ポストコロナの授業<01>聖パウロ学園 新しいPBLへ
★今回の新型コロナウィルス感染防止のための一斉休校において、聖パウロ学園は対面双方型オンライン授業に転じたわけですが、そのような体験を経た教師も生徒も、何かが変わりました。学校再開後のニューノーマルな学校生活において、聖パウロ学園のPBL授業のスタイルも変容したのです。
★高3の化学の吉留先生のクラスは、化学反応式にいたるまでのプロセス循環をひもといていくことで、化学式上はとりあえず丸暗記をするだけでよさそうなものも、実はそうではないというクリティカルシンキングを発動しています。このトークの中で、吉留先生は、オンラオン授業でYutuber絶品授業で人気だったのですが、そのトーンが変わらないまままの生Youtuberさながらで、テンションがあがりまくりです。もちろん生徒の思考の回転も速く、反応もよかったですね。
★高3理系クラスの数学の様子を覗きましたが、有理数と無理数の違いを説明する京大の入試問題について対話していたりしていて、なんだか数学的な哲学思考の雰囲気がいっぱいありました。オンライン授業で、最終的には数学は対話なのだと松本先生は気づいたと語っていましたが、完全チュータリング的な授業になっていました。
★英語の授業も、ICTを活用しながら、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングなど丁寧に授業が展開していました。要するに4技能の徹底的なトレーニングです。ここのところ英検2級合格者が増えているのもうなづけます。
★高1の国語は、小島綾子先生の論説文の授業でした。文章の構造と細部の関係を思考スキルを活用して読解し、それでモデルをつくったうえで、違うテーマで自分の文章を編集するという授業でした。思考スキルとタキソノミーが織り込まれた授業です。PBLとは最終的にはあるいはコアは、自分の考えを編集・創造し、その社会的インパクトを生み出せるかというプロジェクトづくりです。ノー3密で闊達なディスカッションはできませんが、そんなときは静かに自己沈潜し、プレゼンし、フィードバックを互いにしあえっていけばよいわけだということでしょう。
★PBLの形態にこだわらず、本質とは何かに立ち還った授業になっていました。
★小島崇先生の高2の国語は、分散登校期間中に創った小論文の相互評価のPBLです。グループワークなのですが、極めて静かです。まるで筆談をしているかのようです。それもそのはずです。互いに小論文を読み、フィードバックをするのですが、5人のメンバーがいたとしたら、グルグル回しながら、フィードバックを書き込んでいきます。静かなのですが、確実に複数の目からみたフィードバックを集められるわけです。
★それにフィードバックという評価をする際にルーブリックをきちんと共有しているというところはさすがでした。
★高橋先生の高3の古典の授業は、文章をいったん絵に変換して、ストーリーをプレゼンしていくという文章と絵の置換スキルをベースに展開していきました。盛り上がったことは想像に難くないでしょう。
★伊藤先生の高2の数学は、具体的な経験を通して、一般化していく数学的思考のトレーニングを行っていました。極めて迂遠な作業だと生徒は思いながら行っていくのですが、一般化したとたん、ショートカットというシンプルな公式がでてくるのです。このパラドクスの感覚は、数学ならではの醍醐味ですが、この数学的思考が、実は今後の企画をつくったり、プログラミングをしたりするときに大切な視点や観点になるのだといいます。
★理系の生徒が聖パウロは少ないのですが、文系の生徒も将来数学的技能はあまり使わないかもしれませんが、ポストコロナは、数学的思考は極めて重要になってくるというのです。つまり、文系における数学は、もしかしたら数学的思考の社会実装というプラグマティックな問題なのかもしれないと感じました。
★数学と国語の授業が、ルーブリックと思考スキルという考え方に力点をおいた授業展開になっていたわけです。
★小島綾子先生は、「生徒が自ら考えていくには、自ら学び方を体得することが重要です。与えらてた素材については理解しているが、新しい素材を自分なりに理解し、それをきっかけに自分の考えを生み出し編集していくには、学び方のスキルを学ぶ必要があります。今回の新型コロナウィルスに生徒と一緒に直面した時、それを実感したのです」と。
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