2021年の入試(23)オンライン説明会浸透で、保護者の問いの深さへの意識が覚醒する
★オンライン学校説明会が浸透してくると、それがオンディマンド型(動画Web配信型:非同期)であれ、対面オンライン型(同期)であれ、比較がしやすくなるという話はすでに「2021年入試(21)」でしました。
★この比較によって、自分の価値意識やポジショニングに適合する学校選択のマッチングがしやすくなるということについては、「2021年の入試(22)」で話しました。
★今回は、オンライン説明会の比較をすると、その学校がどのような問いを大切にしているのか違いがわかるという話をしましょう。上記のような東大文Ⅰの問いは、帰国生対象の問いです。一般国内生対象の問いは、記述の問題があるにしても、ここまで論述しないし、正解があるものばかりです。
★記述の問題であっても、知識がなければ書けない問題ばかりです。プレコロナ時代は、思考力は大事だが、知識がなければ思考はできないという馬鹿げた話をしてきたわけです。この文Ⅰの問題にあるように、専門家しか考えることができず、普通の市民は彼らから情報を供給されるばかりだったという愚かしい文脈で語られてきたのです。
★ところが、ポストコロナ時代は、そのことが意識され、ダボス会の来年のテーマは「ザ・グレートリセット」です。そんな馬鹿げた話はリセットされてしまうのです。もちろん、このような知識ありきではなく、経験の中から、対話の中から、知識を発見し共有し考えるということは普通の市民にも大事なんだと考える先進的な学校は以前からありましたが、圧倒的に少数派でした。
★それが、ポストコロナ後は、世界同時的に、SNSで情報を得るわけです。しかも、パンデミックはインフォデミックも爆発させますから、騙されないようにと批判的思考を身につけるように国も自治体も情報を流しています。
★一方で、経済的ダメージは多大で、なんとか抜け出ようと創造的思考を働かせる起業家や企業人のニュースもメディアが頻繁に報道しています。
★なんといっても、パンデミックは経済的ダメージを引き起こしつつも、株式市場にお金が流れるコロナバブルも引き起こすというパラドクスを生み出しています。
★保護者は、このパラドクスの真っ只中にいます。上記の東大文Ⅰの帰国生対象の入試のように、パラドクスという知恵の輪をどう解くのか、経験の中から新たに発見したことに基づきながら考えていく正解のない問いに直面しています。
★それゆえ、このような深く考える問いを授業の中で大切にしている学校は、子供の未来をカタチづくるうえで重要拠点だと判断するようになります。東大にたくさんいれていても、国内の一般入試で合格している場合、このような深い問いは普段はトレーニングしません。では、開成はトレーニングしないのか?いやしています。それはどこでわかるかというと、海外大学の合格者が2013年からどんどんでているというところからわかります。
★がしかし、それが海外大学に進学する生徒だけがトレーニングをうけているのか全員がうけているのかはわかりにくいですね。麻布のように中学入試の問題からすでに深い問いを出題しているところは、わかりやすいですが、4科目入試で麻布のような問題を出題をする学校は、あまりありません。
★ですから、かつては問いの重要性はあまり気にされなかったのです。
★ところが、正解のない問いに直面している保護者は、問いの深さの大切に気づいていますから、オンライン説明会で、比較する時にどうしてもそこが気になるわけです。
★批判的思考のトレーニングもパンデミックの中で覚醒していますから、オンディマンド説明会で、おっ!この学校は深いい問題を大切にしているなあとすぐにピンときます。しかし、同時に、実態はどうなのか?ともすぐに思うわけです。
★だから、オンディマンドではなく、対面オンライン説明会を視聴したくなるわけです。
★なぜなら、対面オンライン説明会はライブ感があります。生徒が登場します。オンディマンドより情報が豊かなわけです。もちろん、オンディマンドと同じ情報量しかなければ、その学校は論外ということになるでしょう。だったらオンディマンドでやってよと保護者はすぐに思うからです。
★この感覚は学校側にももちろんあります。ですから対面オンライン学校説明会を行う学校はそれなりの準備をしているし、自信もあるし、現状売り上げを気にするメディアも取り挙げてくれないような本来的な大切な情報を発信するものです。
★ですから、秋には対面オンライン説明会が増えてくることは間違いないでしょう。そなれば、メディアもようやく動き出します。
★対面オンライン説明会を行わないところは、伝統主義的学校です。対面オンライン説明会を行う学校はプラグマティックか理想主義かどちらかですが、理想主義の学校は、自らの学校がAIを駆使できない限り、自己矛盾をきたすので、みていてうまくいかないことはすぐに了解できるはずです。
★ですから、対面オンライン学校説明を、あたかもユーチューバーのようにワクワク、情熱的で、クールにやってのける学校はプラグマティズムが浸透していると判断できると思います。
★そして、この対面オンライン説明会のテクノロジー実装は、学校を進歩主義的にどんどん変えていきます。結果的に中学入試市場は活性化し、教育のイノベーションは盛り上がるでしょう。社会は教育によって変わります。ダボス会議の「ザ・グレートリセット」というシナリオとシンクロすることにならざるを得ないのでしょう。
★さて、対面オンディマンドで生徒が登場してきたときに、見るべきポイントについて私なりの考えを次回話し、共有したいと思います。そして、このポイントについて保護者の方々がそれぞれ自分の考えを持つことが、子供たちの未来に希望を灯すことになります。
★だって、保護者のニーズにこたえようとするのがプラグマティックな学校です。偏差値主義的な視点で学校を選んでいる限り、学校は変わりません。社会は変わりません。自分の人生はしたがって変わりません。すると予測不能なパラドクスに対応できません。学校選択のアップデートが子どもだけではなく、私たちのライフデザインも良好なシナリオにしていくことになるのです。(つづく)
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