ポスト・コロナショック時代の私立学校(117)ノートルダム女学院 Web配信説明会のインパクト!広さと深さ④
★ノートルダム女学院(ND)のWeb配信オープンスクールでなるほどと納得したことは、一般の時間の限りある説明会では、できないことを3つもやってのけたというコトです。1つは、多くの学校のWeb配信説明会は、リアルな説明会をそのまま録画した感じのものが主流ですが、NDの場合は、豊かな教育のシーンを教師も生徒もOGも、みんなでたっぷりと語る短めの動画をたくさん用意したという豊かさがそれです。
★2つ目は、高谷副校長が来るべき予測不能な未来に必要なスキルとは何かを端的にかつ詳しくプレゼンしたということです。一般の説明会では、戦略的思考とか批判的思考とか創造的思考という言葉は語りますが、それらがどういう機能を持っているのかまでは話しません。外延的な表現で終わり内包的な表現まではしないのです。なぜなら、これは実際にPBL(Project based learning)型授業をその学校が実践していないとわからないし、そもそも自身がやっていないと内包的な内容はなかなか話せないものです。
★高谷副校長は、社会科教諭でもあり、大学院で自らもPBLで学び、大学などの事業構想の修士論文まで仕上がている経験もあるので、そこはさらりと美しくやってのけるのです。今回は、中高におけるPBLの1つのパターンである、身近なところから小さく入って大きく発展させるという(カトリック的にはマスタードの種戦略=MS戦略といいます)デザインで語りました。
★いつも通っている焼き肉屋が、この外出自粛の折に閉店しているかと思っていたら、2週間前から再開していた。あれっ?と思って覗いたら、肉に秘伝のたれと焼き方レシピを付けて販売していたという身近な話です。
★参加者はみな外食はしていないので、「焼肉」の話はグッときたでしょう(参加者はここでは微笑)。しかし、そこではなく、ノー3密空間を守り、店主の自分の命も他者の命も守るという本当のサービス(奉仕という意味がありますね)という貢献活動をする一方で、経済活動もしなくてはこれまた命を守れません。これも自分の命だけではありません。経済活動は相互行為ですから循環しています。その循環をとめるわけにはいかないのです(参加者はここでは緊張)。
★停止と循環というジレンマ。ここを高谷副校長は語ります。参加者はよくわかります。コロナ禍という共通体験をいままさにしているわけですから。
★高谷副校長は、こういうジレンマに直面した時、それをなんとかしようと思うか、しないかは大きな違いがある。ジレンマを乗り越えることは、これもまた自分のしてほしいことを他者にもせよというという心(カトリック精神では、これをゴールデンルールといいます)が突き動かす創造的思考が働くことなのだと(参加者はここでは納得)。
★ジレンマを乗り越えるために店主は、このままでは停止と循環は相いれない、困る、どうしよう。そもそも自分の強みは?そうだ肉を料理して食べて頂くことはできないなら、そのおいしい料理を自宅でつくってもらえるようにサポートすればよいのだと自分を捨てたところから、肉だけではなく、秘伝のたれと焼き方のレシピを公開したのだと高谷副校長は推理したわけです(参加者はここで解放感)。
★この発想を経済学的あるいは経営学的には、起業家精神というのでは、今では周知の事実ですね。これもまたイノベーションです。
★そして、最後にこの身近な事象に、実は社会科的な視点や数学的視点、化学的視点などが結びついてくるのだと、学びの掟に一般化していったのです(参加者はここでは高次レベルで共感)。
★学校説明会で、ここまで明快・明瞭に学びの本質が語られることはないでしょう。難しいから話さないとよく言われます。それは保護者を舐めてますね。保護者も経済社会の中のジレンマを超えようとして生き抜いています。だからこそ、子供に対して本質的な教育環境を探して、こうして学校説明会に参加しているのです。
★にもかかわらず、こういう方もいらっしゃる。お母さん方は理解できないよと。完璧にジェンダー問題に対する意識が低すぎます。そういう学校はSDGsの観点からも、学びの権利の観点からも論外です。そんな学校を選んだら子供の未来はありません。
★ともあれ、高谷副校長の話は、実に戦略的にデザインされていました。参加者の心をつかむU理論。さすがです。
★さて、3つ目にやってのけたことは、これについてはページを変えて述べましょう。(つづく)
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