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2020年6月24日 (水)

2021年の入試(26)聖パウロ学園 Myプロジェクト×Ourプロジェクト×Worldプロジェクトが意味を豊かに生成する。

★聖パウロ学園の公式facebookにはこうあります。

「今週は、第1回小論文コンクールが実施されています。
全校生徒が「コロナウィルス」をテーマに小論文を書きます。
分散登校期間中にオンライン授業やレポートで、様々な角度からコロナウィルスについて考えてきました。600字〜800字で筋道立ててわかりやすく表現することはなかなか難しいけれど、制限時間内になんとかまとめようと必死です。
完成作品は、ルーブリックとコメントで相互評価をします。
「クラスメイトが読む」と知った瞬間、少し緊張とやる気がみなぎった1年生の教室でした。」

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(望月先生の「パンデミック史」のキーノートスピーチ。雄弁に情熱的にそして世界の痛みを引き受ける名オンライン講義。)

★さりげなく、「小論文コンクール」が行われていると書かれていますが、その背景には壮大なプロジェクトが横たわっています。分散登校にはいったところで、立ち寄りましたが、ノー3密を保ちながらも、直接対面できることの重要性を教師も生徒もかみしめていました。

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★また、授業によっては、あるいは単元によっては、教師の唇の動きが生徒に見えないと成り立たないものもあります。

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★その場合は、先生方はマスクではなく、フェースシールドに付け替えていました。オンライン授業でも、ノー3密空間でも、さまざまな創意工夫が生まれているのです。

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★さて、「分散登校期間中にオンライン授業やレポートで、様々な角度からコロナウィルスについて考えてきました。600字〜800字で筋道立ててわかりやすく表現することはなかなか難しいけれど、制限時間内になんとかまとめようと必死です。」とあります。私が立ち寄ったときに、望月先生の「パンデミック史」の熱弁オンライン講義を拝見したのですが、それが「様々な角度からコロナウィルスについて考える」というイベントの1つだったわけです。

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(望月先生の魅せるプレゼンテーションをモデルにして、探究で生徒も自らのプレゼンテーションに挑戦するということです。雄弁に情熱的に愛を持って!)

★分散登校によるリアルな授業の隣の教室で、望月先生は独り2台の画面の向こうの多くの生徒にむかって雄弁に「パンデミック史」のパースペクティブの構成の仕方を紐解いていました。ニューノーマルな学校生活は、リアルあり、オンラインあり、マスクあり、フェースフィールドあり多様なピースがあふれています。

★一つ一つのピースをはめこんで、全貌をイメージしたかったので、Zoomで小島綾子先生(国語科教諭:主幹)と望月先生(社会科教諭:広報部長)とミーティングをしました。

★すると、壮大なプロジェクトが聖パウロ学園で動いていることがわかりました。分散登校の授業では、ノー3密を維持するためにディスカッションや対話を組み込むことは、以前ほどたやすくはありません。グーグルクラスルームなどをつかって、見た目は講義形式ですが、サイバー上は教師と生徒そして生徒どうしの考え方がシェアできるようにしているということです。

★ディスカッションや対話は、多角的に思考したり友人の感じ方を受け入れたりするのに大事な行為です。違いをどう理解するかで、自分とは何者かのヒントが見えてきます。

★一方、分散登校で自宅で学習している生徒は、たんに学習課題を1人ひとり行うだけではなく、「パンデミック」といういまここで共通体験をし、同時に連綿と続く歴史体験をしている事態について、そこで自分は何を考え何を行うのか考える自分を見つめる時間にもしたというのです。

★聖パウロ学園はPBL型授業を行っていますが、一回一回の授業というより、いろいろな機会をつなぐ壮大なプランになっているのだということが了解できました。ある意味、本格的なプロジェクトです。

★と思っていたら、自分を見つめるプロジェクトが、実はOurプロジェクトでもあったのです。「完成作品は、ルーブリックとコメントで相互評価をします。「クラスメイトが読む」と知った瞬間、少し緊張とやる気がみなぎった1年生の教室でした。」と記述されているところがそれを示唆しています。

★小島綾子先生は、「今回の新型コロナウイルスの事態では、社会科、国語科、英語科、理科など多くの教科が1つのテーマについて生徒に語り掛けることができました。その中で、感動的だったのは保健体育科の先生方の役割でした。教科学習ももちろん大事ですが、メンタル面や社会性、身体性の持続可能性をどうするかは、やはりダンスやストレッチをオンラインで行うことがいかに重要であるか気づきました。そして、なんといっても教師も生徒も一人では生きていけないとはこういうことを身に染みてわかったことは意味がありました。その意味を今小論文コンクールのプログラムで体現しておこうと思ったのです」と。

★望月先生は、「自分を見つめ、友人同士と相互承認して勇気をもって前に進んで欲しいし、その際、壮大な歴史のエンジンや駆動力の構造や仕組みを見出せたなら、誰かが造った世界に便乗したり振り回されたりするのではなく、自分で世界を創って生きていけるし、歴史のエンジンの繰り返される欠陥もわかりますから、そこを仲間と修正していけます。幸せな世界を創って欲しいわけです。そんな思いでパンデミック史の歴史的構造を語りました」と。

★教科書をきちんと学ぶ授業と教科横断型の授業と教科書を超えて世界を創る機会が1つにつながった瞬間でした。

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(写真は同校公式facebookから)

★小島先生によると、聖パウロ学園では、茶道や華道も全員が体験するといいます。望月先生によると、茶道のお点前は、実はカトリックのミサで神父がパンとワインを共有する時の様式に似ているし、華道の世界は天地人という三位一体ですから、諸説ありですが、欧米と日本の文化の出会いがそこにはあります。歴史はこうして世界を生み出しています。グローバルな世界は、人類史そのもので、今はじまったのではないのですと。

★かくして、聖パウロ学園の教育は、一つひとつの教育活動の背景に意味がきちんとあるわけです。教科横断型とは、知識のパッチワークではなく、背景にある意味の生成が共有されていることだと気づかされました。

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