« ポスト・コロナショック時代の私立学校(125)聖学院の伊藤豊先生の本来的存在への回帰、この時だからこそ。 | トップページ | ポスト・コロナショック時代の私立学校(126)ノートルダム学院小学校 新しい日常の学校のモデルを形成① »

2020年6月 9日 (火)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(28)コンパクトな思考スキルは、プラグマティックなリベラルアーツ

★この3か月、オンラインPBL授業について多くの先生方と語り合い、そして今、分散登校になり、ノー3密時空でのPBL授業をどうするかという対話が始まっています。

Photo_20200609010901

★要するに、ノー3密でグループワークや対話はどうするのという現実的な問題が横たわっているわけです。PBLについて、この3か月間で、

1)従来のリアルな時空でのPBL

2)オンライン時空でのPBL

3)ノー3密時空でのPBL

の3つの時空それぞれの在り方をどうするのかデザインする事態に直面したのです。一遍五3つの時空のPBLを考える事態が来るとは思ってもいませんでした。

★そのことが結果的に、従来のリアルなPBLで、その土台としてリベラルアーツの現代化と哲学とSTEAMといっていたことが、いっぺんに凝集してしまったというのは、なんとも驚きです。

★IT業界でも最近は、リベラルアーツやマインドフルネス、庭園発想が必要だなんてよく耳にします。しかし、実際のところそれがなんであるかはあまり明らかになっていません。

★私は、様々な学説を追うアプローチではなく、それをコンパクトに<Thinking Skills System>として、少しずつ生徒や先生方と共有しています。これは、実は思考コードのエンジンです。思考コードはコンパスで、行方を探索する自在に書き換えられるマップでもありますが、道行がわかったところで、その道を歩いていく時にどんなエンジンを創るのかという話なのです。

★経験(リアルな与えられた経験と自らが生み出す経験の両方を含みます)から学んで知識を格納したり想起したりするには、思考スキルが必要です。これは、アリストテレスのトピカ(トポス)という論理学の1つの柱ですが、そこで展開されていることです。それをコンパクトにまとめたものです。もちろん、アリストテレスをそのまま抽出したのではありません。この流れを汲むレトリック論など様々な領域からですが、それらのルーツはアリストテレスのトピカです。

★論理的に文章を読んだり書いたりするのは、この思考のエンジンを、思考コードのB軸領域で使います。アリストテレスの「範疇論」「命題論」「分析論」で描かれている部分だし、現代論理学や言語技術のパラグフライティングなどに進化しているものですね。それらをさらにコンパクトにしています。

Thinking-skills-system

★プレゼンをするときには、聴き手を自分の世界に巻き込まなくてはなりません。魅せる表現が必要です。聴き手の想像力を喚起し、共鳴共振共感的なコミュニケーションが大事です。これは、思考のエンジンである<Thinking Skills System>を、思考コードのC軸で活用します。知識・理解のA軸は、格納・想起のサイクルを回しながらB軸でもC軸でもフル回転です。A軸を暗記格納で終わらせてきた20世紀型教育では、B軸思考やC軸思考を難しくしてきたのです。しかし、暗記から格納・想起の<Thinking Skills System>に転換することによって、思考の広さと深さを手に入れることができます。

★ともかく、この領域はアリストテレスが「弁論術」という書で描いています。ディベートや法廷弁論術へと進化していきますが、それをコンパクトにしたものが<Thinking Skills System >です。

★これは、実はロイロ・ノートのシンキングツールやチャートというカタチデでも、開発されていて、<Thinking Skills System>とも親和性があります。ロイロのツールは多くの学校ですでに使われています。まさかそれがアリストテレスに結びついていると意識はされていないでしょうが、それでよいのです。大事なことは、実装です。

★また、首都圏模試センターの模擬試験の解説解答には、思考コードと思考スキルの表記が、一問一答に記載されています。これもまた<Thinking Skills System >と親和性があります。こちらは、生徒への共有が広がっています。やはり、まさかアリストテレスにつながっているなどとは意識はされていません。それでよいのです。大事なことは実装です。

★アリストテレスの「範疇論」「命題論」「分析論」「トピカ」「弁証術」は、自由七科のリベラルアーツのうちの「文法学」「論理学」「修辞学」の3つに相当します。他に「幾何学」「算術学」がありますが、これについても勿論アリストテレスは論いていますが、もはやこの部分は現代数学を参考にするしかないので、そこはSTEAMのMに任せます。

★それからリベラルアーツには「体育」と「音楽」があります。今回のオンライン化によって、ずいぶんこの部分の重要性が浮き彫りになりました。オンラインでストレッチや歌つなぎ、ダンスつなぎ、リモートコンサートやパフォーマンスが爆発していましたね。

★これもリベラルアーツの現代化の流れだったのです。これも保健体育と音楽家にお任せなのですが、数学や保健体育、音楽の理論を考える時に、実は<Thinking Skills System>を活用できます。

★数学は究極は置換操作と変容操作です。保健体育は身体感覚や身体と心の関係を結びますから、やはりその関係はこの<Thinking Skills System>を神経インパルス循環やホルモン分泌・循環、血液生成・循環などを分析したり総合したりするときに使えます。

★かくして、ポストコロナは、顕在化したリベラルアーツを新しい日常の生活の中で実装することがポイントだということが見えてきたわけです。だとしても、今更すべての人がプラトンやアリストテレス、デカルト、ニュートン、Bach、カント、ヘーゲル、ハイデガー、フッサールなど読めるはずもありません。そういう意味では倫理や現代社会や宗教などの教科は実に重要です。

★しかしながら、宇宙船船地球号の市民がリベラルアーツを実装するには、それらもすべてくし刺しする対話の一貫システムが必要です。ここはデビッド・ボームの発想に私は共鳴しています。しかし、ボームはこの実装システムを明らかにはしていないんですね。暗黙知のバリエーションで、実装部分は示唆的な感じで終わっています。

★そこに行くと、物理学や数学、哲学に造詣の深いネルソン・グッドマンの「世界制作の方法」は実装方法を明示しています。がしかし、コンパクト過ぎてもう少しヒントが欲しいかなと。

★麻布の国語や社会の入試問題、東大の帰国生入試、イギリスのクリティカルシンキングテスト、AO入試、小論文の対策ワークショップをやりながら、片方で宿泊探究PBLプログラムを先生方とデザインしながら、日能研の教科コードや首都圏模試の思考コードを作成するメンバーだったりしながら、思考力入試の開発を先生方と楽しみながら、大学でIBエッセンスを学生と取り出しながら授業デザインをするPBL授業やレポートのアセスメントを創りながら、最近ではZOOMで世界制作茶室を催してPBL授業の達人の先生方と話しながら、あるいはZoomでPBL授業研修をしながら、抽出されていったのが、リベラルアーツの現代化実装版の<Thinkig Skills System>です。

★すでに幾人かの先生方と共有しはじめました。また小学生対象の思考力講座言語編でも共有しています。

★従来のリアルな時空でのPBLでも、オンラインPBL授業でも、ノー3密時空でのリベラルアーツでも、要は生徒が主体的に自律して深く考え、社会課題を解決する創造性を引き受けるコンパッションが実装されればよいと私は考えています。

★その実装場としてそれぞれのPBLの授業がデザインされればよいわけで、そのデザインの中の数あるアクティビティの中にディスカッションとかペアワークがあるだけです。それぞれの時空に適したアクティビティを選択して組み合わせればよいのだと思っています。

★大事なことは、<Thinking Skills System >と<思考コード>を自在に組み合わせるリベラルアーツの現代化の実装ができることがコアなのです。別の言い方をすると、「世界制作の方法の実装」です。

★もちろん、このアイデアは一つのアイデアにすぎません。いろいろなアイデアがあってよいと思います。どれを選択し、組み合わせ、新たに独自のアイデアを創っていくのかは私事の自己決定だし、それこそ創造的思考の面目躍如でしょう。

★ただ、確認したかったのは、このポストコロナ時代の動きが、実はすでに声高に言わなくてもリベラルアーツの現代化とその実装がICTによって加速しているという現象が生まれているということなのです。ここに新しい才能主義という宇宙船地球号としての市民社会の未来があると予想しています。

|

« ポスト・コロナショック時代の私立学校(125)聖学院の伊藤豊先生の本来的存在への回帰、この時だからこそ。 | トップページ | ポスト・コロナショック時代の私立学校(126)ノートルダム学院小学校 新しい日常の学校のモデルを形成① »

創造的破壊」カテゴリの記事