成果も様々ですが、テレビを見ている時と講義を一方的に聴いている時は、対話をしている時や夢を見ている時より活性化していないということはもう20年も前から結果がでていて、ハーバード大学のマズール教授やあのハワード・ガードナー教授をはじめとして授業や学習の理論が新しくなっているのです。その成果の一つがPBLやアクティブラーニングです。

★この手法はJ.デューイのときからすでに始まっていますから、新しい授業や学習の理論ではないのですが、現在ではAIと脳科学の成果を取り入れて授業や学習のデザインをするようになっているのです。PBL自体も時代と共にアップデートしているのです。

★もちろん、脳科学や機械学習は、まだまだわからないことだらけですから、リフレクションするときに生徒が脳を活性化しているかなと意識する段階です。それでも、生徒の表情や身体の動きを見ることによって、脳情報の処理中か処理した情報を表出しているかはわかります。観察の仕方がまた違う角度から意識できるようになります。

★コロナ禍にあっては、授業はやはり楽しくしたいし、互いにオープンマインドになって励まし合いたいしという想いが今井先生の授業には盛り込まれていました。それが脳を活性化したいという想いと重ね合うわけです。

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★また、生徒が「自立」して学んだり、「創造」したりするには、授業は教師が全部主導するのではなく、生徒も学びの「責任」を引き受けなければなりません。その理論はピアソンとギャラガーが、ずいぶん前にGRRモデルとして提示していて、アメリカとカナダの教育では定着しています。ミネルバ大学のオンライン上のアクティブラーニングでは、このモデルが相当意識されています。

★ですから、今井先生も授業をデザインする時、教師の時間と生徒の時間の割合を巧みます。すると、レクチャーというアクティビティだけではなく、生徒が自ら動くアクティビティが重要になってくるというわけです。

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★多様なアクティビティのタイプを活用すると、生徒は多角的なアプローチで記憶していくし、思考スキルもたくさん活用します。ワークショップのメンバーと話し合いながら、どの問や解答を作成する際に、どんな記憶術やスキルを生徒は使うのか議論していきましたが、実に複眼的な思考を生徒はトレーニングしていることがわかりました。この議論は、実はリベラルアーツの言語技術のトレーニングの議論でもあります。

★特に、参加メンバーは、物語における主人公の成長を捉える生徒のペアワークの成果に焦点をあてて対話していました。比較・対照、カテゴライズ、逆説といったスキルの変化に注目していたようです。

★また、高3で扱った丸山圭三郎の「言語と記号」という難しい言語哲学のテキストについては、言語と文化のカルチュラルスタディにまで進んでいく生徒と調べ学習で終わる生徒とのギャップをどう埋めるかという話にもなりました。ここは時間がなかったので、いずれ探究していくと思いますが、このギャップがなぜ生じているのか、アクティビティやスキルの分析をしていくとヒントがあるかもしれません。

★このギャップこそ、ビゴツキーの言う「最近接発達領域」です。今井先生は、生徒と対話し、アクティビティや学びのツールを駆使して、ここを発見していく教師です。この領域が見つかったとき、生徒の自立と創造は始まります。そして発見するには互いに協働する貢献が必要なのです。

★今井先生は、経験から学び、その学びを同僚との対話によって、理論として共有する過程を螺旋状の気流に乗って進めていきます。品川翔英のカリキュラム進化論はこの探究の竜巻が生まれているところにあるのですね。

★このような授業の進化論の話は難しくなるので、受験市場では話されないし、メディアも光をあてないでしょう。つまり本質的なものや大切なものは目に見えないものです。そういったのは星の王子さまでしたか。

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2020年7月12日 (日)

新しい女性グローバル市民(01)中学受験市場と中学入試市場の差異を見極める母親

★とある学校の保護者と不思議な出会いが、これまた不思議なネットワークに連鎖し、Zoom対話となりました。最前線で活躍されている女性であり母親です。もともと帰国生だったり、今もなおグローバルな世界にいたり。もちろん世界的視野は広く情報通です。同時に中学や高校の受験生の保護者でもあります。

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★当然ながら、学歴キングダムに疑問を持ちながらも、それは世界情勢や政治経済の社会構造や産業構造を読み切っている新しい女性グローバル市民です。自身はものすごいプロフィールの方々のようです。どこでどんな仕事をしているのか話される端々にそのプロフィールは予想できます。

★同時に母親でもありますから、そのような新しい女性グローバル市民としてのポジショニングから眺めて、子供の進路をどうするのか現場の情報を知りたいということで、私へのアクセスに興味をお持ちになったのでしょう。

★最近、女性医師ともよく話をします。最先端の医師であると同時に、やはり受験生の母親です。

★みな共通しているのは、私立中学受験というと、偏差値競争が激しく、お金持ちの子弟が行くところといったイメージを持っていながら、そうではない世界はあるのかどうか模索しています。ですから、実際に学校をつくって理想を実現しようとする母だったり、20世紀型中学受験市場にはない新しい教育マーケットはないのかどうかという関心が高いのです。

★とある学校の保護者との出会いが、その新しい教育マーケットでの出会いでしたから、公立学校を改革するまでもなく、まず自らの力で変えようとする私立学校があること、中学受験市場と中学入試市場の区分けが明快になってきたことなど、ご自身の体験談の情報交換をしながら、本間さんに会ってみようとなったようです。参加された方は首都圏以外から、海外からと、なんともグローバルでした。

★まさか社会構造や産業構造の堅牢さと変容の必要性の話題が母親からでてくるとは思わなかったので、ついしゃべり過ぎました。いつもの保護者の顔は受験生の母親としての顔や学校の保護者としての顔でしたが、こういうときの顔は多面的です。才能あふれる雰囲気に圧倒されました。

★世界を語り、自分の子供の環境を語り、そのギャップに驚き、嘆き、でもネガティブではなくポジティブに徹底的に情報収集・共有し、そして分析し活路を見出そう、ダメなら海外にいくしかないかと断固たる決意もありそうでした。そんなわけですから、今回、参加したメンバーの方々は多様な情報を持っていて、私の説明は本当は不要だったでしょう。

★では、なぜ私と対話する機会を作ったのか?それは、日本の教育現場と入試の関係がきちんと情報発信されていないからです。なぜ新しい入試が必要なのか、なぜ2科4科だけではななくなったのか、何が変わるから多様な入試なのか。それと大学入試や私学とのかかわりとはどうなっているのか。インターネットや文献では調べることができない情報を知りたいということでしょう。

★偏差値だけでみていくと、そんな多様な入試はいらないので、多くの塾では新しい入試について発信していないのです。かなりされるようになったと私は思いますが、私がかわっている新しい中学入試のマーケットと中学受験市場の比は、1:4で、中学受験生の25%くらいの規模です。

★外からみたら、まだまだ新しいウネリは見えているとはいえません。しかもそれがカリキュラムとどう直結しているかという話までできるマニアックなという意味では、私にアクセスすることは少しは意味があるかもしれません。

★特に、不思議なことに、参加者はPBLというプロジェクト型学習は当然で、実際にそれを実行している学校を運営していたり、すでにPBLを実践している学校に子供が通っていたりするのです。

★ですから、入試―PBLというラインがあることをもっと広めたほうがよいのではないかと。子供の成長の場として、そのような対話空間は重要なのだというのは、ある意味世界では常識です。日本ではまだまだです。ですから、そこは何とかしたいし、世界標準の成長の場を見つけたいのだという息吹を感じました。

★そして、参加されたメンバーは、口をそろえて私たちのような母親は本間さんが思っている以上にたくさんいます。そこここに転がっていますよと。だから、このような情報の公開は必要なのだと。

★入試と教育と学校と社会構造を鳥の目と虫の目の複眼思考ができる新しい女性グローバル市民がたくさんいるのだということです。

★多くの学校や塾で、私の話は難しいと言われるのですが、今回はむしろ私の世界情勢や社会構造の変化については、百も承知で、中学受験マーケットと中学入試マーケットの情報の非対称性の部分をどんどん見える化し広めて欲しいということでしょう。

★さて、どうしたらよいのか?ただ知りたいというだけではなく、知るためにどんなアクションを起こすのか、多角的に検討するウネリがどうやらこのようなネットワークから生まれてきそうですね。21世紀はまさしく女性の時代です。

★Zoom対話が終了して、京都に向かう新幹線に乗っていると、三田国際の学園長大橋清貫先生から電話がありました。今まさに、こんなZoom対話があったんですよと伝えると、まさしくそういう時代ですよ。本間さんがまだ見たことのない新しい教育シーンをスタートしたので、どこかで取材に来てよ。きっと情報として価値あると思うし、そういうZoom対話で共有して欲しいねと。なんとタイミングがよいのだろうと驚愕。

★さて、学校の先生方、そのようなダイナミックな話の中で、極めて重要な母親としての視点が投げかけれらました。それはPBLをやる本質的な理由だし重要な価値のある視点です。ここから先は、先生方とはZoomで対話することにしましょう。

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品川翔英の進化(02)授業を実施するたびに学校が変わる②

★さて、今井先生の国語のPBL型授業の話をしましょう。中1と高3の授業についてプレゼンがありました。そして、そのあと国語科の先生方とアナリーゼを行っていきました。最初は知の座標の4つの領域について参加したメンバー1人ひとりが感じたことを話していきます。このグループワークの経験と今井先生のPBL型授業の中で行われるアクティビティ「ペアワーク」が重なり合って、ペアワークが批判的思考をいつのまにかトレーニングしているという対話が深まっていきました。

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★4つの領域とは、「知識の発見」「論理的構築」「批判的思考」「創造的思考」です。ブルームのタキソノミーを座標化したものです。品川翔英の国語科先生方がルーブリックを考えていく際の出発点として議論したものを、ワークショップのときの座標としてアレンジしたものです。ブルームの成果も品川翔英の先生方の議論の成果もうまくモニタリングできる座標です。

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★どこでもシートに座標を書き、先生方の想いをポストイットに書き込んで、各領域にはっていき、グループで俯瞰しながら自分の考えを語っていくというペアワークのバリエーションアクティビティです。

★今回初めて参加した先生方も、各領域の定義や意味を自分だったらこう考えると推理したり仮説を立てて話していくうちに、最初定義を知らないからと心配そうでしたが、自分の考えでよいのだと分かった瞬間からは発言がとまりません。

★専任の先生方はこの仮説・推理対話はもう慣れてしまっているので、「私の考えですが」とか「もしかしたら違うかもしれませんが」という前置きを言うことはありません。講師の方々もだんだんそうなっていきます。

★仮説・推理がなければ、正解のない思考は回転しないし、それがあるからこそ、信頼性や正当性、妥当性などのアイデンティティチェックができるのです。正解のある問いに関しては、正しいかそうでないかしかありませんから、多面的評価で必要な信頼性・正当性・妥当性の視点で議論することはめったにありませんが、IBのTOKや欧米の哲学授業では、このような仮説・推理から対話は始まります。オープンクエスチョンとはそういう感じです。品川翔英の国語科の先生方も世界標準レベルで議論しているわけです。

★ともあれ、そもそもPBLとは何だろう?は、めちぇくちゃオープンエンドな問いなのですから。

★一見座標は設定されているようですが、このワークショップでは、ここで知とは何なのか再定義しながら行っていきます。アップデートは枠組みの再定義が起こらなければ生まれません。

★アップデートとマイナーチェンジは次元が違います。

★このように対話に耳を傾けじっくり考える習慣がついている品川翔英の国語科の先生方が、ワークショップを行うたびにアップデートするのは、この大前提の構えができているからですが、4つの領域全部をカバーするパワフルなPBL型授業を今井先生が実践しているからこそ座標を巡る対話が深まるのです。

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品川翔英の進化(01)授業を実施するたびに学校が変わる①

★ここのところずっとオンラインワークショップでしたが、昨日(11日)、久しぶりにリアル品川翔英を訪れました。国語科の先生方とPBL授業のアップデートのためのワークショップを行うためです。オンラインでのワークショップも新鮮でしたが、今回先生方は、1人ひとりタブレットやラップトップを持ち込み、ハイブリッド型のワークショップに自然になりました。

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★おもてなしの精神があふれている学校ですが、今回もまた新鮮なケアの行き届いたおもてなしに感動しました。ワークショップ15分前に、アドミッションオフィサー竹内さんがやってきて、本間さん、ゲストとしての環境にしますから、よろしいですかと。あっという間に、先生方と同じ環境でパソコンをつなげられるようになりました。

★同校はオンライン授業を行ってきたために、ワークショップも同じ環境で行うはずだと想定してすぐに動いてくれたのでしょうが、スムーズな環境設定のスキルを、コロナ以前は見ることがありませんでした。スキルはあったのですが、使うという前提がなかったわけです。それがポストコロナにあって、がらりとアクションが変わっているわけです。これだけでも、おお、品川翔英は進化していると実感を得ることができました。

★今回は今井先生のPBL授業のアナリーゼとリフレクションと気づきの共有です。今井先生のPBL授業のアップデートどころではない進化と生徒の成長力の見える化に驚嘆しましたが、もう一つ驚いたことがありました。

★それは今回から非常勤の先生方も参加されていたということです。生徒にとって、専任、常勤、非常勤の区別はありません。先生は先生です。ですから、ビジョン共有は当たり前ですが、授業のクオリティやデザインまで共有できるとしたら、その学校は本気だということになります。つまり、品川翔英は本気なのです。

★エっどういうこと?と思われるかもしれません。しかし、一般に非常勤の先生にまで、授業の方法論やデザインの仕方、ルーブリックなどの共有を目的としたワークショップは行いません。契約上の問題もありますが、そもそも今までのように一方通行型講義であれば、教員免許を持っていれば、あとは書類選考で十分だったのです。

★ところが、PBL授業となると、専任の先生は行っているけれど、非常勤の先生はやっていないとなりがちです。こうなってくると、困るので、ワークショップを行うとよいというわけですが、そこまで契約していないとか、だいたいできないとかいろいろな問題が起こります。よほど人間関係をきちんとしていないと、なかなか進まないというのが、日本のすべての学校でアルアルの話なのです。

★品川翔英は、そこを乗り越えているわけです。驚きです。しかも、このワークショップは、品川翔英にとってPBLとは何か、なぜ必要かなどを行い、ルーブリックの開発ワークショップなども経て、ケーススタディーに進んでいます。ケーススタディーも3回目を迎えています。

★そこに参加するのですから、さすがに非常勤の先生方も不安なわけです。それでも参加は自由というわけですから、参加する意思を持っているために、積極的に参加されていました。そして、専任の先生方のケアシップ、リーダーシップ、フォロワーシップ、コミュニティシップのさりげない発動が、共鳴共感の響きを生み出し、不安を払しょくする雰囲気が巻き起こっていました。

★実はこの雰囲気は、まさに今井先生のPBL授業において生徒と共有されている雰囲気でもあります。講師の方々もそこに共感していたのです。今井先生のPBL授業のケーススタディのワークショップと自分たちが創ってく授業のイメージがシンクロしていったのだと思います。

★先生方は「学びの共同体」を大切にしています。まさにその想いの面目躍如のワークショップになったのです。(つづく)

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2020年7月11日 (土)

八雲サードインパクト(01)東急線・田園都市線さらなる活性化

★東急線の都立大から徒歩7分。八雲神社に見守られる閑静な住エリアに凛として佇んでいるのが、八雲学園。3年前に共学校になり2度目のインパクトを世に与えましたが、来春は3度目です。1度目は20世紀末のバブル崩壊時期に颯爽と中学再開でインパクトを与えました。

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★なぜ3度目かというと、高校の共学化を行うからです。豊島岡女子や本郷、聖学院の高校募集の動きがあって、私立学校の高校募集に注目が集まる時期です。八雲の高校募集の共学化は、入試市場でも注目されるでしょう。

★また、今年4月からは私立高校に通う場合の就学支援金の上限額が、私立高校の平均的な授業料の水準まで引き上げられ、私立高校も実質的に無償化になっています。質の高い八雲学園の高校募集に男子も期待をするでしょう。何せ、高校入試は、すぐその先の進路先は重要です。

★2022年から、大学入試は、文科省の改革がどうあれ、大きく変わることは想像に難くありません。オンライン化が進めば、論理的思考力・批判的思考力・創造的思考力に力点がシフトします。ダボス会議をはじめ、世界の政財界人もタレンティズムへの道を拓こうとしています。18歳成年も相まって、自分が何ができるか、それを実現するためにどんな高次スキルを有することができるのか。

★そのような変化する進路先に対応できる学校は、今回も、八雲のようにきちんとオンライン授業で対応できているはずです。

★つまり、コロナ禍にあって、公立学校がオンライン授業を行ってこなかったので、今後の第2波第3波のみならず気候変動のリスクなどに直面した時に、八雲学園は十分に耐えられるオンライン授業を果たしてきたということがポイントなのです。

★このような話題性の側面だけではなく、実質的な教育の質が高いことは言うまでもありませんが、これについては本シリーズでゆっくり述べていきましょう。

★ただ、ここで確認しておきたいことは、英検2級までとれれば、高いアドバンテージのもとで上智大学、立教などの道が開けます。このレベル以上の英語力を今の八雲学園の教育だと身につけられます。これは、八雲学園の近隣の公立高校よりも有利な点ですね。もちろん、英語だけではなく、教育の総合力が八雲学園の特徴です。

★いずれにしても、インターナショナルスクールやそれ級の私立学校へ期待する受験生が多い東急線と田園都市線です。しかし、その期待に応える高校募集を実施している学校が少ないのです。三田国際や洗足学園は帰国生しか募集していません。桐蔭も中等教育学校です。するとあとは八雲学園と都市大等々力のどちらにするかということになるでしょう。

★どちらも教育の質が高いわけです。そこで凌ぎ合います。東急線と田園都市線は、五島慶太翁の夢である教育都市構想がベースですから、今でも教育に対する熱量が半端ないのです。五島慶太翁が創設したのは等々力ですから、同校は八雲に負けるわけにはいきません。八雲もひるまず立ち臨むでしょう。日ごろは仲のいい両校の広報の先生方ですが、スポーツの試合と同じような感覚で一戦交えるでしょう。

★教育の質の切磋琢磨は日本の未来にとってウェルカムではありませんか!

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(39)才能が新しい社会を創る その才能がマグマのようにあふれだすには?

★オンライン授業を経て、今はリアルなノー3密空間で、小学校4年生や5年生と学んでします。盟友鈴木代表が主宰するGLICCでクリエイティブコースのワークショップを週に160分お手伝いしています。これが実に楽しいですね。孫と対話しているようなものですから、目が細くなってばかりで、お母さん方は、もっと厳しくと思っているかもしれません。

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★4年生80分、5年生80分。GLICCは基本海外帰国生とのオンライン授業がベースですから、リアルな空間は1教室5人くらい。でもノー3密ですから3人が限界です。ですから、ワークショップも対話が中心です。80分間で、上記の本をベースにプレリベラルアーツをやっていきます。もちろん、中学受験を考えている子供たちなので、入試問題もやりますが、それは子供たちにとっては、実はそれほど難しくないのです。

★5年になると、宿題で入試問題をやってきます。入試問題の解答解説は基本しません。どんなところができるのかできないのか、自己モニタリングできるようにするのが目的です。それに5年の段階ですから、どちらかというとゲーム感覚で、現状で半分解けたらすごいじゃんと自分で言っています。

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★セルフモニタリングする時も、ワークショップをやるときも、システム思考のエンジンの表は毎回テキストの表紙に貼ってあるので、それを意識して自分はどこが苦手だだとか言ってます。入試問題を解説するというより、本人がそういうスキルを、スピーチや記述や絵、図、グラフなどのスクライビングをしながら考えていきます。

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★スクライビングをするときは、ポストイットイーゼルパッドといわゆるポストイットを活用します。基本1人1セットもってやっていきます。適宜チームでやりますが。文章をポストイットでキーワードごとに分解してべたべた貼っていきます。そのあと、ベン図やフローチャートをつくるので、並べ替えたり、ペンでつながりを描いていったりします。

★すると、物語にしても、論理的文章にしてもその構造が見えてきます。分解と統合は、自分で見える化していくに限りますね。

★最後には、文章化するのですが、それは結構ハードルになります。スクライビングやスピーチが巧くいっても、文章に書くとなるとなぜかたいへんなようです。とにかくキーワードを書いて、もう少し詳しく書いてみたらを繰り返します。何か足りなくないとかコメントを言っていきます。

★なぜとか対照的内容とはとか、その段階ではヒントはだしません。もう少し詳しくとか何かたりなくないとかそのキーワードかっこいいとかそんな感じで言っていきます。で、できあがったときアナリーゼしようという話になります。ここは比較対照スキルつかっているとか、置換と根拠がいっしょかな、それいいじゃんとか対話していきます。

★そんなことを繰り返しています。SDGsは興味をなぜか持っている子供たちばかりなので、「自然と社会と精神」のスピーチは毎回やります。ネット上にいろいろな図がありますから、それと上記の「自然と社会と精神」のカテゴリーの本を組み合わせます。1つの図をパッと出して、それで気づいたことをスピーチします。正解はもちろん求めていませんが、毎回いろいろな図やグラフで語るので、何がわかっていて、何が知識だけなのかが本人もわかります。

★そこのところは、ネット上で動画を探して、いっしょに見ながら再度スピーチをしていきます。

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(写真はカルビーサイトから)

★30分に一度休憩を入れます。あっという間の30分なのですが、「じゃがりこタイム」です。じゃがりこは種類が豊富で、地域特産のものもあり、毎回どれを選ぶかジャンケンです。最初は休みはチョコレートだったのですが、じゃがりこがいいということで、定着しています。

★ワークショップということもあり、食べながらもできてしまいます。光合成のスピーチでつまったりするとき、じゃがりこに「置換」えてはなしてみるとどうなるのとか、今話したことあとででてくるよと声をかけると、比喩でしょとかやりとりがあります。

★いずれはじゃがりこ戦略とディズニーランド戦略を比較して自然と社会と精神について対話してみようと思っています。

★漢字やことわざ、故事成語は、書き取りまではできません。学校の漢字書き取り学習はたくさんあるということなので、それはそちらでと。でも読みは「ノック&ノック」とう時間をとります。漢字が読めないと文章が読めずに、そこでとまるので、読み方を間違えても、その間違えで熟語の意味がわかっているということだよとか、いいながら、読みをどんどん連射していきます。国語の先生には叱られるかもしれません。

★言語技術では、しかししながら、読めない単語や意味の分からない単語は、すぐに辞書を調べるのではなく、推理するというプロセスも大事にしますから、「ノック&ノック」はそうしています。それに、故事成語なんかネットにすばらしい動画いっぱいあるので、それを見て、その動画の再現解説をスピーチする機会を設けます。4年であろうが、5年であろうが、新聞の文章ぐらいは読めるようになります。

★SDGsをなんとか推進しようとしても、光合成について、二酸化炭素について、小学校4年生くらいまでは、よくわかっていないようです。私と対話している子供たちは、そのことにこれでいいのかというわけです。ちょっと前まで知らんかったでしょうとは言わずに、そうだねそうだね、でどうするよと言うことにしています。

★上記写真の「言葉と哲学」カテゴリーの2冊は、最高です。言語学と哲学の基礎が4年生・5年生にもわかるように書かれています。専門知識はなくても、こういう書き方があるのだなあと感動しています。上記の本を介して対話していくといっても、ほとんど子供たちがスピーチし、スクライビングし、まとめていきます。

★私がやるのは、別の言葉でいうと?置き換えると?今食べているものは、この文章でたとえると?とパラフレーズするとどうなるのばかりを聞いていきます。思考スキルもそうです。スキルに置き換えると?となるわけです。

★「置換」なんてといわれるかもしれません。実はこれが発想の転換にはもってこいだし、数学的思考の基礎でもあります。それゆえ、発想の転換には、上記の写真にあるような本を活用しています。国語の中学入試対策をクリエイティブコースでやているわけですが、結局、思考スキルは数学的思考のルーツにつながっていきます。プラトンは正しかったのかもしれませんね。

★それはともかく、みんなでじゃがりこ食べながら、その瞬間瞬間に問いを投げる対話は、さすがにオンラインではできないのですが、それ以外はオンラインでできてしまうということも了解しました(笑)。

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2020年7月10日 (金)

聖学院インパクト(03)GICのキャリアデザインン 社会的インパクトを生み出す人生

★聖学院の新クラスGISのキャリアデザインの発想が斬新なのは、毎年国内だけではなく海外大学にも羽ばたく幅広い人生の在り方を選択し同時に創るOBと共に多様なプロジェジェクトを教師も経験してきたからでしょう。

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(同校の今年の卒業生は、海外大学に合格したという実績だけではなく、そこにいくまでに起業したりプロジェクトを運営したり社会的インパクトのアウトカムがすでにあった。だから合格したということもあるだろう)

★GISは、その経験という臨床的な知を世界標準レベルの才能開発カリキュラムに昇華させる試みだと思います。一般的には、学校は基本的には教師の力量ですべてが決まるのですが、教師力だけにたよっていると、教師の力量がまちまちということはよくある話です。というか、ほとんどの学校がそうでしょう。

★そこで、聖学院は教師自身が自己マスタリーしてトレーニングするシステムとカリキュラムのレベルをアップデートできるシステムの両方を作り上げてきました。ですから、GISはその結晶です。

★教師は、聖学院の生徒が国内外で社会的インパクトを生み出せる才能を開花するだけではなく、その才能を試行錯誤できるプロジェクト環境を生み出します。そこですでになんらかのアウトカムが生まれますから、自分の才能と社会的インパクトの相関をモニタリングできます。

★このモニタリング評価は、言うまでもなく、模擬試験の偏差値とは全く違います。

★ルーブリックによるポートフォリオ評価と自分たちのプロジェクトに協力してくれたステークホルダーの動き、そして社会的貢献度などおよそ従来の偏差値評価とは違います。

★ところが、ポストコロナ時代は、この社会的インパクトへの挑戦は大事な大学へのパスポート構成要素になります。

★もちろん、国内の大学がすべてそうなるわけではありませんが、海外大学に進学するOBは、日本の大学にもアプリケーションを出しておきます。AO入試(総合型選抜と名称が変わる)の場合、たとえば上智大学だと英検2級が必要ですが、GISをはじめ聖学院のクラスは英検2級は軽くとってしまいます。今年海外大学に進学するOBは準1級レベルは超えています。

★したがって、上智大学やICUなども合格して海外大学も合格するのです。これはある意味保険ですが、今回のパンデミックで、この保険の意味が大きく変わりました。大学経営は世界中で苦しいし、オンライン授業などで大学の組織自体が変容します。変容すると価値が変わります。

★ですから、今までの大学受験だと偏差値表とにらめっこしていればそれで事足りたのですが、ポストコロナの時代は、自分で大学の情報を集める必要があります。

★そうすると、世界の大学が思考力と社会的インパクト創造・実現力という才能を評価するようになることがわかるでしょう。そして、そのような評価をする大学を選択することが、18歳で成年になって社会的活動を始めるためにも、時間を大切に過ごすことができるのです。ポストコロナ時代は、偏差値をあげるためだけの受験勉強は時間の無駄という時代がやってくるはずです。

★時間は投資という考え方が明確に教育の世界にもやってきます。オンライン授業でそのことがはっきりしてきたはずです。

★したがって、高校3年間教科書と受験参考書だけで過ごしたとしたら、大学や社会に出たときには、人間力・知力・発想力・革新力などすべてにおいて遅れているということになるでしょう。

★GISが、そうならないためのすばらしい才能開発カリキュラムをつくるわけですが、そのアップデートは30名のGISクラスのメンバーと共に創っていくことになります。新しい世界の創造は、まずGISの果てしないアップデートからスタートすることでしょう。それが意味ある・価値ある高校生活となることは容易に想像できるではないですか。

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2020年7月 9日 (木)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(38)e-portfolio運営団体の許可取り消しか?

今朝NHKが「大学入試の新システム 運営許可取り消す方向で調整 文科省」という記事を発信しました。「高校生に、学習した内容や部活動の実績を記録してもらい、大学入試で活用する新たなシステムについて、文部科学省は、これを運営する一般社団法人への許可を取り消す方向で調整していることが関係者への取材でわかりました。このシステムは、およそ18万人の生徒が利用していることなどから影響が懸念されます」というのです。

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(写真はJapan e-portfolioのサイトから)

★高校生の学習履歴や部活動、ボランティアなどの受験学力以外の活動の記録を入試でも評価しようという流れでポートフォリオをプラットフォームで一元管理しようと、<去年から一般社団法人の「教育情報管理機構」に運営が任され、今年度の入試から本格的に導入される予定でしたが、関係者によりますと、入試に利用する大学が少なく、財政上の安定が見込めないことなどから、文部科学省が運営許可を取り消す方向で調整していることがわかりました>ということのようです。

★しかし、なぜ利用する大学が少ないかというと、<機構のシステムの運用は、教育産業大手の「ベネッセコーポレーション」が担っていますが、生徒が学習内容などを記録する時に、ベネッセが発行するIDを取得する必要があったことから、教育現場から、「企業への利益誘導につながるのではないか」などと懸念する声があがっていました>という信頼性・妥当性へのリスクマネジメントからでしょう。

★同記事には<国が進めてきた大学入試改革は、大きな柱だった英語の民間試験と記述式問題の導入が、すでに見送られるなど、混乱が続いています>とありますが、この両方にもベネッセがかかわっていることは明らかになっていますので、ますますリスクマネジメントが作動したのでしょう。

★しかし、ベネッセのせいでは本当はないでしょう。だいたい、これだけ大規模な試験を処理できるのは、他にないでしょうし、全国学力テストだって、OECD/PISAの情報リサーチ団体だって、ベネッセがかかわっていて、それに全部文科省もかかわっています。

★つまりは、文科省の問題ですね。それに同記事では、こんな文章もあります。<大学入試に詳しい東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授は、「『主体性』を測ることは、部分的には可能かもしれないが、生徒のあらゆる活動が入試を意識した高校生活になってしまう懸念が生じる。そういったシステムが本当によいのか、生徒の大事な個人情報を適切に管理できるか、議論が甘かったのではないか」と指摘しました。そのうえで、「生徒の秘匿性の高い情報を入試で扱うという公共性の高い仕事を、民間に運営させるのであれば厳しい審査があってしかるべきだ。入試改革の柱と言われた制度が中止や延期になったことを、文科省は検証しなければいけない。今の受験生はその制度の変更や中止に翻弄されてきた。できるかぎり、丁寧に説明することが必要だ」と話しています。>というものです。

★おお~い(汗)、そもそも大学入試改革を行わなければならなかった学歴社会の弊害の元凶は東大なのですが、他人ごとのように語っている無責任な発想にはちょっと驚いてしまいますよね。もちろん、学者として客観的なコメントで、無責任とかの問題ではないのでしょうが、一般市民にはなんとも不可解です。文科省も学歴社会形成の根源である東大も、ベネッセのせいにして逃れようというのは、私たちの国のおかしなところでもあります。

★でも、そんなことを言っていても仕方がないので、自分たちで乗り越えましょう。ベネッセもやりかたを間違ったかもしれませんね。

★実は、オンライン授業に加速したことによって、早稲田大学などは、ポートフォリオも含むアプリケーションをオンラインで行っていく方向、しかも協働コミュニティをつくり、同一フォーマットでオンラインで提出できるようにしていく方向が進んでいます。

★欧米では、こういうコミュニティは多様にあって、国は一元管理で介入しようとしません。市場の原理が働くわけです。評価学がきちんと研究されていますから、信頼性や妥当性のチェックが働くわけです。もちろん誤りもあるでしょうが、そこは大いに議論になります。

★しかし、教育では市場原理が働くのを忌み嫌う日本の文化があります。だからベネッセに対してもこういう仕打ちをするのでしょう。NHKまで巻き込んで報道しているのですからすさまじい国ですよ。

★ともかく、自分たちで教育コミュニティを創るなり、既存の信頼のおける教育コミュニティに加盟するなりして、自衛していきましょう。それが可能なのがオンライン化と英語などの世界言語の習得により成立します。だからようやく今なのかもしれません。そうそうPBLをやって、自分の考えをきちんと表明して議論できるクリティカル&クリエイティブな思考スキルの実装は必須です。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(37)巣鴨 日本初 WLSA加盟 イートン、ハロー、エピスコパル、チャドウィック etc.

★巣鴨がWLSAの加盟校になったと教育ジャーナリストのおおたとしまささんのfacebook情報で知りました。同校サイトにはいると、こうあります。

「World Leading Schools Association(WLSA)に日本初の加盟!
日本の学校としては初めて,World Leading Schools Association(WLSA:ウルサ)への加盟が決まりました。6月初旬に実施されたWLSA役員会投票の結果,本校のこれまでの教育活動が高く評価され,日本の私学教育を牽引する学校としてWLSAへの加盟が全会一致で可決されました。」

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(画像は、WLSAサイトから)

★このコミュニティは、2004年以降から、中国の学校の代表と世界中の教育の主要パートナーが、学校間の理解と協力を強化する方法について話し合いをスタートさせたようです。かつての眠れる獅子が覚醒をして、その台頭はすさまじいですから、欧米中心の教育も変容しなければサバイブできないし、中国の学校もさらに資本主義の先進校から学ぼうとしていた時代でしょう。クロス・カルチャラルな時代でもあるということのようです。

★久しい間議論が続き、2011年ころから本格的に活動が広がったようです。日本でも規模は小さいですが21世紀型教育機構が誕生するころでしたから、世界は未来に向けて同じ空気を吸っていたのですね。

★加盟国は、相当な名門校のようです。イートンやハロー校はもとより、エピスコパルハイスクールとあのチャドウィックスクールなども加盟校になっていますから、同コミュニティが自認しているように世界を牽引するリーダー校が集結したという感じです。中国やアフリカからも参加していますから本当の意味でグローバルな広がりがあります。そこに日本から巣鴨が初めて加盟ですから、ますますグローバルの意義が充実しますね。

★同コミュニティのサイトにはこんなコミットメントがあります。

<WLSA global citizens continue to redefine what it means to be a global leader in their communities, schools, businesses and neighborhoods.>

★ダボス会議でいえば、世界の広義のステークホルダーにおけるグローバルリーダーになる意味を再定義し続けるということのようです。クリティカルシンキングをもって、リセットを恐れずに進むということでしょう。そのメンバーとして巣鴨も同じようにアクションすることが規約にあるでしょうから、巣鴨の今後の再定義や自己変容、つまり進化が大いに期待できます。

★またこのコミュニティのサービスには、バイリンガルどころではないほどの外国語を学ぶシステムもあるし、オンライン学習もあります。なんといってもCANという海外大学との連携もいろいろあるようです。聖学院や開成、海城に続き、巣鴨も海外大学への道が開けていくということですね。

★また、日本初と言えば、工学院のケンブリッジ・イングリッシュ・スクールの加盟だったり、文化学園大学杉並のカナダのBC州との提携があります。初ではないけれど、八雲学園、玉川学園、工学院、啓明学園のようにラウンドスクエアに加盟している学校もあります。IB校はもう150校は超えていますね。

★このように、どんどんグローバル教育コミュニティとの提携が拡大しているわけです。こうなると、進学先も国内だけではなく海外にも広がっていきます。ポストコロナ時代は、海外大学は、オンライン授業をベースに、ミネルバ大学化しますから、ますますこの道は拡大するでしょう。

★男子校も、聖学院、開成、海城、巣鴨とそうなっていきますが、この後に武蔵、聖光学院、静岡聖光学院が続くでしょう。男子校のイメージが随分変わります。そして、そのことは、ポストコロナ時代のザ・グレート・リセットの文脈であり、キャピタリズムからタレンティスムというダボス会議のシナリオプランニングを展開・実現していくことになるでしょう。

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聖学院インパクト(02)GICのコンセプトも唯一無二

聖学院の新クラスGIC(Global Innovative Class)のコンセプト(ビジョンやゴールイメージ等々全部ふくんだ目論見)がまたすばらしい。コンセプトもまた唯一無二です。

【図1】

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★そのコンセプトとは、<「ものづくり」「ことづくり」を通して世界に貢献できる人を育てるクラス>です。このコンセプトをどう理解するかで、GICの重要性を感じる度合いも違います。とても深い知的な背景があるので、あえてあまり説明していませんね。その凄まじい価値は、入学してからわかることだし、セミナーに参加すれば体感できるかもしれません。

★このコンセプトの質感に共感できるかどうかでよいというのが聖学院の先生方でしょう。あんまり理屈ぽいことを言うと、外部だけではな学内の理事会にも引かれてしまいますから。

★しかし、本質的なものや本来的なもの、本当に大切なものは、なかなか目には見えないもので、それを可視化しようとしたりロゴス化しようとすると、難しくなったり、しきれなかったりなので、ほんとど多くの人が見逃がします。興味がないといっても言い過ぎではないでしょう。

★GICを目指す生徒のみなさんは、そこを直観的に感じるわけですよね。ほとんどの人が見逃すぐらい重要なアイデアが、このGICのコンセプトとそれに基づいた教育実践にあるわけです。

★エッ!?教育実践は新クラスだからまだでしょうと思うかもしれません。他の学校だったらそうかもしれません。しかし、聖学院は、C1英語×PBL×ICTは、学びの基礎ツールとして、すでに学内にあるものなんです。

★それを活用して、今まで行ってきた糸魚川農村プログラムや文化祭のプロジェクト、タイ研修、MoGなどの研修とGIC創設のための新しいメンバーが実践してきたイノベーティブな教育の粋を集めた実践になります。

★ゼロから創るのではなくて、すでに成果を出している実践を統合して化学反応を生み出して行っていきますから、先生方は見通しとできるという実感がすでにあります。

【図2】

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(要素還元主義は、要素の足し算です。構成主義は要素の掛け算というイメージです。混合と化合の違いといってもいいかもしれません。)

★さて、コンセプトに戻りましょう。実は、「ものづくり」「ことづくり」というのは膨大な知的財産が背景にはあります。20世紀末は、大学入試問題でも、「ものからことへ」というベクトルだったのです。当時の科学や現代思想は、20世紀社会のパラダイム(価値観や社会の枠組み、認識の枠組み)をシフトする方法論を提唱して、盛り上がっていました。そのマテリアル(素材)がそのまま大学入試問題に活用されていたのです。

★これは、企業も同じでした。バブルがはじけて、中国やインド、韓国、東南アジアの国々の経済的な台頭に、日本の経済はダメージを受けました。特に日本のものづくり産業は相当ダメージを受けました。その中で、転身を図って成功したのはソニーかもしれません。

★1980年代の日本のバブル経済が膨らんでいたころは、ソニーはプレイステーションとウォークマンで世界を席巻していました。日本のものづくり産業の面目躍如の時代です。

★ものづくりの基本は、部品を組みてる作業です。科学の世界では、これを要素還元主義と言います。要素や部品を組みてて予定したものができなければどうしようもありません。欠陥品となるでしょう。

★教育も、このものづくり産業に就職できるように、部品としての知識を覚えて、その知識を予定された解答になるように組み合わせるトレーニングを目的としました。社会学的には、労働再生産の教育というわけです。そんなことを言うと、学校の先生方は傷ついてしまうので、あまり言えないのですが、GICを目指す生徒のみなさんは、真実を知っておいた方がよいでしょう。クリティカルシンキングはそれゆえ必要ですよ。

★さて、バブルははじけました。するとあのソニーも崩れはじめたのです。すでにIT革命がはじまり、ネットスケープやAOL、ノキアなど新しいコンピュータものづくり産業に圧倒され始めます。すると、そこはソニーです。「ものからことへ」と言い出したのです。

★そして、このコンセプト通り、IT革命のバブルも崩壊しました。ものづくりという点で変わりありませんでしたから。そして、シリコンバレーが台頭します。今のGAFAの基盤が創られます。WebとSNSとアプリの台頭です。

★このネットワークというものづくりではなく、ことづくりのパラダイムは、どんどん進みました。ソニーも転身を続け、今やソニーと言えば金融業が主流でしょう。金融は今やネットなくして考えられません。

★このものからことへパラダイムシフトをしたとき、教育も労働再生教育からクリエイティブクラスを生み出す教育へと転身しました。ただし、日本はしていません。今もしていないでしょう。大学入試改革がとん挫しているのをみれば明らかです。

★ともあれ、当時のブレアークリントンは、教育!教育!そして教育!とスローガンを打ち出し、ハードパワーからソフトパワーを生み出す教育にパラダイムシフトしたのです。

★その中でもインドの人材のコンピュータサイエンスの活躍が凄まじく、今もGAFAのCEOの中にはインド出身の人材がいるし、ドバイの人口の70%はインド人であるように、最先端分野つまり、ことづくりの領域はインドの方々の活躍が今もすさまじいのですが、彼らが当時日本にやってきたときに、ソフトは私たちが創るからハードは日本の方々にお任せしますと言っていたものです。おそらくそれは、彼らにとっては今も変わらない意識でしょう。

★今回のパンデミックで、日本の学校は、聖学院のようにオンライン授業にすみやかに動けなかった背景には、こういう日本のものづくりからことづくりへの転身が巧くいっていないということがあります。まして教育の領域は、まだまだ20世紀の労働再生産教育です。もう再生産のつながりなくなろうとしているのにです。再生産の労働力の行き場所がないのですよ。

★さて、聖学院のGICのコンセプトです。今までの話をまとめると【図1】のようになります。唯一無二だというのはもうわかりましたね。聖学院はハードパワーもソフトパワーも両方やってしまおうということなのです。これは国内にもないけれど、海外にはもっとないですね。

★日本のハードパワーは、天才的で、創造的なのは、世界が認めます。その根底には、わび・さび・雅などの価値観があります。この日本的な美学は、世界も認めています。一方で、創造性もすばらしい。ただし、その創造性はハードパワーと融合しているのが日本の特徴です。

★それがなぜかは、探究の価値がある話ですから、いずれということで、今回は、ともあれ、ハードパワーもソフトパワーも両方やるということと、それだけではなく、アントレ(起業家精神)も世界を創るスキルや哲学まで学ぶ広さがGICにはあるのだという【図1】に思いを馳せたもらうところで終わりにしましょう。

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聖学院インパクト(01)唯一無二の教育スタート!このシリーズは聖学院の新クラスを目指す30名の生徒のために書きます。勝手にですが(笑)。

★ついに!聖学院インパクトが始まりました!建学の精神「オンリー・ワン・フォー・アザーズ(Only One for Others)」を地で行く唯一無二のクラス「グローバル・イノベーティブ・クラス(GIC:Global Innovative Class)」の誕生です!これがすごい。ポストコロナ時代にふさわしい日本だけではなく、世界でも今のところどこにもない最高のクラスです!

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★この「聖学院インパクト」のシリーズは、新クラスGICを希望する30名の生徒のために書きます。ホンマノオト21は教育ジャーナリズムの埒外にありますから、好きなことを書けるんですが、難しいとか言われたりいろいろ制約があって、寸止めで書かざるを得ないケースもありますが、このシリーズはその30名のために、言いたい放題書きます。

★もちろん、聖学院から許可もオーソライズもされてもいません。たんなる未来の教育がこうあって欲しい。そんなすばらしい教育を実践している学校はどこにあるのかを探すブログですから、自由です。

★ともあれ、偏差値50(高校入試のであって中学入試のではありません)~60あれば、聖学院の新クラスで学べば、東大の一般入試は簡単ではないかもしれませんが、東大の推薦入試はなんとかなるでしょう。京都大学の一般入試は難しくても特色入試はなんとかなるでしょう。

★慶応やICUは、かなり確率が高いですね。もっとも、ここは新クラスでなくても聖学院で学べば合格できてしまいますが。

★だから、偏差値70を振り切る開成や筑駒、日比谷にいきたいけれどちょっと手が届かないという生徒で、偏差値よりも自分の才能を最大限拡張したいという生徒にはピッタリの新クラスです。でも、そういう生徒に気づかれてしまうと、このクラスの偏差値が跳ね上がってしまうので、痛し痒しですが。

★ともあれ、同校のGIC特別サイトにあるように、東大・京大の世界大学ランキング以上の海外大学には進学できてしまいます。

University of Pennsylvania[世界11位]
University of Toronto[世界18位
University of Michigan[世界21位]
University of Washington[世界26位]
University of California, San Diego[世界31位]
University of British Columbia[世界34位]
University of Illinois[世界48位]
University of California, Davis[世界55位]
Boston University[世界61位]
University of Southern California[世界62位]
Carleton College
Grinnell College
Texas A&M University
Fordham University
台湾国立成功大学(医学部)
台湾国立師範大学
北京外国語大学 他

★大学実績の話なんか眼中にないのが、新クラスGIC創設メンバーの先生方の信条ですが、30名の生徒にとってはわかりやすいでしょう。だって、日本の大学で学べない学部が世界にはたくさんあるわけですよ。もちろん、東大や京大に行かなくても、日本の大学に行って、大学院で東大とか行って、そこから海外の大学院で研究すれば自分のやりたいことは実現できます。

★オンリ・ワンな才能を持っていれば、この進路は自ずと開けちゃったりするんです。この段階では学習指導要領という他人が与えた制約はないですからね。

★今回のパンデミックで、オンラインで大学で学ぶコトができるようになります。海外の大学だって、学生がいなくなれば経営ができませんから、オンラインの最適な環境をどんどん設計して整備していくのは当然の流れです。ここ3年で、そこに投資するのは必至でしょう。

★おそらく日本の大学と海外の大学は、共有アプリケーションのプラットフォームを創るのはもうすぐですから、C1英語とPBLとICTは、もはや学びの基礎ツールになってしまいます。しかし、この環境を整えている1条校は、今のところ日本の中高では、20校あるかどうかです。

★国際バカロレアのコースを持っている学校は除いて。ただ、そのような学校も、そのコースは30名前後ですよ。だから、国際バカロレアのディプロマレベルの環境は、GICはクリアしてしまいます。

★こういうことを言うと、揶揄されるんですが、そういう方に限って、国際バカロレアの中身を実は知らないで、先入観、固定観念で、まさかそんなことが日本の学校でできるはずがないと言っている場合が99%ですね。

★だいたい、新しいことをやろうとすると、自虐的に、ネガティブに、嫉妬、嫌味・・・などのルサンチマンを彷彿とさせる方々がこの国は多いんですよね。そんな闇の言葉に惑わされないように、クリティカルシンキングを養ってGICにチャレンジしましょう!

★どうやって、クリティカルシンキングをと。それは聖学院の行うセミナーに参加すればよいでしょう!

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2020年7月 8日 (水)

世界を変える女子校(04)神田女学園 多様な才能を開く多様なカリキュラム

★神田女学園も人気が序破急のカーブを描く女子校です。教育の内容のその豊富さは、首都圏模試センターの「おうちdeオンライン説明会」の特設サイトにたくさんアップされていますから、ぜひご覧ください。

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(写真は同校の公開している多様な動画から)

★学校長の宗像先生は、時代を読み、次々と6年後の女子生徒の価値を高めるカリキュラムを創っていきます。その手腕は、三田国際の学園長が広尾学園を創ったときに参謀役として力を発揮したという話をすれば、期待をもてるでしょう。

★さらに、前職の開智日本橋の副校長を務め、広尾に続き見事に人気校に仕立て上げました。やはり、その力は本物だということでしょう。

★鳴り物入りの校長とは違い、理事長・校長をサポートする形で活躍してきて、ようやく校長として活躍しているのですから、信頼性や期待値が高いですね。

★非常に視野が広く、最先端の教育に精通しています。

★したがって、リベラルアーツをベースにした言語技術を軸に、ダブルディプロマをアイルランド、ニュージーランド、カナダと広げています。もちろん、海外大学が射程にはいっていて、カナダのディプロマがそれを達成する実績は、すでに文化学園大学杉並が証明済みです。

★PBLやICTは、リベラルアーツを行うと、当たり前です。今回の一斉休校時も、双方向対面型のオンラインからプラットフォームを活用した深い学びを生徒ができる環境を整え、実施しました。

★また、世界の女性は男性よりも科学者の数が多い国もあります。バイリンガルからトリリンガルへとは、英語以外のフランス語や中国語などの世界公用語を学び、世界の科学者と論理的な議論ができるようにカリキュラムを設定しています。

★特に医療関係のキャリアデザインに力が入っていますが、この分野の女性の活躍は時代の要請でもあります。

★多様なカリキュラムその効果について、ぜひ同校のオンライン説明会に参加して目から鱗を体験してください。広尾、三田国際、開智日本橋のように成長していくでしょう。ただし、大きな違いは女子校で成長していくという宗像校長の断固たる決意があるということです。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(36)日経のシリーズ「教育改革 危機が促す」の思惑。

★ここ数日、日本経済新聞は、シリーズ「教育改革 危機が促す」を連載しています。

 ・「一律・平等」脱却に芽 個に応じた指導、柔軟に
教育改革 危機が促す 2020/7/7 20:00 (2020/7/8 5:41更新)

・「一斉授業は限界、最適な方法考える必要」小林いずみ氏
教育改革 危機が促す 2020/7/7 20:00日本経済新聞 電子版

・揺らぐ「学びの保障」 デジタル対応、世界に20年遅れ
教育改革 危機が促す 2020/7/6 22:50 (2020/7/7 5:27更新)

・「デジタルで効率的な学びを」豊福晋平・国際大准教授
教育改革 危機が促す 2020/7/6 22:50

Wayoukudan

(写真は和洋九段女子のサイトから。同校のオンライン授業の質は高く、写真のように生徒同士がオンライン授業を行うまでになっています)

★この連載の中で、インタビューされている方々の発想や学校の試みはかなり先進的です。とはいえ、多くの私立学校にとっては当たり前の発想や取り組みです。

★私立学校の話をあえてしていないのですが、明らかに私立学校をモデルにして教育改革の輪郭を描いている日経の編集方針はいったい何を狙っているのでしょう。

★憶測にすぎませんが、おそらく公立と私立のICT教育格差を一気呵成に縮めようというのでしょう。

★というのは、初等中等教育の児童・生徒数は、ざっくり1,200万人いるのです。この1,200万人が、イノベーション教育の恩恵に浴すことができれば、日本の経済は大復活なのです。

★シンガポールやフィンランドなどは総人口がそもそもその半分もないのです。ということはこの1,200万人がイノベーションのスキルを駆使できるようになれば、圧倒することができるはずです。

★日経は、そんな日本の教育を救うねらいがあるのかあ!すごいなあ。いやたしかに結果的にそうなるのかもしれませんが、それよりも、世界経済の動きを追っていくと、日経の広告費を稼ぎ出すターゲット企業は、この1,200万人をターゲットにしている企業だからということが本音でしょう。

★日経はダボス会議をずっと追跡していて、来年の会議のテーマが「ザ・グレート・リセット」で、キーワードは「タレンティズム(才能主義)」です。

★このアイデアは、21世紀になってから日経が翻訳までして追跡してきたリチャード・フロリダ教授の「クリエイティブ・クラス論」です。最近、落合陽一さんんも新刊書で、この論を持ち出してアップデートまでしています。

★ノーベル経済学賞の流れからいくと、人口成長論から内生的成長論へという、やはり才能を発掘して経済を活性化するという文脈です。この内生的成長とは、教育において新しいイノベーティブな学びの経験を生み出すことによって可能になるという話です。

★この新しい経験は、すでに私立中高一貫校の30%は果たしているのですから、パレート原理に従えば、私学に広まるのは必至です。あとは公立ですが、コロナ禍の危機に乗じてギャップを埋めようという思惑があるのでしょう。

★しかしながら、このシリーズで批判的に検討されている一斉主義や一律主義の日本の教育は、おそらくそう簡単には変わらないでしょう。なぜなら一斉主義や一律主義の根本問題は教科書主義ということなのです。

★ここは、インタビューをされている方々は痛いほどわかっています。ほとんどが私立学校出身者のラインナップなのですから。取材されている中高一貫校である白鴎にしても、市川源三つながり(白鴎高校と鴎友の両方の校長をしていた)で、公立中高一貫校に移行するときに私立の鴎友学園の支援も得ているぐらいですから、基本は私学の研究をしっかりしている学校です。

★開成や聖学院、工学院、あるいは日比谷や筑駒のオンライン授業のケースを出したら、あまりのすさまじさに一般には公立はモチベーションを内燃させないでしょう。そこで、そこはマスクをかけて仕掛けているのでしょう。

★私立学校としては、真似をされては困るとは思っていません。全体が底上げになるのならば、大歓迎です。オンライン授業のインフラが公立も私立も整うのは、デジタルシフトが起こることで、日本の新しい経済基盤を創るのに重要です。しかし、そこから先のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、ソフトパワーの腕の見せ所で、タレンティズムの領域です。

★ここで、切磋琢磨することは経済の活性化に重要です。土台の段階で格差があるうちは、日本の経済は復活しないでしょう。企業のテレワーク、学校のオンライン授業のデジタルシフトの確立はザ・グレート・リセットの大前提だというのでしょう。

★さて、日経の描くストーリーはどうなるでしょうか。うまくいくかもしれませんし、そうでないかもしれません。

★もし、日経以外のメディアが一斉に日経の右に倣えば、動くかもしれません。あれっ?やはり一斉主義は日本の文化ですね。一斉主義という箱の中での入れ子の差異。繊細な文化のメカニズムかもしれません。

★となると、やり方はまた別にあるのかもしれません。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(35)高橋博理事長 教育出動するカトリック学校の改革者

★聖パウロ学園の理事長・学園長であり、多くのカトリック学校の改革者でもある高橋博先生とZoomミーティングをしました。高橋先生は、一斉休暇中の聖パウロ学園の先生方のオンライン授業&面談及び今常任理事でやはりカトリック学校の改革を実施しているノートルダムグループの先生方のオンライン授業&面談を共にし、ポスト・コロナ時代のカトリック学校の在り方をさらに明確にし推し進めようとしています。

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★カトリック学校は、創設当初は、みなイノベーティブ・エデュケーターと称して役割を果たしてきました。戦争やパンデミックに直面し、社会の荒廃の中で困窮に陥っている子供たち、差別される子供たち、救いの手が差しのべられていていない子供たちのために、時代の先端技術を駆使して様々な行く手を妨げる壁と闘う模範を示しながら、子供たちと共にその壁を粉砕してきたのです。

★戦後日本でカトリック学校は見事にその意義をまっとうしたものです。聖パウロ学園もノートルダム女学院もまさにその役割を果たしてきました。

★その他の多くのカトリック学校も同様です。しかし、高度経済成長によって、その役割は表面上は解かれ、大量消費・大量生産・大量移動・大量情報の交差するポストモダン社会においては、今度は生き残りをかけなくてはならなくなりました。そのためにカトリック学校は東大や医学部をはじめとする大学進学実績をあげることによってサバイブしようとするところもたくさん出てきました。

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(一斉休校中、オンライン授業&面談に一丸となって取り組む聖パウロ学園の教師と生徒)

★信仰と進学実績は両立するというカトリック学校もでてきたのです。信仰するにもパンは必要です。そのパンは進学実績によってもたらされるのであれば、それもやむを得なかったのでしょう。

★しかし、マザー・テレサが訪日したとき、当時のインドの貧困な人々のようなお金の貧しさはない日本だが、心の貧困のあることを静かに指摘しました。

★訪日中、マザーの表情に笑顔はありませんでした。不満だったのではないのです。人が笑うとき、何か鬱屈した状態から解放されることのサインとして示す場合が多いのです。だから、マザーはその鬱屈状態から逃れることなくしっかり受け止めようという意志を笑顔を示さないことによって示したのでしょう。

★高橋先生は、そのマザー・テレサの気持ちを継承して、進学実績成果主義=偏差値主義という他人のつくった価値基準にまどわされて自己肯定感が低くなってしまった生徒のマインドを引き受け、なんとかしようとしてきたのです。1人ひとりの才能を見出し、解放し、大学や社会に出たときにその才能を大いに発揮できる教育環境を創ってきたのです。

★それが聖パウロ学園の先生方と試行錯誤して創り上げてきているPBL型授業であり、Growth Mindset教育としての面談なわけです。

★そして、高橋先生は、このパンデミックの局面で、先生方が動きまくったオンライン授業と面談の様子をみて、改めて授業と面談の重要性と本来性に気づいたということでした。

★世界同時的に、様々な教育活動が中止になったにもかかわらず、授業と面談だけはオンラインによって止めることがなく持続されたのだと。

★そして、分散登校、学校再開となったとき、そのオンラインのチャレンジが、リアルなPBL授業や面談という対話に活かされているのをみて、ある閃きがあったというのです。

★パンデミックとの対峙が、再びイノベーティブ・エデュケーターとしての魂を沸き立たせたようです。

★東京と京都のカトリック学校の両拠点のシナジー効果を生み出すアイデアが生まれたようです。

★それが何かは、今後追っかけてみたいと思います。乞うご期待。

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2020年7月 7日 (火)

世界を変える女子校(03)横浜女学院 CLIL×デジタルシフトからさらなる進化へ

★横浜女学院は、いわゆる中学受験業界でも、その広報手腕や東大などの進学実績も出す進路指導力など評価が高い女子校の代表格です。私立学校の合同説明会のコミュニティづくりにもイニシアチブをとり貢献しています。

★しかし、同校の教育力や授業力の質の高さについてきちんと光があてられているかどうか?上記の駆動力に対する評価に比べればまだまだかもしれません。もったいない。というか、無意識のうちに業界では、そこに光をあてない抑圧が働いている可能性があります。それゆえ、私は中学受験市場と中学入試市場は分けています。混然一体となっているように見えますが、前者のホストは塾で、後者のホストは学校なのは明らかなのです。

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(写真は、同校サイトや首都圏模試センターの「おうちdeオンライン説明会」特設サイトにアップされている同校の動画などから)

★ともあれ、横浜女学院の授業、とくにCLILの授業(同校自身が動画で丁寧に説明しています)を中学受験業界きちんと理解すると、同校が位置する横浜の山の手の学校、つまり、フェリス女学院、横浜雙葉、横浜共立、横浜女学院の序列秩序を崩してしまいます。それは中学受験市場は望まないのですね。

★CLILは、英語4技能のみならず思考力も身についてしまう授業というか学習です。いわゆる英語の授業で探究まで行ってしまうもので、上智大学推奨の授業でもあります。ただ、日本の教育では、なぜか思考力という表現で終わってしまって、その思考力の段階を明示しないのです。

★CLILの思考力は<heigher-order thinking>という高次思考です。最近みんなが大好きな(?)国際バカロレア(IB)でも、この高次思考を目指すと明記していますよね。それなのに、ここをスルーするのは、日本の教育における思考力の段階が、CLILやIBのルーブリックに対照すると<lower-order thinking>という低次思考と訳されている段階にあるということが明らかになってしまうからです。

★この尺度を知ってしまうと、山の手の女子校で、高次思考をきちんとふだんの授業(探究活動や論文作成活動だけでなくです)で行っているのは横浜女学院だけということになってしまうのです。

★しかし、今回、世の中が、一斉休校下のオンライン授業の格差の体験を通して、横浜女学院がデジタルシフトからデジタルトランスフォーメンション(DX)に突入したことに気づくはずですから、受験業界がどう評価しようが、高次思考とDXのステージにある横浜女学院は高い評価を得ることになるでしょう。

★≪Z世代≫のライターやメディアの方々なら、そうするはずです。逆に言えば、横浜女学院の高次思考とDXのステージに移行している姿に気づかないとしたら、そのライターやメディアの方は、未来志向性は不足しているということです。未来なんて関係ないと言われるかもしれませんが。

★ともあれ、ICT関連企業にかかわっている方々やOECD/PISAを支援しているベネッセという巨大教育産業ならば、デジタル教育の進化のフレームについては、Ruben Puentedura博士のSAMRモデル(Substitution:置換、Augmentation:増強→Modification:修正、Redefinition:再定義DX)を活用するのが通例ですから、横浜女学院がSAというデジタルシフト段階からMRというDX(デジタルトランスフォーメーション)の段階に進化しているということに気づくはずです。

★来年の1月にダボス会議は、ザ・グレート・リセットについて議論します。そこへの準備が今年着々と進みますから、メディアもそこを追うでしょう。その中のコンテンツで教育も光を浴びます。しかも、女子の世紀ということは盛り込まないわけにはいきません。

★高次思考とDXのステージにシフトしている女子校が注目されないわけはありません。

★もしされなければ、日本の教育は変わらないどころか、終末を迎えるでしょう。そうならないために、平間校長がエヴァンゲリストとしての視点で毎日校長ブログを書き、横浜女学院の教育共同体を運営しているのです。

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2020年7月 6日 (月)

世界を変える女子校(02)相模女子大  今こそ求められる「高潔善美」

★相模女子大学中学部・高等部(以降「相模女子」)の建学の精神が強靭かつ柔らかい。それは「高潔善美」。SDGsの5番目のグローバルゴールは「ジェンダー平等を実現しよう」ですが、かつて、女性には、「才色兼備」という言説が使われてきました。男性にはほぼ使いません。

★しかし、20世紀男性には使えない「高潔善美」の言葉を相模女子は建学の精神として選択したのです。この意味が、このポストコロナ時代だからこそ注目されるマインドを示唆しているのは、説明するまでもないでしょう。

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(写真は、同校のサイトや首都圏模試センターの「おうちdeオンライン説明会」の特設サイトで公開されている同校の動画から)

★同校は、グローバル教育、グループワーク、ICTの学びの基礎をしっかり展開していますが、特筆すべきは、プログラミング教育が充実していることです。技能だけではなく、ベースにはアルゴリズムという数学的思考の学びが根付いています。

★また、マーガレットプログラムという、非認知能力であるソーシャル、メンタルを豊かにするプログラムもあります。

★ふだんから行われているプログラミング、マーガレットプログラムは、オンライン授業で大いに効果的だったことは想像に難くありません。

★相模女子の「高潔善美」という日常が、ポストコロナ時代のニューノーマルな生活において、希望を導く精神としてやがて注目されるでしょう。

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世界を変える女子校(01)大妻中野 自分の世界を社会と共有

★先進諸国の中でジェンダー指数ランキングが非常に低い日本。新型コロナウィルス感染拡大防止政策で大活躍した女性リーダーの話は頻繁にメディアに取り上げられています。女性科学者が男性よりもたくさんいる国も多いのです。

★どう考えても、遅ればせながらも近代社会を受け入れてきた日本だけが歴史のウネリから外れているというのは考えにくいのです。では、男性の戦略をいなし、撃破し、乗り越えていく女性リーダーがでてくる場はどこでしょう。それは、現在の学歴社会を作り上げてきた、つまり男女格差を確固たるものとしてきた20世紀社会に接続する初等中等教育の景色を塗り替える教育、その最も象徴的な革新的<授業>を展開している女子校です。

★女子校でも、20世紀社会のジェンダー問題を解決しない旧態依然とした授業を続けているところは、その可能性はありません。

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(写真は、首都圏模試の「おうちdeオンライン説明会」で公開している動画から)

★では、その革新性はどこにあるのでしょうか。それはC1英語×PBL×ICTの3要素のシナジー効果の大きさにあります。

★たとえば、大妻中野のように、CEFR基準でC1英語を目指し、すべての教科や単元でではないでしょうが「主体的・対話的で深い学び」ができるPBLを実践していて、当然ながら1人1台のタブレット型PCを活用して学んでいきます。いろいろな教育があるのでしょうが、この教育の核の部分が出来ていない学校は選んでは入学してから後悔します。

★授業そのものがコアカリキュラムになっていて、部活や文化祭、海外留学などの多様な教育活動のエンジンになっています。

★今回の一斉休校時のオンライン授業も同校は速やかに実施できています。世界中の学校がいろいろな教育活動をストップしても、授業は止めなかったのです。それだけ、授業は大事だし、同校のように、ふだんからすばらしい授業を展開していたところは、オンライン授業にもすぐに移行できました。

★2科4科のみならず、そ以外の才能者にも入学の機会を創っているグローバルな学校の発想も持ちえているのが大妻中野です。

★くだらない男性原理の抑圧的言説に惑わされることなく、のびやかに学び、他者とは違うオリジナルの自分の世界をつくっていきます。だからこそ、その希少価値は社会が必要とします。自分のかけがえのない唯一無二の価値に他者が共感して、それを受け入れたとき、自分の世界も他者の世界も共に変わります。そのとき大きな世界も変わります。

★男子の顔色を気にしながら生きていくのではなく、人間として対等に生きていける世界に変えていく女性リーダーがたくさん輩出される大妻中野が高人気なのは当然でしょう。

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2020年7月 5日 (日)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(34)新しい生徒< E-Student>出現

★6月30日(火)、<Y Day>。「一般社団法人Sustainable Game」の代表理事山口由人さんのオンライン誕生会。ふだんYujinさんと呼ばれているし呼んでいます。幅広い多様なネットワークがサイバー上に集まりました。対話あり、音楽あり、グラフィックスクライビングあり、そしておもてなし満載の超カッコイイ誕生会でした。お招きいただき、ありがとうございました。

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★スピーカーは、Yujinさんはじめみな今でいう起業家。Yujinさんは中学生起業家だし、スピーカーの皆さんも同じよう若い時期から起業。領域はそれぞれ別だけれど、社会課題の解決を通して世界を変えたいという点で共通。しかし、学校の探究活動と決定的に違うことは、ビジネスになっているということです。

★Yujinさんが、なにゆえに起業家精神を発揮し、現在に至るのかは、様々なメディアで取り上げられています。つい最近もソトコトで<若い世代の目線でアクションを起こす、『Sustainable Game』。>という記事で紹介されています。まだYujinさんのことを知らない方は、ぜひご覧ください。

★とにかく驚愕なのは、目の付け所が、社会課題と向き合いながら仕事は仕事というパラレル活動ではなくて、社会課題を解決するプロセスが即プロダクトになる。それゆえビジネスになるというチャレンジなのです。

【図1】

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★これは、今までのように、【図1】の近代民主主義/資本主義社会である世界Aにだけいたのでは、成し遂げられません。Aが分断してきた自然の世界Nと、近代民主主義/資本主義をデジタル化して欲望資本主義になった世界Dを、全部くっつけて、作り直す以外に成就しないでしょう。

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★したがって、Yujinさんと仲間のアントレの方々は、世界Cと世界Bにも軸足があって、世界A、世界N、世界Bを越境してつなぐポジショニングにいます。

★そして、世界A、N、Dの分断をくっつけて循環させようとしています。もちろん、困難を極めます。越境はそう簡単にうまくいきません。でも、そうせざるを得ない、行動せざるを得ないほど、心突き動かされる体験や覚醒体験をしているからこそ挑戦するわけです。

★だから、Y Dayは、それぞれの多角的な角度から対話してワクワクしていたし刺激的な様子でしたが、対話は徐々に深まり、社会課題解決ゲーム=ビジネス=未知なる世界Xを創り出すというのは、そう簡単ではないのだという淵源のところまでいきついていました。

★学習指導要領の枠内の学びをしている生徒。そして世界Cも世界Bもない閉じられた世界Aで偏差値ゲームをして勝ち組負け組の格差社会に苦悩している生徒とは違い、たしかに新しい生徒なのです。英語もデジタルもアントレも融合したハイブリッドな<E-Student>の出現です。

★Yujinさんは、しかしシェアをしないコメントをタイムラインに載せていたことがあります。探したけれどっ見当たらなかったので、時間限定だったのかもしれません。

★それは、世界A、B、Cの枠内に収まりけれない大きな世界へ今すぐに飛び立ちたいけれどできない、いつかは引き受けたいというもどかしいコンパッション・コメントでした。

★それが何を意味するのか、そしてその結果未知なる世界Xがどのように変容するのか。そこはYujinさんしかわからないでしょう。私は、偶然にもこの出会いに立ち会っているのですが、ただただ見ているだけです。どこかでつながればいいのにと思いつつ、そのタイミングを待つことにします。古い人と新しい人が、化学反応を生みだす活性化エネルギーは膨大だからです。歴史の戯れに身を任せることにします。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(33)新しい<ナチュラル市民>の出現 COVID-19から学ぶコト

昨日(7月5日)、NHKスペシャル 「タモリ×山中伸弥『人体 VS ウイルス』~驚異の免疫ネットワーク~」を見ました。シリーズ物でまだまだ続くようですが、とにかく新型コロナウイルスの謎に徹底的に迫っていました。40億年もの生命の歴史の中で、人類は、パンデミックをはじめ新たなウィルスと出会うたびに免疫システムを強化してきた。にもかかわらず新型コロナウィルスの戦略は、そのシステムを突き破って来たわけですが、山中教授は、ラグビーでいえばまだハーフタイム、前半はやられっぱなしでしたが、後半戦は巻き返せると語っていました。もっとも、隠し球があるかもしれないがとも。

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(国連広報センターのサイトにはいるとこのアンケートページがでてきます。)

★緊急事態宣言解除になり、第2波の兆しもある中で、私たちが振り返るのに役に立つ番組だなあと感じました。

1)私たちの人体や健康について改めて知ることができる。

2)免疫システムは、インターネットや組織のシステムにもメタファーとして別角度から考えるきっかけになる。

3)SDGsに集約される以上の問題について想いを巡らし、その解決策に挑戦する具体的な方法を学ぶコトができる。

4)医療関係の仕事の全体が、個人の健康問題だけではなく、他分野の専門領域との関連も含めて世界全体の広がりであることを再認識できる。

5)自然と社会と精神のつながりを人類史始まって以来初めて世界規模で市民が認識しているという事実の存在を知ることができる。

★とくに、5)が大事です。この新しい市民は、1)から4)まで認識し、問題を発見し、解決しようと意思決定している市民です。市民の歴史始まって以来の話だからです。

★市民は、社会が誕生するや生まれていますが、その歴史は、自然克服史です。その克服の過程で、支配被支配の覇権争奪戦が繰り返され、それは今も続いています。化石燃料を巡る覇権競争が、すべての分断の元であり、その解決策として協力ゲームをせざるを得ないという攻防戦です。

★しかしながら、今回の番組でタモリさんは、「奴らから学べる」コトもあるのではないかと問いを投げかけ、それがテーマになっているわけです。山中教授が、すでに人類はウィルスの戦略を学んで人体の中に取り入れている。受精のシステムはウイルスの戦略ですよと。

★二人の対話(もちろん台本があるのですからNHKの編集戦略です)を聞いていて、新型コロナウイルスから学ぶべきことは、今までのパンデミックとはやはりパラダイムが違うのだと直感しました。

★私たちは、生物圏という自然の有するエンジンに依存しているにもかかわらず、生物圏の限界を突き破ってきました。人類が自然に対してはウイルス?だったのかもしれません。しかし、今度は生物圏がその人類圏に対ししかけてきた。それで、生物圏と人間圏の壮大な協力ゲームを行わなければならないと世界規模で市民が気づいたわけです。

★古代から中世にかけての都市市民の活動は生物圏のエンジンを利用し、利用した分返さないと生物圏から逆襲があった。そのたびに克服し、結果生物圏をぶち破ることになってしまった。その際、市民は奴隷をはじめとして犠牲者を必ずつくってきた。それが階級差となって、社会市民は革命を起こし、人権をぶちたててきた。しかし、生物圏のエンジンは相も変わらず活用、いや濫用してきた。

★パンデミックは繰り返します。生物圏はことあるたびに逆襲してきました。そして社会市民は克服しますが、そのたびに格差社会を思い知り、社会組織を変更してきました。

★閉鎖的な組織から開放系になります。グローバル市民の誕生ですが、その開放系も人間圏での話です。しかし、今回は気候変動の戦略とパンデミック戦略の両方で生物圏は逆襲してきましたから、グローバル市民はいよいよ生物圏と人間圏の協力ゲームをしていかざるを得ないと気づいたわけです。すでに生物圏による気候変動の戦略によってグローバル市民は気づき始めていたのですが、まだまだ他人事でした。

★しかし、今回のパンデミック戦略は、人間圏のグローバル組織を利用する戦略でしたから、世界規模で差別なく襲いかかってきました。もはや他人事ではありません。生物圏と人間圏の協力ゲームはいかにしたら可能か?人間圏の枠を越境して生物圏のことも考える新しい市民が誕生しました。近代社会は啓蒙思想が自然状態と決別して社会状態の組織化にまい進してきたことから始まったわけですが、その自然法思想のもともと持っている自然状態と社会状態のジレンマを解決する時代がやってきたのかもしれません。

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(グーグルフォームと同様、アンケートに回答するとデータに瞬時に反映します。)

★さて、そんなことをさらに具体的に世界規模に考えるわかりやすいそれでいて深い議論ができるマテリアルが国連広報センターのサイトにあります。同サイトにはいるや、上記写真のページが出てきます。1分間でポストコロナについて考えることができるアンケートです。

★すでに多くの生徒がオンライン授業で経験しているグーグルフォームのアンケートと同じシステムです。アンケートに回答して送信ボタンを押すと、すぐに結果がデータとして反映します。自分の考えと世界の人々の考えを比較して、さて自分はどうすべきか考えられるわけです。

★そのアンケート項目や結果を見れば明らかですが、世界市民は、自分の健康、ダメージを受けている同胞を救いたいというコンパッション、気象変動の安定化への希求を有しているコトが明快に浮かび上がってきます。

★アンケートに回答する私たちは、さりげなくすでにグローバル市民です。そして、アンケートの項目をみて考えることによって、ナチュラル市民として思索し始めている段取りになっています。グローバル市民からナチュラル市民へ、自然人から自然市民へなどの国連のアンケート戦略はさすがですね。鵜呑みにはもちろんできませんが。

★学校再開後も、リアルな授業の中にオンライン授業の成果は盛り込まれていきます。ハイブリッド授業になっていきます。GIGA構想など1人1台のデバイスを持ち込む授業になっていくことが前提ですから、この国連広報センターのアンケートをマテリアルとしてハイブリッド授業として社会科や探究で行うことができるでしょう。

★そして感じるはずです。回答するときは、日本語でよいのですが、データ分析には英語が必要です。かくして、英語×PBL×ICTはナチュラル市民誕生の学びの基礎ツールだというコトになります。あっ、それから大事なことはこの学びの基礎ツールを使って深く考えるコトです。同時に魅せる表現をするコトが大事なのだというコトです。

★もっとも、この学びの基礎ツールを使えば、自然と深く考え、魅せる表現ができるようになるのですが。ドメスティックなお話ですが、脱偏差値はもうすぐそこです。

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2020年7月 4日 (土)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(32)新しい教師の出現<モチベーションとマインドセットとデータ分析スキル、そして何はなくても「思考コード」>

★生徒のモチベーションをあげるのが巧みな先生はいます。マインドセットが上手な先生もいます。しかし、データ分析スキルを巧みに活用している先生はそう今までは多くはありませんでした。

★しかし、今回のコロナ禍で、オンライン授業をした先生の中には、グーグルフォームを使いアンケートをすることで、スプレッドシートに「データ収集」をし、「データ分析」をする体験を積んでいる先生方が登場してきました。

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(品川翔英の国語科の教師は、アンケートを取りながら教師と生徒がリフレクションしていく準備を開始しました。)

★今回の学習指導要領改訂で、アクティブラーニングやリフレクション、ルーブリックというキーワードを聞かないことはないぐらいですが、肝心のリフレクションやルーブリックのデータ分析のスキルを体得していない先生が多かったので、結局は偏差値から抜け出せないでいるという状況が続いていました。

★しかし、グーグルフォームを使ってデータを収集・分析することで、そのスキルを体得する先生が増えてくると、データに基づいてモチベーションをあげたり、適切なマインドセットをできるようになるのです。

★これによって、モチベーションをあげるカリスマ教師から生徒は解法されるし、マインドセットとマウンティングの識別がつかなかった教師も生徒もデータによって解放され、生徒にとっては、ようやく主体性とか対話ができるようになるわけです。

★アンケートをつくるときに、実は「思考コード」(メタルーブリック)が必要です。収集・分析をするときに「思考コード」が必要です。

★思考コードに一つの役割に、問いの深さをカテゴライズするというコトがあります。

★アンケートがどの程度の思考の傾向を問うものであるのか。

★収集する時に、どのような思考の傾向を見えるようにデザインするのか。

★分析するのに、どのような思考のパターンが生徒の成長に反映するのかがわかります。もっとも、この場合他の条件との相関をみる必要があります。グーグルフォームの自由記述の収集をすることでそれを可能にします。もちろん心理学的なアンケートと組み合わせることもできます。

★今までは、データエビデンスを使わなかったので、生徒の思考力をどう見定めるのは、カリスマ的視点で行われ、カリスマ的な声掛けで生徒の成長スタイルを促してきたわけです。

★これを主観として排除するにしても、それが主観か客観かの識別はそもそもできなかったのです。

★しかし、これからは、この質的リサーチを先生方ができるようになっていきます。最近接発達領域とかいわれても、今までは熟練した達人教師しか見えなかったのですが、今後はそこは脱技能が起こるわけです。デフォルトが起こるわけですね。

★ようやく、教育の景色が変わります。

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2021年の入試(40)和洋九段 沸々と活性化エネルギーが生まれている

★今、和洋九段女子には<沸々と>活性化エネルギーが湧き出ています。おそらくそれは、国連や大学、自治体、農村、SDGs、企業、海外姉妹校、21世紀型教育機構など多くの組織やコミュニティと結びついてエネルギが集まってきているからでしょう。

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(写真は同校サイトから。国連女性機関のロゴは国連広報センターから。)

★そして、授業や教育活動の基本ベースがPBLなので、そのような多様なつながりがその授業や教育活動に注ぎこまれる開放系循環システムができあがっています。

★たとえば、同校サイトには、7月3日に、中込校長先生が理数探究基礎の授業を行っている記事が載っています。PBLが土台になっていることもあり、化学反応が10秒で起こる実験を設定しようというもので、生徒がチームで反応の条件設定の仮説を立てて実証実験しながら試行錯誤の検証をしていくというものだと推察されます。

★このサイトの情報には、中込先生が化学の教科書や理数探究基礎の編集陣の1人でありPBL推進者であり実践者である校長先生であるという情報がつながっています。

★どういうことかというと、今回中込先生は、新学習指導要領の教科書を編集・執筆しているわけです。すると、従来のような予定調和のモデル実験の追認で終わるような内容は載せないという大前提があります。

★極端な話どんな反応が起こるかわからない実験をしていくのがメインになります。そうはいっても、安心安全の枠組みは大事です。ここまで話せば想像がつくでしょう。編集過程は大荒れに荒れるのです。そこでどうやって合意形成に持ち込むか。これがPBLの醍醐味です。

★また、校長というのは、理事会の理事でもあります。理事会は学校経営の最高意思決定機関です。こう話すともうおわかりでしょう。心理的ストレスが想像を絶するほど高いだろうと。しかし、それは、中込先生にとっては活性化エネルギーに転換し、適性均衡の化学反応が起こればよいわけです。効果と反応の時間の熱効率計算をすればよいのです。

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(2020年2月16日、同校で行われた新中学入試セミナーで)

★もちろん、それは中込先生が校長に就任して以来、試行錯誤して合意形成化学反応組織論を構築してきたのでしょう。

★かくして、中込先生の理数探究基礎の授業は、化学の基本原理の試行錯誤による習得と同時にその原理の化学反応組織への適用を行っているのです。その効果がてき面に現れているケースは、SDGsスゴロクチームのような活動や農村活性化プロジェクトなどです。

★先述したように、この両活動には、国連、企業、団体、大学、自治体など多くのコミュニティが結合しています。

★すなわち、1時間のPBL型授業の背景にはこのような開放系循環システム、言い換えれば、学びの生態系がでできているのです。

★そして、この和洋九段女子のPBL型授業や教育活動が国連と結びつくことによって、同校の価値が凄まじいものになります。

★というのも、中込先生のコロナ禍で行われたニューノーマルな理数探究基礎が行われた日は、国連女性機関(UN WOMEN)の10歳の誕生日を迎えた翌日だったのです。世界フォーラムの「ジェンダー指数2020」によると日本は先進諸国の中で121位です。そんな中で、中込先生と生徒は果敢に女性の活用の時代を開く分厚い学びを行っていたのです。

★今回このパンデミックは悲惨な状況を展開していますが、各国の女性リーダーの意思決定と組織運営の卓越していることが度々ニュースで話題になっています。科学的データをきちんと活用した政策決定をしていると。新型コロナウィルス感染は、ある意味化学反応としてとらえることもできます。その反応の仕組みを明らかにして防止しようと医療従事者である科学者が日夜奮闘しています。そのとき、反応のための活性化エネルギ(たぶんそれで熱がでるのでしょう)とその時間推移などの条件をあてはめながら、データも収集して実験しているシーンもときどき報道されます。

★まさに中込先生の理数探究基礎のPBL授業はそこに適用されていくわけです。

★世界の科学者の女性の占める割合は、男性よりも多い国がたくさんありますが、日本はまだまだですね。和洋九段女子の生徒にはその希望がみえています。

★また、アフターコロナは、テレワークの経験によって過疎化から「開疎化」へシフトすると言われています。すでに和洋九段女子は農村活性化を自治体と大学の先生方とコラボして、提案するプロジェクトを行っていますが、今回のオンライン授業がそれをさらに活性化する可能性も大です。

★特に今年からはアントレプレナープロジェクト(起業家精神養成を目的とするようです)も実施する予定のようです。農村活性化プロジェクトとのシナジー効果も生まれるし、「開疎化」のウネリにもつながっていくでしょう。

★日本のジェンダー指数の低さは経済領域と政治領域で顕著ですが、アントレプレナーの活動は経済領域や「開疎化」という政策決定活動にも結び付きます。

★SDGsスゴロクチームなども両領域で活躍するグローバルリーダーや地球市民をたくさん輩出する可能性大です。

★和洋九段女子が今春から人気が上昇しているのは、「PBL→多様な外部コミュニティとのつながり→世界問題を解決する社会活動に直結→問題解決の言語や思考やテクノロジーの実装→未来を創る様々なリーダーとしてのキャリアデザインが描ける」という学びの生態系のシステムが可視化されてきたからでしょう。

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2020年7月 3日 (金)

2021年の入試(39)ハイブリッド時空での入試に変容するのは必至。クリエイティブ・クラスの時代が現実化。

★昨日の朝日新聞(2020年7月2日)に「筆記も面接も…入試もオンライン化 知識偏重変われるか」という記事が掲載されました。またその日、産経新聞では「東京は第2波が来たのか 経済止めたくない政府の思惑 」という記事を掲載。

★これだけ見ると、パンデミックの影響で入試オンライン化となり、もしかしたら知識偏重変わるということになりそうですが、コトはそう簡単ではなさそうです。

★パンデミックに限らず、世界リスクが身近になり、分断ニュースが流れているけれど、それだけ相互依存のグローバルな世界が拡大したというのが事の新相/真相/深層でしょう。世界フォーラムはここに一気に切り込み「ザ・グレート・リサーチ」だというわけだし、落合陽一さんも「働き方5.0」だと言っているわけです。

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★世界フォーラムは、「ザ・グレート・リセット」とは、<キャピタリズムからタレンティズム>だと言っています。COVID-19は、確かにこのコトをテーマに押し上げる大きなきかっけになっていますが、クラウス・シュワブ世界経済フォーラム会長は、このテーゼを、2013年にはすでに語り始めています。

★なによりも、落合陽一さんが「働き方5.0」の中でもキーワードとして活用している「クリエイティブ・クラス」もタレンティズムを象徴する言葉ですが、落合陽一さんは、この言葉はリチャード・フロリダ教授の造語だと説明し、それを再定義しながら使っています。

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★「ザ・グレート・リセット」という言葉自体、2010年にリチャード・フロリダ教授が著書のタイトルにしているくらいです。私が21世紀型教育機構にかかわって、2013年に同機構加盟校になるための規約の起草を手伝ったときに、「クリエイティブ・クラス」という言葉をいれさせてもらいました。また、同機構は、リベラルアーツの現代化も大事にしていますが。このリベラルアーツが「クリエイティブ・クラス」に関係するコトは、落合陽一さんも、同書で述べています。

★連綿と続いているなあと感じながらも、感慨にふけっているひまはないのです。タレンティズムやクリエイティブクラスという1人ひとりの才能を見出し、それを発揮する実装スキルをいかに身につけるかが今後重要です。

★落合陽一さんは、同書で、「オンリーワンにも、ナンバーワンにもなりなさい」と語っています。オンリーワンになったら、そのポジショニングでナンバーワンになりますから、自分の才能にこだわることは大切ですね。

★かくして、今回のパンデミックは、エポックメイキングな衝撃だったのですが、パンデミックが収束に向かったとしても、「ザ・グレート・リセット」は止まることはないでしょう。そして暗記知識偏重はなくなりますが、オンリーワンであるには、その領域やポジショニングにおいて誰にも負けない専門知識は必要だし、実は知識は経験によって創造されますから、主体的に知識を創ってもいかなくてはなりません。残念ながらこのようなことができるクリエイティブ・クラスとそうでないクラスの格差は、過渡期では生まれてしまうでしょう。

★そのような才能を見出す入学試験は、大学院であれ、大学であれ、高校であれ、中学であれ、小学校であれ、オンラインとリアルの時空のハイブリッド型になるのは必至です。

★落合陽一さんは、同書の中で、そんなクリエイティブ・クラスになれるかどうかは、自分に次の5つの問いを投げてみようと語っています。

①それによって誰が幸せになるのか。
②なぜいま、その問題なのか。なぜ先人たちはそれができなかったのか。
③過去の何を受け継いでそのアイディアに到達したのか。
④どこに行けばそれができるのか。
➄実現のためのスキルはほかの人が到達しにくいものか。

<落合陽一. 働き方50~これからの世界をつくる仲間たちへ~(小学館新書) (Kindle の位置No.1069-1072). >

★これは、それぞれ次のように置き換えることができます。

①´コントリビューション

②´クリティカルシンキング

③´コミュニケーション

④´コラボレーション

➄´クリエイティブシンキング

★の5Cです。21世紀型教育スキルとしてMicrosoftやAppleが立ち上げたそれぞれの21世紀コミュニティは、このうち①´を除く4Cでした。このパンデミックの経験を経て、コントリビューションというCが一番目に加わったのは、いよいよ強欲資本主義と決別しようというウネリでしょう。落合陽一さんだけではなく、世界フォーラムも動き出しているし、私たちの仲間も21世紀型教育を推進して動いています。

★この5Cのスキル。そして落合陽一さんの示す5つの質問は、世界の大学はすでに行ってきました。日本の入試も、中学入試における新タイプ入試では、すでに行われてきました。そういう意味では暗記知識からの解放はあるでしょう。

★先述の朝日新聞の記事では、東京都立大の「ゼミナール入試」を紹介しています。この入試を目指す<高校生らが、理学部生命科学科の講義をオンラインで受けた。同学科の「ゼミナール入試」は、6月~9月に前期・夏期・後期の約10日間の講義を受けて出願。受講成績などと、10月の面接で合否が決まる。新型コロナウイルスの影響で急きょ、前期ゼミはオンライン講義に切り替えた。夏期もオンラインにする可能性がある。同じ入試をしている地理環境学科もオンライン講義で始めた。担当者は「10月の面接などは今のところ対面で行う予定。ただ、第2波などがきたらどうするか。面接ならオンラインでもできるかと検討している」と話す>とあります。

★このように、面接や講義はオンラインで、実習や実験などはリアルな時空で、第2波が来たら、オンラインで実習などの代替をというコンビネーション、リスクまジメント、つまりハイブリッド型入試になるのは必然で、この入試がいかにタレンティズムのウネリにシンクロするかは説明するまでもないでしょう。

★もっと端的な形態は、すでにミネルバ大学がオンライン入試を最初からやってきました。それにミネルバ大学は、アクティブラーニングはオンラインで、フィールドワークはもちろんリアル時空でとハイブリッド講義です。

★教育の「ザ・グレート・リセット」の象徴的な大学です。ミネルバ大学のような形式は以前は異彩を放って受けとめられましたが、オンライン授業やテレワークが進むいまここでは、ニューノーマルとして受け入れられるでしょう。

★この「ニューノーマル」という言葉も、リチャード・フロリダが「ザ・グレート・リセット」という本の中で章立ててで語っています。クリエイティブ・クラスの時代がいよいよ現実的になってきました。その人材を生みだす教育の入口として、入試はハイブリッド型入試になっていくでしょう。大学や学校も、そのほうが世界の才能者と結びつくことができるからです。

★才能者あるいはクリエイティ・クラスの潜在的才能者とのマッチングシステムがAIによってより進みます。トークン化やコード化はその流れを促進します。そういう意味でもオンラインと結びつくハイブリッド型入試はますます拡大・促進するでしょう。

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2020年7月 2日 (木)

2021年の入試(38)八雲学園 経産省の未来の教室を超える時代の最先端の要請に応える

★6月11日に、八雲学園の先生方とOGといっしょにZoomミーティングをしました。飛び飛びですが、4回にわたってそのときの様子をご紹介してきました。今回はその小括です。はやいものであれから7月に入りました。多くの学校も分散登校から学校再開へと進んでいます。一方で本日も東京都では感染者は107名。しかしながら、都知事選の真っ最中です。COVID-19の感染ダメージより、経済ダメージ回復に力点が置かれ何やら危険な雰囲気です。米国をはじめ、世界も同じような流れになっています。自衛しかないわけですが、興味深いコトに当日の対話の中ではこのコトもすでに先生方は織り込み済みでした。そして、もちろん、これではいけないのであって、それを乗り越えるための未来をどうするかの話にも当然なったのです。

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★6月3日、日本経済新聞は、世界経済フォーラム(WEF)が3日、2021年1月に開催する年次総会(ダボス会議)のテーマを「グレート・リセット」にすると発表したことについて、WEFを創設したクラウス・シュワブ会長にインタビューした記事を載せています。なぜ今なのか?「世界的な新型コロナウイルスの感染が広がるなか、資本主義を軸とする既存の体制には不備も目立つ」今だからこそなのだと。

★つまり、「ザ・グレート・リセット」を痛烈に世界同時的にあらゆる国の人が実感している、当世風の言説でいえば「自分事」になっているからなのでしょう。

★当然、ダボス会議のテーマに関してはウェルカムの精神で関心をもち、来春のキーワードである「タレンティズム(才能主義)」は、八雲学園の望むところだと菅原先生は語ります。

★国や組織の権威を借りてエゴワールド全開な現代社会に右顧左眄せず、生徒1人ひとりがグローバルリーダーとして、それぞれの才能を開花し、発揮していくことをモットーとして教育活動をしている八雲学園らいしい反応でした。

★日経新聞の中で、シュワブ会長はこう語っています。

「資本主義という表現はもはや適切ではない。金融緩和でマネーがあふれ、資本の意味は薄れた。いまや成功を導くのはイノベーションを起こす起業家精神や才能で、むしろ『才能主義(Talentism)』と呼びたい」

「コロナ危機のなか、多くの国で医療体制の不備が露呈した。経済発展ばかりを重視するのではなく、医療や教育といった社会サービスを充実させなければならない。自由市場を基盤にしつつも、社会サービスを充実させた『社会的市場経済(Social market economy)』が必要になる。政府にもESG(環境・社会・企業統治)の重視が求められる」 

★この言葉は、おそらく八雲学園を訪れたダライ・ラマも共感するだろうし、八雲学園の近藤理事長・校長のいつも語っている言葉と重なります。

★今、私立中高一貫校の中には、この話の中にある金融マネー調達が巧い新しい学校、新自由市場主義の学校、一方でそれに背を向けているマインドフルネス優占の学校などが人気を集める傾向もあります。

★その多くは経産省の未来の教室の企画に便乗しています。それはそれで閉塞状況を破る一つの方法論ですから、私もあってよいと思いますが、私の価値観とは違います。

★そして、八雲学園の先生もそういう学校とはソーシャルディスタンス(笑)を巧みにとっています。まず与しません。ということは、八雲学園は経産省にも与しないというとです。文科省にもソーシャルディスタンスをとってきましたし、今後もとるでしょう。

★しかし、孤立主義ではないのです。ドメスティックグローバリバタリアン(造語です;)とは適切な距離を置くということです。ですから、ラウンドスクエアやダボス会議のようなグローバルリーダーが集まる国際会議とは協力し合うということです。

★エッ!ダボス会議に八雲が?いやいや将来そうなるということです。というのは、ダボス会議に集まっているグローバルリーダの多くはラウンドスクエア加盟校出身者がたくさんいるはずです。というよりも、近藤隆平先生は、「IB創設にもかかわったラウンドスクエア創設者クルト・ハーンの想いと価値意識はグローバルリーダーたちの精神とシンクロする普遍的精神で、八雲学園の精神とも重なります。日本の教育全体もこういう大きな精神を寛容に受け入れる必要があるでしょう」と。

★横山先生は、「八雲学園のグローバル教育の目指すものはそこです。だから、いわゆる日本の大学受験英語しか興味のない人にはその価値をなかなか理解してもらえないのです。しかし、諦めずに広報します」と。

★菅原先生は、「だから、私たちの広報活動は八雲学園の教育の理解を通して、世界のグローバルリーダーの本当に意味や役割を市場で共有していただきたいという野望もあるのです」と感動的なメッセージが発せられたのです。

★そして、OGである豆塚先生とボッサムさんは「私たちにとては、在校生時代もそしていまも、当たり前のコトだと思っていた価値が、実はそんな得難い話の流れの中にあったなんて改めて感動です」と、卒業した後もなおサプライズを巻き起こす学園であるとコメントしていました。

★近藤隆平先生は「八雲は、帰国生を特別扱いしない本当の理由は、もう3年経つとわかると思います。もちろん、英語の取り出し授業はしますが、グローバルリーダーの精神をもった授業や教育活動にあふれる学校になります。ラウンドスクエアの加盟校と同様の雰囲気に全学年全クラスがなります。他の学校では、帰国生のためのクラスを編成しているところもあるでしょうが、八雲は、学校全体がそのようなクラスの雰囲気を満たします」と。まるで近藤理事長・校長が語っているかと錯覚するような断固たる決意がそこにはありました。

★八雲のような学校が日本全体の20%を占めないと、日本の教育は実は変わらないのです。これがパレートの法則です。日本全体が変わる希望は、ダボス会議の「ザ・グレート・リセット」のインパクトが日本にどれくらい響くかにかかっています。

★そうなればよいですが、ならないとき子供たちの才能はどこが開花することを保守するのでしょうか?どうやら、本物を見通す学校選択は極めて重要な時代がやってきました。

【関連記事】

2021年の入試(25)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語④

2021年の入試(15)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語③

2021年の入試(11)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語②

2021年の入試(09)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語①

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2020年7月 1日 (水)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(31)6月のアクセスランキングから見えるコト。

★6月は緊急事態宣言が解除され、段階的にニューノーマルな生活が進みました。第2波の兆しも見えたり、海外の分断の動きもあり、パンデミックのもたらしている社会不安は相当なものがあります。ニューノーマルとは、日々のノー3密時空での生活であると同時に、世界を巻き込む社会不安にどう自分はかかわるのかを考えざるを得ない生活でもあると実感しています。

2006

★そんな中、ホンマノオト21の6月のアクセスランキングはどうだったでしょう。ベスト50をご紹介します。

1:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して
2:ポスト・コロナショック時代の私立学校(128)品川翔英 突出した未来の学校のモデルづくりの挑戦着々。
3:ポスト・コロナショック時代の私立学校(102)横浜創英 オンラインスクールの進化速度が加速するわけ。
4:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
5:2021年の入試(10)武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英、工学院大学附属中の動きに注目!
6:2020年春の大学合格実績(3)鴎友学園女子
7:ポスト・コロナショック時代の私立学校(119)アサンプション国際小学校 ノー3密空間はニュートンの創造的休暇PBL!
8:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
9:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(23)本格的なPBLの時代 突き抜ける人類としての自分へ①
10:2021年の入試(31)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ④聖学院・品川翔英・工学院
11:2021年の入試(05)開成&武蔵のオンライン授業の成績の付け方は、オンライン中学入試のモデル?
12:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(26)工学院の田中歩先生の未来質感のすばらしさ!
13:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。
14:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任
15:2021年中学入試を読み解く準備(10)立教女学院の人気の理由 骨太の教...
16:2021年の入試(21)オンライン説明会浸透で、保護者の情報収集の仕方は...
17:2021年の入試(20)工学院のオンライン高校説明会 キャリア・共デザイ...
18:2021年の入試(07)八雲学園の俊敏かつ緻密な動き パンデミックを乗り...
19:ポスト・コロナショック時代の私立学校(120)ノートルダム女学院 分散登...
20:2021年の入試(17)2021年の中学入試はどうなるか?ハイブリッドで...
21:ポスト・コロナショック時代の私立学校(125)聖学院の伊藤豊先生の本来的...
22:2021年の入試(12)聖学院インパクト 突出したオンライン説明会×オン...
23:ポストコロナの授業<02>工学院 新しい経験を経て変容する授業の追究 グ...
24:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(24)本格的なPBLの時代 突...
25:2021年の入試(06)新しい保護者 ナチュラルシチズンとして学校や教育...
26:2021年の入試(23)オンライン説明会浸透で、保護者の問いの深さへの意...
27:2021年の入試(16)新渡戸文化のハイブリッド型学習の価値 グレート・...
28:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(25)工学院の教師とZoom対...
29:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
30:2021年の入試(08)2021年入試は、桐蔭学園中等教育学校の教育の総...
31:2021年の入試(32)聖学院インパクトいよいよ始まります!
32:2021年の入試(27)昭和学院 オンライン入試実施発表 入試市場におけ...
33:2021年中学入試を読み解く準備(11)武蔵野大学中高の迅速な対応 オン...
34:2021年の入試(28)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」...
35:2021年の入試(24)オンライン説明会浸透で、保護者は教師と生徒のかか...
36:2021年の入試(19)聖学院のオンライン思考力セミナー テクノロジーと...
37:2021年の入試(11)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシ...
38:ポスト・コロナショック時代の私立学校(109)聖パウロ学園 戦略的コミュ...
39:2021年の入試(33)品川翔英 ポストコロナ時代に必要とされる教師の学...
40:2021年の入試(09)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシ...
41:ポスト・コロナショック時代の私立学校(127)ノートルダム学院小学校 新...
42:2021年の入試(18)2021年の中学入試の準備の場を、子どもが自ら未...
43:2021年の入試(22)オンライン説明会浸透で、保護者の情報分析視点は変...
44:ポスト・コロナショック時代の私立学校(118)ノートルダム女学院 Web...
45:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
46:ポスト・コロナショック時代の私立学校(126)ノートルダム学院小学校 新...
47:2020東京大学合格発表の季節(2)海城・西大和の躍進は序列を崩すか?私...
48:2021年の入試(05)思考コード~自分の才能に気づき突き抜ける自分を見...
49:ポスト・コロナショック時代の私立学校(123)和洋九段女子 良質のハイブ...
50:ポスト・コロナショック時代の私立学校(89)吉祥女子の遠隔授業の意味: ...

★解除されると、やはり中学入試のことが一気に気になり始めているという傾向がでてきました。ランキング1位の記事に代表されるように従来型の学校選択情報の記事が、ベスト10位の40%を占めているところからもわかります。

★そんな中で、5位の記事のように、武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英、工学院のようなオンライン授業という先鋭的な教育イノベーションを行っている学校情報にもアクセスが多いですね。聖学院、八雲学園、和洋九段女子、ノートルダム女学院などの記事のアクセスが多いのもそういうわけでしょう。

★そんな中でアサンプション国際小学校の記事が7位というのは、興味深いです。おそらく、ニューノーマルの学校生活の中で、新しいPBLに挑戦するアイデアについて同校の先生方とZoom対話をしたことへの関心の高さでしょう。

★それから、9位の記事のように、学校情報というより、ポストコロナと教育の関係のような今後の仮説を述べた記事にもアクセスが多いというのは、驚きでした。ホンマノオト21をご覧いただいている方々の見識の高さを改めて知り、今一度気を引き締めて臨まなくてはと感じ入りました。

★さらに、この歴史的に重要な時期に、21世紀私学人である田中歩先生の記事が12位に入ってきているのは、素直に嬉しいです。2014年ころからずっと教育イノベーションについて語り合い、授業をいっしょにリサーチしながら、PBL授業や思考コード、研修、共感的コミュニケーションなどを創ってきました。もちろん、主語は田中歩先生で、私はサポーターにすぎませんが。

★かくして、2020年6月は、教育における現実と理想の間をつなぐにはいかにしたら可能か?現実とは?理想とは?そもそもいかなるものなのか?などについて、多くの方々と考える時間を共有できたのだと思います。ありがとうございます。そして、今後もよろしくお願いいたします。

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