ポスト・コロナショック時代の私立学校(126)ノートルダム学院小学校 新しい日常の学校のモデルを形成①
★6月1日から、ノートルダム学院小学校も、分散登校が始まっています。そして、休校以来、毎日のように同校サイトにアップされているオンライン授業の様子は今も継続しています。このサイトはとても貴重です。というのも、分散登校によるノー3密時空における思考型授業のありかたと同時並行でなされているオンライン思考型授業の様子が克明に記録されているからです。
★このリアルな授業、しかもノー3密空間の思考型授業なのですが、それとオンライン思考型授業のハイブリッドな試みは、世界共通して未知の体験であり、情報共有が望まれています。そういう要請にきちんと応える貢献活動という奉仕も同校はしていることになるからです。もちろん、同校の在校生と保護者の学びの権利と命を守ることが日常の目的で、このような発信は学内で安心安全の雰囲気を創るのに第一に貢献するでしょう。
★さらに、教育学や組織マネジメントの成果としても注目されるべき発信でもあります。なぜなら、このような緊急時に俊敏かつ柔軟にハイブリッド思考授業を行えるのは、<学習する組織>でなければうまくいかないからです。硬直したピラミッド型組織だったり、現場の1人ひとりの教師に判断をゆだねていたのでは、うまくいかないのは、今回の感染拡大防止策をとった世界のリーダーの力量の違いをみても明らかですね。
★<学習する組織>は、ピーター・センゲ教授の組織開発理論ですが、センゲ教授は、あのドネラ・メドウス教授の親友です。ドネラ教授は「もし世界が100人の村だったら」の発案者です。書籍化される前に亡くなったので、池田香代子さんとC・ダグラス・ラミスさんが遺志を継いだのです。センゲ教授はこの書の背景にある「システム思考」をドネラ教授と共有していました。
★さて、ピーター・センゲ教授によると、<学習する組織>は、次の5つの要素が相互に関係してできあがります。
1)ビジョン共有
2)チームワーク
3)システム思考
4)メンタルモデル
5)自己マスタリー
★ノートルダム学院小学校は、原山校長のもと聖書の言葉であり国連も尊重している<men for others>という黄金律を共有しています。人類愛とか隣人愛と置き換えてもいいでしょう。ビジョン共有を大切にしています。
★また、毎日のハイブリッド思考型授業の発信をみると、多くの場合「学年一同」という署名がはいっています。実際授業前の打ち合わせや授業のリフレクションでワイガヤは当たり前で、チームワークを大切にしている学校ですね。
★また、オンライン授業で明らかなことは、デバイスやアプリ、プラットフォームはシステム思考で出来上がっています。したがって、これを活用して、効果を出せるということは、「思考システム」の潜在的能力がもともと高かったということが証明されたわけです。
★カトリックの学校ですが、教師や生徒・保護者は全員が信者でもないし、信者であったとしても、ものの見方・感じ方は多様です。そのフィルターともいうべきメンタルモデルを1人ひとりが持っています。そのフィルターを尊重して、合意形成していくことができるのは、なかなか難しいですね。しかし、ノートルダ学院小学校は、互いのメンタルモデルを尊重して、ビジョンを実現するための最適解を対話によって見つけていきます。だからこそ柔軟かつ俊敏に動けるのです。
★そして、自己マスタリーと言って、仕事以外で、先生方が自己研鑽するために本を読んだり、セミナーに参加したり、自分の授業を教育コミュニティで発表したりするわけです。そして、その情報をまた学内で互いに共有するわけです。今回同校の梅下先生の理科のオンライン思考型授業がロイロノートスクールという有名な教育プラットフォーム「ロイロオンライン」で発表されたものが公開されていました。次回はその記事を見ていきたいと思います。
★かくして、学校の新しい日常生活を形成するときに、学習する組織として動くということが1つのポイントかもしれないと気づいたのです。
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