ポスト・コロナショック時代の私立学校(127)ノートルダム学院小学校 新しい日常の学校のモデルを形成②
★学習する組織が、閉じられた組織でないためには、外部のネットワークを結ばなければならないのですが、ただ有名な方を招いて講演会を催すだけでは学習する組織にはなりにくいのです。その組織のメンバーが1人ひとり自分の探究活動の一環として外部のセミナーなどに参加してネットワークを築き、本なども読んだりして、それを自分なりに言語化したものを組織内に共有していく。そのうえで、外部の講師などを招くのは問題ないのですが、まずは自己研鑽という自己マスタリーが優先します。
★ノートルダム学院小学校でもそういう自己マスタリーと学内共有ができています。情報共有も、ただレポートをシェアするだけではなく、日々の授業のデザインの段階やリフレクションのミーティングでシェアしていていると推測します。というのも、同校のサイトといまからご紹介する梅下先生の外部での発表内容がシンクロしている部分があるからです。
★さて、ノートルダム学院小学校では、ロイロノートを活用している先生は多いです。したがって、その実践家として、ロイロノートの教育プラットフォームで発表される先生もいます。今回そのプラットフォームのセミナーなどで発表されている梅下先生の記事を見ることができましたので、ご紹介します。
★Zoomとロイロノートを使ったオンラインによる思考型の理科の授業のプログラムの発表でした。最初の導入の部分からさりげないけれど、オンラインならではの配慮がされています。
★ふだんのリアルな授業だと、生徒は先生がどんなツールを使うのか、そのツールを自分たちはどう使うロールを果たすのかなど全貌が見えます。しかし、オンラインの場合、それがないので、ただ「何」を学ぶかだけでは、学びが能動的になりません。
★そこで、梅下先生は「今日のメッセージマップ」と称して、生徒がどんなツールを使って、ロールをしていけばよいのかアクティブな行動をとることになるマインドセットをします。ただし、ロードマップのように細かくは示しません。あくまで、メッセージで、マップは自分でイメージしてくださいということです。常に自分の仮説を立てて、動きながら考えて軌道修正していくという学びのパターンは、梅下先生の大切にするところです。
★そして、前回の課題の共有ですが、大事なことは問いも自分たちでつくるということです。この共有には、ふだんからロイロノートを活用しています。この共有は、ロイロノートは便利ですね。一望で共有できるシステムになっています。
★問いを共有したら、ブレイクアウトルームで3人1組で対話します。3人1組だとほどよくロールが自然とわかれます。シックスハットまでいかなくても、調整役、ある主張をする生徒役、それに反対する生徒役という感じになります。まさにダイアローグを仕掛けています。この場合のダイアローグとはテーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼという議論がぐるぐるまわる西洋哲学で使われる対話(日本語で弁証法と訳されていますね)のことです。
★こうして、生徒は、問いに対する推理を自分たちなりにします。推理ですから、自分のアイデアというトピクセンテンスとその根拠となる理由、それから具体的な説明や反例などを書き込んでいきます。ここには、具体と抽象スキル、理由と結果のスキル、比較のスキルなど多様な思考スキルを複合して創れるようにカテゴリー表やその他のシンキングツールやチャート(これもロイロノートには備えられています)を活用していきます。
★この推理と思考スキルの複合はリベラルアーツの自由七科ののうち3つの領域である「文法学」「論理学」「修辞学」をコンパクトに現代化したもので、可視化しているところが生徒には取り組みやすくなっています。
★最後にルーブリックで生徒はセルフリフレクションをしていきます。このモニタリングこそ、総括的評価、形成的評価の次の第3の評価と言われているメタ認知能力を活用して自分の学び方をブラッシュアップするモニタリング評価です。
★さりげないけれど、リベラルアーツの現代化とメタ認知評価、ディスカッションや対話、問いの作成など欧米のエスタブリッシュスクールや国際バカロレアのPYPなどにも通じる豊かな思考型授業だということが了解できます。
★大胆かつ繊細な視点は、学内で丁寧な対話が行われていて、そこでの気づきを梅下先生は巧みにアレンジして盛り込んでいるのでしょう。
★自己マスタリーの行為が、シェアされ学習する組織がさらにシナジー効果を生み出していると言えましょう。素晴らしい取り組みです。ノートルダム学院小学校には、梅下先生のような教師がたくさんいます。何度か複数の先生方と勉強会をやったことがありますが、強烈にそれを確信しました。
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