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2020年6月26日 (金)

2021年の入試(27)昭和学院 オンライン入試実施発表 入試市場における意味

★2021年中学入試において、昭和学院は、算数一科目入試でオンライン入試を実施すると発表しています。日能研の井上修氏(進学レーダー編集長)がいち早く情報を発信していましたから、首都圏の中学入試市場で同校がオンライン入試実施を決断したファーストペンギンでしょう。

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(写真は、同校サイトから)

★今春の同校の中学入試の総応募者数は800人を超え、前年対比155%ですから、大ブレイクしているといえます。教師力と生徒の自立と部活と進路実績の基礎力をベースに、ソサイエティ5.0の推進力の1つであるICTなどの革新的な技術も十分に駆使しています。

★今回の一斉休校、時差・分散登校においても、リアルな授業とオンライン授業(オンディマンド×対面双方向型)のハイブリッドを展開していました。この経験はさらに同校の教育イノベーションのレベルを一気呵成にアップしたでしょう。

★昭和学院ばかりでなく、多くの私立中高一貫校はなんらかの形でオンライン授業を展開しています。パンデミックはしばらく続くというか共生していかざるを得ないというのは、パンデミック史を多くの見識者がひもといて語っているところです。

★したがって、第2波第3波に備えるためにも、今回のオンライン授業の成果やリソースを学校再開後も生かしていきたいと多くの学校で模索されています。その一つの攻略が「オンライン入試」なのでしょう。

★当然、昭和学院の後に続く学校も多くなるでしょう。中学入試市場が活性化するわけです。今回のパンデミックは、歴史的にも明らかなように、経済的ダメージは大きいので、中学入試市場にもそのネガティブな影響はあるはずです。しかし、一方でコロナバブルもあり、テレワーク事業関連の企業は活性化していますし、受験産業の中にもフェースシールドを学校に販売して利益をあげているところもあるぐらいですから、中学入試市場というニッチな領域では、金融市場のコロナバブルがポジティブかどうか判断は簡単ではないですが、相殺される可能性があります。

★そのうえで、市場にオンライン授業とかオンライン説明会とかオンライン入試という経済活動を活性化する教育イノベーションが起きているということは私学経営上わるくないし、学校にとってステークホルダーである受験産業にとっても重要なウネリです。

★今回の私立中学入試の市場の変わり目の歴史において、オンライン授業をいちはやく行った静岡聖光学院、オンライン学校説明会をいち早く実施した聖学院、オンライン入試を最初に決断した昭和学院は折に触れ語られていくでしょう。

★そしてこのような各学校の動きと同時に大事なことは、中学入試市場そのものの変容です。すでに4科目入試中心の偏差値ベースの市場は、20%シェアになっています。ここのみを頑なに保守している大手塾があるわけです。

★残りの80%は、2科4科入試と新タイプ入試のミックス市場です。この新タイプ入試と4科目入試の両方を射程に入れているのが3模試と言われている中学受験産業です。ただ、その中で新タイプ入試に力点を置いている組織は1つ、そうはいっても4科に軸足を置いている組織が1つ、両方の戦略的バランスをとっている組織が1つということになるでしょう。

★つまり、つい3か月前までは、新タイプ入試の中学入試市場におけるシェアは20%くらいだったのです。残りの20%は4科入試オンリーのシェアで、60%は、4科目入試がやはりベースで、バランスをどの程度にするかは違いますが、新タイプ入試もカバーするというシェアでした。

★ですから、新タイプ入試は80%の市場からは、謎の入試と言われていたのでした。偏差値で測れないじゃんと。

★ところが、コロナ禍以降は、4科目入試オンリーの市場20%を除いて、80%は、新タイプ入試をある程度受け入れざるを得ない状態が生まれてきました。市場というのは、大義名分で動いているわけではなく、歴史の欲する駆動力の影響を受けます。

★コロナ禍以前は、新タイプ入試は歴史が有する数ある駆動力の1つの体現でしたが、コラナ禍以降は、オンライン関連教育や入試は大きな駆動力のg体現になります。私立学校の良質の教育という伝統と技能面の革新性は相反するのではなく親和性がありますから、その技能面の革新性のウネリが歴史の胎動の中で大きなものであれば、なおさらです。

★そして、市場は合理性の狡知でもあります。隙あらば、共創は競争という自然淘汰に転じます。入試問題は学校の顔だから、私学の良質の教育=4科入試だという常識が覆されることもあります。

★もちろん、覆されない場合もあります。しかし、4科入試の中身の質は変わらざるを得ないでしょう。したがって、中学入試市場はかなり葛藤や混迷が巻き起こる可能性があります。そこから、どんなベクトルが顕れてくるのでしょう。

★2021年中学入試市場は、このベクトルを巡って大いに議論が盛り上がるでしょう。そして盛り上がれば、盛り上がるほど市場は活性化します。しかも、この市場は教育市場ではめずらしくグロバールな広がりをもっています。より予想不能な因子があるわけです。なぜなら、オンラインはグローバルな広がりを吸収しやういのです。

★オンラインという技能面ばかりに気をとられていると、グローバルなネットワークリソースをゲットする機会を損失します。結局、英語力と議論ができる思考力が重要だということになります。革新と伝統は切っても切り離せないわけですね。もちろん、ここでいう伝統は普遍的な世界精神のことを示唆するはずですが、ここもまた、異論・反論・オブジェクションありですね(笑)。

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