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2020年6月

2020年6月30日 (火)

2021年の入試(37)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ⑧工学院の俊敏力!

★もともとこのシリーズを書こうと思ったのは、工学院の教務主任田中歩先生と<首都圏模試センターの「おうちdeしゅともし」の特設ページ>を見ながら、Zoom対話をしたからですが、先週の金曜というか土曜の夜中だったのに、あれから田中先生は動きました。俊敏力に感服です。

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★この特設サイトには、もともと工学院はオンライン学校説明会とオンライン個別相談会の告知しかしていなかったのです。オンラインPBLの授業の成果として、LIVE感を表現できるテクノロジーやスキルに自信があるからだと私は思っていました。

★しかし、田中歩先生は、でも、そうであるならば、今までの説明会の録画を同時にぶら下げてもらってもよいのではと。両方比較できれば、LIVE感がより際立つということでしょう。

★広報部長の水川先生と対話して、そうすることにしたということです。

★工学院という組織が柔軟なのでしょう。それに、やはり田中歩先生の共感的コミュニケーションが竜巻を生み出すのでしょうね。嵐を呼ぶ男って昔あったような(相当昔の話ですね。汗:)。。。ともあれ、LIVEのハードルはあがった、いやあげたわけですね♪

★そして、首都圏模試センターも即対応とは!この神対応の動きは、もはやたんなる仕事ではないですね。新しいウネリを生もうという意志の共鳴共感共振のなせる業です。すごいなあ。

★しかも、広報部長の水川先生は、録画したLIVE動画を、さらに見やすくアレンジまでしているというのですから。

★一度オンライン説明会で見た映像ですが、再度見ました。すると、また気づきがあるものだと実感。

★やはり、LIVE配信とその動画の再生の公開は重要だと改めて思いました。

「校長挨拶」→こちらから

「英語教育」→こちらから

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2020年6月29日 (月)

2021年の入試(36)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ⑦カリタス女子・工学院・東京電機

首都圏模試センターの「おうちdeしゅともし」の特設ページを見ていて、いつもならまず気づかないようなことにハッとします。実に興味深いですね。たとえば、カリタスと工学院と東京電機をグルーピングして語るということは、今までなら思いも寄らなかったでしょう。

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★カリタスは、首都模試のイベントでは、オンライン学校説明会とオンライン個別相談のLIVE配信のみをします。実は工学院もそうなのです。

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★東京電機にいたっては、オンライン説明会のみをLIVE配信します。

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★いずれにしても、オンライン説明会のLIVEを実施するというのは、それをやらない学校に比べて結構チャレンジングです。というのも、実施してみて、オンディマンドのWeb配信動画と変わらないパフォーマンスだと、だったらYoutubeでいいじゃないか。時間的に拘束するのはやめえて欲しいとなります。

★ライブ感があって視聴してよかったという一回性の希少価値に満足してもらえるかどうか賭けでもあるからです。

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(写真はカリタス女子の公式facebookから)

★しかし、考えてみれば、この3校は、一斉休暇中、会議システムでオンライン授業を徹底して行ってきた学校です。オンライン授業でライブ感を生み出すのは慣れているということでしょう。

★それに、そういえば、3校とも理数系に力が入っている学校でした。カリタス女子は、女子校なのでともするとグローバルかどうかに目が行きがちですが、理数教育が実に豊かだったのを思い出しました。そこで、同校サイトを開いてみると、理数系のオンライン授業の様子が頻繁に発信されていました。やはり、そうなのだと。

★もちろん、カリタス女子は、理数系教育もグローバル教育もバランスよく行っています。しかし、他の女子校に比べて理数系の力量があるように見えてしまいます。

★実際、神奈川県の中で、オンライン授業に真っ先に着手し、徹底して実施した学校と言えば、カリタス女子となるでしょう。

★理数系ベースの発想で、一回性の一期一会をパフォーマンスできる力がある学校は、おそらくオンライン説明会をLIVEで発信できる高いアドバンテージがあるのかもしれません。

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2021年の入試(35)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ⑥八雲・かえつ有明・晃華学園

首都圏模試センターの「おうちdeしゅともし」の特設ページは、106校の学校の説明会を眺めることができて、本当に便利です。気づきも多いです。凄い時代になりましたね。

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★さて、八雲学園とかえつ有明は、オンライン個別相談会はLIVEで行いますが、説明会はオンディマンドでWeb配信です。

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★両校は、まったく文化の違う学校ですが、広報に関しては同じ感覚なのかもしれません。オンラインのツールとしての優れた点は、双方向の対話だということは、両校ともZoomでオンライン授業を行っているので、身に染みて了解しているはずです。となれば、オンラインの時は、その最も優れた点に絞り込んで行おうと。そしてWeb配信は、いつでもどこでも見てもらえるという利便性を大いに活用するということでしょう。

★この発想は、ふだんから対話重視の教育を徹底しているから生まれてくる発想でもありましょう。

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★また晃華学園は、オンライン個別相談会のみに絞り込んでいます。これも深い意図がありますね。というのも、晃華学園のキャンパスはたいへんすばらしく、実際に訪れて見て欲しい、体験して欲しいという気持ちが同校の広報の先生方の気持ちにはあるでしょうから。

★光と風と心地よい空間。国分寺崖線上のもともと大名庭園の跡地ですから、校舎もキャンパスも非常に恵まれた空間です。一度訪れると魅せられます。

★いずれにしても、八雲学園も、かえつ有明も、晃華学園も、オンラインでは表現しきれないリアルな豊かさがあるので、そこは実際に訪れて欲しいという気持ちがあるのでしょう。オンラインとリアルの二つの時空の一長一短を巧みに組み合わせて広報活動を行っているのだと思います。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(30)ノートルダム学院小学校 本格登校で大切な<笑い>を取り戻す 人間存在の本来性を支えるエクササイズ

★ノートルダム学院小学校でも、本格登校が始まっていますが、このコロナ禍にあって忘れがちな大切な<笑い>のエクササイズをきちんとしているのはさすがです。

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★ノートルダム教育修道女会を創設したマリア・テレジア・ゲルハルティンガーがミュンヘンのアンガー修道院で世を去ったとき、あの哲学者でノーベル文学賞を受賞しているベルクソンは、20歳でした。1900年に「笑い」について哲学的考察を行っています。晩年はカトリック信仰に傾きつつあったということです。歳の差はあれ、パンデミックと戦争が続く世界を共体験している同時代人です。何かしら時代の想いは共有していたことでしょう。

★ベルクソンの「笑い」は、今でいう心理学的な考察や人間の極限の無関心との関連を考察していたりしています。また喜劇などの文学との考察もしていて、「笑い」がいかに人間存在にとって大切な役割を果たしているかを今の私たちにも伝えています。

★ゲルハルティンガーが、「人が変われば」といったとき、どんな表情をしたのでしょう。おそらく微笑んだのではないでしょうか。人が変わるには共感的なつながりが生まれなければなりませんが、そのとき硬直した状況を柔らかくするには、表情が硬ければ変わりようがないでしょう。

★今では、「笑い」は癒しや免疫をあげるなど医学や脳科学でも研究がされています。

★コロナ禍にあってそれほど友達と遊べなかった時間を過ごし、本格的登校が始まってもマスクをする生活を暮らしていると、いつの間にか「笑い」を忘れてしまいます。笑顔は、友達との絆を深め、自分の心も柔らかくし、創造的な発想も生み出します。何より免疫を高めると言われています。

★ですから、表情筋のストレッチをあえてする笑顔のエクササイズは大切です。同校のサイトには、こんな記事が載っています。<6月26日(金) 「〇〇〇の下の笑顔を探して・・・」 >6年生の担任の一柳先生の書いた記事ですが、Withコロナのニューノーマルな学校生活において、とても大切な教育活動です。ぜひご覧ください。

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2021年の入試(34)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ➄国学院久我山

★工学院の教務主任田中歩先生と首都圏模試センターの「おうちdeしゅともし」の特設ページをいっしょにみながらZoom対話をしたのがきっかけで、対話が終わったのちも各学校のを視聴してみました。すると、いろいろなことに気づきました。いくつかご紹介しましょう。

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★国学院久我山は、オンライン相談会とオンディマンド説明会の2本立てです。このハイブリッド感は、一斉休校のときも柔軟にオンライン授業を行った証です。さすがです。

★さて、私が実に興味深かったのは、同校は共学校ではなく、別学で、同一キャンパス内で、男子部と女子部はそれぞれ独立した学校としてあるわけです。そこで、男子部と女子部の動画を比較対照できるように、それぞれ作成し公開しているのです。

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★ある意味、進学校の典型的な男子校と女子校の違いが可視化されているので、驚きです。

★国学院久我山は高人気の学校だし、進学実績も毎年伸びていますから、ある意味、私立中高一貫校の男子校と女子校の典型的なスタイルを両方抱えているといってもよいのかもしれません。

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★人気のある共学校は、この両方のスタイルのうち、どちらかというと女子部の動画に近い雰囲気です。

★麻布や聖学院は、男子校としては国学院久我山の男子部とはだいぶ雰囲気が違います。そこが人気なのでしょうが、おそらく多くの人気のある男子校の様子は国学院久我山の男子部の雰囲気と重なります。

★人気のある女子校の雰囲気は国学院久我山の女子部とやはり重なる部分が多いかもしれません。

★この動画は、新型コロナウィルスが広がる前に創られていますから、今後どう変容するかは楽しみです。

★いずれにしても、高人気の男子校と女子校のスタンダードを国学院久我山は創ってきたというのがよくわかります。

★そのスタンダードとは何か?それは論より証拠特設サイトに入ってごらんください。念のため、

男子部動画→こちらにリンクをはっておきました。

女子部動画→こちらにリンクをはっておきました。

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2021年の入試(33)品川翔英 ポストコロナ時代に必要とされる教師の学びの場着々

★ここのところ2週間に一度の割合で、品川翔英の国語科の先生方とZoomでERD(Empowerment Reflection Dialogue)研修を行っています。すでにPBL授業を行える先生ばかりですし、今回の一斉休校の間にかなりICT技術を体得しています。ですから広く深い対話ができます。結論先取り的に言うと、前回の田中先生の授業に引き続き、今回の平岡先生の漢文のハイブリッドPBL型授業も、高いステージに達していました。

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★もちろん、最終的には、ステージ×スコアで60点満点でちゃんとクオリティスコア(スコアは9月以降の研修でつけていきます)がつくので、平岡先生ご自身もまだまだいけるのだと自分にエールをおくっています。アップデートを心がけるその姿勢がすてきですね。

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★そして、何よりエンパワーメントリフレクションですから、仲間が感じたことや考えたこと、多角的なアプローチでアナリーゼを行っていきます。その結果がステージ5.0だということですから、共感的なコミュニケーションが国語科内にパーッと広がります。

★どんなフィードバックやメッセージを投げ合うかというと、平岡先生自身のハイブリッドPBL授業のプレゼンが終わった後に、たとえば、次のような感じで贈ります。

「平岡先生、ありがとうございました。先生の工夫とアイディアが、生徒への理解と、慣れない関係性を融和させる効果があったことと思います。グラフの提示、データとしても残せていいですね。」

「生徒のフィードバックがあるのがいいなと思いました。新入生へのケアが難しいのよく分かります!逆にそういうアクティビティで仲良くなれることもあると思うので、非常にいいと思いました。」

「とても計画的だと思いました。生徒のためを思ってわかりやすい授業ですね。アンケートは授業改善に役立つので、私も早速やってみます。」

★PBLの授業デザインやICTのツールの使い方、グーグルフォームによるアンケート・リフレクション、データエビデンスなど、オンラインPBL授業を行って全部できるようになったと平岡先生は語りますが、そのことが仲間からのフィードバックやメッセージからもよく伝わってきます。

★そのあとに、

①「知の座標」

②「脳領域座標」

③「パターンランゲージ」

④「アクティビティ」

➄「Thinking Skills System」

⑥「GRR分析」を行っていって、

⑦最終的にハイブリッドPBLのステージのポジショニングを相互承認していきます。

このように、7つの面でアナリーゼを行ていき、最後にまたフィードバック。こんな感じでした。

「ありがとうございました。まさにグロースマインドセットの授業展開だったと思います。生徒同士がコミュニケーションできる学びの場となったようですね。大変勉強になりました。」

「本日はありがとうございました。漢文での新しい授業展開が私としてはとても新鮮で、勉強になりました。計画的に授業作りをされていることが伝わってきました。時間というものを私も意識しながら取り組んでいきたいなと思います。」

「漢文の授業の中で、様々な試みがなされていました。自分自身の授業と比較すると、大変な計画性と工夫、また理解度や生徒の状況の把握を心がけている、高い緻密性を感じました。勉強させていただきました。」

★とかなり深い分析になっているし、自分だったらどうするかという相乗効果もでてきています。そして、平岡先生も次のようにメッセージを伝えました。

「国語科の先生方に自分の授業を見ていただいて分析していただく時間は本当に貴重なものだと思いました。私含め、先生方が作られた授業やそれに対する生徒の反応など、どこかにまとめておけるとさらに良いかと思いました。今回いただいたアドバイスを前向きに捉えて、また来週からの授業を楽しみながらやっていきたいと思います。」

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(User Local AIテキストマイニグを使用)

★ZoomやMeetなどの会議システムは、チャット機能が使えます。先生方は、ご自身で授業の中で活用していますから、研修も実にスムーズです。プレゼン、傾聴、対話という中で、チェックインとプロセスとチェックアウトの時点でまずは独りで思いを馳せる時間をとり、それをロゴス化して、シェアもできるのはオンライン授業の優れたところですね。

★チャットはそのつど、テキストマイニングしていきます。すると、最初はそれぞれ自分の世界の中での思いを述べているのですが、徐々に共通する重要な感じ方や考え方の塊がでてくるのが、上記の図でわかります。だんだん宇宙が出来ていく感じです。

★チャットの後、互いにシェアし、そのあとにこの図をみて、再度対話します。

★このようにオンラインを使うと、共感的コミュニケーションを促進し豊かにしていける実感を得ることができます。

★これは、先生方が行うオンライン授業でもそうでしょう。今後、品川翔英は、学校が再開になって、本格的なハイブリッドPBL授業になっていきます。

★それゆえ、次回のERD研修も、リアルな空間に集まりながらも、ノー3密ですからZoomも使いながら、ハイブリッドで行っていく予定です。先生方と協力して、リアルとオンラインの良いところどりをしてみたいと思います。またご紹介します。

★品川翔英の先生方、刺激的で新しいアイデアも生まれたすてきな時間をありがとうございました。

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2020年6月28日 (日)

2021年の入試(32)聖学院インパクトいよいよ始まります!

★昨夜、聖学院の児浦先生(21教育企画部長・広報部長・国際部長)とZoom対話をしました。結論から先に言うと、ポストコロナの聖学院インパクトはすさまじいに突きます。まだまだベールに包まれていますが、それが明かされるのはももうすぐという感じです。

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★話の中心は、来春募集の高校の新クラスの教育のすごさでした。内進生15名、外部から15名の30名で構成しますから、たんなる経営的目的のためではありません。もちろん結果的にはその成功は、聖学院全体の教育をさらにアップデートしますから、ますます人気が出て経営も安定するということにはなりましょう。私立学校ですからそこは外せませんが、この両輪をいっぺんい考えることができる教師というのは、なかなかいません。

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★多くの経営者は、教育は現場に任せた、経営はこちらに任せておきなさいだし、現場も広報のために授業をやっているのではないと言ってしまいがちですね。私が言うまでもなく、そんな学校はポストコロナ時代には淘汰されてしまうでしょう。

★この30名というサイズは、広報戦略的には、実はかえつ有明と海城をモデルにしながら換骨奪胎しています。かえつ有明も4年くらい前に中高一貫ではあるけれど、高校から1クラスプロジェクト科クラスを創りました。

★これが大成功したことは言うまでもないでしょう。ディープラーニングという名のアクティブラーニングを今では、中高全体に浸透させました。それでも、高校の各学年1クラスだけでは、20世紀型クラスを残しています。

★おもしろいですね。最初は、先進的なクラスは6学年通して高校の1クラスだけだったのです。ところが4年たつと、それが完全に逆転してしまったのです。にもかかわらず、グループワークを拒否し、1人もくもくと勉強するクラスが1つ許容されているところが、なんともかえつ有明らしいです。

★それから、海城ですね。もう8年くらい前になりますか。高校募集を廃止して、その30名を中学の帰国生入試にスライドしました。東大ばかりか、ハーバード大学をはじめ多くの実績を出すことに貢献したというのはあまりに有名です。

★パレート最適の原理からいえば、各学年の20%30名いると、かなりのインパクトを与えることができます。資本主義の父の系譜の投資家からは13%あたりからインパクトは生まれるともいわれています。

★30名という数字はそういう意味がありそうですね。児浦先生は、この間、多様性というか外とのつながりが、生徒の学びの意欲が爆発するケミストリーが起こるという経験をしているので、外部の風を高校の時から入れるのはいいことだという確信を得ています。

 University of Pennsylvania(米)【11位】
University of Toronto(加)【18位】
University of Washington(米)【26位】
University of California, San Diego(米)【31位】
University of British Columbia(加)【34位】
University of California, Davis(米)【55位】
Boston University(米)【61位】
University of Southern California(米)【62位】
Carleton College(米)
Grinnell College(米)
Fordham University(米)
Syracuse University(米)
Art Center College of Design(米)
Lake Forest College(米)
北京外国語大学(中)

★その成果が上記のような今春の海外大学合格の成果につながっていることを、ワシントン大学とペンシルベニア大学に合格した二人の卒業生がメッセージ動画で証言しています(この動画は同校説明会に参加すれば見ることができます。山本君の動画は首都圏模試センターの特設サイトで今ならだれでも見ることができます)。彼らの国内外の研修やセミナーをいっしょに企画し同行までした児浦先生ならではの「これだ!」という直感はすさまじく、30人のモデルは彼らだと、聖学院の生徒がみな彼らのように行動力があって創造的でonly one for othersの体現者になるにはいかにしたら可能か?3年前から実は考えていたことといまここで結びついたというのです。

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山本君の動画は今は公開されています

★そして、オンライン説明会を行うと、海外帰国生の参加も多く、二人の動画は大反響だということです。児浦先生はますます、これだと。今の高1に中学生起業家山口君(今なら動画が公開されています)もすでにいます。ロールモデルが毎年続いているので、この規模を拡張しようと。まずは小さく始めて大きく生み出そうという確固たる決意が生まれたというのです。

★それがまずは30人だと。この30人が6年後に見えるでは、中学1年生にはもどかしいだろうから、まず3年後にはそうなるのだというビジョンのアウトプットを可視化してしまおうと。したがって、高1というのはタイミングが良いのではないかとも。

★そして、児浦先生は「コロナ禍にあって、教師は全員、会議システムもグーグルクラスルームなどのプラットフォームも使えるようになっています。ですから、デジタルネイティブの生徒といっしょにICTをツールとした授業展開ができるようになりました。そこで、あとは、イマージョンで英語でPBLできる環境を創ろうと。そしてグローバル市民としてリーダーシップを発揮するには哲学を中心としたリベラルアーツも当然やっていきます。そして、まだ明かせませんが、破格のSTEAM教育を今デザインしている最中です。それら3つがプロジェクトとして成り立ってしまうというところにまで到っています」と。

★なるほど、それをデザインしている先生方はあの先生方ですよねと聞くと、言うまでもありませんと。なるほど、STEAMといってもたんなるプログラミングではないということですね。

★STEAM教育で先進的な教育というと三田国際とか工学院、あるいは武蔵野大中学。それらも超えるということですねと尋ねると、「そうです」と即答。多くの学校がSTEAMというとHTH(High Tech Highschool)を模範とするのが現状だし、経産省もそれでよいと思っています。とするならば、あの先生方は、それを乗り超えようとするでしょう。

★要するに、ギャップイヤーや米国のリベラルアーツ大学で行っているインターンシップを聖学院の高校からやってしまおうということだとピンときました。

★なるほど、米国のAPの研究したり、IBを研究したりして、それでは物足りないし、Z世代の未来創りにはテンポが遅すぎるという感覚を持っているのでしょう。いきなり全体とはいかないけれど、先述のロールモデルレベルの30人にはそれは可能だと。

★偏差値がどうのこうのとかは別にして、才能的には開成や筑駒の生徒を超えてしまうなあとすぐに感じました。それが明らかになる時が楽しみにですね。

★ところでと児浦先生が私にこう尋ねるのです。「本間さんは、何を手伝ってくれますか?」と。おおっ!微力ながら応援しますよと言っていましたから、そうきたかあっ!汗と。「はっきりって、ありません。もし私がしゃしゃりでたら、せっかく邁進しているのに、邪魔ですよ。突っ走っているアスリートのそばに行ったり、ピアノを演奏しているピアニストのそばに行って、リフレクションしましょうじゃあ、ストップしてしまうじゃないですか」と。

★もしよかったら、私のマニアックな知の茶室に限定5,6人の先生方をご招待します。私が亭主ですから、ファシリテーターだったりジェネレーターだったりしますがそれでもよろしければ。内容は、ポストコロナは、教師の時代です。私はスーパーグローバルティーチャー(SGT)100人計画を妄想しています。

★最初の100人は私が引き受けますが、そのあとは、それぞれが100人引き受けていただきます。そしてさらに引き受けていく。100×100×100で、すでに100万人ですから、日本の教師の人数分は軽く超えるでしょう。

★1人オンライン教育(授業よりはかなり広い)で1000万円~3000万円くらいかせげるようになればよいのでは。学校を超える必要がありますが、やがてそうなるのは間違いありません。英語が出来ればそのパワーはもっと広がるでしょう。

★そのときに必要なのは、アリストテレス―トマス・アクィナス―ルソーーヘーゲル―フッサール―グッドマン―マルクス・ガブリエルなどに通底するリベラルアーツのシンプルなスキルと十牛図に代表されるZEN的なマインドのシンクロですね。シンクロさせるのは、それぞれの先生が適応するわけです。そういう複雑適応系のスキル(結局はブルコラージュ未来版)を共に学ぼうというオンライン茶室ですと。

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★こういう先生方が増えると、新宇宙船地球号が脱構築・再設定されるのでZ世代を含めこれからの子供たちの未来は明るくなると思いますよと。

★児浦先生は、相変わらず大風呂敷広げますね(笑)、もちろん何人か誘ってみますと高らかに笑って、互いに退室ボタンをポチっとしたのでした。

★SGT(スーパーグローバルティーチャー)は、20世紀から見たら超能力者だと思われることでしょう。そして、いつか生徒にもダイレクトに伝えたいと思うわけですが、これはまた次の構想にとっておきましょうということに児浦先生とは話しました。これから大いに楽しみです。

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2021年の入試(31)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ④聖学院・品川翔英・工学院

★工学院の教務主任田中歩先生は、聖学院の児浦先生(21教育企画部長・広報部長・国際部長)とは、21世紀型教育開発センターを共に運営していて、気心が知れています。そうはいっても、互いの学校の規模や立地、なんといっても建学の精神が違うので、当然学校の組織の在り方や教育システムは違います。

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★C1英語×PBL×ICTは、当然21世紀型教育の環境として共通していますが、それぞれの構成要素の中身は違います。ですから、形としてあらわれるとき、それは全く違うわけです。同じ素材を使っても、出来上がりの料理は見た目も味も違うように、学校も違うのです。だからこそ、互いの情報交換は刺激的だし、スパイスの交換をたがいにするわけです。

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★そういう意味では、今回の首都圏模試センターの特設サイトにぶら下げる動画の種類も違いが明快に出たのはおもしろいですね。

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★田中歩先生は、オンライン授業も、海外大学進学実績も、MogなどのSDGs的土台の海外起業家精神プロジェクトなども聖学院とは共通する部分も多いのです。しかし、建学の精神がやはり大きく違っていて、工学院は、聖学院に比べて市民リーダーが巣立つ場かもしれません。聖学院はどちらかというとキリスト教精神という高いレベルでのエリートリーダーを生み出そうとしていますよね。

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★それはちょっとおもしろすぎる話なので、少し立ち止まって対話しみました。工学院は私立大学では工学の専門大学としては私立で初めて開設されました。東大の官僚エリートテクノロジストを養成するだけでは、日本の市民生活の拡大はできませんから、日本の近代国家のインフラを拡大するための市民レベルのテクノロジストをたくさん養成していったわけです。市民生活のwell-beingというのが大事だったのです。

★ところが、聖学院は、真っ向から官僚エリートとぶつかって、近代日本のもうひとつのユートピアを目指す精神的エリートを目指しています。初校長が、東大初綜理の加藤弘之の官学の精神に反旗を翻して私立学校の創設に奔走したわけです。それが聖学院ですから、田中歩先生の直観は、ある意味あたっています。

★そういう違いから、工学院が生徒と説明会で話をするときは、対話型が多いのです。しかもかなりラフでリラックスしていて、アドリブが多いというのです。

★一方聖学院は、ペンシルバニアに進学したOBや中学生起業家が柔らかいけれど相当高邁な精神をぶっ放すスピーチをします。実は聖学院のようなプロテスタント校は、スピーチはとても大切です。はじめにロゴスありきで、その言葉の体現をスピーチするのですから。

★ところが、工学院は、老若男女あらゆる人にテクノロジーやエンジニアリングの話をわかるように話さなければならないのをモットーとしていますから、両方を比較すると、その違いが明確です。

★この二つの学校は、名前通りの違いがあるということですね。<工>学院と<聖>学院という一文字違いがなんとも深い意味の違いを生み出しています。

★とはいえ、工学院の「挑戦、創造、貢献」という校訓は、かつて筑駒の副校長だった方が校長に就任して以来つかっています。この校訓は、実は筑駒と同じなのです。東大と工学院、筑駒と工学院という連綿とした繋がりもまたおもしろいですね。

★一方聖学院の初校長石川角次郎は、開成出身で東大です。東大で加藤弘之の講義を聞いて議論を挑み、こりゃダメだと思って米国の大学に留学したというのですから、これまたすさまじいですね。

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★そんな話をしたり、感じたりしながら、特設ページをスクロールしていたら、品川翔英の発信一覧が目に入りました。品川翔英もオンライン授業を乗り切っている私学ですから、オンライン説明会をやるのかなあと思っていると、そこはWeb配信で見てくださいという姿勢。

★とよく見ると、電話の相談もありというのがありました。会議システムでのオンライン相談会と電話で行うというのもありました。たしかに電話もオンラインではあります。

★田中歩先生は、本間さんは柴田校長と付き合い長いのでしょう。どういう方ですか?と。会わないほうがいい方です(笑)と。何せ魅せられますからね。日本全国に柴田ファンクラブがあるぐらいですから。

★学校の教師として、JR東海の理事長や社長、トヨタの理事長や社長と対等にわたりあった経験のある人はまずいないでしょう。自分の理想を語り、一歩も引かなかったすさまじい人ですよ。スケールが多分違いますね。

★だから、電話相談もありにしたのでしょう。公立小学校はオンライン授業をほとんどやっていませんから、それが壁になって相談に参加できないというのを見抜いていたわけですね。

★JR東海もトヨタも市民生活のインフラを担っていますから、その視点も柴田先生は学びながらめちゃくちゃノーブレスオブリージュを求める人です。ラガーマンということもあるのかもしれません。前の前の学校では、イギリスやフランスに生徒をよく連れて行ってましたよと語りました。海外帰国生を集めるのにアジアや北米も飛び回っていました。

★田中歩先生は、工学院とも聖学院とも違うまた新しい学校ということですね。やはりアップデートは大事です。また明日からがんばりますよと互いに退室ボタンを押したのでした。

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2021年の入試(30)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ③桜美林・成城学園・駒場東邦

★工学院の教務主任田中歩先生と首都圏模試センターの「おうちdeしゅともし」特設サイトをみながらいろいろ対話した際のいくつかの話題を紹介していますが、本当にい啓発されることが多いので、参考になると思います。

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★桜美林の発信の数がなかなかのもので、オンライン説明会、オンライン相談というLIVE配信とオンディマンドのミックスはやはり、保護者の時間ニーズにきちんと応えるもので、この時期、まずは丁寧に説明することの優先順位をきちんと計算しているところがさすがだと田中歩先生は語ります。

★歩先生自身は、しかし、桜美林と工学院は立地も違うので、八王子はやはりその点アドバンテージが高いとはいえないから、セオリー通りはいかない。やはりオンライン説明会や相談会に特化することによって、更新率の高さでいくしかないかというのです。

★どういうことかというと、更新するには、毎回中身をどう変えられるかなのであり、それにより学内の意識が高くなり一丸となり、その熱量が受験生や保護者に伝わるのではないかというなかなかおもしろいことを念頭においているようでした。さすが共感的コミュニケーションの旗手。

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★成城学園はオンライン説明会を行うというのは、すこし衝撃だと。

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★駒場東邦のように、オンディマンドのWeb配信説明会で十分なのではないかと。この違いは何だろうというのです。私は、それは成城学園はやはり表現を重視するから、オンディマンドの表現とLIVE感ある説明会の両方のシナジー効果をねらっているのではと回答しました。

★すると、田中歩先生は、なるほど、駒場東邦はサイエンス的な色合いが強い学校だから、事実を表現すれば十分だというわけですね。合理的なスタンスが魅力的でだと思う受験生・保護者をすでに想定しているということでしょうね。それにしても、駒場東邦が今回のラインナップに顔を出しているのは、やはり何かが変わるという兆しですよねと。

★田中歩先生は、この首都圏模試センターの特設サイトは、広報の技術的側面も大いに刺激になるし、学校のスタンスや戦略、マーケティング手法、ターゲットの照準の合わせ方などおもしろいですねと。

★組織マネージメントの一翼を担う教務主任らしい視点で分析していました。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(29)宗教と農業とテクノロジー ニュータイプ農業

★今朝のTBSの番組「がっちりマンデー!!」のトピクは「ニュータイプ農業」。番組を見られなくても、「がっちりマンデー!! note編 がっちりスクール!!」のブログがあるので便利です。

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★いくつかニュータイプ農業のケースが紹介されているのですが、その中で「彩の榊」を経営する佐藤幸次さんの取り組みにポストコロナの新しい教育やビジネスのヒントがあるかもしれないと気づきました。

★榊(サカキ)は、神棚にお供えするあの植物です。事業の大願成就祈願、大漁祈願かつ安心安全祈願など、日本の神道はまだまだ実用的に稼働しています。正月の神事は日本だけの最大の行事でしょう。そういう神道行事に欠かせない「サカキ」は、ほとんどが中国産で日本産は佐藤幸次さんのところだけ(かもしれない)。需要と供給の関係からいって、ガッチリ儲かっているというのです。

★大量生産するためには、山にはいり採集していたのでは、間に合わないし労力が半端ないわけです。そこで、佐藤幸次さんの起業家精神が芽生えたという番組側のストーリーなのでしょう。

★佐藤幸次さんは、農地でサカキを栽培するようになったのです。しかも、ソーラーパネルを張り巡らしたニュータイプの農地というテクノロジー空間で行ったのです。ソーラーパネルの棚を敷き詰め、その下にサカキの栽培をしていくわけです。

★太陽光が、ソーラーパネルとサカキの葉に注がれるように空間設計しています。佐藤幸次さんは、電力会社と高齢者の所有する農地とサカキの栽培経営をジョイントするわけです。今では東京ドーム15個分の敷地で経営しているといいます。全国各地に広がっているのです。

★2013年に農地法が改正され、農地にソーラーパネルを立てることが解禁されたことに目を付けた佐藤幸次さんのベンチャーアイデアがさく裂したのですが、この法律はソーラーパネルを立てた下で農業を営まなければならないという制約があったわけです。

★ですから、その制約をどうするかは、なかなか良いアイデアが生まれなかったのでしょう。ところが、その制約が佐藤幸次さんのクリエイティビティを刺激した。デザイン思考やイノベーション理論のベストケースです。

★番組としては、ここまででよいと思うのですが、このケースは、ポストコロナの新しい教育やビジネスにものすごいヒントになると思います。

1)商品が国産で賄える。

2)脱化石燃料と自給率の回復

3)自然と社会と精神の循環系都市のモデル創発

★パンデミックでサプライチェーンが切断されてしまっているわけですが、今後もグローバルな協力は必要です。とはいえ、すべて拠点を海外に置くというのはリスクが高過ぎるというのは、今回みな学習したでしょう。したがって、国内にも置きながら分散してリスクマネジメントしていく方向になるでしょうから、佐藤幸次さんのケースはその先駆けです。

★ソーラーパネルというテクノロジーと農業がつながることは、自給率が低い日本では、それを回復することにつながるし、電力を自活できると、農作物の価格を国産だからといって跳ね上がることをおさえることもできるかもしれません。

★しかも、何より脱化石燃料に向かえば、SDGsのグローバルゴールズ達成にも寄与するかもしれません。

★そして、実はNHKがずっとドキュメンタリー番組やスペシャル番組で追跡していた「欲望の資本主義」の根っこにある化石燃料の覇権戦争と大量消費を絶つことにもなります。平和と自然環境の蘇生と豊饒な人間精神の生成が起こります。

★ソーラーパネルだけでは無理だよと言われるかもしれません。今のところはそうですが、その出来ないという制約をぶち破るのがイノベーション精神だったり起業家精神です。ソーラーパネルの改善とソーラーパネルに変わるテクノロジーの開発という動きは、実はすでに生まれています。

★いずれは、そこに結びつくでしょう。

★その方向を推進するイノベーションと創造的思考力の基礎を教育で学べる環境が生まれるというのがポストコロナの時代がもたらすコトなのでしょう。

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2020年6月27日 (土)

2021年の入試(29)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ②和洋九段女子・東洋大京北・関東六浦

★田中歩先生と首都圏模試センターの特設ページを共有しながら対話していくと本当に気づきが多いのです。やはり時間はあっという間に次の日になって、明日があるからと退室ボタンをおすのを互いに躊躇しながら、今度は、もう少し参加者をつのってブレストしようと別れました。

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★和洋九段女子は、文化学園大学杉並と同様、工学院と仲間の学校です。21世紀型教育機構のメンバー校です。そして和洋九段女子の新井教頭先生とは、今年同機構のオンラインセミナーの企画をいっしょに行っているということもあるし、同校のSDGsスゴロクを制作したメンバーといっしょにセミナーもやったことがあるので、気になるのでしょう。やはり話題になりました。

★文杉同様、目から鱗の部分は、生徒が前面にでる動画をぶら下げていることだと。それにしても、和洋九段女子の発信力がパワフルになっているのは、特設ページにこれだけの種類の動画を配信できるニューノーマルな広報活動が生まれているということですよねと。

★田中歩先生自身も、相当パワフルにブログを挙げているので、その大変さや得難い価値について身に染みているので、共感したのでしょう。

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★東洋大京北は、高人気の学校ですから、オンラインLIVE説明会より、個別相談に力を入れられるというのは、羨ましいと。しかし、哲学教育の動画を生徒が主語になって発信しているのはやはりいいと。これがあるから人気がでているという見え方がする戦略がなかなかだと。

★工学院も英語で哲学を行う授業を行っていますが、東洋大学京北は、特にインターの生徒に限らず行えているというのは、やはりアピールポイントだろうと。この間田中先生自身が行った生徒とのオンライン対話で、インタークラスではないサイエンスクラスの生徒が英語教育の重要性について語ったのは、なかなかの評判になったようです。ですから、本格的な英語力とポストコロナな時代に必要な考える英語の両方をきちんと発信したいと気づいたということです。

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★関東六浦は、英語教育が充実しているとは知っていたが、ここまでICT教育も行っているとは、技能面だけで満足していると、すぐに追いつかれてしまうと、やはり次の手が必要だと語っていました。クロムブックを活用する学校はこれから増えそうですし、そうなるとグーグルクラスルームの使いやすさがアドバンテージになるかもしれないとも。Zoomは今のところ使いやすいけれど、おそらくMeetはすぐに追いつくだろうと、そうなるとどうなるか。学内グループワークやプラットフォームを脱していく方向性があるかもしれないと。そこが学校と社会の境界線を越境する革新につながるかもしれない。その越境こそクリエイティビティの創発につながるかもしれないと。

★田中歩先生は、オンラインは本来グローバルだから、グローバルオンラインというのは、腹痛が痛いというのと同じだと。でもあえて言わなくてはならないのは、まだまだドメスティックなオンラインだから。この壁はなんとかしたいというのです。ドメスティックは田中歩先生が大事にしている共感的コミュニケーションとは対極の抑圧的コミュニケーションを造り出すからですね。(つづく)

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2021年の入試(28)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ①文化学園大学杉並

7月5日(日)、首都圏模試センターは「合判模試」を実施します。前回同様、生徒は自宅で受験します。そして、同時開催で、オンライン説明会を視聴できます。今回は今のところ106校が参加です。首都圏私立中高一貫校の30%シェアです。ここに参加している学校は暗黙のメッセージとして、ポストコロナの新たな進歩主義的な学校として名乗りを挙げているという意味もあり、この30%という数字の背景には未来を動かすウネリが横たわっています。「駒場東邦」が参加しているというのも、これは何か起こる予感がします。ポストコロナはサイエンスメインになることはたしかですから。

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★さて、まずはこの特設ページにアクセスしてみてください。前回に比べ、一目瞭然になっています。なかなか壮観です。各学校のオンライン説明会が、LIVE配信なのか、オンディマンドなのか、個別相談や体験授業も配信するのかなどすぐにわかります。

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★昨夜、工学院の教務主任の田中歩先生とオンライン対話をしていて、この特設ページを共有しながら、ブレストしていたのですが、改めて気づきの多い特設サイトだと感じました。おススメです。

★今までだと、これだけの情報を収集するのに丸一年かかっていたのが、あっという間にサクサクみていけます。まるで、田中歩先生のオンライン授業を受けているような雰囲気にもなりました。こうやって、田中歩先生は、コンパラティブスタディーを対話しながら行い、生徒から気づきを引き出していくのだなあと感じながら対話は続いていきました。

田中歩先生自身もオンライン説明会の企画実施者でもありますから、各学校の説明会のアイデアをどんどん収集し、ご自身の生徒ととの対話プログラムをモニタリングしていました。対話の中ででてきたいくつかの話を紹介していきましょう。

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★文化学園大学杉並のラインナップは、座標の4つの領域すべてぶら下げています。文杉のDDコースは、すべての教科をオールイングリッシュで行うということや、カナダのBC州のカリキュラムを実施しているというのはわかっていましたが、文杉と同じようにBCオフショアスクールというコミュニティがこんなにも艶やかに存在しているというのは、動画を見てはじめて了解できることだと。

★工学院もケンブリッジイングリッシュスクールやラウンドスクエアの加盟校ですが、そこで工学院がどんな教育活動をしているかフューチャーしているけれど、コミュニティの意味や価値の全貌を示す動画を発信していないなあと。

★また、授業の中身はリアルなキャンパスで見てもらうに限ると考えていたけれど、動画できちんと説明するのも必要だと気づいたようでした。さすがですね。(つづく)

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2020年6月26日 (金)

ポストコロナの授業<02>工学院 新しい経験を経て変容する授業の追究 グローバルティーチャー高橋一也先生の動き

★6月22日(月)から、工学院大学附属中高は、学校を本格的に再開。それまでのオンラインPBL授業と分散授業におけるハイブリッド授業というこれまにない経験をしてきました。人間は経験から多くを学びます。そこで得た知を発展させていくわけです。

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★そこで、平方校長は、新型コロナウィルス前まで積み上げてきた経験値を、ポストコロナ時代に適合させたりさらに変容させる挑戦をするプロジェクトを立ち上げました。教師の経験には大きく分けて二通りあります。直接的な現場の経験とその経験も含めて多くの経験の検証から抽出された理論が生み出した学問知としての経験です。臨床知経験と学問知経験と呼んでおきましょう。

★工学院の先生方はこの臨床知経験は実に豊かに積み上げてきました。豊かなPBL授業が教科学習を超えていろいろな領域に浸透しているのがその証拠でしょう。

★しかしながら、ポストコロナは未知なる経験を想定しながら、さらに自己変容していく備えをしておかなければ、対応できない可能性があります。Z世代の生徒の未来は、その未知なる経験を想定しながら、授業デザインをするときがやってきたのです。

★そこで、平方校長は、この未知なる経験を想定しながら工学院のPBL型授業が変容することは論理的必然な動きなのだと語ります。そのためには教師が自己変容を起こすことが必要ですが、この授業及び教師自身の自己変容システムを、グローバルティーチャーで有名な高橋一也先生にプロジェクトリーダーを任せ、プロトタイプを創ることを任じました。

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★学校再開後の放課後は、先生方が教室の隅々までアルコール消毒をしていきます。机も椅子も丁寧に。ノー3密がなかなか難しいのが学校空間ですから、エントランスの検温、アルコール消毒、マスクやフェースシールドの装着などあらゆる感染防止策を講じながら、放課後のアルコール消毒まで徹底します。

★このいまここでの現場の経験の後、プロジェクトメンバーの先生方は、未来の経験へ向けて研修に臨みました。

★第一回目は、先生方1人ひとりの性格と価値意識を見出していく研修でした。この研修自体すでに、ハーバード大学のハイフェッツ教授とキーガン教授の適応課題をどう乗り越え、自己変容するのか、そのためのリーダーシップとは何かなどをあぶりだす組織心理学的なアプローチです。

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★価値意識抽出のためのカードゲームと性格を診断するプラットフォームの両方を活用して行われていきました。2つのグループに分かれて両方を行っていきました。カードは互いに自分の価値を捨てたり交換したりする対話があるので、互いのメンタルモデルが見え隠れします。

★プラットフォームでは、120問の問いに立ち臨みます。自己の内省に没入していきます。

★最終的には、価値意識と性格のそれぞれの自己優先順位をスプレッドシートに書き込んでメンバー全員が共有できるようにします。

★個人の価値意識と性格と組織の関係性を考えるデータができるわけです。

★そこからは第2回目になっていきます。

★高橋一也先生は、学習理論の系譜や哲学的素養、欧米文学の理論、脳科学の研究など幅広く深く研究されています。今回のハイフェッツ教授やキーガン教授の理論も、そのような多くの学際知が総合されて出来上がっているので、彼らの理論書だけ読んで真似をしても上滑りになってしまうと語ります。そして、そういう研修が多いことも憂いていますが、憂いていてもしかたがないので、その背景まで織り込み済みの研修をやっていこうということです。

★私の役目は、プロジェクトメンバーの先生方が研修で学んだことを実際の授業でどう生かしたかについて、Zoomでモニタリングミーティングをしていくことです。高橋一也先生の研修とZoomモニタリングの螺旋進行という新しい教師の自己変容物語が始まったのです。

★ポストコロナは、多くの人が予想している以上に、学校の在り方が変わります。オンラインは学校越境的にならざるを得ません。そのときしかし教育において最も重要な働きをするのは教師です。しかも、優れたスーパーグローバルティーチャー(SGT)でなければならいでしょう。

★工学院は、まだ見ぬSGTの出現を促す挑戦を始めたとうことなのです。

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2021年の入試(27)昭和学院 オンライン入試実施発表 入試市場における意味

★2021年中学入試において、昭和学院は、算数一科目入試でオンライン入試を実施すると発表しています。日能研の井上修氏(進学レーダー編集長)がいち早く情報を発信していましたから、首都圏の中学入試市場で同校がオンライン入試実施を決断したファーストペンギンでしょう。

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(写真は、同校サイトから)

★今春の同校の中学入試の総応募者数は800人を超え、前年対比155%ですから、大ブレイクしているといえます。教師力と生徒の自立と部活と進路実績の基礎力をベースに、ソサイエティ5.0の推進力の1つであるICTなどの革新的な技術も十分に駆使しています。

★今回の一斉休校、時差・分散登校においても、リアルな授業とオンライン授業(オンディマンド×対面双方向型)のハイブリッドを展開していました。この経験はさらに同校の教育イノベーションのレベルを一気呵成にアップしたでしょう。

★昭和学院ばかりでなく、多くの私立中高一貫校はなんらかの形でオンライン授業を展開しています。パンデミックはしばらく続くというか共生していかざるを得ないというのは、パンデミック史を多くの見識者がひもといて語っているところです。

★したがって、第2波第3波に備えるためにも、今回のオンライン授業の成果やリソースを学校再開後も生かしていきたいと多くの学校で模索されています。その一つの攻略が「オンライン入試」なのでしょう。

★当然、昭和学院の後に続く学校も多くなるでしょう。中学入試市場が活性化するわけです。今回のパンデミックは、歴史的にも明らかなように、経済的ダメージは大きいので、中学入試市場にもそのネガティブな影響はあるはずです。しかし、一方でコロナバブルもあり、テレワーク事業関連の企業は活性化していますし、受験産業の中にもフェースシールドを学校に販売して利益をあげているところもあるぐらいですから、中学入試市場というニッチな領域では、金融市場のコロナバブルがポジティブかどうか判断は簡単ではないですが、相殺される可能性があります。

★そのうえで、市場にオンライン授業とかオンライン説明会とかオンライン入試という経済活動を活性化する教育イノベーションが起きているということは私学経営上わるくないし、学校にとってステークホルダーである受験産業にとっても重要なウネリです。

★今回の私立中学入試の市場の変わり目の歴史において、オンライン授業をいちはやく行った静岡聖光学院、オンライン学校説明会をいち早く実施した聖学院、オンライン入試を最初に決断した昭和学院は折に触れ語られていくでしょう。

★そしてこのような各学校の動きと同時に大事なことは、中学入試市場そのものの変容です。すでに4科目入試中心の偏差値ベースの市場は、20%シェアになっています。ここのみを頑なに保守している大手塾があるわけです。

★残りの80%は、2科4科入試と新タイプ入試のミックス市場です。この新タイプ入試と4科目入試の両方を射程に入れているのが3模試と言われている中学受験産業です。ただ、その中で新タイプ入試に力点を置いている組織は1つ、そうはいっても4科に軸足を置いている組織が1つ、両方の戦略的バランスをとっている組織が1つということになるでしょう。

★つまり、つい3か月前までは、新タイプ入試の中学入試市場におけるシェアは20%くらいだったのです。残りの20%は4科入試オンリーのシェアで、60%は、4科目入試がやはりベースで、バランスをどの程度にするかは違いますが、新タイプ入試もカバーするというシェアでした。

★ですから、新タイプ入試は80%の市場からは、謎の入試と言われていたのでした。偏差値で測れないじゃんと。

★ところが、コロナ禍以降は、4科目入試オンリーの市場20%を除いて、80%は、新タイプ入試をある程度受け入れざるを得ない状態が生まれてきました。市場というのは、大義名分で動いているわけではなく、歴史の欲する駆動力の影響を受けます。

★コロナ禍以前は、新タイプ入試は歴史が有する数ある駆動力の1つの体現でしたが、コラナ禍以降は、オンライン関連教育や入試は大きな駆動力のg体現になります。私立学校の良質の教育という伝統と技能面の革新性は相反するのではなく親和性がありますから、その技能面の革新性のウネリが歴史の胎動の中で大きなものであれば、なおさらです。

★そして、市場は合理性の狡知でもあります。隙あらば、共創は競争という自然淘汰に転じます。入試問題は学校の顔だから、私学の良質の教育=4科入試だという常識が覆されることもあります。

★もちろん、覆されない場合もあります。しかし、4科入試の中身の質は変わらざるを得ないでしょう。したがって、中学入試市場はかなり葛藤や混迷が巻き起こる可能性があります。そこから、どんなベクトルが顕れてくるのでしょう。

★2021年中学入試市場は、このベクトルを巡って大いに議論が盛り上がるでしょう。そして盛り上がれば、盛り上がるほど市場は活性化します。しかも、この市場は教育市場ではめずらしくグロバールな広がりをもっています。より予想不能な因子があるわけです。なぜなら、オンラインはグローバルな広がりを吸収しやういのです。

★オンラインという技能面ばかりに気をとられていると、グローバルなネットワークリソースをゲットする機会を損失します。結局、英語力と議論ができる思考力が重要だということになります。革新と伝統は切っても切り離せないわけですね。もちろん、ここでいう伝統は普遍的な世界精神のことを示唆するはずですが、ここもまた、異論・反論・オブジェクションありですね(笑)。

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2020年6月25日 (木)

ポストコロナの授業<01>聖パウロ学園 新しいPBLへ

★今回の新型コロナウィルス感染防止のための一斉休校において、聖パウロ学園は対面双方型オンライン授業に転じたわけですが、そのような体験を経た教師も生徒も、何かが変わりました。学校再開後のニューノーマルな学校生活において、聖パウロ学園のPBL授業のスタイルも変容したのです。

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★高3の化学の吉留先生のクラスは、化学反応式にいたるまでのプロセス循環をひもといていくことで、化学式上はとりあえず丸暗記をするだけでよさそうなものも、実はそうではないというクリティカルシンキングを発動しています。このトークの中で、吉留先生は、オンラオン授業でYutuber絶品授業で人気だったのですが、そのトーンが変わらないまままの生Youtuberさながらで、テンションがあがりまくりです。もちろん生徒の思考の回転も速く、反応もよかったですね。

★高3理系クラスの数学の様子を覗きましたが、有理数と無理数の違いを説明する京大の入試問題について対話していたりしていて、なんだか数学的な哲学思考の雰囲気がいっぱいありました。オンライン授業で、最終的には数学は対話なのだと松本先生は気づいたと語っていましたが、完全チュータリング的な授業になっていました。

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★英語の授業も、ICTを活用しながら、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングなど丁寧に授業が展開していました。要するに4技能の徹底的なトレーニングです。ここのところ英検2級合格者が増えているのもうなづけます。

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★高1の国語は、小島綾子先生の論説文の授業でした。文章の構造と細部の関係を思考スキルを活用して読解し、それでモデルをつくったうえで、違うテーマで自分の文章を編集するという授業でした。思考スキルとタキソノミーが織り込まれた授業です。PBLとは最終的にはあるいはコアは、自分の考えを編集・創造し、その社会的インパクトを生み出せるかというプロジェクトづくりです。ノー3密で闊達なディスカッションはできませんが、そんなときは静かに自己沈潜し、プレゼンし、フィードバックを互いにしあえっていけばよいわけだということでしょう。

★PBLの形態にこだわらず、本質とは何かに立ち還った授業になっていました。

★小島崇先生の高2の国語は、分散登校期間中に創った小論文の相互評価のPBLです。グループワークなのですが、極めて静かです。まるで筆談をしているかのようです。それもそのはずです。互いに小論文を読み、フィードバックをするのですが、5人のメンバーがいたとしたら、グルグル回しながら、フィードバックを書き込んでいきます。静かなのですが、確実に複数の目からみたフィードバックを集められるわけです。

★それにフィードバックという評価をする際にルーブリックをきちんと共有しているというところはさすがでした。

★高橋先生の高3の古典の授業は、文章をいったん絵に変換して、ストーリーをプレゼンしていくという文章と絵の置換スキルをベースに展開していきました。盛り上がったことは想像に難くないでしょう。

★伊藤先生の高2の数学は、具体的な経験を通して、一般化していく数学的思考のトレーニングを行っていました。極めて迂遠な作業だと生徒は思いながら行っていくのですが、一般化したとたん、ショートカットというシンプルな公式がでてくるのです。このパラドクスの感覚は、数学ならではの醍醐味ですが、この数学的思考が、実は今後の企画をつくったり、プログラミングをしたりするときに大切な視点や観点になるのだといいます。

★理系の生徒が聖パウロは少ないのですが、文系の生徒も将来数学的技能はあまり使わないかもしれませんが、ポストコロナは、数学的思考は極めて重要になってくるというのです。つまり、文系における数学は、もしかしたら数学的思考の社会実装というプラグマティックな問題なのかもしれないと感じました。

★数学と国語の授業が、ルーブリックと思考スキルという考え方に力点をおいた授業展開になっていたわけです。

★小島綾子先生は、「生徒が自ら考えていくには、自ら学び方を体得することが重要です。与えらてた素材については理解しているが、新しい素材を自分なりに理解し、それをきっかけに自分の考えを生み出し編集していくには、学び方のスキルを学ぶ必要があります。今回の新型コロナウィルスに生徒と一緒に直面した時、それを実感したのです」と。

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2020年6月24日 (水)

2021年の入試(26)聖パウロ学園 Myプロジェクト×Ourプロジェクト×Worldプロジェクトが意味を豊かに生成する。

★聖パウロ学園の公式facebookにはこうあります。

「今週は、第1回小論文コンクールが実施されています。
全校生徒が「コロナウィルス」をテーマに小論文を書きます。
分散登校期間中にオンライン授業やレポートで、様々な角度からコロナウィルスについて考えてきました。600字〜800字で筋道立ててわかりやすく表現することはなかなか難しいけれど、制限時間内になんとかまとめようと必死です。
完成作品は、ルーブリックとコメントで相互評価をします。
「クラスメイトが読む」と知った瞬間、少し緊張とやる気がみなぎった1年生の教室でした。」

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(望月先生の「パンデミック史」のキーノートスピーチ。雄弁に情熱的にそして世界の痛みを引き受ける名オンライン講義。)

★さりげなく、「小論文コンクール」が行われていると書かれていますが、その背景には壮大なプロジェクトが横たわっています。分散登校にはいったところで、立ち寄りましたが、ノー3密を保ちながらも、直接対面できることの重要性を教師も生徒もかみしめていました。

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★また、授業によっては、あるいは単元によっては、教師の唇の動きが生徒に見えないと成り立たないものもあります。

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★その場合は、先生方はマスクではなく、フェースシールドに付け替えていました。オンライン授業でも、ノー3密空間でも、さまざまな創意工夫が生まれているのです。

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★さて、「分散登校期間中にオンライン授業やレポートで、様々な角度からコロナウィルスについて考えてきました。600字〜800字で筋道立ててわかりやすく表現することはなかなか難しいけれど、制限時間内になんとかまとめようと必死です。」とあります。私が立ち寄ったときに、望月先生の「パンデミック史」の熱弁オンライン講義を拝見したのですが、それが「様々な角度からコロナウィルスについて考える」というイベントの1つだったわけです。

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(望月先生の魅せるプレゼンテーションをモデルにして、探究で生徒も自らのプレゼンテーションに挑戦するということです。雄弁に情熱的に愛を持って!)

★分散登校によるリアルな授業の隣の教室で、望月先生は独り2台の画面の向こうの多くの生徒にむかって雄弁に「パンデミック史」のパースペクティブの構成の仕方を紐解いていました。ニューノーマルな学校生活は、リアルあり、オンラインあり、マスクあり、フェースフィールドあり多様なピースがあふれています。

★一つ一つのピースをはめこんで、全貌をイメージしたかったので、Zoomで小島綾子先生(国語科教諭:主幹)と望月先生(社会科教諭:広報部長)とミーティングをしました。

★すると、壮大なプロジェクトが聖パウロ学園で動いていることがわかりました。分散登校の授業では、ノー3密を維持するためにディスカッションや対話を組み込むことは、以前ほどたやすくはありません。グーグルクラスルームなどをつかって、見た目は講義形式ですが、サイバー上は教師と生徒そして生徒どうしの考え方がシェアできるようにしているということです。

★ディスカッションや対話は、多角的に思考したり友人の感じ方を受け入れたりするのに大事な行為です。違いをどう理解するかで、自分とは何者かのヒントが見えてきます。

★一方、分散登校で自宅で学習している生徒は、たんに学習課題を1人ひとり行うだけではなく、「パンデミック」といういまここで共通体験をし、同時に連綿と続く歴史体験をしている事態について、そこで自分は何を考え何を行うのか考える自分を見つめる時間にもしたというのです。

★聖パウロ学園はPBL型授業を行っていますが、一回一回の授業というより、いろいろな機会をつなぐ壮大なプランになっているのだということが了解できました。ある意味、本格的なプロジェクトです。

★と思っていたら、自分を見つめるプロジェクトが、実はOurプロジェクトでもあったのです。「完成作品は、ルーブリックとコメントで相互評価をします。「クラスメイトが読む」と知った瞬間、少し緊張とやる気がみなぎった1年生の教室でした。」と記述されているところがそれを示唆しています。

★小島綾子先生は、「今回の新型コロナウイルスの事態では、社会科、国語科、英語科、理科など多くの教科が1つのテーマについて生徒に語り掛けることができました。その中で、感動的だったのは保健体育科の先生方の役割でした。教科学習ももちろん大事ですが、メンタル面や社会性、身体性の持続可能性をどうするかは、やはりダンスやストレッチをオンラインで行うことがいかに重要であるか気づきました。そして、なんといっても教師も生徒も一人では生きていけないとはこういうことを身に染みてわかったことは意味がありました。その意味を今小論文コンクールのプログラムで体現しておこうと思ったのです」と。

★望月先生は、「自分を見つめ、友人同士と相互承認して勇気をもって前に進んで欲しいし、その際、壮大な歴史のエンジンや駆動力の構造や仕組みを見出せたなら、誰かが造った世界に便乗したり振り回されたりするのではなく、自分で世界を創って生きていけるし、歴史のエンジンの繰り返される欠陥もわかりますから、そこを仲間と修正していけます。幸せな世界を創って欲しいわけです。そんな思いでパンデミック史の歴史的構造を語りました」と。

★教科書をきちんと学ぶ授業と教科横断型の授業と教科書を超えて世界を創る機会が1つにつながった瞬間でした。

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(写真は同校公式facebookから)

★小島先生によると、聖パウロ学園では、茶道や華道も全員が体験するといいます。望月先生によると、茶道のお点前は、実はカトリックのミサで神父がパンとワインを共有する時の様式に似ているし、華道の世界は天地人という三位一体ですから、諸説ありですが、欧米と日本の文化の出会いがそこにはあります。歴史はこうして世界を生み出しています。グローバルな世界は、人類史そのもので、今はじまったのではないのですと。

★かくして、聖パウロ学園の教育は、一つひとつの教育活動の背景に意味がきちんとあるわけです。教科横断型とは、知識のパッチワークではなく、背景にある意味の生成が共有されていることだと気づかされました。

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2020年6月23日 (火)

2021年の入試(25)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語④

前回から少し時間が経過しましたが、ここのところのホンマノオトの流れからも、今八雲学園の教師と生徒の関係について語ることは意味があると思います。今回のZoomミーティングで明らかになったことは、八雲学園のロールモデルであるOGが教師となってきているということ。あるいは卒業後もいろいろなシーンでかかわっているということが1つです。今回ミーティングに参加された豆塚先生とボッサムさんがそうですね。

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★そしてまた、お二人のようにロールモデルのOGが在学中からウェルカムの精神で共感的コミュニケーションスキルを身につけ、今も生徒とその状況を生み続けているということです。

★ロールモデルというのはある意味戦略的です。あのようになりたいという憧れの先輩。そのためには戦略的に作戦をたてながら在校生は指導を受けます。

★一方で、なかなかうまくいかないとき、相談に乗ってくれる教師がいます。しかも生徒が選べるのです。そんなチュータリングが浸透しているのが八雲です。勉強の面だけではなく、思春期の悩みだったり、八雲学園には多くのプロジェクト(実行委員会と呼ばれている)がありますから、当然チームと個人の葛藤の悩みがありますが、その解消だったりとケアが行き届いています。これはまさにウェルカムの精神の浸透です。

★そんなとき、教師はカウンセリングマインドを大切にし、メンターやコーチなど多面的な役割を果たしています。今回のミーティングでそんことが染みわたってきました。

★そんな八雲学園の雰囲気を支えている要素は何か対話になりました。横山先生は、やはりコミュニケーション(Communication)ですねと。自分の想いや考えていることを共有する場面が毎日だと言っても過言ではないし、そのコミュニケーションの過程で多くの気づきがあり、だからこそサプライズがたくさん生まれ、モチベーションも膨らむのですと。

★しかも、その意志のシェアは海外も含めてですから、コミュニケーションの大切さは教師も生徒も身に染みて理解しています。

★近藤隆平先生は、そのコミュニケーションがコラボレーション(Collaboration)生み出しているのも八雲学園の特徴だと思いますと。とにかく体育祭、合唱コンクール、イエール大学との国際音楽交流、イングリッシュ・ファンフェア、ラウンドスクウェア国際会議、文化祭、ダライラマ来校イベントなど感動と涙の行事が目白押しです。生徒が実行委員会を自ら運営して進めています。コラボレーションなくしてコトは成就しませんからと。

★ボッサムさんは、先生方のおっしゃることに同意します。そのうえで、私はコントリビューション(Contribution)かなとも思うのです。行事も部活もその過程ではいろいろあるのですが、それをやりとげたときは、互いにやってよかったと思います。友達同士の気持ちを大事にするのはある意味相手のために役に立つという貢献だと思うのです。もちろん、参加して頂いたり見て頂いたりする方と何かこう幸せな気持ちをいっしょに感じ合えるのは最高の貢献かなと思うんです。

★豆塚先生は、それは確かに八雲の文化ですね。私は吹奏楽部だったし今も顧問をしていますが、音楽づくりはメンバー同士の気持ちが1つになるし、その気持ちが音楽として聴いて下さる方々に伝わったときにには幸せな気持ちが響き合っていると実感します。クリエイティビティ(Creativity)は八雲には欠かせないと思いますと。

★そして、これはラウンドスクエアで活躍している在校生を見ていて思うのですが、批判的思考力(Critical Thinking)が育っていると思います。興味・関心やおもしろいというところからはいって、在校生は深いところまで考えていきます。今回もこの新型コロナウィルス禍で、情報を鵜呑みにしないように考えたり、自分はどういう道を歩んでいくのか深く考えているというのがオンライン授業などを通して伝わってきました。

★自分を変える力は社会や世界を変えることにもつながりますが、その駆動力はクリティカルシンキングだと思いますと。

★近藤隆平先生も、エッセイライティングを生徒と学ぶとき、クリティカルな視点は重要ですと。

★八雲学園とは、結構長い付き合いですが、「批判的」というフレーズはそう耳にしたことはありませんでした。ですから驚いたし、破格のグローバル教育とはそういう深いところに向かっていっくのだと感じ入りました。

★そして、八雲学園の生徒は、二人の先輩のように、自己の意思や想いを明快に抱き、信念をもって立ち臨んでいく勇者として育っていくのだと確信を抱いたのでした。

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2021年の入試(24)オンライン説明会浸透で、保護者は教師と生徒のかかわりを知ることができる 学校の再重要な関係性が開かれる

★対面オンライン学校説明会には、生徒が登壇してくる場合が多くなります。こんな生徒になれればよいなあというロールモデルの意図で登場してくるケースと普段の何気ないナラティヴモデルな対話をするケースがあります。

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★オンライン説明会は30分から60分の間で行われるでしょうから、当然時間は限られています。ですから、2つのタイプの生徒の登壇があるというのは珍しいですね。もしかしたら、11月ごろは、オンライン入試対策、オンライン生徒説明会などが、小分けになって企画されるかもしれませんが、10月くらいまでは、ビジョンと実践の教育のシステムは語るでしょうから、生徒の登場はロールモデルかナラティヴモデルのどちらかが交互に行われていくでしょう。

★今回のパンデミックで、私たちは2つのSの重要性について思い知らされました。それはSurviveとServeです。生き残ることの重要性と奉仕・貢献の重要性。前者は戦略的コミュニケーションであり、後者は共感的コミュニケーションです。

★前者だけの人は抑圧的で伝統主義者です。後者だけの人は、宗教的で理想主義者です。その両方をいかに組み合わせるか創意工夫する人はプラグマティズムの人です。これは学校という組織もそうです。

★大学合格者やコンテストで優勝した成功者などが登壇してくるだけの学校だと戦略的コミュニケーションが勝っている可能性が大です。共感的な対話だけを魅せる学校は、あまりないでしょうが、あったとしたら宗教的で理想主義的な心の癒しに傾倒した学校でしょう。

★両方の生徒の登場の機会を設けているハイブリッドな学校こそ、プラグマティックだし、未来を生きるスキルと未来を創るスキルを実装できる学校です。この場合のスキルは、認知的スキルのみならず、情意的スキルと脳神経身体総合スキルを意味します。よくIQからEQと言われているように、多重知能を重視しています。もっといえば、偏差値だけではなく多面的評価を重視している学校です。

★この戦略的コミュニケーションと共感的コミュニケーションの両方が構成されて学校教育がなされているというのは、実は21世紀型教育という言葉が広まってようやく登場した新しい学校です。アクティブラーニングとかPBLという授業が出現してからの学校なのです。

★おそらく企業などの組織もそうなってきているでしょう。ルーティンの仕事だけを重視する組織はもはやないでしょう。創発型のプロジェクトをいかに効率的につくるかというパラドクスを生み出しているはずです。自由に創発するということと合理的に効率性という制約とのバランス。

★学校も同様になってきていますが、それがオンライン授業やオンライン学校説明会を経験することによって、その数がどっと増えるということでしょう。

★これは1+1が2であるという要素還元主義的な価値観から1+1が2にも3にもなる相乗効果を大事にする構成主義(構築主義)という価値観に変容している流れです。

★伝統主義的学校は要素還元主義的ですから、こうなればこうなるというルーチンの確立が大切です。抑圧的になったり決めつけ、レッテル貼りが横行しがちです。

★理想主義はある意味純潔共感的コミュニケーションですから、社会的課題に背を向けても生きていけるという内面的意味論世界の学校です。実際にはとても少ないのかもしれません。

★プラグマティックな学校は、戦略的コミュニケーションと共感的なコミュニケーションのハイブリッドな相乗効果も生み出しています。進歩主義的な学校です。

★この学校は授業もキャリアデザインも構成主義的です。PBLやナラティヴカウンセリング型の進路指導を行っている学校です。両方とも共通しているのは、構成主義的な価値観です。

★この構成主義というのは、学校では学習理論として追究している学校は現状ほとんどありません。それが新しいという強みであり弱みです。今後そこは伝統主義的教育が指導案という膨大な経験とそこから導き出した理論があるように、学校や教育における構築主義的な理論も導かれるでしょう。今のところオンライン授業と同様、まずはやってみながら調整していくという経験主義的な進化を驀進している最中です。

★しかしながら、ナラティヴ型のカウンセリング理論はかなり構築されています。そのわかりやすい本が、上記写真のサピカスの本です。予測不能な時代における21世紀型キャリアデザインについてマニュアル的に書かれています。キャリアデザインのカウンセリング領域では認知されている理論です。

★保護者自身、今後の子供とのかかわりによって人生も変容してきます。サピカス理論は大いに参考になるし、その構成主義的視点を学校選択眼に加えるならば、よりマッチングは最適になるし、そのような学校も増えるでしょう。

★中学入試市場は学校の成長を活性化させる機能も持っています。市場の参加者やプレイヤーの構成的ニーズが市場の変容に影響を与え、結果学校も変わります。その変容がポジティブな方向に進むのは偏差値一辺倒主義から多面的な評価軸を受け入れるところから始まるでしょう。

★どうやらオンライン学校説明会はこのこのベクトルを豊かにしていく予感がします。

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2020年6月22日 (月)

2021年の入試(23)オンライン説明会浸透で、保護者の問いの深さへの意識が覚醒する

★オンライン学校説明会が浸透してくると、それがオンディマンド型(動画Web配信型:非同期)であれ、対面オンライン型(同期)であれ、比較がしやすくなるという話はすでに「2021年入試(21)」でしました。

★この比較によって、自分の価値意識やポジショニングに適合する学校選択のマッチングがしやすくなるということについては、「2021年の入試(22)」で話しました。

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★今回は、オンライン説明会の比較をすると、その学校がどのような問いを大切にしているのか違いがわかるという話をしましょう。上記のような東大文Ⅰの問いは、帰国生対象の問いです。一般国内生対象の問いは、記述の問題があるにしても、ここまで論述しないし、正解があるものばかりです。

★記述の問題であっても、知識がなければ書けない問題ばかりです。プレコロナ時代は、思考力は大事だが、知識がなければ思考はできないという馬鹿げた話をしてきたわけです。この文Ⅰの問題にあるように、専門家しか考えることができず、普通の市民は彼らから情報を供給されるばかりだったという愚かしい文脈で語られてきたのです。

★ところが、ポストコロナ時代は、そのことが意識され、ダボス会の来年のテーマは「ザ・グレートリセット」です。そんな馬鹿げた話はリセットされてしまうのです。もちろん、このような知識ありきではなく、経験の中から、対話の中から、知識を発見し共有し考えるということは普通の市民にも大事なんだと考える先進的な学校は以前からありましたが、圧倒的に少数派でした。

★それが、ポストコロナ後は、世界同時的に、SNSで情報を得るわけです。しかも、パンデミックはインフォデミックも爆発させますから、騙されないようにと批判的思考を身につけるように国も自治体も情報を流しています。

★一方で、経済的ダメージは多大で、なんとか抜け出ようと創造的思考を働かせる起業家や企業人のニュースもメディアが頻繁に報道しています。

★なんといっても、パンデミックは経済的ダメージを引き起こしつつも、株式市場にお金が流れるコロナバブルも引き起こすというパラドクスを生み出しています。

★保護者は、このパラドクスの真っ只中にいます。上記の東大文Ⅰの帰国生対象の入試のように、パラドクスという知恵の輪をどう解くのか、経験の中から新たに発見したことに基づきながら考えていく正解のない問いに直面しています。

★それゆえ、このような深く考える問いを授業の中で大切にしている学校は、子供の未来をカタチづくるうえで重要拠点だと判断するようになります。東大にたくさんいれていても、国内の一般入試で合格している場合、このような深い問いは普段はトレーニングしません。では、開成はトレーニングしないのか?いやしています。それはどこでわかるかというと、海外大学の合格者が2013年からどんどんでているというところからわかります。

★がしかし、それが海外大学に進学する生徒だけがトレーニングをうけているのか全員がうけているのかはわかりにくいですね。麻布のように中学入試の問題からすでに深い問いを出題しているところは、わかりやすいですが、4科目入試で麻布のような問題を出題をする学校は、あまりありません。

★ですから、かつては問いの重要性はあまり気にされなかったのです。

★ところが、正解のない問いに直面している保護者は、問いの深さの大切に気づいていますから、オンライン説明会で、比較する時にどうしてもそこが気になるわけです。

★批判的思考のトレーニングもパンデミックの中で覚醒していますから、オンディマンド説明会で、おっ!この学校は深いい問題を大切にしているなあとすぐにピンときます。しかし、同時に、実態はどうなのか?ともすぐに思うわけです。

★だから、オンディマンドではなく、対面オンライン説明会を視聴したくなるわけです。

★なぜなら、対面オンライン説明会はライブ感があります。生徒が登場します。オンディマンドより情報が豊かなわけです。もちろん、オンディマンドと同じ情報量しかなければ、その学校は論外ということになるでしょう。だったらオンディマンドでやってよと保護者はすぐに思うからです。

★この感覚は学校側にももちろんあります。ですから対面オンライン学校説明会を行う学校はそれなりの準備をしているし、自信もあるし、現状売り上げを気にするメディアも取り挙げてくれないような本来的な大切な情報を発信するものです。

★ですから、秋には対面オンライン説明会が増えてくることは間違いないでしょう。そなれば、メディアもようやく動き出します。

★対面オンライン説明会を行わないところは、伝統主義的学校です。対面オンライン説明会を行う学校はプラグマティックか理想主義かどちらかですが、理想主義の学校は、自らの学校がAIを駆使できない限り、自己矛盾をきたすので、みていてうまくいかないことはすぐに了解できるはずです。

★ですから、対面オンライン学校説明を、あたかもユーチューバーのようにワクワク、情熱的で、クールにやってのける学校はプラグマティズムが浸透していると判断できると思います。

★そして、この対面オンライン説明会のテクノロジー実装は、学校を進歩主義的にどんどん変えていきます。結果的に中学入試市場は活性化し、教育のイノベーションは盛り上がるでしょう。社会は教育によって変わります。ダボス会議の「ザ・グレートリセット」というシナリオとシンクロすることにならざるを得ないのでしょう。

★さて、対面オンディマンドで生徒が登場してきたときに、見るべきポイントについて私なりの考えを次回話し、共有したいと思います。そして、このポイントについて保護者の方々がそれぞれ自分の考えを持つことが、子供たちの未来に希望を灯すことになります。

★だって、保護者のニーズにこたえようとするのがプラグマティックな学校です。偏差値主義的な視点で学校を選んでいる限り、学校は変わりません。社会は変わりません。自分の人生はしたがって変わりません。すると予測不能なパラドクスに対応できません。学校選択のアップデートが子どもだけではなく、私たちのライフデザインも良好なシナリオにしていくことになるのです。(つづく)

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2020年6月21日 (日)

2021年の入試(22)オンライン説明会浸透で、保護者の情報分析視点は変わる。

★リーマンショック以降からポストコロナ以前は、私立学校の教育は伝統主義と革新主義の対立でした。新タイプ入試は一見すると革新主義なのですが、どうも伝統主義の学校の中に革新的な学校があったり、革新主義のはずの学校が装いは新しいのですが、結局は偏差値主義だったのかといった学校があったりして、なかなか中学入試の地図は描きにくかったのです。

★しかし、今回のポストコロナを巡る私立学校の動きをみていて、どうやらプラグマティックな学校が進歩主義的であることが明らかになって来たような気がします。結局オンラインとリアルのハイブリッドPBL授業が展開していくことになるとういうベクトルは、PBLの生みの親であるJ.デューイの進歩主義的な考え方に、脱構築しながら回帰するという感じなのかもしれません。

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★プレコロナは、伝統主義と言っても、伝統主義/伝統主義と伝統主義/革新主義の2つがありました。氷山モデルで描いていますから、両方とも見える部分は伝統主義なのです。そして、革新主義というと革新主義/革新主義と革新主義/伝統主義の両方がありましたが、革新主義/革新主義は理想主義で、革新主義だと思っていた学校は、革新主義/伝統主義だったのです。

★一方、保護者は、伝統主義か革新主義か思想主義かと目に見える部分だけで、学校選択をしていましたから、最適なマッチングとならなかった場合も多かったでしょう。

★私が、学校選択の価値意識やポジショニングをリフレクションした方がよいと申し上げているのは、氷山モデルの水面下のご自身の意識を確認したほうがマッチングのストレスはないということを意味しています。実は、これは学校も同様です。

★今回のポストコロナは、ここがはっきりしてきます。伝統主義/伝統主義と革新主義/伝統主義は実は伝統主義だったのです。

★伝統主義/革新主義はプラグマティズムだったのです。そして、革新主義/革新主義は理想主義というポジショニングになります。

★伝統主義は学歴主義のような格差社会を保守します。理想主義は格差社会を一切認めません。したがって、現実社会では自己矛盾を乗り越えられなくなり閉塞状態に陥ります。結局世の中は変わりません。

★プラグマティズムは、現状の格差社会は否定して社会を変えますが、その新しい社会はまた新しい格差を生みだします。その責任を引き受けながら、この新たに生まれた格差社会をまた変えようとします。この永劫回帰を引き受けてイノベーションを起こしていく革新性があるのですが、いつも新しく生まれる伝統主義も引きづっています。このような状態をおそらく今はやりの概念でコンパッションと呼ぶのでしょう。

★ポストコロナの時代では、学校選択はかなり合理的になります。たとえば、オンライン授業の在り方を見れば、伝統主義は、オンディマンドが中心になります。理想主義は完全対面オンライン授業になります。プラグマティズムの学校はオンディマンドとオンライン授業のミックスの最適化を試みます。

★しかし、ことはそうは簡単ではありません。というのは、学校によっては学校全体で動いているところと、先生によってオンラインを行う行わないの差があるところがあるからです。

★さてどうしたらよいでしょう。その場合は、その学校が授業中どんな問いを大事にしているか、その問いを対話によって考えていこうとしているのか、見ていくとよいでしょう。これはオンライン授業やオンライン説明会、オンラインセミナーなどをやっているかやっていないかで、実はわかります。(つづく)

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2021年の入試(21)オンライン説明会浸透で、保護者の情報収集の仕方は変わる。

★今回のパンデミックによって、世界同時的に何らかのオンライン授業が広がっています。日本でも順次オンライン授業が行われるようになっています。これによって、入試関連のイベントでもオンライン説明会やオープンスクールが開催されるようになっています。

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(二つの学校のオンラインイベントを同時視聴)

★学校選択という場に限っていうと、受験生や保護者にとっては多くの学校の情報をダイレクトに収集できるし、比較もたやすいので、説明会に足を運ぶ回数も絞れます。

★リアルな説明会に行くのは無限にできるわけではありませんから、オンラインで見定めながら、リアルな説明会は絞ることができるようになったことは確かです。

★オンディマンド型の、つまり動画Web配信型の説明会とウェビナー型のオンライン説明会とリアルなキャンパスでの説明会を巧く組み合わせて受験生・保護者効率よく情報を手に入れることができるだけではなく、上質の情報も入手できるわけです。

★オンディマンド型説明会は、申し込めば、一定期間自由な時間に動画を見ることができますから、リアルな説明会とは違ってスケジュールを柔軟に組めます。

★ウェビナー型のオンライン説明会の場合、土曜日に集中するので、参加したい説明会の日時がブッキングする場合があります。

★しかし、二台PCがあれば、あるいはスマホやタブレットなどZoomなどの会議システムにつながるディバイスがとにかく二台あれば、同時に両方の学校の説明会を視聴することができます。3校重ねれば、3台用意して、一台は録画すればよいですね。

★いずれにしてもこうして、昨年までと比べると、多くの学校の情報をダイレクトに入手出きるようになり、しかも見ながら比較することができます。

★直観的にどの学校を選ぶかでもちろんよいのですが、選択視点を明らかにしていくのがおススメです。

★比較するポイントは、人によって違います。自分なりに比較してそのポイントをアップデートしていくと、その創る過程で、受験生や保護者にとって適合する学校が浮き彫りになってきます。

★今ままでは、入試情報関係のシンクタンクやメディア、塾からの情報で補ってきた部分も多かったでしょうが、自分で豊かな情報収取をする動きに出られます。

★自分の目とメディアや塾などの第三者的な視点を合わせて、最適な選択眼を創っていきましょう。 

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2021年の入試(20)工学院のオンライン高校説明会 キャリア・共デザインの仕掛けをダイレクトに発信。

★昨日(6月20日)、工学院大学附属高校のオンライン説明会が開催されました。中学校などの説明会はすでに何度か開催されていましたが、高校は第1回目ではなかったでしょうか。平方校長と島田副校長によるスピーチ、田中歩教務主任と在校生3人による対話というプログラムでした。中学の説明会とはまた違うおもしろさがあり、驚きました。

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★まず平方校長の話が、中学の学校説明会とは違っていました。内容的にはもちろん変わらないのですが、中学生対象のためか、彼らがデジタルネイティブでありパンデミックを体験したZ世代であるという観点から、彼ら自身の未来への位置づけをしっかり確認しました。そして、今回のような予測不能な事態に直面しても、自分で自分の人生を切り開き、多くの人を巻き込みながら新しい社会を創っていけるスキルを身につけるようにエールを送りました。

★そのために、テクノロジー、エンジニアリングはもちろんこと、世界で活躍するネットワークにつながることができるように英語教育の充実ぶりについても語りました。そして、PBL授業によって論理的・批判的・創造的に思考できるスキルを身につける環境をつくって待っているとメッセージを送りました。

★いまここでオンライン授業などあまり経験していない中学生は、<目が覚めるような経験>ができることに希望をもったでしょう。

★副校長の島田先生は、校長のビジョンがどのようなカリキュラム、コース、施設で実現されているかをわかりやすく語り、医学部や海外大学など進路実績の伸長について語りました。工学院大学の先進的な工学や建築学についても語りました。アフターコロナは、医療にしてもノー3密空間都市生活にしてもテクノロジー、エンジニアリングの分野が重視されていきます。

★インターナショナル系だけではなく、アフターコロナ時代の理工系にも強い工学院の学習環境について語りました。工学院に入学する生徒は、入学段階で、進路について相当考えています。期待通りであり、かつそれ以上に何かがあると期待を抱いたことでしょう。

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★そして、ここまでの「希望」と「期待」の説明会が、一気呵成に工学院で「実現」できると衝撃に変わったのは、次のプログラムでした。高校の教務主任田中歩先生とテレワークでつながった3人の在校生の対話が始まったのです。4人にとっては、いつものオンライン授業の延長線上だったでしょうが、オンライン説明会のライブ感の面目躍如とはこのことです。

★文理先進、サイエンス、インターとそれぞれから在校生が1人ずつ登場しました。

★そこで行われた<対話>は実に共感的コミュニケーションの雰囲気がただよっていて、いい感じだし、こういう教師と生徒のかかわりやコミュニケーションがあるから、それぞれのコースで自分の生き方を見つけ、そこに向かって高いモチベーションをもって立ち臨んでいけるのだということがダイレクトに参加者に響いたでしょう。

★3人は、「進路発見」「自分が変わる」「体験程得難いものはない」「自分から動くことの大切さを身に染みて理解した」「工学院は絶対に楽しいし自分を見つけられる」など多くの名キーワード・フレーズをどんどん編み出していきました。

★Mog体験や米国体験、編集企画体験などそれぞれのお気に入りの写真を一枚Zoomで共有しながら語っていました。

★田中歩先生の対話は、実にナラティブで、3人の小さな物語に耳を傾け、どこで変化したのか聴きながら、3人がそれぞれの人生を語りだしていける状態を生み出すキャリアカウンセラーやプロジェクトのファシリテーターのように対話していきました。

★在校生も用意されたシナリオではなく、自分のシナリオプランニングを対話の中でさらに明らかにしていく自然な対話をしていました。

★そして、そのそれぞれの物語が、工学院物語になるような上昇気流がそこには生まれていました。

★この1人ひとりの物語とそれが工学院物語になるという思考と行動のシステムは、共感的コミュニケーションがあるから生まれてきます。

★もし抑圧的コミュニケーションがベースの学校であるならば、個々のマイクロストーリーは追いやられ、学校のストーリーが押し付けられます。そして、それに反発してマイクロストーリーがはじけます。

★そういう学校の同じような説明会では、ちゃんとそれが見えてしまいます。

★ところが、工学院は、個人と集団の自律分散協働系のシステムが生成されています。

★グローカルなマーケティングの学びをして社会に出たときに、海外の舞台で活躍した時に、編集の世界に入っていったときに、個人と世界の葛藤をどうするかは、永遠の課題として壁となって迫ってきます。

★あらゆる社会課題の根本には、個人と世界の葛藤解決はいかにしたら可能かが横たわっています。キャリアデザインの方法論はいろいろありますが、葛藤を乗り越えて互いの人生を共にデザインしていける思考と行動こそが、最も重要です。

★それは、このパンデミックをはじめとする世界の社会課題をみれば、いかに格差と分断が手に負えない関門であるか一目瞭然です。今回の在校生に代表される工学院の生徒は、その葛藤を乗り越えるスキルを豊かで多様な経験の中で、教師との共感的コミュニケーションを通して、身につけていくのでしょう。

★田中歩先生と3人の在校生の対話は、そのロールモデルでした。危機のときこそ柔らかい対話ができる関係をいっしょに創っていけることこそハッピーなことはないでしょう。オンライン説明会の醍醐味は、教師と生徒とのこのような対話シーンにあるとしみじみ感じ入りました。

★オンライン説明会がを行うか行わないかは、実は技術的な問題ではなく、このような日常の共感的コミュニケーションを表現できるかどうかにかかっています。一方通行的に情報を伝える抑圧的コミュニケーションベースの学校は、まずオンライン学校説明会は、いろいろやらない理由を見つけて、実行しないでしょう。オンライン学校説明会をやり続ける工学院は、それができるからこそ自然とできてしまうのです。

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2021年の入試(19)聖学院のオンライン思考力セミナー テクノロジーとPBLと才能と。新タイプ入試の意味。

★昨日午前、聖学院は、オンライン説明会を実施し、午後はオンライン思考力セミナーを行いました。説明会は5回目であり、セミナーは2回目です。リアルな空間である講堂で行う説明会やリアルな教室で行う思考力セミナーと違い、1回1回の参加者は50人~80人単位のようですが、各回合わせると実はリアルに参加する総数より多くなる手ごたえを感じていると児浦先生(広報部長・21教育企画部長・国際部長)は語ります。

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(オンライン思考力セミナーにウェビナーとして取材させていただきました。生徒さんの顔は見えないようにしています。チャットのテキストマイニング・マップは掲載許可を児浦先生にいただきました。マップ分析は、User Local AIテキストマイニグによります。)

★説明会実施の翌週土曜日はオンライン個別相談を設定しているため、ソーシアルディスタンスの中で濃密な心と心の対話が響き合って、聖学院で学びたい、聖学院で才能を開花したい、聖学院で人間としての心を豊かにしたい、はやく学校で会いたいという想いが募っていくのをダイレクトに感じているのだと思います。

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(オンライン学校説明会を行う児浦先生。写真提供は児浦先生。)

★第2回目の思考力セミナーにウェビナーとして取材させていただきましたが、驚きの連続でした。リアルな空間での思考力セミナーは幾度か取材させていただいてきたのですが、オンラインだとまた格別でした。

★テーマは「アフターコロナ」です。いつもであれば、テーマを考える材料や資料、データが用意されているのですが、今回は世界同時的にあまりに多くの人々が体験している日々のパンデミック化の環境がすべてテキストです。

★ですから、問いはシンプルで深いものでした。

★参加した生徒は、手元にレゴや紙、鉛筆を用意しています。児浦先生が、思考力入試やセミナーの意味を生徒と共有した後、さっそく一つ目の問いを投じます。「コロナ時代で良かったこと、うれしかったことは何か?」と。

★この問いはシンプルですが、生徒は、毎日のように、いつも体験しない不自由なことや辛いことに囲まれているわけです。その中で光を見出しなさいというのは、今回のパンデミックと自分の関係を考える時間を持っているという意味なのです。

★まずは個人個人考え、それからブレイクアウトルームにワープしました。オンライン授業やオンライン説明会のなかなかおもしろいところは、このワープ感だったり、どこでもドア感があるのだなあと生徒の様子をみていて感じました。

★しかも、そこで新しい出会いがあります。セミナーに参加する生徒は、すでに聖学院のセミナーでは、グループワークをやることは既知なのです。多くのメディアが取り上げていますから、そこは了解済みで参加します。しかし、どんな未来の友人と会えるかは未知です。この未知感覚に、ワープ感、どこでもドア感が加わるのですからオンラインという制約の中でもワクワクした雰囲気があふれ出ます。

★ブレイクアウトルームにもウェビナーとして参加しましたが、聖学院のファシリテーターがすてきでした。生徒1人ひとりが語る内容について、それを豊かにする対話をしていたからです。生徒の内に目を向けさせる対話ではなく、生徒が自ら内面を引き出そうとするきっかけをつくる対話だったのです。

★生徒が家族とふだんしないようなことをしたことが良かったところですと発表すると、たとえばと問います。すると生徒は料理をいっしょにしたことかなあと。すると、すてきだねと。

★ゲームができたことことかなと生徒が語ると、どんなゲームしたの?と。ハンターハンターだよ、自分の才能をつかって、いろいろなものを増やして成長していくんだと。

★折り紙やってましたと生徒が語ると、同じくらいの歳、僕も折り紙でつくっていたよとファシリテーターがいうと、生徒がエリマキトカゲの超大作を見せてくれます。凄い!となります。たしかに、本当に折り紙なのというほど圧巻でした。

★ファシリテーターは、生徒の表現する思考スキルにいっしょに乗っかります。ですからドライビングするのは生徒なんですね。外から見ていて、どこへ行くのかとか、他のスキルは使わないのかと、アドバイスするようなことはしないのです。これが共感の極意なのだなと。そして、まるでいっしょにジェットコースターに乗って、楽しいすごいすばらしいというものだから、ジェットコースターのドライビングのし甲斐が生徒にはありますね。自分がサプライズを生み出しているのですから。

★ファシリテーターは、どんなことが話されているかスーパーバイザーの児浦先生にプラットフォームで共有をしています。再び全員のミーティングの場へワープすると、児浦先生から幾人かの生徒に話を持ち掛けます。彼らはのアイデアを全体に共有するプレゼンの場に変容します。

★スーパーバイザーの児浦先生は、ブレイクアウトルームのファシリテーターとは違い、生徒のプレゼンに、その意味について感想を語ります。児浦先生なりの意味付けというフィードバックです。いかに君のアイデアは価値があるかということを感じたよいという対話です。

★そして、ファイナルクエスチョンは、「アフターコロナで残したいものは何か?つくりたいものは何か?」という「世界制作」の問いです。

★レゴでつくったり、絵を描いたりしながらつくっていきます。「手は第二の脳」だよ、手という脳をどんどん動かしてアイデアを生んでカタチニにしてねと児浦先生。

★そして、またブレイクアウトルームにワープです。生徒はもうレゴや絵で、自分の考えを鼻をふくらませて語っていきます。ファシリテーターは、今度は生徒が多様な思考スキルを使っているので、対話もより開放された感じになります。一回目は「具体と抽象」のスキルが多かったのですが、今度はそれに「比較・対照スキル」や「因果関係スキル」が加わっています。また「突き抜ける」すごい話もあります。

★それぞれのスキルに乗って、そこをもっと知りたいなあという感じで問うわけです。待ってましたとばかり、生徒は一生懸命説明します。

★ブレイクアウトルーム後にはまた全体ミーティングの場にワープします。そして幾人かの生徒がプレゼン。友人のことや医療のことやワクチンことやAIのことや多様なアイデアがあふれ出ます。プレゼンのたびに黄色い小さき花が一斉に咲き誇ります。黄色い拍手のアイコンを操作して表すからです。

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★オンライン授業、オンライン思考力セミナーは、自己表現をするときに必ず機械の操作をしますから、自分の意志をその都度感じることができるので、まさに「主体的・対話的で深い学び」を自らがドライビングしているという感覚がもてるのだと気づきました。

★終了もあとわずかとなったとき、チャットには、「レゴ最高!」「楽しかった!」「また参加します!」「ありがとうございました!」と生徒の打ち込みが殺到しました。

★聖学院のオンライン思考力セミナーは、聖学院の授業のエッセンスが反映しています。教師のファシリテーターやスーパーバイザーとしての対話スキルの優秀性がわかりました。それにストーリー作りが巧みですね。また、学びのツールを生徒が使える環境になっているところが改めて素晴らしいと感じ入りました。生徒が自ら自然と動けるわけですから。さらに、「問い」の創り方がたくみです。生徒が全身で立ち臨める問い作り。自分の得意なツールで探究したくなるような問い作り。

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★来年のダボス会議のテーマは「ザ・グレートリセット」で、そのキーワードは「タレンティスム」です。聖学院の思考力入試は、まさにそのウネリの象徴でしょう。そして、中学入試の新タイプ入試の新たな意味は、このタレンティスムへの流れとも結びつくことなのでしょう。

★聖学院の教育がいかに最先端を追究しているのか、そして、人間存在の本来性へアプローチしていく問いのデザイン力がいかに豊かなのか。感服した時間でした。

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2020年6月20日 (土)

2021年の入試(18)2021年の中学入試の準備の場を、子どもが自ら未来を創る機会にする。

★GLICC主宰の鈴木裕之代表は、要求値が高い(笑)。GLICCは、帰国生のための中学入試や高校入試、大学入試がベースだから、そこで講義をしたりワークショップをする際、レベルはイギリスのAレベルテストやIB(国際バカロレア)のレベルを要求してくるんです(汗)。ここで学ぶ生徒は80%が、海外にいて昔からオンライン授業です。だからオフィスはこじんまりしています。

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★しかし、帰国してしばらく経つ小学生や英語入試を念頭においている生徒もいて、彼らは通ってきます。ここ2カ月はオンライン授業でしたが、動画やプロジェクター、絵を描いたり図式したりというのは、リアルでもオンラインでも変わりはありませんでした。

★ただ、オンラインの方が素材を鮮明に共有できるので、その点はやりやすかったですね。リアルな授業(ほとんどワークショップといったほうがよいのですが)の方が、たとえば言葉と絵の変換のズレを体験するパフォーマンスゲームなどはさすがに盛り上がりますね。

★鈴木さんは、中学入試の国語でもクリエイティブな要素を求めてくるし、ランゲージアーツやリベラルアーツなどの手法を要求してきます(笑)。実際鈴木さん自身も、IBjapaneseのインストラクターとしてオンラインで海外の生徒を指導しています。海外の口コミネットワークでは、評判が高いですね。一般の日本の教育機関では知られていないエスタブリッシュな時空です。

★だから、いつもクリエイティブコースのアップデートについて対話をしていて、そのたびに可視化していくわけです。CANVASというGLICC独自のプラットフォームを活用しながら、生徒と同様に、Zoomやリアルな対話でやっているわけですが、プラッとフォームに私のテキストも生徒のレポートも痕跡が残るので、議論もしやすいわけです。

★かくして小学生から高校生まで幅広く対話するクリエイティブコースを時間のあるときに私もサポートさせていただいているわけですが、最近思うのは、中学入試の形態がどうあれ、結局やることは「精神生態系」を生徒が自ら提案でき、「創作」活動ができるようになればよいのだということです。

★ポストコロナ時代は、「精神生態系」という自然と社会と精神の循環の探究が重要です。それは医療従事者であっても、都市工学者であっても、政治経済学者であっても、法律家であっても、起業家であっても、SDGsをなんとかしようとしている人であっても、みなで構築しなければならない<世界>です。

★麻布や武蔵、慶応大学湘南藤沢の4科目入試、聖学院や工学院、かえつ有明の思考力入試、東大の帰国生入試、東大や京大の推薦型の入試、早稲田の政経の総合型入試などは、この<世界>を自ら提案できるかどうかの才能を試すことができます。

★一方、そのような社会構想力を豊かにしていくいくには、文学という修辞学は欠かせません。この領域はイマジネーションやモノの見方を覆す発想を養います。ただ読んでいるだけでは足りなくて、自らも創作するわけです。フェリスや雙葉の中学入試問題はそこまで求めているし、名称が変わるかつてのAO入試では、自分とは何かはある意味文学的な素養が必要になります。もちろんノンフィクションでなければならないのですが、共感を得る魅せる表現とそれが導く魂の物語です。

★だから、小学校4年生や5年生であろうと、高校生であろうと、文章を読解して終わりということはありません。作者が書く仕掛けそのものを思考スキルでリフレクションするし、それによって、作者の「元型」とか「プロトタイプ」の構造を見出していきます。その「元型」や「プロトタイプ」あるいは「理論」を今度は他の文章に「適用」するわけです。

★入試準備のためのテキストの中には、河合隼雄さんや中沢けいさんの作品はよく扱われると思います。私は一般のテキストは使わないのですが、2000年前後に入試問題で頻出の作品は、一般の参考書では扱われやすいはずです。

★たとえば、河合隼雄さんの文章を生徒と読むと、深層構造や無意識、箱庭療法の都市工学への応用などの考え方を学んでいきます。その考え方を中沢けいさんの文章を読んだ後のリフレクションで適用していくわけです。そして、文学の創作の仕掛けの片鱗に気づいたら、その仕掛けをつかって、創作もしていきます。

★鈴木さんは、かえつ有明の思考力を学ぶKSSという外部団体による講座もサポートしていますが、基本そこも同じで、私もときどきテキスト作成でお手伝いします。

★ともあれ、そうやって「適用」していくのですが、それができないときはブラッシュアップしていくわけです。いずれにしても、こうしてある作者の文章から、その文章の内容とその内容の背景にある作者の理論的考え方(これは論理的文章でも物語でもどちらにもあります。なければ作者は文章を書けないでしょう。もちろん、ないという作者もいるでしょうが、今のところそのような前衛的な作者の文章は素材として使っていません。)を抽出していきます。

★小学校4年生、5年生は、もちろんすぐにはいきませんから、かなり順を追っていきます。かつて麻布の生徒と2時間くらいワークショップをやったときは、彼らはやはり自分たちの考え方の理論の仮説を構築してくれました。それはあっという間でした。そして、与えられたデータを、その自分たちが構築した理論で分析していき、互いにプレゼンし、理論の最適化をはかるというプログラムだったのですが、彼らはそういう思考様式はやはり得意でしたね。

★麻布の中学入試問題を通して小学校のときからトレーニングをしてきたということもあるでしょう。

★しかし、それは麻布特有の話ではなく、世界ではそういう学びをベースにしています。たしかに、日本では麻布特有の話ですが、今ここで話しているプログラムの在り方は、カナダでは幼稚園から小学校3年生までの話だし、IB(国際バカロレア)では、PYPの中にしっかりありますね。

★したがって、首都圏の中学入試における新タイプ入試の意義というのは、たんなる読解力で終わるのではなく、思考スキルや思考の構造を自ら組み立てられるかに挑戦しているわけですが、本来2科4科でもできるはずなのです。

★ところが、2科4科の入試は、麻布や武蔵とは違い、多くが知識暗記の力を測るテストになっているのです。そこが問題ですね。知識は暗記するのはなく、トポスという記憶術の話で、リベラルアーツの一部です。現代では、そこでは海馬と前頭前野の反応の話ですから、極めて重要なのですが、知識暗記となってしまっては、脳科学の領域を広げることができません。

★ポストコロナの時代にあって、その頑迷固陋な知識暗記主義の牙城を崩す動きがでてくるでしょう。それは新しいスタイルの入試だけではなく、2科4科テストの内側からも変化が出てくると思います。

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2020年6月19日 (金)

2021年の入試(17)2021年の中学入試はどうなるか?ハイブリッドで多様な入試が開花。2科4科も含めてグレートリセット世界を前提とする。

★一斉休校、分散登校、新しい日常の学校とポストコロナを経験している私たちですが、そんな中でも1人ひとり未来への見通しを立てることをとめません。学びを止めない、命を守るのは、いまここで未来の希望と幸福に想いを馳せ実現すべき発想やスキルを実装するためです。その準備ができるいまこここそワクワクするわけです。モチベ―ションが膨らむわけです。

★中学入試も、その実装のための機会です。となるとポストコロナ時代が必要とする発想やスキルの潜在的可能性を試す入試になるでしょう。

Inter-world-maker

(カクテルグラスチャートは、世界認識・世界制作のときにわかりやすい)

★ですから、あまり形態に足元をすくわれないようにしていくことが今後は大切です。学校もアドミッションポリシーとして、多様な入試の形態一つ一つの<意味>を語っていくでしょう。

★来年のダボス会議のテーマは「ザ・グレートリセット」で「タレンティズム(才能主義)」です。ダボス会議は、世界の富裕層や国家のリーダー、NGOが集まって、世界の幸せな方向性を議論し合う場です。ある意味地球規模の集合知といえます。もちろん、だからといって鵜呑みにする必要はないし、してはいけないのですが、大きな流れへのインパクトを無視することはできません。

★資本主義は、簡単に言うと功利主義的な「Ego Maker」を生み出し広げてきたことは異論がないでしょう。彼らのグローバリゼーションは、経済と自然と精神のつながりを包括するものではなく、経済に限ったものだったので、格差や環境破壊などSDGsが是正する問題を生み出してきたことも説明するまでもないでしょう。

★今回の世界規模のパンデミックには、そのことを痛いほど思い知らされたわけです。誰しもこのままではいけない。1人ひとりが幸せに生きるには何をしらよいのか想いを馳せる日々を送っているはずです。その過程で、遠くの世界でも身近な世界でも悲惨な事件が次々起きていて、その原因は、このパンデミックが露にした現代社会システムの欠陥だということも、日々ニュース報道でわかっています。

★その想いをダボス会議は「ザ・グレートリセット」という言葉で鷲づかみしました。

★グレートリセットというイノベーションによるパラダイムシフトやパラダイムシフトによるイノベーションの創発ということ自体は、古代、中世、近世、近代と人間の世界認識が変容してきたわけですから、実は新しい動きではないのです。

★しかし、今までの世界認識は、あくまで人間社会のシステム進化であったのですが、今回は社会と自然と精神の循環世界を創るという話です。つまり、私たちは<Ego Maker>から<Inter-World Maker>へ自己変容していくわけです。「ザ・グレートリセット」という名称にはそういう意味がこめられていることを期待します。そのテーマのキーワードが「タレンティスム(才能主義)」ですから、そうだろうなあと推測するわけですし、もしもダボス会議がそうでなければ、そのように自分たちでしていかなくてはと思うのです。

★そうなってくると、時代精神に最も敏感な中学入試問題には、それが反映するでしょう。すでに聖学院が先週オンライン思考力セミナーを実施して、テーマを「afterコロナ」として設定したのですから、さすがです。

★このような新タイプ入試だけではなく、2科4科でも当然同じようなテーマが取り扱われるでしょう。100字から200字くらいの論述も各学校多くなるでしょう。タレンティズムの流れは、新タイプ入試でなければ反映できないかというとそんなことはありません。中学入試という場を活用して、子供の未来をみんなで考える場を創りたいものです。

★入試の形態としては、タレンティスムに対応すべく、多様なカタチになると思います。

・2科4科入試

・1科目入試

・得意科目入試

・適性検査型入試

・思考力入試

・自己アピール入試

・プログラミング入試

・PBL入試

・AL入試

・総合型入試

・英語入試

・帰国生入試

・オンライン入試

★など多様な形態が花開くでしょう。

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アクセス分析による緊急事態宣言解除後の小中高関係者の意識

★緊急事態宣言が段階的に解除される過程で、小学校・中学校・高校の関係者(教師・生徒・保護者・塾・メディアなど)の意識も当然変化しています。緊急事態宣言下の5月1日から10日の意識と分散登校が始まり徐々に学校再開になっている6月1日から6月18日のホンマノオト21のアクセス数を分析してみました。下記のグラフのように受験モードが戻りつつあります。とはいえ、「新しい日常」下での「受験モード」です。

200618

★6月1日から18日のアクセスランキング50位までを挙げてみましょう。

1:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早...
2:2021年の入試(10)武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英、工学院大学附属中の動きに注目!
3:ポスト・コロナショック時代の私立学校(128)品川翔英 突出した未来の学...
4:ポスト・コロナショック時代の私立学校(102)横浜創英 オンラインスクー...
5:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
6:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(23)本格的なPBLの時代 突...
7:三田国際 2020年中学入試を終え、目が覚めるような新機軸へ準備整う: ...
8:2021年の入試(05)開成&武蔵のオンライン授業の成績の付け方は、オン...
9:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(26)工学院の田中歩先生の未来...
10:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
11:ポスト・コロナショック時代の私立学校(120)ノートルダム女学院 分散登...
12:2020年春の大学合格実績(3)鴎友学園女子
13:2021年の入試(07)八雲学園の俊敏かつ緻密な動き パンデミックを乗り...
14:ポスト・コロナショック時代の私立学校(125)聖学院の伊藤豊先生の本来的...
15:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(24)本格的なPBLの時代 突...
16:2021年の入試(12)聖学院インパクト 突出したオンライン説明会×オン...
17:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(25)工学院の教師とZoom対...
18:2021年の入試(06)新しい保護者 ナチュラルシチズンとして学校や教育...
19:2021年中学入試を読み解く準備(10)立教女学院の人気の理由 骨太の教...
20:2021年の入試(08)2021年入試は、桐蔭学園中等教育学校の教育の総...
21:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。
22:ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(21)聖...
23:2021年の入試(11)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシ...
24:2021年の入試(09)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシ...
25:ポスト・コロナショック時代の私立学校(109)聖パウロ学園 戦略的コミュ...
26:ポスト・コロナショック時代の私立学校(119)アサンプション国際小学校 ...
27:ポスト・コロナショック時代の私立学校(127)ノートルダム学院小学校 新...
28:2021年中学入試を読み解く準備(11)武蔵野大学中高の迅速な対応 オン...
29:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(27)「学ぶ」から「創る」へ ...
30:ポスト・コロナショック時代の私立学校(126)ノートルダム学院小学校 新...
31:2021年の入試(05)思考コード~自分の才能に気づき突き抜ける自分を見...
32:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(28)コンパクトな思考スキルは...
33:2020年からの中学入試(23)STEAM教育を実施している学校を探そう...
34:2021年の入試(16)新渡戸文化のハイブリッド型学習の価値 グレート・...
35:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
36:ポスト・コロナショック時代の私立学校(122)和洋九段女子 良質のハイブ...
37:ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(23)光...
38:ポスト・コロナショック時代の私立学校(123)和洋九段女子 良質のハイブ...
39:ポスト・コロナショック時代の私立学校(108)聖パウロ学園 オンラインダ...
40:ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(63)聖...
41:ポスト・コロナショック時代の私立学校(124)ノートルダム女学院の新しい...
42:ポスト・コロナショック時代の私立学校(121)ノートルダム女学院 分散登...
43:2021年の入試(13)ノートルダム女学院の歴史的インパクト ハイブリッ...
44:2020東京大学合格発表の季節(2)海城・西大和の躍進は序列を崩すか?私...
45:2021年の入試(15)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシ...
46:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
47:三田国際教頭田中潤先生 満を持して「新たな教育理論」を披露!9月1日静岡...
48:【2019年大学合格実績02】東京都市大学附属等々力の躍進の意味。 五島...
49:パンドラのパラドクス シノプティコンを生み出すブロックチェーンの最後のエ...
50:【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。

★1位の「2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して」の記事は、確かに中学受験の話です。しかし、学校選択の動向が次のように変わっているのではないかという趣旨で、2月の段階ですでに中学入試の世界もポスト・コロナの動きを予兆しているかのような内容になっています。

<ともあれ、現状は、中学入試は、偏差値競争の場は20%で、80%は教育の質の話です。メディアは、そのうちの20%の領域を中学受験に縮減して報道しがちです。受験生・保護者のクリティカルシンキングという選択眼を磨く自助努力は重要ですね。でも、自助努力はなかなか大変です。多くの学校説明会や特に体験授業に出かけ、実際に学校の先生方と対話することがポイントとなるでしょう。

実際、首都圏では、受験生・保護者―私立中学―塾―模試センターなどの連携・協働して中学入試に臨むようになってきています。合格以上に生き方まで考えるプラットフォームが中学入試マーケットです。中学受験マーケットは、合格のみを考える場です。どちらに移行するかは説明するまでもないような気がします。>

★実際、2位の「2021年の入試(10)武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英、工学院大学附属中の動きに注目!」の記事は、入試情報であると同時に、「新しい日常」下での学校選択の新しいウネリについて書いています。

★もちろん、ホンマノオト21は伝統と革新の統合の行方を追っているので、記事に偏りがでてきます。しかし、今までであれば、1位のタイトルのような記事は、この時期はさすがに順位を下げますが、ここにきてもアクサセスされ続けていますから、現状と今後の動向の変化への関心が高いということでしょう。

★しかも、その変化がポストコロナの話ですから、なおさらです。

★入試を通して子供たちの未来のキャリアデザインに想いを馳せるのが、日本の現状の文化でもあります。小中校大の節目節目の入試の変化に関心を持つのは当然でしょう。まして、激変する可能性が大ですから、受験モードのアンテナはどんどん高くなり、高感度になっていくのでしょう。

★だからこそなのかもしれませんが、「ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(23)本格的なPBLの時代 突き抜ける人類としての自分へ①」のような記事が6位に入っています。一般にこのタイプの記事は、10位以内に入ることは珍しいですね。というのも、見える情報の収集がブログでは当たり前になっているので、このような目に見えない部分の話題は、煩雑なので、ホンマノオトでは、アクセスランキングは上がらないのが通例だからです。

★私の覚書(すべてがそうだと言われればそうなのですが)として書き留めたものですから、多少驚いています。この驚きも、変化の兆しを示唆しているのかもしれません。

★それから、工学院の田中歩先生と聖学院の伊藤豊先生の記事のアクセス数が多っかったのもある予感がします。すなわち、新たな21世紀私学人の記事が注目されることは次回のダボス会議のテーマであるタレンティズムのウネリにつながっていくはずだからです。

参照)6位「ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(26)工学院の田中歩先生の未来質感のすばらしさ!ビジョンを語るカリスマ教師からメタビジョンをマインドセットする共感的教師へ ナチュラルティーチャーの時代到来」

参照)14位「ポスト・コロナショック時代の私立学校(125)聖学院の伊藤豊先生の本来的存在への回帰、この時だからこそ。」

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2020年6月18日 (木)

2021年の入試(16)新渡戸文化のハイブリッド型学習の価値 グレート・リセット後の世界の教育の新しい意味がある。

★新型コロナウィルス感染防止の緊急事態宣言が解け、学校再開の段取りになった今、新渡戸文化の行っているハイブリッド型学習(リアルな授業とオンライン学習を結び付けた学習)の本当の価値が映し出されてくるはずです。今のところは、オンライン授業のやり方や学びを止めなかったとか大人100人とオンラインでつながるどこでもドア授業を行っているとかが注目されていますが、学内の先生方は、そこからさらに奥行きのある教育を考えているはずです。

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★多くのメディアが注目しているのは、同校の山本崇雄先生(新渡戸文化中学校統括校長補佐)の知(鋭い知性・豊かな感性・しなやかな精神身体性の塊のことを意味します)と行動力でしょう。山本先生の周りには多くのすてきな仲間が集結しています。私が尊敬しているリベラルアーツ型体育教育を実践している小林先生までもそのメンバーなぐらいです。

★また、山本先生は、「未来教育ナイト」をオンラインで開催して、「全ての世代のパートナーシップ」としての教育コミュニティを形成している最中です。その拠点が新渡戸文化や横浜創英なのかもしれません。

★先日は、木村泰子さん、工藤勇一さんと鼎談を行ったようです。コロナ禍、after/withコロナ時代、あるいはポストコロナ時代にあって、「学校はどこへ向かうべきか」、「全ての世代のパートナーシップ」としての教師や教育について大いに対話が盛り上がったようです。

★20名以上の中高生と保護者も参加するかなりオープンで世代越境型のオンラインイベントになったようです。全国から約300名の教員、教員以外の大人が集まったというぼですから、そのインパクトはすさまじいですね。おそらく、3人の先生方の共通点は、生徒が主語で、生徒が自律的に行動できる環境こそが明日の学校であり、未来の学校であり、来たるべきグレートリセットの世界だという信念でしょう。

★そのように山本先生自身が行動することが、生徒をはじめ多くの人びとをハピネスクリエーターの世界へ結びつける架け橋だというのでしょう。新渡戸文化の建学の精神は、もちろん新渡戸稲造の精神です。新渡戸は日本と世界の架け橋になろうとしました。山本先生は、前近代社会から近代社会にシフトしたときに新渡戸稲造に課せられた架け橋の精神を、近代社会からようやくグレートリセット社会にシフトするときに課せられた1人ひとりの精神を互いに結びつけるハピネスブリッジへと現代化しているのでしょう。

★建学の精神は継承しなければなりませんが、それは時代精神に応じて普遍と変容の対話をしていくことが大切です。それを山本先生は学内の仲間と学外の仲間と行っているのです。そうそう、学内も学外もそんな壁はオンラインによって越境したというのがすばらしいところで、メディアは、ここにグレートリセット後の新しい学校や教育の可能性に気づいているのでしょう。

★そして、私が感じるのは、ポストコロナにおいても続ける新渡戸文化のハイブリッド学習に、もう一つの可能性を感じています。オンライン学習で明らかになったのは、GAFA自身が語っているし、台湾のデジタル大臣も語っていますが、テクノロジーやエンジニアリングにはリベラルアーツがベースになければねということです。

★今回テレワークやオンライン社会に突入したとき、同時にセキュリティ問題が発生しました。新型コロナウィルスは新手のコンピューターウィルスの攻撃も生みました。このような世界リスクマンジメントはテクノロジーや科学の力は絶対的に必要ですが、それよりも前に人間とは何か?人間の幸せとは何か?それを実現するためにはどうするのか?といった教養が必要だということにGAFAのような巨大グローバル企業も気づいているのですね。それでマインドフルネスとかリベラルアーツとかガーデニングとかいろいろな言葉で、そこを表現しているわけです。

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★さて、このリベラルアーツですが、実は「雄弁術」「記憶術(暗記術ではありません)」「対話術」というのが内包されています。新渡戸文化は、山本先生と仲間の先生方がオンラインで大人と対話する”Happiness Bridge”を開催しています。もう4回実施しています。参加した大人は100人を超えているでしょう。私も縁あって2回目に参加できました。

★ブレイクアウトルームで大人1人に生徒2,3人という対話になります。大人の方は生徒の雄弁かつ柔らかいプレゼンテーションに耳を傾け、もう少し詳しく知りたいなあと思うところを尋ねていきます。共感的対話の雰囲気が溢れています。

★雄弁術と対話術がちゃんとここには存在しているのですね。そして、生徒は、Zoomのブレイクアウトルームという箱庭で、世界を象徴的に形成していきます。アリストテレスの記憶術「トポス(場)」は、空間をデザインすることによってシンボライズや記号を設定していくことによって、脳内に世界のマップが広がります。その互いの思い出という記憶がどれくらいインパクトがあるかによってその世界への共感は広まっていくのです。

★そのブレイクアウトルームで広がった記憶がどんどん共有されて拡大していけば、ハピネスワールドは現れるわけですね。

★かくして、新渡戸文化で行っているオンライン学習やこれからのハイブリッド学習には、オンラインというテクノロジーにリベラルアーツが結びついた、今までの日本の教育では可視化されてこなかったリベラルアーツ(なかったわけではないのです。河合隼雄さんや中村雄二郎さんの影響力が教師に広まていたということは潜在的にはあったのです)が出現します。いやいや出現していますが、ともあれ、そのリベラルアーツも伝統的な教養主義的なものではなく、生徒が自律する知のアイテムとして実装されるかなりプラグマティックなものです。

★そして、この自律の過程は、GAFAが欲するZENのマインドフルネス境地の道行である十牛図の過程さながらです。生徒と大人のブレイクアウトルームの対話は、いきなり十番目の境地から出発しているのですから、これもまた新しいカタチの自律のプロセスの発見でしょう。

★この世界は中村雄二郎さんや河合隼雄さんによってユング的な世界や臨床的な知ともハピネスブリッジされています。新渡戸文化のハピネスブリッジはそのような世界をブレイクアウトルームというトポス(場)に結びつけています。それはミヒャエル・エンデが「モモ」という美しくもチャレンジングなストーリーで展開した世界でもありましょう。

★ダボス会議のテーマ「グレート・リセット」のキーワードは「タレンティズム(才能主義)」です。もちろん、世界の超富豪コミュニティが考えることですから、タレンティズムを利益につなげる方向に活用するでしょう。しかし、それは同時にハピネスクリエイターも生み出すトポス(場)の出現の兆しでもあります。

★新渡戸文化や横浜創英をはじめ、山本先生と仲間がかかわっている学校にこの世界が拡大することを期待しています。私も別路線ではありますが、新しい世界が拡大するもう一つのトポスを創っている最中です。それは以前手伝っていた21世紀型教育コミュニティとはまた別です。

★こうして、人間存在の幸せをつくる多様なコミュニティが生まれ、やがてどこかで対話しながら自律分散協働系のハピネス世界が広がっていけるようにワクワクしながらかかわっていきたいと思っています。あくまで、小さき野の菫のごとくですが。

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2020年6月16日 (火)

2021年の入試(15)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語③

★八雲学園の英語教育が破格なのは、英語の教師の研修の質にもあてはまります。米国大学で現地の英語の先生を指導する教授を招いて半年間くらい八雲学園の英語の教師に教授法を指導しています。ホームステイ先は、横山先生の家庭です。剣道場があって日本文化の環境もあるので、招かれた先生も大喜びだそうです。

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★その教授法がどのようなものか、近藤隆平先生に尋ねたところ、日本の英語教員に対する指導方法とはかなり違いますということでした。どの程度違うのか、たまたま資料をもっていたマニトバ大学のランゲージアーツのテキストを共有しました。

★スクロールしてみていくと、近藤隆平先生は、共通している部分はかなりありますね。スキル、構造、タキソノミー、文化的背景とアイデンティティに対する視点など、カナダと米国は、リベラルアーツという共通した土台があるので、似てくるのでしょうということでした。

★最近では、学校によっては、教師が米国やカナダに派遣されて学んで来るという研修もありますが、教師全員がその恩恵に浴することはできません。

★その点、八雲学園は、全員が学べるのです。今後はオンライン環境も完備しているので、この研修はますます充実していくことでしょう。

★ボッサムさんが、大学院で研究しているところと重なる部分がありますねと。現場でこのような環境があるとは、私が在学中にはなかったのでしょうから、羨ましいですとも。最先端の英語教育を学んでいるボッサムさんの発言は、近藤隆平先生を勇気づけました。やはり、このプランは間違っていなかったのだと。

★豆塚先生が、数学はどうですか?というので、同じように数学の資料を共有し、スクロールしてみていきました。豆塚先生も数学を専門的に研究していますから、さっとみてすぐに理解していました。

★数学という教科で、コミュニケーションやメンタル数学、不確実性、現実社会への適用などがトピックとして挙げられているのをみて、、自分たちが気遣ってきたところと重なりますと。

★破格のグローバル教育とは英語教育だけではなく数学など他教科も世界標準であるということを示唆しているのだと改めて気づきました。

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2021年の入試(14)ノートルダム女学院の歴史的インパクト ハイブリッドPBLと哲学と宗教と②

★ポストコロナショック時代に、ノートルダム女学院がハイブリッドPBL授業を行っていくということは歴史的インパクトを生み出すという話を前回しましたが、もう1つ歴史的インパクトが同校から生まれています。それは、PBLの真髄である人間の本来の在り方を見つめ、それに基づいて生徒1人ひとりが自らの存在を創っていくリベラルアーツが新しいカタチで生まれているということです。

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★リベラルアーツは今やGAFAに代表されるようなコンピュータサイエンス産業のCEOや台湾の天才デジタル大臣オードリ・タン氏などが、エンジニアリングにはリベラルアーツが必要だと言っている程注目されています。もちろん、2000年以上続くヨーロッパの伝統的なリベララルアーツではなく、そのエッセンスを継承した新しいカタチのリベラルアーツでしょうが。

★また、一方で、出口治明立命館アジア太平洋大学(APU)学長が昨年出版した「哲学と宗教全史」がベストセラーになっています。西洋と東洋の哲学と宗教を扱った大著ですが、人間が何を考え行動し、困難を引き受けて乗り越えてきたか想いを馳せ、このパンデミックを1人ひとりが自衛しながらも協働し生き抜くための道標となっているのかもしれません。

★そういえば、1995年、あの忌まわしい残酷な地下鉄サリン事件があり、阪神・淡路大震災という悲惨な災害に見舞われたときも、「ソフィーの世界」という哲学書がベストセラーになりました。Windows95が発売され、コンピューターサイエンス世代が誕生した時でもあります。

★世界リスクと哲学とコンピュータがつながった年です。そのつながりは、今も続いているのでしょう。そのことに改めて気づかされたのが今回のパンデミックであり、そのことを今後忘却できない程の世界同時的なインパクトがあったわけです。

★そして、ノートルダム女学院には、そのリベラルアーツの土台となる哲学や宗教を学ぶ教科として「宗教科」と「社会科」があります。新しくカリキュラムを創るのではなく、すでにあるのです。ただ、大学合格実績や偏差値にこだわる世間の常識が、この2教科の歴史的重要性に気づくことができないでいたわけです。

★しかし、ポストコロナショックの時代は、そのインパクトの重要性に世間も気づいていくことになるでしょう。

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★昨日も、高2の宗教の時間で、山川先生は、アンドリューというロボットが自由を求める映画を活用しながら、自由とは何か議論していく哲学対話の授業を実施していました。もちろん、アンドリューというロボットは、メタファーですから、他の人物にどんどん置き換えて考えていける教材だと山川先生は語ります。

★社会科の霜田先生も参加して議論になりました。哲学的にはサンデル座標で論じて相対化していくのだけれど、宗教の授業では、その座標を広げていくというより、アンドリューをたとえば聖パウロの生き方に重ねて考えていくわけですよねと山川先生と対話するシーンがありました。他校では見かけない新鮮なシーンでした。

★このメタファーを解読しながら思考する学びこそ、リベラルアーツの真骨頂です。GAFAのスタッフや台湾のデジタル大臣がブレイクスルーを生み出す時の仕掛けでもありましょう。実はこのメタファーやミメーシスのリベラルアーツのスキルは、数学や理科でも活用します。これについてはいずれご紹介しましょう。

★とにかく、予測不能な時代に直面してしまった私たちは、今様々な問題や壁に取り囲まれています。テレビの情報番組も、公衆衛生や経済的ダメージの情報とそのダメージを乗り越える医療従事者や起業家を取材し取り上げています。その取り組みを見ると、創造性への挑戦があることを感じないわけにはいきません。

★ノートルダム女学院の教育の中にすでにある哲学と宗教を土台とするリベラルアーツ的素養の展開に今後期待がかかるわけなのです。

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2021年の入試(13)ノートルダム女学院の歴史的インパクト ハイブリッドPBLと哲学と宗教と①

★昨日6月15日(月)、ノートルダム女学院も分散登校から学校再開へと移行しました。ノー3密時空やマスク着用、手洗いなどCOVID-19の感染防止策を講じながらニューノーマルな学校生活が始まったのです。

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★緊急事態宣言に対応した休校期間中から、オンラインPBL授業に挑戦していたため、学校再開になっても、リアルな空間とサイバー空間の両方をハイブリッドした学習の場として活用しているのがノートルダム女学院です。

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★今回各学校で行われていたオンライン授業の名称は、さまざまで、遠隔授業、オンライン授業、リモート授業、ディスタンス授業、ハイブリッド授業などといろいろでした。

★それほど意識して使われてはいなかったかもしれません。文科省の表現に合わせて遠隔授業と呼んでいたということもあるでしょう。また、オンライン授業とかハイブリッド授業と呼ぶと、会議システムを活用して対面双方向型オンライン授業にしなければならないから控えめに遠隔授業と呼んでいたという場合もあるでしょう。

★ノートルダム女学院の場合は、多くの教師は在宅だったし、生徒は当然全員在宅でした。そのため、教師も生徒も互いのリアルな空間とサイバー空間がハイブリッドになっていました。

★教師は学校にいて、生徒が在宅の場合、やはりハイブリッドではあるのですが、学校と家を結ぶという遠隔の意味が前面にでてきます。教師も生徒も在宅の場合、学校と家庭の距離という物理的概念はなくなります。その意識の違いが、遠隔授業と呼ぶかハイブリッド授業と呼ぶかの違いになるのかもしれません。

★遠隔授業という意識だと、パンデミック収束後は、今までと変わらない授業にもどりがちです。一方、ハイブリッド授業という意識で行ってきた場合、収束後も、リアルな時空とサイバー時空は同居します。学校なのか在宅なのかという違いはあまり問題ではなくなり、やはり、ハイブリッド授業になるのです。

★したがって、ノートルダム女学院では、会議はZoomで行われているし、授業では、タブレッドやノートパソコンも活用しながら行われていきます。実は、同校は以前から行われていたのですが、その動きが学校全体として大きな動きとなっていくのでしょう。

★そして、このハイブリッドPBL授業が、今後の日本の学校の授業のモデルになるし、世界の学校の動きと呼応していくウネリを創るという歴史的インパクトを生み出していくでしょう。

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2020年6月15日 (月)

ポスト・コロナショック時代の私立学校(128)品川翔英 突出した未来の学校のモデルづくりの挑戦着々。

★今年4月、品川翔英は、校名変更し、共学化し、PBL授業や探究、ルーブリックなど子供にとっての未来の学校モデルになるべく出発しました。そしてご承知のように、他校同様に、パンデミックに見舞われ、学校は休校、そして分散登校、新型コロナウイルス感染防止をしながらのニューノーマルな学校生活へと激しい変化の過程を歩んでいます。

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★先日、同校の国語科の先生方と、この激しい過程の中で行ったオンラインPBL授業と分散登校下のリアルなPBL授業について多角的アプローチでZoom対話をしました。まず田中幸司先生が自ら実践した授業をプレゼンしました。9つのアプロ―チで、授業の目的の意味や学びのツールの意味、ストーリーの効果、生徒の思考の深さなど対話を通してリフレクションしていく(ERD:Empowerment Reflection Dialogueと私は呼んでいます)手法です。

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★それによって、田中先生の暗黙知としてのPBL授業の意味や手法が可視化されます。何より、それを対話によって先生方がシェアしていくことを通して、品川翔英の国語科の未来の授業モデルが浮き彫りにされていきます。

★もちろん、それは生徒の未来を生み出す場となるのは、言うまでもありません。

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★田中先生の古典の授業と国語表現のPBL授業のプレゼンがありました。1人meet動画による反転授業、ロイロノートによるシンキングチャートの活用、ジャンボードの活用、Googlemeetでの同時双方向型オンライン授業など授業の展開に応じて、それらのミックスが計算されてデザインされていることをシェアしていきました。

★そのとき、それらのツールやストーリーが、どのようなアクティビティによってなされているのか、どのようなラーニングパターンに対応しているのか、思考の深さは知の座標のどの象限に位置しているのかなど対話していきました。

★田中先生の古典の授業では、たとえば、生徒が故事成語を調べて、短文を作る過程や掛詞などの修辞学的意味を考える学びを行っていますが、そこでは生徒は批判的思考を使っているという意味の再認識が行われたりしました。

★古典の知識を確認する時は生徒は学習サプリを使うのですが、授業ではその意味を発見していく学びになります。

★私は、ここにはアリストテレスの記憶術と修辞学という欧米の学びの基礎土台であるリベラルアーツとシンクロするのではないかと情報提供をしました。すると、田中先生をはじめ、国語科の先生方は、リベラルアーツとは探究だけでではなく、国語の授業の中でも可能かもしれないと探究がはじまったのです。

★田中先生の国語表現の授業は、徹底的な思考スキルを学ぶ場でした。ロイロノート、スプレッドシート、ジャムボードなど同期・非同期のミックスが自在になされている授業で、生徒たちが<世界の意味>を紡ぎ出していく表現を学ぶインパクトがあると先生方は共感していました。

★そのうえで、やはり多角的アプローチで分析するわけです。Mozartの作品をアナリーゼする感覚ですね。

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★こうして、最終的には、田中先生のPBLの授業はオンラインであってもリアルであっても、そのレベルはステージ4.0以上という理想的なデザインになっていたことがシェアできたのです。

★もちろん、シェアしたということは、共感できたということであり、共感できたということは国語科の先生方1人ひとりの授業も同じような質であるということを示唆しています。

★そのシンクロ具合を確かめる方法として、先生方は、ときどきチャットに、いまここでの気持ちや気づきを言語化していきました。それをテキストマイニングして、再度自分たちの想いをモニタリングしていたのです。

★このように授業研究とデザインは、幾重ものフィルターを通してエッセンスを抽出していく作業でもあります。ですから、2時間を超える長時間のZoom対話があっという間でした。権威者にフィードバックをもらうのも一つの方法ですが、授業の信頼性、正当性、妥当性は、多面的に仲間が対話しながらモニタリングしていくとその質が顕在化されかつ相乗効果が表れてきます。

★そして、田中先生は、謙虚にもまだまだだ、これからもっと磨いていかなくてはと。このあくなき探究への情熱に頭が下がります。次回は平岡先生のPBL授業をERDシェアをします。

★こうして、国語科全体が盛り上がっていきます。おそらく国語科による新しいランゲージアーツというリベラルアーツの「文法学」「論理学」「修辞学」を現代化したものが創発されていく道のりになっていくのだと思います。

★ポストコロナは、GAFAとアフターGAFAの共創的競争になっていきます。そのとき、すでにジョブスが言っているのですが、リベラルアーツなきエンジニアリングは考えられないという発想が濃厚になっていくでしょう。

★品川翔英は、オンライン授業によって、このリベラルアーツ付きのテクノロジー、いやテクノロジー付きのリベラルアーツの現代化を一気呵成に生み出している可能性が大です。生徒にとって幸せな学びの場だということでしょう。今後がますます楽しみですね。

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2020年6月14日 (日)

2021年の入試(12)聖学院インパクト 突出したオンライン説明会×オンライン思考力セミナー×オンライン授業

★昨日6月13日(土)、聖学院はオンライン説明会とオンライン思考力セミナーを実施。オンライン説明会は5回目。オンライン思考力セミナーは1回目。来週土曜日、はやくも2回目を実施するということです。

★3か月前に、オンライン授業を先生方が一丸となって開始し、日本全国のモデルになりました。多くのメディアが取りあげています。ご覧になった方も多いでしょう。聖学院は何かとメディアに取り上げられます。思考力セミナーもすでにNHKをはじめ多くのメディアが放映しています。

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★中学生起業家山口由人氏(現高1)も多くのメディアに取り上げらています。そういえば、永世称号をもっている渡辺明棋士も聖学院の中学在学中にプロ入りしています。また多くの俳優やジャニーズも輩出しています。多様なタレントが開花しています。

★まさに<Only One for Others>という3O精神がどんどん現実化しています。ここにきてそれがさらに加速しているのは、偏差値という一つの評価軸にこだわるのではなく、英語入試、帰国生入試、3つの思考力入試など多様な評価軸で生徒がチャレンジできるゲートをマインドセットしているからです。

★そして、そのチャンレジのモチベーションを思考力セミナーでサポートしています。どの試験にしても考えることは土台になっています。ですから、考える準備を思考力入試でできるので、聖学院に入学する前に、学び方を学ぶ体験ができます。

★なかでも、思考力入試は批判的思考と創造的思考を学ぶ準備します。

★欧米の学校、特にIBとカナダの公立学校は、小学生のころに、しっかり非批判的思考と創造的思考をトレーニングするカリキュラムができています。グローバルな時代や、アフターコロナの時代は、予測不能な壁が次々とたちはなかります。そしてインフォデミックというリスクも広がります。

★小中高生だから、そんな壁を乗り越えるための創造的思考はいらないとか、インフォデミックを鵜呑みにしない批判的思考は必要ないということはもはやあり得ないでしょう。

★しかし、そこに学校全体で取り組んでいるところはまだまだ少ないですね。なぜなら、相変わらず偏差値という評価軸のみを頼りにしているからです。

★そのような事態に対し、聖学院は子供の学びを守り、子供の命を守り、子供の未来を守るために教育出動しています。そして、その出動の有効性を実現するために、今回のような新しいオンライン説明会やオンライン思考力セミナーを実施したのです。

★新しいことを行うと、中学受験市場では、謎の入試をやるとか偏差値の低い学校が何かやっているという抑圧的に揶揄するのが通例でしたが、そのような壁を次々と粉砕してきたのが聖学院です。今では多くのメディアも応援しています。

★今回このオンラインツールを活用することで、同校の広報部長児浦先生は、今までにない手ごたえを感じていると語ります。雰囲気ではなく、実際受験生・保護者とオンラインだけれど、いやだからかもしれませんが、この時期にすでに互いに深く知り合える事態が起きています。

★互いに本質を理解しながら、共感しながら中学入試の準備ができるのは、学校にとっても受験生・保護者にとっても安心だし、未来の子供の姿をイメージすることもできます。

★どうやら、聖学院は、学校の大学実績と受験生の偏差値というスコアをマッチングさせる従来の入試から、教育多様なプログラムと受験生の才能という質のマッチングさせる新タイプ入試にパラダイム転換を果たしたと言えましょう。

★そういえば、説明会で放映された教頭伊藤豊先生の現代文の授業のBig Questionは、壮大なパラダイム転換史と自分のいまそしてこれからを関係づけて思考する問いでした。

★そして、今回のオンライン思考力セミナーのテーマは「アフターコロナ」。同校サイトには、こう載っています。

<はじめに、コロナ時代で良かったこと・うれしかったことを各自で発表し、皆で共有をしました。そこから、コロナが終わっても残したいこと・残したい世界を、レゴ®プロックや絵で表現をしました。出来上がった作品を前に、制作者がそれぞれ説明をして、発表しあいました。作品には、「家族で一緒に過ごせる時間をこれからもキープしたい」「朝の満員電車をなくしたい」「以前住んでいたミャンマーの空気をまた味わいたい」など、一人ひとりの大事な想いが表れていて、本当に感動しました。>

★とあります。入試問題は学校の顔。まさに授業のエッセンスと入試のエッセンスが密接に結びついています。

★ここに、世界を変える才能者がどんどん飛び立つ聖学院の秘密があるのでしょう。

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2020年6月13日 (土)

2021年の入試(11)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語②

★八雲学園の5月の半ばの幾つかの発信メッセージと5月後半の幾つかの発信メッセージをそれぞれテキストマイニングしてみました。

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★すると、Zoom群と検温群というくっきり違う2つの言葉の集合体が出現しました。これについて、豆塚先生は、八雲の教師として、そしてOGとして、本当にその時その時、生徒に何が必要かを受けとめて先生方は動いている俊敏さに改めて驚いたし、OGとして自分はそのような先生方のもとで学園生活を送れてこれたことに対する感謝でいっぱいですと。

★またボッサムさんも、本当に学園生活はおもしろかったのは、自分たちの想いを受け入れてくださる先生方の存在ですよね。だから、いつもサプライズや感動がいっぱいでした。常にまさかと思うようなことが起こるのですからと語ります。

★たしかに、熱中症が危ないという警告がでるや、自動販売機が急に1人1本ずつフリーになったり、特別な勉強や部活のあとお腹がすいたなあと思えば、肉まんがでてきたり、あまりに暑い日が続いたときには、かき氷を先生方がつくって提供してくれたりとエピソードがいっぱいです。

★しかし、ボッサムさんは、このサプライズというウェルカムの精神は本当にすばらしいし、世界の人々と交流する時には大切な心です。こうして大学院が9月まで休校ですからオンラインで私も日々講義に参加しながら八雲学園に訪れているわけですが、それと変わらぬ環境が八雲学園にはあるのですから驚きですと。

★豆塚先生も、そうです。直前までオンライン授業をやるとはまさかと思っていました。でもやらなくてはと強く念じるように思っていると、不思議に動き出してあっという間にその環境になってしまったのです。まさにサプライズです。

★菅原先生や横山先生も、本当にいつも決断と実行が速いのはウチの特徴です。中学生は全員1人1台タブレット型ノートパソコンをもってふだんから授業をしているという環境もあったということもあるでしょうが、各家庭のWifi環境とかまず調べてから動くのかなと一瞬よぎったのは杞憂でしたね。まずやってしまおうとバタバタと準備をし在校生と保護者に連絡し合いながらあれよあれよという間に進みましたと語ります。

★近藤先生は、たしかにやらない理由を並べる教師も在校生や保護者もいないというのは、世間からみたら不思議だと思います。しかし、決してそうではないのです。教師も生徒も保護者も生徒の学びを続けることと命を守るという人間として大事なことを行うことの意義を共有しているのです。いろいろな障害は、その都度解決しながら、走りながら考えればよいのだというのが八雲マインドですねと。

★このさりげなくすぐに行動できたという近藤先生のお話は、目を世間や他校に向けると、そう簡単なことではないことにすぐに気づきます。そういう大変な準備を当たり前のこととしてやってのけてしまう八雲学園の底力と気概。やはり、米国プラグマティズムと茶や空手やバスケットなどの道を究める心が一体となっています。このような欧米と日本の精神を融合させている文化が根付いている学園だなと深く感じ入りました。

★がしかし、という間もなく、ボッサムさんが、Zoomオンライン授業で驚いていたと思ったら、分散登校に突入して、検温から始まり感染防止策への準備にすぐに取り組んでいるのです。生徒もZoomもいいけれど、やっぱり学校でみんなに会えるのが最高だと口々に、互いをたたえ合うようにやってくるのですと。

★菅原先生も、いやあ本当に目頭が熱くなりました。オンライン授業で十分だから学校にはいかないと言い出す在校生はいなかったのですよ。だから、準備のし甲斐もあったし、やってよかったと思っています。私もフェイスシールドとマスクの両方を装着して仕事をしてみましたが、これは逆に危険だと実感しました。それで、フェイスシールドは時に応じて装着することにして、アクリル板とマスクでいくことにしたのですと。

★豆塚先生とボッサム先生は、万全なのですが、授業をするとある問題にすぐに気づきました。オンライン授業では、リアルなコミュニケーションの息吹を感じ取るのがなかなか難しいというもどかしさがありました。それが解消できるとワクワクしていたのですが、逆にアクリル板が壁になって、さらにもどかしさは増したのです。声を大きくしないようにと言いながら声が小さいと今度はお互いにアクリル板が壁となってしまうのです。ジレンマを私たちも生徒たちも感じました。

★近藤先生は、そういう生徒の緊張感や不安な気持ちをすぐに察知して、そこを生徒といっしょになって解決していこうとする先生方の気遣いがありがたいわけですと。

★もちろん、今ではそこを生徒と一緒になって乗り越えていますと豆塚先生。

★菅原先生と横山先生は、新型コロナウィルスは、ネガティブな面もいっぱいありますが、いろいろな気づきをもたらしてくれたとポジティブにとらえて行動できるかどうかは私たちの意志次第だということも改めてわかったのですと語ってくれました。

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2020年6月12日 (金)

2021年の入試(10)武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英、工学院大学附属中の動きに注目!

★首都圏私立中高一貫校の中学入試市場は、全国小学6年生をマーケットとする一般市場規模に比べると市場参加者の数ではわずかに3%規模。しかし、いわゆる御三家を頂点として、学歴キングダムを支える市場としては異質な領域あるいは特異点としてその存在は重要です。

★全国の私立中高一貫校と公立中高一貫校に広げても、10%。それなのに注目されるのは、ある意味学歴キングダムのポジショニングゲームの重要拠点だったからです。そう「だった」のです。

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(工学院のグローバルプロジェクト。高校2年生が全員参加できるモチベーションをもって取り組んでいます。Growth Mindset Schoolの凝結した教育活動に発展しています。)

★というのも、この新型コロナウィルスによるパンデミックがもたらしたものは、人間の本来的な知(知識・感性・身体の総合的なエネルギー)への回帰です。その回帰は、学歴キングダムというそもそもの在り方の弊害も、90%の生徒が属する国のための労働者養成の教育システムの弊害も露にして、そこの是正と転換を迫っているからです。

★といっても、ウイルスがそのような具体的な行動をしているのではありません。それをきっかけに気づいた学校が教育出動しているために、その是正や転換がおきるわけです。

★たとえば、武蔵野大中の日野田直彦校長や新渡戸文化中の山本崇雄先生、横浜創英中の工藤勇一校長は、つかず離れずなのでしょうが、生徒のモチベーションをあげるマインドセットをする教育環境を創るという点においてある意味仲間の先生方です。

★働き方も、実に自在で、いろいろな学校で改革者としてシフトしたり、校長を兼任したり、複数の学校のコンサルなども行うパラレルワークを実行し、ある意味何千人もの教師からの憧憬の眼差しで注目されています。

★したがって、3人の先生方が動くとき、それぞれの学校のブレインや仲間の先生方のネットワークも動きますから、ものすごい数の教師が現場で授業を変えていきます。それがアクティブラーニングなのかPBL(おそらく経産省の未来の教室に参加しているので、PBLという言葉を使っているとは思います)なのかはどうでもよく、対話やディスカッション、プロジェクトベースの活動の場で、生徒が様々な壁を乗り越えたりスルーしたりして自律かつエージェントとして社会を巻き込んでいけるモチベーションを内燃してくれればそれでよいのです。

★この流れは、確実に学歴キングダムの意味を無化し、欲望の資本主義をタレンティスムの方向(世界経済フォーラムのテーマ)に持っていくインパクトを与えていくでしょう。私立中高一貫校のコミュニティにとっては、リバタリアンの集結として恐れられるでしょう。サンデル教授のカテゴライズによるならば、ケイジンジアンのようなリベラリストとハイエクのようなリバタリアンのぶつかり合いというわけでしょう。

★そして、工学院大学附属中学校のように、教師が前面に出てくるのではなく、生徒全員が学びの共同体を創っている生徒コミュタリアニズムの学校もあります。メディアは、工学院を取材する時、ターゲットが生徒でない場合が多く、この新しい動きを察知できていない場合が多いですね。

★さらに、品川翔英の柴田校長のように、シバタリアン学校というのもあります。ラグビーのワンチーム路線でいながら柔らかい自由主義の学校です。サンデル教授のカテゴライズには収まらないので、シバタリアニズムとしておきます。上記の学校の先生方をリスペクとするでしょうが、完全に独自路線です。それでいて、めちゃくちゃファンが多いのに驚きです。おそらくafterGAFAというところに位置していて、いまのところまだ誰もその位置づけを知ることができないでいるでしょう。

★ともあれ、かくして、私立学校は、教師リベラリズムと教師リバタリアニズムと生徒コミュタリアニズム、シバタリアニズムのすてきな共創相克になります。コンサバはもともと私立学校にはいないのですが、私立学校の枠組みの中では、相対的にコンサバという学校があります。それは市場からドロップアウトするか、改革するかということになります。

★私立学校ではなく、国立なのですが、筑駒は、生徒コミュタリアニズムの学校です。いやここは教師と生徒によるコミュニタリアニズムかもしれません。

★工学院は、教師はリベラリストでしょう。

★生徒コミュニタリアニズムといっても、それは学校や社会に対して生徒共同体にまとまらざるを得ないZ世代というミッションによって支えられているので、それは学校にいる間だけです。おそらく、メンタルモデルはリバタリアンでしょう。超自由主義なのです。

★それゆえ、相対的に学校間の正義論的あるいは政治経済配分論的な意識(どんなに学校が政治的に中立だと言っても、人間は社会的動物だし政治的動物です。そのような中立だあ!という教育言説を振りかざす学校は、予測不能な事態に対応できていないはずです)は違いがあるのですが、自由主義的な動きを活発化させているという点では共通しています。麻布の生徒は基本、リバタリアンですから、御三家という学歴キングダムの拠点などという冠をどうするかは、考えて動くでしょう。開成は、学歴キングダムの拠点という冠をほしいままに使えるので、そこはうまくやるでしょう。それもまたリバタリアンです。

★何を言っているのか?結局、装いはいろいろです。学歴キングダムはあるわけですから、その中でどんなポジショニングをとるのかは、戦略的に必要でしょう。ミニ開成のようにポジショニングゲームで勝ち抜くか、そのようなシステムの外にでて悠々自適に暮らしていくか、学歴キングダムを無化する動きを創るのか、様子をみていて勝ち馬に便乗するのか、いろいろです。

★しかし、2021年は、武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英中、工学院大学附属中の動きとそれぞれの学校の仲間の学校(直接間接合わせると80校くらいになるのでは?首都圏私立中の30%)が、学歴キングダムがつくってきた心の壁、学歴の壁、才能の壁、男女の壁、教育の壁、経済の壁などをぶっ壊していくでしょう。

★そうそう、それとは別路線で、カトリック学校の中にもきちんと真理の教育共同体に立ち還るところもでてきました(カトリックの学校は1986年以降、学歴キングダムに加担しているところも多かったのですが、リバタリアンとは違う真理は自由という意味での自由主義を回復しようとする学校が出現してきました)。まだ5校にも満たないですが。カトリック学校の新しく生まれ変わったグループも将来注目されるようになるでしょう。

★さて、あなたは学歴キングダムを選びますか?未来への自由の道を選びますか?2021年は、決定的な中学入試市場の意志決定問題が顕れてきたのです。

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2021年の入試(09)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシーンを創り、壮大な未来を拓く物語①

★昨夜、八雲学園の先生方とOGといっしょにZoomミーティングをしました。参加者は、近藤隆平先生(英語科主任、海外・英語特別委員長)、横山先生(中等部部長・数学科教諭)、菅原先生(高等部長・社会科教諭)、豆塚先生(数学科教諭、OG)、ボッサムさん(大学院生、OG)。

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★豆塚先生とボッサムさんは同級生で、中高生時代に私は何度かインタビューで出会っています。大変懐かしく、思い出話に花を咲かせながらすてきな時間を過ごせました。

★さて、この3カ月間、八雲学園は、オンライン授業、Web配信説明会を次々と実施したかと思えば、分散登校移行を速やかに実現し、来週あたりからいよいよ通常に向かっていきます。先生方と生徒・保護者のダイナミックで俊敏な動きと、そうはいっても、まだまだパンデミックは収束しているわけではありませんから、検温をはじめ感染防止のための自衛対策も講じる綿密な動きをしています。

★話はそんな近況の出来事から始まりました。そして、常にOGの目から見た八雲学園の底力を恩師と共に語り合う不思議なZoom空間が広がっていました。

★私立学校が古くて新しい文化を継承していく姿を改めて見ることができたし、教育が未来を創る人材を生み出すというのは、知識や技術を覚えるだけではないのだという実感を得る時間でもありました。

★あまりに広く深い話でした。それゆえ、どこまでご紹介できるか自信がありませんが、がんばります。何せ、八雲学園はラウンド・スクエアの加盟校で国際会議で世界のエスタブリッシュスクールの生徒と交流していますが、これはダボス会議の私立中高版だったということに気づくところにまで到達するのですから、目が覚めるような話なのです。

★感動とサプライズとウェルカムの精神の八雲学園の背景には、このような壮大な構想があったのです。(つづく)

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2020年6月10日 (水)

2021年の入試(08)2021年入試は、桐蔭学園中等教育学校の教育の総合力が広く浸透する。

★緊急事態宣言による一斉休校がもたらしたオンライン学習をきっちり進められた学校は、外から見ていたのではなかなか見えないその学校の教育の総合力や質とそれを通しての生徒の未来の活躍力を可視化しています。その可視化をイメージしやすい学校の1つが桐蔭学園中等教育学校(以降「桐蔭」)です。

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(桐蔭の生徒がオンラインで活動している姿を見て、私が勝手にイメージした桐蔭の6年間の教育の広がりの図です)

★今や、桐蔭と言えば、普段からアクティブラーニング(AL)型授業になっていて、そこでは知識基盤社会に必要となる基礎学力の学び方を体得していくというのは有名です。新学習指導要領の言葉に置き換えると「主体的・対話的で深い学び」を体得できるということでしょう。

★そして、基礎学力を超えて、さらに自分の興味と関心のあるテーマを深堀していく「探究」が「ミラトビ」と呼ばれている「未来への扉」です。

★桐蔭の場合、「AL型授業」と「未来への扉」の役割をきっちり分担しているのが特徴です。AL型授業は学習のメカニズムのプロトタイプであり、探究はその適用です。こうして「自律した行為」ができるようになっていくというのは以前からイメージしやすかったのです。

★そして、その「自律した行為」が大学入試で効果を発揮するのは、多くの受験生・保護者も経験上わかっていたと思います。ただし、大学入試のためにこれらけの大掛かりな仕掛けは必要なのか、キャリア教育と言っても受験指導でよいのではないのかというオールドな意識は捨てきれないでいたということも一方で否めません。

★なぜ捨てきれないでいたかというと、実は、生徒はこの「AL型授業」と「探究」を「AL型授業+探究」ではなく「AL型授業×探究」として体験していたことを感じ取る手立てがなかったからです。

★ところが、ここおのところ立て続けに、生徒が自ら企画立案して学内を巻き込んですてきな活動を展開している記事や動画が発信されました。1つは、同校の吹奏楽部による「キミの夢は、ボクの夢」の演奏です。テレ演奏というだけではなく、みんなで合唱してもいます。手拍子などの多様なパフォーマンスもあって、感動的ですが、なぜこのような活動をしたのかがまたグッときます。

★このコロナ禍で、医療従事者の方をはじめとする、たくさんのエッセンシャルワーカーの方が、多くの命を救ってくださっている。そんな方々に自分たちの音楽を通じて少しでも笑顔になってほしいという思いで演奏したというのです。自分たちのできることで、何か奉仕をしたいという意志の実現は、もちろん、「AL型授業×探究」で生まれたエージェンシー活動です。

★おそらく、桐蔭にとって、この「エージェンシー」という言葉を当てはめるとしたら、主体的に自分ができることを精一杯実践することで社会にも貢献できるという社会実装を自律して行えるように成長していくというような意味が込められると思います。そのような成長は、ふだんの授業や探究、大学入試の枠を超えた活動でしょう。いつもなら、なかなか見ることができませんが、今ではYoutube動画でも見ることができるのです。この動画も5000回を超える視聴がありますから、桐蔭の教育の総合力や質、そして生徒の社会での活躍力を多くの人が実感できます。

★もう一つの活動は、大学プレスセンターの記事「生徒の有志が企画したオンラインレクリエーション''Scattergories(スキャテゴリー)''で自宅学習中の生徒に活気~桐蔭学園中等教育学校」で読めますが、生徒が企画して学内みんなでStay homeを乗り切ろうという活動です。

★生徒は、協力しながら、オンライン上で、ロール・ルール・ツールを複雑に組み合わせてゲームを創造しています。しかも、大いにチーム桐蔭の良き雰囲気を共感しているというのが伝わってきます。この活動も、アクティブラーニングのロール・ルール・ツールの組み合わせを最適化して学んでいくエージェンシーな動きの実践でしょう。

★この情報は、多くの人も共感できます。自分たちもStay homeで人とつながりたいという気持ちを募らせていますから、このような活動の意味は響きます。

★どうやら、そんな破格なパワーを生み出せるなら、大学入試のためだけではなく、それはもちろん成功させますが、それよりもっと先に進み、社会で活躍し、well-beingを導くのではないかという実感を今や抱くのはそう難しくありません。

★しかも、学校から大学・社会へ移行する在り方が変化して、大学や社会が求める資質・能力やスキルを有した人材が、「アクティブラーニング×探究」から生まれるエージェンシー活動ができる人材と結びつくということも実感できるのではないでしょうか。

★このいわば新しいキャリア教育をトランジションという新しい考え方で研究している桐蔭の先見性も、「アクティブラーニング×探究×エージェンシー活動」に密接に関連してくることも納得がいきます。

★そして、このような桐蔭の分厚い教育の全貌を見たり感じたりできるようになることは、2021年中学入試にインパクトを与えることになるでしょう。

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2020年6月 9日 (火)

ポスト・コロナショック時代の私立学校(127)ノートルダム学院小学校 新しい日常の学校のモデルを形成②

★学習する組織が、閉じられた組織でないためには、外部のネットワークを結ばなければならないのですが、ただ有名な方を招いて講演会を催すだけでは学習する組織にはなりにくいのです。その組織のメンバーが1人ひとり自分の探究活動の一環として外部のセミナーなどに参加してネットワークを築き、本なども読んだりして、それを自分なりに言語化したものを組織内に共有していく。そのうえで、外部の講師などを招くのは問題ないのですが、まずは自己研鑽という自己マスタリーが優先します。

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★ノートルダム学院小学校でもそういう自己マスタリーと学内共有ができています。情報共有も、ただレポートをシェアするだけではなく、日々の授業のデザインの段階やリフレクションのミーティングでシェアしていていると推測します。というのも、同校のサイトといまからご紹介する梅下先生の外部での発表内容がシンクロしている部分があるからです。

★さて、ノートルダム学院小学校では、ロイロノートを活用している先生は多いです。したがって、その実践家として、ロイロノートの教育プラットフォームで発表される先生もいます。今回そのプラットフォームのセミナーなどで発表されている梅下先生の記事を見ることができましたので、ご紹介します。

★Zoomとロイロノートを使ったオンラインによる思考型の理科の授業のプログラムの発表でした。最初の導入の部分からさりげないけれど、オンラインならではの配慮がされています。

★ふだんのリアルな授業だと、生徒は先生がどんなツールを使うのか、そのツールを自分たちはどう使うロールを果たすのかなど全貌が見えます。しかし、オンラインの場合、それがないので、ただ「何」を学ぶかだけでは、学びが能動的になりません。

★そこで、梅下先生は「今日のメッセージマップ」と称して、生徒がどんなツールを使って、ロールをしていけばよいのかアクティブな行動をとることになるマインドセットをします。ただし、ロードマップのように細かくは示しません。あくまで、メッセージで、マップは自分でイメージしてくださいということです。常に自分の仮説を立てて、動きながら考えて軌道修正していくという学びのパターンは、梅下先生の大切にするところです。

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★そして、前回の課題の共有ですが、大事なことは問いも自分たちでつくるということです。この共有には、ふだんからロイロノートを活用しています。この共有は、ロイロノートは便利ですね。一望で共有できるシステムになっています。

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★問いを共有したら、ブレイクアウトルームで3人1組で対話します。3人1組だとほどよくロールが自然とわかれます。シックスハットまでいかなくても、調整役、ある主張をする生徒役、それに反対する生徒役という感じになります。まさにダイアローグを仕掛けています。この場合のダイアローグとはテーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼという議論がぐるぐるまわる西洋哲学で使われる対話(日本語で弁証法と訳されていますね)のことです。

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★こうして、生徒は、問いに対する推理を自分たちなりにします。推理ですから、自分のアイデアというトピクセンテンスとその根拠となる理由、それから具体的な説明や反例などを書き込んでいきます。ここには、具体と抽象スキル、理由と結果のスキル、比較のスキルなど多様な思考スキルを複合して創れるようにカテゴリー表やその他のシンキングツールやチャート(これもロイロノートには備えられています)を活用していきます。

★この推理と思考スキルの複合はリベラルアーツの自由七科ののうち3つの領域である「文法学」「論理学」「修辞学」をコンパクトに現代化したもので、可視化しているところが生徒には取り組みやすくなっています。

★最後にルーブリックで生徒はセルフリフレクションをしていきます。このモニタリングこそ、総括的評価、形成的評価の次の第3の評価と言われているメタ認知能力を活用して自分の学び方をブラッシュアップするモニタリング評価です。

★さりげないけれど、リベラルアーツの現代化とメタ認知評価、ディスカッションや対話、問いの作成など欧米のエスタブリッシュスクールや国際バカロレアのPYPなどにも通じる豊かな思考型授業だということが了解できます。

★大胆かつ繊細な視点は、学内で丁寧な対話が行われていて、そこでの気づきを梅下先生は巧みにアレンジして盛り込んでいるのでしょう。

★自己マスタリーの行為が、シェアされ学習する組織がさらにシナジー効果を生み出していると言えましょう。素晴らしい取り組みです。ノートルダム学院小学校には、梅下先生のような教師がたくさんいます。何度か複数の先生方と勉強会をやったことがありますが、強烈にそれを確信しました。

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ポスト・コロナショック時代の私立学校(126)ノートルダム学院小学校 新しい日常の学校のモデルを形成①

★6月1日から、ノートルダム学院小学校も、分散登校が始まっています。そして、休校以来、毎日のように同校サイトにアップされているオンライン授業の様子は今も継続しています。このサイトはとても貴重です。というのも、分散登校によるノー3密時空における思考型授業のありかたと同時並行でなされているオンライン思考型授業の様子が克明に記録されているからです。

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★このリアルな授業、しかもノー3密空間の思考型授業なのですが、それとオンライン思考型授業のハイブリッドな試みは、世界共通して未知の体験であり、情報共有が望まれています。そういう要請にきちんと応える貢献活動という奉仕も同校はしていることになるからです。もちろん、同校の在校生と保護者の学びの権利と命を守ることが日常の目的で、このような発信は学内で安心安全の雰囲気を創るのに第一に貢献するでしょう。

★さらに、教育学や組織マネジメントの成果としても注目されるべき発信でもあります。なぜなら、このような緊急時に俊敏かつ柔軟にハイブリッド思考授業を行えるのは、<学習する組織>でなければうまくいかないからです。硬直したピラミッド型組織だったり、現場の1人ひとりの教師に判断をゆだねていたのでは、うまくいかないのは、今回の感染拡大防止策をとった世界のリーダーの力量の違いをみても明らかですね。

★<学習する組織>は、ピーター・センゲ教授の組織開発理論ですが、センゲ教授は、あのドネラ・メドウス教授の親友です。ドネラ教授は「もし世界が100人の村だったら」の発案者です。書籍化される前に亡くなったので、池田香代子さんとC・ダグラス・ラミスさんが遺志を継いだのです。センゲ教授はこの書の背景にある「システム思考」をドネラ教授と共有していました。

★さて、ピーター・センゲ教授によると、<学習する組織>は、次の5つの要素が相互に関係してできあがります。

1)ビジョン共有

2)チームワーク

3)システム思考

4)メンタルモデル

5)自己マスタリー

★ノートルダム学院小学校は、原山校長のもと聖書の言葉であり国連も尊重している<men for others>という黄金律を共有しています。人類愛とか隣人愛と置き換えてもいいでしょう。ビジョン共有を大切にしています。

★また、毎日のハイブリッド思考型授業の発信をみると、多くの場合「学年一同」という署名がはいっています。実際授業前の打ち合わせや授業のリフレクションでワイガヤは当たり前で、チームワークを大切にしている学校ですね。

★また、オンライン授業で明らかなことは、デバイスやアプリ、プラットフォームはシステム思考で出来上がっています。したがって、これを活用して、効果を出せるということは、「思考システム」の潜在的能力がもともと高かったということが証明されたわけです。

★カトリックの学校ですが、教師や生徒・保護者は全員が信者でもないし、信者であったとしても、ものの見方・感じ方は多様です。そのフィルターともいうべきメンタルモデルを1人ひとりが持っています。そのフィルターを尊重して、合意形成していくことができるのは、なかなか難しいですね。しかし、ノートルダ学院小学校は、互いのメンタルモデルを尊重して、ビジョンを実現するための最適解を対話によって見つけていきます。だからこそ柔軟かつ俊敏に動けるのです。

★そして、自己マスタリーと言って、仕事以外で、先生方が自己研鑽するために本を読んだり、セミナーに参加したり、自分の授業を教育コミュニティで発表したりするわけです。そして、その情報をまた学内で互いに共有するわけです。今回同校の梅下先生の理科のオンライン思考型授業がロイロノートスクールという有名な教育プラットフォーム「ロイロオンライン」で発表されたものが公開されていました。次回はその記事を見ていきたいと思います。

★かくして、学校の新しい日常生活を形成するときに、学習する組織として動くということが1つのポイントかもしれないと気づいたのです。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(28)コンパクトな思考スキルは、プラグマティックなリベラルアーツ

★この3か月、オンラインPBL授業について多くの先生方と語り合い、そして今、分散登校になり、ノー3密時空でのPBL授業をどうするかという対話が始まっています。

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★要するに、ノー3密でグループワークや対話はどうするのという現実的な問題が横たわっているわけです。PBLについて、この3か月間で、

1)従来のリアルな時空でのPBL

2)オンライン時空でのPBL

3)ノー3密時空でのPBL

の3つの時空それぞれの在り方をどうするのかデザインする事態に直面したのです。一遍五3つの時空のPBLを考える事態が来るとは思ってもいませんでした。

★そのことが結果的に、従来のリアルなPBLで、その土台としてリベラルアーツの現代化と哲学とSTEAMといっていたことが、いっぺんに凝集してしまったというのは、なんとも驚きです。

★IT業界でも最近は、リベラルアーツやマインドフルネス、庭園発想が必要だなんてよく耳にします。しかし、実際のところそれがなんであるかはあまり明らかになっていません。

★私は、様々な学説を追うアプローチではなく、それをコンパクトに<Thinking Skills System>として、少しずつ生徒や先生方と共有しています。これは、実は思考コードのエンジンです。思考コードはコンパスで、行方を探索する自在に書き換えられるマップでもありますが、道行がわかったところで、その道を歩いていく時にどんなエンジンを創るのかという話なのです。

★経験(リアルな与えられた経験と自らが生み出す経験の両方を含みます)から学んで知識を格納したり想起したりするには、思考スキルが必要です。これは、アリストテレスのトピカ(トポス)という論理学の1つの柱ですが、そこで展開されていることです。それをコンパクトにまとめたものです。もちろん、アリストテレスをそのまま抽出したのではありません。この流れを汲むレトリック論など様々な領域からですが、それらのルーツはアリストテレスのトピカです。

★論理的に文章を読んだり書いたりするのは、この思考のエンジンを、思考コードのB軸領域で使います。アリストテレスの「範疇論」「命題論」「分析論」で描かれている部分だし、現代論理学や言語技術のパラグフライティングなどに進化しているものですね。それらをさらにコンパクトにしています。

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★プレゼンをするときには、聴き手を自分の世界に巻き込まなくてはなりません。魅せる表現が必要です。聴き手の想像力を喚起し、共鳴共振共感的なコミュニケーションが大事です。これは、思考のエンジンである<Thinking Skills System>を、思考コードのC軸で活用します。知識・理解のA軸は、格納・想起のサイクルを回しながらB軸でもC軸でもフル回転です。A軸を暗記格納で終わらせてきた20世紀型教育では、B軸思考やC軸思考を難しくしてきたのです。しかし、暗記から格納・想起の<Thinking Skills System>に転換することによって、思考の広さと深さを手に入れることができます。

★ともかく、この領域はアリストテレスが「弁論術」という書で描いています。ディベートや法廷弁論術へと進化していきますが、それをコンパクトにしたものが<Thinking Skills System >です。

★これは、実はロイロ・ノートのシンキングツールやチャートというカタチデでも、開発されていて、<Thinking Skills System>とも親和性があります。ロイロのツールは多くの学校ですでに使われています。まさかそれがアリストテレスに結びついていると意識はされていないでしょうが、それでよいのです。大事なことは、実装です。

★また、首都圏模試センターの模擬試験の解説解答には、思考コードと思考スキルの表記が、一問一答に記載されています。これもまた<Thinking Skills System >と親和性があります。こちらは、生徒への共有が広がっています。やはり、まさかアリストテレスにつながっているなどとは意識はされていません。それでよいのです。大事なことは実装です。

★アリストテレスの「範疇論」「命題論」「分析論」「トピカ」「弁証術」は、自由七科のリベラルアーツのうちの「文法学」「論理学」「修辞学」の3つに相当します。他に「幾何学」「算術学」がありますが、これについても勿論アリストテレスは論いていますが、もはやこの部分は現代数学を参考にするしかないので、そこはSTEAMのMに任せます。

★それからリベラルアーツには「体育」と「音楽」があります。今回のオンライン化によって、ずいぶんこの部分の重要性が浮き彫りになりました。オンラインでストレッチや歌つなぎ、ダンスつなぎ、リモートコンサートやパフォーマンスが爆発していましたね。

★これもリベラルアーツの現代化の流れだったのです。これも保健体育と音楽家にお任せなのですが、数学や保健体育、音楽の理論を考える時に、実は<Thinking Skills System>を活用できます。

★数学は究極は置換操作と変容操作です。保健体育は身体感覚や身体と心の関係を結びますから、やはりその関係はこの<Thinking Skills System>を神経インパルス循環やホルモン分泌・循環、血液生成・循環などを分析したり総合したりするときに使えます。

★かくして、ポストコロナは、顕在化したリベラルアーツを新しい日常の生活の中で実装することがポイントだということが見えてきたわけです。だとしても、今更すべての人がプラトンやアリストテレス、デカルト、ニュートン、Bach、カント、ヘーゲル、ハイデガー、フッサールなど読めるはずもありません。そういう意味では倫理や現代社会や宗教などの教科は実に重要です。

★しかしながら、宇宙船船地球号の市民がリベラルアーツを実装するには、それらもすべてくし刺しする対話の一貫システムが必要です。ここはデビッド・ボームの発想に私は共鳴しています。しかし、ボームはこの実装システムを明らかにはしていないんですね。暗黙知のバリエーションで、実装部分は示唆的な感じで終わっています。

★そこに行くと、物理学や数学、哲学に造詣の深いネルソン・グッドマンの「世界制作の方法」は実装方法を明示しています。がしかし、コンパクト過ぎてもう少しヒントが欲しいかなと。

★麻布の国語や社会の入試問題、東大の帰国生入試、イギリスのクリティカルシンキングテスト、AO入試、小論文の対策ワークショップをやりながら、片方で宿泊探究PBLプログラムを先生方とデザインしながら、日能研の教科コードや首都圏模試の思考コードを作成するメンバーだったりしながら、思考力入試の開発を先生方と楽しみながら、大学でIBエッセンスを学生と取り出しながら授業デザインをするPBL授業やレポートのアセスメントを創りながら、最近ではZOOMで世界制作茶室を催してPBL授業の達人の先生方と話しながら、あるいはZoomでPBL授業研修をしながら、抽出されていったのが、リベラルアーツの現代化実装版の<Thinkig Skills System>です。

★すでに幾人かの先生方と共有しはじめました。また小学生対象の思考力講座言語編でも共有しています。

★従来のリアルな時空でのPBLでも、オンラインPBL授業でも、ノー3密時空でのリベラルアーツでも、要は生徒が主体的に自律して深く考え、社会課題を解決する創造性を引き受けるコンパッションが実装されればよいと私は考えています。

★その実装場としてそれぞれのPBLの授業がデザインされればよいわけで、そのデザインの中の数あるアクティビティの中にディスカッションとかペアワークがあるだけです。それぞれの時空に適したアクティビティを選択して組み合わせればよいのだと思っています。

★大事なことは、<Thinking Skills System >と<思考コード>を自在に組み合わせるリベラルアーツの現代化の実装ができることがコアなのです。別の言い方をすると、「世界制作の方法の実装」です。

★もちろん、このアイデアは一つのアイデアにすぎません。いろいろなアイデアがあってよいと思います。どれを選択し、組み合わせ、新たに独自のアイデアを創っていくのかは私事の自己決定だし、それこそ創造的思考の面目躍如でしょう。

★ただ、確認したかったのは、このポストコロナ時代の動きが、実はすでに声高に言わなくてもリベラルアーツの現代化とその実装がICTによって加速しているという現象が生まれているということなのです。ここに新しい才能主義という宇宙船地球号としての市民社会の未来があると予想しています。

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2020年6月 8日 (月)

ポスト・コロナショック時代の私立学校(125)聖学院の伊藤豊先生の本来的存在への回帰、この時だからこそ。

★聖学院がかかわり支援して30年以上経つメーコックファームは、この新型コロナウィルスの猛威に困窮に陥っています。パンデミックは、施設のあるタイ北部山岳地帯にも及び、貴重な財源である宿泊事業を停止せざるを得ない事態においこんでいるのです。

★そこで、もう10年以上聖学院タイ研修旅行チームを率いている同校教頭の伊藤豊先生は、支援募金活動に立ち上がりました。聖学院の生徒やOB、関係者にこう呼びかけたのです(伊藤先生のfacebookは友だち以外には公開されていませんが、大事なメッセージなのでここで共有させていただきます。伊藤先生、無断引用お許しください)

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(毎年、伊藤先生は、静岡で行われるシンポジウムでタイ研修の本来的な意味について講演をしてきました。)

<アノラックさんは言います。「ここはChange mindの起きる場所です」と。
その言葉のとおり、多くの子供たちがここを巣立ち立派な大人に成長しました。そしてここへ戻って来ては、後輩たちのために施しをします。
聖学院のみなさんにとっても、メーコックは今も特別な場所であり続けている思います。みなさんの力を貸してください。
支援募金の手紙が届いていないこともあると思います。
一緒に参加した仲間と連絡を取り合ってください。>

★そして、見事に支援募金は集まりました。伊藤先生は感謝のメールをこう書いています。

<タイ研修旅行参加経験のある聖学院OBのみなさん、そしてタイ研修旅行を支援してくださったみなさんへ
メーコック財団支援募金にご協力くださりありがとうございました。宿泊事業停止による損失分を目標額として募金の呼びかけをしましたが、それを達成することができました。愛情にあふれたメッセージも頂戴しました。感謝申し上げます。
至急送金したいところですが、現在、メーコック財団は再スタートの準備を整えています。現地の受け入れ態勢ができるのを待って送金いたします。今月末か来月始めの予定です。
新型コロナ・ウィルスの影響はこれからも長く続きます。継続的な支援の方法を考えてゆきます。
来週の日曜日に子供たちがメーコックへ戻ってきます。子供たちの未来が明るく照らされるようお祈りください。>

★伊藤先生は、教頭として壮絶ともいえる忙しい仕事をしていることはみなさんもご承知でしょう。そして、思考力セミナーやPBL授業、広報活動など身を粉にして活躍しています。今回のオンライン学習にも挑戦しています。

★そんな中で、遠くの仲間のために、オール聖学院とともに本来的な教育出動をしました。

★この時だからこそこの伊藤先生とオール聖学院の本来的な行動力をここに記録しておきたかったのです。なぜ本来的なのか、私が説明するまでもないでしょう。もうみなさんと共有できると思います。

★伊藤先生は、毎年、タイ研修の後、生徒のレポートを編集し、記念祭(聖学院の文化祭)などで販売しています。もちろん、売り上げはすべてメーコックファーム財団に寄付します。

★今回の緊急事態宣言で、外出自粛となり、多くの人々が、エモーショナル、フィジカル、ソーシャルが重要だと意識しました。しかし、ソーシャルの面で、意識を超えて、さらに奉仕活動に身を投じるのはとても勇気のいることです。

★聖学院は、「コンパッション」という言葉を大切にしていますが、今回それが実行に移されたのです。今年もレポートは出版されます。感染拡大の第2波第3波も世界同時的に予想されています。レポートが出版されたらお知らせが同校のサイトなどで公開されると思います。ぜひ購入してタイやミャンマーの子供たちの痛みを共有し、それが遠い国の話ではないことも共有し、社会課題を自分事に、自分事を社会課題にといっしょに意識していきましょう。

)レポーtについては、大学通信オンラインでも紹介されています。→こちらをご覧ください。

 

 

 

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ポスト・コロナショック時代の私立学校(124)ノートルダム女学院の新しい日常

★ノートルダム女学院は、今週はまだ分散登校。来週から段階的に全学年登校となります。つまり、新しい生活様式を踏まえた授業体制を見定めるために分散登校が行われているのでしょう。

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★文部科学省の「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」を参考に、ノートルダム女学院の基準や衛生管理体制をつくり、様子をみながらキャンパスでの教育活動を開始しているのです。

★中1も3人1組で感染防止に気をつけながら、ようやくキャンパスオリエンテーリングを実施できたようです。

★生徒のいないPBLルームからは森兼先生の声と画面越しから聞こえてくる生徒の声が聞こえてきました。対面双方向型オンライン授業が実施されていました。丁寧な対話の授業に、生徒も安心してスピーチしていました。

★また別の教室では、中村良平教頭がZoom会議を行っていました。オンラインはあらゆるシーンで活用されているのがノートルダム女学院の革新的なところでしょう。

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★このように、同校は、オンライン授業と並行しながら、学年を限定した登校を継続していますが、来週からはいよいよ、段階的ではありますが、全学年登校となります。オンラインとリアルのハイブリッド授業から、今度はリアルな授業の中に、オンライン授業で新たに見出した授業スキルをどのように生かしていくのでしょうか。

★ノー3密空間で、リアルにはディスカッションやペアワークはやりにくい部分もあります。そんな制約の中、また新たな創意工夫が生まれてくるのでしょう。進化するノートルダム教育!ノートルダム教育修道女会は、自らを<INNOVATIVE EDUCATORS>と呼んでいます。

★まさに、今、教師と生徒が一丸となって創造的な世界をつくっているのです。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(27)「学ぶ」から「創る」へ みんなWorld Makers!♪

★この3カ月間、オンライン学習とはどんなことができる学びなのか、実践されている先生方とZoom対話をしてきました。そして、今、分散登校になって、リアルな授業にオンライン学習の成果をどのようにパラレルに活用できるかZoom対話が続いています。私自身リアルな場にもいるし、オンラインの場にもいるようになりました。パンデミックに直面して、PBL授業の脱構築という未知の体験に臨んでいるのだと思います。

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★そして、感じることは、対話している先生方も生徒も保護者も、ワクワクしている様子なのは、どうやら学んでいるというより、創っているという感覚なのだなあと。

★学習者中心主義は、学びの楽しさと責任を生徒が全面的に引き受ける環境を創るということですが、学びを全面的に引き受けるとは、実は最終的には自分の世界を創ることであり、その内的な世界が、社会や自然と人類の精神の循環を創る<世界>とシンクロし、つまり共感し、自分の世界も地球の世界も良き相乗効果を生み出すことでしょう。そのときマインドフルネスだし、well-beingでしょう。

★私自身は、まだまだ修行の道をやっとはじめたばかりという感じなので、Zoomはもっぱら茶室サイズの対話です。お茶会の亭主を私がつとめるときは、勉強させてください教えてくださいだけの方は招待しません。仕事としての研修と知の茶室は区別しています。

★ですが、私の研修では、やはり勉強させてくださいという方はいないですね。もともとそういう研修は引き受けないということもあるのですが。

★それはさておき、どういう方と知の茶会を開いたり、研修を行うかというと、以前は一緒に学ぼうという方と対話していると思っていました。しかし、Zoomで平気で2時間、3時間行う方々は、フロー状態になっています。

★これは、たしかに学び合っているのだけれど、そこが主軸ではなく、メインは互いに世界を創っているのだと感じるようになったのです。

★そう、世界を創っているのです。もちろん、世界といっても、一国の社会システムとかグローバルな世界とかではなく、授業の世界だったり、広報の世界だったり、思考の世界だったりするのですが、いずれにしてもそこには深く存在の世界がありてあるものとしてあるのです。それを一緒に創っているのです。

★この存在の世界の広がりと深さが、やがては社会システムにつながっていくし、その正当性、信頼性、妥当性のモニタリングが学びだったのだと感じるようになりました。

★学びを積み上げて行って、創造的思考によって、世界を創っていくというイメージをパンデック以前は描いていたのですが、ポストコロナショックにおいては、「学ぶ」(>「創る」)から(「学ぶ」<)「創る」にシフトすると感じています。

★たとえば、来年の世界フォーラムのテーマが「グレイト・リセット」で「資本主義から才能主義へ」とシフトするなら、確かに「学ぶ」から「創る」へシフトするのは必然的な流れなのかもしれません。

★学びながら創るはどこかストイックで辛い雰囲気が伴います。まして学ぶだけで創るがないと、興味と関心がないものに関しては、子供だけではなく大人もモチベーションはあがりません。しかし、創りながら学ぶはワクワクしますね。しかし、学びがなくて創っているだけだと、世界が広がりませんね。

★もしかしたら微妙な差異を語っているに過ぎないかもしれません。しかし、時代の変化は微分化された差異から方程式が生まれ、積分の関数が広がる過程です。世界フォーラムの才能主義は、世界の格差社会を解決するかどうかはまだわかりません。格差社会をなくすには、人類1人ひとりが、世界制作者=World Makersになることかもしれません。

★やはり、今後のZoom対話もリアルな対話も、私が亭主としてご招待する時は、茶会の名称は「TWM:Tea World Makers」と呼びたいなあと。お茶しながら世界をいっしょに創りましょうという感じですね。

★臨済宗の十牛図の第十番目の「入鄽垂手(にってんすいしゅ)」の域に達することができればと。マインドフルネスや、well-beingとは、この十牛図の過程を歩みながら世界を創っていことに似ているのかもしれませんね。西田幾多郎ルネサンスが起こるかもしれません。

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2020年6月 7日 (日)

ポスト・コロナショック時代の私立学校(123)和洋九段女子 良質のハイブリッドPBL授業が始まる②

★和洋九段女子のいまここでの動きと外部環境の変化や動向などを重ね合わせ、やはり「人間性」や「才能」が大切であることが改めて確認されました。そして、ソサイエティ5.0のさらに先で活躍する才能者が育つ環境は、和洋九段女子の行っているPBL授業がポイントであるという確信も共有しました。

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★第2回目のお茶をたてる際、水野先生が、新たな抹茶としてご自身のオンラインPBL授業のプレゼンをしました。お茶をたててみんなで楽しむために、私もPBL授業のデザイン分析をする道具立てを提供しました。

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★水野先生の世界史のオンライン授業は、700万年前の人類誕生からソサイエティ5.0に到るまでの壮大な人類文明史を思考する授業でした。700万年まえであろうと、100年前であろうと、生徒にとってはリアルな体験ができないのです。そして、未来もまた生徒はまだ体験できないのです。

★人間の知恵とは、いまここでのリアルな体験から、過去も未来も、粒子の世界も宇宙も推理していく想像力/創造力です。それをPBL授業で行うわけです。まさに世界を創る学びです。

★水野先生は、思考コードやメタルーブリックでC3の領域はワクワクするけれど、根拠なき創造性は、論理的構築の安心安全の場を崩すから、徹底的に自分の考えが基づく根拠を示す責任を持つことをディスプリンとしています。

★生徒が自分で考え判断し意思決定していくには、エゴではなく責任を引き受けることでもあります。学びとは最終的には社会課題を解決する方法を提案したり活動をしますから、責任を自ら引き受けて人々と歩むコンパッションが大切なのです。

★水野先生のPBLは、かくしてPassion based Learningでもあります。

★ さて、プレゼンを聞いた後、参加した先生方がフィードバックしていきます。大胆かつ緻密とか、生徒が人類とは何かを多角的にアプローチできる仕掛けがあり、さらにこれからの人間とは何か、さらには自分とは何かという本質的なテーマに結びつく壮大な授業ですとか、ブレイクアウトルーム、ジャムボードなどオンラインでも対話や議論ができる状況をつくっているのはすごいとか、ワクワクするような授業だとか、絶賛シャワーが飛び交いました。

★水野先生のPBL授業への共感的な雰囲気が茶室を満たしました。いい感じでした。

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★そのあと、先生方のフィードバックも含めて、水野先生のPBL授業を多角的に分析していきました。その道具立ては、可視化する道具をいくつか使いました。

1)「知識の発見」「論理的構築」「批判的思考」「創造的思考」の視座を座標で明らかにする。

2)20のパターンランゲージで、学びの多様な構えが座標のどの位置にあるのか確認していく。

3)20のアクティビティタイプが、座標のどこで活用されているのか分析していく。

4)知識のデフォルトネットワークのつなぎ方やどの思考スキルを生徒は活用するように授業がデザインされているか分析する。

5)1)~4)までのシートやカード、アイコンで可視化した結果、生徒の自己変容にどのような効果があったのかなど対話。

★水野先生のPBL授業は達人の域に達しているので、分析するまでもないのですが、可視化して対話することで、先生自身が暗黙知で動いていたものに改めて気づいくということがあったようです。また、自分の目論見をメンバーにいいねフィードバックをもらうことによって、やってよかったという確信ももてたということです。

★初心者も達人も、ポイントやレベルは違いますが、これでよいと止まることはないという点では同じです。水野先生は、自己変容し続けられれる授業をデザインをすることが、生徒の自己変容と相乗効果をもたらすと考えています。

★和洋九段女子のPBLの達人の先生方との対話は、さらに向上すべきポイントは何かを共有できる貴重な時間となりました。このWorld Makers 茶室は今後も開催していきます。(了)

 

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ポスト・コロナショック時代の私立学校(122)和洋九段女子 良質のハイブリッドPBL授業が始まる

★昨日(6月6日)、和洋九段女子の先生方とZoomで対話しました。新井先生(国語科・ 高校教頭)、水野先生(社会科・ 高1学年主任)、本多先生(社会科・主幹教諭)、石原先生(数学科・ 中1学年主任)と私の5人。先生方はWorld Makers(世界制作者)です。新しい学びの経験という世界を創り、生徒が自らの世界を広げ深めていく学びをサポートしています。

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★お1人ひとりとじっくり対話をしながら、気づきを共有し、あふれでてくる未来志向の質を共感する対話をしていくので、茶室さながらです。私は知の茶会を催す亭主といった感じで、お茶や茶道具さながらの知のツールを用意します。最も大切な抹茶は先生方から頂きます。みんなでそれらを共有しながら、気づき合い、さらにその気づきを実装に転換する対話をし続けます。3時間くらい続きましたが、あっという間でした。

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★対話は、躙り口からチェックインしていきます。ミュートで静かに茶室にはいります。それからパッと顔が開かれます。久しぶりにお会いするので、にこやかなに挨拶しながら、分散登校になって生徒に会えた喜びが心の底から響いてくるエピソードを分かち合いあながら、和洋九段女子のいまここでの様子を対話していきました。

★先生方からいただいたメールを活用して、テキストマイニングでお茶をたてました。プライバシーにかかわることも多いので、お見せできないのが残念ですが、メールでそんなに意識して書いていないこともバーンと現れていたりしていて、対話が大いに盛り上がったことは想像がつくと思います。キーワードは「生徒」「SDGs」「コロナ」「参加」「オンライン」などずらずらと。ポジティブな感情表現も特徴的でした。

★AI診断によると、「生徒」は特別なポジションに位置していました。生徒にかかわる文脈が共起ネットとのかかわりで何か違う意味があると判断したのでしょう。AIは意味を考えるきっかけを提供してくれるだけで、その解釈は先生方が対話して気づきを生み出していきます。

★この3か月、そいういえば、どうしたら生徒の学びの環境と命を守れるか、日々刻々と変化する情勢の中で、後手に回らないように、すさまじく臨機応変に先回りする想像力と実行力を遂行していた。ふと気づくとへとへとでしたが、分散登校で生徒に会えて、互いにやっと会えたね、ようやく会えたねと互いの存在のかけがえのない価値を改めて共有できて、疲れはどこかに飛んでいきましたというポジティブな雰囲気が茶室には広がりました。

★外部環境の情報は、私の方から提供しました。お茶菓子といったところでしょうか。中学入試市場のオンライン化の情報、中学受験の大衆化が始まった1986年から今までに幾多の経済ショックがありましたが、それを乗り越えるたびに新しいイノベーションがあったり、新しい企業が生まれてきたり、今回のパンデミックのダメージを乗り越えた企業のアップグレードの方法など眺めました。

★そして、今の和洋九段女子の方法や戦略は、この外部環境の中で乗り越えている企業の方法にどこまで置き換えられるのかあるいはさらに先を行くのかなど対話をしていきました。デジタルシフトはしているし、ダイバーシティへの対応もできています。あとは資金面ですが、企業とは違い利潤を獲得するのが目的ではなく、才能を生み出して、新しい経済社会へ貢献するのが目的であるから、そういう意味ではその準備ができているという話にもなりました。

★来年のダボス会議は、テーマが「グレイトリセット」で、「資本主義から才能主義へ」がビジョンです。和洋九段女子の教育はそのような才能を生み出すPBLという<新しい学びの経験>を創発する教育にチャレンジしています。どのくらいの質やレベルでチャレンジしているのか、PBLの質のステージやオンライン授業の進化ステージで互いのPBL授業のレベルについて対話しました。改めて、5レベルのうち最高レベルの5レベルは当たり前という感じになっていることに驚きの声が表情から伝わってきました。ミュートしたり解除したりしながら対話するので、表情が結構大切なのがZoom茶室でもあります。

★ともあれ、授業で新しい世界を創ることが、世界が変わることにつながるだろうというわけです。和洋九段女子がワクワクするような授業を展開しているのは、世界を変えることを第一の目的にしていないからです。各人が世界を創ることを重視しているからだということに気づきました。世界を変えることを目的にすると、理念闘争になり、そこに競争が生まれます。学歴キングダムでの、新しい戦略になりがちです。学歴キングダムはちっとも変わらず、むしろ強化されてしまうという矛盾をはらんでいます。

★ところが、世界を自分で創り仲間と協力することによって、はじめて自己変容が起こります。変容しようとするのではなく、世界を創ること自体が変容になっていく。変容した自分の像を向こうに設定して、そこに向かって何をするのでしょう。そうではなくて、世界をその都度いまここでイメージしながら創っていくことによって、変容した世界がそこに立ち現れるからワクワクするのだなあと和洋九段女子のすてきな謎がわかったような気がしました。創造性をいまここでフルに活用するのですから、ワクワクするのは当然です。(つづく)

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2020年6月 6日 (土)

2021年の入試(07)八雲学園の俊敏かつ緻密な動き パンデミックを乗り越えてまた強くなる。

★八雲学園は、世界危機の時に本当に強い学校です。アジア通貨危機、ITバブル崩壊の時期である1998年に中学を再開。当時の私立学校と言えば、上から目線の学校説明会が当たり前。それをウェルカムの精神全開の説明会に中学入試市場全体を転換するスーパーモデルに八雲学園はなりました。その人気はうなぎ上りでした。

★しかしながらリーマンショックあたりから、女子校氷河期の時代に突入し、人気は横ばいになりつつも、破格のグローバル教育を展開し続け、2013年からはイエール大学とのネットワークを結びました。その後、2年おきくらいにラウンドスクエア加盟の動き、9カ月留学の新設など大きな教育プログラムを生み出していきました。

★そして、2018年には、ラウンドスクエア正式加盟をきっかけに、男女共学にし、C1英語、PBL、ICT、教育の総合力を養うリベラルアーツ教育、チュータリングなど世界のエスタブリッシュスクールと刺激し合う交流ができるほどのクトリティを生み出しました。再び人気は上昇しはじめたのです。

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★この八雲学園の教育の質の高さは、学歴スクールキングダムの世界にいると、なかなか見えません。太陽は遠くからだとなんとか見えますが、近くだと見ることができません。それほどまでにすごいのです。

★そのへんのことは、八雲学園の先生方にとっては当たり前のことなので、Web配信学校説明会でも当たり前の日常の学園生活のように語ってています。しかし、見る人が見たら、ある意味すでにニューノーマルな学校生活が始まっています。

★というのも、この破格のグローバル教育は現地に行って交流することが多いのですが、その交流の絆が切れるわけでなく、しかも今回のパンデミックは世界同時的ですから、世界の200校の加盟校も同様の状況です。ですから、オンラインですぐに交流が始まるわけです。

★したがって、このような世界リスクのマネジメントは、ある意味ふだんからできていたのです。

★しかし一方で、一斉休校や解除、分散登校などの様子をみながら、第2波、第3波の予測をしながら、今八雲が最も必要とするものは何かを見極めながら、さらに戦略的に静かな情熱をもって動いています。大事なことは今は無駄な動きをせず、的確に有効な戦略を打ち立てることです。この戦略は、イギリスとアメリカの大学を中心とする海外協定大学コミュニティ<UPAA>に加盟することでした。

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★そして、加盟したのです。さりげなく、本日YAKUMOニュースで、公開されています。

★UPAAのコミュニティに参加する大学は今後増えていきます。そして、海外大学に入学した時に講義を受けられるC1英語ぐらいの力をダイレクトにトレーニングするオンライン英語講座を利用できます。

★いったいこれが何を意味するというのでしょう。実はラウンドスクエアとか9カ月留学とは、必ずしも全員が直接参加するわけではないのです。その体験を共有することはできますが、まだ一握りです。ただ、世界から留学生がやってくるので、生徒全員がその恩恵に浴します。しかしながら、それだと、八雲学園全体でB1あるいはB2レベルぐらいまでは力を付けられますが、それ以上はチャレンジしたい生徒に環境を整えているだけで、全員がその環境を使うわけではないのです。

★そうはいっても、これだけで、十分破格なグローバル教育です。

★しかし、アフターコロナは、ドメスティックなものの見方や考え方では生徒の未来はなかなか難しので、1人ひとり全員が、C1レベルの英語力を身につけ、世界の大学生と対話や議論や思考を深めていける英語力が必要になります。海外の大学に行こうが行くまいが、この世界コミュニケーションができるかどうかが肝心なのです。

★もうお分かりですね。八雲学園は一気呵成に、生徒全員に、C1レベルの英語力を身につける機会を創ってしまったのです。

★今回のZoomをはじめとする多様なプラットフォームやアプリを活用し、オンライン授業を実施したことが、おそらく拍車をかけたのでしょう。八雲の日常はすでに、みんながオンラインで世界でつながってしまったからです。

★動画学校説明会の中で、近藤校長が、八雲の教育は、学びと体験と感動がつながっている教育であると語っていましたが、今回のオンライン学習という体験は、先生方にとっても生徒にとっても、またも未来を発見する感動に満たされているはずです。

★一丸となって、世界リスクを乗り終えて、未来を発見する感動を共有した時、八雲学園はまた強くなるのです。ポストコロナショックは、八雲学園をまたすばらしい学校にアップグレイドするわけです。

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2021年の入試(06)新しい保護者 ナチュラルシチズンとして学校や教育を探している

★首都圏中学入試における新タイプ入試は、2020年は、2014年に比べ、3.9倍の149校。首都圏中高一貫校の51%が実施するようになったのです。今回、今春、この新タイプ入試を受験して私立中高一貫校に入学した生徒さんの保護者の方とZoom対話ができました。お子さんは、入学するやいきなり休校になったわけですが、オンラインPBL授業を楽しみ、私たちの心配をよそに、そこはデジタルネイティブでです。さっそく友人とオンラインコミュニケーションを楽しみ、待ちに待った分散登校でやっと会えたねと楽しく通っているということです。

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★保護者とは、2時間ぐらい多様な深い対話をすることができました。そして、この新タイプ入試が拡大し、実はこのオンライン授業を通して、さらにオンライン入試が加わり、来春の入試はさらに拡大し、質的にも豊かになっていく可能性があることに気づきました。

★というのも、今年の新中1が小学校に入る前に、実は学校前教育の情報が保護者の間では結構飛び交っていたわけです。米国のチャータースクールやホームスクール、モンテッソーリ、シュタイナー、そのほか新しいクリエイティビティを大事にする教育について情報共有がなされていたわけです。

★ハワード・ガードナー教授の<Unschooled Mind>という研究は、そういった学校に行く前の学びの豊かなマインドがどうやって形成され、<Schooled Mind>によって、どうやって削られていくかあるいは無視されていくかということが克明に描かれているわけですが、欧米でガードナー教授のプロジェクトが広まっていました。

★しかし、日本では、まさに<Schooled Mind>が主流で、一握りの認知的優秀者がピラミッドの頂点に立つスクールキングダムが支配してきたわけです。

★ところが、女性も活躍するようになってきて、まさに当時はその過渡期だったと思いますが、自分の環境のスクールキングダムが偏差値優秀性とジェンダー問題を抱えていることに直面します。

★そこで、自分の子供の教育について学び、アン・スクールキングダムという環境にいれるわけです。対話した保護者もそうでした。しかし、小学校はどうもお受験をしたところで、ますます<Schooled Mind>が強化されればかりなので、公立学校で、ゆるくまずは育ってほしいと。豊かな才能は削られないように保護者が守るという決意で入学させるという傾向がじわじわ広まってきたわけです。

★そして、その保護者のお子さんが小学校に通い始めたころ、私立及び公立中高一貫校の<Deschooled Mind>の動きがあることに、そのような保護者はフロンティアンナテナリストですから、気づきます。それが、適性検査型入試だったり、思考力入試だったり、自己表現型入試だったり、アクティラーニング入試・PBL型入試だったりという新タイプ入試だったわけです。

★保護者は、子供と一緒に、あちこちの新タイプ入試のオープンセミナーに参加し、説明にも耳を傾け、入試の時のためだけの手法としてのテストなのか、入試問題は顔と言いますから、カリキュラムのエッセンスがちゃんと反映しているのかモニタリングしていきます。

★それで、見つけた学校の新タイプ入試を受験し、入学するというわけです。どうやら、中学入試における新しいキャリアデザインタイプが誕生しているのです。したがって、新タイプ入試が増えているということは、そのようなキャリアデザインタイプが増えていることが示唆されているのかもしれません。

★Zoom対話をしていくと、今度は大学ですね。今の日本の大学は<Schooled Mind>が通常ですから、クリエイティビティが豊かに育った生徒、そして決定的なのは、その生徒が豊かさを生み出していくのは、ガードナーも学校の先生方と実践していますが、生徒自身が自分のプロジェクトを組み立てるPBLを通してなのです。

★そのような生徒が<Schooled Mind>の大学に入学することはできるならば、避けたいということになります。では、海外の大学かというと、その可能性は大いにあるのですが、新コロナウィルスが、そうでない海外の大学もいっぱいあることを掘り起こしてしまいました。

★それゆえ、これからは、<Unschooled Mind>や<Deschooled Mind>を有しているナチュラルジチズン(自然と社会と精神の循環を生み出すマインドフルネスを大事にする市民。私が勝手に呼んでいます。)は、教師、保護者、生徒、企業人、起業家など多様な仕事や役割のロールタイトルを越境して、情報共有していく必要があります。

★そして、そのときの情報共有の在り方は共感的コミュニケーションができる安心安全のコミュニティであってほしいわけですね。

★もっともっとご紹介したい深イイ話が保護者の方とのZoom対話で行われたのですが、プライベートなこともいっぱいありますので、今回はこのへんにしておきます。

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2020年6月 5日 (金)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(26)工学院の田中歩先生の未来質感のすばらしさ!ビジョンを語るカリスマ教師からメタビジョンをマインドセットする共感的教師へ ナチュラルティーチャーの時代到来

★昨日Zoom対話で、来年のダボス会議のテーマが「グレート・リセット」で、<CapitalismからTalentismへ>となるらしいけどという話題が出ました。そのとき、工学院の田中歩先生は、鋭くも、才能を持つ持たないという格差を含むのか含まないのか、それはそれでクリティカルに見ておく必要はあると指摘。

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日経の記事「資本主義の「リセット」議論を WEFシュワブ氏 21年のダボス会議テーマに」(2020年6月3日)で、シュワブ教授は、こう語っていたのです。

 「資本主義という表現はもはや適切ではない。金融緩和でマネーがあふれ、資本の意味は薄れた。いまや成功を導くのはイノベーションを起こす起業家精神や才能で、むしろ『才能主義(Talentism)』と呼びたい」

★21世紀型教育を推進する田中歩先生は、もともとすべての生徒がクリエイティブクラスにという考え方。このクラスの資質は、<Talent, Technology, Torelance>の3T。もともと、リチャード・フロリダ教授が提唱していたものですが、それをすべての生徒にと転換しています。田中歩先生は、共感的コミュニケーションが成立するには、やはり格差は問題。今の社会課題の根本はそこがある。それをTalentisimで解決できるかどうかはどうだろうと。

★もちろん、ではどうするかは、今はにわかに回答できませんが、田中歩先生の中では、新社会構想へのベクトルはみえていて、その未来質感は上質です。

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★たしかに、近代産業社会や近代経済社会の矛盾が噴出するいろいろな衝撃を、私たちは1987年以降ずっと共体験しています。今回のパンデミックもそうです。そのたびに、その矛盾を解決する方法が提唱されました。

★しかし、その流れは同じクリエイティビティを大切にする社会構想論も、上記の図のように大きく2つに分かれます。どちらをとるのか、それとも融合するのか。未来は、そこにかかっています。

★田中歩先生は、しかし、それは今目の前のZ世代でありパンデミック世代でもある生徒自身が考案していくことであり、私たちはサポート役に徹したほうがよい。そのための環境として共感的コミュニケーションだと田中歩先生は語るのです。

★このメタ的な強烈なビジョンは、生徒への信頼の裏返しだなと感じました。

★未来のビジョンを自分たちが語るカリスマ教師の時代は過ぎたようです。それはダボス会議に任せましょう。生徒がビジョンを語る環境を創るというメタビジョンに徹するのが、教師の共感的コミュニケーションだという田中歩先生のような現場のプラグマティックな教師こそ、ポストコロナショック時代の新しい教師像だと、私は思います。

★ビジョンを語るカリスマ教師からメタビジョンを創る共感的教師へ。タイトルティーチャーからナチュラルティーチャーへと置き換えることもできるでしょう。

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2020年6月 4日 (木)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(25)工学院の教師とZoom対話 オール生徒で学びを引き受ける時代

★本日夕刻(6月4日)、工学院の教務主任の田中歩先生と進路指導部主任の鐘ヶ江先生とZoom対話をしました。特にテーマはなく、分散登校が始まったところで、コロナ禍における教務や進路指導のことなどについて情報交換をしたという感じですが、工学院の現状の進化の段階を確認することができました。昨年から進化のカーブが急上昇を描き、今回のオンラインPBL授業でさらに飛躍しているという実感をお二人が抱いていることが了解できました。その進化の段階とはどこらへんか?というと生徒中心主義の意味が明らかになったということでしょう。

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★ある意味、今の高3が中1からC1英語、PBL、ICT教育に取り組み、新高校1年と合流したときから、STEAM教育やMOG、探究論文の新しいプログラム開発が本格的に加わり、骨太の教育ができてきたわけです。

★こうした進化の過程を思い起こす話題にもなりました。歴史はときどき振り返ることは大切です。最初にやったことは、思考コードをつくったということです。PBLをやるにしても、ICTをやるにしても、何をやるにしても学びの自分軸や迷ったときに光を求めるコンパスがないとということで作成したという話を確認しました。

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(日々悩みながらPBL授業に挑戦した思い出話も出ました。今や在校生は世界で活躍しているし、STEAMセミナーでファシリテーターの役まで果たすようになった。自律した学習者を超えた感じがすごいと。試行錯誤というリスクテイクができるし、思考コードでリフレクションもできると)

★C1英語に関してはCEFRがあったので、どんどん進みました。PBLやICTは、思考コードの学内共有が最初はなかなか難しかったので、やはりPBLやICTは拡大しなかったなあと。時代がまだ追いついていなかったと。しかし、今では、生徒自身がプロジェクトを企画運営する時に、ゴールイメージをつくる際に活用するまでになっていると。それはとても重要なことですねと。

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★この思考コードの広がりは、今考えると、教師と生徒の関係の成長の過程だったのではないかと。すなわち、最初教師が授業をがっちり握っていて、生徒に手放さなかったし、生徒も教えてくれないPBL授業は不安だったのです。しかし、多様なプロジェクトに挑戦する生徒がでてくると、教師もいっしょに応援するので、今の高3が高1のころから、教師が教えるが50%、生徒が学ぶが50%くらいになてきたのではないか、そして高1の時の3か月留学で、生徒が自分で考えて判断して自己決定していくことの楽しさを感じる生徒が増えてきたし、生徒が留学先から送ってくるメールをブログに教師が載せているうちに、教師は生徒の学びをサポートする側にだいぶ回ってきた。共感的コミュニケーションが広がったと言い換えてもいいかもと。

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★そして、何より得難いのは、高2の1年をかけて、教師も生徒もグローバルプロジェクトをいっしょに創り、実際にやってのけた達成感の共有だったと思うと。この世界は本当に未知との遭遇でした。今回のパンデミックの事態を乗り越えることもやはり未知との出遭いで、解は自分たちで、創っていかなくてはならないわけですと。とにかく、このプロジェクトには今までの進化の歴史がすべて収斂して、何かビッグバンが起きた感覚で、生徒のセルフキャリアデザインにも大きな意味があったと。

★この体験を共有したことが、教師は学びを生徒が完全に引き受けたことを確信し、自分はヘルプや見守ることができるようになったと言います。

★とにかく、生徒全員と体験したわけです。グローバルというのは、何も海外のことだけをいうわけではありません。宇宙船地球号ですから、いまここもグローバルなわけです。生徒は凝り固まるのを自分で解放できるところまでもう少しだとお二人は言います。

★いろいろな生徒が鐘ヶ江先生だったらどう考える。自分の考えや価値観は狭くないだろうかとセカンドオピニオンを尋ねる感覚でやってくると。

★田中歩先生は、そういうことが言えるようになった教師と生徒の関係はかなり理想的ではないかなと思っていますと。教育は生徒1人ひとり違いますから、何か一つの理論で生徒をみたりはしないようにしています。もっと多くのレンズで見守ることが大切かなと。ある意味思考コードは9つのレンズで、生徒はどこで迷いどこへ行こうとしているのか多角的に見守ることができますと。

★また、グローバル教育を行っていて感じるのは、学内異文化理解が必要だと感じるとも。

★というのは、今ハイブリッドインターで行っている哲学クラスは、広く哲学を学んでいて文化的偏りはないようにトレーニングされていますが、東洋的な考え方は全面にはでてきません。外国人講師は、むしろ日本大好きなのですが、哲学となると別です。

★それに、講師の哲学的バックボーンは、英米系ですから、本間さんのようにドイツやフランスの哲学的背景をそのまま持ち込むと、生徒は文化的な葛藤をおこしますねと。ああわかります。デューイがそうだったように、そこをプラグマティックにいったん相対化して、共有できる対話をすることは大事ですよねと。文化とは1人ひとりのバックボーンに影響していますから、人間の存在の外にあるわけではないですね。そこを無視すると葛藤がたしかに起こります。

★鐘ヶ江先生は、その葛藤が、文化的背景の違いにあることに気づくことが大事で、海外にリアルにいかないとわからないというのではなく、いまここでも同じようなことが起こっているのだと気づいて欲しい。そうはいっても、グローバルプロジェクトでそれは国内外両方ですが、現地に行ってリアリティのインパクトはすさまじかったですね。身近なところでは気づきにくいのも確かですと。

★田中歩先生は、共感的なコミュニケーションの中での批判的思考は実にナチュラルなのです。でも時に批判的思考が前面に出ると実に抑圧的になるときがあります。それは社会にでると、そういうことはありますから、抑圧的コミュニケーションに対する耐性も一方で必要です。しかし、それには共感的コミュニケーションが背景にあって、思考コードのような迷ったときにゴールを探せるコンパスが前提にあるのは大切だと思っているのですが、いまそれは確信になっている感じですね。

★オール生徒で学びを行っていく。でも、学歴社会みたいなドメスティックな中にいたら、居心地がよいだけで止まってしまうこともある。そんなとき、もう一歩高い目標があるという情報を提供してくる教師がいる。それは教師というより人生としての先輩だという感じですね。この点について、卒業生が、常に一歩先の目標があることや限界をこえることは可能ではないかと指摘してくれるメンターのような教師の存在に感謝していると語ってくれたのですが、私たちはその言葉にむしろ感謝ですと。

★工学院の進化が急なのは、教師と生徒の関係の変容による、教師と生徒のそれぞれの自己変容の加速だったと了解できました。生徒中心主義とは、学びの責任を全面的に生徒が引き受けられる教師と生徒の関係性だったのですね。

★鐘ヶ江先生は教師と生徒を1人ひとりみているだけは、生徒の存在の関係性はみえないですね。存在とは関係性だから、つまり関数方程式だからと。さすが数学の教師。

★いろいろな学問的成果をインテグレイトして現場で生徒が活用できる環境をコーディネート(まさに座標で、思考コードは座標だったのだと感じました)しているプラグマティックな二人の先生。グローバルな人間とはこのような先生方のことをいうのだと感じた次第です。長時間の対話ありがとうございました。

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ポスト・コロナショック時代の私立学校(121)ノートルダム女学院 分散登校 パラレルPBL授業が始まる

★4時間目は、山川先生が担任をしている中2のクラスのLHRでした。2時間目に三井先生がオンラインPBL授業を行っていた講堂で行われました。山川先生は宗教科主任で、中高6年間の宗教の授業を受け持っています。カトリックの学校で、聖書訓詁学をやらない斬新なPBLを行います。生徒の身近な生活に見え隠れする根源的な人間存在の問題を、哲学や歴史、経済社会、人間生活など多角的な視点でアプローチします。対話や議論、メディアミックスの創意工夫がなされた深く人間を探究する学びが展開します。

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★深い人間探究。まさに今回の新型コロナウィルスのパンデミックは、人間存在のジレンマ問題に直面する事態でした。自分で考え、友人と協力しなければ外出自粛の毎日を過ごすのは厄介だったでしょう。

★この体験を大事にしたいというのが山川先生の想いだと思います。他者や自然や社会とかかわる深い人間存在の問題を知るには、自ら動く必要があるからです。しかし、今回のようにショックに直面しなければ、ふだんは考えないという受動的な構えではどうしようもありません。

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(マニトバ大学の教育学部のサイトから)

★上記の図は、ピアソンらのGRR理論の有名な図です。カナダやアメリカの教育で広く使われている考え方です。ヴィゴツキーの最近接発達領域をプラグマティックに発展させたともいわれています。

★この図にあるように、中1の頃から、山川先生は哲学対話などを実施し、自ら考え判断し対話や議論ができるように、徐々に教えることを手放し、生徒が自ら学びを引き受けるように学びのマインドセットをしてきました。

★いよいよ中2になって、2カ月が過ぎてしまいましたが、クラスの目標の合意形成を生徒自身に全て任せました。

★ノー3密空間をどう作るか、合意形成をどう作っていくかなど。とはいえ、山川先生はさりげなくヘルプはしていました。

★驚いたことに、グループごとに目標を決め、最終的には投票をグーグルフォームのアンケートシステムで行うというところでした。これは、オンライン授業で身につけた成果の1つですが、リアルな授業の中に、オンラインで行ってきたスキルをパラレルに行うという新しい日常の授業が成立したわけです。

★第2波第3波に備えて、オンライン授業の様々なスキルや成果を継続するという意味も大切ですが、このような同じ時間の中でリモート授業がパラレルに行われるというのは、授業の在り方そのものを大きく変えていくことでしょう。

★山川先生は根源的な存在問題を追究しつつ、オンラインスキルの名手でもあります。20代の気鋭の若手教師です。デジタルネイティブという≪Z世代≫の旗手でもありましょう。

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ポスト・コロナショック時代の私立学校(120)ノートルダム女学院 分散登校 ハイブリッドPBL授業が始まる

★6月1日から、ノートルダム女学院中高も分散登校になりました。キャンパスでリアルな授業に臨む学年と在宅でオンライン授業で学ぶ学年と入れ替わりながら進行し、様子を見ながら徐々に通常に戻りますが、ノー3密空間での新しい日常の学園生活が始まるわけです。オンライン授業で体験した新しい学びの一部は、リアルな授業でもパラレルに活用される場面もでてきます。

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★6月3日2時間目、講堂を覗くと、生徒はいませんが、三井先生の明るい声と生徒の元気な声が聞こえてきました。オンラインPBL授業が行われていたのです。三井先生が昨日は学校に通学してどうでしたかあと尋ねると、生徒のみなさんは、チャットに「嬉しかった」「やっぱり実際に友に会うのはいいですね」「足が痛かった」「楽しかったけど、いつもより疲れたあ」などダダダと。慣れたものです。

★三井先生は、生徒の反応に、いいねいいね、自分の気持ちや感情をこうやってことばに表せるみんなはすごいよと励ましていきました。もちろん、これは保健体育科のカリキュラムの一環でもあります。ことばと身体をつなぐこと、五感と気持ちをつなぐことが自然や社会や人間との関係性の基礎だからだと三井先生は語ります。

★そして、今度は、身体の図を描いて、身体の気になるところを色で塗っていく作業をしました。生徒は肩だとか首とだとか腕だとか腰だとか、色を分けて塗っていったのです。そして、三井先生は、気になっている感情やその色にした理由について簡単に対話していきます。

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★三井先生は、脳神経学の研究者でありマインドフルネスやヨガの第一人者である山本邦子先生を師と仰ぎ長年研究し実践してきました。そして、三井先生の理論的根拠の1つは、Willams & Shellenbergerによる『 Pyramid of Learning』です。これは森本貴義先生と 山本邦子先生共著の< 伸びる子どもの、からだのつくり方 「かけっこ一番」をめざす前に、知っておきたい60のこと  株式会社ポプラ社>でも紹介されています。

★ブルームのタキソノミーのピラミッドも認知科学では有名です。ノートルダムもアレンジして活用していますが、どうしても認知的側面に力点が置かれがちです。ブルーム自身は情意のタキソノミー、身体運動精神のタクソノミーを考案していますが、実践的なプログラムとしては深まっていません。そこで、ノートルダム教育開発センターでは、そこを深めようとしています。

★それは、三井先生も同様です。したがって、三井先生がカリキュラムの基準としている学びのピラミッドが、情意や感覚、身体運動精神の領域を大切にし、それをストレッチやヨガで実践的に適用していることは、今後同センターでも参考になるでしょう。実際、対話が始まています。

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★今回も、身体の絵を描いた後、ストレッチ―を生徒といっしょにZoomの画面越しに行いました。生徒は自宅で行っているので、狭いスペースでできるプログラムだったのですが、普段使っていないふくらはぎだとか太ももの裏筋肉だとか、首回りだとか動かしていきます。私はついていけませんでした(汗)。静かな動きの中に燃えるような筋肉の緊張と弛緩の運動が展開していたからです。

★終始笑顔をたやさず、三井先生は生徒とタイミングのいい解説をしながら運動していきます。呼吸法も大事で、最後に開放/解放といって、静かに息を吐きだしたいきました。画面越しの生徒と息が合っれいることが伝わってきました。

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★そして、生徒には、こんどはどんな身体の図になるのか描いてもらっていました。数十分で自分の身体が変容することを絵でリフレクションしていったのです。

★山本先生の著書には、4つの輪を適切に動かすことによって、身体がうまく循環するようになることが書かれています。この輪は和でもあるというのです。休校が続き、身体が固まっていると、4つの輪が乱れていることもあるでしょう。自律神経やホルモンの循環がわるくなると、免疫もさがります。

★集中力もなくなったり、精神的にもなんとなく暗くなることもあります。セルフコントロールでは身体感覚や感情も整えることは大切で、新しい日常では、かなり意識して行っていく必要があると確信しました。

★そして、4時間目は同じ講堂で、ノー三密空間で山川先生の中2のクラスのLHRです。(つづく)

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2021年の入試(05)開成&武蔵のオンライン授業の成績の付け方は、オンライン中学入試のモデル?3つの評価を現場が使うようになる画期的動き!?

★ダイヤモンド・オンラインの記事「1学期の成績はどうなる?開成が行った「オンライン中間考査」の実態 ダイヤモンド・セレクト編集部 森上教育研究所 2020.5.26 4:25 」には、開成と武蔵のオンライン授業の成績の付け方について言及があります。

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(開成の2013年から2020年までの海外大学の合格実績。データは同校サイトから。)

★新型コロナウイルスのパンデミックによる一斉休校が続き、ようやく分散登校へ移行する時期がきましたが、この3カ月間のオンライン授業による成績はどうするのか多くの学校で模索されています。

★そのような中で、同記事によると、武蔵はいわゆるペーパーによる「中間考査」はやらず、オンライン学習の成果物(課題プリントの痕跡や論述など)を「ルーブリック」で評価するということのようです。

★一方、開成は「中間考査」を行うようです。同記事にはこうあります。

「他校が次々と中間考査の中止を決める中、開成はきっちり行う方針だ。
 3月末の段階で各学年から代表を得てICT委員会を発足、中間考査を行う前提で4月から授業を組み立ててきた。クラス単位だけでなく、グループごとに行うなどオンライン授業ならではの変化も持たせ、適宜アンケートを取り改善している。使用するシステムなどの検討もこの委員会で行っている。
 中間考査の内容は学年や教員によってスタイルが異なる。小論文を読ませてレポートを提出するといった教科もあるが、オンラインで実施するものもある。高2生で見ると、前者は6科目、後者のGoogle Formなどを用いて実施するものが10科目とこちらが過半を占め、英数理社が多いという。」

★あれっと思われる方はいるでしょう。ペーパー試験かどうかでは、武蔵は、開成のようにいわゆる「中間考査」をやらないけれど、それは生徒のインプットの形態の違いであって、「評価」という観点からは同じではないかと。エっ!開成もルーブリック評価?

★実は同教育研究所の森上代表は、ご自身のfacebookでは開成も「形成的評価」をしているという認識をしています。しかし、メディアにはそこまでは書いていない。開成当局がそう言っているわけではないので、森上代表の意見になってしまうからでしょう。

★日本のメディアの教育関連記事は、世界標準の学問的見識をあえて持ち込まないので、当局がどう言ったかの文言を事実としてみなして書きますから、ややこしいのです。かりに武蔵が「ルーブリック評価」だと言おうが、開成が「ルーブリック評価」ではなく「中間考査」で、それ以上でも以下でもないといったとしても、世界標準の評価学の認識では、両方とも「形成的評価」です。

★武蔵の「ルーブリック評価」について、同記事ではこのように記載しています。

「 ルーブリック評価では、レベル分けされた学習者の到達点と評価観点のマトリクスを用いる。明確で公正な評価を、レポートや小論文、グループ活動など、日々の生徒のパフォーマンスに対して自己評価も交えて行う。脱ペーパー試験ともいえるもので、新しい評価のあり方でもある。」

★首都圏模試の「思考コード」と同じ発想ですね。というのも、この「レベル分けされた学習者の到達点と評価観点のマトリックス」の世界標準はブルームのタキソノミーのアレンジです。「思考コード」もそうです。新学習指導要領の「指導要録」も実はブルームのタキソノミーのアレンジ版です。

★ブルーム自身、「総括的評価」と「形成的評価」を分けています。いわゆる「中間考査」は「総括的評価」です。「ルーブリック」を使う評価を「形成的評価」といいます。

★しかし、開成の今回の中間考査は、いわゆる「中間考査」ではないのです。レポートなどの提出で付けるものは6科目で、10科目はグーグルフォームなどで行うとありますが、レポート提出の採点はそもそもルーブリックです。しかも開成もオンライン授業をやっているわけですから、教師と生徒の問答の軌跡は、実はリアルな授業と違い鮮明になります。思考のプロセスが1人ひとりリアルにみえてしまいます。開成の現場の教師はこのことについて明言しません。監視社会的なネガティブな風評のリスクマネジメントをしているから、それは当然です。

★だから、「形成的評価」とは明言しませんが、現場の教師の生徒を見る目は「形成的評価」です。つまり、頭の中に「ルーブリック」があるのです。暗黙知としての。

★でもそれは6教科の話で、残りの10教科はグーグルフォームでオンラインテストだから「総括的評価」でしょうと。それはそうなんです。しかし、グーグルフォームは選択肢問題だけでなく、記述式問題もOKなのはご承知でしょう。

★生徒が送信ボタンを押すや、300人の解答がスプレッドシートに即時反映します。

★スプレッドシート?要するにExcelという計算ソフトです。ついに学校現場が、この手法を手に入れたということが、実は今回のオンライン授業の革命的なところなのです!

★何万人も受験する模擬試験やセンター試験は、Excel表では間に合わないので、プログラミングしていますが、中身はExcelといっしょです。手作業の部分が自動化されているだけです。

★しかし、今までのように紙で試験を実施し、赤ペン使って採点していたのでは、一問一問の問いの意味を分析するのは、膨大な時間がかかります。ですから、総括的に点数加算だけで成績がついてきたのです。

★民間模擬試験やセンター試験は、一問一問に意味付けしますから、カテゴライズした成績表を出すことができます。ところが、そのカテゴライズが分野別どまりというところが多かったわけです。ブルームのタキソノミーのアレンジでやってきたところは、日能研と首都圏模試センターです。前者は「科目コード」、後者は「思考コード」です。前者はテストを作成するソフト部署が主にテストをブラッシュアップするエビデンスとして活用し、後者は生徒が自ら自分の学びを改善できるように公開されています。

★評価測定学では、3つの評価と呼ばれています。「総括的評価」「形成的評価」「メタ認知評価(モニタリング評価)」です。日能研は、テスト作成者のモニタリング評価として主に活用されているし、首都圏模試では、テスト作成者と生徒の学びの両方のモニタリング評価として使われています。もちろん、「総括的評価」を偏差値として生徒に提供してもいます。

★開成の話に戻りましょう。スプレッドシートに生徒の答案が集計されるということは、列や行にコードを振っておけば、簡単にカテゴライズできるのです。日能研や首都模試レベルのモニタリング評価を現場教師ができてしまうのです。

★エッ!開成が模擬試験会社と同じようなことをしようとしますかねえと思われる方もいるでしょうが、そうじゃないんです。日能研は、米国のSATを実施しているETSというテスト測定NPOの仕組みをちゃんと学んでいます。首都圏模試もそのような知恵のあるスタッフが「思考コード」を作成・運営しています。

★いったいどういうこと?と思われるでしょう。SATは、米国の大学を受験するときに必要な試験の1つです。その仕組みは当然ブルームのタキソノミーがアレンジされています。ETSは生徒の評価を当然分析して、大学のコンサルティングをするわけですから、総括的評価の分析を大学に持ち込むわけではありません。

★このかつてハーバード大学の総長がたちあげたETSの流れが、テスト測定学という教育心理学や認知心理学の学問を生み出します。最近日本でも教育もデータエビデンスをと言われるようになりましたが、それはこのテスト測定学が集積した膨大だデータによるエビデンスも入っています。

★なんで、テストに心理学?と思われる方もいるでしょう。もともと心理学はアンケートをよくとりますよね。アンケートって問いと回答の応答です。その応答のことを「反応」と心理学では呼びます。

★もうおわかりでしょう。テストも問いと解答の応答です。ですから、模擬試験会社では「正答率」と表現することが多いですが、あれは「反応率」と同じなのです。

★したがって、膨大な反応率データを分析するテスト測定学の中で多く活用されている理論が「項目反応理論」です。「IRT」と呼ばれているものです。そういえば、センター試験やあのPISA、英検などで「IRT」という文字がでてくるとピンと来た人もいらっしゃるでしょう。

★「IRT」とブルームのタキソノミーは結合しやすいのです。IB(国際バカロレア)は、総括的評価と形成的評価を使い分けしています。しかし、それを結合しようとしています。どうやって、ブルームのタキソノミーをつかってです。選択式問題も出題されるので、IRTは当然活用しているでしょう。

★スプレッドシートにタキソノミーの観点をふれば、総括的評価を出す目的の試験が、形成的評価もできてしまうのです。この考え方はもともとブルームが考案しています。テストの形態と評価を区別する文化が日本にはなかったので、ここらへんの話はややこしいと思われがちです。

★今まで日本の教育は、テスト=総括評価だったのです。平均点とか偏差値とかをだしてきました。これによって、生徒のランキングやポジショニングがだされ、もっぱら競争のためにだけ、テスト=総括的評価が使われていたので、わざわざ総括的評価と言う必要がなかったのです。むしろ、テスト=偏差値となってきたわけです。

★しかし、一つのテストは問いの意味のカテゴライズによって、総括的評価、形成的評価、モニタリング評価の3つの側面からアプローチできます。開成や武蔵は、中間考査を実施するしないという文言はともかく、この3つの評価のアプローチを現場の教師が自ら使えるようになってしまったということなのです。もちろん、伝統的に暗黙知として現場の教師は知っていたことです。

★しかし、欧米では教育測定学として学問として見える化されてきているわけです。

★開成は、特に2013年から海外大学に進学する生徒が増えています。この流れが継続されてきたということは、学校当局が全く海外大学進学指導をしていないとはいえないでしょう。海外大学の進学を射程に入れると、この項目反応理論とかブルームのタキソノミーは、これらの言葉をつかうかどうかはともかく、そのエッセンスを無視することはできないのです。

★ですから、今回中間考査にグーグルフォームを活用して総括的評価を出せるようにしたという行為こそ、3つの評価のアプローチを現場に持ち込むことになったという画期的な教育を生み出したといえます。

★この動きが加速すれば、入試問題は学校の顔です。オンライン入試も広がっていくでしょう。

★もちろん、本間がいうことなんてといわれる方も多いでしょう。でもオンライン入試がはじまって、グーグルフォームを使い、思考コードを合体させると、3つの評価の有効性を認識し、現場の授業もそれによって変わるということが起こるかもしれません。

★教育ジャーナリスとやメディアの方の多くは、テストデータ=偏差値ですから、なかなか教育測定学をみようとしないでしょうが、これからのICTに長けた新しいジャーナリストに期待しようと思います。

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2020年6月 3日 (水)

ポスト・コロナショック時代の私立学校(119)アサンプション国際小学校 ノー3密空間はニュートンの創造的休暇PBL!

★本日夕刻、あっという間の2時間強が過ぎました。アサンプション国際小学校の教頭蒲生先生と教務主任・PBL研修リーダー阿弥先生とZoomミーティングを行いました。発想の大転換が生まれ、クオリティイノベーティブ授業のアイデアや研修プラニングが沸騰したのです。

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★同校は、大阪箕面市にあるので、まずは5月末から分散型の週2で1時間のみの登校。そして、6月から2週間は分散登校のまま短縮授業にして、徐々に15日から通常授業を再開できるようにと動いています。

★その準備過程の最中に、阿弥先生が、ノー3密でどうやってPBL授業を行ったら効果的か話した~い!と想いたったそうです。蒲生先生も、第2波、第3波に向けてどんな準備をしたらよいのか参加していいですかあ~!とメールが入ったので、3人でZoomでとなったのです。

★休校中のオンディマンド動画と課題や解答のWebでのやりとりの経験を通して、さらなるイノベーションをということでしょう。

★特に、小学校低学年の場合、ノー3密空間で、タブレットを使って行っても、効果があがるイメージがつきにくいというのです。

★阿弥先生は、究極のPBL授業の達人ですから、対話や議論のできないPBLをイメージできないというのです。そこで、ノー3密の空間は、実はニュートンがペストで疎開して一人で深い思考にはいっていった創造的休暇空間と同じではないかと考えることにしました。

★逆にオンライン空間は、制約はあるもののできるだけいつものPBL空間に近づけたものなのだと考えることにしました。

★すると、そこから、阿弥先生の表情は一変しました。対話や議論で、多様な視点や考え方、感じ方を大切にしてきましたが、それは視野を広げるベクトルでした。しかし、今度は深く考え感じる個人作業を中心とするプロジェクトにするわけですね。そして、絵や物語、一人芝居、プレゼンテーションなどプロダクトを教室のステージで発信し、みんなからフィードバックをペーパーでもらう。そして、そのペーパーを整理して、さらにブラッシュアップしていく。

★一見作業は1人で行うのですが、内面的には多くの仲間の感じ方や考え方を吸収できますね。アフターコロナは、広げるPBLに深めるPBLを新たに創ることになるのですね。平時に戻った時、広げるPBL×深めるPBLをデザインできます!と。

★また、Zoomの共有機能を使い、ノー3密空間でのジャムボードの使い方やテキストマイニングの活用方法も試行錯誤しました。

★アクティビティやパターンランゲージの活用方法の共有も行い、いろいろなイメージがカタチになっていきました。

★マニトバ大学のランゲージアーツのテキストを活用して、具体的に物語のリテラシーの深め方も議論しました。

★ここでは紹介できないほどの多くの情報を共有したので、あっという間に時間が過ぎました。この3カ月間の休校中のオンライン学習の数々の経験を棚卸しながら、ノー3密空間での授業という未知の世界をどうデザインしていくのか、発想の転換を生みだせたZoomミーティングとなりました。

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2020年6月 2日 (火)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(24)本格的なPBLの時代 突き抜ける人類としての自分へ②

★マニトバ大学の教育学部のランゲージーアーツや第二外国語のドイツ語のランゲージアーツのカリキュラムデザインをみると、とにかく学びのデザインがシステマチックにできているし、認知的能力と非認知的能力が総合的に織り込まれています。

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★そして、どちらにもブルームのタキソノミーやガードナー教授の「多重知能」などいろいろな学習理論や評価法がインテグレイトされています。学問的な成果をさらに学問的に再構築していますね。それを脱構築して生徒の才能を豊かにし、社会貢献活動につながるようにするのは現場の教師ですが。欧米では、教師の功利主義的ではなく学究的なコミュニティがあって、そこと大学の教授がプロジェクトを組んで、生徒の学びの最適化が起きています。

★このようなことが特にカナダで生まれるのは、グローバル市民への意識が高いからということもあるでしょう。

★そして、タキソノミーのような基準があるのは、実は、教師が学びを改善するだけではなく、生徒も学びを改善でき、公共的な場において、その学びが評価されるようにと3点から評価をつくるために活用されています。

★自分がどう育っていくのか、教師と社会とコミュニケーションしながら自分を見つめることができる環境が基準軸なのです。

★もしこれがなかったら、どうでしょう。人間は不安に苛まれるでしょう。懐疑心旺盛になるでしょう。理不尽な権威や権力が横行するでしょう。

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★それに、軸がないと、上記の図の各層がつながらないのです。哲学や心理学などに造詣が深い先生もいるけれど、それがPBL授業につながらなかったり、数学的思考とは無縁にみえたりということになるのです。それぞれ見識があるけれど、互いに越境しないわけです。一貫性のある基準軸がないからです。

★欧米は、教育に限らず、クライテリアをオープンにし、共有する文化が当たり前です。市民社会の歴史的経験があるからですね。ポストコロナでは、日本もここは避けられません。コロナ禍にあって、この基準がさだまらないことを毎日のようにメディアが批判してたし、これからもするでしょうから、そこは期待しています。

★そう言えば、白洲次郎が、「プリンシプルを持て」と戦後日本社会の要諦をズバリ言っていたのでしたが、それが今ようやく実現しそうですね。

★というわけで、私は思考コードを共有できる先生方を訪ねて三千里を旅しているわけです。もちろん、ブルームだけが思考コードの条件ではありません。Beyond Bloomの動きはずっとあるのです。ですから、生徒が突き抜ける時、その思考コードも自ら作り直します。もちろん、独りよがりではなく、正当性・信頼性・妥当性のアイデンティティ問題は常にモニタリングしていきます。

★そのためにも、多面的な評価を活用する必要があります。その多面的な角度から見ることによって、気づきが新たに生まれるからです。そして、この作業は、自分の顔を1人では見ることができないという限界を超えることで、この評価こそ自己存在を形成するのに必要です。評価なんていらないなんて時々耳にしますが、自己の存在を見つめ豊かにしていく評価は必要です。オンラインになってゲーミフィケーションの発想も盛り込まれるようになりましたが、ゲーミフィケーションはヴィゴツキーの最近接発達領域をリフレクションする評価が組み込まれています。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(23)本格的なPBLの時代 突き抜ける人類としての自分へ①

★昨日から分散登校が始まりました。3か月の間、駆け抜けるようにオンラインPBL授業に挑戦してきた先生方とZoomやMeetで対話をしてきました。ウェビナーとしてオンラインセミナーやオンライン学校説明会も視聴してきました。もちろん、このような生活はハイブリッド時空になっても続きます。しかし、それは本格的なPBL授業の道のりの始まりだということに気づきました。

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★パンデミック世代の子供たちは、自ら突き抜ける人類として羽ばたく必要がありそうです。不安と不確実性の中で突き抜けるイマジネーションの翼を広げてデストピアではなく新しいユートピアを建設せざるを得なくなるからです。今までの都市をめぐる生活も自然をめぐる生活もこれからはすべてが変わります。

★でも変えるのはパンデミック世代です。運命ではなく、自分たちの意思決定で創っていくわけです。

★そのための教育として何ができるのか?そんな対話ばかりしてきました。

★みな現場の先生方です。哲学や宗教学、心理学などの知を持った先生方がそれを現場につなげる試みをオンラインで行っていました。教育学の見識をもった先生が、その理論をどうやったら現場につなげられるのかオンラインで試みていました。

★学習理論を学び、それを現場につなげる挑戦をオンラインで行っていました。

★ランゲージアーツを学びそれをオンラインで現場で広げようとしている先生にも出会いました。数学的思考を教科書とどう結びつけるか現場で挑戦しオンラインで試行錯誤している先生とも対話しました。

★そして、長年積み上げてきたPBL授業をオンラインPBL授業として結実させた先生方とも対話してきました。

★その中でランゲージアーツと数学的思考については、どうもいわゆる国語とか言語技術の話ではないし、数学的思考は日本の数学教育の話でないことにも互いに気づきました。

★それで、調べてみることにしました。するとカナダのマニトバ大学の教育学部のカリキュラムプランニングの膨大な資料にぶちあたりました。そのランゲージアーツは、日本語の言語技術では収まり切れませんでした。驚くことに幼稚園から小学校3年生までに、創造的思考までトレーニングするカリキュラムが出来上がっています。

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(マニトバ大学教育学部のサイトから)

★おとぎ話を学ぶとき、もちろんPBLは当たり前です。それよりも驚いたことに、4つのレンズという視点でアプローチします。しかも自律した学習者として探究、議論、アウトプット、評価、デモンストレーション、他領域の関係性、貢献など自分でプランして学ぶ仕掛けも用意されています。これがランゲージアーツのカリキュラムデザインなのです。

★多重知能やブルームのタキソノミーもインテグレイトされています。

★数学に至ってはメンタル数学という概念があったりして驚きの連続でした。

★今日本で活用されている言語技術や数学よりもっと幅広い教養が養われる学びになっています。評価も3つのアプローチになっています。ポートフォリオとかルーブリックとかを内的に連関させ、子供の成長を促す学習者中心主義的評価です。

★ブリティッシュコロンビアの教育のすさまじさを知っていただけに、マニトバのカリキュラムデザインがシンプルで広く深いのは理解しやすかったです。同じカナダでも違っているし、日本のような学習指導要領とは教養の度合いが違います。だからこそ、州によって違うのでしょう。教養とは画一的とか一律といったモノを嫌う性質をもっていますから。

★どうやら、日本の子供たちは、各教科や探究のPBLを行う前提として、哲学などの学問や教育学、学習理論が集約されている言語思考技術や数学的思考を小学校の間に学べるとよいのですが。

★上記の階層構造の各層を1人の教師が全部学ぶことはできません。本格的PBLをつくるコミュニティにおいて、それぞれ得意な層にアプローチしている先生方が対話をしていけばよいと思います。

★もはやオンラインPBLというかハイブリッドPBLは当たり前で、問題は授業デザイン、カリキュラムデザイン、社会構想デザインをどうするかです。それと、十牛図や茶の精神をどう調和させるか?この部分は欧米の教育では求められているのですから。

★本格的なPBLとは、「社会構想」と「学問的理論」と「現場の理論」と「子供たちとの実践」を結びつける環境の中で行われることを示唆しています。ですから、教師はファシリテーターやコーチだけではなく、4つの領域を結びつける世界制作者です。子供と共に世界を創っていく役割を果たします。それぞれの教師は自身の得意な領域があります。同時にそこから突き抜けて他の領域と結びつける共感的&創造的コミュニケーションが必要です。同時にコミュニティを外部の攻撃から守る戦略的コミュニケーションも必要です。

★もちろん、すべての教師がすぐには動けないでしょう。隗よりはじめよという先生方20名くらいからはじまるわけです。これは新しい経済を同時にベースにしますから、今の経済に対しクリティカルシンキングを持っていない企業人とは組めません。現状の多様なコミュニティの問題点は、このクリティカルシンキングがなさすぎるという点です。どんなに世界を変えるとか、チェンジメーカーになれといっても、この視点がないと世界は変わりませんね。日本の教育の弱点です。そうさせられてきたのでしょうが。

★ある意味ノアコミュニティからはじめるしかないのかもしれません。制度は外延的意味の戦略です。このコミュニティは内包的意味の戦略ですから、制度変更の動きをする必要もないのです。ふりむいたら変容しているという戦略ですから。新しい本格的な動きが実は静かに始まっています。

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2020年6月 1日 (月)

ポスト・コロナショック時代の私立学校(118)ノートルダム女学院 Web配信説明会のインパクト!広さと深さ➄

★ノートルダム女学院のWeb配信オープンスクールがやってのけた3つ目は、惜しげもなくPBL授業の手法と効果と豊かさを披露していたというコトです。どこの学校もアクティブラーニングやPBLのシーンを写真や動画でみせます。アフター/ウィズコロナにおいてはますますこれは増えるでしょう。

★それまでは、大学入試では暗記中心で突破できたので、そんな授業では役に立たないとか叫ぶ方もいらっしゃいましたが、私たちはパンデミックを共有し、そんな学びではサバイブできないし、互いに思いやることもできないということは共体験しています。

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★また、メディアも大学の学生のアンケートなどを明らかにし、一方通行型の講義形式と双方向型の講義では、どちらも一長一短あるけれど、圧倒的に双方向型のニーズが高いというとを明らかにしつつあります。

★中高の場合は、そのミックスが個別最適化にもなるし、チームの相乗効果で広く深い学力を養うということがわかってきました。

★そのことを、見事に簡明・明快・感銘の3点セットで語り尽くしたのが同校の教育開発センター長霜田先生です。

★ご自身も、もちろん普段からPBL授業の推進者で、今回のオンラインPBL授業のまさにサポートセンター役も担っています。それに、ご自身も授業を幾つも担当しています。

★前回「理想の食とは何か」という、Stay homeの折に、共感できる問いを投げかけました。やはり身近なところから学びを広め探究を深めていくT字型学習(慶応義塾大学の井庭教授のランゲージパターンの1つ。Tの字の横線に学びを広める意味を込め、縦線に深めていく意味を込めています)ですね。

★高谷副校長はMS(カラシダネ成長)戦略の学びのパターンで語り、霜田先生はT字型学びのパターンで語りました。両方ともPBLのパターンのピースです。同じ学びでもパターンを変えて動画を編集する心憎い気遣いも実に興味深かったです。

★さて、霜田先生の話は、前回は、この身近な、それいて社会課題に通じているBig Questionを生徒とどう考えていくのか客観的に語りました。今回は、保護者の主観に訴えました。

★PBL自体は、リアルでもオンラインでもビジョンは共通している部分が多いのですが、オンラインになると、学びのツールによって、参加者全員を知性の竜巻の中にすぐに巻き込めます。

★この問いの解答を考える過程として、1)どんな理想?2)その自分の考えを支える根拠は何?3)自分だったたらその理想をどう実現する?と生徒たちとスモールステップに分けて思考を深めていく思考型授業を説明していました。オンラインでやりとりをした生徒の解答などをみせて、模擬試験の偏差値と深い思考の相関がないことまで証明していきました。

★そして、この問いは実は東大の帰国生の小論文の課題だということが明かされました。東大推薦入試や京大の特別入試も同じような深い問いなのだということも語っていました。

★ノートルダム女学院から今春京大も2人入っています。今後ますますこのような問いは増えるでしょうから、参加者も背筋がピンとしたでしょうし、こんな正解が1つではない問いならおもしろいから解いてみたいとモチベーションがあがるわけです。

★それで、解答はメールでどうぞお寄せくださいと。

★すると、どうでしょう!たくさんのメールが届いたということです。そこで、今回はその解答を見せて添削していくなどということなどせずに、テキストマイニングして、どのような観点やトーンが集まったのか、AI分析してマインドマップで表現していきました。

★オンラインになって、解答がtextで収集できるので、生徒の解答をテキストマイニグすれば、共通する発想と特異な発想が瞬時に見ることができます。そして、この特異な発想を見捨てずに、サポートする根拠があるのか正当性、信頼性、妥当性を議論していけば、ブレイクスルーが起きます。

★ディスカッションに参加するには、自分の考えをテキストにして、テキストマイニグに投げ込まなければ協働したことにならないので、ディスカッションをどうするかについてよく話題になるのですが、これは一つの解決方法です。ディスカッションしても創発されないで終わるなら、やらないほうがましだという意見は根強かったのです。

★しかし、霜田先生をはじめNDの先生方が大切にしている対話や議論は、創発型だということが参加者は実感できたことでしょう。

★というのも、保護者は、自分たちの考えを受け入れられ、少数派の考えも尊重されながら、学びが広がり深まっていくことを実感し、集合知を自分事とできたのですから。

★そして、これが自分の娘がNDで学ぶPBLなのだと。これからはリアルとオンラインのハイブリッドPBLなのだということが実感できたことでしょう。

★霜田先生は社会科教諭で、哲学専攻で、大学院で深く研究してきました。このコロナ禍にあって、ニュートンがペストパンデミックで疎開してStay homeしている間に、いろいろな学問的発見をしたように、NHKなどが番組で哲学の重要性や学びの深さに注目しています。霜田先生の話は、そのような時代の精神にもマッチングしているのです。

★コロナショック以前では、こんな広く深い哲学的素養の話は学校説明会で聞くことはできませんでした。校長訓話とか外部から偉い講師を招いて一方的に聞くというぐらいだったでしょう。

★それがオンラインになって、深い教養的な話も、AIによるテキストマイニグで簡明・明快に語られるようになりました(とはいえ、霜田先生だからというのが本当は大きいのですが)。それにまた、参加者は驚いたでしょう。なぜなら、このテキストマイニグの手法は野村総研やSONYなどの大企業が、企業戦略のマーケティング分析の時に活用する手法で、自分たちにとってあまりに身近な手法だったのですから。NDのPBL恐るべしです。

★そして、最後は、霜田先生はXチャートという思考ツール(カテゴライズという思考スキルを参加者が発動する仕掛けです)で、話をまとめました。これもPBL授業で活用されるものです。高谷副校長はフィッシュボーンチャート(具体と抽象と時間の流れという思考スキルを参加者が発動する仕掛けです)で話をまとめていました。

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★このコロナ禍にあって、子供たちは自由に考えることは楽しいと感じているようです。これがPBLの極意でもありますね。とにかく、ここまで、PBLの基本ができている先生方がいるということもさりげなくアピールされていたのには脱帽です。

★そして、大事なことは、高谷副校長も霜田先生も料理や食をテーマに広く深く語っていったのですが、生徒会のメンバーが制作した動画のエンディングも、料理を通してStay homeを考える物語だったのです!

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ポスト・コロナショック時代の私立学校(117)ノートルダム女学院 Web配信説明会のインパクト!広さと深さ④

★ノートルダム女学院(ND)のWeb配信オープンスクールでなるほどと納得したことは、一般の時間の限りある説明会では、できないことを3つもやってのけたというコトです。1つは、多くの学校のWeb配信説明会は、リアルな説明会をそのまま録画した感じのものが主流ですが、NDの場合は、豊かな教育のシーンを教師も生徒もOGも、みんなでたっぷりと語る短めの動画をたくさん用意したという豊かさがそれです。

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★2つ目は、高谷副校長が来るべき予測不能な未来に必要なスキルとは何かを端的にかつ詳しくプレゼンしたということです。一般の説明会では、戦略的思考とか批判的思考とか創造的思考という言葉は語りますが、それらがどういう機能を持っているのかまでは話しません。外延的な表現で終わり内包的な表現まではしないのです。なぜなら、これは実際にPBL(Project based learning)型授業をその学校が実践していないとわからないし、そもそも自身がやっていないと内包的な内容はなかなか話せないものです。

★高谷副校長は、社会科教諭でもあり、大学院で自らもPBLで学び、大学などの事業構想の修士論文まで仕上がている経験もあるので、そこはさらりと美しくやってのけるのです。今回は、中高におけるPBLの1つのパターンである、身近なところから小さく入って大きく発展させるという(カトリック的にはマスタードの種戦略=MS戦略といいます)デザインで語りました。

★いつも通っている焼き肉屋が、この外出自粛の折に閉店しているかと思っていたら、2週間前から再開していた。あれっ?と思って覗いたら、肉に秘伝のたれと焼き方レシピを付けて販売していたという身近な話です。

★参加者はみな外食はしていないので、「焼肉」の話はグッときたでしょう(参加者はここでは微笑)。しかし、そこではなく、ノー3密空間を守り、店主の自分の命も他者の命も守るという本当のサービス(奉仕という意味がありますね)という貢献活動をする一方で、経済活動もしなくてはこれまた命を守れません。これも自分の命だけではありません。経済活動は相互行為ですから循環しています。その循環をとめるわけにはいかないのです(参加者はここでは緊張)。

★停止と循環というジレンマ。ここを高谷副校長は語ります。参加者はよくわかります。コロナ禍という共通体験をいままさにしているわけですから。

★高谷副校長は、こういうジレンマに直面した時、それをなんとかしようと思うか、しないかは大きな違いがある。ジレンマを乗り越えることは、これもまた自分のしてほしいことを他者にもせよというという心(カトリック精神では、これをゴールデンルールといいます)が突き動かす創造的思考が働くことなのだと(参加者はここでは納得)。

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★ジレンマを乗り越えるために店主は、このままでは停止と循環は相いれない、困る、どうしよう。そもそも自分の強みは?そうだ肉を料理して食べて頂くことはできないなら、そのおいしい料理を自宅でつくってもらえるようにサポートすればよいのだと自分を捨てたところから、肉だけではなく、秘伝のたれと焼き方のレシピを公開したのだと高谷副校長は推理したわけです(参加者はここで解放感)。

★この発想を経済学的あるいは経営学的には、起業家精神というのでは、今では周知の事実ですね。これもまたイノベーションです。

★そして、最後にこの身近な事象に、実は社会科的な視点や数学的視点、化学的視点などが結びついてくるのだと、学びの掟に一般化していったのです(参加者はここでは高次レベルで共感)。

★学校説明会で、ここまで明快・明瞭に学びの本質が語られることはないでしょう。難しいから話さないとよく言われます。それは保護者を舐めてますね。保護者も経済社会の中のジレンマを超えようとして生き抜いています。だからこそ、子供に対して本質的な教育環境を探して、こうして学校説明会に参加しているのです。

★にもかかわらず、こういう方もいらっしゃる。お母さん方は理解できないよと。完璧にジェンダー問題に対する意識が低すぎます。そういう学校はSDGsの観点からも、学びの権利の観点からも論外です。そんな学校を選んだら子供の未来はありません。

★ともあれ、高谷副校長の話は、実に戦略的にデザインされていました。参加者の心をつかむU理論。さすがです。

★さて、3つ目にやってのけたことは、これについてはページを変えて述べましょう。(つづく)

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