2021年の入試(20)工学院のオンライン高校説明会 キャリア・共デザインの仕掛けをダイレクトに発信。
★昨日(6月20日)、工学院大学附属高校のオンライン説明会が開催されました。中学校などの説明会はすでに何度か開催されていましたが、高校は第1回目ではなかったでしょうか。平方校長と島田副校長によるスピーチ、田中歩教務主任と在校生3人による対話というプログラムでした。中学の説明会とはまた違うおもしろさがあり、驚きました。
★まず平方校長の話が、中学の学校説明会とは違っていました。内容的にはもちろん変わらないのですが、中学生対象のためか、彼らがデジタルネイティブでありパンデミックを体験したZ世代であるという観点から、彼ら自身の未来への位置づけをしっかり確認しました。そして、今回のような予測不能な事態に直面しても、自分で自分の人生を切り開き、多くの人を巻き込みながら新しい社会を創っていけるスキルを身につけるようにエールを送りました。
★そのために、テクノロジー、エンジニアリングはもちろんこと、世界で活躍するネットワークにつながることができるように英語教育の充実ぶりについても語りました。そして、PBL授業によって論理的・批判的・創造的に思考できるスキルを身につける環境をつくって待っているとメッセージを送りました。
★いまここでオンライン授業などあまり経験していない中学生は、<目が覚めるような経験>ができることに希望をもったでしょう。
★副校長の島田先生は、校長のビジョンがどのようなカリキュラム、コース、施設で実現されているかをわかりやすく語り、医学部や海外大学など進路実績の伸長について語りました。工学院大学の先進的な工学や建築学についても語りました。アフターコロナは、医療にしてもノー3密空間都市生活にしてもテクノロジー、エンジニアリングの分野が重視されていきます。
★インターナショナル系だけではなく、アフターコロナ時代の理工系にも強い工学院の学習環境について語りました。工学院に入学する生徒は、入学段階で、進路について相当考えています。期待通りであり、かつそれ以上に何かがあると期待を抱いたことでしょう。
★そして、ここまでの「希望」と「期待」の説明会が、一気呵成に工学院で「実現」できると衝撃に変わったのは、次のプログラムでした。高校の教務主任田中歩先生とテレワークでつながった3人の在校生の対話が始まったのです。4人にとっては、いつものオンライン授業の延長線上だったでしょうが、オンライン説明会のライブ感の面目躍如とはこのことです。
★文理先進、サイエンス、インターとそれぞれから在校生が1人ずつ登場しました。
★そこで行われた<対話>は実に共感的コミュニケーションの雰囲気がただよっていて、いい感じだし、こういう教師と生徒のかかわりやコミュニケーションがあるから、それぞれのコースで自分の生き方を見つけ、そこに向かって高いモチベーションをもって立ち臨んでいけるのだということがダイレクトに参加者に響いたでしょう。
★3人は、「進路発見」「自分が変わる」「体験程得難いものはない」「自分から動くことの大切さを身に染みて理解した」「工学院は絶対に楽しいし自分を見つけられる」など多くの名キーワード・フレーズをどんどん編み出していきました。
★Mog体験や米国体験、編集企画体験などそれぞれのお気に入りの写真を一枚Zoomで共有しながら語っていました。
★田中歩先生の対話は、実にナラティブで、3人の小さな物語に耳を傾け、どこで変化したのか聴きながら、3人がそれぞれの人生を語りだしていける状態を生み出すキャリアカウンセラーやプロジェクトのファシリテーターのように対話していきました。
★在校生も用意されたシナリオではなく、自分のシナリオプランニングを対話の中でさらに明らかにしていく自然な対話をしていました。
★そして、そのそれぞれの物語が、工学院物語になるような上昇気流がそこには生まれていました。
★この1人ひとりの物語とそれが工学院物語になるという思考と行動のシステムは、共感的コミュニケーションがあるから生まれてきます。
★もし抑圧的コミュニケーションがベースの学校であるならば、個々のマイクロストーリーは追いやられ、学校のストーリーが押し付けられます。そして、それに反発してマイクロストーリーがはじけます。
★そういう学校の同じような説明会では、ちゃんとそれが見えてしまいます。
★ところが、工学院は、個人と集団の自律分散協働系のシステムが生成されています。
★グローカルなマーケティングの学びをして社会に出たときに、海外の舞台で活躍した時に、編集の世界に入っていったときに、個人と世界の葛藤をどうするかは、永遠の課題として壁となって迫ってきます。
★あらゆる社会課題の根本には、個人と世界の葛藤解決はいかにしたら可能かが横たわっています。キャリアデザインの方法論はいろいろありますが、葛藤を乗り越えて互いの人生を共にデザインしていける思考と行動こそが、最も重要です。
★それは、このパンデミックをはじめとする世界の社会課題をみれば、いかに格差と分断が手に負えない関門であるか一目瞭然です。今回の在校生に代表される工学院の生徒は、その葛藤を乗り越えるスキルを豊かで多様な経験の中で、教師との共感的コミュニケーションを通して、身につけていくのでしょう。
★田中歩先生と3人の在校生の対話は、そのロールモデルでした。危機のときこそ柔らかい対話ができる関係をいっしょに創っていけることこそハッピーなことはないでしょう。オンライン説明会の醍醐味は、教師と生徒とのこのような対話シーンにあるとしみじみ感じ入りました。
★オンライン説明会がを行うか行わないかは、実は技術的な問題ではなく、このような日常の共感的コミュニケーションを表現できるかどうかにかかっています。一方通行的に情報を伝える抑圧的コミュニケーションベースの学校は、まずオンライン学校説明会は、いろいろやらない理由を見つけて、実行しないでしょう。オンライン学校説明会をやり続ける工学院は、それができるからこそ自然とできてしまうのです。
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