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2020年6月18日 (木)

2021年の入試(16)新渡戸文化のハイブリッド型学習の価値 グレート・リセット後の世界の教育の新しい意味がある。

★新型コロナウィルス感染防止の緊急事態宣言が解け、学校再開の段取りになった今、新渡戸文化の行っているハイブリッド型学習(リアルな授業とオンライン学習を結び付けた学習)の本当の価値が映し出されてくるはずです。今のところは、オンライン授業のやり方や学びを止めなかったとか大人100人とオンラインでつながるどこでもドア授業を行っているとかが注目されていますが、学内の先生方は、そこからさらに奥行きのある教育を考えているはずです。

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★多くのメディアが注目しているのは、同校の山本崇雄先生(新渡戸文化中学校統括校長補佐)の知(鋭い知性・豊かな感性・しなやかな精神身体性の塊のことを意味します)と行動力でしょう。山本先生の周りには多くのすてきな仲間が集結しています。私が尊敬しているリベラルアーツ型体育教育を実践している小林先生までもそのメンバーなぐらいです。

★また、山本先生は、「未来教育ナイト」をオンラインで開催して、「全ての世代のパートナーシップ」としての教育コミュニティを形成している最中です。その拠点が新渡戸文化や横浜創英なのかもしれません。

★先日は、木村泰子さん、工藤勇一さんと鼎談を行ったようです。コロナ禍、after/withコロナ時代、あるいはポストコロナ時代にあって、「学校はどこへ向かうべきか」、「全ての世代のパートナーシップ」としての教師や教育について大いに対話が盛り上がったようです。

★20名以上の中高生と保護者も参加するかなりオープンで世代越境型のオンラインイベントになったようです。全国から約300名の教員、教員以外の大人が集まったというぼですから、そのインパクトはすさまじいですね。おそらく、3人の先生方の共通点は、生徒が主語で、生徒が自律的に行動できる環境こそが明日の学校であり、未来の学校であり、来たるべきグレートリセットの世界だという信念でしょう。

★そのように山本先生自身が行動することが、生徒をはじめ多くの人びとをハピネスクリエーターの世界へ結びつける架け橋だというのでしょう。新渡戸文化の建学の精神は、もちろん新渡戸稲造の精神です。新渡戸は日本と世界の架け橋になろうとしました。山本先生は、前近代社会から近代社会にシフトしたときに新渡戸稲造に課せられた架け橋の精神を、近代社会からようやくグレートリセット社会にシフトするときに課せられた1人ひとりの精神を互いに結びつけるハピネスブリッジへと現代化しているのでしょう。

★建学の精神は継承しなければなりませんが、それは時代精神に応じて普遍と変容の対話をしていくことが大切です。それを山本先生は学内の仲間と学外の仲間と行っているのです。そうそう、学内も学外もそんな壁はオンラインによって越境したというのがすばらしいところで、メディアは、ここにグレートリセット後の新しい学校や教育の可能性に気づいているのでしょう。

★そして、私が感じるのは、ポストコロナにおいても続ける新渡戸文化のハイブリッド学習に、もう一つの可能性を感じています。オンライン学習で明らかになったのは、GAFA自身が語っているし、台湾のデジタル大臣も語っていますが、テクノロジーやエンジニアリングにはリベラルアーツがベースになければねということです。

★今回テレワークやオンライン社会に突入したとき、同時にセキュリティ問題が発生しました。新型コロナウィルスは新手のコンピューターウィルスの攻撃も生みました。このような世界リスクマンジメントはテクノロジーや科学の力は絶対的に必要ですが、それよりも前に人間とは何か?人間の幸せとは何か?それを実現するためにはどうするのか?といった教養が必要だということにGAFAのような巨大グローバル企業も気づいているのですね。それでマインドフルネスとかリベラルアーツとかガーデニングとかいろいろな言葉で、そこを表現しているわけです。

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★さて、このリベラルアーツですが、実は「雄弁術」「記憶術(暗記術ではありません)」「対話術」というのが内包されています。新渡戸文化は、山本先生と仲間の先生方がオンラインで大人と対話する”Happiness Bridge”を開催しています。もう4回実施しています。参加した大人は100人を超えているでしょう。私も縁あって2回目に参加できました。

★ブレイクアウトルームで大人1人に生徒2,3人という対話になります。大人の方は生徒の雄弁かつ柔らかいプレゼンテーションに耳を傾け、もう少し詳しく知りたいなあと思うところを尋ねていきます。共感的対話の雰囲気が溢れています。

★雄弁術と対話術がちゃんとここには存在しているのですね。そして、生徒は、Zoomのブレイクアウトルームという箱庭で、世界を象徴的に形成していきます。アリストテレスの記憶術「トポス(場)」は、空間をデザインすることによってシンボライズや記号を設定していくことによって、脳内に世界のマップが広がります。その互いの思い出という記憶がどれくらいインパクトがあるかによってその世界への共感は広まっていくのです。

★そのブレイクアウトルームで広がった記憶がどんどん共有されて拡大していけば、ハピネスワールドは現れるわけですね。

★かくして、新渡戸文化で行っているオンライン学習やこれからのハイブリッド学習には、オンラインというテクノロジーにリベラルアーツが結びついた、今までの日本の教育では可視化されてこなかったリベラルアーツ(なかったわけではないのです。河合隼雄さんや中村雄二郎さんの影響力が教師に広まていたということは潜在的にはあったのです)が出現します。いやいや出現していますが、ともあれ、そのリベラルアーツも伝統的な教養主義的なものではなく、生徒が自律する知のアイテムとして実装されるかなりプラグマティックなものです。

★そして、この自律の過程は、GAFAが欲するZENのマインドフルネス境地の道行である十牛図の過程さながらです。生徒と大人のブレイクアウトルームの対話は、いきなり十番目の境地から出発しているのですから、これもまた新しいカタチの自律のプロセスの発見でしょう。

★この世界は中村雄二郎さんや河合隼雄さんによってユング的な世界や臨床的な知ともハピネスブリッジされています。新渡戸文化のハピネスブリッジはそのような世界をブレイクアウトルームというトポス(場)に結びつけています。それはミヒャエル・エンデが「モモ」という美しくもチャレンジングなストーリーで展開した世界でもありましょう。

★ダボス会議のテーマ「グレート・リセット」のキーワードは「タレンティズム(才能主義)」です。もちろん、世界の超富豪コミュニティが考えることですから、タレンティズムを利益につなげる方向に活用するでしょう。しかし、それは同時にハピネスクリエイターも生み出すトポス(場)の出現の兆しでもあります。

★新渡戸文化や横浜創英をはじめ、山本先生と仲間がかかわっている学校にこの世界が拡大することを期待しています。私も別路線ではありますが、新しい世界が拡大するもう一つのトポスを創っている最中です。それは以前手伝っていた21世紀型教育コミュニティとはまた別です。

★こうして、人間存在の幸せをつくる多様なコミュニティが生まれ、やがてどこかで対話しながら自律分散協働系のハピネス世界が広がっていけるようにワクワクしながらかかわっていきたいと思っています。あくまで、小さき野の菫のごとくですが。

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