2021年の入試(18)2021年の中学入試の準備の場を、子どもが自ら未来を創る機会にする。
★GLICC主宰の鈴木裕之代表は、要求値が高い(笑)。GLICCは、帰国生のための中学入試や高校入試、大学入試がベースだから、そこで講義をしたりワークショップをする際、レベルはイギリスのAレベルテストやIB(国際バカロレア)のレベルを要求してくるんです(汗)。ここで学ぶ生徒は80%が、海外にいて昔からオンライン授業です。だからオフィスはこじんまりしています。
★しかし、帰国してしばらく経つ小学生や英語入試を念頭においている生徒もいて、彼らは通ってきます。ここ2カ月はオンライン授業でしたが、動画やプロジェクター、絵を描いたり図式したりというのは、リアルでもオンラインでも変わりはありませんでした。
★ただ、オンラインの方が素材を鮮明に共有できるので、その点はやりやすかったですね。リアルな授業(ほとんどワークショップといったほうがよいのですが)の方が、たとえば言葉と絵の変換のズレを体験するパフォーマンスゲームなどはさすがに盛り上がりますね。
★鈴木さんは、中学入試の国語でもクリエイティブな要素を求めてくるし、ランゲージアーツやリベラルアーツなどの手法を要求してきます(笑)。実際鈴木さん自身も、IBjapaneseのインストラクターとしてオンラインで海外の生徒を指導しています。海外の口コミネットワークでは、評判が高いですね。一般の日本の教育機関では知られていないエスタブリッシュな時空です。
★だから、いつもクリエイティブコースのアップデートについて対話をしていて、そのたびに可視化していくわけです。CANVASというGLICC独自のプラットフォームを活用しながら、生徒と同様に、Zoomやリアルな対話でやっているわけですが、プラッとフォームに私のテキストも生徒のレポートも痕跡が残るので、議論もしやすいわけです。
★かくして小学生から高校生まで幅広く対話するクリエイティブコースを時間のあるときに私もサポートさせていただいているわけですが、最近思うのは、中学入試の形態がどうあれ、結局やることは「精神生態系」を生徒が自ら提案でき、「創作」活動ができるようになればよいのだということです。
★ポストコロナ時代は、「精神生態系」という自然と社会と精神の循環の探究が重要です。それは医療従事者であっても、都市工学者であっても、政治経済学者であっても、法律家であっても、起業家であっても、SDGsをなんとかしようとしている人であっても、みなで構築しなければならない<世界>です。
★麻布や武蔵、慶応大学湘南藤沢の4科目入試、聖学院や工学院、かえつ有明の思考力入試、東大の帰国生入試、東大や京大の推薦型の入試、早稲田の政経の総合型入試などは、この<世界>を自ら提案できるかどうかの才能を試すことができます。
★一方、そのような社会構想力を豊かにしていくいくには、文学という修辞学は欠かせません。この領域はイマジネーションやモノの見方を覆す発想を養います。ただ読んでいるだけでは足りなくて、自らも創作するわけです。フェリスや雙葉の中学入試問題はそこまで求めているし、名称が変わるかつてのAO入試では、自分とは何かはある意味文学的な素養が必要になります。もちろんノンフィクションでなければならないのですが、共感を得る魅せる表現とそれが導く魂の物語です。
★だから、小学校4年生や5年生であろうと、高校生であろうと、文章を読解して終わりということはありません。作者が書く仕掛けそのものを思考スキルでリフレクションするし、それによって、作者の「元型」とか「プロトタイプ」の構造を見出していきます。その「元型」や「プロトタイプ」あるいは「理論」を今度は他の文章に「適用」するわけです。
★入試準備のためのテキストの中には、河合隼雄さんや中沢けいさんの作品はよく扱われると思います。私は一般のテキストは使わないのですが、2000年前後に入試問題で頻出の作品は、一般の参考書では扱われやすいはずです。
★たとえば、河合隼雄さんの文章を生徒と読むと、深層構造や無意識、箱庭療法の都市工学への応用などの考え方を学んでいきます。その考え方を中沢けいさんの文章を読んだ後のリフレクションで適用していくわけです。そして、文学の創作の仕掛けの片鱗に気づいたら、その仕掛けをつかって、創作もしていきます。
★鈴木さんは、かえつ有明の思考力を学ぶKSSという外部団体による講座もサポートしていますが、基本そこも同じで、私もときどきテキスト作成でお手伝いします。
★ともあれ、そうやって「適用」していくのですが、それができないときはブラッシュアップしていくわけです。いずれにしても、こうしてある作者の文章から、その文章の内容とその内容の背景にある作者の理論的考え方(これは論理的文章でも物語でもどちらにもあります。なければ作者は文章を書けないでしょう。もちろん、ないという作者もいるでしょうが、今のところそのような前衛的な作者の文章は素材として使っていません。)を抽出していきます。
★小学校4年生、5年生は、もちろんすぐにはいきませんから、かなり順を追っていきます。かつて麻布の生徒と2時間くらいワークショップをやったときは、彼らはやはり自分たちの考え方の理論の仮説を構築してくれました。それはあっという間でした。そして、与えられたデータを、その自分たちが構築した理論で分析していき、互いにプレゼンし、理論の最適化をはかるというプログラムだったのですが、彼らはそういう思考様式はやはり得意でしたね。
★麻布の中学入試問題を通して小学校のときからトレーニングをしてきたということもあるでしょう。
★しかし、それは麻布特有の話ではなく、世界ではそういう学びをベースにしています。たしかに、日本では麻布特有の話ですが、今ここで話しているプログラムの在り方は、カナダでは幼稚園から小学校3年生までの話だし、IB(国際バカロレア)では、PYPの中にしっかりありますね。
★したがって、首都圏の中学入試における新タイプ入試の意義というのは、たんなる読解力で終わるのではなく、思考スキルや思考の構造を自ら組み立てられるかに挑戦しているわけですが、本来2科4科でもできるはずなのです。
★ところが、2科4科の入試は、麻布や武蔵とは違い、多くが知識暗記の力を測るテストになっているのです。そこが問題ですね。知識は暗記するのはなく、トポスという記憶術の話で、リベラルアーツの一部です。現代では、そこでは海馬と前頭前野の反応の話ですから、極めて重要なのですが、知識暗記となってしまっては、脳科学の領域を広げることができません。
★ポストコロナの時代にあって、その頑迷固陋な知識暗記主義の牙城を崩す動きがでてくるでしょう。それは新しいスタイルの入試だけではなく、2科4科テストの内側からも変化が出てくると思います。
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